トップ :: C 化学 冶金 :: C12 生化学;ビ−ル;酒精;ぶどう酒;酢;微生物学;酵素学;突然変異または遺伝子工学

【発明の名称】 ヌクレオシド化合物の製造方法
【発明者】 【氏名】安楽城 正

【氏名】池田 一郎

【氏名】高橋 克幸

【氏名】伊藤 潔

【氏名】浅野 保

【氏名】肉丸 誠也

【氏名】中村 武史

【氏名】石橋 大樹

【氏名】長原 清輝

【氏名】福入 靖

【要約】 【課題】ペントース−1−リン酸と核酸塩基もしくは核酸塩基アナログとを、ヌクレオシドホスホリラーゼ活性の存在下に反応させる工程を有し、同反応におけるヌクレオシド化合物の転化率が向上している汎用性の高いヌクレオシド化合物の製造方法を提供すること。

【構成】水性反応媒体中で、ヌクレオシドホスホリラーゼ活性の存在下に、ペントース−1−リン酸と、核酸塩基または核酸塩基アナログとを、リン酸イオンと難水溶性の塩を形成する金属カチオンの塩の存在下、pHを調整せずに反応させて、ヌクレオシド化合物を生成させる際に、該金属カチオンの塩として水に難水溶性の塩を用いる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性反応媒体中で、ヌクレオシドホスホリラーゼ活性の存在下に、ペントース−1−リン酸と、核酸塩基または核酸塩基アナログとを、リン酸イオンと難水溶性の塩を形成する金属カチオンの塩の存在下、pHを調整せずに反応させて、ヌクレオシド化合物を生成させるヌクレオシド化合物の製造方法であって、該金属カチオンの塩が水に難水溶性の塩であることを特徴とする製造方法。
【請求項2】
金属カチオンの塩が、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム及び塩基性炭酸マグネシウムから選択された少なくとも1種である請求項1記載のヌクレオシド化合物の製造方法。
【請求項3】
反応の際の水性反応媒体のpHが7.5から10.0の範囲であることを特徴とする請求項2記載のヌクレオシド化合物の製造方法。
【請求項4】
反応により得られた反応液をろ過して、反応液中の不溶性物質を除去し、ヌクレオシド化合物を含有するろ液を得る工程を有することを特徴とする請求項2に記載のヌクレオシド化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、ヌクレオシドホスホリラーゼを用いたヌクレオシド化合物の製造方法に関する。各種のヌクレオシド及びそのアナログ化合物は、抗ウイルス医薬品、抗ガン医薬品やアンチセンス医薬品などの原料または原体として使用される。
【背景技術】
【0002】
ヌクレオシドホスホリラーゼはリン酸存在下でヌクレオシドのN−グリコシド結合を加リン酸分解する酵素の総称であり、リボヌクレオシドを例にすると次式で表される反応を触媒する。
【0003】
リボヌクレオシド+リン酸(塩)→核酸塩基+リボース1−リン酸
プリンヌクレオシドホスホリラーゼとピリミジンヌクレオシドホスホリラーゼに大別される該酵素は、広く生物界に分布し、哺乳類、鳥類、魚類などの組織、酵母、細菌に存在する。この酵素反応は可逆的であり、逆反応を利用した各種ヌクレオシド化合物の合成が以前より知られている。
【0004】
例えば、2'−デオキシリボース1−リン酸と核酸塩基(チミン、アデニンまたはグアニン)からチミジン(特開平01−104190号公報)、2'−デオキシアデノシン(特開平11−137290号公報)または2'−デオキシグアノシン(特開平11−137290号公報)を製造する方法が知られている。更に、Agric., Biol., Chem., Vol.50 (1)., PP.121〜126, (1986)では、イノシンをリン酸存在下で、Enterobacter aerogenes由来のプリンヌクレオシドホスホリラーゼを用いた反応により、リボース1−リン酸とヒポキサンチンに分解した後、イオン交換樹脂で単離したリボース1−リン酸と1,2,4−トリアゾール−3−カルボキサミドより、同じくEnterobacter aerogenes由来のプリンヌクレオシドホスホリラーゼにより、抗ウイルス剤であるリバビリンを製造する技術が報告されている。
【0005】
しかしながら、該酵素の逆反応を利用して、ペントース−1−リン酸またはその塩と核酸塩基よりヌクレオシド化合物を生成させる反応は平衡反応であるため、転化率が向上しないという技術的欠点を有していた。
【特許文献1】特開平01−104190号公報
【特許文献2】特開平11−137290号公報
【特許文献3】特開平11−137290号公報
【非特許文献1】Agric., Biol., Chem., Vol.50 (1)., PP.121〜126, (1986)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決すべき課題は、工業的にヌクレオシド化合物を製造するに際して、高い転化率で反応を進行させ且つ簡便なる方法、および原料コストの低減化ならびに製品純度の向上に寄与する手段を提供することにある。
【0007】
すなわち、本発明の目的は、ペントース−1−リン酸と核酸塩基もしくは核酸塩基アナログとを、ヌクレオシドホスホリラーゼ活性の存在下に反応させる工程を有し、同反応におけるヌクレオシド化合物の転化率が向上している簡便且つ汎用性の高いヌクレオシド化合物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等はこれら課題を解決するため鋭意検討した結果、反応液にリン酸イオンと難水溶性の塩を形成しうる金属カチオンを存在させると、反応の副生成物であるリン酸イオンが難水溶性の塩として沈殿し反応系外に除外されることにより、反応の平衡がヌクレオシド化合物合成方向へ移動し、反応転化率が向上することを見出した。
【0009】
更に、本発明者らは、リン酸と難水溶性の塩を形成しうる金属カチオンをペントース−1−リン酸の塩として反応液中に存在させることにより、上記のリン酸と難水溶性の塩を形成しうる金属カチオンまたはその塩を添加した場合と同等の効果が得られることを見出した。
【0010】
また、本発明者らはペントース−1−リン酸をヌクレオシドホスホリラーゼ存在下、リン酸基と核酸塩基または核酸塩基アナログとの交換反応によりヌクレオシド化合物を製造する方法において、一般的に溶解度が低く反応性の乏しい核酸塩基アナログをアルカリ金属水溶液として反応系に導入することにより、反応時の基質濃度を向上させる事が出来るため、高転化率でヌクレオシド化合物が得られることを見出した。
【0011】
更に、このヌクレオシド化合物の製造に際して、アルカリ金属水溶液としてリチウムイオン或いはマグネシウムイオンを含有する金属カチオンの塩の水溶液を用いると、反応で生成するリン酸をリン酸リチウム或いはリン酸マグネシウムとして不溶化する為に、酵素反応の平衡がヌクレオシド化合物の合成側に傾くことで、従来技術では成し得なかった高選択性、高収率でヌクレオシド化合物が得られることを見出した。
【0012】
また、特に、リン酸と難水溶性の塩を形成し得る金属カチオンの塩として水酸化マグネシウム等の水に難溶性である金属カチオンの塩を用いると、反応液の塩濃度が上昇しないため、反応液の上昇によってもたらされる反応速度の低下が防止されること、またそのような金属カチオンの塩は反応前に全量添加できるためマグネシウムを金属水溶液として添加する場合に比して操作が簡便になることに加えて、得られた反応液の濾過性が顕著に向上するなどの利点があることも見出した。
【0013】
更に、金属カチオンの塩として水酸化マグネシウムを用いると、反応により得られる難水溶性のリン酸塩であるリン酸マグネシウムの結晶が比較的反応液のろ過に適した大きさ・形状であるため、反応終了後の反応液のろ過が迅速に行われる利点があることを本発明者らは見出した。
【0014】
更に、工業的にヌクレオシド化合物を生産するためには、容積効率や精製時の回収率を向上させる必要から反応液中に高濃度にヌクレオシド化合物を蓄積させることが望ましい。上記のように反応液中に金属カチオンを存在させて反応の進行に伴って生じるリン酸イオンと反応させて難水溶性の塩として沈殿させる場合に、ヌクレオシド化合物の高蓄積濃度を得るために各成分の量を高めると、リン酸と金属カチオンが対応する難水溶性の塩を形成して沈殿するに従って反応液のpHが低下し過ぎると反応転化率が低くなる。この反応液のpHの低下による反応転化率の低下は生成されたヌクレオシド化合物の分解や酵素活性の部分的な失活などによるものと考えられる。
