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【発明の名称】 異種タンパク質の発現方法及び異種タンパク質の発現方法により得られたタンパク質
【発明者】 【氏名】冨塚 登

【氏名】中川 智行

【氏名】宮地 竜郎

【氏名】藤村 朱喜

【氏名】伊藤 尚志

【氏名】稲垣 篤史

【要約】 【課題】異なる2種のタンパク質を1つの細胞内で発現させ、誘導条件によるタンパク質の生産管理を安定して行うことが可能なタンパク質の生産方法を確立する。

【構成】ピヒア メタノリカ(Pichia methanolica)を宿主として、PMOD1プロモーターの下流に第1のタンパク質をコードした塩基配列と、PMOD2プロモーターの下流に第2のタンパク質をコードした塩基配列を導入して該ピヒア メタノリカ(Pichia methanolica)の組換え体を得る工程と、酸素の存在下で該組換え体を培養液中で培養し、その過程で、グリセロール及び/又はキシロースの存在下で該PMOD1プロモーターに第1のタンパク質を発現させる工程と、メタノールの存在下で該PMOD2プロモーターに第2のタンパク質を発現させる工程と、を含む、異種タンパク質の発現方法により解決する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピヒア メタノリカ(Pichia methanolica)を宿主として、配列番号:1に記載されるPMOD1プロモーターの下流に第1のタンパク質をコードした塩基配列と、配列番号:2に記載されるPMOD2プロモーターの下流に第2のタンパク質をコードした塩基配列を導入して該ピヒア メタノリカ(Pichia methanolica)の組換え体を得る工程と、
酸素の存在下で該組換え体を培養液中で培養し、その過程で、
グリセロール及び/又はキシロースの存在下で配列番号:1に記載されるPMOD1プロモーターに第1のタンパク質を発現させる工程と、
メタノールの存在下で配列番号:2に記載されるPMOD2プロモーターに第2のタンパク質を発現させる工程と、
を含む、異種タンパク質の発現方法。
【請求項2】
前記グリセロール及び/又はキシロースの濃度が、前記培養液の全量を基準として、0.5〜2%(W/V)である請求項1に記載の異種タンパク質の発現方法。
【請求項3】
前記メタノールの濃度が、0.1〜3.0%(V/V)である請求項1又は2に記載の異種タンパク質の発現方法。
【請求項4】
前記配列番号:2に記載されるPMOD2プロモーターに第2のタンパク質を発現させる工程において、前記培養液を80rpm以上の振盪速度で振盪させる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の異種タンパク質の発現方法。
【請求項5】
前記第1のタンパク質が緑色蛍光タンパク質であり、前記第2のタンパク質が酸性フォスファターゼである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の異種タンパク質の発現方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の異種タンパク質の発現方法により得られたタンパク質。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は異種タンパク質の発現方法及び異種タンパク質の発現方法により得られたタンパク質に関し、具体的には、任意の異種タンパク質をピヒア メタノリカ(Pichia methanolica)に導入し、特定の条件で誘導されるプロモーターを制御して、異なる2種のタンパク質を発現させる異種タンパク質の発現方法及び異種タンパク質の発現方法により得られたタンパク質に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、安価で扱いやすいメタノールにより強力に誘導されるプロモーターを有し、高密度で培養可能なメチロトローフ酵母を利用した発現系でタンパク質を大量に生産する例が多数報告されており、工業レベルでの利用に有効な発現系として注目されている。
【0003】
