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【発明の名称】 複数細胞固定用装置および細胞固定化方法
【発明者】 【氏名】▲高▼橋 淳

【氏名】本間 務

【氏名】伊比井 崇向

【要約】 【課題】固体基板上に複数種類からなる細胞を配列・固定化させた細胞培養固定化担体および細胞アレイの製造するにあたって、目的の領域に細胞を簡便かつ短時間で効率よく捕捉し、かつ機能性細胞の活性を損なわないで捕捉するための方法、およびその方法を用いる装置を提供すること。

【構成】複数種類の細胞培養担体を製造するにあたって、細胞をマニピュレートする駆動力として誘電泳動力を用いる細胞捕捉工程と、機能性細胞を基板または基板に固定された細胞との相互作用により捕捉する工程と、を有する細胞捕捉方法。細胞捕捉用空間を有する流路と、前記空間内の細胞接着領域に細胞を誘導して捕捉する捕捉機構と、を有する細胞固定用装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種類以上の細胞の共培養を行うための細胞固定用装置であって、
細胞捕捉用空間と1以上の流路とを構成する部材と、
前記空間底面上の細胞接着領域と、
前記空間内に導入された細胞を前記接着領域に誘導して捕捉する捕捉機構と、
を有し、
前記捕捉機構が、前記細胞捕捉用空間に不均一電場を発生させるための電極を有することを特徴とする細胞固定用装置。
【請求項2】
前記電極が、正の誘電泳動力によって前記接着領域に細胞を捕捉するように配設されていることを特徴とする請求項1に記載の細胞固定用装置。
【請求項3】
前記電極が、負の誘電泳動力によって前記接着領域に細胞を捕捉するように配設されていることを特徴とする請求項1に記載の細胞固定用装置。
【請求項4】
固体基板上で2種類以上の細胞を共培養するための細胞固定方法であって、
誘電泳動力により少なくとも1種類の細胞からなる第一の細胞を固体基板上に捕捉する第一の捕捉工程と、
前記第一の捕捉工程の後、誘電泳動力を利用しないで、少なくとも1種類の細胞からなる第二の細胞を固体基板上に捕捉する第二の捕捉工程と、
を有する細胞固定化方法。
【請求項5】
前記第二の細胞の捕捉を、前記固体基板表面との相互作用により行い、
前記第一および第二の細胞がそれぞれ前記固体基板と、細胞−基板間結合を介して2次元的な結合を呈することを特徴とする請求項4に記載の細胞固定化方法。
【請求項6】
前記第二の細胞の捕捉を、前記固体基板上に接着した前記第一の細胞との相互作用により行い、
前記第一の細胞が、細胞−基板間結合を介して前記固体基板上に結合し、さらに前記第二の細胞が、前記固体基板上に接着した前記第一の細胞を足場として細胞−細胞間結合を呈することを特徴とする請求項4に記載の細胞固定化方法。
【請求項7】
前記第一の細胞が非実質細胞である請求項4乃至6のいずれかに記載の細胞固定化方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は複数種の細胞を集積させるための装置および方法に関する。より詳しくは、2種類以上の細胞の共培養を目的とし、その中の一種類以上の細胞を誘電泳動力により捕捉するための装置および細胞固定化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロマシニング技術を生命科学分野に応用したマイクロチップ(バイオチップ)の開発が盛んに検討されている。バイオチップは、生体反応を生体外(インビトロ)で再構築することで非常に効率がよく迅速に結果を得ることができる手法であると期待されている。バイオチップの対象はDNAや糖鎖、蛋白質などを用いた相補的な物質との結合試験(バインディングアッセイ)が現在の中心であるが、その中でも近年細胞をバイオチップのターゲットとして用いる数多くの応用や試みが報告されはじめている。その一例としては、基板に細胞をアレイ状に集積させた細胞アレイや、そのように細胞を集積させるための細胞固定用基板がある。これらは、種々の薬物に対する安全性試験や変異原性試験,薬物代謝活性試験,薬物スクリーニング等への応用が期待されている。固定用基板の製造については温度応答性高分子やプリンタヘッドを用いる方法や微小液滴吐出手段を用いる方法等が現在までのところ報告されている(例えば特許文献1および2を参照)。また、近年注目が集まっている再生医療の分野においても、目的の細胞や組織を生体外(インビトロ)で培養することで生体外での再構築を目指す試みが行われている。例えば、コラーゲンを含む培養液中で単相の組織片をインビトロで再構築することで腸、皮膚、角膜、器官および粘膜等の感染組織モデルとする報告(例えば特許文献3参照)がなされている。このように、生体外(インビトロ)で細胞機能を保持した状態で培養を行なうことの出来る試みは現在非常に多くの研究が成されている。
【0003】
