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【発明の名称】 5−アミノレブリン酸の製造方法
【発明者】 【氏名】舩田 茂行

【氏名】上田 康信

【氏名】田中 享

【氏名】西川 誠司

【要約】 【課題】5−アミノレブリン酸生産微生物による、好気条件下での、5−アミノレブリン酸の製造において、培養槽や培地にかかわらず、5−アミノレブリン酸を高収率で産生することができる酸素供給条件を設定するための指標を提供すること。

【構成】ロドバクター・スフェロイデス(Rhodobacter sphaeroides )又はその変異株に属する5−アミノレブリン酸生産微生物を、酸素移動容量係数kLa(h-1)を好気条件での微生物の呼吸速度qO2[(g-O2 consumed)・(g-dry cell)-1・h-1]で除した値が130〜500[(g-dry cell)・(g-O2 consumed)-1]である条件下で培養することを特徴とする5−アミノレブリン酸の製造法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロドバクター・スフェロイデス(Rhodobacter sphaeroides )又はその変異株に属する5−アミノレブリン酸生産微生物を、酸素移動容量係数kLa(h-1)を好気条件での微生物の呼吸速度qO2[(g-O2 consumed)・(g-dry cell)-1・h-1]で除した値が130〜500[(g-dry cell)・(g-O2 consumed)-1]である条件下で培養することを特徴とする5−アミノレブリン酸の製造法。
【請求項2】
酸素移動容量係数kLa(h-1)を好気条件での微生物の呼吸速度qO2[(g-O2 consumed)・(g-dry cell)-1・h-1]で除した値が130〜500 [(g-dry cell)・(g-O2 consumed)-1]となるように、培養液を攪拌するための攪拌機の回転数を設定することを特徴とする請求項1記載の5−アミノレブリン酸の製造法。
【請求項3】
酸素移動容量係数kLa(h-1)を好気条件での微生物の呼吸速度qO2[(g-O2 consumed)・(g-dry cell)-1・h-1]で除した値と回転数の関係を、微生物生育時の菌体濃度、溶存酸素濃度より求め、前記の値が130〜500 [(g-dry cell)・(g-O2 consumed)-1]となるように、培養液を攪拌するための攪拌機の回転数を設定することを特徴とする請求項2記載の5−アミノレブリン酸の製造法。
【請求項4】
kLa/qO2が150〜300[(g-dry cell)・(g-O2 consumed)-1]である条件下で培養することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の5−アミノレブリン酸の製造法。
【請求項5】
ロドバクター・スフェロイデス又はその変異株に属する5−アミノレブリン酸生産微生物がロドバクター・スフェロイデス CR-0072009と命名され、FERM BP-6320として寄託されたものである請求項1〜4のいずれか1項記載の5−アミノレブリン酸の製造法。
【請求項6】
培養が、レブリン酸又はグリシンを添加した培地で行われるものである請求項1〜5のいずれか1項記載の5−アミノレブリン酸の製造法。
【請求項7】
グリシンの添加量が1回あたり培地全量中の10〜200mMである請求項6記載の5−アミノレブリン酸の製造法。

