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円型通風製麹装置 - 特開2008−43305 | j-tokkyo
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【発明の名称】 円型通風製麹装置
【発明者】 【氏名】川俣 聡

【氏名】大浦 雅己

【要約】 【課題】円型通気製麹装置に、より適合した空気流速一定化技術を提供することを課題とする。

【構成】円型通風製麹装置10は、複数の孔12が設けられ、麹基質13を載せる多孔円板14と、この多孔円板14を囲って製麹室を形成する外筒15と、中央穴11に通され、外径が外筒15の内径の20%〜40%に設定されている内筒16とを備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
麹基質に温度及び湿度が調整されている空気を強制的に接触させることで麹を製造する製麹装置であって、
中央に中央穴が設けられ、前記空気を下と上の一方から他方へ通過させる複数の孔が設けられ、前記麹基質を載せる多孔円板と、この多孔円板を囲って製麹室を形成する外筒と、前記中央穴に通され、外径が前記外筒の内径の20%〜40%に設定されている内筒と、前記多孔円板を鉛直軸廻りに回転させる円板回転機構と、前記多孔円板で区分される製麹室の下室と上室の一方へ温度及び湿度が調整されている空気を供給する空気供給機構と、から成ることを特徴とする円型通風製麹装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、麹基質に温度及び湿度が調整されている空気を強制的に接触させることで麹を製造する製麹装置の改良に関する。特に、麹基質に接触する調温調湿空気量を均一化して良質の麹を製造することができる製麹装置に関する。
【背景技術】
【0002】
麹基質に温度及び湿度が調整されている空気を強制的に接触させることで麹を製造する製麹装置の代表的装置として、麹基質が載せられている多孔円板を円板回転機構で回転させる形式の円型通風製麹装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】実公昭57−18958号公報(第2図、第3図)
【0003】
特許文献1を次図に基づいて説明する。
図6は従来の円型通風製麹装置の断面図であり、この製麹装置100は、中央に設けられている支柱101と、この支柱101を中心に回転自在に配置されている多孔円板102と、この多孔円板102を囲う外筒103と、この外筒103内で且つ多孔円板102の上方に配置されている手入れ機104とから構成される。
【0004】
そして、多孔円板102上に麹基質105を一定の高さに敷き、多孔円板102の下方の下室106へ吹込み口107を介して温度及び湿度が調整されている空気を供給する。すると、この空気は多孔円板102を貫通して多孔円板102の上方の上室108に至り、この間に麹基質105に接触して、麹化を促す。空気を強制的に通風させることと、装置全体が円型であることから、製麹装置100は円型通風製麹装置と呼ばれる。
【0005】
ところで、多孔円板102は面積が大きいため、部位によって、通過する空気の流速に差が出やすい。麹基質105を健全に育成するためには、空気の流速にばらつきがあることは好ましくない。そこで、上記従来の技術では次に述べる対策が講じられている。
【0006】
図7は従来の多孔円板の平面図であり、多孔円板102は、中心から外周へ第1ゾーン111、第2ゾーン112、第3ゾーン113のごとく複数に区分され、第1ゾーン111では孔の径を大きくし、第3ゾーン113では孔の径を小さくすることで、開孔率に差が付けられている。開孔率を変化させることで、多孔円板102を通過する空気の流速を均一化することができる。
【0007】
本発明者らも、多孔円板を通過する空気の流速を均一化する研究を進めた。そして、この研究の一環として、次に述べる2つの基礎的実験を実施した。
第1の基礎的実験の結果は次図に示すとおりである。
図8は圧力変動と製品品質との関係を調べたグラフであり、横軸は多孔円板を通過する空気の平均流速V(m/s)、縦軸は静圧偏差(Pa)を示す。
【0008】
製麹期間中は麹の締り具合に応じて、多孔板を含む麹層を通過する空気流量を調整する。その際の総圧力損失は100〜2000Paの間で変化する。麹が締まって圧力損失が大きいときは、多孔板下の静圧偏差は相対的に無視しうるが、反対に圧力損失が小さいときには、わずかな静圧の差が麹の温度に影響を及ぼす。
【0009】
麹基質を通過する空気は、麹菌の繁殖を促す作用を発揮するとともに、麹菌の繁殖に伴って発生する熱により麹の温度が高くなる場合には、冷却作用を発揮して麹の温度の上昇を防止する役割を果たす。
【0010】
ところで、静圧が平均より著しく高い部位では、×で示すように、麹基質を通過する空気流量が過多のため冷却作用が過大となって、製麹に適した温度に達せず、麹の生育が不良となった。また、静圧が平均より著しく低い部位では、△で示すように、麹基質を通過する空気流量が過小のため冷却作用が小さくなって、製麹に適した温度を越えてしまい、麹菌がダメージを受けた。○では良品が得られた。
