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【発明の名称】 発現ベクター及びそれを用いたポリペプチドの生産方法
【発明者】 【氏名】長土居 有隆
【氏名】西村 善文
【課題】外来遺伝子の発現効率が高く、宿主細胞内で生産される外来ポリペプチドが可溶性のポリペプチドとして生産される確率が高くなる発現ベクター及びそれを用いたタンパク質の生産方法を提供すること。

【解決手段】精製用のタグとしてHATタグを採用するとともに、開始コドンとHATタグコード領域との間に所定の塩基配列を介在させることにより、所望の外来ポリペプチドとタグとの融合タンパク質の発現効率が高くなり、かつ、宿主細胞内で生産される外来ポリペプチドが可溶性のポリペプチドとして生産される確率が高くなる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流側から、プロモーターと、リボソーム結合部位と、開始コドンと、HATタグコード領域と、所望の外来遺伝子を挿入するクローニング部位とを少なくとも含む発現ベクターであって、前記開始コドンと前記HATタグコード領域との間に、4〜6アミノ酸から成り疎水性アミノ酸と極性アミノ酸が交互に配置されたアミノ酸配列をコードする領域を含む発現ベクター。
【請求項2】
前記アミノ酸配列が5アミノ酸から成る請求項1記載の発現ベクター。
【請求項3】
前記アミノ酸配列が、Ile Thr Pro Ser Leuである請求項2記載の発現ベクター。
【請求項4】
前記アミノ酸配列をコードする塩基配列が、attacaccaagtttaである請求項3記載の発現ベクター。
【請求項5】
前記HATタグコード領域と前記クローニング部位との間にCys-Cys-Pro-Gly-Cys-Cysをコードする蛍光色素結合部位コード領域をさらに含む請求項1ないし4のいずれか1項に記載の発現ベクター。
【請求項6】
前記HATタグコード領域と前記クローニング部位との間に配列特異的タンパク質分解酵素認識部位をコードする領域をさらに含む請求項1ないし4のいずれか1項に記載の発現ベクター。
【請求項7】
前記配列特異的タンパク質分解酵素認識部位が、TEVプロテアーゼの認識部位及び/又はエンテロキナーゼの認識部位である請求項6記載の発現ベクター。
【請求項8】
上流側から、プロモーターと、リボソーム結合部位と、開始コドンと、該開始コドンに直結しIle Thr Pro Ser Leuから成るアミノ酸配列をコードする領域と、該領域に直結したHATタグと、Cys-Cys-Pro-Gly-Cys-Cysをコードする蛍光色素結合部位コード領域と、TEV認識領域と、エンテロキナーゼ認識領域と、マルチクローニング部位と、ターミネーターとを含む請求項1記載の発現ベクター。
【請求項9】
前記アミノ酸配列をコードする塩基配列が、attacaccaagtttaであり、HATタグのN末端のリジンをコードするコドンがaaaである請求項8記載の発現ベクター。
【請求項10】
前記HATタグ、蛍光色素結合部位コード領域、TEV認識領域及びエンテロキナーゼ認識領域の間にはそれぞれスペーサー領域が介在し、該スペーサー領域は分子内ハイブリダイズが起きない塩基配列を有する請求項8又は9記載の発現ベクター。
【請求項11】
配列番号27で示される塩基配列のうち、91nt〜249ntの領域を含む請求項10記載の発現ベクター。
【請求項12】
大腸菌を宿主とする請求項1ないし11のいずれか1項に記載の発現ベクター。
【請求項13】
請求項1ないし12のいずれか1項に記載の発現ベクターに、所望の外来遺伝子を挿入し、宿主細胞内又は無細胞合成系で該外来遺伝子を発現させ、産生されたポリペプチドを回収することを含む、ポリペプチドの生産方法。

【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、発現させるべき所望の外来遺伝子の発現効率が高く、生産される外来ポリペプチドが可溶性のポリペプチドとして生産される確率が高い発現ベクター及びそれを用いたポリペプチドの生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
所望の外来タンパク質をコードする外来遺伝子を、大腸菌のような微生物細胞中で発現させるための発現ベクターは、種々のものが開発され、市販されている。これらの発現ベクターは、基本的には、宿主細胞内でのベクターの複製を可能にする複製開始点、発現ベクターが細胞内に取り込まれた細胞のみを選択可能にするための、薬剤耐性マーカー、栄養選択マーカー及び温度感受性マーカーのような選択マーカー、宿主細胞内での転写を可能にするプロモーター、リボソームにおける翻訳を可能にするリボソーム結合部位、及び所望の外来遺伝子を挿入するための、種々の制限酵素部位を含むマルチクローニング部位を含む。さらに、生産されたタンパク質の精製や検出のために、種々のタグをベクター内に設けておき、所望の外来タンパク質をタグとの融合タンパク質として発現させる発現ベクターも種々のものが知られ、市販されている。
【0003】