【0015】
このような場合に、所望とする反応転化率を維持するには反応液のpHを調整することが好ましい。ところが、ヌクレオシド化合物の高蓄積濃度を得るために初期(反応開始時)の仕込み量を多くすると、反応の進行に伴って反応液の粘度が上昇し、さらには反応液の固化が生じる場合があった。そして、このような反応液の粘度の上昇や固化が生じると上述した所望とするpH調整が困難になる。また、反応液の粘度が上昇すると反応液の混合攪拌にかかる動力が過大となり、設備の故障の原因ともなる。
【0016】
本発明者らは、ヌクレオシド化合物の反応液中での高蓄積濃度を得るための仕込み量を用いた場合に、ペントース−1−リン酸、核酸塩基または核酸塩基アナログ及び金属カチオンから選択された少なくとも1種の仕込み量の全部または一部を反応開始後の所定の時期に添加することで反応液の高粘度化または固化を防止することができることを見出した。
【0017】
即ち、上記の各知見に基づいて成された本願発明には以下の各態様が含まれる。
[1] 水性反応媒体中で、ヌクレオシドホスホリラーゼ活性の存在下に、ペントース−1−リン酸と、核酸塩基または核酸塩基アナログとを、リン酸イオンと難水溶性の塩を形成し得る金属カチオンの存在下に反応させて、ヌクレオシド化合物を生成させるヌクレオシド化合物の製造方法であって、反応開始後に、前記ペントース−1−リン酸、前記核酸塩基または核酸塩基アナログ及び前記金属カチオンから選択した少なくとも1種の成分を反応途中の水性反応媒体中に添加することを特徴とするヌクレオシド化合物の製造方法。
[2] 前記ペントース−1−リン酸が、リボース−1−リン酸または2−デオキシリボース−1−リン酸である上記[1]に記載のヌクレオシド化合物の製造方法。
[3] 前記リン酸イオンと難水溶性の塩を形成し得る金属カチオンが、カルシウムイオン、バリウムイオン、アルミニウムイオン、リチウムイオン及びマグネシウムイオンの中から選ばれる1種以上である上記[1]又は[2]に記載のヌクレオシド化合物の製造方法。
[4] 前記リン酸イオンと難水溶性の塩を形成しうる金属カチオンを、塩素イオン、硝酸イオン、炭酸イオン、硫酸イオン、酢酸イオンおよび水酸化イオンの中から選ばれる1種類以上のアニオンとの金属塩として水性反応媒体中に添加する上記[3]に記載のヌクレオシド化合物の製造方法。
[5] 前記リン酸イオンと難水溶性の塩を形成しうる金属カチオンを、ペントース−1−リン酸の塩として水性反応媒体中に添加する上記[3]に記載のヌクレオシド化合物の製造方法。
[6] 前記反応開始後に前記水性反応媒体に添加される少なくとも1種の成分のうちの少なくとも1種について、その反応終了までに添加する量を2回以上に分割して、あるいは連続的に徐々に前記水性反応媒体に添加することを特徴とする上記[1]に記載のヌクレオシド化合物の製造方法。
[7] 前記ペントース−1−リン酸、前記核酸塩基または核酸塩基アナログ及び前記金属カチオンの3種の成分の反応終了までに添加する量が、これら成分を水性反応媒体に一括して添加・反応させた場合に水性反応媒体に高粘度化または固化が生じ、且つ前記反応開始後の一種以上の成分の反応終了までの添加量の一部又は全部が前記反応開始後に分割添加することで該反応液の高粘度化または固化が防止されることを特徴とする上記[1]または[6]に記載のヌクレオシド化合物の製造方法。
[8] 前記核酸塩基または核酸塩基アナログを、アルカリ水溶液として加えることを特徴とする上記[1]〜[7]のいずれか一項に記載のヌクレオシド化合物の製造方法。
[9] 前記核酸塩基または核酸塩基アナログを溶解するアルカリ水溶液が、水酸化リチウム、炭酸リチウム及び炭酸水素リチウムのいずれか一つ以上を含有する溶液であることを特徴とする上記[8]記載のヌクレオシド化合物の製造方法。
[10] 水性反応媒体中で、ヌクレオシドホスホリラーゼ活性の存在下に、ペントース−1−リン酸と、核酸塩基または核酸塩基アナログとを、リン酸イオンと難水溶性の塩を形成する金属カチオンの塩の存在下、pHを調整せずに反応させて、ヌクレオシド化合物を生成させるヌクレオシド化合物の製造方法であって、該金属カチオンの塩が水に難水溶性の塩であることを特徴とする製造方法。
[11] 金属カチオンの塩が、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム及び塩基性炭酸マグネシウムから選択された少なくとも1種である上記[10]記載のヌクレオシド化合物の製造方法。
[12] 反応の際の水性反応媒体のpHが7.5から10.0の範囲であることを特徴とする上記[11]記載のヌクレオシド化合物の製造方法。
[13] 反応により得られた反応液をろ過して、反応液中の不溶性物質を除去し、ヌクレオシド化合物を含有するろ液を得る工程を有することを特徴とする上記[11]に記載のヌクレオシド化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ヌクレオシドホスホリラーゼまたは該酵素活性を有する微生物を用いたペントース−1−リン酸と核酸塩基からのヌクレオシド化合物の製造において、リン酸と難水溶性塩を形成しうる金属塩を添加することで副生するリン酸が反応系から除外され、従来技術では達成されなかった反応収率の向上が達成される。また、反応液の高粘度化や固化を生じさせずにヌクレオシド化合物を高収率で効率的に生産することが可能となる。これらのことは、工業的見地から本発明は大きなコストダウンに繋がり、その意義は大きい。
【0019】
核酸塩基又は核酸塩基アナログを水酸化リチウムなどのアルカリ水溶液に溶解して添加すると反応操作が簡便になる。
【0020】
リン酸イオンと難水溶性の塩を形成し得る金属カチオンの塩として水酸化マグネシウムを用いると、水酸化マグネシウムの水に対する溶解度が低いため、(1)反応中に反応液のpHがほとんど変化しないので酵素の失活が防止される(水酸水酸化マグネシウム以外の水溶性の金属カチオンの塩を用いると反応中に反応液のpHは若干アルカリ性側へと変化する)、(2)反応に伴う反応液の塩濃度の上昇がないので、塩濃度の上昇による反応阻害が防止され、加えてより高濃度の反応が可能になる、(3)金属カチオンを反応前に一括で添加可能である等の利点がある。また、金属カチオンとしてマグネシウムイオンを用いると反応終了後に反応液をろ過する工程においてそのろ過速度が顕著に向上するため工業上非常に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明におけるペントース−1−リン酸とは、ポリヒドロキシアルデヒドまたはポリヒドロキシケトンおよびその誘導体の1位にリン酸がエステル結合したもののことである。その代表例を挙げると、例えばリボース1−リン酸、2´−デオキシリボース1−リン酸、2´,3´−ジデオキシリボース1−リン酸、アラビノース1−リン酸などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0022】
ここでいうポリヒドロキシアルデヒドまたはポリヒドロキシケトンとは、天然物由来のものとしては、D−アラビノース、L−アラビノース、D−キシロース、L−リキソーズ、D−リボースのようなアルドペントース、D−キシルロース、L−キシルロース、D−リブロースのようなケトペントース、D−2−デオキシリボース、D−2,3−ジデオキシリボースのようなデオキシ糖類を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0023】
これらペントース−1−リン酸は、ヌクレオシドホスホリラーゼの作用によりヌクレオシド化合物の加リン酸分解反応を行って製造する方法(J.Biol.Chem.Vol.184、437、1950)や、アノマー選択的な化学合成法等によっても調製することができる。
【0024】