この結果、−5Pa〜5Paの範囲であれば、静圧偏差は許容できる見通しを得た。そこで、以降、−5Pa及び5Paをしきい値(閾値、threshold)とする。
【0011】
第2の基礎的実験及びそれの結果は次図に示すとおりである。
図9は実験により得た圧力の分布図であり、(a)において、支柱101の外径が200mm、外筒103の内径が2000mmの製麹装置100を準備し、1個の吹込み口107から流量Qaで空気を吹込み、多孔円板102から図面手前へ吐出させた。そして、多孔板102から200mmの位置で、圧力(静圧)を測定した。
【0012】
多数点の静圧を測定し、測定値を平均し、平均静圧に対して、5Pa以上高圧であった高圧部分にハッチング(斜線)を施し、−5Paを下回った低圧部分にドット(点集合)を施した。
【0013】
(a)では、流量Qaは、多孔円板102を通過する空気の平均流速が0.13m/秒となるように定めた。すると、支柱101の陰に低圧部分PLが出現し、支柱101の左右に高圧部分PHが局部的に出現した。
【0014】
次に、流量を変更して同様の実験を実施した。
(b)では、流量Qbは、多孔円板102を通過する空気の平均流速が0.15m/秒となるように増量した。すると、支柱101の周囲に低圧部分PLが出現し、外筒103に沿って斑状に高圧部分PHが出現した。
【0015】
(c)では、流量Qcは、多孔円板102を通過する空気の平均流速が0.11m/秒となるように減量した。すると、外筒103に沿って左右の高圧部分PHが局部的に出現した。
【0016】
流量Qaに対して流量Qbは、0.15/0.13=1.15の計算により、1.15倍(15%増)であると言える。また、流量Qaに対して流量Qcは、0.11/0.13=0.85の計算により、0.85倍(15%減)であると言える。
この第2の基礎的実験から、空気の流量(流速)を15%程度増減するだけで、圧力分布が大きく変動することが判明した。また、圧力分布は支柱101を中心に同心円的に変化することが期待されたが、実験の結果では同心円的には変化しないことが判明した。
【0017】
上述の従来の技術では同心円的に孔の径を変えたが、上述の第2の基礎的実験によれば、空気の流速を一定化する対策としては不十分であることが分かった。
そこで、1個の吹込み口から空気を供給する形態の円型通気製麹装置に、より適合した空気流速一定化技術が求められる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、円型通気製麹装置に、より適合した空気流速一定化技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者らは、先ず、上述の第2の基礎的実験(図9(a)〜(c))の結果を重視し、それの解析を試みた。
図1は従来の円型通気製麹装置と本発明の円型通気製麹装置との対比図であり、(a)に示す従来の円型通風製麹装置100では、吹込み口107から吹込んだ空気が支柱101に衝突し、一部が支柱101の前後で渦105を発生したため、支柱101の廻りに低圧部分が発生したと推定できる。
以上の知見から、空気は、外筒103の内面に沿って流れているとは言えないことが判明した。
【0020】
本発明者らは、空気を外筒103の内面に沿って円滑に流れるようにする構造を模索し、(b)に示すような、内筒16と外筒15とからなる円型通風製麹装置10を発明するに至った。すなわち、空気は内筒16と外筒15との間の通路を流れるため、不都合な空気流の乱れや衝突が解消できた。実験(詳細は後述)を重ねた結果、この円型通風製麹装置10で課題を解決することができた。
【0021】
すなわち、請求項1に係る発明は、麹基質に温度及び湿度が調整されている空気を強制的に接触させることで麹を製造する製麹装置であって、
中央に中央穴が設けられ、前記空気を下と上の一方から他方へ通過させる複数の孔が設けられ、前記麹基質を載せる多孔円板と、この多孔円板を囲って製麹室を形成する外筒と、前記中央穴に通され、外径が前記外筒の内径の20%〜40%に設定されている内筒と、前記多孔円板を鉛直軸廻りに回転させる円板回転機構と、前記多孔円板で区分される製麹室の下室と上室の一方へ温度及び湿度が調整されている空気を供給する空気供給機構と、から成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
請求項1に係る発明では、外筒の内部に内筒を収めることで、空気を円滑に流すことができるようにした。その結果、1個の吹込み口から空気を供給する形態の円型通気製麹装置において、多孔円板を通過する空気の流速を均一化することができ、良質の麹を製造することができた。なお、内筒の外径を外筒の内径の20%以上にすることにより、製品品質を良好にすることができる。また、内筒の外径を外筒の内径の40%以下にすることにより、生産性の低下を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
