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【発明の名称】 マイクロアレイを用いた相同性の高い配列を有する核酸の存在比率を推定する方法
【発明者】 【氏名】大島 宏之

【要約】 【課題】相同性の高い配列を有する核酸間のクロスハイブリ率を正確に測定し、プローブ設計に依存しない核酸の検出方法、及び相同性の高い配列を有する核酸の存在比を算出する方法で提供する。

【構成】以下の工程を含む、相同性の高い配列を有する核酸の存在比を推定する方法。(1) 相同性の高い配列を有する核酸の各々に対応する完全相補な配列を有するプローブを作製し、それらのプローブが搭載されたマイクロアレイを調製する工程。(2) 前記マイクロアレイに、相同性の高い配列を有する核酸の各々を、個々にハイブリダイズし、ハイブリットを検出し、相同性の高い配列を有する核酸の存在比を算出可能な数式を作成する工程。(3) 相同性の高い配列を有する核酸の存在比が不明な検体をマイクロアレイに供し、ハイブリッドを検出し、前記(2)の数式に検出結果を代入し、検体中の相同性の高い配列を有する核酸の存在比を算出する工程。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む、相同性の高い配列を有する核酸の存在比を推定する方法。
(1) 相同性の高い配列を有する核酸の各々に対応する完全相補な配列を有するプローブを作製し、それらのプローブが搭載されたマイクロアレイを調製する工程。
(2) 前記マイクロアレイに、相同性の高い配列を有する核酸の各々を、個々にハイブリダイズし、ハイブリットを検出し、相同性の高い配列を有する核酸の存在比を算出可能な数式を作成する工程。
(3) 相同性の高い配列を有する核酸の存在比が不明な検体をマイクロアレイに供し、ハイブリッドを検出し、前記(2)の数式に検出結果を代入し、検体中の相同性の高い配列を有する核酸の存在比を算出する工程。
【請求項2】
第2の工程において、異なるストリンジェンシーでハイブリットの検出を行い、複数の数式を作成することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
相同性の高い配列を有する核酸が、10塩基以上、30塩基以下の塩基数より構成されるものである請求項1又は2に記載の方法。

