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【発明の名称】 マイクロインジェクション装置及びマイクロインジェクション方法
【発明者】 【氏名】安藤 護俊

【氏名】陽奥 幸宏

【要約】 【課題】インジェクションを行う針の位置の調整を、作業負担を強いることなく効率的に行うことを可能とするマイクロインジェクション装置及びマイクロインジェクション方法を提供する。

【構成】本発明のマイクロインジェクション装置は、付焦点位置における針の先端部分の形状が右すぼみになるなかで微分総和分布の値が最大となるように、針の垂直方向の垂直位置を検知する針位置極性検知部162と、針位置極性検知部162により検知された垂直位置付近における画像の微分平均に基づき、該微分平均が所定閾値を超えるものであって最も低い針位置を判定することによって針の垂直方向の位置を決定する微分平均判定部156とを備え、マイクロインジェクションにおいて自動的に適切な針の垂直方向の位置を検出して針位置を調整することを可能とした。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直方向の位置が可変の微細な針を基底面に付着した細胞に突き刺して該細胞に目的物を注入するマイクロインジェクション装置であって、
前記針の先端部分を含んだ画像をレンズを通して撮像する画像撮像手段と、
前記画像撮像手段により撮像された画像から前記針の先端部分を検出する針検出手段と、
前記針検出手段により検出された前記針の先端部分の画像に基づく微分総和が第1の閾値を下回る場合に、該針の先端部分の画像における該針の先端部分の形状を判定する針形状判定手段と、
前記針形状判定手段により判定された前記針の先端部分の形状に応じて該針の垂直方向の位置を移動させる針移動手段と
を備えたことを特徴とするマイクロインジェクション装置。
【請求項2】
前記針移動手段により特定方向へ移動させられた位置において前記画像撮像手段により撮像された該針の先端部分の画像に基づく微分総和が前記第1の閾値を超えた場合に、該画像の微分平均と第2の閾値との大小関係に基づいて、該針の先端部分が前記レンズの焦点面に接するか否かを判定する針先端合焦判定手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載のマイクロインジェクション装置。
【請求項3】
前記基底面における前記細胞の観測位置において、前記レンズの基準となる焦点位置において前記画像撮像手段により撮像された前記細胞の画像である参照画像と、前記レンズの第1の焦点間隔の各焦点位置で前記画像撮像手段により撮像された前記細胞の画像との差分画像に基づいて算出された、該第1の焦点間隔の焦点位置に応じた微分総和分布が最大値を取る前記レンズの第1の焦点位置を検出する第1の焦点位置検出手段と、
前記参照画像と、前記観測位置において前記第1の焦点位置検出手段により検出された前記第1の焦点位置を含む所定範囲内で前記第1の焦点間隔よりも狭い第2の焦点間隔の各焦点位置で前記画像撮像手段により撮像された前記細胞の画像との差分画像に基づいて算出された、該第2の焦点間隔の各焦点位置に応じた微分総和分布が最小値を取る前記レンズの第2の焦点位置を検出する第2の焦点位置検出手段と、
前記第2の焦点位置検出手段により検出された前記第2の焦点位置に基づいて前記針の垂直方向の位置を決定する針位置決定手段とをさらに備え、
前記画像撮像手段は、前記針が前記針位置決定手段により決定された針位置を作業開始位置として前記針の先端部分を含んだ画像の撮像を開始することを特徴とする請求項1又は2に記載のマイクロインジェクション装置。
【請求項4】
垂直方向の位置が可変の微細な針を基底面に付着した細胞に突き刺して該細胞に目的物を注入するマイクロインジェクション方法であって、
前記針の先端部分を含んだ画像をレンズを通して撮像する画像撮像工程と、
前記画像撮像工程により撮像された画像から前記針の先端部分を検出する針検出工程と、
前記針検出工程により検出された前記針の先端部分の画像に基づく微分総和が第1の閾値を下回る場合に、該針の先端部分の画像における該針の先端部分の形状を判定する針形状判定工程と、
前記針形状判定工程により判定された前記針の先端部分の形状に応じて該針の垂直方向の位置を移動させる針移動工程と
を含んだことを特徴とするマイクロインジェクション方法。
【請求項5】
前記針移動工程により特定方向へ移動させられた位置において前記画像撮像工程により撮像された該針の先端部分の画像に基づく微分総和が前記第1の閾値を超えた場合に、該画像の微分平均と第2の閾値との大小関係に基づいて、該針の先端部分が前記レンズの焦点面に接するか否かを判定する針先端合焦判定工程をさらに含んだことを特徴とする請求項4に記載のマイクロインジェクション方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、垂直方向の位置が可変の微細な針を基底面に付着した細胞に突き刺して該細胞に目的物を注入するマイクロインジェクション装置及びマイクロインジェクション方法に関し、特に、作業負担を少なく迅速に針の作業開始位置を決定することが可能なマイクロインジェクション装置及びマイクロインジェクション方法に関する。
【背景技術】
【0002】
顕微鏡を使用して、対象とする細胞内に微細な針を通して遺伝子を注入すること(マイクロインジェクション)により細胞の遺伝情報を改変させる研究は、遺伝子の役目を明らかにするとともに、個人の遺伝的特性に合わせた遺伝子治療を行うテーラメード医療を可能にする。かかる研究により、従来は治療ができなかった遺伝的な原因による病気の治療も可能となってきている。
【0003】
遺伝子を細胞に注入する方式には、電気的な方式(エレクトロポレーション)、化学的な方式(リポフェクション)、生物的な方式(ベクター法)、機械的な方式(マイクロインジェクション)などがある。
【0004】
上記の方式のうち、電気的な方式は、大電流を流し細胞膜を破るため、細胞に与えるダメージが大きい。化学的な方式は、導入できる遺伝子に制限があり、導入効率が悪い。生物的な方式は、導入できる材料の種類が限られ、安全性が確認できない等の欠点がある。