【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、ロドバクター・スフェロイデス(Rhodobacter sphaeroides)又はその変異株に属する5−アミノレブリン酸生産微生物を用いて高効率で5−アミノレブリン酸を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
5−アミノレブリン酸は、テトラピロール化合物(ビタミンB12、ヘム、クロロフィルなど)を生合成する色素生合成経路の代謝中間体として広く生物圈に存在し、生体内で重要な役割を果たしている。5−アミノレブリン酸の生合成は、生体系中で、グリシンとスクシニルCoAから5−アミノレブリン酸合成酵素によって、又はグルタミン酸によって行われ、代謝は、5−アミノレブリン酸デヒドラターゼにより行われる。5−アミノレブリン酸は、除草剤、殺虫剤、植物成長調節剤、植物の光合成増強剤として優れ、また、人畜に対して毒性を示さず、分解性が高いため環境への残留性もないなどの優れた効果を示す(特許文献1〜2)。
【0003】
5−アミノレブリン酸の生産方法については、さまざまな化学合成法(例えば特許文献3〜4参照)のほか、微生物を用いる方法が検討されており、用いる微生物としては、プロピオニバクテリウム(Propionibacterium)属、メタノバクテリウム(Methanobacterium)属、メタノサルチナ(Methanosarcina)属などが提案されている(特許文献5等)。
【0004】
ロドバクター(Rhodobacter)属を用いる方法(特許文献6)は、これらの微生物を用いる方法に比べ生産量が多いものとして提案された。この方法で用いるロドバクター属は、著量な色素合成には光照射を必要とする光合成細菌であり、色素の前駆体である5−アミノレブリン酸の生産においても十分な光の照射が求められるが、光照射には高いコストが必要となる。この点、光照射を必要としない条件下での5−アミノレブリン酸製造を可能とするロドバクター属細菌変異株が取得された(特許文献7)。
【0005】
光照射を必要としない従属栄養条件下で微生物培養を行う場合、酸素はエネルギー産生のために必要不可欠となる。しかしながら、酸素は光合成細菌、特に紅色非硫黄細菌の色素合成を阻害し、更に5−アミノレブリン酸合成酵素も酸素によって不活性化されるともいわれる(非特許文献1)ように、過剰量の酸素は生産性向上に好ましくない。そこで、光非照射であっても、ロドバクター(Rhodobacter)属を培養して高収率で5−アミノレブリン酸を産生できる酸素制限条件として、培養液中の溶存酸素濃度を1ppm未満とする条件や、培養液中の酸化還元電位を-180〜50mVとする条件、菌呼吸速度を5×10-9からKrM-2×10-8〔mol of O2/ml・min・cell〕とする条件が見出された(特許文献8)。CR-0072009と命名され、FERM P-16217として寄託された株は、この酸素制限条件を緩和した条件下でも5−アミノレブリン酸を生産するものとして見出されたロドバクター・スフェロイデス(Rhodobacter sphaeroides)株である(特許文献9)。
【0006】
しかしながら、溶存酸素濃度は、0.1ppm以下の濃度を正確に測定することができず、溶存酸素濃度を酸素制限条件の指標とする方法は、0.1ppm未満を至適な生産条件とする5−アミノレブリン酸生産微生物に対しては、適用できなかった。
【0007】
また、培地の還元性又は酸化性によって至適な酸化還元電位が異なるため、酸化還元電位を指標とする方法では、生産時に使用する培地のロットごとに最適値の事前の把握が必要であり煩雑であった。
【0008】
さらに、溶存酸素濃度や酸化還元電位を指標とする場合、スケールアップ生産や未検討の新規培養槽を用いた生産を試みる際には、実際の生産段階で、溶存酸素濃度や酸化還元電位が好ましい値となるように撹拌機の回転数等を設定することが必要となるが、その制御は困難で、場合によっては設定操作中に酸素が供給過剰や供給不足となり、5−アミノレブリン酸生産能の失活が起こり、実装置の生産段階で行われる大量の貴重な試料が無駄になるなどの不便もあった。
【0009】
【特許文献1】特開昭61−502814号公報
【特許文献2】特開平2−138201号公報
【特許文献3】特開平2−76841号公報
【特許文献4】特開平2−261389号公報
【特許文献5】特開平5−184376号公報
【特許文献6】特開平6−141875号公報
【特許文献7】特開平6−153915号公報
【特許文献8】特開平8−168391号公報
【特許文献9】特開平11−42083号公報
【非特許文献1】蛋白質、核酸、酵素、Vol.15,No.3、195(1970)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って本発明は、実装置を用いた生産段階での条件検討や、培地のロットなどの事前の把握がなくとも、また、0.1ppm未満を至適な生産条件とする微生物を用いる場合であっても高い5−アミノレブリン酸生産効率を可能とする、ロドバクター・スフェロイデス(Rhodobacter sphaeroides)又はその変異株を用いた5−アミノレブリン酸の製造法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
