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【発明の名称】 遠心用袋状容器及び同袋状容器を使用した遺伝子導入方法
【発明者】 【氏名】蝶野 英人

【氏名】峰野 純一

【氏名】竹迫 一任

【氏名】吉田 孝夫

【氏名】森村 孝史

【氏名】酒井 賢志

【氏名】山田 進一

【氏名】矢部 則次

【氏名】田口 裕子

【要約】 【課題】クローズドシステム化を可能にし且つ取り扱いが容易な遠心用袋状容器及び同容器を使用した遺伝子導入方法を提供する。

【構成】遠心機に装填されて、内部に収容した分散液に遠心処理が施される袋状容器1において、遠心機に対する装填が可能に形成された凹部6と凹部6の開口面周縁に形成されたフランジ状部7とを有する第一の容器壁3と周縁部が第一の容器壁3のフランジ状部7と互いにシールされて、凹部6と協働して分散液の収納空間6’を構成している柔軟性を有する第二の容器壁4とにより構成された本体と、収納空間6’に連通するように本体に装着されたポート5とを有し、収納空間6’を構成している凹部6の底面に対して垂直な遠心力がかかるように、凹部6が遠心機に対してセット可能に構成する。また、そのような袋状容器を使用した遺伝子導入方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠心機に装填されて、内部に収容した分散液に遠心処理が施される袋状容器であって、
遠心機に対する装填が可能に形成された凹部と該凹部の開口面周縁に形成されたフランジ状部とを有する第一の容器壁と、周縁部が前記第一の容器壁のフランジ状部と互いにシールされて、前記凹部と協働して前記分散液の収納空間を構成している柔軟性を有する第二の容器壁とにより構成された本体と、
前記収納空間に連通するように前記本体に装着されたポートとを有し、
前記収納空間を構成している前記凹部の底面に対して垂直な遠心力がかかるように、前記凹部が遠心機に対してセットされるように構成されていることを特徴とする遠心用袋状容器。
【請求項2】
前記凹部の底面が全域に亘って単一平面として形成され、前記フランジ状部から前記凹部の底面間での深さが、前記凹部の底面の面積の平方根の50%以下であることを特徴とする、請求項1に記載の遠心用袋状容器。
【請求項3】
前記第二の容器壁が、前記第一の容器壁の前記凹部内に収納可能な凸部を有することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の遠心用袋状容器。
【請求項4】
前記分散液が、ベクターおよび/又は標的細胞が分散質として分散された分散液であることを特徴とする、請求項1ないし請求項3の何れか一項に記載の遠心用袋状容器。
【請求項5】
前記凹部の底面にベクターおよび/または標的細胞を保持しうる物質がコートされていることを特徴とする、請求項1ないし請求項4の何れか一項に記載の遠心用袋状容器。
【請求項6】
遠心機に対する装填が可能に形成された凹部と該凹部の開口面周縁に形成されたフランジ状部とを有する第一の容器壁と、周縁部が前記第一の容器壁のフランジ状部と互いにシールされて、前記凹部と協働して分散液の収納空間を構成している柔軟性を有する第二の容器壁とにより構成された本体と、
前記収納空間に連通するように前記本体に装着されたポートとを有する遠心用袋状容器を用いる遺伝子導入方法であって、
ベクター及び/又は標的細胞が分散質として分散された分散液を前記収納空間内に収容する第一の工程と、
前記袋状容器の前記凹部の底面に対して垂直な遠心力がかかるように前記袋状容器を遠心機にセットする第二の工程と、
前記分散液に遠心力を付加する第三の工程とを含んでいることを特徴とする遺伝子導入方法。
【請求項7】
前記凹部の底面が全域に亘って単一平面として形成され、前記フランジ状部から前記凹部の底面間での深さが、前記凹部の底面の面積の平方根の50%以下であることを特徴とする、請求項6に記載の遺伝子導入方法。
【請求項8】
前記第二の容器壁が、前記第一の容器壁の前記凹部内に収納可能な凸部を有することを特徴とする、請求項6または請求項7に記載の遺伝子導入方法。
【請求項9】
前記凹部の底面にベクターおよび/または標的細胞を保持しうる物質がコートされていることを特徴とする、請求項6ないし請求項8の何れか一項に記載の遺伝子導入方法。
【請求項10】
前記第一の工程が、ベクターが分散質として分散された分散液を前記遠心用袋状容器の前記収納空間内に収容する工程であって、前記遺伝子導入方法が、前記第三の工程において付加された遠心力によって、前記ベクターが前記凹部の底面にコートされたベクターを保持しうる物質に付着又は固定された後に、前記ベクターと接触させるように標的細胞を前記収納空間内に収容する第四の工程を更に含んでいることを特徴とする、請求項9に記載の遺伝子導入方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は遠心分離機に装填されて、内部に収容した分散液に遠心処理が施される袋状容器であって、遠心時に破袋または破損しにくい遠心用袋状容器及び同袋状容器を使用した遺伝子導入方法に関する。さらに詳しくは、遠心分離機のアダプターの床面と平行に袋状容器の容器壁面を配置して、容器壁面に垂直な遠心力がかかるように遠心する時に破袋または破損しにくい遠心用袋状容器及び同袋状容器を使用した遺伝子導入方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、液状の医薬品または溶解液を、移送、混合、分離するために、袋状容器が使用されている。例えば、点滴用容器として、患者に点滴するための薬液を収容した袋状容器である、いわゆる、ソフトバッグが用いられている。また、少なくとも一つの隔壁を有する一つの袋状容器の中に2種類以上の薬液を隔離して封入し、使用直前に隔壁を破壊して当該薬液を混合してから患者に点滴できるようにした袋状容器である、いわゆる、ダブルバッグが用いられている。さらに、採取した血液を成分ごとに複数の容器に分離して収容させて、別の症例の患者に当該成分を投与することができるようにした複数の袋状容器からなる血液バッグも用いられてきている。