【0005】
そこで、現在では、機械的な方式が最も安全で効率が高い方法として採用されることが多くなっている。例えば、特許文献1には、細胞を規則正しく配列させ、マイクロインジェクションを自動的に実行するマイクロインジェクション装置に関する技術が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特許第2624719号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に代表される従来技術では、対象とする細胞へマイクロインジェクションを行う針の位置を±1μmの精度で調整しなければならないが、この調整を熟練した手作業で行わなければならなかった。一方、針の長さは、個体によって±2mm程度の誤差があり、この針の個体差を吸収するためにも、針の位置調整は必須となる。このため、針を交換する度に針の位置の調整を熟練した手作業で行わなければならず、作業時間や作業負担の増大を強いることとなっていた。
【0008】
本発明は、上記問題点(課題)を解消するためになされたものであって、インジェクションを行う針の位置の調整を、作業負担を強いることなく効率的に行うことを可能とするマイクロインジェクション装置及びマイクロインジェクション方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した問題を解決し、目的を達成するため、本発明は、垂直方向の位置が可変の微細な針を基底面に付着した細胞に突き刺して該細胞に目的物を注入するマイクロインジェクション装置であって、前記針の先端部分を含んだ画像をレンズを通して撮像する画像撮像手段と、前記画像撮像手段により撮像された画像から前記針の先端部分を検出する針検出手段と、前記針検出手段により検出された前記針の先端部分の画像に基づく微分総和が第1の閾値を下回る場合に、該針の先端部分の画像における該針の先端部分の形状を判定する針形状判定手段と、前記針形状判定手段により判定された前記針の先端部分の形状に応じて該針の垂直方向の位置を移動させる針移動手段とを備えたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、上記発明において、前記針移動手段により特定方向へ移動させられた位置において前記画像撮像手段により撮像された該針の先端部分の画像に基づく微分総和が前記第1の閾値を超えた場合に、該画像の微分平均と第2の閾値との大小関係に基づいて、該針の先端部分が前記レンズの焦点面に接するか否かを判定する針先端合焦判定手段をさらに備えたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、上記発明において、前記基底面における前記細胞の観測位置において、前記レンズの基準となる焦点位置において前記画像撮像手段により撮像された前記細胞の画像である参照画像と、前記レンズの第1の焦点間隔の各焦点位置で前記画像撮像手段により撮像された前記細胞の画像との差分画像に基づいて算出された、該第1の焦点間隔の焦点位置に応じた微分総和分布が最大値を取る前記レンズの第1の焦点位置を検出する第1の焦点位置検出手段と、前記参照画像と、前記観測位置において前記第1の焦点位置検出手段により検出された前記第1の焦点位置を含む所定範囲内で前記第1の焦点間隔よりも狭い第2の焦点間隔の各焦点位置で前記画像撮像手段により撮像された前記細胞の画像との差分画像に基づいて算出された、該第2の焦点間隔の各焦点位置に応じた微分総和分布が最小値を取る前記レンズの第2の焦点位置を検出する第2の焦点位置検出手段と、前記第2の焦点位置検出手段により検出された前記第2の焦点位置に基づいて前記針の垂直方向の位置を決定する針位置決定手段とをさらに備え、前記画像撮像手段は、前記針が前記針位置決定手段により決定された針位置を作業開始位置として前記針の先端部分を含んだ画像の撮像を開始することを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、垂直方向の位置が可変の微細な針を基底面に付着した細胞に突き刺して該細胞に目的物を注入するマイクロインジェクション方法であって、前記針の先端部分を含んだ画像をレンズを通して撮像する画像撮像工程と、前記画像撮像工程により撮像された画像から前記針の先端部分を検出する針検出工程と、前記針検出工程により検出された前記針の先端部分の画像に基づく微分総和が第1の閾値を下回る場合に、該針の先端部分の画像における該針の先端部分の形状を判定する針形状判定工程と、前記針形状判定工程により判定された前記針の先端部分の形状に応じて該針の垂直方向の位置を移動させる針移動工程とを含んだことを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、上記発明において、前記針移動工程により特定方向へ移動させられた位置において前記画像撮像工程により撮像された該針の先端部分の画像に基づく微分総和が前記第1の閾値を超えた場合に、該画像の微分平均と第2の閾値との大小関係に基づいて、該針の先端部分が前記レンズの焦点面に接するか否かを判定する針先端合焦判定工程をさらに含んだことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、判定された針の先端部分の形状に応じて針の垂直方向の位置を移動させるので、作業負担を少なく正確かつ迅速に針の作業開始位置を決定することができるという効果を奏する。
【0015】
また、本発明によれば、特定方向へ移動させられた位置において撮像された該針の先端部分の画像に基づく微分総和が第1の閾値を超えた場合に、該画像の微分平均と第2の閾値との大小関係に基づいて、該針の先端部分がレンズの焦点面に接するか否かが判定されるので、作業負担を少なく正確かつ迅速に針をレンズの焦点面まで移動させることが可能となるという効果を奏する。
【0016】