【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明はマイクロアレイのデータ解析に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロアレイとは、担体上に多数のプローブを高密度に、互いに混ざり合うことのないようにそれぞれ独立に固定化したものである。マイクロアレイ上に搭載されるプローブは、その塩基配列と相補な配列からなる核酸分子をハイブリダイゼーションによってキャプチャーするためのセンサーとして働く。
【0003】
マイクロアレイとしては、表面加工を施したガラスやシリコンなどの担体、ゲル担体に、プローブを固定化したものが知られている。例えば、光照射で選択的に除去される保護基をもつ物質を使い、フォトリソグラフィー技術と固相合成技術を組み合わせて、微小なマトリックスの所定の領域(反応部位)に選択的にDNAを合成(マスキング)することによってマイクロアレイを作製することができる。また、あらかじめPCRや人工的な合成によって別途作製したプローブDNAを含む溶液を、スポッターまたはアレイヤーにより数nlから数plの微小体積でチップ表面に並べ、基板上の特定領域に固定することによってマイクロアレイを作製することができる。
【0004】
さらには、貫通孔基盤を使用したマイクロアレイも知られている。例えば、複数本の中空繊維を繊維軸方向に規則正しく配列し、各中空繊維にプローブを固定した後、中空繊維配列体を横切断することにより製造することができる(特許文献1)。
【0005】
上記のマイクロアレイを使用した核酸分子の検出は、核酸マイクロアレイに、検査対象となる核酸試料を配列特異的にハイブリダイズさせ、ハイブリダイゼーション後に個々のプローブ、及びそれに配列特異的に結合した核酸分子とのハイブリッドを、蛍光物質等によりシグナルを検出することにより行われる。この検出により、複数のプローブに対応する核酸試料中の核酸分子を、一度に検査することができる。よって、複数の核酸塩基配列に関する発現量又は特定の核酸塩基配列の配列自体を解析するために広範に利用される。
【0006】
従来の核酸マイクロアレイによる検出では、予め設定した適切な条件下でハイブリダイゼーションを実施し、次いで洗浄工程により、核酸マイクロアレイ表面に残存した核酸試料、その他不要物等の除去を行い、プローブと特異的なハイブリッドを形成している核酸試料を検出する。プローブは、配列解析、機能解析等、検出対象となる所望の核酸塩基配列と相補又は同一に設計される。プローブとしては、cDNA等の比較的長鎖の核酸、短鎖の合成オリゴ核酸等が使用される。合成オリゴ核酸をプローブとして使用する場合、ヒトやマウスなど、遺伝子情報の知見が蓄積している生物については、それらの塩基配列情報を用い、各配列の相同性や機能などに着目した上で、合成オリゴ核酸の配列を設計し、プローブを作製する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、プローブを作成する際、検出対象となる塩基配列は、生体内に非常に相同性の高い配列が複数、存在する場合がある。例えば塩基鎖長が20塩基程度であるマイクロRNA(miRNA)などの配列数の短い核酸の場合、塩基配列の違いが、数塩基程度しかない場合も多い。このような場合、プローブと標的核酸配列間の特異性を維持させ、プローブを設計することは非常に困難となる。よって、ハイブリダイゼーションによる検出結果は、完全相補のみならず、例えば1塩基違いの配列のシグナルも含まれることもあり、そのまま標的核酸分子の検出結果として適用することができなかった。本発明は上記課題を解決することを目的とする。
【特許文献1】特許第3510882号
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、相同性の高い複数種類のプローブに関して、下記の工程により検出データを取得することにより、未知の試料核酸中に含まれる複数種類の相同性の高い配列を有する核酸の存在比率がほぼ正確に推定できることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の工程を含む、相同性の高い配列を有する核酸の存在比を推定する方法である。
【0010】
(1) 相同性の高い配列を有する核酸の各々に対応する完全相補な配列を有するプローブを作製し、それらのプローブが搭載されたマイクロアレイを調製する工程。
【0011】
(2) 前記マイクロアレイに、相同性の高い配列を有する核酸の各々を、個々にハイブリダイズし、ハイブリットを検出し、相同性の高い配列を有する核酸の存在比を算出可能な数式を作成する工程。
【0012】
(3) 相同性の高い配列を有する核酸の存在比が不明な検体をマイクロアレイに供し、ハイブリッドを検出し、前記(2)の数式に検出結果を代入し、検体中の相同性の高い配列を有する核酸の存在比を算出する工程。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、いままでのマイクロアレイ実験ではクロスハイブリが避けられず、特異的かつ配列特異的に測定することができなかった相同性が高い核酸の存在比率を、正確に測定することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、以下の工程を含む、相同性の高い配列を有する核酸の存在比を推定する方法である。
【0015】
(1) 相同性の高い配列を有する核酸の各々に対応する完全相補な配列を有するプローブを作製し、それらのプローブが搭載されたマイクロアレイを調製する工程。