【0003】
その他にも、多岐に渡って、この種の袋状容器は液状の医薬品または溶解液を取り扱う上で採用されている。
その理由は、一般に、袋状の容器は、内容液の量によって内容積が変えられるので、内容液を充填したり、排出したりする時に、容器内の空気を排出したり、容器内に空気を供給したりして、内溶液の充填及び排出を促進させる必要があるが、上述したような容器にあっては、付属のポートを介して、または、そのポートに連結されたチューブ等を介して、内容液を充填・排出することができるという特徴を持っているからである。この特徴は、前記の操作を内溶液が外気に触れずに実行すること、すなわち、外気からの微生物等により内容液が汚染されることなく前記操作を実施することを可能にする、所謂、クローズドシステム化を容易にするので、この種の容器は、無菌的に、採取、製造された液状の医薬品を取り扱う容器として適している。
【0004】
このような理由のもとに、無菌性を要求される容器には、袋状容器を採用することが好ましい場合が多く、無菌性が要求され、かつ、遠心操作を必要とする容器についても袋状容器が採用されている。前記血液バッグはその一例である。
すなわち、分散媒である血漿に、分散質である赤血球、白血球、血小板等が分散した分散液である血液が充填された袋状容器である血液バッグは、容器ごと遠心機にかけられて、赤血球、白血球、血小板、血漿等の成分別に分離され、別々の袋状容器に移送・充填され、成分別に複数の患者に投与される。
【0005】
血液バッグは、分散液の各成分を分離回収することを目的とするので、床面積の狭い縦長の遠心カップに、分散液である血液の入った袋状容器を、ポート側を上に、ボトム側を下に向けて設置し、遠心される。
このような場合には、遠心力により分散液の表面に形成される液面より下に位置する容器壁は、遠心アダプターの内面に密着し、それ以上、外側に膨らむことがなく、結果として、容器壁に、壁面に沿った張力が発生することが少なく、遠心による破袋、ピンホール等は容易には発生しない。
【0006】
ところが、無菌性が要求され、かつ、遠心操作を必要とする容器であって、遠心する目的が、単に分散液の各成分を分離することだけではない場合、例えば、標的細胞に遺伝子を導入する場合には、遠心により、分散質である標的細胞またはベクターが容器床面に均一に分散するように沈降させて、標的細胞とベクターとが相互に接触し易い環境を提供することによって、遺伝子導入効率を向上させることが行なわれているが(例えば、特許文献1及び2)、床面積が狭いと、遠心時または接触時に標的細胞同士が重なってしまい標的細胞とベクターとの接触効率が悪くなり、遺伝子導入効率が落ちてしまうので、標的細胞が床面に重ならずに均一かつ散在した状態で存在できるように床面積を広く取る必要がある。
【0007】
また、この操作を、標的細胞及びベクターの両方に親和性の高いタンパク質をコーティングした床面上で行うことにより、標的細胞とベクターとの接触効率を向上させ、さらに、遺伝子導入効率を向上させることができる。この場合においても、標的細胞が重なってしまうと、タンパク質がコーティングされた床面との接触が出来ない細胞が現われ、遺伝子導入効率が下がることになるので、やはり、標的細胞が床面に重ならずに分散するように床面積を広く取る必要がある。
【0008】
袋状容器でこのような遠心時の条件を満たすためには、袋状容器を、広い床面積を有する遠心機のアダプター上に寝かせて、すなわち、同アダプターの床面と平行に袋状容器の容器壁面を配置して、容器壁面に垂直な遠心力がかかるようにして遠心する操作が行なわれる。
当然のことながら、袋状容器の容器壁面に標的細胞及びベクターの両方に親和性の高いタンパク質をコーティングした場合には、タンパク質がコーティングされた袋状容器の容器壁面が、遠心時の床面になるように配置することになる。
【0009】
このような遠心時には、袋状容器内の内容液、すなわち、培地にかかる遠心力は、圧力に変換されて、一方では、袋状容器の容器壁を床面に垂直な方向に膨らませようとする力を発生するものの、アダプターの床面に遮られて床面に垂直な方向に袋状容器の容器壁を膨らませることはできないが、もう一方では、床面と平行方向に膨らませようとする力も発生させ、袋状容器の両サイドが圧力負荷に晒されるようになる。通常、この部分は、袋状容器のシール部にあたり、シール剥離またはシ―ル際の破損により、破袋の原因になり易い。特に、異材質より成る容器壁同士をシールした場合のように弱いシール強度しか得られないような場合には、さらに、破袋し易くなる。
【0010】
特に、遠心操作時または遠心操作後、増殖又は活性化させる必要のある細胞を収容している袋状容器においては、床面の容器壁を形成する素材と天井の容器壁を形成する素材を変えることによって、より培養性能を向上させることができる場合があり、この場合、異なる素材をシールすることになるため、必ずしも、シール強度の強いシールが得られるとは限らない。