図2は本発明に係る円型通風製麹装置の断面図であり、円型通風製麹装置10は、中央に中央穴11が設けられ、空気を下から上へ、又は上から下へ通過させる複数の孔12が設けられ、麹基質13を載せる多孔円板14と、この多孔円板14を囲って製麹室を形成する外筒15と、中央穴11に通され、外径が外筒15の内径の20%〜40%に設定されている内筒16と、多孔円板14を鉛直軸廻りに回転させる円板回転機構17と、多孔円板14で区分される製麹室の下室18と上室19の一方へ温度及び湿度が調整されている空気を供給する空気供給機構20と、多孔円板14の上方に昇降自在に配置されて麹基質13を適宜撹拌する手入れ機31と、多孔円板14の上方に昇降自在に配置されて出来上がった麹を排出する排出コンベア32とから成る。
【0024】
空気供給機構20は、例えば、下室18に設けられている吹込み口21に接続され、空気の温度を調節し且つ空気の湿度を整える空調室22と、この空調室22へ吸気ダクト23を通じて外気を送り込むブロアー24と、上室19から使用済み空気を取り出し、吸気ダクト23へ戻すリターンダクト25とからなる。余剰空気は、第1排気ダクト26及び/又は第2排気ダクト27を介して排出される。
【0025】
次に、内筒16の適正な大きさを、実験により検討した。
図3は実験装置の要部を示す図であり、(a)に示すように、1個の吹込み口21を有する外筒15の内径をD、この外筒15の中央に配置されている内筒16の外径をdと呼ぶ。多孔円板14については、(b)に示すように面積をS1と呼ぶ。そして、平均静圧より5Pa以上になった部分及び−5Pa以下になった部分を合わせて、静圧偏差部と呼び、この静圧偏差部の面積をS2と定義する。また、(c)に示すように、多孔円板14の孔12を通過する空気の流速(平均値)をVと呼ぶことにする。
【0026】
実験は以下の条件で実施した。
外筒の内径D:2000mm
内筒の外径d:180mm、300mm、400mm、920mm
空気の平均流速V:0.11m/s、0.13m/s、0.15m/s。(sは秒)
実験の結果を次図で説明する。
【0027】
図4は内筒の大きさと静圧偏差の関係を示すグラフであり、横軸は(内筒の外径/外筒の内径)、縦軸は図3で説明した(S2/S1)とした。
横軸での「9%」は従来の製麹装置に相当し、縦軸に示す静圧偏差の面積比が大きい。横軸で右に進むほど内筒が大径になり、静圧偏差の面積が減少する。ただし、横軸で「20%」以上であれば静圧偏差は十分に小さいと言える。
【0028】
ただし、横軸で右へ進むほど多孔円板の幅((外筒の内径−内筒の外径)÷2)が小さくなり、麹の生産量が減少する。そこで、生産量の減少について検討する。
図5は内筒の大きさと麹の生産量との関係を示すグラフである。
横軸で10%は従来の製麹装置に相当し、このときの生産量を100%とする。外筒の内径を一定にして内筒の外径を増加すると、多孔円板の面積が減少するため、生産量が減少する。横軸で20%では、生産量は3%の減少となる。横軸で33%では、生産量は10%減となり、横軸で40%では、生産量は15%減となり、横軸で50%では、生産量は24%減となる。
【0029】
麹の品質を維持するために、生産量を犠牲にすることはやむを得ないことであるが、生産量の減少は、10%減、多くとも15%減に止めた。15%減は(内筒の外径/外筒の内径)で40%に相当する。
図4で説明したように、(内筒の外径/外筒の内径)は20%以上が好ましく、図5で説明したように、(内筒の外径/外筒の内径)は40%以下が望まれる。
(内筒の外径/外筒の内径)は20〜40%の範囲に設定すれば、麹の品質を高めつつ、麹の生産量を高い水準に止めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、円型通風製麹装置に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】従来の円型通気製麹装置と本発明の円型通気製麹装置との対比図である。
【図2】本発明に係る円型通風製麹装置の断面図である。
【図3】実験装置の要部を示す図である。
【図4】内筒の大きさと静圧偏差の関係を示すグラフである。
【図5】内筒の大きさと麹の生産量との関係を示すグラフである。
【図6】従来の円型通風製麹装置の断面図である。
【図7】従来の多孔円板の平面図である。
【図8】圧力変動と製品品質との関係を調べたグラフである。
【図9】実験により得た圧力の分布図である。
【符号の説明】
【0032】
10…円型通風製麹装置、11…中央穴、12…孔、13…麹基質、14…多孔円板、15…外筒、16…内筒、17…円板回転機構、18…下室、19…上室、20…空気供給機構。
【出願人】 【識別番号】000004477
【氏名又は名称】キッコーマン株式会社
【出願日】 平成18年8月21日(2006.8.21)
【代理人】 【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎


【公開番号】 特開2008−43305(P2008−43305A)
【公開日】 平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願番号】 特願2006−224581(P2006−224581)