また、本発明によれば、付着細胞を用いて決定された針の垂直方向の位置を利用して針の先端部分を含んだ画像の撮像を開始するので、作業負担を少なく正確かつ迅速に針の位置探索を行うことが可能となるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に添付図面を参照し、本発明のマイクロインジェクション装置及びマイクロインジェクション方法に係る実施例を詳細に説明する。以下に示す実施例は、照明光源からの照明によってシャーレの底面に配置された付着細胞を照明し、この照明された付着細胞を顕微鏡の対物レンズを通して撮影するためのCCDカメラを備え、キャピラリ(中空の針)である針を使用して付着細胞に目的物を注入するマイクロインジェクション装置において、キャピラリの垂直方向の位置を自動調整するマイクロインジェクション装置及びマイクロインジェクション方法に係る実施例である。
【0018】
まず、実施例の説明に先立って、マイクロインジェクションの概要について説明する。図1は、付着細胞へのマイクロインジェクションを説明するための説明図である。なお、付着細胞とは、細胞が互いに付着する性質を有し、同種の細胞が集結することによって生命体の一部を構成する細胞である。付着細胞は、例えば赤血球などの付着する性質を有さず、単独で浮遊して機能する浮遊細胞とは反対の性質を有する細胞である。
【0019】
同図に示すように、付着細胞に対してマイクロインジェクションを行う場合、培養液等の液体を満たしたシャーレ200の底面に付着細胞等の細胞が配置される。そして、シャーレ200の下方に配した対物レンズ132によって得られる拡大画像に基づいて針122が細胞へ誘導され、インジェクションが実行される。拡大画像を明瞭にするため、シャーレ200の上方からは照明光源131によって光が照射される。
【0020】
なお、マイクロインジェクションを行う場合、シャーレの底面上に微細な孔を有するプレートを設け、この微細な孔に細胞を捕捉した上でインジェクションをおこなう場合もあるが、以下の説明では、プレートを用いない場合を示すこととし、シャーレの底面を基底面と称することとする。
【0021】
付着細胞は、シャーレ200の底面上では、シャーレ底面に沿って伸展した形状となり、水平方向に20〜30μmの面積を有する一方で、5μm程度の厚さしかもたない。このため、付着細胞に針122の先端を突き刺して遺伝子等を注入するには、針122の先端を基底面から1μm程度の距離まで高速に下降させつつ、針122を基底面に抵触させることなく付着細胞に接触させるために、針122のコントロールに熟練が必要となる。
【0022】
このように、針122のコントロールの作業を難しくしているのは、付着細胞が透明であることと、底面に付着細胞を付着させるシャーレ200が透明な材質からなることによって、細胞とシャーレとの境界が明確でないことと、基本的に1本の対物レンズ132のみを使用して観測を行うために、遠近感や立体感が掴みづらいこととによる。
【0023】
また、針122は、水平方向及び垂直方向に自由に移動させることが可能であるので、対物レンズ132の対象視野をある一点の観測位置に置いたとしても、この視野内に針122が存在しない場合が発生しうる。針122の位置を制御する針制御ステージを動かして対物レンズ132の視野内に針122の先端部分が入り、かつ該先端部分が付着細胞に接触するように手作業で調整すると、かなりの回数の試行錯誤を行わなければならないという可能性もあり、非常に煩わしいこととなる場合がある。本発明は、これらの問題点(課題)を解消するためになされたものである。
【実施例】
【0024】
以下に図2〜23を参照して、本発明の実施例のマイクロインジェクション装置及びマイクロインジェクション方法について説明する。先ず、図2を参照して、実施例に係る針位置自動調整方法の処理の概略を説明する。図2は、実施例に係る針位置自動調整方法の処理の概略を説明するための説明図である。
【0025】
先ず、図2の(1)に示すように、針検出処理を行う。この処理では、対物レンズの視野内に付着細胞が存在しない状態でCCDカメラ1を使用して針の先端部分のシルエット画像を撮像する。撮像された画像内から針を検出し、針の先端を視野の中央に移動させることによって、針の水平方向の位置を確定させる。この処理を経て、垂直方向の針の大まかな位置が求まる。この位置の誤差は、処理前の位置の誤差が±2mmであったのに対して±20μmへと絞られている。
【0026】
次に、図2の(2)に示すように、針位置極性検知処理を行う。この処理では、前述の(1)の処理で検出された針の先端部分の画像をもとに、(1)の処理で確定した垂直方向の針の大まかな位置から上方150μmの位置まで垂直方向の位置を一旦移動させ、この位置で新たに撮像された針の画像の微分総和と極性(針の向き)とを判定して、針の先端部分をより付着細胞へと近づける。この処理を経て、垂直方向の針の大まかな位置が求まる。この位置の誤差は、処理前の位置の誤差が±150μmであったのに対して±5μmへと絞られている。
【0027】
次に、図2の(3)に示すように、針位置精密調整処理を行う。この処理では、(2)の処理で求まった垂直方向の針の大まかな位置を始点として、針の位置を垂直方向の上方又は下方のいずれか一方向へ段階的に移動させつつ撮像された針の先端部分の画像の微分平均を判定し、この微分平均が最も所定閾値に近い針の位置が付着細胞に接触する位置であるとする。この処理で求まった針が付着細胞に接触する位置の誤差は、処理前の位置の誤差が±10μmであったのに対して±1μmへと絞られている。
【0028】
なお、図2では、説明を容易にするために(1)の針検出処理で針の画像を撮影するCCDカメラ1と(3)の針位置精密調整処理で針の画像を撮影するCCDカメラ2とは異なるものとして図示しているが、実質は、両者は同一のものである。無論、両者が別カメラであってもよい。
【0029】
次に、実施例に係る針位置自動調整方法の光学系の概略について説明する。図3は、実施例に係る針位置自動調整方法の光学系の概略を説明するための説明図である。同図に示すように、内部に培養液が張られ基底面に付着細胞が付着したシャーレの上方から照明により光を照射し、シャーレの下方から対物レンズを通してシャーレ上の付着細胞を観察する。針は、その先端部分が傾斜を持ってシャーレの下方へ向かうように配置される。針は、垂直方向の上下に位置が調整可能である。
【0030】