斯かる実情に鑑み本発明者らは鋭意研究を行った結果、酸素移動容量係数kLa(h-1)を好気条件での微生物の呼吸速度qO2[(g-O2 consumed)・(g-dry cell)-1・h-1]で除した値が、高い5−アミノレブリン酸の生産効率の指標となることを見出し、また、この値が130〜500 [(g-dry cell)・(g-O2 consumed)-1]であるときに高い生産性が実現することを見出し、さらに、この値は培養槽のスケールによらないことを見出し、本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明は、ロドバクター・スフェロイデス(Rhodobacter sphaeroides )又はその変異株に属する5−アミノレブリン酸生産微生物を、酸素移動容量係数kLa(h-1)を好気条件での微生物の呼吸速度qO2[(g-O2 consumed)・(g-dry cell)-1・h-1]で除した値が130〜500 [(g-dry cell)・(g-O2 consumed)-1]である条件下で培養することを特徴とする5−アミノレブリン酸の製造法を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の製造法では、培養槽ごとに酸素制限条件を試行錯誤で設定する必要がないため、生産段階での試行錯誤によって微生物が失活することが起こらずに、スケールアップ生産等での条件設定を行うことができ、効率よく5−アミノレブリン酸を製造することができる。また、酸化還元電位のように培地の酸化還元雰囲気によるものではないため、あらゆる種類の培地に適用することが可能であり、また、低酸素領域を至適な生産条件とする5−アミノレブリン酸製造に対しても適用可能である。加えて、好適な培養条件の設定は、培養に適する撹拌機の回転数を、指標となる値(kLa/qO2)をもとに計算で決定することにより行うことができ簡便である。さらに、製造工程を微生物の生育段階と5−アミノレブリン酸の生産段階の2工程に分けた場合には、生産段階の培養条件は、生育段階で求める関係によって計算することができ、生産段階での無駄を防ぐことができる。逆に、生産段階(実製造培養中)に、回転数を最低2回変化させることで、好適な培養条件の計算をすることもでき、これは、実生産中においても至適回転数の制御が可能である点で優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の製造法において培養する微生物は、ロドバクター・スフェロイデス(Rhodobacter sphaeroides )又はその変異株に属する5−アミノレブリン酸生産微生物である。このうち、好気条件において又は天然成分を添加した複合培地中においても、できるだけ5−アミノレブリン酸の生産能の高い菌株が好ましく、そのような菌株としては、ロドバクター・スフェロイデス(Rhodobacter sphaeroides )CR-0072009と命名され、FERM BP-6320として寄託された菌株を例示することができる。
【0015】
本発明の製造法で行われる培養において、培養するための培地としては、該微生物が十分に増殖し得るものであればいずれをも用いることができるが、該培地中には資化し得る炭素源及び窒素源を適当含有せしめておくことが好ましい。炭素源としては、グルコース等の糖類、酢酸、リンゴ酸、乳酸、コハク酸等の酸類などを用いることができる。また、窒素源としては、硫安、塩安、リン安等のアンモニア態窒素化合物、硝酸ナトリウム等の硝酸態窒素化合物等の無機窒素源、尿素、ポリペプトン、酵母エキス等の有機窒素化合物などを用いることができる。
【0016】
更に、無機塩類等の微量成分、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、メチオニン、グリシン、セリン、トレオニン、システイン、グルタミン、アスパラギン、チロシン、リシン、アルギニン、ヒスチジン、アスパラギン酸、グルタミン酸等のアミノ酸;酵母エキス、乾燥酵母、ペプトン、肉エキス、麦芽エキス、コーンスティープリカー、カザミノ酸等の天然成分等を適宜添加することができる。
【0017】
また本発明の製造方法では、培地にグリシン又はレブリン酸を添加することが好ましい。グリシンの添加量は培地全量中の10〜1000mM、特に10〜400mMとすることが好ましい。またグリシンの1回当りの添加量は培地全量中の10〜200mMが好ましく、これを数回添加することが好ましい。レブリン酸の添加量は培地全量中の0.01〜20mM、特に0.1〜10mMが好ましい。このグリシン、レブリン酸の添加は、菌株の増殖速度を低下させる場合があるので、そのときはある程度増殖した時点で添加するとよい。
【0018】
培養にあたっての培養温度、pHは上記菌株等が生育する条件でよく、例えば、10〜40℃、特に20〜35℃とするのが好ましく、培地のpHは4〜9、特に5〜8とすることが好ましい。なお5−アミノレブリン酸の生産時にpHが変化する場合には、水酸化ナトリウム、アンモニア、水酸化カリウム等のアルカリ溶液や塩酸、硫酸、燐酸等の酸を用いてpHを調整することが好ましい。また、培養にあたっては、特に光照射をする必要はない。
【0019】
培養液を攪拌するための攪拌機は、特に制限がなく、培養する際に一般的に使用される攪拌機を使用することができるが、回転軸に複数の攪拌羽根を備えた攪拌機を用いることが好ましい。
【0020】
本発明の製造法で行われる培養は、酸素移動容量係数kLa(h-1)を好気条件での微生物の呼吸速度qO2[(g-O2 consumed)・(g-dry cell)-1・h-1]で除した値(以下、kLa/qO2)が、130〜500[(g-dry cell)・(g-O2 consumed)-1]となる条件下で行う。これにより、5−アミノレブリン酸の高効率な生産性が実現する。このうち、より高い生産性が得られる点から、当該値が、150〜300[(g-dry cell)・(g-O2 consumed)-1]であるのが好ましい。
【0021】
kLa/qO2は、以下の式(1)が成り立つ係数である(生物工学実験書、日本生物工学会編、培風館、p310(1992))。
【0022】
【数1】


