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【発明の名称】 細胞培養用基材およびその製造方法
【発明者】 【氏名】大谷 晋

【氏名】井上 崇

【氏名】山本 貴富喜

【氏名】藤井 輝夫

【氏名】酒井 康行

【氏名】西川 昌輝

【氏名】阪井 仁美

【氏名】成戸 宏介

【要約】 【課題】工業的な量産が容易で、耐久性があり、安価に製造できる細胞培養用基材およびその製造方法を提供する。

【構成】基体上に表面改質層を有し、前記表面改質層が、ホルミル[2.2]パラシクロファンの化学蒸着により形成された式(II)で表される重合体に、モノマー単位に少なくとも1個のシッフ塩基を形成する能力のあるアミノ基(−NH2)を含む重合体を反応させて得られたアミノ基を有する重合体を含有する構成の細胞培養用基材と前記重合体を基体上に合成する細胞培養用基材の製造方法とした。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体上に表面改質層を有し、前記表面改質層が、式(I)で表されるホルミル[2.2]パラシクロファンの化学蒸着により形成された式(II)で表される重合体に、モノマー単位に少なくとも1個のシッフ塩基を形成する能力のあるアミノ基(−NH2)を含む重合体を反応させて得られたアミノ基を有する重合体を含有する細胞培養用基材。
【化1】


【化2】


[式(I)中、kは0または1である。
式(II)中、nおよびmはそれぞれ重合度を表す正の整数であり、n=0であってもよいが、m=0となることはない。]
【請求項2】
前記表面改質層が含有するアミノ基を有する重合体が式(III)で表される請求項1の細胞培養用基材。
【化3】


[式(III)中、nおよびmはそれぞれ重合度を表す正の整数であり、n=0であってもよいが、m=0となることはない。Xは、重合体主鎖の炭素に直接、または炭素もしくは窒素に炭素数1〜4のアルキレン基を介してアミノ基が結合した第1級アミンを有する基を表す。]
【請求項3】
前記表面改質層が含有するアミノ基を有する重合体が式(IV)で表される請求項1の細胞培養用基材。
【化4】


[式(IV)中、nおよびmはそれぞれ重合度を表す正の整数であり、n=0であってもよいが、m=0となることはない。Xは、重合体主鎖の炭素に直接、または炭素もしくは窒素に炭素数1〜4のアルキレン基を介してアミノ基が結合した第1級アミンを有する基を表す。]
【請求項4】
前記式(III)または式(IV)におけるX中の重合体主鎖がポリエチレン、ポリエチレンイミン、またはポリメチレンアミドである請求項2または3の細胞培養用基材。
【請求項5】
前記式(III)または式(IV)において、Xが−CH2に対して炭素または窒素により結合する請求項2〜4のいずれかの細胞培養用基材。
【請求項6】
クロロ置換[2.2]パラシクロファンの化学蒸着物を下地として、式(I)で表されるホルミル[2.2]パラシクロファンの化学蒸着により式(II)で表される重合体を形成した請求項1〜5のいずれかの細胞培養用基材。
【請求項7】
前記基体が、3次元構造物である請求項1〜6のいずれかの細胞培養用基材
【請求項8】
基体上に、式(I)で表されるホルミル[2.2]パラシクロファンを化学蒸着して式(II)で表される重合体の膜を得、この式(II)で表される重合体の膜に、モノマー単位に少なくとも1個のシッフ塩基を形成する能力のあるアミノ基(−NH2)を含む重合体を反応させて式(III)で表される重合体の膜を得、この重合体膜を表面改質層とした細胞培養用基材の製造方法。
【化5】


【化6】


【化7】


[式(I)中、kは0または1である。
式(II)中、nおよびmはそれぞれ重合度を表す正の整数であり、n=0であってもよいが、m=0となることはない。
式(III)中、nおよびmはそれぞれ重合度を表し、nは0以上の整数であり、mは1以上の整数であり、m+nは2以上である。Xは、重合体主鎖の炭素に直接、または炭素もしくは窒素に炭素数1〜4のアルキレン基を介してアミノ基が結合した第1級アミンを有する基を表す。]
【請求項9】
前記アミノ基(−NH2)を含む重合体を含有する溶液に前記重合体を浸漬して反応させる請求項8の細胞培養用基材の製造方法。
【請求項10】
前記溶液中のアミノ基(−NH2)を含む重合体の濃度が、0.1〜0.00001%である請求項9の細胞培養用基材の製造方法。
【請求項11】
得られた式(III)で表される重合体をさらに還元して、式(IV)で表される重合体の膜を得、この重合体膜を表面改質層とする請求項8〜10のいずれかの細胞培養用基材の製造方法。
【化8】