図3に示すように、対物レンズの焦点面は、シャーレの基底面の上方150μmの位置にある。このときに、針の先端部分をシャーレの基底面に抵触させることなく焦点面に自動的に近づける処理を行うことが実施例の目的である。針の先端部分をシャーレの基底面に抵触させることなく焦点面に近づける処理を自動的に行うことにより、熟練していなくとも、針を損傷させることなく針の先端部分を容易に焦点面に接触させることが可能となる。そして、マイクロインジェクションの作業負担を低減し、作業効率を高めることができる。
【0031】
次に、実施例の針位置調整に影響する要因について説明する。図4は、実施例の針位置調整に影響する要因を説明するための説明図である。実施例の光学系においては、針の制御位置(x,y,z1)と、対物レンズの焦点制御位置(z2)とを揃える必要がある。ここで針の制御位置(x,y,z1)のx及びyは、針制御ステージの水平面における2次元の座標であり、z1は、針制御ステージに針が取り付けられている方向における針の深度である。深度は、針の垂直方向の位置を示すパラメータである。対物レンズの焦点制御位置z2は、対物レンズの高さ位置を示す対物レンズの焦点位置である。このz1及びz2が一致していることを前提として初めて、対物レンズを利用して針の高さ調整を行うことが可能となる。
【0032】
これは図4に示すように、まず、細胞の表面に対物レンズを合焦させ、次に位置調整高さα分だけ対物レンズを移動させ、対物レンズの移動分αに応じた量だけ針を移動させれば、針の深度z1及び対物レンズの焦点制御位置z2の座標を一致させることができる。
【0033】
ここで、α相当の上方を観測するには、対象が屈折率nの物質中にあったとすると、対物レンズをΔzだけ動かせば良い。Δzは、次の(1)式のように表される。
【0034】
【数1】


【0035】
ところで、同じ種類のシャーレであっても、シャーレの個体が異なると、シャーレの底位置と厚みとが同一でない。このために、基準となる基準シャーレの下部を原点とすると、マイクロインジェクション作業を行うためのワークシャーレの底位置の位置変量Δhとワークシャーレの厚み変量ΔDとの二つの変動要因が発生することとなる。ここでワークシャーレの底位置の位置変量とは、ワークシャーレの底が中心へ行くに従って配置面からより離れる状況における乖離距離の変動をいう。即ち、一般に、シャーレは、配置される配置面とは、底面の外周部分のみが接している。このとき、標準シャーレの標準位置からの針位置変量ΔZcapは、次の(2)式のように表される。
【0036】
【数2】


【0037】
しかし、付着細胞を用いた焦点自動調節方法によりワークシャーレの高さを計測すると、対物レンズの移動距離ΔZは、当該ワークシャーレの材質の屈折率をn1とすると、次の(3)式のように表される。なお、付着細胞を用いた焦点自動調節方法とは、付着細胞の有無を判定して付着細胞の存在が検出されたシャーレの観測位置において第1の焦点間隔の各焦点位置で撮像された付着細胞の画像に基づく微分総和分布が最大値を取る対物レンズの最大焦点位置を検出し、この観測位置における最大焦点位置を含む所定範囲内で第1の焦点間隔よりも狭い第2の焦点間隔の各焦点位置で撮像された付着細胞の画像に基づく微分総和分布が最小値を取る対物レンズの最小焦点位置を検出することによって、マイクロインジェクションにおいて自動的に付着細胞を検出して焦点を調整する方法である。
【0038】
【数3】


【0039】
ここで、上記(3)式を次の(4)式のように変形する。
【0040】
【数4】


【0041】
このようにして表現されるΔhを(2)式へ代入すると、ΔZcapは、次の(5)式のようになる。
【0042】
【数5】


【0043】
ここで、次の(6)式で表される関係式が成り立つ。
【0044】
【数6】


【0045】
よって、ΔZcapは、さらに次の(7)式のようになる。
【0046】
【数7】


【0047】
ここで、ΔDは直接計測することは不可能であるので、ΔZcapは明示的には求まらない。しかし、n1=1.5を(5)式に代入すると、ΔZcapは、次の(8)式のように表される。
【0048】
【数8】


【0049】
また一方で、n1=1.5を(7)式に代入すると、ΔZcapは、次の(9)式のように表される。
【0050】
【数9】


【0051】
ここで、ワークシャーレの底位置の位置変量Δhがワークシャーレの厚み変量ΔDよりも小さいと見なすことができるとすると、次の(10)の関係式が成り立つこととなる。
【0052】
【数10】


【0053】
このことから、(9)式においてΔhの項を誤差として無視するほうが、高々Δhの半分の誤差のみでΔZcapをΔZの項のみで表現することができることがわかる。即ち、ΔZcapはΔZの単項で次の(11)式のように表される。このようにして、ΔZcapの近似値が算出されることとなる。
【0054】
【数11】


【0055】
即ち、標準シャーレを用いて、針と顕微鏡高さの制御系の位置関係を明確にし、ワークシャーレの高さを付着細胞を用いた焦点自動調節方法によって求め、そのときの顕微鏡の対物レンズ位置の標準値との差をΔZとし、針の位置を標準位置に対し1.5ΔZだけオフセットをかけることにより、シャーレの厚み変動の影響を考慮した針位置の垂直方向(高さ方向)の位置修正を行うことができるようになる。
【0056】
このような方法を用いて、例えば、後述の図22に示すステップS123の処理において針の高さ(垂直方向)の位置調整を行うとすると、本実施例の目的である針位置自動調整の全ての処理に先立って針の高さ(垂直方向)の位置を適切な位置へ移動させることが可能となり、針位置自動調整の処理効率を高め迅速に行なわせることを可能とする。即ち、針の探索開始位置はシャーレの垂直方向の位置の第1の基準値(基準となるシャーレの高さ)からの変量(Δh)と該シャーレの底部の厚みの第2の基準値(基準となるシャーレの厚み)からの変量(ΔD)とを考慮しなければならないが、この第1の基準値からの変量(Δh)が第2の基準値からの変量(ΔD)に比べて小さい場合は、底部の厚みの変量に該底部の屈折率を乗じた結果を加算して針の垂直方向の位置を決定することが可能となるので、垂直方向において作業負担を少なく迅速に針の位置探索を行うことが可能となる。