例えば、床面の容器壁を構成する素材として細胞に対して親和性のある素材を選定し、天井の容器壁を構成する素材としてガス透過性のある素材を採用するような場合がこれに当る。
【特許文献1】米国特許第5,648,251号
【特許文献2】国際公開公報第WO00/01836号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、内容液を充填排出するのに、微生物汚染を起こさないクローズドシステム化が可能で、取扱いが容易な遠心用袋状容器及び同袋状容器を使用した遺伝子導入方法を提供することにある。
【0012】
また、遠心時に遠心力と垂直になるように形成された遠心機のアダプターの床面と平行に容器壁面を配置して、容器壁面に垂直な遠心力がかかるように遠心しても、容易には、破袋しない遠心用袋状容器及び同袋状容器を使用した遺伝子導入方法を提供することにある。
【0013】
また、遠心時の遠心力により、分散液中の分散質が沈降しても、沈降した分散質同士が容易には重ならない程度に広い床面積を有する遠心用袋状容器及び同袋状容器を使用した遺伝子導入方法を提供することにある。
【0014】
また、遠心前の分散液、分散質、分散媒の状態、および、遠心後の沈降した分散質を倒立顕微鏡で容易に観察できる遠心用袋状容器及び同袋状容器を使用した遺伝子導入方法を提供することにある。
【0015】
また、遠心力を利用して、標的細胞の増殖性及び活性を維持したまま標的細胞に遺伝子を効率よく導入することができる遠心用袋状容器及び同袋状容器を使用した遺伝子導入方法を提供することにある。
【0016】
また、遠心力を利用した遺伝子導入操作後、他の容器に移し替えることなく、そのまま培養可能な増殖効率の良い、遠心用袋状容器及び同袋状容器を使用した遺伝子導入方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
請求項1に記載の発明に係る遠心用袋状容器は、遠心機に装填されて、内部に収容した分散液に遠心処理が施される袋状容器であって、
遠心機に対する装填が可能に形成された凹部と該凹部の開口面周縁に形成されたフランジ状部とを有する第一の容器壁と、周縁部が前記第一の容器壁のフランジ状部と互いにシールされて、前記凹部と協働して前記分散液の収納空間を構成している柔軟性を有する第二の容器壁とにより構成された本体と、
前記収納空間に連通するように前記本体に装着されたポートとを有し、
前記収納空間を構成している前記凹部の底面に対して垂直な遠心力がかかるように、前記凹部が遠心機に対してセットされるように構成されていることを特徴とする。
【0018】
すなわち、請求項1に記載の本発明に係る遠心用袋状容器は、袋状容器の一方の容器壁を遠心機にセット可能な構成にし、遠心時に遠心力が垂直にかかる底面の面積を広くすることを可能にし、遠心時に沈降する分散液中の分散質が、容器内の特定の場所に集中しないように、すなわち、広く容器の底面に分散して沈降するようにすると共に、遠心時に分散液中に生じる圧力によって、強度の弱いシール際に、過大な圧力が付加されることがないようにしたものである。
【0019】
ここで、前記遠心時の過大な圧力がシール際にかからない理由を簡単に説明する。
遠心時に遠心力は前記凹部の底面に垂直方向にかかるので、凹部内の分散液は、前記フランジ状部を越えて流れ出ない。すなわち、凹部内に収容された分散液は、フランジ状部に設けられたシール際に、これを破壊するような影響を与えることがない。
【0020】
シール際にこれを破壊するような影響を与える圧力は、分散液が凹部の容量を越えることにより生じるが、この圧力は、遠心時の液面からシール際までの深さに比例するので、シール際が遠心時の液面よりも低位に位置し、さらには底面と同じ深さに位置する可能性の高い一般の袋状容器に比べて、本発明に係る袋状容器では、シール際にかかる圧力を著しく低減させることができる。
なお、シール際に、影響を与えないようにするには、分散液の量を凹部の容量より少ない容量にすればよい。なお、遠心時に分散液の表面に形成される曲面により、分散液がシール際まで溢れ出る場合には、分散液がシール際まで流れ出さないようにするために、フランジ状部を覆う押さえ板を使用することができる。押さえ板はプラスチック製のものが好ましい。
【0021】
ここで、第一の容器壁を構成する材料としては、樹脂が考えられるが、その樹脂は硬質であっても、軟質であってもよく、一般の樹脂を使用することができる。例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、及びそれらのポリマー構成を含む共重合樹脂または混合物の中から選定される。また、第一の容器壁を、上記樹脂を複合した複合シートで形成しても良い。ここでいう複合シートとは、樹脂混合物からなるシート、ラミネートフィルム、樹脂コーティングされた樹脂フィルム、樹脂印刷が施された樹脂フィルム等複数の樹脂からなるシートを言う。
【0022】
なお、シクロオレフィン樹脂は、人体または細胞に対して、悪影響を与えにくい樹脂なので、前記第一の容器壁の内側面の少なくとも一部がシクロオレフィン樹脂にて形成されていることが好ましい。
また、本発明に係る袋状容器が容器内に収容された分散液の観察を必要とする用途に使用される場合には、特に、分散液を倒立顕微鏡で観察する用途に使用される場合には、少なくとも前記凹部の底面は透明であることが好ましい。