生体外(インビトロ)で細胞に対する試験を行なうための技術開発はすでにいくつかの報告がされている。その中でも近年、再生医療や異種細胞間の細胞間コミュニケーションをin vitroで詳細に検討する系として同一空間内における共培養が非常に注目を集めている。共培養とは1つの基板上に2種類以上の細胞を同時に培養する手法のことである。その構成の1つの例として実質細胞と実質細胞の働きを助ける非実質細胞の2種類の細胞を同一基板上で培養する構成が挙げられる。この構成を実現することによって、例えば生体内の細胞―細胞間相互作用を再現することができ、生体の有用なモデルの再構築を容易に実現できるといった利点が挙げられる。なお、ここで言う実質細胞とは例えば、肝臓における肝細胞といった、対象となる臓器や組織における最も重要な働きを担う細胞のことである。本態様において実質細胞と機能性細胞とは同義に扱われる。更にここで言う非実質細胞とは例えば、肝細胞における線維芽細胞のような実質細胞の機能補助を担う能力を有する細胞または、実質細胞の間を埋める間質細胞のことを言う。同一基板上で複数種類の細胞培養を行なう共培養に関しては現在までのところ以下のようなものが提案されている。例えば、非特許文献1は微細加工技術を用いて細胞接着領域を制御することによって実質細胞として肝細胞、非実質細胞として線維芽細胞を選択して微小組織の構築を目指した共培養を行なったことを報告している。この共培養では、代表的な肝機能であるアルブミン生産量で系のサイズ等の最適化を行なっている。また、特許文献4では、温度応答性高分子の一種であるN−イソプロピルアクリルアミドポリマー(PIPAAm)を基板表面にパターニングし、温度調節により基板表面の親水、疎水特性を制御することで細胞の接脱着を調節する細胞固定用基板が開示されている。
【特許文献1】特開2003―33177号公報
【特許文献2】特開2005―140631号公報
【特許文献3】特WO01/092476号公報
【特許文献4】特WO01/068799号公報
【特許文献5】特開2004―267562号公報
【特許文献6】特開昭61―111680号公報
【特許文献7】特開2003―223号公報
【特許文献8】特表2000―505545号公報
【非特許文献1】Journal of Biomechanical Engineering, vol. 13, p.1883−1900 (1999)
【非特許文献2】マイクロ化学チップの技術と応用:丸善株式会社
【非特許文献3】Microfluidic Technology and Applications: Research Studies Press LTD.
【非特許文献4】Analytical chemistry, vol. 74, p.3984−3990 (2002)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら従来の細胞アレイや細胞を接着させるための細胞固定用基板は、機能性細胞を目的領域に接着誘導するためには非常に困難を伴い、熟練作業や、特殊な材料を合成しなければならないといった課題があった。そこで簡便、迅速かつ目的の機能性細胞の活性を維持しながら細胞固定用基板を製造するための方法の開発が望まれていた。
【0005】
よって本発明の目的は2種以上の細胞を配置・固定化させた細胞培養固定化担体または細胞アレイを作製するために各々の細胞を目的領域に機能性細胞の活性を損なわないで配置することができる簡便で効率よい方法およびそのための装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決する本発明は以下の通りである。
【0007】
本発明の第一の態様は、2種類以上の細胞の共培養を行うための細胞固定用装置であって、
細胞捕捉用空間と1以上の流路とを構成する部材と、
前記空間底面上の細胞接着領域と、
前記空間内に導入された細胞を前記接着領域に誘導して捕捉する捕捉機構と、
を有し、
前記捕捉機構が、前記細胞捕捉用空間に不均一電場を発生させるための電極を有することを特徴とする細胞固定用装置である。
【0008】
本発明の第二の態様は、固体基板上で2種類以上の細胞を共培養するための細胞固定方法であって、
誘電泳動力により少なくとも1種類の細胞からなる第一の細胞を固体基板上に捕捉する第一の捕捉工程と、
前記第一の捕捉工程の後、誘電泳動力を利用しないで、少なくとも1種類の細胞からなる第二の細胞を固体基板上に捕捉する第二の捕捉工程と、
を有する細胞固定方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、少なくとも2種類の細胞を同一基板上で共培養するための細胞固定用装置および細胞固定化方法を提供する。さらに当該細胞固定用装置により、1つの基板上に2種類以上の細胞を同時に培養する共培養手法を実現する培養担体、あるいは生体内の細胞―細胞間相互作用をインビトロで再現するための培養担体を提供することができる。さらに、その内の一種類以上の細胞を規定領域に捕捉する駆動力として誘電泳動力を用いることで、迅速、低侵襲、かつ非接触な方法により複数種類の細胞群からなる細胞固定用基板を作成することが可能となる。また本発明の細胞固定用装置によって、細胞をアレイ状に固定した培養担体、さらにはアレイパターンのスポットごとに異なる細胞を固定した培養担体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の態様に従うと、本発明の細胞固定用装置は、固体基板上での2種類以上の細胞の共培養を実現するための装置であって、細胞を捕捉するための細胞捕捉用空間と、少なくとも1種類の細胞の接着領域を規定するための捕捉機構とを備えている。細胞捕捉用空間は2以上の部材によって構成される。当該空間の底面部を構成する部材として固定基板が好適に用いることができる。前記部材は、当該空間と外部空間とを連通させる流路を1以上構成しており、この流路を通じて当該空間に細胞、培養液、洗浄液等を導入したり、外部に排出することができる。この流路は、例えば、前記の部材の1つに孔を開けて形成させる、溝を有する固体基板と平面の固体基板とを重ねることで形成させる、あるいはそれらの組み合わせによって形成させる、などの形態をとることができる。