【0057】
次に、実施例の針位置のオフセットについて説明する。図5は、実施例の針位置のオフセットの概略を説明するための説明図である。図5は、先端部分が対物レンズの視野に向かうように針が水平方向と一定の鋭角をなして針制御ステージに取り付けられている状況を、この一定の鋭角の補角をなす方向をY軸方向とし、垂直方向をZ軸方向とした場合のY−Z平面に射影して示した図である。
【0058】
このY−Z平面において、実線で示される方形で囲まれた部分が顕微鏡の対物レンズで観測可能な範囲である。この方形を顕微鏡観測可能範囲と呼ぶ。また、破線で示される略正方形で囲まれた部分が顕微鏡の対物レンズで針の何れかの部分を捉えることが可能な観測可能な範囲である。この略正方形を針捕捉可能範囲と呼ぶ。通常は、針はAの位置にあって、その先端部分がシャーレステージの中心において焦点面に接触する。Y軸方向で針の先端部分が顕微鏡観測可能範囲の範囲内でYが最小となる針位置はBであって、この位置が観測可能な針位置限界である。また、X軸方向で針の先端部分が顕微鏡観測可能範囲の範囲内でXが最大となる針位置はCであって、この位置も観測可能な針位置限界である。即ち、針位置がB〜Cの位置の間にある場合に、針の先端部分は顕微鏡で観測可能である。
【0059】
ここで、図示するように、Aの針位置からBの針位置へ針を移動させた場合、移動距離がL1を超えると針の先端部分が顕微鏡観測可能範囲を超えるために、針が針捕捉可能範囲を逸脱してしまうことになる。また、Aの針位置からCの針位置へ針を移動させた場合、移動距離がL2を超えると針の根元部分が顕微鏡観測可能範囲を超えるために、針が針捕捉可能範囲を逸脱してしまうことになる。L1<L2であるので、Aの針位置からBの針位置へ針を移動させる場合とAの針位置からCの針位置へ針を移動させる場合とでは、顕微鏡観測可能範囲に留まったままを維持することができる移動距離に差があるため、特に、Aの針位置からBの針位置へ針を移動させた場合に、針の先端部分を対物レンズの視野から見失ってしまい易いという問題点があった。
【0060】
そこで、本実施例では、Bの針位置における針の先端部分の位置とCの針位置における針の先端部分の位置との中点に焦点面における針の先端部分Dが来るように針位置のオフセット処理を行うこととした。この中点は、Bの針位置における針の先端部分の位置及びCの針位置における針の先端部分の位置との距離がともに(L1+L2)/2で等しくなるように調整される。L1は顕微鏡観測可能範囲の領域の大きさに依存し、L2は、顕微鏡観測可能範囲の領域の大きさ、針の長さ、及び針が水平方向となす鋭角の大きさに依存する。即ち、L1及びL2は、マイクロインジェクション装置の構造的属性に依存して一意に定まるパラメータである。
【0061】
このような方法で、例えば、後述の図22に示すステップS123の処理において針の水平方向の位置調整を行うとすると、本実施例の目的である針位置自動調整の全ての処理に先立って針の水平方向の位置を適切な位置へ移動させることが可能となり、針位置自動調整の処理効率を高め迅速に行なわせることを可能とする。また、このようにオフセット調整された位置から針位置自動調整を開始すると、針の先端部分を対物レンズの視野から見失ってしまうという非効率の発生を抑制することができる。即ち、水平面において一定の鋭角の補角をなす方向に針の先端部分を所定量だけオフセットさせた針位置を作業開始位置として該針の先端部分を含んだ画像の撮像を開始するので、水平方向において作業負担を少なく迅速に針の位置探索を行うことが可能となる。
【0062】
次に、実施例に係る針位置調整方法における細胞の有無判定の概略について説明する。図6は、実施例に係る針位置調整方法における細胞の有無判定の概略を説明するための説明図である。針位置調整方法は、自動焦点調整方法において、先ず、シャーレの基底面に付着する付着細胞の上方に配置された照明光源から付着細胞に照明を照射し、基底面上の付着細胞に対する対物レンズの焦点位置を付着細胞から離れた位置に置いて基底面の下方に配置される対物レンズを通してCCDカメラにより付着細胞のデフォーカス画像を撮影することによってデフォーカス画像を得る。
【0063】
このデフォーカス画像に先立って、付着細胞上1mm上方に焦点を置いたデフォーカス画像を撮影しておく。これを基準となる参照画像とする。この参照画像は、付着細胞の予想される表面位置に近い位置に焦点を置いたデフォーカス画像よりも大変ぼやけた画像となるが、照明光源からの光の強度の分布は近似しており、また、シャーレの基底面の傾斜による高さ変動が高々100〜200μmと、1mmに比べて小さいので画像特性に大差がないため、画像の輝度の参照画面として使用することができる。
【0064】
次に、付着細胞の上方200μmの焦点位置に焦点を置いたデフォーカス画像を撮影し、前述の参照画像との差分画像を取得する。若しくは、付着細胞の予想される表面位置に近い位置において、複数の異なる位置に焦点を置いたデフォーカス画像を撮影し、前述の参照画像との差分画像を取得する。焦点をおく複数の異なる位置を定めるスライスレベルは、参照画像の輝度値より10〜20%小さな輝度値とする。図7−1は、この処理によって取得されたデフォーカス画像の例を示す図である。
【0065】
次に、付着細胞の上方200μmの焦点位置に焦点を置いて撮影された、若しくは前述のスライスレベルで撮影されたデフォーカス画像のうち付着細胞が存在する画像には、周囲に比べて輝度が低く暗く見える領域が存在する。細胞が存在しない部分は、参照画像の輝度とほとんど変化がない。差分画像のうち付着細胞が存在する差分画像を二値化する。二値化とは、画像をモノクロで表現する処理である。画素毎に当該画素の輝度が所定閾値より大きい場合に当該画素を白色に置換し、当該画素の輝度が所定閾値より小さい場合に当該画素を黒色に置換する処理を行うものである。図7−2は、この処理によって二値化されたデフォーカス画像の例を示す図である。
【0066】