さらに、柔軟性を有する第二の容器壁を構成する材料としては、柔軟性のある樹脂、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピン系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、ポリブタジェン系樹脂、及びそれらのポリマー構成を含む共重合樹脂または混合物の中から、柔軟性、ガス透過性等を考慮して選定される。また、第一の容器壁と同様に第二の容器壁も、上記樹脂を複合した複合シートで形成しても良い。
【0023】
また、ポートも樹脂を用いて形成することができ、その樹脂は、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、及びそれらのポリマー構成を含む共重合樹脂または混合物の中から、第一の容器壁及び第二の容器壁との接着性または密着性を考慮して選定される。
【0024】
また、本発明の容器に収容される分散液が、細胞培養または遺伝子導入等に関係する生きている細胞を含んでいるような場合には、前記第一及び第二の容器壁の少なくとも一方が、ガス透過性を有していることが好ましい。
なお、前記第一の容器壁の凹部の深さは3mm以上であることが好ましい。3mm以下の場合、容器の大きさに比べて容量が少なすぎて効率が著しく悪い等の問題があり好ましくない。
ここで、遠心力が底面に垂直にかかるとは、必ずしも、底面全体にわたって遠心力が垂直にかかることを意味するものではなく、少なくとも、底面の主要部または中心部並びにその近傍の一部に遠心力が垂直にかかることを意味する。
【0025】
なお、上述した第二の容器壁の柔軟性とは、第一の容器壁の凹部の容積を確保しつつ、空気の出入り無しに分散液が容器内に流入または流出できる程度に変形可能な容器壁の追従性を意味する。この追従性は、単に、容器壁を形成する材料の物理的数値によって決まるのではなく、容器形態、容器内に存在する空気量等によっても変わるので、一概に、容器壁を形成する材料の物理的数値で制限することは適切ではない。
【0026】
本発明の応用分野を考慮すれば、ここでいう柔軟性は、容器内に適切な量の空気が存在する状況下で、分散液が落差程度の圧力、例えば、50cm水柱程度の圧力で、必要量の分散液が、ほぼ全て流入または流出することを可能にする程度の柔軟性を有すれば良い。
なお、前記の性能は、一方の容器壁のみの性能に限られるものではなく、対面するもう一方の容器壁の柔軟性からの影響も受けるので、一方の容器壁の柔軟性を判断する上で、他方の柔軟性も考慮し、総合的に判断されるべきである。
【0027】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載する構成に加え、前記凹部の底面が全域に亘って単一平面として形成され、前記フランジ状部から前記凹部の底面間での深さが、前記凹部の底面の面積の平方根の50%以下であることを特徴とする。
すなわち、請求項2の遠心用袋状容器は、前記凹部の底面が全域に亘って単一平面として形成されているので、底面の単位面積あたりの分散液の量が、底面全域に亘って均一になり、沈降物の分散も均一にすることができる。なお、フランジ状部は、凹部の底面と平行な面を有している方が、凹部の容量に対して、より多くの充填容量が確保できるので好ましい。
【0028】
なお、ここでいう底面の全域の中には、前記凹部の隅に設けられたアール部は含まれない。
また、ここでいう平面には、曲率半径が無限大の面だけでなく、それと実質的に同等の効果をもたらす曲率半径を有する平らな面も含まれるが、さらに、それに加え、遠心時における分散液の液面と同等の曲率を持つ面までも含まれる。
なお、この平面は、サンド処理、エンボス処理等が施されていても構わない。
【0029】
また、フランジ状部から凹部の底面までの深さが、底面の面積の平方根の50%以下であることによって、すなわち、遠心時の液面から底面までの深さを浅くすることによって、また、底面の面積を広く採ることによって、小さな分散質を短時間で且つ沈降物が相互に重ならないように沈降させることができる。
なお、フランジ状部から底面までの深さは、本発明の容器の製造上の観点を考慮すると、底面の面積の平方根の30%以下であるほうがさらに好ましい。
【0030】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載する構成に加え、前記第二の容器壁が、前記第一の容器壁の前記凹部内に収容可能な凸部を有することを特徴とする。
すなわち、請求項3に記載の本発明に係る遠心用袋状容器は、前記第二の容器壁に前記第一の容器壁の前記凹部内に収容可能な凸部を設けることによって、柔軟性のある前記第二の容器壁は、分散液の充填時及び排出時に、凸部が大きく変形することが可能なので、分散液の収容及び排出をより確実に、また、容易に行うことができる。
【0031】
なお、一般に、袋状容器であっても、例えば、輸液バッグのような場合、一般に、被収容物である輸液の収納空間の最小容積が0mlより大きい。そのため、輸液だけをバッグ内に収容したのでは輸液を完全に排出させることができないので、通常、輸液と一緒に若干の空気を封入する。具体的には充填される輸液の量の10%から15%の空気を一緒に封入することによって、排出性を維持している。
すなわち、本発明の遠心用袋状容器においても、被収容物である分散液を収納する空間の最小容積は、前記凹部の容積の15%以内であることが好ましい。