[式(IV)中、nおよびmはそれぞれ重合度を表す正の整数であり、n=0であってもよいが、m=0となることはない。Xは、重合体主鎖の炭素に直接、または炭素もしくは窒素に炭素数1〜4のアルキレン基を介してアミノ基が結合した第1級アミンを有する基を表す。]
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞培養用基材に関し、より詳細には、生物学、医学、免疫学等の分野で用いられる細胞類の増殖、培養に好適に用いられる基材、特に、マウス、サル、霊長類などの胚性幹細胞(Embryonic Stem Cell: ES cell)、人工皮膚、人工骨、人工臓器等に用いられる機能性組織細胞等の培養に好適な細胞培養用基材および細胞培養用基材の表面改質方法に関する。
【背景技術】
【0002】
植物や動物の細胞は、従来から種々のものが培養されていて、培養技術も様々な態様のものが検討されている。細胞培養技術は、生物を対象とする様々な分野で用いられる基本技術である。特に生命科学の分野で医薬品の開発や病態メカニズムの解明などには欠くことのできない技術となっている。近年では、研究目的の細胞培養技術のみならず、生物学、医学、免疫学等の分野での利用を目的とした工業生産的培養方法も種々検討されている。近年、特に医療などの分野において、組織細胞を培養し、これを人工臓器、人工歯骨、人工皮膚等の代替組織として利用する研究も行われている。
【0003】
このような細胞培養は、通常一定の容器の中で栄養成分である培養液とともに培養が行われる。細胞培養はその性状から、培養液の中で浮遊した状態で培養されるものと容器の底面に付着した状態で培養されるものに大きく2分される。動物細胞の多くは、物質に付着して育成される接着依存性を有しており、一般に生体外の浮遊状態では長期間生存することができない。このため、このような接着依存性を有する細胞の培養には、細胞が付着するための基材が必要とされる。
【0004】
このような細胞培養用基材としては、シャーレ、フラスコ、マルチプレートなどが研究室レベルでは一般的である。このような器具は、主としてポリスチレン成形品の表面に低温プラズマ処理、コロナ放電処理等を施し、親水性を付与したものが市販されている。これらの器具は、足場依存性の細胞では、株化細胞、初代細胞を問わず、線維芽細胞、平滑筋細胞、血管内皮細胞、角膜細胞などの培養に広く用いられている。また、血液系細胞として、株化したリンパ球であるいわゆる足場非依存性の浮遊細胞等にも広く使用されている。
【0005】
しかし、細胞の種類によって、これらの細胞培養器具上では細胞の増殖は認められるものの、細胞の増殖が不十分だったり、細胞の増殖形態が悪かったりする。特に、初代培養においてはそれが顕著である。そこで、コラーゲン、ゼラチンといった細胞外マトリックスやファイブロネクチン、ラミニン、ビドロネクチンといった接着因子などを培養面にコートし、細胞の接着性、増殖性を高めることにより対処されることが多い。
【0006】
例えば、下記の非特許文献1,2,3,4及び特許文献1,2,3などに記載のように、細胞培養 基材として、シャーレにコートしたコラーゲン、コラーゲンゲル、コラーゲンスポンジ、分子架橋した三次元構造のコラーゲンシート、貫通孔を設けたコラーゲンスポンジなどを用い、これにヒト線維芽細胞やヒト角化細胞を播種、培養し、培養上皮・表皮を製造したり、ヒト線維芽細胞の上面にヒト角化細胞層を形成して培養粘膜・皮膚を製造することは知られている。
【0007】
コラーゲンコート膜を調製するために用いるコラーゲンは、動物の結合組織などから酸や酵素で可溶化したタイプIコラーゲンである。このコラーゲンを培養皿などにコーティングし、乾燥すればコラーゲンコート膜が得られる。このような細胞培養用基材となるコラーゲンとしては、例えばウシあるいはブタの結合組織から可溶化し、抽出されたコラーゲンが使用されているが、近年BSE(牛海綿状脳症)や口蹄疫等の問題によりその使用が困難になってきている。また、これら従来の細胞培養用基材を使用した細胞培養方法よりも、さらに細胞増殖効率の改善された細胞培養方法が求められている。
【0008】
また、神経系の細胞の培養においては、ポリ−D−リジン、ポリ−L−リジンといったポリリジンを培養面にコートして使用されることが多い。ポリリジンをコートすると、神経系細胞の接着がよく、株化神経系細胞では増殖形態が良好であり、神経突起の伸長度合もよい。また、ラット胎児の脳細胞の初代培養では、神経突起の伸長が良好であり、細胞の安定化度が高く、長期の培養が可能となる。
【0009】
このように、ポリリジンは神経系細胞の培養に良好な特性を有しているが、難点として不安定なことが挙げられる。上記の一般の培養器具にコートした場合、ポリリジンの効果は、室温保存で2週間、4℃では1ヶ月で失活する。また、この不安定さのため、コート後滅菌を施すことも出来ない。そのため、ポリリジンをコートした培養器具を使用するためには、予め滅菌してある培養器具に無菌的操作という面倒な方法で、使用時にポリリジンをコートする必要があり、冷蔵庫で保存しても1ヶ月程度しか使用できないという欠点があった。
【0010】
つまり、ポリリジンを一般の培養器具にコートしようとした場合、かなり手間がかかる。その理由の1つが、コート後のポリリジンの不安定さであり、これに加えて、作業をクリーンベンチなどの無菌環境下で行わねばならない煩雑さがあった。従って、ポリリジンをあらかじめコートした細胞培養器具を市販しようとした場合、無菌環境下の多くの工程が必要であり、またコート後の保存管理も難しく、コストが高くつくことになる。
【非特許文献1】臨床科学34巻9号 白方裕司・橋本公二:再生医学、 X。皮膚 表皮の再生機構と培養表皮シートを用いた熱傷P1283〜1290
【非特許文献2】名古屋大学出版会1999/10/10発行「ティッシュ・エンジニアリング繊維工学の基礎と応用」上田実編 松崎恭一・熊谷憲夫:培養皮膚P107〜117
【非特許文献3】畠堅一郎・上田実:皮膚・粘膜 Pharma Media Vol.18 No.1 2000 P25〜P29 2000
【非特許文献4】名古屋大学出版会1999/10/10発行「ティッシュ・エンジニアリング繊維工学の基礎と応用」上田実編 畠堅一郎・上田実:口腔粘膜 P118〜P127
【特許文献1】特開平6−292568号公報
【特許文献2】特開平8−243156号公報
【特許文献3】特開平9−47503号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、工業的な量産が容易で、耐久性があり、安価に製造できる細胞培養用基材およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、特願2004−189740号において、アミノ基を付加したポリパラキシリレンをコートしたDNAチップを提案した。その後、このアミノ基を有するポリパラキシリレン膜をコーティングすることで種々の物質の生体適合性を改良できることを見いだした。ポリパラキシリレン膜を用いたコーティング層は従来よりステントやペースメーカなどに用いられている。しかし、ポリパラキシリレン膜単独では疎水性が強く、培養基材として細胞接着性ないし吸着性が全く無いに等しい。
【0013】
ところが、コーティングしたポリパラキシリレン膜にアミノ基を付加することで、親水性、細胞接着性ないし吸着性が改善される。
【0014】
すなわち、上記目的は以下の本発明の構成により達成される。
(1) 基体上に表面改質層を有し、前記表面改質層が、式(I)で表されるホルミル[2.2]パラシクロファンの化学蒸着により形成された式(II)で表される重合体に、モノマー単位に少なくとも1個のシッフ塩基を形成する能力のあるアミノ基(−NH2)を含む重合体を反応させて得られたアミノ基を有する重合体を含有する細胞培養用基材。
【0015】
【化9】