メチロトローフ酵母の一つであるピヒア メタノリカ(Pichia methanolica)は、1)メタノールによって強力に誘導される2つのプロモーター(PMOD1およびPMOD2)を有する、2)それぞれのプロモーターの転写活性は異なる制御を受けており、誘導条件により厳密に支配されている、さらには3)代表的な酵母であるサッカロマイセス セルビシエ(Saccharomyces cerevisiae)の10倍以上の高密度で培養できる、という特徴を有している。このような点から、ピヒア メタノリカ(Pichia methanolica)は異種タンパク質を1つの細胞で生産できるタンパク質生産ツールとして高いポテンシャルを示すといえる。
【0004】
従来、ピヒア メタノリカ(Pichia methanolica)を利用してタンパク質を生産した例としては、例えば、Invitrogen社によって、PMOD1を用いたP. methanolica Expression Kitが商品化されており、ヒト由来のglutamate decarboxylaseや、leptinといったタンパク質の生産が報告されている(非特許文献1及び2)。また、Pichia methanolica由来のプロモーターを用いてS.セルビシエを形質転換し、異種ポリペプチドを生産する方法も開示されている(特許文献1)。さらに、ピヒア・メタノリカ(P.methanolica)を形質転換する際に、選択マーカーとして、ピヒア・メタノリカ(P.methanolica)ADE2遺伝子をコードすることにより、商業的に重要性を有するタンパク質を産生する産生系において使用することができる旨が開示されている(特許文献2)。
【非特許文献1】Gellissen, G., Heterologous protein production in methylotrophic yeasts, "Appl. Microbiol. Biotechnol.", 2000, 54:741-750.
【非特許文献2】Raymond, C. K., T. Bukowski, S. D. Holderman, A. F. T. Ching, E. Vanaja, and R. Stamm, Development of the methylotrophic yeast Pichia methanolica for the expression of the 65 kilodalton isoform of human glutamate decarboxylase, "Yeast", 1998, 14:11-23.
【特許文献1】特表2000−500014号公報
【特許文献2】特表2002−515746号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
タンパク質の生産は、発現に使用するプロモーターの転写活性と宿主酵母に依存する。酵母における異種遺伝子発現用プロモーターとしては、どのような生育条件下においても常に一定量構成的に発現されるものや、培地成分などにより誘導可能なものがある。しかしながら、プロモーターは強力であっても転写活性のコントロールが困難であったり、一様にタンパク質生産を行なうだけで、目的タンパク質によっては生産が困難なものが少なくない、などの問題があった。このため、安定した発現制御が可能で、多様なタンパク質生産に対応できる応用範囲の広いプロモーターの制御方法の確立が望まれていた。
【0006】
そこで、本発明は、異なる2種のタンパク質を1つの細胞内で発現させ、誘導条件によるタンパク質の生産管理を安定して行うことが可能なタンパク質の生産方法を確立することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らはピヒア メタノリカ(Pichia methanolica)の有する2種のアルコールオキシダーゼプロモーター(配列番号:1に記載されるPMOD1および配列番号:2に記載されるPMOD2)について種々の検討を行ったところ、それぞれが異なる性質を有し、必要に応じて2種のタンパク質の発現を個々に制御することが可能であることを見出した。
【0008】