生産されたタンパク質の精製を容易にするためのタグとしては、ヒスチジンを6個連結したアミノ酸配列から成る6xHisタグ、ヒスチジンとアスパラギンを交互に6個ずつ並べた6xHNタグ、合計19個のアミノ酸から成り、ヘリックス構造をとり、ヘリックス構造をとった際にヒスチジンが一列に整列するように設計されているHATタグ(histidine affinity tag)等種々のものが知られており、これらをコードする領域を開始コドンの下流に設けた発現ベクターが市販されている(Clontech社)。ヒスチジンは、ニッケルに対して親和性を有するため、ニッケルを樹脂に固相化したカラムにタンパク質溶液を通すことにより、これらのヒスチジン含有タグがカラムに吸着される。これを利用してタンパク質を回収、精製することが行なわれている。
【0004】
また、生産されたタンパク質を検出するためのタグとしては、Cys-Cys-Pro-Gly-Cys-Cys(配列番号4)から成るLumio(商品名)タグが知られており、Lumio(商品名)タグをコードする領域を組み込んだ発現ベクターも知られている(Invitrogen社)。Lumio(商品名)タグには、ある蛍光物質が特異的に結合し、この蛍光物質がLumio(商品名)タグに結合すると蛍光を発するようになるため、Lumio(商品名)タグを含むタンパク質を検出することができる。
【0005】
さらに、精製や検出のためのタグを、タンパク質の精製や検出後に切り離すために、特定のアミノ酸配列部分を切断するプロテアーゼであるTEVプロテアーゼ、Factor Xa、エンテロキナーゼ、トロンビン等のプロテアーゼの認識部位を設けることも知られており、上記タグに加え、このような配列特異的プロテアーゼの認識部位を設けた発現ベクターも種々知られ、市販されている。
【0006】
【非特許文献1】High-throughput screening of soluble recombinant proteins. Yan-Ping Shih,1, Wen-Mei Kung,1, Jui-Chuan Chen, Chia-Hui Yeh, Andrew H.-J. Wang and Ting-Fang Wang. Protein Science (2002), 11:1714-1719.
【非特許文献2】Evaluating Representations for the Shine-Dalgarno Site in Escherichia coli. Steven Hampson & Dennis Kibler. TR#03-14. School of Information and Computer Science. University of California, Irvine
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の通り、生産されたタンパク質の精製や検出を容易にするための各種タグが公知であり、それらのタグや、精製、検出後にタグを切断除去するためのプロテアーゼ認識部位を組み込んだ発現ベクターが種々市販されている。しかしながら、それらを用いて外来遺伝子の発現を行なうと、発現効率が必ずしも高くなく、外来遺伝子の発現が起きない場合もしばしばある。また、本来は可溶性のタンパク質であるにもかかわらず、タグとの融合タンパク質として発現させることに起因して、本来可溶性のタンパク質が不溶性のタンパク質として生産されることも少なくない。現在、生体内で生産される種々のタンパク質の三次元構造の解析が進められており、解析処理のためにはタンパク質が可溶性であることが望まれる。所望の外来タンパク質が不溶性タンパク質として生産された場合には、可溶化するために高濃度の尿素等で処理する必要があり、このような処理を受けたタンパク質はその三次元構造が変化する可能性があり、正しい解析結果が得られない恐れがある。
【0008】
従って、本発明の目的は、外来遺伝子の発現効率が高く、宿主細胞内で生産される外来ポリペプチドが可溶性のポリペプチドとして生産される確率が高くなる発現ベクター及びそれを用いたタンパク質の生産方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明者らは、鋭意研究の結果、精製用のタグとしてHATタグを採用するとともに、開始コドンとHATタグコード領域との間に所定の塩基配列を介在させることにより、所望の外来ポリペプチドとタグとの融合タンパク質の発現効率が高くなり、かつ、宿主細胞内で生産される外来ポリペプチドが可溶性のポリペプチドとして生産される確率が高くなることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は、上流側から、プロモーターと、リボソーム結合部位と、開始コドンと、HATタグコード領域と、所望の外来遺伝子を挿入するクローニング部位とを少なくとも含む発現ベクターであって、前記開始コドンと前記HATタグコード領域との間に、4〜6アミノ酸から成り疎水性アミノ酸と極性アミノ酸が交互に配置されたアミノ酸配列をコードする領域を含む発現ベクターを提供する。また、本発明は、上記本発明の発現ベクターに、所望の外来遺伝子を挿入し、宿主細胞内で該外来遺伝子を発現させ、産生されたポリペプチドを回収することを含む、ポリペプチドの生産方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、所望の外来ポリペプチドとタグとの融合タンパク質の発現効率が高く、宿主細胞内で生産される外来ポリペプチドが可溶性のポリペプチドとして生産される確率が高い新規な発現ベクターが提供された。本発明の発現ベクターを用いて所望の外来遺伝子を発現させると、発現効率が高いためにほとんどの外来遺伝子が発現され、タンパク質の解析等の作業効率を高めることができる。また、本発明の発現ベクターを用いて外来ポリペプチドを宿主細胞内で生産させると、市販の発現ベクターを用いた場合に比べ、可溶性のポリペプチドとして生産される場合が多くなり、その後のタンパク質の三次元構造の解析等に有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