【0023】
培養中の溶存酵素濃度(DO)の時間変化は緩やかである場合には、定常状態近似が成り立ち、d [DO]/dt=0となることから次式(2)が成り立つ。
【0024】
【数2】


【0025】
数式(1)(2)中の各記号は、それぞれ以下を示す。
kLa:酸素移動容量係数(h-1)
qO2:好気条件での微生物の呼吸速度[(g-O2 consumed)・(g-dry cell)-1・h-1]
[DO*]:飽和溶存酸素濃度(mg・L-1)
[DO]:溶存酸素濃度(mg・L-1)
x:菌体濃度(g-dry cell・L-1)
【0026】
かように、kLa/qO2は、[DO*](飽和溶存酸素濃度(mg・L-1))、[DO](溶存酸素濃度(mg・L-1))、x(菌体濃度(g-dry cell・L-1))をそれぞれ得ることにより求めることができる。ここで、飽和溶存酸素濃度は、培地中の温度、圧力における水の飽和溶存酸素理論値を用いればよく、溶存酸素濃度は、溶存酸素電極などの公知の方法により得ることができ、菌体濃度は、濁度計により公知の方法で得ることができる。
【0027】
kLa/qO2を前記のような値とすることは、撹拌機の回転数の設定により行うことができる。これは、kLa/qO2と攪拌の回転数が、一定の通気条件下においては、両対数プロットをした場合、1次関数に近似でき、両者の間には以下の式(3)が成り立つからである。qO2は回転数に関係なく一定の値を示すが、酸素移動容量係数であるkLaが、回転数の増加につれて増加する。
【0028】
【数3】