本発明に用いられる核酸塩基とはDNAやRNAの化合構造形式要素となっている窒素原子を含む複素環式化合物であり、ピリミジン、プリン、あるいは塩基アナログからなる群から選択された天然または非天然型の核酸塩基を示し、それら塩基はハロゲン原子、アルキル基、ハロアルキル基、アルケニル基、ハロアルケニル基、アルキニル基、アミノ基、アルキルアミノ基、水酸基、ヒドロキシアミノ基、アミノオキシ基、アルコキシ基、メルカプト基、アルキルメルカプト基、アリール基、アリールオキシ基またはシアノ基によって置換されていてもよい。
【0025】
置換基としてのハロゲン原子としては、塩素、フッ素、ヨウ素、臭素が例示される。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基などの炭素数1〜7のアルキル基が例示される。ハロアルキル基としては、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、ブロモメチル、ブロモエチルなどの炭素数1〜7のアルキル基を有するハロアルキル基が例示される。アルケニル基としては、ビニル、アリルなどの炭素数2〜7のアルケニル基が例示される。ハロアルケニル基としては、ブロモビニル、クロロビニルなどの炭素数2〜7のアルケニルを有するハロアルケニル基が例示される。アルキニル基としては、エチニル、プロピニルなどの炭素数2〜7のアルキニル基が例示される。アルキルアミノ基としては、メチルアミノ、エチルアミノなどの炭素数1〜7のアルキル基を有するアルキルアミノ基が例示される。アルコキシ基としては、メトキシ、エトキシなどの炭素数1〜7のアルコキシ基が例示される。アルキルメルカプト基としては、メチルメルカプト、エチルメルカプトなどの炭素数1〜7のアルキル基を有するアルキルメルカプト基が例示される。アリール基としては、フェニル基;メチルフェニル、エチルフェニルなどの炭素数1〜5のアルキル基を有するアルキルフェニル基;メトキシフェニル、エトキシフェニルなどの炭素数1〜5のアルコキシ基を有するアルコキシフェニル基;ジメチルアミノフェニル、ジエチルアミノフェニルなどの炭素数1〜5のアルキルアミノ基を有するアルキルアミノフェニル基;クロロフェニル、ブロモフェニルなどのハロゲノフェニル基などが例示される。
【0026】
ピリミジン骨格を有する核酸塩基を具体的に例示すれば、シトシン、ウラシル、5−フルオロシトシン、5−フルオロウラシル、5−クロロシトシン、5−クロロウラシル、5−ブロモシトシン、5−ブロモウラシル、5−ヨ−ドシトシン、5−ヨ−ドウラシル、5−メチルシトシン、5−メチルウラシル(チミン)、5−エチルシトシン、5−エチルウラシル、5−フルオロメチルシトシン、5−フルオロウラシル、5−トリフルオロシトシン、5−トリフルオロウラシル、5−ビニルウラシル、5−ブロモビニルウラシル、5−クロロビニルウラシル、5−エチニルシトシン、5−エチニルウラシル、5−プロピニルウラシル、ピリミジン−2−オン、4−ヒドロキシアミノピリミジン−2−オン、4−アミノオキシピリミジン−2−オン、4−メトキシピリミジン−2−オン、4−アセトキシピリミジン−2−オン、4−フルオロピリミジン−2−オン、5−フルオロピリミジン−2−オンなどが挙げられる。
【0027】
プリン骨格を有する核酸塩基を具体的に例示すれば、プリン、6−アミノプリン(アデニン)、6−ヒドロキシプリン、6−フルオロプリン、6−クロロプリン、6−メチルアミノプリン、6−ジメチルアミノプリン、6−トリフルオロメチルアミノプリン、6−ベンゾイルアミノプリン、6−アセチルアミノプリン、6−ヒドロキシアミノプリン、6−アミノオキシプリン、6−メトキシプリン、6−アセトキシプリン、6−ベンゾイルオキシプリン、6−メチルプリン、6−エチルプリン、6−トリフルオロメチルプリン、6−フェニルプリン、6−メルカプトプリン、6−メチルメルカプトプリン、6−アミノプリン−1−オキシド、6−ヒドロキシプリン−1−オキシド、2−アミノ−6−ヒドロキシプリン(グアニン)、2,6−ジアミノプリン、2−アミノ−6−クロロプリン、2−アミノ−6−ヨ−ドプリン、2−アミノプリン、2−アミノ−6−メルカプトプリン、2−アミノ−6−メチルメルカプトプリン、2−アミノ−6−ヒドロキシアミノプリン、2−アミノ−6−メトキシプリン、2−アミノ−6−ベンゾイルオキシプリン、2−アミノ−6−アセトキシプリン、2−アミノ−6−メチルプリン、2−アミノ−6−サイクロプロピルアミノメチルプリン、2−アミノ−6−フェニルプリン、2−アミノ−8−ブロモプリン、6−シアノプリン、6−アミノ−2−クロロプリン(2−クロロアデニン)、6−アミノ−2−フルオロプリン(2−フルオロアデニン)などが挙げられる。
【0028】
塩基アナログを具体的に例示すれば、6−アミノ−3−デアザプリン、6−アミノ−8−アザプリン、2−アミノ−6−ヒドロキシ−8−アザプリン、6−アミノ−7−デアザプリン、6−アミノ−1−デアザプリン、6−アミノ−2−アザプリンなどが挙げられる。
【0029】
本発明においてヌクレオシド化合物とは上述のポリヒドロキシアルデヒドまたはポリヒドロキシケトンおよびその誘導体の1位にピリミジン骨格を有する核酸塩基、プリン骨格を有する核酸塩基、あるいは塩基アナログがN―グルコシド結合したものであり、具体的にはチミジン、デオキシシチジン、デオキシウリジン、デオキシグアノシン、デオキシアデノシン、ジデオキシアデノシン、トリフルオロチミジン、リバビリン、オロチジン、ウラシルアラビノシド、アデニンアラビノシド、2−メチル−アデニンアラビノシド、2−クロル−ヒポキサンチンアラビノシド、チオグアニンアラビノシド、2,6−ジアミノプリンアラビノシド、シトシンアラビノシド、グアニンアラビノシド、チミンアラビノシド、エノシタビン、ジェムシタビン、アジドチミジン、イドクスウリジン、ジデオキシアデノシン、ジデオキシイノシン、ジデオキシシチジン、ジデヒドロデオキシチミジン、チアジデオキシシチジン、ソリブジン、5−メチルウリジン、ビラゾール、チオイノシン、テガフール、ドキシフルリジン、ブレディニン、ネブラリン、アロプリノールウラシル、5−フルオロウラシル、2'−アミノウリジン、2'−アミノアデノシン、2'−アミノグアノシン、2−クロル−2'−アミノイノシンなどが挙げられる。
【0030】
本発明におけるヌクレオシドホスホリラーゼとは、リン酸存在下でヌクレオシド化合物のN−グリコシド結合を分解する酵素の総称であり、本発明においては逆反応を利用することができる。反応に使用する酵素は、相当するペントース−1−リン酸と核酸塩基または核酸塩基アナログから目的とするヌクレオシド化合物を生成しうる活性を有していればいかなる種類及び起源のものでもかまわない。該酵素はプリン型とピリミジン型に大別されが、公知なものとしては例えば、プリン型としてプリンヌクレオシドホスホリラーゼ(EC2.4.2.1)、グアノシンホスホリラーゼ(EC2.4.2.15)、ピリミジン型としてピリミジンヌクレオシドホスホリラーゼ(EC2.4.2.2)、ウリジンホスホリラーゼ(EC2.4.2.3)、チミジンホスホリラーゼ(EC2.4.2.4)、デオキシウリジンホスホリラーゼ(EC2.4.2.23)などが挙げられる。
【0031】
本発明におけるヌクレオシドホスホリラーゼ活性を有する微生物とは、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ(EC2.4.2.1)、グアノシンホスホリラーゼ(EC2.4.2.15)、ピリミジンヌクレオシドホスホリラーゼ(EC2.4.2.2)、ウリジンホスホリラーゼ(EC2.4.2.3)、チミジンホスホリラーゼ(EC2.4.2.4)、デオキシウリジンホスホリラーゼ(EC2.4.2.23)からなる群から選択される一種類以上のヌクレオシドホスホリラーゼを発現している微生物であれば特に限定はされない。
【0032】