【0016】
【化10】


【0017】
[式(I)中、kは0または1である。
【0018】
式(II)中、nおよびmはそれぞれ重合度を表す正の整数であり、n=0であってもよいが、m=0となることはない。]
(2) 前記表面改質層が含有するアミノ基を有する重合体が式(III)で表される上記(1)の細胞培養用基材。
【0019】
【化11】


【0020】
[式(III)中、nおよびmはそれぞれ重合度を表す正の整数であり、n=0であってもよいが、m=0となることはない。Xは、重合体主鎖の炭素に直接、または炭素もしくは窒素に炭素数1〜4のアルキレン基を介してアミノ基が結合した第1級アミンを有する基を表す。]
(3) 前記表面改質層が含有するアミノ基を有する重合体が式(IV)で表される上記(1)の細胞培養用基材。
【0021】
【化12】


【0022】
[式(IV)中、nおよびmはそれぞれ重合度を表す正の整数であり、n=0であってもよいが、m=0となることはない。Xは、重合体主鎖の炭素に直接、または炭素もしくは窒素に炭素数1〜4のアルキレン基を介してアミノ基が結合した第1級アミンを有する基を表す。]
(4) 前記式(III)または式(IV)におけるX中の重合体主鎖がポリエチレン、ポリエチレンイミン、またはポリメチレンアミドである上記(2)または(3)の細胞培養用基材。
(5) 前記式(III)または式(IV)において、Xが−CH2に対して炭素または窒素により結合する上記(2)〜(4)のいずれかの細胞培養用基材。
(6) クロロ置換[2.2]パラシクロファンの化学蒸着物を下地として、式(I)で表されるホルミル[2.2]パラシクロファンの化学蒸着により式(II)で表される重合体を形成した上記(1)〜(5)のいずれかの細胞培養用基材。
(7) 前記基体が、3次元構造物である上記(1)〜(6)のいずれかの細胞培養用基材
(8) 基体上に、式(I)で表されるホルミル[2.2]パラシクロファンを化学蒸着して式(II)で表される重合体の膜を得、この式(II)で表される重合体の膜に、モノマー単位に少なくとも1個のシッフ塩基を形成する能力のあるアミノ基(−NH2)を含む重合体を反応させて式(III)で表される重合体の膜を得、この重合体膜を表面改質層とした細胞培養用基材の製造方法。
【0023】
【化13】


【0024】
【化14】


【0025】
【化15】


【0026】
[式(I)中、kは0または1である。
【0027】
式(II)中、nおよびmはそれぞれ重合度を表す正の整数であり、n=0であってもよいが、m=0となることはない。
【0028】
式(III)中、nおよびmはそれぞれ重合度を表し、nは0以上の整数であり、mは1以上の整数であり、m+nは2以上である。Xは、重合体主鎖の炭素に直接、または炭素もしくは窒素に炭素数1〜4のアルキレン基を介してアミノ基が結合した第1級アミンを有する基を表す。]
(9) 前記アミノ基(−NH2)を含む重合体を含有する溶液に前記重合体を浸漬して反応させる上記(8)の細胞培養用基材の製造方法。
【0029】
(10)
前記溶液中のアミノ基(−NH2)を含む重合体の濃度が、0.1〜0.00001%である上記(9)の細胞培養用基材の製造方法。
【0030】
(11) 得られた式(III)で表される重合体をさらに還元して、式(IV)で表される重合体の膜を得、この重合体膜を表面改質層とする上記(8)〜(10)のいずれかの細胞培養用基材の製造方法。
【0031】
【化16】


【0032】
[式(IV)中、nおよびmはそれぞれ重合度を表す正の整数であり、n=0であってもよいが、m=0となることはない。Xは、重合体主鎖の炭素に直接、または炭素もしくは窒素に炭素数1〜4のアルキレン基を介してアミノ基が結合した第1級アミンを有する基を表す。]
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、蒸着法により表面改質層を形成することができるので、工業的に量産することが可能であり、低価格で細胞培養用基材を提供することができる。また、形成された表面改質層は強固で、耐久性があり、取り扱いも容易である。さらに、種々の形状の基材上に表面改質層を形成することができるので、3次元形状にも対応することができ、使用する基材にも種々のものを用いることができ、応用範囲が広がる。
【0034】
また、ホルミル[2.2]パラシクロファンの化学蒸着に先立って、基材に、まず、[2.2]パラシクロファンに塩素を導入したクロロ置換[2.2]パラシクロファンを蒸着すれば、ポリホルミルパラキシリレン膜の基材への接着性を高めるとともに、ポリホルミルキシリレン膜を薄くできるため経済的である。基材への接着性がさらに高まるため、膜の剥離を強固に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
本発明の細胞培養用基材は、基材上に表面改質層を有するものであり、この表面改質層は、式(I)で表されるホルミル[2.2]パラシクロファンの化学蒸着により形成された式(II)で表される重合体に、モノマー単位に少なくとも1個のシッフ塩基を形成する能力のあるアミノ基(−NH2)を含有する重合体(アミノ基含有重合体)を反応させ、その結果得られたアミノ基を有する重合体を有する。
【0036】
【化17】