【0029】
但し、式中は、a、bは定数である。
【0030】
a、b は、例えば培養槽の形状、培養槽の容量、培養槽への通気量、培地張込量の増減、通気ガス中の酸素分圧の調節、消泡剤など、kLa/qO2と回転数の関係に影響を与える因子に依存する定数である。なお、これらの因子は微生物の呼吸速度qO2ではなく、酸素移動容量係数であるkLaに影響を与え、また、これらは、5−アミノレブリン酸生産段階の回転数にも影響を与える。
【0031】
設定する撹拌機の回転数は、定数a、bを求めたのち、kLa/qO2と攪拌の回転数の関係を示す式となった上記式(3)に、設定したいkLa/qO2(例えば、200前後の値)を代入することにより求めることができる。
【0032】
定数a、bは、用いる攪拌機で回転数以外は同じ条件である複数の条件でのkLa/qO2の値をグラフにプロットすることにより求めることができる。具体的には、培養し微生物を生育させる際に攪拌機の回転数を2種以上に変化させ、それぞれの回転数におけるkLa/qO2を求める。ここでのkLa/qO2は、それぞれの回転数における溶存酸素濃度、菌体濃度を、溶存酸素電極や濁度計などによって測定し、得られた値を前述の式(2)に代入することにより求めることができる。そして、得られたデータをもとに、各回転数とその回転数におけるkLa/qO2との関係をグラフにプロットすることにより定数a、bを求めることができる。
【0033】
本発明の製造方法では、微生物の生育段階と5−アミノレブリン酸生産段階の2段階培養法とすることもできる。この場合、kLa/qO2と攪拌の回転数の関係式の定数a、bの決定に用いられる上記撹拌機の回転数変化は、微生物の生育段階で行うことができ、これにより、回転数変化による酸素供給過剰や酸素供給不足になったとしても、経済的損失が少なくなる。また、5−アミノレブリン酸生産段階でも行うことができ、この場合、実生産中に至適回転数を制御できるという点で優れる。回転数変化の際の培養条件は、例えば、菌体が増殖している時期、特に濁度(OD660)が3〜12(ABS)の時期とすればよく、また、溶存酸素濃度が0.7ppm以下にならないようにするのが好ましい。
【0034】
kLa/qO2の値を設定する方法は、攪拌機の回転数によって調節する方法に限定されない。例えば、通気量で調節する方法がある。すなわち、一定の回転数における生育段階において、通気量を変化させることで、各通気量とkLa/qO2の値の関係を上記式(2)を用いて調べる。通気量とkLa/qO2の値は、回転数とkLa/qO2の値と同様に両対数でプロットを行うと一次式に近似できるので、一例として、得られる一次式にkLa/qO2の値として、200[(g-dry cell)・(g-O2 consumed)-1]前後の値を代入することにより、生産に最適な通気量を求めることができる。かくして求められる通気量に設定することにより、kLa/qO2の値を本発明における値とすることができる。
【0035】
かくして培養液中に高効率で得られる5−アミノレブリン酸は、常法により分離・精製してもよい。例えば、5−アミノレブリン酸は菌体外に分泌されるので、イオン交換、クロマト法、抽出法等の常套手段により分離してもよい。
【0036】
本発明の製造法はkLa/qO2の値を指標とし、この値は、上記のような方法で攪拌機の回転数や通気量によって設定できることから、溶存酸素濃度が検出限度以下のような低濃度の条件にも設定することができる。具体的には、0.1ppm未満の溶存酸素濃度の条件にも設定することができる。
【0037】
なお、後記実施例に示すとおり、本発明によれば、kLa/qO2を、培養槽のスケールによらず特定の値とすることにより高効率での5−アミノレブリン酸生産を実現できるが、kLa/qO2の好ましい値が培養スケールによらないことは意外なことである。kLa/qO2の値を指標として攪拌機の回転数や通気量などの培養条件を設定することができ、これにより、培養スケールによらずに簡便に高生産性培養条件に調整することができる。
【実施例】
【0038】
次に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、これらは単に例示の目的で掲げられものであって、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0039】
[実験1]
培地1(組成は表1に示す)200mlを2L容三角フラスコに分注し、121℃で20分間滅菌した後、放冷した。これにロドバクター・スフェロイデスCR0072009(FERM BP-6320)の一白金耳を植菌後、32℃、暗所にて26時間振盪培養した。
【0040】
【表1】