このような微生物の具体例としては、ノカルディア(Nocardia)属、ミクロバクテリウム(Microbacterium)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、ブレビバクテリウム属(Brevibacterium)属、セルロモナス(Cellulomonas)属、フラボバクテリウム(Flabobacterium)属、クルイヘラ(Kluyvere)属、ミコバクテリウム(Micobacterium)属、ヘモフィラス(Haemophilus)属、ミコプラナ(Micoplana)属、プロタミノバクター(Protaminobacter)属、キャンディダ(Candida)属、サッカロマイセス(Saccharomyces)属、バチルス(Bacillus)属、好熱性のバチルス属、シュードモナス(Pseudomonas)属、ミクロコッカス(Micrococcus)属、ハフニア(Hafnia)属、プロテウス(Proteus)属、ビブリオ(Vibrio)属、スタフィロコッカス(Staphyrococcus)属、プロピオニバクテリウム(Propionibacterium)属、ザルチナ(Sartina)属、プラノコッカス(Planococcus)属、エシェリシア(Escherichia)属、クルチア(Kurthia)属、ロドコッッカス(Rhodococcus)属、アシネトバクター(Acinetobacter)属、キサントバクター(Xanthobacter)属、ストレプトマイセス(Streptomyces)属、リゾビウム(Rhizobium)属、サルモネラ(Salmonella)属、クレブシエラ(Klebsiella)属、エンテロバクター(Enterobacter)属、エルウィニア(Erwinia)属、エアロモナス(Aeromonas)属、シトロバクター(Citrobacter)属、アクロモバクター(Achromobacter)属、アグロバクテリウム(Agrobacterium)属、アースロバクター属(Arthrobacter)属またはシュードノカルディア(Pseudonocardia)属に含まれる微生物株を好適な例として挙げることができる。
【0033】
近年の分子生物学および遺伝子工学の進歩により、上述の微生物株のヌクレオシドホスホリラーゼの分子生物学的な性質やアミノ酸配列等を解析することにより、該蛋白質の遺伝子を該微生物株より取得し、該遺伝子および発現に必要な制御領域が挿入された組換えプラスミドを構築し、これを任意の宿主に導入し、該蛋白質を発現させた遺伝子組換え菌を作出することが可能となり、かつ、比較的容易にもなった。かかる技術水準に鑑み、このようなヌクレオシドホスホリラーゼの遺伝子を任意の宿主に導入した遺伝子組換え菌も本発明のヌクレオシドホスホリラーゼを発現している微生物に包含されるものとする。
【0034】
ここでいう発現に必要な制御領域とは、プロモーター配列(転写を制御するオペレーター配列を含む)・リボゾーム結合配列(SD配列)・転写終結配列等を示している。プロモーター配列の具体例としては、大腸菌由来のトリプトファンオペロンのtrpプロモーター・ラクトースオペロンのlacプロモーター・ラムダファージ由来のPLプロモーター及びPRプロモーターや、枯草菌由来のグルコン酸合成酵素プロモーター(gnt)・アルカリプロテアーゼプロモーター(apr)・中性プロテアーゼプロモーター(npr)・α−アミラーゼプロモーター(amy)等が挙げられる。また、tacプロモーターのように独自に改変・設計された配列も利用できる。リボゾーム結合配列としては、大腸菌由来または枯草菌由来の配列が挙げられるが、大腸菌や枯草菌等の所望の宿主内で機能する配列であれば特に限定されるものではない。たとえば、16SリボゾームRNAの3'末端領域に相補的な配列が4塩基以上連続したコンセンサス配列をDNA合成により作成してこれを利用してもよい。転写終結配列は必ずしも必要ではないが、ρ因子非依存性のもの、例えばリポプロテインターミネーター・trpオペロンターミネーター等が利用できる。これら制御領域の組換えプラスミド上での配列順序は、5'末端側上流からプロモーター配列、リボゾーム結合配列、ヌクレオシドホスホリラーゼをコードする遺伝子、転写終結配列の順に並ぶことが望ましい。
【0035】
ここでいうプラスミドの具体例としては、大腸菌中での自律複製可能な領域を有しているpBR322、pUC18、Bluescript II SK(+)、pKK223−3、pSC101や、枯草菌中での自律複製可能な領域を有しているpUB110、pTZ4、pC194、ρ11、φ1、φ105等をベクターとして利用することができる。また、2種類以上の宿主内での自律複製が可能なプラスミドの例として、pHV14、TRp7、YEp7及びpBS7をベクターとして利用することができる。
【0036】
ここでいう任意の宿主には、後述の実施例のように大腸菌(Escherichia coli)が代表例として挙げられるが、とくに大腸菌に限定されるのものではなく枯草菌(Bacillus subtilis)等のバチルス属菌、酵母や放線菌等の他の微生物菌株も含まれる。
【0037】
本発明におけるヌクレオシドホスホリラーゼまたは、該酵素活性を有する微生物としては市販の酵素、該酵素活性を有する微生物菌体、及び菌体処理物またはそれらの固定化物などが使用できる。菌体処理物とは、例えばアセトン乾燥菌体や機械的破壊、超音波破砕、凍結融解処理、加圧減圧処理、浸透圧処理、自己消化、細胞壁分解処理、界面活性剤処理などにより調製した菌体破砕物などであり、また、必要に応じて硫安沈殿やアセトン沈殿、カラムクロマトグラフィーにより精製を重ねたものを用いても良い。
【0038】
本発明において、リン酸イオンと難水溶性の塩を形成しうる金属カチオンとは、反応において副生したリン酸イオンと難水溶性の塩を形成し、反応液中に沈殿しうるものであれば限定されない。そのようなものとして、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、バリウム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、銀、モリブデン、鉛、亜鉛、リチウムなどの金属カチオンが挙げられる。それらのうち工業的に汎用性や安全性が高く、反応に影響を与えない金属塩が特に好ましく、そのようなものの例としてマグネシウム、カルシウムイオン、バリウムイオン、または、アルミニウムイオンが挙げられる。金属カチオンは、本発明の効果を損なわない範囲内で2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
本発明において、リン酸イオンと難水溶性の塩を形成しうる金属カチオンは、リン酸と難水溶性の塩を形成しうる金属カチオンを、塩素イオン、硝酸イオン、炭酸イオン、硫酸イオン、酢酸イオン、または、水酸イオンの中から選ばれる1種類以上のアニオンとの金属塩として反応液中に添加することができる。具体的には、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、酢酸カルシウム、塩化バリウム、硝酸バリウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、酢酸バリウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、炭酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸リチウム、水酸化リチウム、水酸化マグネシウムなどが例示される。
【0040】
本発明における金属カチオンは、ペントース−1−リン酸の塩として反応液中に存在させてもよい。具体的には、リボース−1−リン酸・カルシウム塩、2−デオキシリボース−1−リン酸・カルシウム塩、2,3−ジデオキシリボース−1−リン酸・カルシウム塩、アラビノース−1−リン酸・カルシム塩、リボース−1−リン酸・バリウム塩、2−デオキシリボース−1−リン酸・バリウム塩、2,3−ジデオキシリボース−1−リン酸・バリウム塩、アラビノース−1−リン酸・バリウム塩、リボース−1−リン酸・アルミニウム塩、2−デオキシリボース−1−リン酸・アルミニウム塩、2,3−ジデオキシリボース−1−リン酸・アルミニウム塩、アラビノース−1−リン酸・アルミニウム塩、などが挙げられる。
【0041】
リン酸イオンと難水溶性の塩を形成しうる金属カチオンの塩を核酸塩基又は核酸塩基アナログの水溶液中に含有させて反応媒体中へ添加する場合には、水溶液中の金属カチオンの添加量は、核酸塩基または核酸塩基アナログに対し0.5〜20倍モル量、好ましくは1〜4倍モル量である。
【0042】