本発明は係る知見に基づくものであり、以下の発明に関するものである。[1]ピヒア メタノリカ(Pichia methanolica)を宿主として、PMOD1プロモーターの下流に配列番号:1に記載される第1のタンパク質をコードした塩基配列と、配列番号:2に記載されるPMOD2プロモーターの下流に第2のタンパク質をコードした塩基配列を導入して該ピヒア メタノリカ(Pichia methanolica)の組換え体を得る工程と、酸素の存在下で該組換え体を培養液中で培養し、その過程で、グリセロール及び/又はキシロースの存在下で配列番号:1に記載されるPMOD1プロモーターに第1のタンパク質を発現させる工程と、メタノールの存在下で配列番号:2に記載されるPMOD2プロモーターに第2のタンパク質を発現させる工程と、を含む、異種タンパク質の発現方法;
【0009】
[2]前記グリセロール及び/又はキシロースの濃度が、前記培養液の全量を基準として、0.5〜2%(W/V)である、[1]に記載の異種タンパク質の発現方法;
【0010】
[3]前記メタノールの濃度が、0.1〜3.0%(V/V)である、[1]又は[2]に記載の異種タンパク質の発現方法;
【0011】
[4]前記配列番号:2に記載されるPMOD2プロモーターに第2のタンパク質を発現させる工程において、前記培養液を80rpm以上の振盪速度で振盪させる、[1]〜[3]のいずれか1に記載の異種タンパク質の発現方法;
【0012】
[5]前記第1のタンパク質が緑色蛍光タンパク質であり、前記第2のタンパク質が酸性フォスファターゼである、[1]〜[4]のいずれか1に記載の異種タンパク質の発現方法;
【0013】
[6][1]〜[5]のいずれか1に記載の異種タンパク質の発現方法により得られたタンパク質。
【発明の効果】
【0014】
本発明の異種タンパク質の発現方法によれば、2種類のタンパク質を1つの細胞中で任意に制御しながら安定して発現させることができる。よって、有用タンパク質を生産するためのツールとして幅広く応用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明の実施形態について説明する。本実施形態の異種タンパク質の発現方法は、既述のとおり、ピヒア メタノリカ(Pichia methanolica)を宿主として、配列番号:1に記載されるPMOD1プロモーターの下流に第1のタンパク質をコードした塩基配列と、配列番号:2に記載されるPMOD2プロモーターの下流に第2のタンパク質をコードした塩基配列を導入して該ピヒア メタノリカ(Pichia methanolica)の組換え体を得る工程と、酸素の存在下で該組換え体を培養液中で培養し、その過程で、グリセロール及び/又はキシロースの存在下で配列番号:1に記載されるPMOD1プロモーターに第1のタンパク質を発現させる工程と、メタノールの存在下で配列番号:2に記載されるPOD2プロモーターに第2のタンパク質を発現させる工程と、を含む。
【0016】
宿主細胞として使用されるピヒア メタノリカ(Pichia methanolica)は、一般に入手可能なピヒア メタノリカ(Pichia methanolica)を使用することができ、例えば、市販の菌株を用いることができる。具体的には、Invitrogen社のPMAD11株などを挙げることができる。
【0017】
MOD1プロモーター(配列番号:1)は、ピヒア メタノリカ(Pichia methanolica)のアルコールオキシダーゼプロモーターを構成するプロモーターのひとつであり、例えば、Invitrogen社のPMOD1プロモーターを用いた発現ベクターpMET Bを用いることができる。なお、本ベクターは栄養要求性マーカーとしてADE2遺伝子を保持している。
【0018】
MOD2プロモーター(配列番号:2)は、PMOD1プロモーターと同様、ピヒア メタノリカ(Pichia methanolica)のアルコールオキシダーゼプロモーターを構成するプロモーターのひとつであり、MOD2遺伝子の5’上流域1685bpを含むものである。なお、本実施形態においては、本プロモーターを用いた発現カセットは栄養要求性マーカーを持たないものを用いる。
【0019】
なお、「MOD」は本来メタノールオキシダーゼの略称であるが、近年、この分野では一般に「アルコールオキシダーゼ」のことをMODと称するようになっているため、本実施形態においても、MODはアルコールオキシダーゼを意味する。
【0020】
図1は、PMOD1プロモーター(上段、配列番号:1)およびPMOD2プロモーター(下段、配列番号:2)の塩基配列を示す図である。図1に示すように、PMOD1、PMOD2の相同性は23%程度である。タンパク質部分をコードするMOD1、MOD2の相同性が80%以上であることに鑑みれば、PMOD1プロモーター(配列番号:1)、PMOD2プロモーター(配列番号:2)の相同性は低いものである。このことからも遺伝子レベルでMOD1、MOD2の発現制御に違いがあることが表れているといえる。