【0011】
このような本発明の態様に従うと、上記の細胞捕捉用空間のひとつの例としてマイクロ流体デバイス(マイクロ流路)を挙げることができる。マイクロ流路を用いることでシリンジポンプ等を用いて規定された方向へ液体を流すことができるため、培地や薬液の交換、細胞の洗浄などを極めて容易に行なうことが出来る。様々なマイクロ流路デバイスのための技術については例えば、非特許文献2および3で詳細に論じられている。本発明の態様に従うと、当該装置は流路内で細胞の集合体から成る微小組織を製造するための装置であり、得られた微小組織をそのまま用いたり、生体外(インビトロ)での評価を行なったりすることを目的として使用される。その一例としては、流路内で複数種類の細胞を培養する共培養系を実現する微小組織を基板上に再構築し得る装置を提供することにより単一細胞や単一種類からなる細胞群に比べて、より生体を模倣した形でのインビトロ細胞活性評価試験を実現することができる。ここでいう“細胞活性”とは前記基板を構成する基材である微粒子と接触できる細胞、組織、の細胞機能に影響を有する能力を指す。さらにここでいう細胞機能とは例えば、細胞接着,細胞増殖,細胞分化,生存,細胞未分化状態の維持,細胞分化状態の制御,細胞死の誘導等のことである。
【0012】
本発明の態様に従うと、上記細胞活性評価とは前記のマイクロ流路を用いた微小組織の評価試験のことである。より具体的には、マイクロ流路内の所定の領域に目的の細胞を接着させて培養液の流通によるせん断応力等の物理的な刺激や薬剤等を用いた化学的な刺激等を与えた際の影響を評価することを目的としている。ここで言う薬剤とは生物学的に活性な化合物であれば良く、例えば抗生物質,防腐剤,酵素阻害剤,解熱剤,消炎剤,増殖因子,抗増殖因子,トランキライザー,サイトカイン,ホルモン,ステロイド,エストロゲン,酵素等の中から選択される。薬剤等によって細胞に与えられた刺激は蛍光,発光,電気化学法,等の任意の検出方法および手段を用いて評価される。
【0013】
本発明の態様に従うと、当該装置は例えば生体外(インビトロ)で使用されて、細胞機能評価をはじめとする細胞機能評価試験や機能性細胞の創出、有用細胞の濃縮を行なうための装置等として使用することができる。ここで言う機能性細胞とは、例えば肝細胞や神経細胞等の生体を構成する体性細胞のことを指す。細胞機能評価試験を行なう場合は、基板表面に接着させた細胞群に対して流れや薬剤等による刺激処理を行なう。刺激に対する細胞応答の計測は任意の手法を用いて行なわれる。具体的には細胞機能に起因して変化する分泌物の量から細胞の活性状態を測定する方法や、蛍光物質を細胞に取り込ませて刺激を与えた後や刺激の前後で変化する蛍光強度を測定することによる手法(蛍光法)又は化学発光,電気化学法等の公知の方法が適用できる。
【0014】
本発明の態様に従うと、当該装置は、細胞捕捉用空間内に1種類以上の細胞を捕捉するための機構を備えており、その駆動力として、誘電泳動力を用いることが特徴となっている。誘電泳動力(dielectrophoresis : DEP)とは、空間に高周波数帯域の交流電圧を印加することによって生じる不均一電場中での分極可能な物質または物体の移動である。周知の電気泳動の現象とは完全に異なり、誘電泳動力はクーロン力からの寄与を受けないことから、電荷を帯びない物質または物体の捕捉やマニピュレーションに対しても適用することができる。誘電泳動を利用した力は電場の不均一性と、電界によって誘導された分離対象粒子内での電荷の再分布との間の相互作用によって生じる。誘電泳動力を駆動力とした物質または物体捕捉やマニピュレーションに関しては特許文献6〜8,非特許文献4等において公知であり微粒子や細胞を用いた報告がなされている。また、誘電泳動力は高周波数帯域の交流電圧によって発生する不均一電場によって誘起されるものなので、電気二重層の緩和時間が有限であるために電気二重層が微粒子に与える影響は無視できる。このようなことから、誘電泳動における物体捕捉やマニピュレーションは電気泳動によるそれと比べると脆弱な力であるものの、非帯電物質等への適用が可能であること、対象物に対する影響も小さなものであること等が特徴として挙げられる。不均一電場中においてプローブ電極と微粒子を考えた場合、微粒子の性質に関連して2種類の誘電泳動力が考えられる。例えば微粒子が溶媒等の周囲環境よりも分極されやすい場合、微粒子がより高磁場の領域に引っ張られる誘電泳動力(正の誘電泳動力;ポジティブDEP)が観察される。逆に微粒子が周囲環境よりも分極されにくい場合、微粒子がより弱い磁場領域に向かって押される誘電泳動力(負の誘電泳動力;ネガティブDEP)がそれぞれ観察される。本発明ではその目的や用途に応じてポジティブDEPおよびネガティブDEPを適宜用いる。
【0015】
本発明の態様に従うと、本発明の細胞固定方法は固体基板上で2種類以上の細胞を共培養するための細胞固定方法である。本細胞固定方法は、誘電泳動力により少なくとも1種類の細胞を固体基板上に捕捉する第一の捕捉工程と、第一の捕捉工程の後、誘電泳動力を発生させないで、少なくとも1種類の細胞を固体基板上に捕捉する第二の捕捉工程と、を有している。
【0016】