金属カチオンの塩を、核酸塩基又は核酸塩基アナログの水溶液に含有させて反応媒体中へ添加する場合には、当該水溶液を反応前に一括で反応媒体中に添加してもよいし、当該水溶液を逐次的に反応媒体へ添加して、反応させてもよい。ここにおいて、逐次的に添加とは、核酸塩基又は核酸塩基アナログを金属カチオンの塩の水溶液に溶解または懸濁して、2以上に分割または1分間〜24時間、好ましくは30分間〜24時間かけて連続して反応系に加えることを示す。
【0043】
なお、反応に必要な成分を一括して混合した場合に、その使用量によっては、反応液の固化などが生じる場合があり、このような場合には、反応開始後に、(1)ペントース−1−リン酸、(2)核酸塩基または核酸塩基アナログ及び(3)金属カチオンから選択した少なくとも1種の成分を反応途中の水性反応媒体中に添加することでかかる固化などの問題を回避することができる。ここで反応開始とは、ヌクレオシドホスホリラーゼ活性の存在下、ペントース−1−リン酸および核酸塩基または核酸塩基アナログの添加されるべき量の少なくとも一部が添加された状態をいう。
【0044】
なお、反応開始後に添加する成分は上記のように1回に一括して添加する方法、2回以上に分けた回分法または連続法、あるいは回分法と連続法の組合せからなる添加方法で添加することができる。反応開始後に添加する成分が複数あるときは、上記の3成分から選択された少なくとも1種の成分の少なくとも1種について分割して添加する方法を採用することができる。すなわち、反応開始後に添加する成分が複数のときには、各成分ごとに添加方法を選択できる。
【0045】
金属カチオンの塩の水溶液を、核酸塩基または核酸塩基アナログと混合して用いる場合には、金属カチオンの塩の水溶液の使用量は金属カチオンが核酸塩基又は核酸塩基アナログに対し0.5〜20倍モル量、好ましくは1〜4倍モル量となる量である。
【0046】
リン酸と難水溶性の塩を形成する金属カチオンの塩のうち特にそれ自体水に難水溶性であるものは、反応開始前にその反応終了までに添加される量を水性反応媒体に添加することが可能であり、且つ反応液のpHを調整する必要がない場合があるため、本発明において使用される金属カチオンの塩として適当である。そのような金属カチオンの塩の代表的なものとして各種金属カチオンの水酸化合物、特に水酸化マグネシウムが例示できる。
【0047】
本発明の方法に使用される水性反応媒体は、水を主体として構成される反応媒体で、本発明で目的とする酵素活性を利用した反応が進行し、金属カチオンを添加する効果が得られるようなものであればよい。そのような水性反応媒体としては、水、または水に水溶性の有機溶剤を添加した水性反応媒体を挙げることができる。この有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール等の低級アルコール、アセトン、ジメチルスルホキシド及びそれらの混合物などを例示できる。溶媒の使用量に特に制限はなく反応が良好に進行する程度使用すればよいが、水に対する水溶性の有機溶媒の量は、好ましくは、0.1〜70重量%の範囲とすることができる。更に、反応の安定性を確保するために、水性反応媒体を用いた反応液は緩衝液として調製することもできる。この緩衝液としては、本発明にかかる酵素反応用として利用できる公知の緩衝液を用いることができる。
【0048】
本発明におけるヌクレオシド化合物の合成反応は、目的とするヌクレオシド化合物、基質であるペントース−1−リン酸と核酸塩基、反応触媒であるヌクレオシドホスホリラーゼまたは該酵素活性を有する微生物、そしてリン酸を反応系より除外させるための金属塩の種類とその特性により、適切なpHや温度などの反応条件を選べばよいが、通常はpH5〜11、好ましくはpH7.5〜10.0、より好ましくは8.0〜10の範囲であり、温度は氷温〜80℃、好ましくは10〜60℃の範囲で行うことができる。pHに関して、その管理幅を外れた場合、目的物や基質の安定性、酵素活性の低下、リン酸との難水溶性塩の未形成などが原因で反応転化率の低下を招く可能性がある。反応途中、pHの変化が生じるようであれば必要に応じて塩酸、硫酸などの酸や水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリを適時添加すればよい。もちろん、金属カチオンの塩として難水溶性のものとりわけ金属カチオンの水酸化物を使用すれば反応液のpHを調整する必要はない場合がある。
【0049】
反応に使用するペントース−1−リン酸と核酸塩基の濃度は0.1〜1000mM程度が適当であり、両者のモル比は添加する核酸塩基の比率をペントース−1−リン酸またはその塩に対して0.1〜10倍モル量で行える。反応転化率を考えれば0.95倍モル量以下が好ましい。
【0050】
反応時間は原料、水性溶媒の種類、反応温度によって異なるが、1分から78時間、好ましくは30分から24時間である。
【0051】
また、添加するリン酸と難水溶性の塩を形成し得る金属塩は、反応に使用するペントース−1−リン酸に対して0.1〜10倍モル量、より好ましくは0.5〜5倍モル量添加するのが良い。なお、高濃度の反応においては、基質の核酸塩基や生成物のヌクレオシド化合物が溶解しきれずに反応液中に存在する場合もあるが、このような場合にも本発明は適用される。
【0052】
本発明におけるペントース−1−リン酸またはその塩、リン酸と難水溶性の塩を形成しうる金属カチオンまたはその塩、核酸塩基の中から選ばれる1種類以上を反応液が固化しないように添加する方法は、代表例として以下のようなものが挙げられる。尚、本発明は、以下の例に限られたものではなく、反応液が固化しなければペントース−1−リン酸またはその塩、リン酸と難水溶性の塩を形成しうる金属カチオンまたはその塩、核酸塩基の中から選ばれる1種類以上の添加する時期や分割する回数は特に制限されないものとする。
【0053】
1.ペントース−1−リン酸またはその塩と、核酸塩基または核酸塩基アナログを一括に仕込み、反応を開始させ、適当な濃度までヌクレオシド化合物を蓄積させた後に、リン酸と難水溶性の塩を形成しうる金属カチオンまたはその塩を一括添加する方法。この場合のヌクレオシド化合物の蓄積濃度とは、好ましくは10mM以上、より好ましくは30mM以上である。
【0054】
2.ペントース−1−リン酸またはその塩と、核酸塩基または核酸塩基アナログを一括に仕込み、反応を開始させた後にヌクレオシド化合物の蓄積濃度にあわせて段階的または連続的にリン酸と難水溶性の塩を形成しうる金属カチオンまたはその塩を添加する方法。この場合、金属カチオンの添加は、ヌクレオシド化合物が好ましくは10mM以上より好ましくは30mM以上蓄積した時に開始すればよい。
【0055】
3.ペントース−1−リン酸またはその塩と、リン酸と難水溶性の塩を形成しうる金属カチオンまたはその塩を一括添加したのち、反応液が固化しないように核酸塩基または核酸塩基アナログを段階的または連続的に添加する方法。この場合、初発の核酸塩基または核酸塩基アナログの添加量は、好ましくは30mM以下、より好ましくは10mM以下である。
【0056】
4.核酸塩基または核酸塩基アナログと、リン酸と難水溶性の塩を形成しうる金属カチオンまたはその塩を一括添加したのち、反応液が固化しないようにペントース−1−リン酸またはその塩を段階的または連続的に添加する方法。この場合、初発のペントース−1−リン酸またはその塩の添加量は、好ましくは30mM以下、より好ましくは10mM以下である。
【0057】
5.ペントース−1−リン酸またはその塩、リン酸と難水溶性の塩を形成しうる金属カチオンまたはその塩、核酸塩基または核酸塩基アナログを酵素溶液中に段階的または連続的に添加する方法。この場合、反応開始時点のペントース−1−リン酸またはその塩、あるいは核酸塩基または核酸塩基アナログの添加量は、好ましくは30mM以下、より好ましくは10mM以下である。
【0058】
このようにして製造したヌクレオシド化合物を反応液から単離するには、濃縮、晶析、溶解、電気透析処理、イオン交換樹脂や活性炭による吸脱着処理などの常法が適用できる。
【実施例】
【0059】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例等によって何等制限されるものではない。
【0060】
(分析法)
生成したヌクレオシド化合物はすべて高速液体クロマトグラフィーにより定量した。分析条件は以下による。