上記の通り、本発明の発現ベクターは、上流側から、プロモーターと、リボソーム結合部位と、開始コドンと、HATタグと、所望の外来遺伝子を挿入するクローニング部位とを少なくとも含む。これらの各要素自体はいずれも周知であり、それらの塩基配列も周知であるので容易に化学合成することが可能である。また、これらを含む発現ベクターも種々市販されているので、それらに含まれているものを利用することもできる。
【0013】
プロモーターとしては、T7プロモーター、lacプロモーター、trpプロモーター、tacプロモーター等種々のものが周知であり、これらのいずれをも用いることができる。下記実施例において作製した発現ベクターのプロモーターの上流領域からターミネーター領域までの塩基配列を配列表の配列番号1に示す。配列番号1の5’末端から9個目の塩基(以下、「9nt」のように表記する)から27ntまでの領域がT7プロモーターである。
【0014】
プロモーターの下流にはリボソーム結合部位が存在する。リボソーム結合部位自体は周知であり、配列番号1中の76nt〜82ntがリボソーム結合部位である。なお、リボソーム結合部位は、配列番号1中の76nt〜82ntに限定されるものではなく、これに類似する周知の他のリボソーム結合部位を用いることもできる。また、配列番号1に示されるように、プロモーターとリボソーム結合部位との間には、通常、任意のスペーサー配列が位置する。このスペーサーの長さは特に限定されないが、通常、10塩基〜100塩基程度、好ましくは、30塩基〜70塩基程度である。
【0015】
リボソーム結合位置の下流には開始コドンatgが位置する。リボソーム結合位置と開始コドンの間には、通常、任意のスペーサー配列が位置する。このスペーサーのサイズは、通常、3塩基〜15塩基程度、好ましくは5塩基〜10塩基程度である。
【0016】
開始コドンの下流には、該開始コドンと読み枠が一致した、HATタグをコードする領域(以下、便宜的に「HATタグコード領域」と呼ぶことがある)が位置する。HATタグコード領域自体は周知であり、これを含む発現ベクターも市販されている。配列番号1中、109nt〜165ntがHATタグコード領域である。HATタグコード領域は、化学合成することもできるし、市販のベクターから切り出すこともできる。また、PCRに用いるフォワード側プライマーにHATタグコード領域を付加したものを用いてPCRを行なうことにより、増幅断片にHATタグコード領域を含ませることができる。この場合、PCRを数回に分けて行い、HATタグコード領域を数回に分けて伸長させていくこともできる(下記実施例参照)。
【0017】
HATタグコード領域の下流には、外来遺伝子を挿入するクローニング部位が位置する。クローニング部位は、その中に少なくとも1個の制限酵素部位を有する配列であり、好ましくは、遺伝子工学分野において汎用されている複数の制限酵素の切断部位を有する。複数の制限酵素の切断部位を有する領域はマルチクローニング部位と呼ばれ、通常のいずれの市販の発現ベクターにもマルチクローニング部位が含まれている。本発明においても、周知のマルチクローニング部位を好ましく用いることができる。なお、本発明において、「遺伝子」は天然の遺伝子のみならず、cDNAや人為的に製造した所望の塩基配列を有する任意の核酸をも包含する意味で用いており、DNAでもRNAでもよい。通常、PCR等の核酸増幅法で増幅された核酸が好ましく用いられるが、これらに限定されるものではない。
【0018】
本発明の発現ベクターでは、上記開始コドンとHATタグコード領域の間に、4〜6アミノ酸から成り疎水性アミノ酸と極性アミノ酸が交互に配置されたアミノ酸配列をコードする領域(以下、便宜的に「交互領域」と呼ぶことがある)を含む。ここで、「疎水性アミノ酸」は、低極性の側鎖を有する中性アミノ酸であるグリシン、イソロイシン、バリン、ロイシン、アラニン、メチオニン及びプロリンであり、「極性アミノ酸」は、親水性側鎖を有する中性アミノ酸であるアスパラギン、グルタミン、スレオニン、セリン、チロシン及びシステインである。開始コドンとHATタグコード領域の間に、この交互領域を介在させることにより、外来遺伝子産物とHATタグ(及び後述する他のタグやプロテアーゼ認識部位が存在する場合にはそれらも含む)との融合タンパク質の発現効率が高くなり、また、該融合タンパク質が可溶性のタンパク質として生産される確率が高くなる。交互領域の好ましい例として、Ile Thr Pro Ser Leu(配列番号2)から成るアミノ酸配列をコードする領域が好ましい。1つのアミノ酸配列をコードするコドンは複数存在する場合が多いので、配列番号2に示すアミノ酸配列をコードする塩基配列は複数存在する。配列番号2に示すアミノ酸配列をコードする塩基配列としては、attacaccaagttta(配列番号3)が最も好ましい。また、この場合、HATタグのN末端であるリジンをコードするコドンはaaaとすることが最も好ましい。交互領域を配列番号3の塩基配列とし、HATタグのN末端であるリジンをコードするコドンをaaaとすることにより、発現効率が最も高くなる。なお、開始コドンと交互領域の間、及び交互領域とHATタグコード領域の間にはスペーサー配列は存在しない。配列番号1に示す塩基配列の交互領域及びHATタグコード領域のN末端のリジンのコドンをaaaに改変した塩基配列を配列番号27に示す。