ここで、第一の捕捉工程で捕捉される細胞を第一の細胞とし、第二の捕捉工程で捕捉される細胞を第二の細胞とする。第一および第二の細胞は、それぞれ上述のとおり、1種類の細胞を指すこともあれば、2種以上の細胞を指すこともある。第一の細胞または第二の細胞として、2種以上の細胞を用いる場合は、各種の細胞が独立して細胞固定基板上に固定された系を作るために、独立に存在する細胞群を別々に導入することが好ましい。本発明の細胞固定方法では、第二の細胞の捕捉は、固体基板表面との相互作用、または固体基板上に接着した第一の細胞との相互作用、のいずれかにより行うことができる。前者の場合は、第一及び第二の細胞が、それぞれ固体基板と細胞−基板間結合を介して2次元的な結合を呈する。2次元的な結合によって単層の細胞層が形成される。後者の場合は、第一の細胞が、細胞−基板間結合を介して固体基板上に結合し、さらに第二の細胞が、固体基板上に接着した第一の細胞を足場として細胞−細胞間結合を呈する。
【0017】
以下、本発明を実施するための好適な形態について、添付図面を参照しながら説明する。本発明の細胞固定用装置の一例を図1〜3に示す。図1は当該装置の斜視図であり、図2は上面図である。図3は、図2上に示されたI−I線に沿った断面を、側方から見た平面図である。本発明の態様に従うと、上述の天井部基板10及び底面部基板11はガラス,シリコン,石英,またはケイ素をベースとする材料,プラスチック類およびポリマー類等の絶縁性の固体基板を基材として形成することが可能である。より望ましくは光学顕微鏡等での観察が可能な程度の光透過性を有し、該微粒子を表面に固定化する前に、清浄化、前処理等により基板の表面改質を行なえる材質を備えていることが望ましい。
【0018】
本発明における基板の表面改質とは例えば、スライドガラスおよび石英基板等を固体基板として用いる場合に予め行う工程のことである。このような工程として例えば、酸、プラズマ、オゾン、有機系溶剤、水系溶剤、界面活性剤等から選択されるものを用いる方法等を行う工程が挙げられる。それ以外にも、シランカップリング等の処理により所望置換基を固体基板表面へ導入する工程または表面自由エネルギーを制御する工程が挙げられる。
【0019】
本発明の態様に従うと当該装置は、天井部10と底面部11とをそれぞれ構成する2枚の固体基板とからなる微小空間内に設けられた細胞捕捉部15とにより形成され、試薬等の導入部を少なくとも1つ備えている。ここで、細胞捕捉部15とは、本発明の細胞固定用装置の構成として上述した細胞捕捉用空間を指す。また、導入口から容器内にポンプのような送液機器により流体が流路14に導入され、該装置の内部の細胞捕捉部15に到達する。細胞捕捉部15の余剰流体は流路14を経て排出口から排出されるような流路構造を備えていてもよい。当該装置の流路の高さは(天井部と底面部間の距離)100μm程度であり、用いる細胞の大きさや後述する細胞捕捉部の構造等に応じて適宜選択するものとする。本発明の態様に従うと、作成される流路構造体は溝を有する天井部と平面な底面とで構成されたものであってもよいし、天井および底面を構成する2枚の平板を挟み込むスペーサとによって構成されたものでも良い。図4に示された符号40は流路の側壁を構成するスペーサを示しており例えば例えばガラス、テフロン等の高分子材料、その他の好適材料から用いることができる。このスペーサ40の厚みが、流路内の高さ(天井部と底面部間の距離)を規定しており、このスペーサの形状が捕捉部自体の形状や容量を規定している。
【0020】
本発明の態様に従うと、当該装置において、本発明の細胞固定方法により、2種以上の細胞を固定した培養系を構築することができる。また本方法を行った当該装置から底面部の固体基板を取り外したものは、共培養のための細胞が固定された培養担体として好適に用いることができる。当該装置に細胞を固定する方法は図5に示される手順で行うことができる。図5は細胞捕捉部の拡大模式図を示す。具体的には(1)第一の細胞の流路内への導入、(2)誘電泳動力による第一の細胞の捕捉および接着、(3)第二の細胞の接着、(4)複数細胞の共培養系の構築となる。ちなみに図の矢印は送液の方向を示している。図5では、このようにして2次元的な細胞間相互作用を観察するための基板が作成される。誘電泳動力で細胞を捕捉させる以外の領域を予め細胞非接着処理をしておくことによって第一の細胞を誘電泳動力で捕捉させた後に第2の細胞を流路内に導入することで3次元的な細胞間相互作用を実現するような細胞培養基板を作成することも出来る(図6参照)。
【0021】
本発明の態様に従うと、第一の細胞は好ましくは測定の直接測定の対象とはならない細胞群から選ばれる。たとえば、後述する非実質細胞群の中から選択される。当該装置においては細胞の種類や状態になるべく依存しない汎用性の高い捕捉力である誘電泳動力(誘電泳動: dielectrophoresis : DEP)を用いて第一の細胞の捕捉を行なう。
【0022】
本発明の態様に従うと、細胞の捕捉は細胞捕捉部で行なわれる。細胞捕捉部に到達した細胞は、捕捉機構によって細胞捕捉部の底面上の細胞接着領域に誘導され、捕捉される。捕捉機構は、細胞捕捉部に不均一電場を発生させることができる電極を有している。電極は、この電極に交流電圧を印加する交流電源部と、本装置の作動時に接続可能となる構成を有していればよい。必要に応じて交流電源部を装置と一体化して構成することもできる。電極は細胞捕捉部で不均一な電場を形成するものであればどのような形状、材質のものでも特に限定されない。形状の一例としては平板電極と棒状電極との組合せや、くし型電極などを用いることができる。電極は細胞捕捉部の一部または全体に渡って、少なくとも1個の電極素子が取り付けられる。
【0023】
