| 【発明の名称】 |
サリニヴィブリオ属の新種微生物 |
| 【発明者】 |
【氏名】麻生 義継
|
| 【要約】 |
【課題】本発明は、アンモニアを基質とし直接菌体タンパクへと変換する細菌であって、高塩濃度でも増殖する菌体の提供、該菌体を構成要素とするアンモニア処理剤の提供、及びアンモニアの処理方法を提供することを目的とする。
【構成】本発明は、塩濃度60g/L以上で、アンモニアを資化するサリニヴィブリオ・コスチコラ属(Salinivibrio.costicola)に属する微生物であり、サリニヴィブリオ・コスチコラ・TOA1 FERM P−20904として寄託されている。本発明の微生物は、高塩濃度でも増殖することができるから、雑菌との共雑のおそれは少なく、窒素供給を必要とせず、炭素供給がなされるだけで、増殖可能であり、増殖するとともに、アンモニアを処理することができる。また、本発明によるアンモニア処理剤にあっては、堆肥化装置のアンモニア除去にも適用することがで、本発明のアンモニア処理方法にあっては、効率よくアンモニアを除去することができる。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 塩濃度6%以上で、アンモニアを資化するサリニヴィブリオ・コスチコラ属(Salinivibrio.costicola)に属する微生物。 【請求項2】 微生物がサリニヴィブリオ・コスチコラ・TOA1 FERM P−20904である、請求項1に記載の微生物。 【請求項3】 塩濃度6%以上で、サリニヴィブリオ・コスチコラ・TOA1 FERM P−20904を含むことを特徴とする、アンモニア処理剤。 【請求項4】 サリニヴィブリオ・コスチコラ・TOA1 FERM P−20904により塩濃度6%以上でアンモニアを処理することを特徴とする、アンモニア処理方法。
|
【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、サリニヴィブリオ属(Salinivibrio)の新種微生物に関する。特には、高塩濃度下においてアンモニアを資下する微生物に関し、また、該微生物を用いるアンモニア処理剤、及びアンモニア処理方法に関する。 【背景技術】 【0002】 現在、悪臭防止法で規制されている化学物質は22種類にも及び、アンモニアもその一つであるが、アンモニアは濃度5ppmという微量でも不快感を与えるほど、人間のアンモニア臭気に関する感度は非常に高い。 アンモニアは下水処理場、し尿処理場や家畜の糞尿堆肥化工場での悪臭源として問題になっている。また、家庭用生ゴミ処理装置においても同様の問題がある。 【0003】 アンモニアの処理方法としては、物理的・化学的脱臭方法が一般的であり、処理効率的に安定である反面、化学薬品の大量使用や処理後の廃液の問題、燃焼に必要な大量のエネルギー問題等、環境的・コスト的に問題が多い。 【0004】 一方、生物学的方法は2次公害の可能性が低く、経済的な脱臭方法であることから、推奨されている。 一般に、アンモニアの脱臭に用いられる微生物は、主に硝化細菌、脱窒細菌であり、たとえば、硝化細菌である耐塩性のアンモニア酸化細菌が提案されている(例えば特許文献1)。 【特許文献1】特開平9−201187号公報 【0005】 特許文献1に記載されたアンモニア酸化細菌にあっては、例えば、排水処理に該細菌を用いた場合、排水組成の変動により、処理能力が低下すると言う問題がある。 また、硝化細菌や脱窒細菌は多くの通性嫌気性細菌にくらべ増殖速度が極めて小さいため、培養槽に他の細菌が混入した場合、最終的に硝化による脱臭の効果が失われるという問題がある。 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 本発明は、アンモニアを酸化するのではなく、アンモニアを基質とし直接菌体タンパクへと変換する細菌であって、高塩濃度でも増殖する菌体の提供、該菌体を構成要素とするアンモニア処理剤の提供、及びアンモニアの処理方法を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0007】 請求項1に記載の発明は、塩濃度6%以上で、アンモニアを資化するサリニヴィブリオ・コスチコラ属(Salinivibrio.costicola)に属する微生物である。 請求項2に記載の発明は、微生物がサリニヴィブリオ・コスチコラ・TOA1 FERM P−20904である、請求項1に記載の微生物である。 