【0016】
(2) 前記マイクロアレイに、相同性の高い配列を有する核酸の各々を、個々にハイブリダイズし、ハイブリットを検出し、相同性の高い配列を有する核酸の存在比を算出可能な数式を作成する工程。
【0017】
(3) 相同性の高い配列を有する核酸の存在比が不明な検体をマイクロアレイに供し、ハイブリッドを検出し、前記(2)の数式に検出結果を代入し、検体中の相同性の高い配列を有する核酸の存在比を算出する工程。
【0018】
以下、順次、各工程を説明する。
【0019】
まず、第一の工程では、相同性の高い配列を有する核酸の各々に対応する完全相補な配列を有するプローブを作製し、それらのプローブが搭載されたマイクロアレイを調製する。
【0020】
相同性の高い配列を有する核酸とは、少なくとも20塩基内に一塩基程度の違いがある核酸であって、例えば、mRNAにおける、同一遺伝子由来のバリアントや、ホモログ、miRNAの同一ファミリー種、遺伝子多型等が挙げられる。また、パーフェクトマッチとミスマッチのハイブリダイゼーション効率に少しでも差が認められるのであれば、RNA、DNAを問わず、どのような核酸でもよい。まずはこれらの核酸に完全相補な配列を有するプローブを設計し、それらが搭載されたマイクロアレイを作製する。
【0021】
マイクロアレイは、複数の区画にオリゴヌクレオチド、cDNA等のプローブを固定し、遺伝子の発現パターンのモニタリング、新規遺伝子のスクリーニング、遺伝子変異、多型の検出等を行うことができるデバイスを意味する。マイクロアレイの形態は様々なものが知られている。例えば、光リソグラフ技術を利用して、基板上に高密度でプローブを固定したマイクロアレイ、ガラス基板等にスポッティングによりプローブを固定したマイクロアレイ等が知られている。また、繊維型マイクロアレイも知られている(特許第3510882号公報参照)。
【0022】
本発明においては、後述する連立方程式を作成する過程と、未知のサンプルを使用する過程で、プローブと、検体量比の違いから由来するバイアスを低減するために、プローブ固定化量が多いマイクロアレイが好適に使用される。また、洗浄、検出を繰り返すため、検出時にマイクロアレイ表面を乾燥させずに検出できるマイクロアレイが好適に使用される。
【0023】
このようなマイクロアレイとしては、基板に複数の貫通孔が存在し、それら貫通孔にはゲルを介してプローブが固定されているマイクロアレイが好適に使用される。そのようなマイクロアレイとしては、特開2000−60554号に記載のマイクロアレイや、繊維型マイクロアレイが例示できる。
【0024】
以下に、繊維型マイクロアレイについてより詳細に説明する。
【0025】
繊維型マイクロアレイは、例えば、下記のa)〜d)の工程により作製することができる。
【0026】
a)複数本の中空繊維を、中空繊維の長手方向が同一方向となるように配列し配列体を製造する工程。
【0027】
b)前記配列体を包埋し、ブロック体を製造する工程。
【0028】
c)プローブを含むゲル前駆体重合性溶液を該ブロック体の各中空繊維の中空部に導入し、重合反応を行い、プローブを含むゲル状物を中空部に保持する工程。
【0029】
d)中空繊維の長手方向と交叉する方向で、切断してブロック体を薄片化する工程。
【0030】
中空繊維材料としては、例えば、ナイロン6、ナイロン66、芳香族ポリアミド等のポリアミド系中空繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカーボネート等のポリエステル系中空繊維、ポリアクリロニトリル等のアクリル系中空繊維、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系中空繊維、ポリメタクリル酸メチル等のポリメタクリレート系中空繊維、ポリビニルアルコール系中空繊維、ポリ塩化ビニリデン系中空繊維、ポリ塩化ビニル系中空繊維、ポリウレタン系中空繊維、フェノール系中空繊維、ポリフッ化ビニリデンやポリテトラフルオロエチレン等からなるフッ素系中空繊維、ポリアルキレンパラオキシベンゾエート系中空繊維等が挙げられる。
【0031】
上記中空繊維は、その長手方向が同一となるように3次元に配列される。配列方法としては、例えば、粘着シート等のシート状物に複数本の中空繊維を所定の間隔をもって平行に配置し、シート状とした後、このシートを螺旋状に巻き取る方法(特開平11−108928号公報参照)が挙げられる。また、複数の孔が所定の間隔をもって設けられた多孔板2枚を孔部が一致するように重ねあわせ、それらの孔部に、中空繊維を通過させ、2枚の多孔板の間隔を開き、2枚の多孔板間の、中空繊維の周辺に硬化性樹脂原料を充満させ硬化させる方法(特開2001−133453号公報参照)が挙げられる。
【0032】
次に配列体はその配列が乱れないように包埋される。包埋の方法としては、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等を繊維間の隙間に流し込む方法、繊維同士を熱融着により接着する方法等が挙げられる。
【0033】
次に包埋された配列体の各中空繊維の中空部に、プローブを含むゲル前駆体重合性溶液を導入し、中空部内で重合反応を行う。これにより中空部にゲルが保持され、ゲルにはプローブが固定される。
【0034】