前記の電極素子は各々電気導線に電気的に結合されている。前記の電極は前述の細胞捕捉部の天井部,底面部のいずれか、または両方に配置させることができる。本明細書において使用される電極は、一定の電気シグナルを印加するために備えられているものであり、周囲より導電性の高い材料で作られた構造体を示す。さらに、電極は、交流電源部と電気的に結合された電気導線との接続箇所である接合部などの電極構成物を含む。交流電源部として、マルチファンクションシンセサイザを好適に用いることができる。マルチファンクションシンセサイザは、本発明において少なくとも1つの電気シグナルを発生させるために必要な電圧、周波数、位相および波形のパラ―メータを調節することができる。
【0024】
電極は細胞捕捉部に置かれていて、必ずしも基板の表面に露出している必要はなく、内部に配置されていても構わない。一形態として例えば、図7の底面基板を示す図に示すような平板アレイ電極が選択される。電極材料は前記の通り周囲より導電性の高い材料で作られた物で、電極間が絶縁されている物を指す。電極素子は望ましくは金属で構成される。更に望ましくは金、白金、クロム、チタニウムおよびITO(インジウム―スズ―酸化物)等から選択される。電極はスパッタリング法、蒸着法、めっき法のいずれかの方法により固体基板上に形成される。ここで例えば金を最表面の電極材料に選択した場合、金と基板間の結合力が弱いので、これらの間の結合力を向上させるために、クロム、チタニウム、タングステン等の金属薄膜を形成した後、金をスパッタ法、蒸着法、めっき法等により成膜する。電極はフォトリソグラフィー法およびリフトオフ法等の一般的に電極を形成するのに使用される他の方法を使用して形成することができる。更に、平板電極として固体基板上に配置させる場合には電極同士が流路内において独立に存在していれば良く、金属等の導電性物質を全面にコートした後にレジスト等の絶縁薄膜で周囲を区切ることで目的の形状を露出させ電極として用いてもよい。また、図7の底面基板を示す図に示すようなアレイ電極を用いる場合においては、それぞれの電極が独立した電気シグナルをかけられるような構成でも、全ての電極に対して電気シグナルを同時に印加できる構成となっていても良い。
【0025】
また、図7に示す底面基板のようなアレイ電極構成を独立した電極として用いるには図8に示す支持基板のような各々独立した電極を下部に更に接合した上でチャネルを切り替えることで時間および異なった電気シグナルをそれぞれの電極へ印加することができる。これにより、誘電泳動力によって捕捉される第一の細胞が複数種からなる場合であっても、各々の細胞群を種類ごとに時期をずらして導入し、電気信号が印加される電極を切り替えることで異なる電極上に分配して捕捉することが可能である。このように第一の細胞の供給が2段階以上からなり、さらに第二の細胞を供給して誘電泳動力以外の方法で捕捉する段階も含んで3段階以上に分けて細胞を供給する態様も本発明に含まれる。例えば、第一の細胞が2種類(以下、細胞A、細胞Bと記す)である場合、これらを電気的に捕捉して、第二の細胞は残りの部分に順番に吸着・固定させることで3種類以上の細胞種を単一基板上に捕捉することが可能である。細胞を電極表面に捕捉させるポジティブDEPを用いる場合、基板上に独立して電気信号を印加できる電極Aおよび電極Bを準備する。そして、電極Aに電気信号を与えて流路内に導入した細胞Aを電極A表面に捕捉する。その時、電極Bには電気信号を与えないようにする。次に電極Aの電気信号を切り、電極Bに電気信号を印加し、細胞Bを導入して電極B表面に捕捉する。さらに第二の細胞を導入し、電極A,電極B以外の目的領域に捕捉する。このとき、第二の細胞を誘電泳動力以外の方法で捕捉するためには第二の細胞の導入、捕捉時は通常、電極A、Bに電気信号が印加されていない状態にしておく。しかし、電極の配置によっては誘電泳動力が発生していても、例えば、微小流路内において層流等で液体の流れる領域が制御されている場合は、第二の細胞を含んだ液体が電極上を流れないようにすることで誘電泳動力の影響を受けずに捕捉することが可能である。また、細胞Aを導入するときに、細胞Bや第二の細胞を捕捉したい領域に細胞Aが接着する恐れがあるので、送液方法を工夫を施してもよい。例えば、流路内に流通させる溶液の速度を速くすることで目的外領域への細胞Aの接着を抑制する方法や、流路内の細胞Aが接着する領域のみに層流を使って送液する工夫などが挙げられる。
【0026】
一方で同時のシグナルを印加するためには図9の支持基板を示す図に示すような電極を接合すれば全ての電極に対して同時に電気シグナルを印加することができる。
【0027】
本発明の態様に従うと、流路内には不均一電場を発生させるための電極が配置された装置が提供される。当該装置は電極を適切な位置に配置することで少なくとも第1の細胞は所望の位置に電極を用いて捕捉および配列固定化することができる。さらに、図8の支持基板を接合させることでそれぞれ独立した電極を作成することで、捕捉のための不均一電場発生のための電圧印加のタイミングを時間的に制御し、所望の位置に2種類目以降の複数種類の細胞を配置することもできる。細胞の捕捉位置は、電極の構成および配設位置によって、交流電圧を印加したときに発生する電界の集中する位置を制御することで所望の位置に設定することができる。例えば、平板電極を天井部に、アレイ電極を底面部に配設することで、細胞をアレイ電極表面に捕捉することができる(図5参照)。また、平板電極の対あるいは、くし型電極の対を底面部側に配設し、交流電圧を印加することで、基板表面の電極間に細胞を捕捉することができる(図6参照)。
【0028】