【0021】
図2は、PMOD1プロモーター(配列番号:1)、PMOD2プロモーター(配列番号:2)に含まれるモチーフ配列の検索を行った結果を示す図である。図2に示すように、メタノール誘導配列(UAS1、UAS2)やグルコースリプレッションに関与するMIG1モチーフが両プロモーターに共通して存在している。そして、それぞれのプロモーターでそれら配列の場所や向きが異なっている。また、HAP2/3/4モチーフはMOD2プロモーターにのみ存在している。この配列はグルコースリプレッション、酸素認識に関与しているという報告があることから、PMOD2においても機能している可能性が高いと考えられる。このように、2つのプロモーターに存在するモチーフ配列の種類、位置、方向、数などの違いによりPMOD1プロモーター、PMOD2プロモーターで異なる発現制御が行なわれていると考えられる。
【0022】
第1のタンパク質をコードした塩基配列および第2のタンパク質をコードした塩基配列は、目的のタンパク質をコードした塩基配列を選択する。タンパク質としては、塩基配列が明らかなタンパク質であれば種々のものを選択することができるが、異種タンパク質を1つの細胞で発現させるという本発明の特性を利用して、2つの異なるタンパク質が相互作用を有するタンパク質を選択することもできる。例えば、異なる2つのタンパク質によって、はじめて活性を得られるような、いわゆる「ヘテロダイマー型」のタンパク質や、インシュリンのようにまず前駆体として生合成され、別のタンパク質によって修飾を受けて活性型になるようなタンパク質等を選択することも可能である。
【0023】
MOD1プロモーター及びPMOD2プロモーターの下流にタンパク質をコードした塩基配列を導入する方法は、バイオテクノロジー分野で用いられている公知の遺伝子組換え技術を用いて行うことができる。一方、本過程で得られた発現カセットの宿主への導入には、Raymondらの方法(Raymond, C. K., T. Bukowski, S. D. Holderman, A. F. T. Ching, E. Vanaja, and R. Stamm, Development of the methylotrophic yeast Pichia methanolica for the expression of the 65 kilodalton isoform of human glutamate decarboxylase, "Yeast", 14:11-23.)を用いることができる。
【0024】
また、2種の発現カセットの導入の場合、宿主の限られた栄養要求性マーカーを補うため、以下の1.および2.の操作を行う。
【0025】
1.PMOD1プロモーターおよびPMOD2プロモーターの下流に発現させたい異種タンパク質をコードする遺伝子を導入した発現カセットは、非相同組み換えによってピヒア メタノリカのゲノムDNAに挿入される。PMOD1プロモーター発現カセット(pMET B)はADE2遺伝子を形質転換マーカーとして利用し、宿主に導入する。
【0026】
2.PMOD2プロモーター発現カセットには形質転換マーカーを付与せず、非相同組み換えによって1で得られた形質転換体のゲノムDNAに再び挿入するが、5-フルオロオロチジン酸耐性を指標にすることで、ゲノム上のウラシル合成系遺伝子にPMOD2プロモーター発現カセットが挿入された変異株を選択することができる。
【0027】
以上の操作により、栄養要求性を持たない宿主に対する形質転換において、形質転換体を容易に選抜することが可能である。
【0028】
上記のようにして得られた組換え体は、酸素の存在下、培養液中で培養される。酸素は、培養液中に直接添加してもよいし、振盪培養により培養液を振盪させ、酸素が供給されるようにしてもよい。この場合、80rpm以上の振盪速度で振盪させるのが好ましい。また、酸素の供給量はPMOD1プロモーターおよびPMOD2プロモーターの発現量に大きく影響する。なお、嫌気的条件下で培養を行っても、第1および第2のタンパク質の発現は認められない。
【0029】