【0037】
【化18】


【0038】
式(I)中、kは0または1である。
【0039】
式(II)中、nおよびmはそれぞれ重合度を表す正の整数であり、n=0であってもよいが、m=0となることはない。
【0040】
上記のようにして得られた重合体は、反応させるアミノ基含有重合体を選択することにより、重合体に導入できるアミノ基数を多くすることができるため、親水性や細胞との親和性、接着性を飛躍的に改善することができる。
【0041】
本発明に用いるアミノ含有重合体は、モノマー単位に、ホルミル[2.2]パラシクロファンのホルミル基と脱水縮合して、一般式 RR′C=NR″ あるいは(-CH=N-)で表わされる化合物、つまりシッフ塩基を生成するアミノ基(−NH2)を少なくとも1個含むものであれば特に制限なく用いることができる。そして、シッフ塩基生成に使用されなかったアミノ基が、親水性を高めたり、各種細胞との親和性、接着性を向上させる。このように、親水性、細胞との親和性、接着性の向上という観点からは、アミノ基数は多い方が好ましいが、あまり過剰になると効果が低下する場合もある。シッフ塩基生成に関与しないアミノ基は−NH2が好ましいが、このほか、−NHR、−N(R)2(Rはアルキル基等の置換基)であってもよい。このような重合体としては、ビニル基等の重合可能な不飽和基(エチレン性不飽和基)を有する第一級アミン化合物から得られた重合体などを用いることが好ましい。このような重合体の分子量は重量平均分子量で1,000〜50万であることが好ましい。
【0042】
このようなアミノ含有重合体の具体例を以下に示す。
【0043】
【化19】


【0044】
上記において、m’およびn’はそれぞれ重合度を表す。
【0045】
これらのなかには市販されているものもあり、市販品はそのまま用いることができる。また、公知の方法あるいは公知の方法に準じて合成することができる。
【0046】
これらのなかでは、その入手のしやすさなどから、通常、(1)〜(5)の化合物が用いられる。例えば、(1)のポリエチレンイミン化合物は、商品名エポミン(日本触媒製)として、(3)のポリアリルアミン化合物は、商品名PAA−L(重量平均分子量1万)、PAA−H(重量平均分子量10万)(日東紡製)として市販されている。
【0047】
これらは、通常、1種の化合物が用いられるが、場合によっては、2種以上を併用してもよい。
【0048】
式(I)で表されるホルミル[2.2]パラシクロファンの化学蒸着物にアルキル含有重合体を反応させて得られたアミノ基を有する重合体としては、式(III)で表されるシッフ塩基型の重合体、あるいは、このシッフ塩基型の重合体のシッフ塩基部分を還元した式(IV)で表される重合体が好ましいものとして挙げられる。
【0049】
【化20】


【0050】
【化21】


【0051】
式(III)、(IV)中、nおよびmはそれぞれ重合度を表し、nは0以上の整数であり、mは1以上の整数であり、n+mは2以上である。Xは、重合体主鎖の炭素に直接、または炭素もしくは窒素に炭素数1〜4のアルキレン基を介してアミノ基が結合した第1級アミンを有する基を表す。
【0052】
X中の重合体主鎖としては、前記アミノ含有重合体の例示化合物に示されるように、ポリエチレン、ポリエチレンイミン、またはポリエチレンアミドであることが好ましい。また、Xは、通常、−CH2と炭素あるいは窒素で結合する。
【0053】
式(II)で表される重合体は、通常、ランダム共重合体であると推定できる。
【0054】
このようなアミノ基を有する重合体を含有する表面改質層の厚さに特に制限はなく、使用目的に応じて適宜選択することができる。
【0055】
本発明の表面改質層においては、式(I)で表されるホルミル[2.2]パラシクロファンの化学蒸着物の形成に先立って、クロロ置換[2.2]パラシクロファン、好ましくはジクロロ[2.2]パラシクロファンの化学蒸着物を下地として形成することが好ましい。
【0056】
ポリクロロ置換[2.2]パラキシリレン膜の方が基体に対する接着性がよいために、基材と表面改質層との密着性が向上する。このため、基材の取り扱い時等において膜の剥離を防止することができるなど、取り扱いの容易性や耐久性の点で有利である。また、前述のように、経済的にも有利となる。
【0057】
このような下地層の厚さは表面改質層の厚さに等に応じて適宜最良の厚さとすればよく、接着性を改善する目的を達成できれば特に制限はない。通常、下地層は表面改質層より厚くすることが多い。
【0058】
本発明の表面改質層は、次のようにして製造される。まず、式(I)で表されるホルミル[2.2]パラシクロファンを合成する。
【0059】
式(I)で表されるホルミル[2.2]パラシクロファンは、公知の方法に従い、[2.2]パラシクロファンを、塩化チタン(IV)の存在下で、ジクロロメチルメチルエーテルを反応させることにより得られる。
【0060】
次に、このようにして得られた式(I)で表されるホルミル[2.2]パラシクロファンを原料として、基体上に重合体膜を成膜する。
【0061】
式(I)で表される化合物は、好ましくは蒸着法、特にCVD法により、原料を蒸発、分解させて、これを基体上に重合・堆積させることで、均質な膜を基体と良好に接着させることができる。すなわち、原料を所定温度下で蒸発させると、ダイマーガスが発生する。これをさらに分解温度まで加熱することでモノマーガスとし、所定の真空度で基体上に重合・堆積させればよい。
【0062】
化学蒸着は、例えば図52に示されるような蒸着装置を用いて行う。この蒸着装置は、蒸発部11と、分解部12と、蒸着部13とを有する。なお、図において、蒸発部11には蒸発材料を導入する開口部シャッタ11aを有し、さらに蒸発部13にはトラップ14を介して真空ポンプ15が接続されている。
【0063】
図示例の蒸着装置において、蒸発部11に固体状の蒸発材料の式(I)で表されるホルミル[2.2]パラシクロファンを導入する。蒸発部11を、10〜75mTorr(1.33〜10.0Pa)程度の真空度に保ち、100〜180℃程度に加熱すると、蒸発材料が気化してダイマーガスとなり、原料ガスが生成する。
【0064】
次いで、生成した原料のダイマーガスを、700℃程度に加熱してある分解部12に導入する。この分解部12では、導入された原料ガスは熱分解によりモノマーガスとなる。
【0065】
次に、得られた原料モノマーガスを、蒸着部13内に導入する。蒸着部13内は、最大75mTorr(10.0Pa)程度の真空度に保持されている。そして、導入されたモノマーガスは基体表面で重合し、式(II)で表される重合体の膜が形成される。
【0066】
なお、この成膜作業はホルミル基の酸化を防止するために酸素の極めて少ない非酸化性雰囲気(例えば窒素雰囲気)で行うことが好ましい。特に成膜後は成膜室内を素早く非酸化性雰囲気(例えば窒素雰囲気)し、その後の処理雰囲気も非酸化性雰囲気(例えば窒素雰囲気)とするとよい。
【0067】
また、式(I)で表されるホルミル[2.2]パラシクロファンの化学蒸着による成膜に先立ち、基体上に、予め、クロロ置換[2.2]パラシクロファンを化学蒸着して、これによりその重合体の膜を形成し、この膜上に式(I)で表されるホルミル[2.2]パラシクロファンからの重合体の膜を形成してもよい。これにより、基体との密着性が向上し、機械的ストレスなどによる膜剥離が防止できる。また、前述のように、経済的にも有利となる。さらに、結合性を改善するために基体との間にカップリング材を介在させてもよい。
【0068】
次に、基体上に形成された式(II)で表されるポリホルミルパラキシリレンとアミノ基含有重合体とを反応させ、ホルミル基とアミノ基との縮合反応によりシッフ塩基を形成した式(III)で表される重合体を得る。
【0069】
ポリホルミルパラキシリレンとアミノ基含有重合体との反応工程は、例えば、アミノ含有重合体をアルコールなどの溶媒中に溶解させ、この溶液中にポリホルミルパラキシリレン膜が形成された基体を浸漬するとよい。その際の条件としては、例えば室温下で30分〜4時間、好ましくは1時間〜3時間程度浸漬するとよい。また、その際容器を振揺したり、溶媒を撹拌してもよいが、気泡などが生じないように注意すべきである。この溶液の濃度としては、用いるアミノ基含有重合体や溶媒の種類によって異なるが、ポリアリルアミンをアルコール(好ましくはエタノール)に溶解させた場合を例に示すと、0.1%以下が好ましく、その下限は0.00001%程度、好ましくは0.0001%であり、より好ましくは0.01〜0.001%である。ポリアリルアミンが上記範囲以外では、好ましい効果が得られ難くなる。
【0070】
シッフ塩基の存在は、例えばFT−IRなどの分析により確認することができる。
【0071】
本発明では、式(III)で表される重合体を表面改質層に用いて十分であるが、さらに、このシッフ塩基部分をNaBH4等の還元剤を用いて還元し、これにより式(IV)で表される重合体を得、これを表面改質層に用いてもよい。式(IV)で表される重合体の方がより安定な化合物といえるが、本発明においては、いずれであってもよい。また、これらを併用してもよい。
【0072】
なお、シッフ塩基タイプの重合体の生成の確認は、重合体が親水性、細胞との親和性、接着性を示すことから行うことができる。
【0073】
このようにして、式(III)、(IV)で表される重合体を含有する表面改質層が得られる。
【0074】
なお、成膜時に所定パターンのマスクを用い、マスク蒸着を行ってもよい。このように、マスク蒸着を行うことにより、精度よく表面改質層パターンを形成することができ、不必要な部分に細胞膜や組織が形成されるのを防止したり、特定のニューロン回路や器官などを形成させることもできる。
【0075】
また、上記の反応スキームをまとめると次のようになる。ここでは、式(I)において、k=0の場合を代表にして示す。
【0076】
【化22】