ゲル前駆体溶液としては、例えば、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−アクリロイルアミノエトキシエタノール、N−アクリロイルアミノプロパノール、N−メチロールアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、ヒドロキシエチルメタクリレート、(メタ)アクリル酸、アリルデキストリン等の単量体の一種類以上と、架橋性モノマーとしてメチレンビス(メタ)アクリルアミド、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等を含むものである。予めプローブの末端を不飽和官能基で修飾しておけば、プローブの末端を介してゲル前駆体と共重合することにより、ゲルの構成にプローブが化学結合する(特開2004−163211号公報参照)。
【0035】
次に、中空繊維の長手方向と交叉する方向で、切断してブロック体を薄片化する。ここで作製された薄片は、マイクロアレイとして使用できる。マイクロアレイの厚みは、0.1mm〜1mm程度である。切断は、例えばミクロトーム、レーザー等により行うことができる。
【0036】
上述のマイクロアレイでは、中空繊維の中空部、すなわちマイクロアレイの貫通孔中のゲルにプローブが固定されている。よって、プローブは、3次元構造体に固定されているため、プローブはある空間内に固定されていることとなる。プローブの固定されているこの周辺環境は、空間自由度を有し、さらには異なる種類のプローブは物理的な隔壁を隔てて固定されている。よって、上記マイクロアレイは、平面基板上に高密度にプローブが固定されているマイクロアレイと異なり、そこに搭載されたプローブはプローブとして十分に機能し、さらに隣接する種類の異なるプローブとの非特異的反応はない。したがって、プローブは、リンカー、スペーサー等のハイブリダイゼーションに関与しない余分な配列を結合する必要なく設計され、マイクロアレイに固定することが可能である。
【0037】
第2の工程では、上述のごとく調製したマイクロアレイに、相同性の高い配列を有する核酸の各々を、個々にハイブリダイズし、ハイブリットを検出し、検出データにより、相同性の高い配列を有する核酸の存在比を算出可能な数式を作成する。
【0038】
ここで相同性の高い配列を有する核酸の各々を個々にハイブリダイズしハイブリットを検出する、とは、相同性が高い、つまりクロスハイブリする可能性が高いグループを構成する核酸A及びBが存在する場合、核酸Aと核酸Bをそれぞれ単独でマイクロアレイに対してハイブリダイゼーションを行い、核酸Aをハイブリした際の、プローブA及びプローブBのシグナル強度を検出する。次に、新たなマイクロアレイに対して、同様に核酸Bをハイブリし、プローブA及びプローブBのシグナル強度を検出することをいう。
【0039】
このようにして得られたデータは、数式化する。具体的には、核酸Aをハイブリした際のプローブAのシグナル強度をA、プローブBのシグナル強度をB’、核酸Bをハイブリした際のプローブAのシグナル強度をA’、プローブBのシグナル強度をBとした場合、同一条件でハイブリした、核酸A、核酸B混合物の、プローブAにおけるシグナル強度J及びプローブBにおけるシグナル強度は下記の式で表される。
【0040】
J=A x+A’y
K=B’x+B y
(ここで、x及びyは、核酸Aと核酸Bの相対量として表される。)
つまり、上記連立方程式の解x、yを得ることにより、核酸A、核酸Bの量比がわかることになる。
【0041】
上述では、2種類の核酸(核酸A及び核酸B)に対して説明したが、核酸の種類が3種類以上存在した場合においても同様に適用可能である。
【0042】
また、多くのハイブリダイゼーションは、洗浄時のストリンジェンシーの違いによって、配列依存的にハイブリダイゼーション効率が変わるため、同一のマイクロアレイを、ストリンジェンシーを変更しながら複数回洗浄し、その都度検出することにより、検出回数に応じた個数の連立方程式が作成することもできる。よって、同一のマイクロアレイにおけるストリンジェンシーの異なる検出結果が多いほど、結果に客観性が得られる。
【0043】
次に、第3の工程では、相同性の高い配列を有する核酸の存在比が不明な検体をマイクロアレイに供し、ハイブリッドを検出し、第2の工程で作製した数式に検出結果を代入し、検体中の相同性の高い配列を有する核酸の存在比を算出する。
【0044】
具体的には、相同性の高い配列を有する核酸の存在比が不明な検体のプローブAの検出結果を上述の式のJに代入し、プローブBの検出結果を式のKに代入し、x及びyを求めることにより、核酸A及び核酸Bの存在比を算出することが可能となる。
【0045】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。
【実施例1】
【0046】
例として、マウスのmiRNA配列である、mmu-miR-23aとmmu-miR-23bのマチュア配列のオリゴDNAの存在比率を推定する数式を作成する。
【0047】
(1)検体調製
Sanger instituteのmiRBase (http://microrna.sanger.ac.uk/)によると、mmu-miR-23a及びmmu-miR-23bの配列は以下のとおりである。
【0048】
mmu-miR-23a(配列番号1):aucacauugccagggauuucc
mmu-miR-23b(配列番号2):aucacauugccagggauuacc
これらの配列は、1塩基の違いしかないため、完全相補なプローブを設計し、核酸マイクロアレイに搭載した場合、単に検体をハイブリしただけでは、互いのプローブに互いの標的となる検体がクロスハイブリしてしまい、それぞれの量比を測定することは不可能である。
【0049】
まず、DNA自動合成装置により、表1の合成オリゴDNAを合成し、1μg/μlの濃度に調製した。
【0050】
[表1]