請求項3に記載の発明は、塩濃度6%以上で、サリニヴィブリオ・コスチコラ・TOA1 FERM P−20904を含むことを特徴とする、アンモニア処理剤である。 請求項4に記載の発明は、サリニヴィブリオ・コスチコラ・TOA1 FERM P−20904により塩濃度6%以上でアンモニアを処理ことを特徴とする、アンモニア処理方法である。 【発明の効果】 【0008】 本発明の微生物は、高塩濃度でも増殖することができることから、雑菌との共雑のおそれは少ない。なお、ここで高塩濃度とは、少なくとも海水の塩濃度より濃い場合をいう。 また、アンモニアを直接菌体タンパクに資化することができることから、炭素供給がなされるだけで、増殖可能である。すなわち、窒素供給を必要とせず、増殖するとともに、アンモニアを処理することができる。 さらに、本発明によるアンモニア処理剤にあっては、堆肥化装置のアンモニア除去にも適用することができる。 そして、本発明のアンモニア処理方法にあっては、効率よくアンモニアを除去することができる。 【0009】 この発明の上述の目的、その他の目的、特徴および利点は、以下の発明を実施するための最良の形態の詳細な説明から一層明らかとなろう。 【発明を実施するための最良の形態】 【0010】 本発明者らは、オーストラリアの塩湖、湖沼又は海から採取した塩水サンプルより好塩性のアンモニア資化性に優れた菌株、TOA1株を分離した。 このTOA1株は、独立行政法人産業技術総合研究所・特許生物寄託センターにFERM P―20904として寄託されている。 【0011】 TOA1株の分離法及びその菌学的性質などについては、後述の実施例において説明するが、ここでは分離法の概要につき説明する。 各地において検体を採集し、検体からの菌株分離のために、表1に示す基礎培地を用いた。 予め2%の濃度でグルコース(Wako)又は炭酸水素ナトリウム(Wako)を添加した基礎培地をそれぞれ用意した。 検体をそれぞれの培地に添加し、よく混和した後、37℃、96時間静置培養した。 培養後、菌が増殖して明らかに培地が混濁したものについて、塩濃度8%に調整したハートインフュージョン寒天培地(以下「HI寒天培地」という)(日水化学)に接種し、37℃、48時間培養後、コロニーで単離可能なものを釣菌し、再度、前記の培地にて37℃、48時間培養した。 これにより明かに培地が混濁したものをHI寒天培地に再度接種し、37℃、24時間培養して純化し分離株とした。 【0012】 【表1】
【0013】 本発明における塩濃度は、6%以上であり、12%以下であればよい。好ましくは7%以上であり、10%以下である。より好ましくは8%である。 塩濃度6%以下でも、12%以上でも菌株の増殖力は低下するからである。 【0014】 本発明のアンモニア処理剤は、塩分を6%以上を含み、サリニヴィブリオ・コスチコラ・TOA1 FERM P−20904を含むものであればよく、その他に、保護剤、pH調整剤、培地成分などを含むものであってもよい。該新規微生物は、処理される媒体中に炭素源があれば、アンモニアを直接菌体タンパクに資化することができ、増殖することができるからである。 【0015】 保護剤とは、スキムミルクやグルタミン酸ソーダ、グリセリン、ジメチルスルホキシド、血清のごときものである。 微生物が生育する環境のpHは重要であり、ある微生物の生育のためには、生育環境のpHを調節することが必要となるときもあり、かかるpH調整剤としては、例えば、リン酸塩、炭酸塩等が挙げられる。 培地は、微生物の増殖、維持に必要な栄養素を含有していることが必要であり、栄養素が培地成分となる。かかる培地成分としては、例えば、炭素源たるグルコース等が挙げられる。 【0016】 また、本発明のアンモニア処理剤の状態は、液体状、半固体状、固体状であってもよい。 半固体状とは、例えば、寒天ゼリー、ゼラチンゼリー、ペクチンゼリー等のように、ある条件下でゲル・ゾルの状態を示すものである。 固体状とは、例えば、菌そのものを凍結乾燥したものや、多孔質のセラミックに本願発明の微生物を含む液体を担持させたものが挙げられる。 【0017】 リン酸一水素ナトリウム、リン酸一水素カリウム、硫酸マグネシウム、グルコース、塩化ナトリウムを含む溶液にて、サリニヴィブリオ・コスチコラ・TOA1 FERM P−20904を培養し、溶液自体を液体状アンモニア処理剤とすることができる。 【0018】 前記培養液に、寒天を添加し、半固体状のアンモニア処理剤とすることができる。 