【0077】
ここで、n、m、Xは、式(III)、(IV)におけるものと同義である。
【0078】
上記の表面改質層を基体上に形成することで本発明の細胞培養用基材が得られる。基体の材質は、透明なガラス、シリコンまたはポリエチレンテレフタレート、酢酸セルロース、ビスフェノールA等のポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート等のポリマーであることが好ましい。また、他にも紙や金属、あるいは繊維などを基体として用いることもできる。また、体内に挿入したり、3次元構造を構築するための基体としては、組織適合性や、生分解性などの特質を備えたものが望ましい。
【実施例1】
【0079】
[原材料の合成]
下記に示すように、[2.2]パラシクロファンから式(I)で表されるホルミル[2.2]パラシクロファンを合成した。
【0080】
【化23】


【0081】
[2.2]パラシクロファン7.8gを40mlの塩化メチレンに懸濁した溶液に塩化チタン(IV)塩化メチレン溶液(1mol/L濃度)80mlを加え、0℃から5℃に冷却した。撹拌しながら、この温度下で、ジクロロメチルメチルエーテル溶液9.0gを滴下した。滴下終了後、室温で20分撹拌し、その後、塩酸50mlを含む氷上にあけた。塩化メチレン溶液を分離し、この溶液を水200mlで2回洗浄した。塩化メチレン溶液を窒素雰囲気中、芒硝で脱水を行った。窒素下で溶媒を留去した。残留物に200mlのエタノールを加え、加熱還流を行った。溶液は濁りがあるため濾過した。エタノール溶液を凝縮、放冷した。析出した沈澱を濾取し、減圧乾燥した。5.2gのホルミル[2.2]パラシクロファンを得た(ガラスクロマトグラフィー純度GC99.8%、mp140〜142℃)。
【0082】
[下地処理]
重合体膜の形成に先立って、基体としてポリスチレン製シャーレ(直径:90mm、高さ:15mm)上に下記のジクロロ[2.2]パラシクロファンからの化学蒸着膜を下地として3μm 厚に形成した。図1に示すような蒸着装置を使用して下地膜の形成を行った。図示例の蒸着装置において蒸発部に固体状の蒸着材料ジクロロ[2,2]パラシクロファン8.4gを導入した。蒸発部を、10〜30mTorr(1.33〜4.0Pa)の真空度に保ち、140から180℃に徐々に加熱すると、蒸着材料が気化してダイマーガスとなり、原料ガスが生成した。次いで、原料ガスは600℃に加熱してある分解部に導入した。この分解部では、導入された原料ガスは熱分解によりモノマーガスとなる。次に、得られたモノマーガスを蒸着部に導入した。蒸着部内は、最大30mTorr (4.0Pa)の真空度に保持されている。そして導入されたモノマーガスは蒸着部内に設置されたポリスチレン基体の表面で重合し、下地層の膜を形成した。この時、形成された下地層の膜の膜厚は3μmであった。
【0083】
【化24】