カラム;YMC−Pack ODS−A312 150×6.0mmI.D.(YMC Co.,Ltd)
カラム温度;40℃
ポンプ流速;0.75ml/min
検出;UV260nm、
溶離液;10mMリン酸:アセトニトリル=95:5(V/V)
実施例1
2.5mMの2´−デオキシリボース1−リン酸ジ(モノシクロヘキシルアンモニウム)塩(SIGMA製)、2.5mMのアデニン(和光純薬製、特級)、12units/mlのプリンヌクレオシドホスホリラーゼ(フナコシ製)、10mMの塩化カルシウム(和光純薬、特級)、10mMトリス塩酸緩衝液(pH7.4)から成る反応液1mlを30℃、24時間反応させた。反応終了後、白色の沈殿物が生成していた。反応液を希釈した後分析したところ、2.40mMのデオキシアデノシンが生成していた。その時の反応収率は96.0%であった。
【0061】
比較例1
塩化カルシウムを添加しないこと以外はすべて実施例1と同じ手順と条件で反応を行った。反応終了後、沈殿物は生成しなかった。反応液を希釈した後分析したところ、2.01mMのデオキシアデノシンが生成していた。その時の反応収率は80.4%であった。
【0062】
実施例2
塩化カルシウム濃度を2.5mMにする以外はすべて実施例1と同じ手順と条件で反応を行った。反応終了後、白色の沈殿物が生成していた。反応液を希釈した後分析したところ、2.27mMのデオキシアデノシンが生成していた。その時の反応収率は90.8%であった。
【0063】
実施例3
塩化カルシウムの代わりに塩化アルミニウムを添加する以外はすべて実施例1と同じ手順と条件で反応を行った。反応終了後、白色の沈殿物が生成していた。反応液を希釈した後分析したところ、2.31mMのデオキシアデノシンが生成していた。その時の反応収率は93.3%であった。
【0064】
実施例4
塩化カルシウムの代わりに塩化バリウムを添加する以外はすべて実施例1と同じ手順と条件で反応を行った。反応終了後、白色の沈殿物が生成していた。反応液を希釈した後分析したところ、2.31mMのデオキシアデノシンが生成していた。その時の反応収率は92.4%であった。
【0065】
実施例5
塩化バリウム濃度を2.5mMにする以外はすべて実施例4と同じ手順と条件で反応を行った。反応終了後、白色の沈殿物が生成していた。反応液を希釈した後分析したところ、2.27mMのデオキシアデノシンが生成していた。その時の反応収率は90.2%であった。
【0066】
実施例6
Journal of Biologcal Chemistry、Vol.184、pp449−459、1950記載の方法により2−デオキシリボース1−リン酸バリウム塩を調製した。2.5mMの2−デオキシリボース−1−リン酸バリウム塩、2.5mMのアデニン(和光純薬製、特級)、12units/mlのプリンヌクレオシドホスホリラーゼ(フナコシ製)、10mMの塩化カルシウム(和光純薬、特級)、10mMトリス塩酸緩衝液(pH7.4)から成る反応液1mlを30℃、24時間反応させた。反応終了後、白色の沈殿物が生成していた。反応液を希釈した後分析したところ、2.40mMのデオキシアデノシンが生成していた。その時の反応収率は91.1%であった。
【0067】
実施例7
2.5mMの2−デオキシリボース−1−リン酸ジ(モノシクロヘキシルアンモニウム)塩(SIGMA製)、2.5mMのチミン(和光純薬製、特級)、12units/mlのチミジンホスホリラーゼ(SIGMA製)、10mMの硝酸カルシウム(和光純薬、特級)、10mMトリス塩酸緩衝液(pH7.4)から成る反応液1mlを30℃、24時間反応させた。反応終了後、白色の沈殿物が生成していた。反応液を希釈した後分析したところ、2.28mMのチミジンが生成していた。その時の反応収率は91.2%であった。
【0068】
比較例2
硝酸カルシウムを添加しないこと以外はすべて実施例7と同じ手順と条件で反応を行った。反応終了後、沈殿物は生成しなかった。反応液を希釈した後分析したところ、1.88mMのチミジンが生成していた。その時の反応収率は75.2%であった。
【0069】
実施例8
2.5mMのリボース−1−リン酸シクロヘキシルアンモニウム塩(SIGMA製)、2.5mMの2,6−ジアミノプリン(アルドリッチ製)、12units/mlのプリンヌクレオシドホスホリラーゼ(フナコシ製)、10mMの塩化カルシウム(和光純薬、特級)、10mMトリス塩酸緩衝液(pH7.4)から成る反応液1mlを30℃、24時間反応させた。反応終了後、白色の沈殿物が生成していた。反応液を希釈した後分析したところ、1.94mMの2,6−ジアミノプリンリボシドが生成していた。その時の反応収率は77.6%であった。
【0070】
比較例3
塩化カルシウムを添加しないこと以外はすべて実施例8と同じ手順と条件で反応を行った。反応終了後、沈殿物は生成しなかった。反応液を希釈した後分析したところ、1.54mMの2,6−ジアミノプリンリボシドが生成していた。その時の反応収率は61.6%であった。
【0071】
実施例9
大腸菌染色体DNAを次のようにして調製した。エシェリヒア・コリK−12/XL−10株(Stratagene社)を50mlのLB培地に接種し、37℃で一夜培養した後集菌し、リゾチーム1mg/mlを含む溶菌液で溶菌した。溶菌液をフェノール処理した後、通常の方法によりエタノール沈殿によりDNAを沈殿させた。生じたDNAの沈殿は、ガラス棒に巻き付けて回収した後、洗浄し、PCRに用いた。
【0072】
PCR用のプライマーには、エシェリヒア・コリの既知のdeoD遺伝子の塩基配列(GenBank accession No. AE000508(コード領域は塩基番号11531-12250)に基づいて設計した配列番号1及び2に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチド(北海道システム・サイエンス株式会社)に委託して合成した)を用いた。
配列番号1:
gtgaattcac aaaaaggata aaacaatggc
配列番号2:
tcgaagcttg cgaaacacaa ttactcttt
これらのプライマーの5'末端付近及び3'末端付近には、それぞれEcoRI及びHindIIIの制限酵素認識配列を有する。
【0073】
制限酵素HindIIIで完全に消化した前記大腸菌染色体DNA 6ng/μl及びプライマー各3μMを含む0.1mlのPCR反応液を用いて、変性:96℃、1分間、アニーリング:55℃、1分間、伸長反応:74℃、1分間からなる反応サイクルを、30サイクルの条件でPCRを行なった。
【0074】
上記反応産物及びプラスミドpUC18(宝酒造(株))を、EcoRI及びHindIIIで消化し、ライゲーション・ハイ(東洋紡(株))を用いて連結した後、得られた組換えプラスミドを用いて、エシェリヒア・コリDH5αを形質転換した。形質転換株を、アンピシリン(Am)50μg/ml及びX−Gal(5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−ガラクトシド)を含むLB寒天培地で培養し、Am耐性で且つ白色コロニーとなった形質転換株を得た。
【0075】
このようにして得られた形質転換株よりプラスミドを抽出し、目的のDNA断片が挿入されたプラスミドを、pUC−PNP73と命名した。こうして得られた形質転換体を、エシェリヒア・コリ MT−10905と名づけた。
【0076】
エシェリヒア・コリ MT−10905株をAm50μg/mlを含むLB培地100mLで37℃・1晩振とう培養した。得られた培養液を13000rpmで10min遠心分離し、菌体を集めた。菌体を10mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)10mLに懸濁し、超音波により破砕したものを酵素源として用いた。
【0077】
100mMの2´−デオキシリボース1−リン酸ジ(モノシクロヘキシルアンモニウム)塩(SIGMA製)、10〜80mMのアデニン(和光純薬製、特級)、100mMのトリス塩酸緩衝液(pH8.0)、20units/mlの上述のプリンヌクレオシドホスホリラーゼからなる反応液1.0mlを50℃で20時間反応させた。反応開始8時間後に150mMとなるように塩化カルシウムを添加した。結果を表1に示した。
【0078】
【表1】