本発明の態様に従うと、不均一電場の発生手段として電極で印加せられる電気信号は高周波数帯の正弦交流波である。本発明において高周波数の範囲は10kHz以上100MHz以下の周波数帯域にあるものを指す。本発明においては微小空間内へのジュール熱や装置への影響を考慮すると100k以上10MHz以下の範囲で行なわれるのが好ましい。また、その際に印加される電圧は1V以上10V以下の範囲から選ばれる。
【0029】
本発明の態様に従うと、測定の対象となる実質細胞は、第一の細胞とは別に流路内に導入されて基板表面に接着させる。より好ましくは、誘電泳動力を用いないで基板表面に導入され自発的に接着させることを特徴とする。つまり、実質細胞は捕捉領域内に非実質細胞とにより形成された間隙もしくは非実質細胞を足場として接着され得る。
【0030】
本発明の態様に従うと、流路内に導入された細胞を基板に直接接着させる場合、基板表面には予め前処理を行なっておいても良い。細胞を接着させるための方法の一例としては、細胞もしくは細胞外マトリックス蛋白質の接着を促進する機能を有している材質もしくは表面置換基の少なくとも一方を有する表面、または疎水性材質の表面を有する基板を用いる方法が挙げられる。更に、細胞接着性置換基表面、細胞外マトリックス蛋白質、細胞表面提示抗体、細胞表面提示抗原もしくは特定の細胞膜受容体蛋白質に対して特異的に結合するリガンド、を有するもの、または多糖類と結合する蛋白質、を基板表面に導入する方法などが挙げられる。細胞接着性の置換基の一例としては、カルボニル基、チオール基、アルデヒド基、またはアミノ基表面等が挙げられる。
【0031】
また、細胞と接触しない領域または意図的に接触させたくない領域に対して予め細胞を接着させないための前処理を行なっても良い。より具体的には、細胞を微粒子表面に選択的に接着させない場合には、予め固定基板担体表面の所望の領域に細胞足場蛋白質の非特異的な吸着を制御し得る物質で処理をしておくことが可能である。その際に用いられる物質は一般にブロッキング剤として知られている物質を用いれば良い。当該基板は、被検対象でない蛋白質の非特異的な吸着の防止、展開の容易性、並びに固定化した特異的結合物質の保存安定性の観点から、公知の方法に従ってブロッキング剤、界面活性剤及び所望により糖を含有する溶液に浸漬し、乾燥して用いるのが好ましい。ここで、使用するブロッキング剤としては、ウシ血清アルブミン、カゼイン、ゼラチン、スキムミルク、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール,リン脂質およびそれらを含む化合物等の中から選択される。界面活性剤としては、ポリオキシエチレン,オクチルフェニルエーテル,ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート,ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等が挙げられる。糖としては、サッカロース、トレハロース、ヘパリン、低分子ヘパリン等が挙げられる。なお、前記処理液中のブロッキング剤の含有量は、好ましくは0.1〜10重量%である。前記処理液中の界面活性剤の含有量は、好ましくは0.01〜1重量%である。前記処理液中の糖の含有量は、好ましくは0.1〜10重量%である。
【0032】
次に、前述した細胞固定用装置の実施例について図面を用いて説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例】
【0033】
(実施例1)
本実施例において用いられる装置は、図10に示すように流路の内部に細胞捕捉機構を備える構造となっている。流路は天井部100と底面部101を構成する2枚の基板、および高さを規定しかつ側壁を構成するためのスペーサ103とによって形成される。天井部および底面部を構成する基板は、例えばガラス、シリコン、ポリスチレン等のプラスチック類およびPDMSポリマー類等の絶縁性物質を用いて形成することが可能である。スペーサ103は、例えばガラス、テフロン等の高分子材料、その他の好適材料から製造される。さらに、底面部101の基板には電極を同期して動かすためのリード部108へ接続するための支持基板である102が接合されている。リード部108はさらに後述の波形発生装置へと接続される。本発明の態様に従うと、流路を構成する材料は流通させる溶液に浸食されない物質で、かつ顕微鏡で観察可能な透明な材質が選択されることが好ましい。本実施例では天井部および底面部は共にスライドガラス(matsunami)を選択した。前記の基板をスペーサ103で挟み込み、さらに天井部に流入口104,排出口105およびシリンジポンプ等の液体流通装置を取り付けることにより流路となる。流通装置には特に制限はなく、例えばシリンジポンプ,ペリスタポンプ等から選択される。天井部100と底面部101との間隙を決するスペーサ103の厚みは捕捉される細胞のサイズに依存する。本発明の方法を実施するためには間隙の高さは1 mmを下回ることが好ましい。更に好ましくは50 〜 500μmの範囲の厚みである。本実施例においては厚さが90 μmのスペーサを用いた。第一の細胞の捕捉は捕捉部107に作成した電極で行われ、本発明においては流路内に配置した平板電極で発生させた誘電泳動力を用いる。本実施例では捕捉部107の天井部および底面部にアレイ電極(1010,1011)を配置して正の誘電泳動力により第一の細胞を捕捉する。平板電極の材料には、チタニウムを下地に金を用いた。天井部の電極1010はガラス基板上にチタニウムおよび金を各5 nm,40 nmずつ蒸着法により成膜して完成する。底面部の電極1011はガラス基板上にチタニウムおよび金を各5 nm,40 nmずつ蒸着法により成膜する。