【0084】
[表面改質層を有する基材の作製]
(1)重合体膜の形成
次いで、図1の蒸着装置において蒸発部に式(I)の構造を有する固体状の蒸着材料ホルミル[2.2]パラシクロファン10.0gを導入した。蒸発部を、10〜75mTorr(1.33〜10.0Pa)の真空度に保ち、120から160℃に徐々に加熱すると、蒸着材料が気化してダイマーガスとなり、原料ガスが生成した。次いで、原料ガスを600℃に加熱してある分解部に導入した。この分解部では、前記のスキームに示されるように、導入された原料ガスは熱分解によりモノマーガスとなる。次に、得られたモノマーガスを蒸着部に導入した。蒸着部内は、最大63.7mTorr (8.5Pa)の真空度に保持されている。そして導入されたモノマーガスは蒸着部内に設置されたポリスチレン基体の表面で重合し、前記のスキームに示されるような重合体の膜を形成した。この時、形成された重合体膜の平均膜厚は0.8μmであった。また、重合体の膜形成における一連の作業は、蒸着材料中や重合体の膜中におけるホルミル基の酸化を防ぐために窒素雰囲気下で行った。このため、蒸着後のチャンバー内には速やかに窒素ガスが満たされた。
【0085】
(2)シッフ塩基の形成
20%(質量百分率)ポリアリルアミン水溶液(日東紡製Polyallylamine-L(20%))を真空度約40〜60mmHg(5.32〜7.98kPa)、温度100℃で加熱し、水分を留去した。次いで、これにエタノールを加え、加熱還流させ溶解し、0.1%のポリアリルアミンエタノール溶液を得た。この溶液を上記のようにして製造した重合膜を有するポリスチレン製シャーレ内部に満たし、シャーレ内部表面の重合膜とポリアリルアミンとを接触させ、室温下で2時間放置した。その後、シャーレ内部の溶液をデカントし、温度約70℃で減圧乾燥を一晩行った。このようにしてポリスチレン製シャーレ内部表面上に式(II)で示される重合体のポリアリルアミンシッフ塩を生成した(前記スキーム参照)。その後、シャーレ内部は未反応のポリアリルアミンを除去するために十分に蒸留水にて洗浄を行った。
【0086】
その後、1%SBH/変性アルコール(エタノール90%、メタノール10%)溶液に室温で2時間浸漬し、還元処理を行った。次いで、再度蒸留水にて十分な水洗を行った後、内温約60℃のオーブンで2時間乾燥させた。以上のようにして、0.1%ポリアリルアミンエタノール溶液を用いた細胞培養用基材の製造を行い、基材サンプルNo.1とした。
【0087】
この場合のアルキル含有重合体であるポリアリルアミンは、例示化合物(3)であり、重量平均分子量は1万であり、商品名PAA−L(日東紡製)で市販されているものである。また、これによって得られるシッフ塩基型の重合体は次のとおりである。
【0088】
【化25】