付着細胞が二値化された差分画像を参照すると、周囲よりも輝度が低い領域の面積を求めると同時に、この領域において最も小さな輝度値を求める。周囲よりも輝度が低いとは、輝度が所定閾値以下となることをいう。この面積と輝度との相関関係が一定の関係にあれば、マイクロインジェクションの対象となり得る正常な付着細胞が、当該デフォーカス画像が撮影された対物レンズ132の視野内に存在すると判定できる。また、周囲よりも輝度が低い領域の面積と輝度との相関関係によって、細胞が存在しない領域を特定することができる。
【0067】
例えば、図6に示す相関関係を示すグラフにおいて、参照画像の輝度を基準とし、この基準からの輝度の低さの度合いを示すΔIと、輝度が所定閾値以下となる領域の面積とで特定される点を2次元の相関グラフにプロットする。このプロットされた点が図示するr1の領域に存在するならば、付着細胞自体が、当該デフォーカス画像が撮影された対物レ
ンズの視野内に存在しないと判定される。
【0068】
また、プロットされた点が図示するr2の領域に存在するならば、マイクロインジェクションの対象となり得る正常な付着細胞が、当該デフォーカス画像が撮影された対物レンズの視野内に適度に密集して存在すると判定される。また、プロットされた点が図示するr3の領域に存在するならば、マイクロインジェクションの対象となり得る正常な付着細胞が、当該デフォーカス画像が撮影された対物レンズの視野内に浮遊して存在するため、この付着細胞はマイクロインジェクションには利用できないと判定される。
【0069】
上記の処理によって細胞の有無が判定された二値化されたデフォーカス画像の中から、一定の領域内で細胞が存在しない領域を探索する。即ち、細胞ありと判定されたデフォーカス画像の中で、細胞が存在しない空白領域を探索する。図7−3は、この処理によって、デフォーカス画像において細胞なしエリアが探索されたる状況を示す図である。
【0070】
さらに、針画像の背景画像を取得するために、細胞ありと判定されたデフォーカス画像において探索された細胞なしエリアの一つを、対物レンズの視野の中心へ移動させる。そして、細胞なしエリアが対物レンズの視野の中心へ移動させられると、背景画像が撮像される。図7−4は、細胞なしエリアを画像の中心へ移動させる状況を示す図である。
【0071】
次に、実施例に係る針検出処理の概略について説明する。図8は、実施例に係る針検出処理の概略を説明するための説明図である。同図に示すように、先ず、予め背景画像を取得しておいた後に、予め定められているパラメータ(例えば、シャーレの材質に関する情報など)に基づき、針先端の位置を観測領域内へ移動させ画像を撮像する。この画像を、針あり画像と呼ぶ。なお、このとき、針の先端は、対物レンズの焦点面に接していない。
【0072】
そして、針あり画像と背景画像との差分画像を求め、画像視野内に存在する画像ノイズ(例えば、小さなゴミや細胞の影など)を除去する。もし、針が画像視野内に入っていれば、針の領域が影として検出される。この差分画像を二値化し、針の先端位置を計測する。この計測結果に基づいて、針の先端を画像視野の中心へ移動させる。針が画像視野内で検出されなければ、シャーレステージを水平方向へ移動させて、針先端画像が検知されるまで探索を続ける。
【0073】
次に、実施例に係る針検出処理における画像処理の概略について説明する。図9は、実施例に係る針検出処理における画像処理の概略を説明するための説明図である。同図に示すように、図8に示した方法と同様の方法で、針あり画像と背景画像との差分画像を求め、この差分画像を二値化する。さらに、二値化された差分画像に対してソベル処理などの方法によって微分処理を行う。微分処理された画像を、微分画像と呼ぶ。微分処理では、微分値の絶対値を画像単位で総和する微分総和を算出する。図10−1は、背景画像の例を示す。図10−2は、針あり画像の例を示す。図10−3は、差分画像の例を示す。また、10−4は、微分画像の例を示す。
【0074】
次に、実施例に係る針検出処理における差分画像の判定方法の概略について説明する。図11は、実施例に係る針検出処理における差分画像の判定方法の概略を説明するための説明図である。同図は、微分値と、その概略形状が針の高さ位置とどのような関係になるかを示す図である。微分値は、針が焦点面より上に位置してぼやけた場合も、下に位置してぼやけた場合も、画像として同じように小さく捉えられ、大差はない。なお、実施例では、針が焦点面より上に位置してぼやけた場合を上ぼやけと呼び、下に位置してぼやけた場合を下ぼやけと呼ぶ。
【0075】
しかし、針が焦点位置に近づいた場合には微分総和は大きくなる。一方、ぼやけた画像の特徴を見ると、上ぼやけの場合には画像は右側がすぼまった形状(右すぼみ)となる。なお、針は左上から右下に通っているものとする。一方、下ぼやけの場合には、右側が大きく、左側が小さくすぼまった形状(左すぼみ)となる。針の焦点近くでは、焦点付近の形状は複雑となる。
【0076】
これらの特徴から針の位置を見つける方法として、先ず、微分総和を求めて、一定値以下であれば上ぼやけ又は下ぼやけと判定する。そして、上ぼやけ又は下ぼやけの場合には、針の二値化形状の特徴を調べ上ぼやけか下ぼやけかを判定する。そして、その判定に従い、針を焦点位置に近づけるように移動させる。最後に、微分総和が一定値以上になったところで、再度精密計測を行う。この方法により、針を焦点方向により近づけることが出来る。
【0077】
なお、図12−1は、上ぼやけの場合の画像の例を示す。この場合、焦点面の上方100μmに針の先端部分が位置している。また、図12−2は、合焦の場合の画像の例を示す。この場合、針の先端が焦点面に接している。また、図12−3は、針の先端が焦点面よりやや下方の場合の画像の例を示す。この場合、焦点面の下方20μmに針の先端部分が位置している。また、図12−4は、下ぼやけの場合の画像の例を示す。この場合、焦点面の下方100μmに針の先端部分が位置している。
【0078】
次に、実施例に係る針検出処理における針位置とぼやけとの相関を説明する。図13は、実施例に係る針検出処理における針位置とぼやけとの相関を示す図である。同図は、同一シャーレを用いた場合の針の位置と誤差の関係を示す。
【0079】