【0079】
比較例4
酵素源の添加と同時に塩化カルシウムを添加し、実施例9と同様に反応を行った。結果を表2に示した。
【0080】
【表2】


【0081】
比較例5
緩衝液を添加しないで80mMのアデニンの反応を実施例9と同様に行った。結果を表3に示した。
【0082】
【表3】


【0083】
実施例10
100mMの2´−デオキシリボース1−リン酸ジ(モノシクロヘキシルアンモニウム)塩(SIGMA製)、10〜80mMのチミン(和光純薬製、特級)、100mMのトリス塩酸緩衝液(pH8.0)、20units/mlのチミジンホスホリラーゼ(SIGMA製)からなる反応液1.0mlを50℃で20時間反応させた。反応開始8時間後に150mMとなるように塩化カルシウムを添加した。結果を表4に示した。
【0084】
【表4】


【0085】
比較例6
酵素源の添加と同時に塩化カルシウムを添加し、実施例10と同様に反応を行った。結果を表5に示した。
【0086】
【表5】


【0087】
比較例7
緩衝液を添加しないで80mMのチミンの反応を実施例10と同様に行った。結果を表6に示した。
【0088】
【表6】


【0089】
実施例11
200mMのチミン(和光純薬製、特級)、200mMのトリス塩酸緩衝液(pH8.0)、20units/mlのチミジンホスホリラーゼ(SIGMA製)からなる反応液0.5mlを50℃に保温し、2´−デオキシリボース1−リン酸ジ(モノシクロヘキシルアンモニウム)塩(SIGMA製)の200mM溶液を酵素液添加後1時間おきに0.1mLづつ5回に分けて添加した。その結果、反応液は液状のままであった。
【0090】
比較例8
トリス塩酸緩衝液を存在させないで酵素源の添加と同時に200mMの2´−デオキシリボース1−リン酸ジ(モノシクロヘキシルアンモニウム)塩(SIGMA製)0.5mLを添加し、実施例11と同様に反応を行った。その結果、反応液は固化した。
【0091】
実施例12
200mMの2´−デオキシリボース1−リン酸ジ(モノシクロヘキシルアンモニウム)塩(SIGMA製)、200mMのトリス塩酸緩衝液(pH8.0)、20units/mlのチミジンホスホリラーゼ(SIGMA製)、150mMの塩化カルシウムからなる反応液0.5mlを50℃に保温し、200mMのチミン(和光純薬製、特級)溶液を1時間おきに0.1mLづつ5回に分けて添加した。その結果、反応液は液状のままであった。
【0092】
比較例9
トリス塩酸緩衝液を存在させないで酵素源の添加と同時に200mMのチミン溶液0.5mLを添加し、実施例12と同様に反応を行った。その結果、反応液は固化した。
【0093】
以降の実施例等で生成したヌクレオシド化合物はすべて以下の分析条件で高速液体クロマトグラフィーにより定量した。
カラム:YMC−Pack ODS−A514 300×6.0mmI.D.(YMC Co.,Ltd)
カラム温度:40℃
ポンプ流速:1ml/min
検出波長:UV254nm、
溶離液:20mmolの酢酸アンモニウム水溶液(2700ml)にりん酸を加えpH3.5に調整し、メタノール(300ml)を加え、混合、脱気する。
内標準物質:ニコチン酸
参考例1
2−デオキシリボース1−リン酸ジ(アンモニウム)塩の合成
2−デオキシリボース1−リン酸ジ(モノシクロヘキシルアンモニウム)塩(1g、2.42mmol、SIGMA製)をメタノール(10g)に懸濁し、アンモニアガス(0.62g、36.5mmol)を吹き込み、50℃で2時間攪拌する。得られた反応マスを30℃でろ過後、メタノール(5g)で2回洗浄、乾燥し、所望の2'−デオキシリボース1−リン酸ジ(アンモニウム)塩(0.57g)を収率95%で得た。
1H-NMR (D2O, 270 MHz) d 5.56 (s, 1 H), 4.03 (m, 2 H), 3.52 (dd, J = 3.3,12.2 Hz, 1 H), 3.41 (dd, J = 5.3, 12.2 Hz, 1 H), 2.17 (m, 1 H) , 1.87 (d, J = 13.9 Hz, 1 H)、 MS (APCI) m/z 213 (M-H)
実施例13
2'−デオキシグアノシンの合成(1)
2−デオキシリボース1−リン酸ジ(モノシクロヘキシルアンモニウム)塩(3.22g、7.72mmol、SIGMA製)を水(47.1g)に溶解し、実施例9で得た酵素液(0.1ml)を加えた反応液に、4.02wt%の水酸化ナトリウム水溶液(16.45g、16.5mmol)にグアニン(1g、6.62mmol)を溶解した液を、50℃で1時間かけて滴下した。反応マスを同温で2時間反応後、反応マスをHPLCで分析した所、所望の2'−デオキシグアノシンを反応収率80%で得た。
【0094】
実施例14
2'−デオキシグアノシンの合成(2)
参考例1で合成した2−デオキシリボース1−リン酸ジ(アンモニウム)塩(2.0g、7.72mmol)を水(47.1g)に溶解し、実施例9で得た酵素液(0.1ml)を加えた反応液に、4.02wt%の水酸化ナトリウム水溶液(16.45g、16.5mmol)にグアニン(1g、6.62mmol)を溶解した液を、50℃で1時間かけて滴下した。反応マスを同温で2時間反応後、反応マスをHPLCで分析した所、所望の2'−デオキシグアノシンを反応収率81%で得た。
【0095】
実施例15
2'−デオキシグアノシンの合成(3)
参考例1で合成した2−デオキシリボース1−リン酸ジ(アンモニウム)塩(2.0g、7.72mmol)を水(47.1g)に溶解し、実施例9で得た酵素液(0.1ml)を加えた反応液に、5.6wt%の水酸化カリウム水溶液(16.5g、16.5mmol)にグアニン(1g、6.62mmol)を溶解した液を、50℃で1時間かけて滴下した。反応マスを同温で2時間反応後、反応マスをHPLCで分析した所、所望の2'−デオキシグアノシンを反応収率79%で得た。
【0096】
実施例16
2'−デオキシグアノシンの合成(4)
参考例1で合成した2−デオキシリボース1−リン酸ジ(アンモニウム)塩(2.0g、7.72mmol)を水(47.1g)に溶解し、実施例9で得た酵素液(0.1ml)を加えた反応液に、2.4wt%の水酸化リチウム水溶液(16.5g、16.5mmol)にグアニン(1g、6.62mmol)を溶解した液を、50℃で1時間かけて滴下した。反応マスを同温で2時間反応後、反応マスをHPLCで分析した所、所望の2'−デオキシグアノシンを反応収率96%で得た。
【0097】
実施例17
2'−デオキシアデノシンの合成