その後一般的なフォトリソグラフィーによって直径100 μmのホール状の孔を有するレジストパターン(厚さ1.5 μm)を作製し、電解めっき法によりホール内のレジストの高さに及ぶまで金をめっきする。本実施例で作成した形状は図7に示すような3×5のホール形状を有しているものを用いている。基板をさらに120℃でベークすることにより基板とレジストとの密着性を高めた後、最後に全面に二酸化ケイ素を蒸着法により成膜して作製した。その後両基板は有機系溶剤,アルコール系溶剤,水系溶剤,脱イオン水で順に洗浄を行ない、使用する直前まで脱イオン水中で保管した。天井部および底面部はスペーサ―を介して互いに孤立しているため、電気的に絶縁されている。底面部にはさらに図9に示す基板102を接合し、平板基板およびリード部分を電極部にアライメントして接合させることで電気的な導通を取る。天井部および底面部へはそれぞれ銀ペースト(アサヒ化学研究所)によりリード108に接合させる。リード108はさらにマルチファンクションシンセサイザ109(nf corp.)へと接続されている。本実施例においては各電極に対して同一の信号を印加することができる。本実施例においては底面部基板101表面を酸素プラズマによりクリーニングし、アミノプロピルトリエトキシシラン(信越シリコーン)を用いて基板表面にアミノ基を導入する。ここで更にアレイ状に配置した電極1011上にのみ選択的にアミノ基を導入されていても良い。具体的にはリフトオフ法またはステンシルを用いた方法等により固体基板表面の電極上に選択的にアミノ基を導入する方法等が選択される。固体基板とシラン化合物との反応は有機系溶媒中に静置することによって行なわれる。この際に用いられる有機系溶剤は親油的なもので鎖長の長いアルカン,例えばデカン,ヘキサデカンまたはベンゼン溶液等の溶媒から選択される。本実施例で第一の細胞として用いた細胞はヒト線維芽細胞である。200mMスクロース水溶液に1.0×107cells/mlとなるように懸濁した細胞懸濁液で流路内を満たしておく。次にマルチファンクションシンセサイザ109を用いて印加周波数を2 MHz, 印加電圧を±5 Vの正弦交流波を5分間印加することにより、正の誘電泳動力を発生させ、底面部の電極上に細胞を捕捉することができる。
【0034】
その後、流路内の余剰細胞をリン酸緩衝液(PBS(−))で洗浄した。PBS(−)の液組成は以下に示す通りである(pH7.4、2.68mM KCl、1.47mM KH2PO4、136.9mM NaCl、8.06mM Na2HPO4)。その後、第二の細胞であるヒト子宮頸がん細胞(HeLa細胞)を1.0×107cells/mlとなるようにダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)に調整した。この細胞調整液を流路内に導入して残りの部分に接着させることで同一基板上への複数種類の細胞アレイを作成できる。このように複数種類の細胞を共培養することにより、二次元的な異種細胞間のコミュニケーションを観察するツールをインビトロで設計することができる。なお、細胞培養は培養液を5 μL/minの流速で循環させながら行ない、37℃に保持したインキュベータ内で行なった。さらに培養液は、酸素、二酸化炭素、窒素をそれぞれ10%、5%、85%に調整した混合ガスを吹き込んだ上で流路内へと導入した。
【0035】
(実施例2)
本実施例に用いる装置は図10に示すような構成となっている。図7に示す電極構成を備える平板電極にさらに図9に示す基板を接合したものを底面部基板として、天井部にはスライドガラスを用いて90 μmのスペーサで挟み込むことによって流路を作成した。細胞接着領域を予め細胞外マトリックス蛋白質であるフィブロネクチンでコーティングした上で、第一の細胞として線維芽細胞、第二の細胞としてヒト由来肝癌細胞(HepG2細胞)を用いる以外は実施例1と同様にして本実施例の細胞アレイを得る。
【0036】
(実施例3)
本実施例に用いる装置は図10に示すような構成となっている。図7に示す電極構成を備える平板電極にさらに図9に示す基板を接合したものを底面部基板として、天井部にはスライドガラスを用いて90 μmのスペーサで挟み込むことによって流路を作成した。細胞接着領域を予め細胞外マトリックス蛋白質であるポリリジンでコーティングした上で、第一の細胞としてミクログリア細胞株(TKMG−7)、第二の細胞としてラット副腎髄質由来褐色細胞(PC12細胞)を用いる。それら以外は実施例1と同様にして本実施例の細胞アレイを得る。
【0037】
(実施例4)
本実施例に用いる装置は図10に示すような構成となっている。図7に示す電極構成を備える平板電極にさらに図9に示す基板を接合したものを底面部基板として、天井部にはスライドガラスを用いて90 μmのスペーサで挟み込むことによって流路を作成した。電極表面以外の基板表面部分をウシ血清アルブミン(BSA)でコーティングした上で、第一の細胞としてウシ大動脈由来血管内皮細胞を流路内に導入して誘電泳動力により電極上へ捕捉する。培養液で洗浄後、HepG2細胞の懸濁液を導入して培養した。その結果、第一の細胞上にHepG2細胞が3次元的に積層した本実施例の細胞アレイを得る。
【0038】
(実施例5)
本実施例に用いる装置は図10に示すような構成となっている。図11に示す電極構成を備える平板電極にさらに図12に示す基板を接合したものを底面部基板として、天井部にはスライドガラスを用いて90 μmのスペーサで挟み込むことによって流路を作成した。それ以外は用いた細胞種および電極の作成法や印加条件等は実施例1と同様の方法をとることで本実施例の細胞アレイを得る。