【0019】
本発明のベクターは、前記HATタグコード領域と前記クローニング部位との間にCys-Cys-Pro-Gly-Cys-Cys(配列番号4)をコードする蛍光色素結合部位コード領域をさらに含むことが好ましい。配列番号4に示されるアミノ酸配列は、Lumio(商品名、Invitrogen社)タグと呼ばれ、これを含む発現ベクターはInvitrogen社から市販されている。Lumio(商品名)タグは、Lumio-Green Reagent(商品名、Invitrogen社)という商品名で市販されている、次式で表される化合物と結合して蛍光を発する。この化合物のみが存在し、Lumio(商品名)タグが存在しない状態では蛍光は発せられない。従って、生産されるポリペプチド内にLumio(商品名)タグが含まれていると、該化合物の存在下で蛍光が発せられるので、生産されたタンパク質を容易に可視化して検出することができる。配列番号1中、178ntから195ntが、Lumio(商品名)タグをコードする蛍光色素結合部位コード領域である。HATタグコード領域と蛍光色素結合部位コード領域との間には、通常、スペーサー領域が介在する。このスペーサーのサイズは、特に限定されないが、通常、3アミノ酸〜6アミノ酸程度のアミノ酸をコードするサイズである。
【0020】
【化1】


【0021】
本発明の発現ベクターは、さらに、配列特異的タンパク質分解酵素認識部位をコードする領域をさらに含んでいてもよい。配列特異的タンパク質分解酵素の例としては、TEVプロテアーゼ、エンテロキナーゼ、Factor Xa及びトロンビン等を挙げることができる。配列特異的タンパク質分解酵素認識部位コード領域は、複数存在してもよい。生産されたタンパク質が、配列特異的タンパク質分解酵素認識部位を有していると、融合タンパク質の精製、検出後に、該配列特異的タンパク質分解酵素で処理することにより、上記したHATタグや蛍光色素結合部位等を含む、目的ポリペプチドよりも上流の部分を切断除去することができる。配列特異的タンパク質分解酵素認識部位コード領域は、HATタグコード領域とクローニング部位の間(蛍光色素結合部位コード領域を含む場合には該領域とマルチクローニング部位の間)に位置する。配列番号1中、205nt〜225ntがTEVプロテアーゼ認識部位、235nt〜249ntがエンテロキナーゼ認識部位である。HATタグコード領域(蛍光色素結合部位コード領域が存在する場合には該領域)と配列特異的タンパク質分解酵素認識部位コード領域との間、及び複数の配列特異的タンパク質分解酵素認識部位コード領域が存在する場合にはそれらの間には、通常、スペーサー領域が介在する。これらのスペーサーのサイズは、特に限定されないが、通常、それぞれ3アミノ酸〜6アミノ酸程度のアミノ酸をコードするサイズである。
【0022】
上記した各スペーサー領域の塩基配列は任意であるが、分子内ハイブリダイズが起きない(すなわち、いずれかの部位で二つ折りにした場合に、向い合う塩基同士が相補的にならない)ように設定することが、発現効率を高くする上で好ましい。
【0023】
以上のように設計された、好ましい発現ベクターの具体例の塩基配列が上記の通り配列番号27に示されており、このうち、T7プロモーターからエンテロキナーゼ認識部位の3’末端までの領域、すなわち、91nt〜249ntの領域を含む発現ベクターが特に好ましく、発現ベクターにこの領域を含めることにより、発現効率が特に高くなり、外来ポリペプチドが可溶性ポリペプチドとして得られる可能性も特に高くなる。
【0024】
なお、上記は、プロモーターからクローニング部位までの領域について説明したが、本発明の発現ベクターは、他の発現ベクターと同様、通常、宿主細胞内での複製を可能にするための複製開始点を有する。さらに、クローニング部位の下流には、転写を完全に停止させるターミネーター配列を通常有する。配列番号1に示す塩基配列では、703nt〜746ntがT7ターミネーターである。さらに、通常、発現ベクターが細胞内に取り込まれた細胞のみを選択可能にするための、薬剤耐性マーカー、栄養選択マーカー及び温度感受性マーカーのような選択マーカーを含む。これらの各要素自体は周知であり、市販のいずれの発現ベクターにも含まれているものであり、各種市販品から容易に入手可能である。
【0025】
本発明の発現ベクターの宿主は限定されず、大腸菌や枯草菌のような原核生物、酵母、昆虫細胞、植物細胞、哺乳動物細胞等いずれのものでもよい。これらのうち、目的ポリペプチドの生産効率が高い大腸菌が好ましい。大腸菌用の発現ベクターは、大腸菌内で複製可能な複製開始点、例えばf1 origin、pBR322 origin等を含む。これらの複製開始点は周知であり、大腸菌用のいずれの市販の発現ベクターにも含まれている。なお、発現ベクターは、無細胞タンパク合成系用であってもよく、この場合には、複製開始点は特に必要ない。もっとも、複製開始点を持っていても無細胞タンパク合成系を利用できるので、発現ベクターの汎用性を高めるために、通常、複製開始点が含まれる。