【0019】 110℃で15分間滅菌したスキムミルク、グルタミン酸ナトリウムを、スキムミルク濃度10%、グルタミン酸ナトリウム1%となるように溶解し、pHは調整を行わない溶液に、リニヴィブリオ・コスチコラ・TOA1 FERM P−20904を分散させ、凍結乾燥することにより、固体状のアンモニア処理剤とすることができる。 【0020】 本発明のアンモニア処理方法とは、サリニヴィブリオ・コスチコラ・TOA1 FERM P−20904を含む媒体中にアンモニアをそのまま流入させてもよく、サリニヴィブリオ・コスチコラ・TOA1 FERM P−20904を担体に固定化し、固定化担体とアンモニアを接触させてもよい。 接触方法としては、液体中にアンモニアを溶解すると同時に菌と接触させてもよく(例えば、曝気法)、アンモニアを気体状で培地に接触させてもよい(例えば、通風循環方式)。 好ましくは、曝気法である。菌とアンモニアの接触効率がよく、管理も容易だからである。 【0021】 以下、実施例において、さらに本発明を詳細に説明するが、本発明は、実施例に限定されるものではない。 【実施例】 【0022】 (TOA1菌株の分離) オーストラリア、南オーストラリア州内の塩湖、湖沼及び海の計14ヶ所より、塩の結晶、塩水及び海水の検体を採集した。 検体からの菌株分離のために、表1に示す基礎培地を用いた。 予め2%の濃度でグルコース(Wako)又は炭酸水素ナトリウム(Wako)を添加した基礎培地27mLをそれぞれ用意した。 検体が液体である場合は3mL、固体である場合は3gをそれぞれの培地に添加し、よく混和した後、37℃、96時間聖地培養した。 培養後、菌が増殖して明らかに培地が混濁したものについて、塩濃度8%に調整したHI寒天培地(日水化学)に接種し、37℃、48時間培養後、コロニーで単離可能なものを釣菌し、再度、前記の培地にて37℃、48時間培養した。 これにより明かに培地が混濁したものをHI寒天培地に再度接種し、37℃、24時間培養して純化分離株とした。 【0023】 (TOA1菌株の菌学的性質) (1)形態的性質 細胞の形及び大きさ:栄養細胞の大きさは5〜10μmの桿菌である。 細胞の多形性の有無:無 運動性の有無:有 鞭毛の着生状態:有 (2)培養的性質 肉汁寒天平板培養:本菌は、HI寒天培地において、37℃で生育する。コロニーの色調はクリーム色、形状は円形、隆起状態は扁平状、周縁は全縁、表面の形状等はスムーズで、透明度は半透明、粘稠度はバター様である。 肉汁液体培養:本菌は、HIブイヨンにおいて、37℃で生育する。 (3)生理学的性質 グラム染色性:陰性 硝酸塩の還元:陰性 脱窒反応:陰性 VPテスト:陰性 インドール生成:陰性 硫化水素の生成:陰性 クエン酸の利用:陰性 無機窒素源の利用:アンモニア 色素の生成:無 ウレアーゼ:陰性 オキシダーゼ:陽性 生育の範囲(pH、温度等):NaCl濃度4%以上(2%未満では生存できない)、pHは5.2〜8.9、温度は15〜45℃である。 酸素に対する態度:好気性 糖類からの酸、ガスの生成の有無(ガスの発生は無) L−アラビノース:陰性 D−ガラクトース:陰性 ラクトース:陰性 D−ソルビトール:陰性 D−マンニトール:陰性 新種の特徴を示す必要なもの ア)TSI培地(栄研化学)を用いた糖分解性試験、SIM培地(栄研化学)を用いた硫化水素・インドール産生性試験、リジン脱炭酸能試験の結果を表2に示す。 【表2】
イ)AP120E(Biomerieux)による生化学的性状を表3に示す。 【表3】
ウ)各種炭水化物発酵、アミノ酸同化試験の結果を表4に示す。 【表4】
(4)化学的分類学的性質 ア)Salinivibrio属の属を同定するPCR(Polymerase Chain Reaction)法 Salinivibrio.costicola ATCC33508Tを含む参考株計5株と分離株について、16srRNA遺伝子部分でSalinivibrio属に特異的な塩基配列を標的としたPCR法を行った結果を図1に示す。図1よりSalinivibrio.costicola ATCC33508TとTOA1株で増幅が確認され、TOA1株がSalinivibrio属と同定された。 なお、図1中、1:TOA1、S:S.costicola ATCC33508T、C:V.choleraeKVC88008、P:V.parhaemolyticusKE10464、F:V.fluvialisKIH01-143、A:V.alginolyticusAKO101、E:E.coliJM109、M:マーカーを示す。 