参考例1で合成した2−デオキシリボース1−リン酸ジ(アンモニウム)塩(2.0g、7.72mmol)を水(30g)に溶解し、実施例9で得た酵素液(0.05ml)を加えた反応液に、2.4wt%の水酸化リチウム水溶液(16.5g、16.5mmol)にアデニン(0.89g、6.62mmol)を溶解した液を、50℃で1時間かけて滴下した。反応マスを同温で2時間反応後、反応マスをHPLCで分析した所、所望の2'−デオキシアデノシンを反応収率98%で得た。
【0098】
実施例18
2´−デオキシアデノシンの合成
純水(13g)に2−デオキシリボース1−リン酸2アンモニウム塩(1.67g、6.7mmol)、アデニン(0.87g、6.4mmol)と水酸化マグネシウム(0.59g、10.1mmol)を加えた。該マスに、0.05mlの酵素液を加え、45℃、3時間攪拌下で反応させた。その時の反応収率は98%であった。得られた反応マスを70℃に加熱し、2´−デオキシアデノシンを溶解した後、反応で生成した不溶なリン酸マグネシウムを5Aろ紙を用いろ過、水(5g)で洗浄し、澄明な濾過液(18.2g)を反応マスから99%の収率で得た。この濾過速度は1000kg/m3/hrであり、濾過ケーキへの2´−デオキシアデノシンのロス率は1%であった。この様にして得られた濾過液を5℃で2時間晶析し、析出した結晶を濾過、水(5g)で洗浄、減圧乾燥し、所望の2´−デオキシアデノシン(1.6g)を収率93%で得た。
【0099】
比較例10
2´−デオキシアデノシンの合成
純水(13g)に2−デオキシリボース1−リン酸2アンモニウム塩(1.67g、6.7mmol)、アデニン(0.87g、6.4mmol)および0.05mlの酵素液を懸濁した液に、45℃で塩化カルシウム1水和物(1.48g)を溶かした水溶液(3.7g)および4%水酸化ナトリウム水溶液(20.1g)を同時に2時間かけて滴下する。滴下終了後、反応マスを同温で3時間反応させた。その時の反応収率は97%であった。得られた反応マスを70℃に加熱し、2´−デオキシアデノシンを溶解した後、反応で生成した不溶なリン酸カルシウムを5Aろ紙を用いろ過、水(5g)で洗浄し、澄明な濾過液(28.2g)を反応マスから85%の収率で得た。この濾過速度は50kg/m3/hrであり、濾過ケーキへの2´−デオキシアデノシンのロス率は15%であった。この様にして得られた濾過液を5℃で2時間晶析し、析出した結晶を濾過、水(5g)で洗浄、減圧乾燥し、所望の2´−デオキシアデノシン(1.3g)を収率75%で得た。
【0100】
実施例19
2´−デオキシアデノシンの合成
純水(13g)に2−デオキシリボース1−リン酸2アンモニウム塩(1.67g、6.7mmol)、アデニン(0.87g、6.4mmol)と水酸化マグネシウム(0.59g、10.1mmol)を加えた。該マスに、実施例9で得た酵素液(0.05ml)を加え、45℃、3時間攪拌下で反応させた。3時間後に反応マスをHPLCで分析した所、所望の2´−デオキシアデノシンを反応収率98%で得た。この時の反応中のpHは8〜10を示した。
【0101】
実施例20
2´−デオキシグアノシンの合成
純水(15g)に2−デオキシリボース1−リン酸2アンモニウム塩(1.67g、6.7mmol)、グアニン(0.92g、6.1mmol)と水酸化マグネシウム(0.59g、10.1mmol)を加えた。該マスに、実施例9で得た酵素液(0.2ml)を加え、50℃、6時間攪拌下で反応させた。6時間後に反応マスをHPLCで分析した所、所望の2´−デオキシグアノシンを反応収率98%で得た。この時の反応中のpHは8〜10を示した。
実施例21
2´−デオキシアデノシンの合成
純水(13g)に2−デオキシリボース1−リン酸2アンモニウム塩(1.67g、6.7mmol)、アデニン(0.87g、6.4mmol)と水酸化マグネシウム(0.59g、10.1mmol)を加えた。該マスに、実施例9で得た酵素液(0.05ml)を加え、酢酸でpHを8.5に調整しながら、45℃、3時間攪拌下で反応させた。3時間後に反応マスをHPLCで分析した所、所望の2´−デオキシアデノシンを反応収率98%で得た。
【0102】
比較例11
2´−デオキシアデノシンの合成
純水(13g)に2−デオキシリボース1−リン酸2アンモニウム塩(1.67g、6.7mmol)、アデニン(0.87g、6.4mmol)と塩化マグネシウム6水塩(2.05g、10.1mmol)を加えた。該マスに、実施例9で得た酵素液(0.05ml)を加え、45℃、3時間攪拌下で反応させた。3時間後に反応マスをHPLCで分析した所、所望の2´−デオキシアデノシンを反応収率65%で得た。この時の反応中のpHは6〜7.5を示した。
【0103】
比較例12
2´−デオキシグアノシンの合成
純水(15g)に2−デオキシリボース1−リン酸2アンモニウム塩(1.67g、6.7mmol)、グアニン(0.92g、6.1mmol)と塩化マグネシウム6水塩(2.05g、10.1mmol)を加えた。該マスに、実施例9で得た酵素液(0.2ml)を加え、50℃、3時間攪拌下で反応させた。3時間後に反応マスをHPLCで分析した所、所望の2´−デオキシグアノシンを反応収率65%で得た。この時の反応中のpHは6〜7.5を示した。
【0104】
比較例13
2´−デオキシアデノシンの合成
実施例21と同様に、反応pHを酢酸またはアンモニア、NaOHを用いpHを調整しながら反応を行なった時の収率を下記の表7に示す。結果からpHが7.5未満でも10.5以上でも収率が低下する事がわかる。
【0105】
【表7】


【0106】
比較例14
2´−デオキシアデノシンの合成
実施例19、比較例11の反応方法で、反応pHをアンモニアを用い9.0に調整しながら、加える純水の量を変化させた時の反応収率の変化を下記の表8に示す。この表から、塩化物の塩では、生成する塩化アンモニウムの影響で反応濃度を低くしなければ収率が向上できない事がわかる。
【0107】
【表8】


【出願人】 【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
【出願日】 平成19年10月19日(2007.10.19)
【代理人】 【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫

【識別番号】100106138
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 政幸

【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭


【公開番号】 特開2008−29358(P2008−29358A)
【公開日】 平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願番号】 特願2007−272871(P2007−272871)