【0026】
本発明の発現ベクターを用いたポリペプチドの生産方法は、従来から周知の、市販されている各種の発現ベクターと全く同様である。すなわち、クローニング部位に含まれる制限酵素部位の制限酵素で発現ベクター及び挿入すべき外来遺伝子を消化し、それらをアニーリングして外来遺伝子をクローニング部位に挿入し、リガーゼで処理することにより閉環したプラスミドベクターとすることができる。宿主細胞を、得られた組換えベクターで常法により形質転換し、宿主細胞を培養して外来遺伝子を発現させて所望のポリペプチドを生産させる。生産されたポリペプチドは、HATタグを有するので、Ni固相化カラムに通し、吸着して回収する。回収したポリペプチドは、蛍光色素結合部位を有する場合には、上記した蛍光色素により可視化することができ、電気泳動にかけた場合には電気泳動のバンドを明確に可視化することができる。さらに、配列特異的プロテアーゼの認識部位を有する場合には、該プロテアーゼで処理することによりタグ部分を切断除去し、目的の外来タンパク質を得ることができる。あるいは、得られた組換えベクターを用いて、無細胞(セルフリー)タンパク合成系で外来ポリペプチドを生産することもできる。無細胞タンパク合成系も既に確立されており、そのためのキットも市販されているので、ベクターさえあれば容易に実施することができる。
【0027】
なお、クローニング部位に外来遺伝子を挿入する方法は、上記の通り、制限酵素とリガーゼを用いた常法により行なってもよいが、外来遺伝子が、PCRにより増幅されたものである場合には、LIC(ligation independent cloning)法を用いることが好ましい。LIC法自体は周知であり、LIC法を用いる発現用キットも市販されている(Novagen社)。LIC法は、T4 DNAポリメラーゼの一本鎖エキソヌクレアーゼ活性(二本鎖のうちの一本鎖を3'末端から切断していく活性)を利用して通常の制限酵素接着末端よりも接着部分が長い(十数塩基)接着末端を人工的に作り出し、発現ベクターと外来遺伝子とをアニーリング後、ライゲーション反応なしでそのまま宿主細胞に形質転換する方法である。すなわち、外来遺伝子をPCRで増幅する際のフォワード側及びリバース側プライマーとして、増幅すべき外来遺伝子と相補的な塩基配列の5'側に、発現ベクターのマルチクローニング部位中の部分領域と相補的な塩基配列(十数塩基)を付加(以下、「付加領域」)したオリゴヌクレオチドを用いる。PCRの1サイクル目において、各プライマーは、増幅すべき外来遺伝子と相補的な部分がハイブリダイズし、これがプライマーとして機能して伸長が起きる。このとき、付加領域は、外来遺伝子とはハイブリダイズせず、一本鎖のまま残る。しかし、1サイクル目で形成されるDNA鎖は、末端に付加領域を含むものであるので、2サイクル目以降は付加領域も鋳型として機能し、結局、外来遺伝子の両末端に、各付加領域が付加された二本鎖DNA断片が増幅産物として得られる。これをT4DNAポリメラーゼで処理すると、そのエキソヌクレアーゼ活性により二本鎖のうちの一本が末端から1塩基ずつ切断されていき、接着末端が形成される。一本鎖の突出領域が十数塩基になる条件で処理する。一方、発現ベクターも、適当な制限酵素で消化して開環し、同様にT4DNAポリメラーゼで処理して、付加領域と相補的な配列が一本鎖となるように調製し、これらをアニーリングすると、二本鎖の閉じたプラスミドが得られる。この閉じたプラスミドは、発現ベクターと挿入断片とがハイブリダイズしている領域が各十数塩基と長いので安定であり、リガーゼによるライゲーション反応を行なわなくてもそのまま形質転換や無細胞合成系に用いることができる。なお、形質転換後、宿主細胞内で、宿主細胞が有する天然のリガーゼによりライゲーションが起きて、DNAの背骨が共有結合された完全に閉じた二本鎖プラスミドとなる。LIC法を用いると、リガーゼを用いたライゲーション反応が不要になるので簡便である。配列番号1に示す塩基配列では、エンテロキナーゼ認識部位の直下流にEcoT22I部位(配列番号1の250nt〜255nt)が位置し、593nt〜600ntにNotI部位が位置する。なお、配列番号1に示すLICベクターでは、該ベクターを制限酵素EcoT22IとNotIで消化して開環し、上記の通りT4DNAポリメラーゼで処理するので、EcoT22I部位とNotI部位の間(配列番号1の256nt〜592nt)は、EcoT22I-NotI処理により除去される領域であるから、この部分は任意の配列であってよい。
【0028】
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0029】
実施例1
1. 発現ベクターの構築