【0089】
さらに、上記と同様にしてポリアリルアミンエタノール濃度を0.01%とした溶液から得たものをNo.2、0.001%とした溶液から得たものをNo.3とし、1%とした容液から得たものを基材サンプルNo.4とした。また、コラーゲンをコートした基材サンプルNo.5も用意した。
【実施例2】
【0090】
[Rat肝臓初代培養細胞]
実施例1で得られた各サンプル基材No.1〜4、およびNo.5を用いてRat正常肝臓細胞の培養試験を行った。
【0091】
接種細胞には成熟ラット肝細胞の初代培養細胞、Wister Rat の雄5週齢(コンペンショナルまたはクリーン、Std)を三協ラボサービスより購入し、5〜9週齢となったものをコラグナーゼ灌流法により単離したものを用いた。これを下記の培地に播種密度:4×104cells/cm2で接種し、6時間、2日、4日の経過での培養細胞の状態を目視にて確認した。
【0092】
培地としては、以下の培養液を用いた。Dulbecco's Modified Medium (DMEM) :Kojin Bio 製を基礎培地として、2-[4-(2-Hydroxyethyl)-1-piperadinyl] ethansulfonic acid (HEPES) 最終濃度20mM 同仁堂製、Essential Amino Acid (NEAA) 最終濃度0.1mM Gibco製、ペニシリン:最終濃度100units/ml Wako,Osaka,Japan製、ストレプトマイシン:最終濃度100g/ml Sigma製、アンフォテリシンB:最終濃度0.25g/ml Sigma製を加え、さらに副成分としてinsulin(Wako,Osaka,Japan製)、dexamethasone(Sigma製)をそれぞれ10-7M、epidermal growth factor (EGF) Takara製 を10-8M、重金属としてZnを10-6M、Cu,Mnをそれぞれ10-7M、Seを10-8Mになるように添加して調整した。
【0093】
6時間経過後のサンプルNo.1〜5の状態を図1〜5に、2日後のサンプルNo.1〜5の状態を図6〜10に、4日経過後のサンプルNo.1〜5の状態を図11〜15にそれぞれ示す。
【0094】
また、上記各サンプルにて培養した細胞のCYP1A1/2活性試験を行った。
エトキシレゾルフィン(ER)の代謝物であるレゾルフィン(R)の生成濃度を、吸光度、蛍光強度から算出することで、代謝酵素(CYP1A1/2)の酵素活性の指標とした。また、あらかじめ3-メチルコラントレン(3MC)等を培地に溶かして細胞に曝露しておくことで、酵素誘導能があるかどうかも調べた。CYP1A は、ethoxyresorufin ( ER ) のO -脱アルキル化反応 ( EROD )を触媒し、蛍光物質であるresorufin を生成させる。培地に蛍光性基質エトキシレゾルフィン溶液を入れ、一定時間期間暴露後。培地の一部を採ってエタノールで希釈し、残存するエトキシレゾルフィンの吸光と生成したレゾルフィンに基づく蛍光の強度を測定した。
【0095】
先ず、前処理として、上記の培地に3MC 0.5uM を加えたもの(+3MC)と、3MCを加えない培地(-)を用意し、誘導有り無しの2条件を準備した。これらの培地で2日培養後、ER 10uM, ジクマロール 10uM を加えた培地を細胞に曝露し、1時間インキュベートした。なお、ジクマロールはR の代謝を防ぐために添加した。その後、培地をサンプリングし、エタノールなどの溶剤に溶解させて吸光度、蛍光強度を測定した。480nm の吸光度は残存ER濃度、530-585nm の蛍光強度はERとR の濃度に依存するので、両データから計算してR の生成量を算出した。なお、R の蛍光強度はER に比べて非常に大きいため、代謝能のある程度ある細胞(Rat正常肝細胞、HepG2、Caco-2など)では吸光度測定を省略してもよい。また、これらの測定は、例えばAP2形マイクロプレートシステム(株)日立ハイテクノロジーズ製等のプレートリーダ等を用いることで容易に行うことができる。結果を図16に示す。
【0096】
図1〜5の6時間経過後の状態では、初期接着の進展はサンプルNo.5の比較サンプルが良好であることが判る。また、サンプルNo.1および2も概ね良好である。図6〜10の2日後では、サンプルNo.4および1を除き十分な進展が見られている。図11〜15の4日後では、サンプルNo.2,3および5において、細胞が数個集まりスフェロイド化していることが認められる。特に、サンプルNo.3および5が顕著である。また、サンプルNo.1も良好な進展が見られた。
【0097】
図16のEROD測定では、コラーゲンのサンプルNo.5に対して、誘導ありの条件(+3MC)でサンプルNo.2で半分程度、サンプルNo.3で1/4程度の活性があることが判る。
【実施例3】
【0098】
[HepG2細胞]
実施例1と同様にして、ポリアリルアミン濃度を0.1%としたサンプルNo.11、0.01%としたNo.12、0.001%としたNo.13、1%としたNo.14、コラーゲンをコートした比較サンプルNo.15を用意した。
【0099】
これら各サンプルNo.11〜15を用いてHepG2細胞の培養を行った。
【0100】
接種細胞は、ヒト肝臓ガン由来の分化型細胞株HepG2 Japanese Cancer Research より購入したものを用い、これを実施例1の副成分を除いた培地に、牛胎児血清(FBS):最終濃度10体積%を加えて調整した培地に播種密度:4×104cells/cm2で接種した。
【0101】
1日経過後のサンプルNo.11〜15の状態を、それぞれ図17〜21に、7日後のサンプルNo.11〜15の状態を、それぞれ図22〜26に示す。
【0102】
播種時の細胞接着性については、サンプルNo.11〜14は、比較サンプルNo.15と同程度の接着性を示したものの、サンプルNo.14は、播種後、形態変化による細胞死が認められた。図17〜27の1日および7日後の結果から、比較サンプルNo.15と同程度の増殖が認められるのはサンプルNo.11〜13であることが判る。
【実施例4】
【0103】
[Caco-2細胞]
実施例1と同様にして、ポリアリルアミン濃度を0.1%としたサンプルNo.21、0.01%としたNo.22、0.001%としたNo.23、1%としたNo.24、コラーゲンをコートした比較サンプルNo.25を用意した。
【0104】
これら各サンプルNo.21〜25を用いてCaco-2細胞の培養を行った。
【0105】
接種細胞は、小腸上皮様に分化する、ヒト大腸ガン由来細胞Caco-2 American Type Culture Collection (ATCC)より購入したものを用いた。これを実施例1の副成分を除いた培地に、牛胎児血清(FBS):最終濃度10体積%を加えて調整した培地に播種密度:4×104cells/cm2で接種した。
【0106】
1日経過後のサンプルNo.21〜25の状態を図27〜31に、3日後のサンプルNo.21〜25の状態を図32〜36に、5日後のサンプルNo.21〜25の状態を図37〜41に、7日後のサンプルNo.21〜25の状態を図42〜46に、10日後のサンプルNo.21〜23および25の状態を図47〜50にそれぞれ示す。
【0107】
1日経過後の図27〜31では、明らかにサンプルNo.24に異常が見られ、サンプルNo.21でも細胞の接着の異常箇所が確認できる。3日後の図32〜36では、サンプルNo.24,21でも異常が見られるが、サンプルNo.22,23では良好な進展が見られた。5日後の図37〜41では、サンプルNo.21で僅かな進展が確認され、サンプルNo.22,23では引き続き良好な進展が見られ、特にサンプルNo.23が優れていた。7日後および10日後の図42〜46および図47〜50では、サンプルNo.22,23で良好な進展が見られた。
【0108】
以上のように、7日間の培養課程で、サンプルNo.21,22では比較サンプルNo.25と同等の結果が確認された。特に、サンプルNo.22の結果が良好であった。
【0109】
次に、これらの各サンプルを11日間培養したときの培地内の残留グルコース量(g)を測定した。結果を表1に示す。なお、表1においてNo.1〜5は、No.21〜25に対応している。
【0110】
【表1】