観測エリアサイズ(水平距離)を100μmとすると、針が焦点面より下にある場合には針の一部が焦点面をよぎることになる。しかし、針が焦点面より上にある場合には針は急激にぼやけていく事になる。ここでは、上部でのぼけを上ぼやけ(針がaの位置にある場合)、下部でのぼやけを下ぼやけ(針がdの位置にある場合)と呼び、針先端が焦点面と合ったときを合焦(針がbの位置にある場合)、針が焦点面をよぎっている場合を一部合焦(針がcの位置にある場合)と呼ぶことにする。a〜dの各針位置が属する領域に針の垂直方向の位置がある場合に、それぞれ上ぼやけ、合焦、一部合焦、下ぼやけとなる。
【0080】
次に、実施例に係る針位置極性検知処理の概略について説明する。図14は、実施例に係る針位置極性検知処理の概略を説明するための説明図である。図14は、形状を基にした針のぼやけ判定方法の具体例を示す図である。
【0081】
ここでは、針の差分画像を二値化した後、その画像をX軸方向へ投影する。その結果、図14の右側で示すように、X方向位置に対するY方向の画像幅の遷移特性曲線が得られる。これにより、針のX軸方向の形状変化がわかる。判定方法としては、特性の中間部分を切り出し、原点付近と針先端部分付近の情報を取り除いて得られた特性の近似直線を算定し、その傾きを求める。近似直線は、切り出された中間部分に属するある一点における遷移特性曲線の接線としてもよい。若しくは、遷移特性曲線の中間部分の端点を結んだ直線としてもよい。この傾きが負の場合は上ぼやけ、傾きが正の場合は下ぼやけと判定する。
【0082】
次に、実施例に係る針位置精密調整処理の概略について説明する。図15は、実施例に係る針位置精密調整処理の概略を説明するための説明図である。同図は、微分総和値が一定値より大きくなり、焦点面付近に近づいたときに、より正確な焦点位置を求める方法を説明する図である。
【0083】
ここでは、傾いた針の先端が焦点面より低い場合には微分平均が大きいが、焦点位置より高くなると急激にその値が小さくなるという性質を利用する。図15の上側には針の高さ変化を示し、下側にはそれぞれの高さ位置に対応する微分画像を示す。
【0084】
微分系金は針の一部が焦点面と交差したところで最大となる。これらの微分画像から、針の先端位置が焦点面に接する又は焦点面より低い場合(A又はBの針位置の場合)には微分平均が大きいが、それより高くなると(Cの針位置の場合)、微分平均が小さくなることが読み取れる。よって、微分値の急激な変化点を見つけると、正確な焦点面位置を計測することができることがわかる。
【0085】
次に、実施例に係る針位置精密調整処理における焦点探索の処理例の概略を説明する。図16は、実施例に係る針位置精密調整処理における焦点探索の処理例の概略を説明するための説明図である。同図は、針位置精密調整処理における焦点探索の処理の焦点検出のためのデータを示す。同図に示すプロットされた点を結んだ曲線の左側半分は、針先端が焦点面より低い場合であり、右側半分は、針先端高さが焦点面より高い場合である。縦軸は、微分総和が一定値より大きな値の場合の微分平均を示す。微分値自体は変動が大きいため、その最大値だけではデータが安定しないため、平均化を行うことにより、データを安定化させるため微分平均を使用する。
【0086】
図16において閾値を設定すると、焦点位置を判定できることがわかる。即ち、針先端が焦点位置より低い場合(図中に1の矢印で示した場合)には、微分平均が大きい。この場合には針を徐々に上方に引き上げ、閾値より小さくなった場合に焦点を通り過ぎたとみなして、1ステップ前の位置を合焦位置と判定する。
【0087】
一方、最初の針の位置が焦点面より高い場合(図中に2の矢印で示した場合)には、微分平均は閾値より小さい。この場合には、針を徐々に下降させ、閾値を越したところを合焦位置とする。このようにして、ほぼ±5μm程度の精度で、針先端位置と焦点面とを一致させることができる。
【0088】
次に、実施例に係る自動焦点調整方法におけるマイクロインジェクション装置への入力情報を説明する。図17は、実施例に係る針位置自動調整方法におけるマイクロインジェクション装置への入力情報を説明するための説明図である。同図に示すように、マイクロインジェクション装置へ入力される情報には、シャーレ200を載せるためのシャーレステージにおける対物レンズ132の視野位置情報を示すシャーレステージの位置情報と、インジェクションのための針122の動作を制御するための針制御ステージにおける針制御位置を示す針制御ステージの位置情報と、シャーレ200の底面上の付着細胞の焦点を計測するために対物レンズ132を移動させる移動位置に関する情報である対物レンズ132の高さ位置情報と、針の先端の画像である針のCCDカメラ画像とがある。マイクロインジェクション装置に対して入力されたこれらの情報に基づいて、次の図18に示す出力情報が得られる。
【0089】
次に、実施例に係る針位置自動調整方法におけるマイクロインジェクション装置からの出力情報を説明する。図18は、実施例に係る自動焦点調整方法におけるマイクロインジェクション装置からの出力情報を説明するための説明図である。同図に示すように、マイクロインジェクション装置から出力される情報には、インジェクションのための針122の動作を制御するための針制御ステージにおける針の制御結果の位置を示す針制御ステージの位置制御情報と、シャーレ200を載せるためのシャーレステージにおける対物レンズ132の視野位置情報の制御結果を示すシャーレステージの位置情報と、針の高さを細胞表面に一致させるために計測された針の焦点位置を示す対物レンズの高さ位置情報と、針のデフォーカス画像、二値化されたこのデフォーカス画像及び合焦画像などの針のCCDカメラ画像とがある。
【0090】
次に、実施例に係るマイクロインジェクション装置の構成について説明する。図19は、実施例に係るマイクロインジェクション装置の構成を示す機能ブロック図である。同図に示すように、マイクロインジェクション装置100は、シャーレステージ110と、インジェクタ121と、針122と、照明光源131と、対物レンズ132と、反射鏡133と、結像レンズ134と、CCDカメラ(Charge Coupled Devices)135、付着細胞探索パラメータ、シャーレ情報の入力なども行う操作部136と、処理結果を出力する表示部137と、制御部150とを有する。