(1) 市販のベクターであるpET160-DEST(商品名、Invitrogen社)は、大腸菌用の発現ベクターであり、本実施例で利用するLumio(商品名)タグコード領域とTEVプロテアーゼ認識部位を含む。pET160-DEST(商品名、Invitrogen社)の6xHisタグの直下流からT7ターミネーター領域までの部分をPCRにより増幅した(図1参照)。用いたフォワード側プライマーは、tgtcctggctgttgcggtggcggcgaaaacctgtattttcag(配列番号5)、リバース側プライマーは、aaggggttatgctagttattgctcagcggtggcagcag(配列番号6)であった。PCRは、94℃、15秒間の変性工程、50℃、30秒間のアニーリング工程及び74℃、1分間の伸長工程から成るサイクルを30回繰り返すことにより行なった。得られた増幅断片を鋳型とし、2回目のPCRを行なった。2回目のPCRでは、リバース側プライマーとしては上記と同様、配列番号6に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを用い、フォワード側プライマーとしては、acaacaagggtggtggtggctgttgtcctggctgtt(配列番号7)を用いた。配列番号7に示す塩基配列を有するプライマーは、鋳型とハイブリダイズしない領域を5'側に付加したものである。このようなフォワード側プライマーを用いてPCRを行なうと、得られる増幅断片は、フォワード側プライマーの5'末端までを含む二本鎖DNAとなるので、結局、増幅断片は、1回目のPCRで得られた増幅断片に、2回目のPCRで用いたフォワード側プライマーの、5’側の付加領域までを含むものとなり、5’側にその分だけ伸長されたものになる。そして、この新たに5’側に伸長した領域は、化学合成するプライマーの塩基配列となるので、任意の塩基配列を5’側に伸長させることができる。以下、同様にして、3回目、4回目、5回目のPCRを行い、開始コドン上流のスペーサー領域、開始コドン、交互領域及びHAT領域を含む領域を2回目〜5回目のPCRにより5’側に伸長していき、最終的には、開始コドン上流のスペーサー領域からT7ターミネーターまでを含む断片を増幅した(図2参照)。なお、3回目、4回目、5回目のPCRで用いたフォワード側プライマーは、それぞれ配列番号8、配列番号9及び配列番号10に示す。リバース側プライマーは全てのPCRにおいて、1回目のPCRで用いたものと同じであり、PCR条件も上記した1回目と同じであった。なお、開始コドンとその上流の3塩基、すなわち、catatgの領域は制限酵素NdeI切断部位である。なお、各増幅産物は、アガロースゲル電気泳動で精製して用いた(以下、同様)。
【0030】
(2) 上記(1)で得られた二本鎖DNA増幅断片を鋳型として用い、該増幅断片の5'末端からTEVプロテアーゼ認識部位コード領域の少し下流までの領域を増幅した。この際、リバース側プライマーの5'側に、BamHI部位を含む領域を付加したものをリバース側プライマーとして用いた(図3参照)。この際に用いたフォワード側プライマーを配列番号11、リバース側プライマーを配列番号12に示す。得られた増幅断片をNdeIとBamHIで消化し、両端にそれぞれNdeIとBamHI消化による接着末端を有する二本鎖DNA断片を得た。なお、制限酵素消化物は、アガロースゲル電気泳動で精製して用いた(以下同様)。一方、市販の発現ベクターであるpET-23b(商品名、Novagen社)は、T7プロモーター、リボソーム結合部位、マルチクローニング部位(MCS)、T7ターミネーター、f1 origin、アンピシリン耐性遺伝子などを含む発現ベクターである(図4参照、MCS及びその近傍の塩基配列を配列番号13に示す)。pET-23b(商品名、Novagen社)を同様にNdeIとBamHIで消化し、上記二本鎖DNA断片とアニーリングし、T4DNAリガーゼによりライゲーションした(図3参照)。
【0031】
(3) 得られた組換えベクターを、常法により大腸菌株TOP10(Invitrogen社)に形質転換を行い、寒天プレートに撒きコロニーを形成させた。得られた形質転換株からプラスミドDNAを回収し、DNAシーケンサーにより、意図した塩基配列が含まれていることを確認した。
【0032】
2. 外来遺伝子の挿入
(1) 外来遺伝子の挿入は、LIC法により行なった。すなわち、外来遺伝子をPCRにより増幅する際に用いるフォワード側プライマーとして、増幅する外来遺伝子の5’末端領域と同一の塩基配列を有する15塩基対の領域の5'側に、さらに、cgggatccggatgacgacgacaagatgcat(配列番号14)を付加したものを用いた。リバース側プライマーとしては、増幅する外来遺伝子の3’末端領域の相補鎖と同一の塩基配列を有する13塩基対の領域の5’側にさらにcgccggcgaagaggatgagctcgcc(配列番号15)を付加したものを用いた。これにより、所望の外来遺伝子の両端にそれぞれ配列番号14及び配列番号15に示す塩基配列が付加された二本鎖DNA断片が増幅された。なお、用いたフォワード側プライマーにはBamHI部位及びエンテロキナーゼ認識部位が含まれ、リバース側プライマーにはXhoI部位及びNotI部位が含まれる。得られた増幅産物をBamHIとXhoIで消化し、両末端を接着末端とした。
【0033】
(2) 一方、上記1で作製した発現ベクターと、同様にBamHIとXhoIで消化し、上記(2)で作製した、BamHIとXhoIで消化した増幅断片とをアニーリングし、T4 DNAリガーゼでライゲーションして、外来遺伝子を組み込んだ組換えベクターを得た。
【0034】
3. 外来タンパク質の生産