なお、ここでいう最小容積は、前記収納空間に液体を満たし、これを落差のみの力で排出する時に、前記収納空間に残留する液体が占める空間の容積である。
【0032】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1ないし請求項3の何れかに記載する構成に加え、前記分散液が、ベクターおよび/又は標的細胞が分散質として分散された分散液であることを特徴とする。
すなわち、本発明の遠心用袋状容器は、ベクターおよび/又は標的細胞が分散質として分散された分散液を収容して遠心することによって、ベクターを介して標的細胞に遺伝子を、容易に且つ効率よく導入できる。
前記のベクターには特に限定はないが、細胞内に核酸を導入する能力を有する非ウイルスベクター(リポソーム等)やウイルスベクター、例えば、レトロウイルスベクター(レンチウイルスベクター、シュードタイプベクターを包含する)、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター等が挙げられる。
【0033】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1ないし請求項4の何れかに記載する構成に加え、前記凹部の底面にベクターおよび/または標的細胞を保持しうる物質がコートされていることを特徴とする。
すなわち、請求項5に記載の本発明に係る遠心用袋状容器は、前記凹部の底面に、ベクターおよび/又は標的細胞が接着し易い蛋白質物質をコートして遺伝子導入法に用いることにより、ベクターと標的細胞の接触の頻度を増加させ、効率よく遺伝子導入を図ろうとするものである。
【0034】
ここで、前記のベクターおよび/または標的細胞を保持しうる物質としては、細胞外マトリックスを構成する成分、その誘導体、または、そのフラグメントが例示され、好適には、フィブロネクチン、ラミニン、コラーゲン、プロテオグリカン又はそれらのフラグメントである。さらに、ポリリジンやDEAE−デキストランのようなウイルス親和性物質、抗ウイルス抗体、抗標的細胞抗体を使用することもできる。前記の核物質はそれぞれ単独で使用してもよく、複数のものを混合して使用してもよい。
なお、前記フラグメントとして、フィブロネクチンフラグメントであるCH−296(レトロネクチン(商品名)、タカラバイオ社製)を用いれば、特にレトロウィルスベクターを使用した場合に効率の良い遺伝子導入が可能となる。
【0035】
請求項6に記載の発明は、遠心機に対する装填が可能に形成された凹部と該凹部の開口面周縁に形成されたフランジ状部とを有する第一の容器壁と、周縁部が前記第一の容器壁のフランジ状部と互いにシールされて、前記凹部と協働して分散液の収納空間を構成している柔軟性を有する第二の容器壁とにより構成された本体と、
前記収納空間に連通するように前記本体に装着されたポートとを有する遠心用袋状容器を用いる遺伝子導入方法であって、
ベクター又は標的細胞が分散質として分散された分散液を前記収納空間内に収容する第一の工程と、
前記袋状容器の前記凹部の底面に対して垂直な遠心力がかかるように前記袋状容器を遠心機にセットする第二の工程と、
前記分散液に遠心力を付加する第三の工程とを含んでいることを特徴とする。
【0036】
すなわち、請求項6に記載の本発明に係る遺伝子導入方法は、請求項1に記載の発明に関連して上述した特徴及び性能を有する遠心用袋状容器に、ベクター又は標的細胞が分散質として分散された分散液を収容空間内に収容し、凹部の底面に対して垂直な遠心力がかかるように袋状容器を遠心機にセットして、分散液に遠心力を付加して遺伝し導入効率を上げようとするものである。
【0037】
ここで、遺伝子導入方法の工程の一部に、本発明の工程を採用するケースとして、以下のケースが例示される。
1.前記遠心用袋状容器に被収容物としてベクターを収容して遠心し、次に、標的細胞を収容するケース。
2.前記遠心用袋状容器に被収容物としてベクターを収容して遠心し、次に、標的細胞を収容し、もう一度、遠心するケース。
3.前記遠心用袋状容器に被収容物としてベクターと標的細胞を収容し、遠心するケース。
4.前記遠心用袋状容器に被収容物として標的細胞を収容して遠心し、次に、ベクターを収容するケース。
5.前記遠心用袋状容器に被収容物として標的細胞を収容して遠心し、次に、ベクターを収容し、もう一度、遠心するケース。
何れのケースも、本発明の範囲に含まれる。
尚、上記1,2,4,5のケースでは、ベクター(ケース1,2)または標的細胞(ケース4,5)を収容して遠心した後に、被収容物のうちの分散媒のみを排出することにより、培地もしくは緩衝液を交換してもよい。さらに、新たな培地もしくは緩衝液を添加し、ついで排出することにより、ベクターまたは細胞を洗浄することも可能である。
また、遺伝子を導入する場合に、請求項1に記載の発明に関連して上述したように、ベクターまたは標的細胞が重ならないで均一に凹部の底面に分散して沈降する方が、遺伝子導入効果が向上するので、凹部の底面の面積は広いほうが好ましい。
【0038】
また、請求項7に記載の発明は、請求項6に記載する構成に加え、前記凹部の底面が全域に亘って単一平面として形成され、フランジ状部から凹部の底面間での深さが、凹部の底面の面積の平方根の50%以下であることを特徴とする。
なお、フランジ状部は、凹部の底面と平行な面を有している方が、凹部の容量に対して、より多くの充填容量が確保できるので好ましい。