【0041】
これを3L容の培養槽に1.8Lの培地1を調製したところへ初期菌体濃度(OD660)が0.5となるように植菌し、32℃、通気量0.36L/分、DO5%下限で20時間撹拌培養した。これを30L容の培養槽に18Lの培地2(組成は表2に示す)を調製したところへ初期ODが0.5となるように植菌し、28℃、通気量1.3L/分、DO5%下限で24時間撹拌培養した。生育段階ではDO5%以下にならないように回転数を適宜増加させた。各回転数におけるkLa/qO2の値をその時の菌体濃度、溶存酸素濃度より求め、各回転数とkLa/qO2の関係を求めた。培養24時間後、レブリン酸5mM、グリシン65mMとなるように添加し、撹拌回転数を210rpmにして、硫酸を用いてpHを6.4〜6.5に保ちながら培養を続けた。更に培養40時間後にグリシンを65mMとなるように添加し、培養開始から52時間で培養を止めた。培養中に求めた各回転数とkLa/qO2の関係に生産段階での回転数を代入することで、培養24時間後以降におけるkLa/qO2の値を算出した。生産段階である培養24時間後以降におけるkLa/qO2の値、培養24時間後からの培養液中の溶存酸素濃度、培養52時間後の5−アミノレブリン酸蓄積量を表3に示す。なお、溶存酸素濃度はTOA-DKK CORPORATION製溶存酸素電極7671L型を用いて測定した。
【0042】
【表2】


【0043】
[実験2]
30L培養槽の通気量を1.8L/分、培養24時間後以降の撹拌回転数を220rpmとする以外は実施例1と同様の操作を行った。生産段階である培養24時間後におけるkLa/qO2の値、培養24時間後からの培養液中の溶存酸素濃度、培養52時間後の5−アミノレブリン酸蓄積量を表3に示す。
【0044】
[実験3]
30L培養槽の通気量を3.6L/分、培養24時間後以降の撹拌回転数を200rpmとする以外は実施例1と同様の処理を行った。生産段階である培養24時間後におけるkLa/qO2の値、培養24時間後からの培養液中の溶存酸素濃度、培養52時間後の5−アミノレブリン酸蓄積量を表3に示す。
【0045】
[実験4]
30L培養槽の通気量を1.8L/分、培養24時間後以降の撹拌回転数を240rpmとする以外は実施例1と同様の処理を行った。生産段階である培養24時間後におけるkLa/qO2の値、培養24時間後からの培養液中の溶存酸素濃度、培養52時間後の5−アミノレブリン酸蓄積量を表3に示す。
【0046】
[実験5]
30L培養槽の通気量を1.8L/分、培養24時間後以降の撹拌回転数を260rpmとする以外は実施例1と同様の処理を行った。生産段階である培養24時間後におけるkLa/qO2の値、培養24時間後からの培養液中の溶存酸素濃度、培養52時間後の5−アミノレブリン酸蓄積量を表3に示す。
【0047】
[実験6]
30L培養槽の通気量を3.6L/分、培養24時間後以降の撹拌回転数を260rpmとする以外は実施例1と同様の処理を行った。生産段階である培養24時間後におけるkLa/qO2の値、培養24時間後からの培養液中の溶存酸素濃度、培養52時間後の5−アミノレブリン酸蓄積量を表3に示す。
【0048】
【表3】