【0111】
表1から明らかなように、サンプルNo.22,23では比較サンプルNo.25と同等にグルコースが消費されているのが判る。
【0112】
また、サンプルNo.22,23と比較サンプルNo.25について、実施例2と同様にして代謝酵素チトクロームP-450 (cytochrome-P450 (CYP))Phase I活性の評価を行った。結果を図50に示す。図50から、サンプルNo.22,23とも誘導条件において比較サンプルNo.25の半分程度の活性を示していることが分かる。
【実施例5】
【0113】
実施例1において、ジクロロ[2.2]パラシクロファンの下地膜を形成しないで直接表面改質層を形成したほかは同様にして基材サンプルNo.31〜34を作製した。このサンプルを用いて実施例1と同様な培養試験を行ったところ、ほぼ同様の結果が得られた。但し、同様の手法で複数のサンプルを作成した時に、洗浄などの機械的ストレスが加えられたもので、重合膜の一部に剥離したものが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】実施例1のサンプルNo.1の6時間経過後の培養状態を示す図面代用写真である。
【図2】実施例1のサンプルNo.2の6時間経過後の培養状態を示す図面代用写真である。
【図3】実施例1のサンプルNo.3の6時間経過後の培養状態を示す図面代用写真である。
【図4】実施例1のサンプルNo.4の6時間経過後の培養状態を示す図面代用写真である。
【図5】実施例1のサンプルNo.5の6時間経過後の培養状態を示す図面代用写真である。
【図6】実施例1のサンプルNo.1の2日経過後の培養状態を示す図面代用写真である。
【図7】実施例1のサンプルNo.2の2日経過後の培養状態を示す図面代用写真である。
【図8】実施例1のサンプルNo.3の2日経過後の培養状態を示す図面代用写真である。
【図9】実施例1のサンプルNo.4の2日経過後の培養状態を示す図面代用写真である。
【図10】実施例1のサンプルNo.5の2日経過後の培養状態を示す図面代用写真である。
【図11】実施例1のサンプルNo.1の4日経過後の培養状態を示す図面代用写真である。
【図12】実施例1のサンプルNo.2の4日経過後の培養状態を示す図面代用写真である。
【図13】実施例1のサンプルNo.3の4日経過後の培養状態を示す図面代用写真である。
【図14】実施例1のサンプルNo.4の4日経過後の培養状態を示す図面代用写真である。
【図15】実施例1のサンプルNo.5の4日経過後の培養状態を示す図面代用写真である。
【図16】実施例1のサンプルNo.1〜5の4日経過後の酵素CYP1A1/2活性試験の結果を示すグラフである。
【図17】実施例2のサンプルNo.11の1日経過後の培養状態を示す図面代用写真である。
【図18】実施例2のサンプルNo.12の1日経過後の培養状態を示す図面代用写真である。
【図19】実施例2のサンプルNo.13の1日経過後の培養状態を示す図面代用写真である。
【図20】実施例2のサンプルNo.14の1日経過後の培養状態を示す図面代用写真である。
【図21】実施例2のサンプルNo.15の1日経過後の培養状態を示す図面代用写真である。
【図22】実施例2のサンプルNo.11の7日経過後の培養状態を示す図面代用写真である。
【図23】実施例2のサンプルNo.12の7日経過後の培養状態を示す図面代用写真である。
【図24】実施例2のサンプルNo.13の7日経過後の培養状態を示す図面代用写真である。
【図25】実施例2のサンプルNo.14の7日経過後の培養状態を示す図面代用写真である。
【図26】実施例2のサンプルNo.15の7日経過後の培養状態を示す図面代用写真である。
【図27】実施例3のサンプルNo.21の1日経過後の培養状態を示す図面代用写真である。
【図28】実施例3のサンプルNo.22の1日経過後の培養状態を示す図面代用写真である。
【図29】実施例3のサンプルNo.23の1日経過後の培養状態を示す図面代用写真である。
【図30】実施例3のサンプルNo.24の1日経過後の培養状態を示す図面代用写真である。
【図31】実施例3のサンプルNo.25の1日経過後の培養状態を示す図面代用写真である。
【図32】実施例3のサンプルNo.21の3日経過後の培養状態を示す図面代用写真である。
【図33】実施例3のサンプルNo.22の3日経過後の培養状態を示す図面代用写真である。
【図34】実施例3のサンプルNo.23の3日経過後の培養状態を示す図面代用写真である。
【図35】実施例3のサンプルNo.24の3日経過後の培養状態を示す図面代用写真である。
【図36】実施例3のサンプルNo.25の3日経過後の培養状態を示す図面代用写真である。
【図37】実施例3のサンプルNo.21の5日経過後の培養状態を示す図面代用写真である。
【図38】実施例3のサンプルNo.22の5日経過後の培養状態を示す図面代用写真である。
【図39】実施例3のサンプルNo.23の5日経過後の培養状態を示す図面代用写真である。
【図40】実施例3のサンプルNo.24の5日経過後の培養状態を示す図面代用写真である。
【図41】実施例3のサンプルNo.25の5日経過後の培養状態を示す図面代用写真である。
【図42】実施例3のサンプルNo.21の7日経過後の培養状態を示す図面代用写真である。
【図43】実施例3のサンプルNo.22の7日経過後の培養状態を示す図面代用写真である。
【図44】実施例3のサンプルNo.23の7日経過後の培養状態を示す図面代用写真である。
【図45】実施例3のサンプルNo.24の7日経過後の培養状態を示す図面代用写真である。
【図46】実施例3のサンプルNo.25の7日経過後の培養状態を示す図面代用写真である。
【図47】実施例3のサンプルNo.21の10日経過後の培養状態を示す図面代用写真である。
【図48】実施例3のサンプルNo.22の10日経過後の培養状態を示す図面代用写真である。
【図49】実施例3のサンプルNo.23の10日経過後の培養状態を示す図面代用写真である。
【図50】実施例3のサンプルNo.25の10日経過後の培養状態を示す図面代用写真である。
【図51】実施例3のサンプルNo.23〜25のレゾルフィン試験の結果を示すグラフである。
【図52】本発明の重合体膜を製造するための装置の概略構成を示したブロック図である。
【符号の説明】
【0115】
11 蒸発部
12 分解部
13 蒸着部
14 トラップ
15 真空ポンプ
【出願人】 【識別番号】000157887
【氏名又は名称】KISCO株式会社
【識別番号】591228340
【氏名又は名称】第三化成株式会社
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
【出願日】 平成18年8月8日(2006.8.8)
【代理人】 【識別番号】100108626
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬川 浩一


【公開番号】 特開2008−35806(P2008−35806A)
【公開日】 平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願番号】 特願2006−215799(P2006−215799)