次に、表2に従い、検体Aと検体Bを調製した。
【0051】
[表2]


調製した検体A及び検体Bを、ULYSIS Alexa Fluor 647 Nucleic Acid Labeling Kit(Kreatech社製)を用いて、表3の通りに混合、標識し、標識化サンプルL−検体AとL−検体Bを作製した。Labeling buffer及び、ULS labeling reagentは、キットに添付のものを使用した。
【0052】
[表3]


L−検体A及びL−検体Bを、85℃で15分間加熱し、その後氷上で急冷した。L−検体A、L−検体Bを、Sephadex G25 column(Amersham Bioscience製)のプロトコールに従って精製した。およそ25μlの精製液から1μlを新しいチューブに分取し、Milli-Q を999μl加えて、1000μlとした。希釈液から20μlの液を新しいチューブに分取し、Milli-Qを100μl、20×SSC溶液を15μl、2% SDS溶液を15μl加え、H−L−検体A、H−L−検体Bを作製した。
【0053】
(2)マイクロアレイの作製
<プローブの調製>
まず、表4の配列のプローブとなるオリゴヌクレオチドをDNA自動合成装置により合成した。
【0054】
[表4]


mmu-miR-23a_asは、上述のmmu-miR-23a-tに対して完全相補配列であり、mmu-miR-23b_asは、上述のmmu-miR-23b-tに対して完全相補配列である。
【0055】
合成の際、最終段階で、アミノリンクTM(PEバイオシステムズ社製)を該オリゴヌクレオチドに反応させ、次いで脱保護操作を行うことにより、各オリゴヌクレオチドの末端にアミノヘキシル基が導入された5’−O−アミノヘキシルオリゴヌクレオチドを調製した。
【0056】
次いで、それらオリゴヌクレオチドに、無水メタクリル酸を反応させ、5’末端ビニル化オリゴヌクレオチド(以下、プローブ)を調製した。
【0057】
<中空繊維束薄片の製造>
図1に示す配列固定器具を利用して中空繊維束を製造した。なお、図1中のx、y、zは直交の3次元軸であり、x軸は繊維の長手方向と一致する。
【0058】
まず、直径0.32mmの孔が、孔の中心間距離を0.42mmとして、縦横各12列で合計144個設けられた厚さ0.1mmの多孔板2枚を準備した。これらの多孔板を重ね合わせて、そのすべての孔に、ポリカーボネート中空繊維(三菱エンジニアリングプラスチック社製 カーボンブラック1質量%添加)を1本づつ、通過させた。
【0059】
X軸方向に各繊維に0.1Nの張力をかけた状態で2枚の多孔板の位置を移動させて、中空繊維の一方の端部から20mmの位置と100mmの位置の2ヶ所に固定した。即ち、2枚の多孔板の間隔を80mmとした。
【0060】
次いで、多孔板間の空間の周囲3面を板状物で囲った。このようにして上部のみが開口状態にある容器を得た。
【0061】
次に、この容器の上部から容器内に樹脂原料を流し込んだ。樹脂としては、ポリウレタン樹脂接着剤(日本ポリウレタン工業(株)ニッポラン4276、コロネート4403)の総重量に対し、2.5質量%のカーボンブラックを添加したものを使用した。25℃で1週間静置して樹脂を硬化させた。次いで多孔板と板状物を取り除き、中空繊維束を得た。
【0062】
ゲル充填中空繊維配列体の製造時に、表5に示す質量比で混合した単量体及び開始剤を含むゲル前駆体重合性溶液を調製した。
【0063】
[表5]


次に、プローブを含むゲル前駆体重合性溶液をデシケーター内に設置した。デシケーター内を減圧状態にしたのち、中空繊維束の繊維束が固定されていない一方の端部をこの溶液中に浸漬した。デシケーター内に窒素ガスを封入し、中空繊維の中空部にゲル前駆体重合性溶液を導入した。次いで、容器内を70℃とし、3時間かけて重合反応を行った。
【0064】
このようにしてプローブがゲル状物を介して中空繊維の中空部に保持された中空繊維束を得た。
【0065】
次に得られた中空繊維束を、ミクロトームを用いて繊維の長手方向と直交する方向でスライスし、厚さ0.5mmの薄片シート(DNAマイクロアレイ)を50枚得た。
【0066】
(3)ハイブリダイゼーション操作
(1)で調製したH−L−検体A及びH−L−検体Bを、70℃で2分間、熱した後に、10,000rpmで2分間遠心処理を行い、ハイブリダイゼーションに供した。ハイブリダイゼーションは、50℃、遮光条件下で16時間行った。洗浄は、2xSSC、0.2% SDS、50℃で40分間洗浄後、2xSSC、50℃で10分間洗浄した。
【0067】
検出は、冷却CCDカメラ方式の蛍光検出装置を用いて、ハイブリダイゼーション後のマイクロアレイの各プローブスポットを画像化及び数値化した。結果は表6に示した。
【0068】
[表6]