得られた組換えベクターを用い、コムギ胚芽無細胞合成系で外来タンパク質を生産した。コムギ胚芽無細胞合成系は、市販のキット(セルフリーサイエンス社製)を用い、キットに添付されている指示書通りに実験操作を行った。生成物は、アガロースゲル電気泳動により精製し、バンドは、Lumioタグ(商品名)を利用して蛍光検出した。なお、バンドの強度から、タンパク質の発現効率を概ね知ることができる。
【0035】
4. TEVプロテアーゼ認識部位中のリボソーム結合部位の消去
得られた組換えベクターを無細胞合成系で発現させると、電気泳動バンドから、2種類のタンパク質が生産されていることがわかった。これはTEVプロテアーゼ認識部位中に、リボソーム結合部位様の配列があり、これがリボソーム結合部位として機能して、その下流をN末端とする、不所望の第2のタンパク質が生産されていることがわかった。そこで、この部分にサイレントミューテーションを導入して、不所望のリボソーム結合部位を解消した。すなわち、配列番号1に示す塩基配列中の217nt〜219ntのtctをtttに変更し、223nt〜225ntのggaをtccに変更した。これにより、TEVプロテアーゼ認識部位中のリボソーム結合部位は解消され、不所望のタンパク質が生産される問題は解消した。なお、このサイレントミューテーションは具体的に次のようにして導入した。変異導入前ベクターをテンプレートとして、217nt〜219ntのtctをtttに変更し、223nt〜225ntのggaをtccに変更したプライマーを以下の配列のように準備した(変更した配列は下線部分に相当)。For-1:5'-ATATACATATGATTACGCCAAGCTTGAAGGATCATCTCATCCAC-3'(配列番号28)
Rev-1:5'-GCTCGAATTCGGATCCCGGGACTGAAAATACAGGTTTTCGCCGCCACCGCAACAGCCAGGACAACAGCC-3'(配列番号29)
For-2:5'-GGCGAAAACCTGTATTTTCAGTCCCGGGATCCGAATTCGAGCTCCGTCGACAAGCTTGCGGCCGCA-3'(配列番号30)
Rev-2:5'-GGTGGCAGCAGCCAACTCAGCTTCCTTTCGGG-3'(配列番号31)
それぞれ、(For-1,Rev-1)と(For-2,Rev-2)をペアでPCRを行いそれぞれにフラグメント1とフラグメント2のPCR断片を得た。さらにプライマーFor-1とRev-2とフラグメント1と2を加えて2回目のPCRを行った。得られたフラグメントはインサート側として制限酵素NdeIとBpu1102Iで処理した。また、同様に変異導入前ベクターにもホスト側として制限酵素NdeIとBpu1102Iで処理した。インサートとホストをアニーリングし大腸菌Top10(インビトロジェン社)へ形質転換し、寒天プレートへ殖菌した。37℃に静置してできたコロニーをさらに10mLのLB培地で一晩培養を行い、そこからプラスミドを抽出した。抽出後、DNAシーケンサー(ABI3700)により配列を確認した。得られた組換えベクターのT7プロモーター近傍からT7ターミネーターまでの塩基配列を配列番号1に示す。
【0036】
実施例2 交互領域のサイレントミューテーションによる発現効率の向上
実施例1で得られた発現ベクターは、それ自体でも十分な発現効率を有するが、発現効率をさらに向上させることを目指して、交互領域及びHATタグの5’末端のリジンをコードする領域に種々のサイレントミューテーションを導入し、発現効率を比較した。導入したサイレントミューテーションを図5に示す。これらのサイレントミューテーションの導入は、実施例1(1)で用いたフォワード側プライマーの塩基配列を図5に示す配列を含むように改変することにより行なった。コムギ胚芽無細胞合成系にてタンパク合成し、アガロースゲル電気泳動にかけ、Lumioタグ(商品名)を利用してバンドを検出した結果、図5に示すS1の場合が最もバンド強度が高く、発現量が多いことが確認された。すなわち、交互領域を配列番号3の塩基配列とし、HATタグのN末端であるリジンをコードするコドンをaaaとすることにより最も発現量が多かった。従って、以下の実験では、図5に示すS1の塩基配列を持つ発現ベクターを用いた。この発現ベクターの塩基配列を配列番号27に示す。
【0037】
実施例3 種々の外来タンパク質の生産
実施例2で作製した組換えベクターをBamHIとXhoIで処理して外来遺伝子を切り出し、この部分に他の各種外来遺伝子を挿入して外来タンパク質の生産を行なった。なお、実施例1及び2で作製した組換えベクターは、LIC法を容易に行なうことができる、いわゆるLICベクターである。すなわち、他の外来遺伝子を発現させる場合には、上記の組換えベクターをBamHIとXhoIで消化して、組換えベクターに含まれていた元の外来遺伝子を除去し、T4 DNAポリメラーゼで処理してそのエキソヌクレアーゼ活性により両末端の二本鎖部分を消化して十数塩基の一本鎖部分を突出させ、一方、増幅すべき新たな外来遺伝子をPCRにより増幅する際のプライマーとして、上記配列番号14及び配列番号15に示す塩基配列又はその部分領域をそれぞれフォワード側プライマー及びリバース側プライマーの5’末端に付加したプライマーを用いて増幅し、T4 DNAポリメラーゼで処理して末端に一本鎖を突出させ、それらをアニーリングすることにより、十数塩基のサイズでハイブリダイズした安定な組換えベクターが得られる。