イ)DNA−DNAハイブリダイゼーションによる相同性 PCR法でSalinivibrio属と同定されたTOA1について、Salinivibrio.costicola ATCC33508Tを基準株として用いたときの、DNA−DNAハイブリダイゼーションの結果は、本菌株とSalinivibrio.costicola ATCC33508Tとの相同性は40.8%であった。 従って、本菌株は新種であると判断した。 【0024】 (アンモニア処理1) 1)供試菌株:サリニヴィブリオ・コスチコラ・TOA1 FERM P−20904 株を塩濃度8%に調整したHIブイヨンで37℃、24時間培養し、これをHI寒天培地(日水化学)に接種し、37℃、24時間培養した。培地上に増殖した菌集落を供試菌株とした。 2)培養液組成:培養液は炭素源を含み、窒素源を含まないNaCl濃度8%の200mMのリン酸緩衝液である。 組成を表5に示す。 【表5】
3)装置:装置の模式図を図2に示す。 装置には送風量2.1L/分で、アンモニア濃度を約200ppmに調整した。 培養槽は有効容量5Lのものを用い、4Lの培養液を加えた。 なお、アンモニア発生槽と培養槽は温度を一定にするために、恒温槽(23℃)中に設置した。 4)脱臭効率測定:流入アンモニア濃度と流出アンモニア濃度を1日ごとに検知管式気体採取機(GV100;GASTEC)及びアンモニア検知管(GASTEC No.3La アンモニア)を用いた。 アンモニア濃度測定直後に培養液を10mL採取し、pHと生菌数の推移を測定した。 なお、測定pHが7.0以上のとき、培養液50mL抜き取り、スクロース4gを添加した基礎培地50mLを添加した。 結果を図3に示す。 【0025】 図3より明らかなように、菌無添加でのアンモニア除去率が75%を下回るまでに要した日数が8日間であるのに対し、菌添加の場合は57日間で除去率が90%以上であった。 【0026】 (アンモニ処理2) アンモニア処理1と同様に供試菌株を培養し、図4に示す仮想動物飼育室(室内容積約8m3)にてアンモニア除去率を測定した。 【0027】 アンモニアと菌との接触方法として、通風循環方式を用いた。 なお、室内空気は1時間に4循環するようにし、通風量毎分5.5L中のアンモニア濃度を25ppmとなるように調整した。 脱臭槽内に接触装置として、2000mLのビーカーを設置した。 脱臭装置の概要を図5−1、図5−2に示す。 【0028】 2000mLのビーカーに500mLの培地を注入し、菌の有無によるアンモニア除去率をアンモニア処理1と同様に測定した。 また、脱臭能の持続性ををも検討した。なお、脱臭能の持続性の検討においては、培地のpHが7を超えた時点でスクロース2gを添加した。 結果を図6、図7に示す。 【0029】 図6より明かなように、菌接種により脱臭効果は未接種のものに比べ約2倍の効果を示した。また、図7より明かなように脱臭能の持続性も認められた。 【産業上の利用可能性】 【0030】 本発明における微生物は、環境浄化関連産業に利用することができる。 【図面の簡単な説明】 【0031】 【図1】Salinivibrio属の属を同定するPCR法によるTOA1、参考株のアガロースゲル電気泳動像を示す。 【図2】実験装置の概要を示す。 【図3】約200ppmのアンモニアを流入させたときのアンモニア除去率とpH、菌の推移を示す。 【図4】仮想動物飼育室概要を示す。 【図5−1】脱臭装置の一例を示す。 【図5−2】脱臭装置の一例を示す。 【図6】菌接種による脱臭効果への影響を示す。 【図7】脱臭能の持続性を示す。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】506239739 【氏名又は名称】株式会社 東亜電機工業社
|
| 【出願日】 |
平成18年7月12日(2006.7.12) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100079577 【弁理士】 【氏名又は名称】岡田 全啓
|
| 【公開番号】 |
特開2008−17757(P2008−17757A) |
| 【公開日】 |
平成20年1月31日(2008.1.31) |
| 【出願番号】 |
特願2006−191861(P2006−191861) |
|