培養液は、ピヒア メタノリカ(Pichia methanolica)を液体培養する際に用いられる一般的な組成の培地を用いることができる。例えば、Salt培地、Basal培地などを用いることができる。
【0030】
MOD1プロモーター(配列番号:1)は、グリセロール及び/又はキシロースが培地中に存在することによって、第1のタンパク質の発現を誘導する。特にグリセロールによるPMOD1プロモーターはメタノール誘導と同様に強力な発現力を示す。なお、グリセロールとメタノールを組み合わせた場合もグリセロール単独で誘導した時と同程度の活性を示す。但し、第2のタンパク質の発現は、後述するようにメタノールの添加によって誘発されるため、第1のタンパク質の発現と第2のタンパク質の発現を制御するという観点からは、第1のタンパク質の発現を誘導する際は、メタノールの添加は行わないほうが好ましい。
【0031】
一方、グルコース、アラビノース、セロビオースを培地中に添加した場合は、いずれの場合も完全なカタボライトリプレッションが観察される。
【0032】
グリセロール及び/又はキシロースの濃度は、培養液の全量を基準として、0.5〜2%(W/V)であることが好ましい。
【0033】
MOD2プロモーター(配列番号:2)は、メタノールが培地中に存在することによって、第2のタンパク質の発現を誘導する。培地中のメタノールの濃度は、PMOD2プロモーターに第2のタンパク質を発現させる工程においては、0.1〜3.0%(V/V)であることが好ましく、0.3〜1.0%(V/V)であることがより好ましく、0.3%(V/V)であることが更に好ましい。
【0034】
また、PMOD2プロモーターは、メタノール濃度が0.1〜1.0%(V/V)の条件であるときに、培地中の溶存酸素濃度を高めることによって、より効率よく第2のタンパク質の発現を誘導することができる。即ち、PMOD2プロモーターは酸素濃度が上昇するにつれて第2のタンパク質の活性も高くなる。例えば、500ml容のバッフル付三角フラスコで100mlの培養液を28℃、100rpm以上の振盪速度で振盪させることにより、第2のタンパク質の発現を効率よく誘導することができる。なお、グルコース、アラビノース、セロビオースを培地中に添加した場合は、PMOD1プロモーターと同様、カタボライトリプレッションが観察される。
【0035】
宿主細胞において発現したタンパク質は、各種クロマトグラフィー、濃縮・脱塩、ゲルろ過等、常法のタンパク質分離精製方法により分離精製することができる。
【実施例】
【0036】
異なる2種の異種タンパク質を1つの細胞内で発現させることを目的として、以下の要領により組換え体を作製した。2種類の異種タンパク質としては、視覚的にも発現が確認でき、定量やアッセイが可能な緑色蛍光タンパク質(以下、「GFP」と称する)と、酸性フォスファターゼ(以下、「AP」と称する)を用いた。
【0037】
GFPの宿主細胞への導入については、P. methanolica Expression Kit (Invitrogen社製)のプラスミドpMET Bを用い、PMOD1プロモーター(配列番号:1)の下流にてGFPを発現させたピヒア メタノリカ(P. methanolica)を作製した。具体的には、GFPをPCR法にて増幅し、5’および3’末端にXhoIおよびNotIサイトを付加した。得られた断片をpMET BのXhoI−NotIサイトに挿入し、PstIにて直鎖状にしたものをRaymondらの方法(Development of the methylotrophic yeast Pichia methanolica for the expression of the 65 kilodalton isoform of human glutamate decarboxylase, "Yeast", 1998, 14:11-23.)に従ってピヒア メタノリカ細胞に導入した。
【0038】
APの宿主細胞への導入については、PMOD2プロモーター(配列番号:2)をPCR法にて増幅し、5’および3’末端にPstIおよびXhoIサイトを付加し、pT7Blue(Novagen社製)を用いてサブクローニングした。一方、pMET BをXhoIおよびXbaIで消化し、得られたAUG1ターミネーターを含む断片をPMOD2プロモーターの下流に連結した。
【0039】