次に、上記検出後のマイクロアレイを再度、2xSSC、55℃で30分間洗浄し、再検出に供した。得られた数値は、バックグラウンドシグナルを減算すると、表7の通りとなった。
【0069】
[表7]


(4)未知検体の存在比の推測方法
上記の実験結果より、mmu-miR-23a及びmmu-miR-23bの配列を含むが、存在比が不明な検体Cは、下記の連立方程式(式I)で、量比(x及びy)が推測できる。
【0070】
[式I]


検体のハイブリ結果を検出後、IとJの値を上記の数式に当てはめることにより、xとyの数値が算出される。このxとyの比率が、mmu-miR-23a-tとmmu-miR-23b-tの量比となる。
【0071】
また、検体は、下記の連立方程式(式II)でも量比が推測できる。
【0072】
[式II]


検体のハイブリ結果を検出後、KとLの値を上記の数式に当てはめることにより、xとyの数値が算出される。このxとyの比率が、mmu-miR-23a-tとmmu-miR-23b-tの量比となる。
【0073】
(5)推測値の実証
上述の連立方程式の整合性を確認するために、モデル検体(検体C及び検体D)を用いて測定した。検体C及び検体Dは、表8に従い調製した。
【0074】
[表8]


調製した検体C及び検体Dを、上述の(1)と同様の方法で標識、精製し、H−L−検体C、H−L−検体Dを作製した。これらのサンプルは、mmu-miR-23a-tとmmu-miR-23b-tの量比が、1:3及び、1:1であるので、これらのサンプルを用いて得られる推定量比は、x:y=1:3および、x:y=1:1に近い値が得られるものと考えられる。
【0075】
H−L−検体C及びH−L−検体Dを、70℃で2分間熱した後に、10000rpmで2分間遠心処理を行い、ハイブリダイゼーションに供した。ハイブリダイゼーションは、50℃、遮光条件下で16時間行った。洗浄は、2xSSC, 0.2% SDS、50℃で40分間洗浄後、2xSSC、50℃で10分間洗浄した。
【0076】
検出は、冷却CCDカメラ方式の蛍光検出装置を用いて、ハイブリダイゼーション後のマイクロアレイの各プローブスポットを画像化及び数値化した。結果は表9に示した。
【0077】
[表9]


検出後、同一のマイクロアレイを再度、2xSSC、55℃で30分間洗浄し、再検出に供した。
【0078】
得られた数値は、バックグラウンドシグナルを減算すると、表10の通りとなった。
【0079】
[表10]


表9及び表10で得られた結果を式I及び式IIの連立方程式のI、J、K及びLに代入し、x及びyを求めた(表11及び表12)。
【0080】
[表11]


[表12]


即ち、H-L-検体Cにおいては、mmu-miR-23a-t:mmu-miR-23b-tは、50℃洗浄時の推定値でおよそ1:3、55℃洗浄時の推定値でおよそ1:3となった。
【0081】
また、H-L-検体Dにおいては、mmu-miR-23a-t:mmu-miR-23b-tは、50℃洗浄時の推定値でおよそ1:1、55℃洗浄時の推定値でおよそ1:1となった。
【0082】
これらの推定値は、H-L-検体C及びH-L-検体Dにおける、mmu-miR-23a-tとmmu-miR-23b-tの混合比、1:3と1:1に一致した(表8)。
【0083】
よって、本方法を用いることにより、mmu-miR-23a-tとmmu-miR-23b-tの混合比を正確に推定することができた。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】中空繊維を配列するための冶具を示す図である。
【配列表フリ−テキスト】
【0085】
配列番号5:mmu-miR-23aに完全相補な合成プローブ
配列番号6:mmu-miR-23bに完全相補な合成プローブ
【出願人】 【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱レイヨン株式会社
【出願日】 平成18年8月8日(2006.8.8)
【代理人】
【公開番号】 特開2008−35801(P2008−35801A)
【公開日】 平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願番号】 特願2006−215744(P2006−215744)