【0049】
表3から分かるように、5−アミノレブリン酸生産性はkLa/qO2の値が126〜509[(g-dry cell)・(g-O2 consumed)-1]の範囲において、培養52時間で20mM以上の高い生産性を示すが、kLa/qO2の値が150〜300[(g-dry cell)・(g-O2 consumed)-1]の範囲において、培養52時間で40mM以上のより高い生産性を示す。これらのkLa/qO2の値と培養52時間後の5−アミノレブリン酸濃度との関係は、図1にもグラフとして示した。
【0050】
次に、これら30L培養槽のkLa/qO2の値と5−アミノレブリン酸生産性の関係を基に、5−アミノレブリン酸のスケールアップ生産を行った。
[実施例1]
培地1(表1)200mlを2L容三角フラスコに分注し、121℃で20分間滅菌した後、放冷した。これにロドバクター・スフェロイデスCR0072009(FERM BP-6320)の凍結保存株を植菌し、32℃、暗所にて24時間振盪培養した。これを200L容の培養槽に120Lの培地1を調製したところへ全量植菌し、32℃、通気量24L/分、回転数230rpmで30時間撹拌培養した。これを5t容の培養槽に3tの培地2を調製したところへ全量植菌し、28℃、通気量600L/分、DO5%下限制御で24時間培養した。生育段階ではDO5%以下にならないように回転数を適宜増加させた。各回転数におけるkLa/qO2の値をその時の菌体濃度、溶存酸素濃度より求め、各回転数とkLa/qO2の関係を求めた。この関係を用いてkLa/qO2の値が252[(g-dry cell)・(g-O2 consumed)-1]となるような回転数を算出すると、96rpmとなった。培養24時間後、レブリン酸5mM、グリシン65mMとなるように添加し、撹拌回転数を96rpmにして、硫酸を用いてpHを6.4〜6.5に保ちながら培養を続けた。更に培養40時間後にグリシンを65mMとなるように添加し、培養52時間で培養を止めた。24時間後からの培養液中の溶存酸素濃度は2.8ppm、培養52時間後の5−アミノレブリン酸蓄積量は44.4mMであった。結果を図1に併せて示す。なお、溶存酸素濃度はメトラー社製溶存酸電極及び培養用酸素膜電極を用いて測定した。
【0051】
[実施例2]
実施例1と同様に実験1〜6の30L培養槽でのデータを使用して、スケールアップ生産を試みた。5t培養槽培養段階において、実施例1と同様の条件で培養し、各回転数におけるkLa/qO2の値をその時の菌体濃度、溶存酸素濃度より求め、各回転数とkLa/qO2の関係を求めた。この関係を用いてkLa/qO2の値が237[(g-dry cell)・(g-O2 consumed)-1]となるような回転数を算出すると、90rpmとなった。培養24時間後の撹拌回転数を90rpmとする以外は実施例1と同様の操作を行った。24時間後からの培養液中の溶存酸素濃度は検出されず(0.1ppm以下)、培養52時間の5−アミノレブリン酸蓄積量は41.2mMであった。結果を図1に併せて示す。
【0052】
図1より明らかなように、kLa/qO2と5−アミノレブリン酸生産量との関係は、培養槽のスケールに依存しない。かように、本発明が開示するkLa/qO2は、培養槽などの条件によらず、5−アミノレブリン酸の高い生産性を実現するための指標となるものである。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】kLa/qO2と培養52時間後の5−アミノレブリン酸濃度との関係を示す図である。
【出願人】 【識別番号】000105567
【氏名又は名称】コスモ石油株式会社
【出願日】 平成18年7月31日(2006.7.31)
【代理人】 【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所

【識別番号】100068700
【弁理士】
【氏名又は名称】有賀 三幸

【識別番号】100077562
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 登志雄

【識別番号】100096736
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 俊夫

【識別番号】100117156
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 正樹

【識別番号】100111028
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 博人

【識別番号】100101317
【弁理士】
【氏名又は名称】的場 ひろみ

【識別番号】100121153
【弁理士】
【氏名又は名称】守屋 嘉高

【識別番号】100134935
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 詩木

【識別番号】100130683
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 政広

【識別番号】100140497
【弁理士】
【氏名又は名称】野中 信宏


【公開番号】 特開2008−29272(P2008−29272A)
【公開日】 平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願番号】 特願2006−207593(P2006−207593)