また、PHO5について、5’および3’末端にXhoIおよびNotIサイトを付加してPCR法にて増幅した後、本断片をPMOD2プロモーターの下流でAUG1ターミネーターの上流に挿入し、PMOD2−PHO5の発現カセットを作成した。得られた発現カセットは、PstIにて直鎖状にし、前記Raymondらの方法に従ってピヒア メタノリカ細胞に導入した。
【0040】
MOD2プロモーター発現カセットは形質転換マーカーを持たないため、5-フルオロオロチジン酸耐性を指標にし、ゲノム上のウラシル合成系遺伝子にPMOD2プロモーター発現カセットが挿入された変異株を選択することができる。これにより、栄養要求性を持たない宿主に対する形質転換において、形質転換体を容易に選抜することが可能である。
【0041】
MOD2−PHO5の形質転換の選択培地として、5’FOA(0.08%)添加YNB培地を用い、ウラシル合成に関与する遺伝子の破壊によって、この培地に生育できるものをスクリーニングした。
【0042】
獲得した組換え体を用いて、誘導炭素源による2つのタンパク質の発現パターンを確認した。
【0043】
GFPは蛍光顕微鏡(Nikon ECLIPSE 800、フィルターGFP(R)-BP)による観察を行い、GFPが発現した場合に観察される蛍光色素が観察された場合は「+」と評価し、蛍光色素が観察されなかった場合は「−」と評価した。
【0044】
AP活性はp−ニトロフェノールリン酸を基質にし、pH4、37℃にて生成する
p−ニトロフェノール量を吸光度420nmで測定した。
【0045】
【表1】


【0046】
次に、前記組換え体を用いて、誘導炭素源による2つのタンパク質の発現のコントロールを試みた。1%グリセロール添加YNB培地、振盪速度100rpmにて本培養し、0、5、20、24、28時間後のPMOD1−GFPの発現、PMOD2−PHO5の発現を観察した。培養過程において、培養開始から20時間を経過するまではPMOD1−GFPを発現させ、培養開始から20時間を経過した時点で、メタノールの終濃度が0.5%(V/V)になるように培養液中に添加し、PMOD2−PHO5を発現させるようにした。
【0047】
MOD1−GFPの発現はGFPの定量測定で評価した。即ち、培養液をサンプリングし、OD660=1になるよう純水に懸濁した。そして、懸濁液を分光蛍光光度計(HITACHI F-4010形分光蛍光光度計)の定量測定モードで励起波長488nm、蛍光波長507nmで測定し、OD660=1あたりの蛍光強度を算出した。また、PMOD2−PHO5の発現は、p−ニトロフェノール法により酸性フォスファターゼの活性を測定することで評価した。結果を図3に示す。
【0048】
図3に示すように、グリセロールによりタンパク質の発現を誘導している間はPMOD−GFPのみで活性が認められ、培養開始から20時間後にメタノール添加すると、そこからPMOD2−PHO5の発現が認められた。つまり、2つのプロモーターを併用した発現系を考えた場合、グリセロールを炭素源としPMOD1による第1のタンパク質の発現を行い、そこに、任意のタイミングでメタノールを添加するだけで、PMOD2による第2のタンパク質の発現を行うことが可能であることが判明した。
【0049】
なお、本実施例では緑色蛍光タンパク質と、酸性フォスファターゼを発現させた例を説明したが、これに限らず、種々のタンパク質を発現させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】PMOD1プロモーター(上段、配列番号:1)およびPMOD2プロモーター(下段、配列番号:2)の塩基配列を示す図である。
【図2】PMOD1プロモーター、PMOD2プロモーターに含まれるモチーフ配列の検索を行った結果を示す図である。
【図3】実施例1において獲得した組換え体を用いて、誘導炭素源による2つのタンパク質の発現のコントロールを行った結果を示す図である。
【出願人】 【識別番号】598096991
【氏名又は名称】学校法人東京農業大学
【出願日】 平成18年7月11日(2006.7.11)
【代理人】 【識別番号】100122574
【弁理士】
【氏名又は名称】吉永 貴大


【公開番号】 特開2008−17733(P2008−17733A)
【公開日】 平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願番号】 特願2006−190389(P2006−190389)