これは、ライゲーション反応を行なうことなくそのまま形質転換や無細胞タンパク合成系に供することができる。なお、LIC法は、これを行なうためのキットがNovagen社から市販されており、その添付文書に記載された常法に従って行なった。なお、増幅断片は、上記したLICベクターの創製の場合と異なり、BamHI部位及びXho部位を有する必要性はないので、フォワード側プライマーとしては、増幅する外来遺伝子の5’末端領域15塩基と同一の配列を有するオリゴヌクレオチドの5'末端にgac gac gac aag atg(配列番号25)を付加したものを用い、リバース側プライマーとしては、増幅する外来遺伝子の3’末端領域の相補鎖の13塩基と同一の配列を有するオリゴヌクレオチドの5’末端にtc ctc ttc gcc gga aat(配列番号26)を付加したオリゴヌクレオチドを用いた。増幅断片、及びBamHIとXhoIで消化後のベクターをそれぞれ、0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)及び1.7 mM dTTP存在下、T4DNAポリメラーゼで処理し(0℃で5分、37℃で5分)両末端にそれぞれ一本鎖を突出させた。次いで、これらをアニーリングして閉じた組換えベクターを得た。この組換えベクターは、ライゲーション反応を行なうことなくそのままコムギ胚芽無細胞合成系に供し、外来タンパク質を生産させた。
【0038】
この方法により、数十種類の外来遺伝子を発現させ、タンパク質が生産されるか否か、生産された場合、可溶性タンパク質として生産されるか否かを調べた。発現させた外来遺伝子のGenBankアクセッション番号、その遺伝子の塩基配列及びアミノ酸配列を記載した配列表中の配列番号、本実験において発現させた各外来遺伝子中の領域を下記表1に示す。なお、表1中、「発現させた領域の塩基配列」の欄は、もとになる遺伝子全長の塩基配列を記載した配列番号と、その塩基配列中で本実験において発現させた領域及び必要に応じて該領域に付加させた終止コドンを示す。例えば、番号1では、配列番号32のうちの245番塩基から895番塩基までの領域に終止コドンTAAを付加した配列を発現させたことを示す。同様に、「発現させた領域のアミノ酸配列」の欄は、例えば番号1では、配列番号33のうちの15番アミノ酸から231番アミノ酸までの領域を発現させたことを示す。
【0039】
【表1−1】


【0040】
【表1−2】


【0041】
上記生産実験の結果、65種類の外来タンパク質のうち、57種類が生産された(88%)。また、65種類のうち、39種類が可溶性タンパク質として生産された(60%)。
【0042】
比較例1
比較のため、種々の市販の発現ベクター(pET-19b、pET-11d、pET-15b、pET-21a及びpET-28a (以上、Novagen社製))、(pET-160(Invitrogen社製)、並びにpGEX-1、pGEX-2T、pGEX-4T2及びpGEX-6P(以上、GEヘルスケア社製)を用い、常法によりそれらのMCS中に外来遺伝子を組み込み、上記と同じ合成系でタンパク質生産させた。その結果、86種類の外来タンパク質のうち、20種類が生産された(23%)。
【0043】
これらの結果から、本発明の発現ベクターでは、市販の発現ベクターよりも発現効率が明らかに高く(すなわち、多くの種類の外来ポリペプチドが生産可能)、また、可溶性ポリペプチドとして生産される確率も明らかに高くなることが明らかとなった。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施例で、蛍光色素結合部位コード領域やTEVプロテアーゼ認識部位等を切り出した、市販の発現ベクターpET160-DEST(商品名、Invitrogen社)の遺伝子地図と部分塩基配列を示す図である。
【図2】本発明の実施例において、交互領域、HATタグコード領域、蛍光色素結合部位コード領域やTEVプロテアーゼ認識部位等を含むDNA断片を増幅するPCR法を説明するための図である。
【図3】本発明の実施例において、交互領域、HATタグコード領域、蛍光色素結合部位コード領域やTEVプロテアーゼ認識部位等を含むDNA断片を増幅するPCRと、該PCRにより得られた増幅断片を、市販の発現ベクターpET-23b(商品名、Novagen社)に組み込む方法を説明するための図である。
【図4】本発明の実施例において用いた市販の発現ベクターpET-23b(商品名、Novagen社)の遺伝子地図及びそのマルチクローニング部位近傍の塩基配列を示す図である。
【図5】本発明の実施例で作製した発現ベクターの交互領域及びHATタグのN末端のリジンのコドンに入れた種々のサイレントミューテーションを示す図である。

特許の図
【出願人】 【識別番号】505155528
【氏名又は名称】公立大学法人横浜市立大学
【出願日】 平成18年11月16日(2006.11.16)
【代理人】 【識別番号】100088546
【弁理士】
【氏名又は名称】谷川 英次郎
【公開番号】 特開2008−118967(P2008−118967A)
【公開日】 平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願番号】 特願2006−309842(P2006−309842)