なお、請求項7に記載の遺伝子導入方法において使用される遠心用袋状容器から得られる利点については、請求項2に記載の発明に係る容器に関連して説明したとおりである。
【0039】
また、請求項8に記載の発明は、請求項6または請求項7に記載する構成に加え、前記第二の容器壁が、前記第一の容器壁の前記凹部内に収容可能な凸部を有することを特徴とする。
なお、請求項8に記載の遺伝子導入方法において使用される遠心用袋状容器から得られる利点については、請求項3に記載の発明に係る容器に関連して説明したとおりである。
【0040】
また、請求項9に記載の発明は、請求項6ないし請求項8の何れかに記載する構成に加え、前記凹部の底面にベクターおよび/または標的細胞を保持しうる物質がコートされていることを特徴とする。
なお、請求項9に記載の遺伝子導入方法において使用される遠心用袋状容器から得られる利点については、請求項5に記載の発明に係る容器に関連して説明したとおりである。
【0041】
また、請求項10に記載の発明は、請求項9に記載する構成に加え、前記第一の工程が、ベクターが分散質として分散された分散液を前記遠心用袋状容器の前記収納空間内に収容する工程であって、前記遺伝子導入方法が、前記第三の工程において付加された遠心力によって、前記ベクターが前記凹部の底面にコートされたベクターを保持しうる物質に付着又は固定された後に、前記ベクターと接触させるように標的細胞を前記収納空間内に収容する第四の工程を含んでいることを特徴とする。
なお、請求項10に記載の遺伝子導入方法は、遠心操作により高い効率でベクターを容器底面にコートされたベクターを保持しうる物質に付着せしめることができるため、例えば分散媒の排出によってベクターを含有する分散液に混入している遺伝子導入を阻害する成分を除去することも可能となり、遺伝子導入効率の向上に有用である。
【発明の効果】
【0042】
以上のとおり、本発明によれば、分散液を充填排出するのに、微生物汚染を起こさないクローズドシステム化が可能で、取り扱いが容易な遠心用袋状容器および同袋状容器を使用した遺伝子導入方を提供することができる。
また、凹部の底面に対して垂直な遠心力がかかるように遠心機にセットしても、容易には、破袋しない遠心用袋状容器および同袋状容器を使用した遺伝子導入方法を提供することができる。
【0043】
また、遠心時の遠心力により、分散液中の分散質が沈降しても、沈降した分散質同士が容易には重ならない程度に広い床面積を有する遠心用袋状容器及び同袋状容器を使用した遺伝子導入方法を提供することができる。
【0044】
また、遠心前の分散液、分散質、分散媒の状態、および、遠心後の沈降した分散質を倒立顕微鏡で容易に観察できる遠心用袋状容器及び同袋状容器を使用した遺伝子導入方法を提供することができる。
【0045】
また、遠心力を利用して、標的細胞の増殖性及び活性を維持したまま標的細胞に遺伝子を効率よく導入することができる遠心用袋状容器及び同袋状容器を使用した遺伝子導入方法を提供することができる。
【0046】
また、遠心力を利用した遺伝子導入操作後、他の容器に移し替えることなく、そのまま培養可能な増殖効率の良い、遠心用袋状容器及び同袋状容器を使用した遺伝子導入方法を提供することができる。
尚、本発明に係る遠心用袋状容器は、上述したように遠心する場合に特に大きな効果が期待できるが、遠心する場合に限らず、単に操作性のよい閉鎖系の培養容器としても使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
本発明の実施の形態を実施例に基づき図面を参照しながら説明する。
[実施例1]
図1及び図2に示すが如く、本実施例の遠心用袋状容器1は、周縁が周縁シール2によりシール、密封された対面する二つの容器壁、すなわち、第一の容器壁3及び第二の容器壁4と、後述する収納空間6’内に内容液を充填または同内容液を収納空間6’から排出するために用いられる略チューブ状のポート5とからなる容器であって、第一の容器壁3が、凹部6と、凹部6の周縁に形成されたフランジ状部7を有し、第二の容器壁4が柔軟性を有する素材により形成されている。上述したように第一の容器壁3と第二の容器壁4とを周縁シール2によりシールすることにより、第一の容器壁3の凹部6と第二の容器壁4とにより収納空間6’が形成されている。
【0048】
さらに、ポート5の外側端には、本遠心用袋状容器1を密封するためにキャップ8が嵌着されており、ポート5が設けられた容器1の周縁シール部の部分と反対側の周縁シール部の部分には、内容液を排出する時に本実施例の遠心用袋状容器1を吊るして内容液を排出するのに資する懸垂口9が設けられている。
ここで、第一の容器壁3は、多層押出し成形法により成形した厚さが40μmのシクロオレフィン樹脂層(ゼオネックス(商品名)、日本ゼオン株式会社製)と厚さが170μmの低密度ポリエチレン樹脂層とからなる2層構造のシートを用いて、凹部6の内側、すなわち、容器の内側の面にシクロオレフィン樹脂層が位置するように、真空成形で縦100mm、横60mm、深さ9mmの凹部6を形成することにより作製した。
【0049】
第二の容器壁4は、エチレン酢酸ビニル共重合体(ウルトラセン(商品名)、東ソー株式会社製)を用いて、インフレーション成形により厚さ110μmのシートとして形成した。
次に、第一の容器壁3と第二の容器壁4とを重ね合わせ、その間にポート5の内側端部を挿入してから、それら三者を熱シールすることにより第一の容器壁3の周縁部と第二の容器壁4の周縁部とポート5の内側端部とを一体にシールし、不要な部分をトリミングすることによって本実施例の遠心用袋状容器1を形成した。