【0039】
(実施例6)
本実施例に用いる装置は図10に示すような構成となっている。図13に示す電極構成を備える平板電極にさらに図14に示す基板を接合したものを底面部基板として、天井部にはスライドガラスを用いて90 μmのスペーサで挟み込むことによって流路を作成した。それ以外は用いた細胞種および電極の作成法や印加条件等は実施例1と同様の方法をとることで本実施例の細胞アレイを得る。
【0040】
(実施例7)
本実施例において用いられる装置は、図15に示すような構成となっている。つまり、実施例1において接合する基板を151とすることで基板底面部のアレイ電極のシグナルをそれぞれ独立させたものである。本実施例において用いるアレイ電極は図7、底面部に図8に示すような基板を用いた。独立した電気シグナルが印加できるアレイ電極を用いることで、図16に示すように電極構成を組み合わせることで細胞種別および時間差で細胞を配置することを可能とした本実施例の細胞アレイを得ることができる。
【0041】
(実施例8)
本実施例において用いられる装置は、図15に示すような構成となっている。実施例7とは異なる電極構成である図11を底面部に、さらに図17に示す基板を接合したものを底面部基板として、天井部にはスライドガラスを用いて90 μmのスペーサで挟み込むことによって流路を作成した。
【0042】
(実施例9)
本実施例において用いられる装置は、図15に示すような構成となっている。実施例7とは異なる電極構成である図13を底面部に、さらに図18に示す基板を接合したものを底面部基板として、天井部にはスライドガラスを用いて90 μmのスペーサで挟み込むことによって流路を作成した。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の態様に従う装置の使用方法の一例を示す斜視図である。
【図2】本発明の態様に従う装置の使用方法の一例を示す上面図である。
【図3】図1の線I−Iに沿った断面図である。
【図4】スペーサーを用いた装置の構成を示す図である。(a)スペーサーを含む装置の、図1の線I−Iに沿った断面図に相当する断面図である。(b)スペーサーを含む装置の上面図である。
【図5】本発明での2次元的な細胞捕捉の一例を示す模式図である。
【図6】本発明での3次元的な細胞捕捉の一例を示す模式図である。
【図7】本発明の電極を構成する第一の構造体の一例を示す上面図である。
【図8】本発明の電極を構成する第二の構造体の一例を示す上面図である。
【図9】本発明の電極を構成する第二の構造体の一例を示す上面図である。
【図10】実施例1〜6の装置構成の一例を示す模式図である。
【図11】実施例5、8の電極を構成する第一の構造体の一例を示す上面図である。
【図12】実施例5の電極を構成する第二の構造体の一例を示す上面図である。
【図13】実施例6、9の電極を構成する第一の構造体の一例を示す上面図である。
【図14】実施例6の電極を構成する第二の構造体の一例を示す上面図である。
【図15】実施例7〜9の装置構成の一例を示す模式図である。
【図16】実施例7〜9の細胞捕捉の一例を示す模式図である。
【図17】実施例8の電極を構成する第二の構造体の一例を示す上面図である。
【図18】実施例9の電極を構成する第二の構造体の一例を示す上面図である。
【符号の説明】
【0044】
10 天井基板
11 底面基板
12 導入口
13 排出口
14 流路
15 細胞捕捉部
40 スペーサ
51 天井基板に配置された電極
52 底面基板に配置された細胞捕捉用電極
53 電極上に固定された第一の細胞
54 接着・固定した第二の細胞
61 電場発生用電極
62 電気的な力によって捕捉された第一の細胞
63 第一の細胞を足場として接着した第二の細胞
70 アレイ電極
71 リード部を構成する基板を接合するためのアライメントマーク
72 リード部の接点
73 リード部
100 天井基板
101 底面基板
102 支持基板
103 スペーサ
104 導入口
105 排出口
106 流路
107 細胞捕捉部
108 配線(リード)
109 マルチファンクションシンセサイザ
1010 電極
1011 電極
110 リード部を構成する基板を接合するためのアライメントマーク
111 底面基板
112 電極
113 リード部を構成する基板を接合するためのアライメントマーク
114 電極
120 リード部の接点
130 リード部を構成する基板を接合するためのアライメントマーク
131 電極
132 電極
140 リード部の接点
151 支持基板
【出願人】 【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
【出願日】 平成18年8月29日(2006.8.29)
【代理人】 【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫

【識別番号】100106138
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 政幸

【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭


【公開番号】 特開2008−54511(P2008−54511A)
【公開日】 平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願番号】 特願2006−231988(P2006−231988)