なお、ポート5の溶着は、周縁シールをする前または周縁シールした後に行うこともできる。
本実施例の遠心用袋状容器1は、下記の評価方法1ないし3により評価し、以下の結果を得た。
1.空気の出入りなしに充填、排出ができた。
2.繰り返しの使用によっても容器の破損は認められなかった。
3.K562細胞は均一に容器の底面に沈降していることが確認された。
【0050】
評価方法
1.容器の柔軟性の評価
実施例の遠心用袋状容器1に、50mlの水を充填し、排出し、空気の出入りなしに充填、排出が可能かどうか確認した。
なお、容器の形態に合わせて適宜、第二の容器壁4を凹ませて、予め、本実施例の遠心用袋状容器1内に残存する空気量を減らしたり、本実施例の遠心用袋状容器1内に一定量の空気を注入してから上記操作を行なった。
【0051】
2.シール際の破損性の評価
この評価は、容器1の凹部6の外側寸法より若干大きめの内側寸法を有する凹部を備えたアダプターが装着された遠心機を用いて実施した。より詳述すると、本実施例の遠心用袋状容器1に、30mlの水を充填後、図2に示したように、容器1の凹部6を遠心機のアダプターXの凹部X’内に嵌め込むことにより容器1をアダプターXにセットして、1,000gで2時間遠心することにより、遠心用袋状容器1および収容物に遠心力を負荷して、容器の破損状態を観察した。次に、同容器に5mlの水を加えて液量を35mlとし、1,000gで2時間遠心することにより、遠心用袋状容器1および内容液に遠心力を負荷して、容器の破損状態を観察した。次に、同容器に5mlの水をさらに加えて液量を40mlとし、1,000gで2時間遠心することにより、遠心用袋状容器1および内容液に遠心力を負荷して、容器の破損状態を観察した。次に、同容器を2,000gで2時間遠心することにより遠心用袋状容器1および内容液に遠心力を負荷して、容器の破損状態を観察した。
【0052】
3.沈降する分散質の分散性の評価
実施例の遠心用袋状容器1に内容液としてK562細胞(ATCC CCL−243)を10%ウシ胎仔血清含有RPMI1640培地に1×10/mlになるように分散した分散液を40ml充填し、この容器をアダプターXの凹部X’内にセットして、1,000gで15分間遠心して、遠心用袋状容器1および内容液に遠心力を負荷した。
遠心終了後、回転操作、振動等を極力与えないように遠心機から取り出し、倒立顕微鏡で、容器の底面に沈降した細胞の分散質の分散状態を無作為に10視野について観察した。
【0053】
次に、本実施例の遠心用袋状容器1を使用して、以下の手順により標的細胞に遺伝子導入操作を実施すると共に、遺伝子導入率の測定を行なった。
1.レトロネクチンコート容器の作製
フィブロネクチンフラグメントであるCH−296(レトロネクチン(商品名)、タカラバイオ社製)を、PBSで20μg/mlになるように希釈して、実施例の遠心用袋状容器1に10ml注入し、室温で2時間静置して同CH−296で容器1の内面をコーティングした後、30mlのPBSで3回洗浄し、その溶液を除いてレトロネクチンコート容器とした。
【0054】
2.レトロウィルスベクターの調整
レトロウィルスベクタープラスミドpMS−eGFPを、以下の手順で作製した。
まず、pMTベクター[ジーン・セラピー(Gene Therapy)、第11巻、94〜99頁(2004)]の3’LTR領域について、クロンテック社のpMSCVneoのMSCV LTRと置換して、MSCV LTRを有するプラスミドベクターpMSを作製した。緑色蛍光タンパク遺伝子eGFPの遺伝子断片をpMSのマルチクローニングサイトに挿入し、eGFP発現組換えレトロウィルスベクターpMS−eGFPを得た。
pMS−eGFPベクターとRetrovirus Packaging Kit Eco(タカラバイオ社製)を用い、293T細胞での一過性のウィルス産生を行い、エコトロピックMS−eGFPウィルスを獲得した。こうして得られたエコトロピックMS−eGFPウィルスを、GaLVレトロウィルスパッケージング細胞PG13(ATCC CRL−10686)にレトロネクチン(タカラバイオ社製)存在下で感染させ、レトロウイルス産生細胞PG13/MS−eGFPを獲得した。PG13/MS−eGFPは、10%ウシ胎仔血清(GIBCO社製)を含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、シグマ社製)で培養し、セミコンフルエントに生育したところで0.1ml/cmの新鮮な無血清培地GT−T−RetroI(タカラバイオ社製)と交換した。さらに24時間経過した後に回収した培地上清を0.45μmフィルター(ミリポア社製)でろ過してGALV/MS−eGFPウィルス液を得た。得られたウィルス液は小分けして、−80℃フリーザーで保存し、以下の遺伝子導入実験に供した。
【0055】
3.レトロネクチンコート容器へのレトロウィルスベクターの結合
上記2で調整したレトロウィルスベクターを速やかに融解し、GT−T−RetroIで8倍希釈した後、30mlを上記1で調整したレトロネクチンコート袋状容器1に充填し、遠心機のアダプターXの凹部X’内に、前記の容器をセットして、32℃、2,000gで2時間遠心した。対照として24穴ノントリートプレートにレトロネクチンをコーティングし、1ウエルあたりに前記ウィルスベクター0.5mlを加えたものを2群用意し、そのうちの1群は32℃、2,000gで2時間遠心した。他方の1群は37℃、5%COのインキュベーターで4時間静置してレトロウィルスベクターを結合させた。
【0056】
4.遺伝子導入
遠心用袋状容器1については、遠心終了後、内容液を排出し、30mlの1.5%HSA含有PBSで洗浄し、その洗浄液は排出した。K562細胞を10%ウシ胎仔血清含有RPMI1640培地に1.5x10/mlになるように予め分散させた分散液を容器1の収納空間6’内に40ml充填し、37℃の温度で、5%COのインキュベーターにて静置し、標的細胞への遺伝子導入を行なった。24穴プレートについては、内容液を除去し、0.5mlの1.5%HSA含有PBSで洗浄し、その洗浄液は除去した。4×10/mlになるように分散したK562培養液をウエルに0.5ml添加し、37℃、5%COのインキュベーターにて静置し、標的細胞への遺伝子導入を行った。各々の容器にて遺伝子導入した細胞を3日間培養後、細胞を剥離して回収し、遺伝子導入効率を、フローサイトメーターを用いて測定した。24穴プレートを静置で使用した場合の遺伝子導入効率に対する各容器での遺伝子導入効率の相対値を算出した結果を下掲表1に示す。下掲表1に示すが如く、本実施例の遠心用袋状容器1は、遠心力でレトロウィルスベクターを容器に結合することによって遺伝子導入効率が飛躍的に上昇した。
【0057】
【表1】


【0058】
5.レトロウィルスベクター結合容器の保存
前記3で調整したレトロウィルスベクターを結合した遠心用袋状容器1について、遠心終了後、内容液を排出し、40mlの1.5%HSA含有PBSに置換し、4℃にて24時間、48時間保存した。保存後、液を排出し、K562細胞を10%ウシ胎仔血清含有RPMI1640倍地に1.5x10/mlになるように予め分散させた分散液を40ml充填し、37℃、5%COのインキュベーターにて静置し、標的細胞への遺伝子導入を行った。対照として、レトロウィルスベクターを結合した遠心用袋状容器1について、4℃保存することなく直ちに遺伝子導入に供した。対照での遺伝子導入効率に対する各保存時間での遺伝子導入効率の相対値を算出することによって、残存するレトロウィルスベクターの遺伝子導入活性を算出した。その結果を下掲表2に示す。通常、レトロウィルスベクターの安定性は悪く、その半減期は4℃で92時間、0℃で18〜64時間、32℃で11〜39時間、37℃で7〜9時間とされている[McTaggart S.、A1−Rubeai M.、バイオテクノロジー プログレス(Biotechnol. Prog.)、第16巻、第5号、第859〜865頁(2000年)(非特許文献1)、Kaptein L. C.ら、ジーン セラピー(Gene Ther.)、第4巻、第2号、第172〜176頁(1997年)(非特許文献2)]が、レトロネクチンでコートした本実施例の遠心用袋状容器1においては下掲表2に示すが如く、レトロウィルスベクターの保存にも好適である。
【0059】
【表2】


【0060】
[実施例2]
図3及び図4に示すが如く、本実施例の遠心用袋状容器1は、実施例1の構成に加え、第二の容器壁4に、第一の容器壁3の凹部6の内側寸法より若干小さい外側寸法の凸部10を真空成形で形成し、第一の容器壁3の凹部6内に第二の容器壁4の凸部10を嵌め合わせてから周縁をシールした以外は、実施例1と同様に形成した。尚、図4中の参照符号11は、分散液を示す。
本実施例の遠心用袋状容器1は、実施例1と同様に評価し、実施例1と同様に遺伝子導入に使用し、遺伝子導入率を調べた。
【0061】
本実施例の遠心用袋状容器1は、上記の評価方法1ないし3により評価したが、空気の出入りなしに充填、排出が可能で、遠心後も容器の破損はなく、分散質も容器の底面に均一に分散していることが観察された。
【産業上の利用可能性】
【0062】
以上のように、本発明に係る袋状容器は、遠心処理が施された時に、破損することなく、しかも、分散質が容器の底面に均一に分散されることを可能にするものであるため、この種の容器としては極めて有用であり、また、そのような容器を用いた本発明に係る遺伝子導入方法は、効率的な遺伝子導入を可能にさせるため、極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明に係る袋状容器の一例を示す斜視図である。
【図2】図1の袋状容器をA-A’を通る垂直な面で切った時の模式断面図である。
【図3】本発明の袋状容器の別の一例を示す模式断面図である。
【図4】図3の袋状容器に分散液が入った状態の模式断面図である。
【符号の説明】
【0064】
1 袋状容器
2 周縁シール
3 第一の容器壁
4 第二の容器壁
5 ポート
6 第一の容器壁の凹部
6’ 内容物収納空間
7 第一の容器壁のフランジ状部
8 キャップ
9 懸垂口
10 第二の容器壁の凸部
11 分散液
【出願人】 【識別番号】302019245
【氏名又は名称】タカラバイオ株式会社
【識別番号】000136354
【氏名又は名称】株式会社フコク
【識別番号】599002593
【氏名又は名称】コージンバイオ株式会社
【出願日】 平成18年8月23日(2006.8.23)
【代理人】 【識別番号】100077702
【弁理士】
【氏名又は名称】竹下 和夫


【公開番号】 特開2008−48651(P2008−48651A)
【公開日】 平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願番号】 特願2006−227118(P2006−227118)