【0091】
シャーレステージ110は、水平方向に移動可能なX−Yステージであり、シャーレ200を搭載する台となる。シャーレステージ110上には、シャーレ200を横からのばねの力で押さえつけて固定することができる。このようにして、シャーレ200とシャーレステージ110とは一体化するために、シャーレの内部の底面に存在する付着細胞を探索するためにシャーレの底面の観測位置を移動することが、シャーレステージ110を移動させて観測位置を移動することに一致するようになる。インジェクタ121は、制御部150の制御に基づいて、針122の上昇/下降や、針122内に充填された遺伝子等の射出を行う装置である。針122は、先端を微細化した中空のガラス針である。
【0092】
照明光源131は、インジェクション対象を上方から照らすための光源であり、対物レンズ132は、インジェクション対象の拡大画像をシャーレ200の下方から得るためのレンズである。反射鏡133は、対物レンズ132により得られた画像を結像レンズ134へ向けて反射するための鏡であり、結像レンズ134は、画像をCCDカメラ135の映像素子上に結像させるためのレンズである。
【0093】
CCDカメラ135は、映像素子を用いて光学的な画像を電子的な画像データに変換する装置であり、変換後の電子的な画像を制御部150に送信する。
【0094】
制御部150は、マイクロインジェクション装置100を全体制御する制御部であり、針122と基底面の接触検出の処理やインジェクションの自動実行処理等を行う。操作部136は、制御部150が各種処理を行うために必要な処理指示や設定情報の入力を受け付ける入力装置である。表示部137は、ユーザから指示等の入力を受け付け、各種情報を表示する装置であり、キーボードやディスプレイ等からなる。また、制御部150における各種処理の進行状況を示す情報や、各種処理結果である付着細胞の撮影画像を表示するための表示装置である。
【0095】
次に、実施例1に係るマイクロインジェクション装置の制御部の構成について説明する。図20は、実施例1に係るマイクロインジェクション装置の制御部の構成を示す機能ブロック図である。同図に示すように、マイクロインジェクション装置の制御部150は、針122及び針制御ステージ123を駆動制御する針駆動制御部151と、対物レンズ駆動部138を駆動制御することによって対物レンズ132の焦点位置を変化させる対物レンズ駆動制御部152と、シャーレステージ110を駆動制御するシャーレステージ駆動制御部153と、インジェクタ121を制御するインジェクション制御部154と、微分総和分布算出部155と、針位置極性検知部162と、微分平均算出部157と、微分平均判定部156と、CCDカメラ135から画像を取得する画像取得部158と、差分画像計算部159と、細胞有無判定部160と、針位置記憶部161とを有する。
【0096】
画像取得部158は、操作部136から受け付けられた付着細胞の針位置自動調整開始指示、又は針位置極性検知部162若しくは微分平均判定部156からの信号入力を契機として、対物レンズ駆動制御部152を制御して操作部136から予め入力されて設定されている各焦点位置に対物レンズのCCD焦点を定め、CCDカメラ135から針の画像を取得する。そして、一連の処理を経て取得された参照画像、背景画像及び複数の焦点位置における画像を、差分画像計算部159へ受け渡す。また、かかる処理において取得された針の画像を表示部137に表示させるために出力する。
【0097】
なお、複数の焦点位置における画像のうち、付着細胞の上方の例えば1mmに焦点位置を定めて撮影した画像が参照画像であり、付着細胞の上方200μmの焦点位置に焦点を置いて撮影された画像は、細胞の存在を検知するため使用される画像である。また、細胞が存在しないエリアにおいて撮影された画像は、背景画像である。これら以外の焦点位置に焦点を置いて撮影された画像は、針画像取得処理(後述のステップS131、ステップS203又はステップS211)で使用される画像である。
【0098】
差分画像計算部159は、画像取得部158から受け渡された参照画像、背景画像及び複数の焦点位置における画像を二値化し、両者の差分画像を計算する。付着細胞の上方200μmの焦点位置に焦点を置いて撮影された画像が二値化された参照画像との差分画像は、細胞有無判定部160へ受け渡される。所定の焦点位置に焦点を置いて撮影された針の画像が二値化された背景画像との差分画像は、微分総和分布算出部155及び微分平均算出部157へ受け渡される。また、これらは、表示部137において表示可能に出力される。
【0099】
細胞有無判定部160は、付着細胞の上方200μmの焦点位置に焦点を置いて撮影された画像が二値化された参照画像との差分画像に基づいて輝度が所定閾値より低い領域の面積及び該領域における最小輝度を算出し、この面積と最小輝度との相関関係から当該視野における細胞の有無を判定する。
【0100】
そして、細胞有無判定部160は、当該視野において細胞が存在すると判定された場合には、この視野における画像の細胞が存在しないエリアを検出し、検出されたエリアへ視野の中心を移動させるようにシャーレステージ駆動制御部153に対してシャーレステージ110を駆動を開始させるように指示する。また、細胞有無判定部160は、画像取得部158に対して、当該視野において細胞が存在しない細胞なしエリアの画像の取得を開始するように指示する。なお、当該視野において細胞が存在すると判定されなかった場合には、シャーレステージ駆動制御部153に対して、次の観測サイト(観測位置、観測点)への移動を指示する。
【0101】
なお、細胞有無判定部160の判定結果は、付着細胞の存在が存在している画像において細胞が存在しないエリアを検出することに限らず、付着細胞が全く存在しないか若しくは付着細胞が離散して浮遊しているのみであっても、当該視野の画像から細胞なしエリアを抽出することとしてもよい。
【0102】
微分総和分布算出部155は、差分画像計算部159から受け渡された差分画像を微分してその微分値の絶対値の総和を微分総和として算出し、焦点位置に応じた微分総和の分布である微分総和分布を算出する処理を行う。微分総和分布算出部155は、算出された微分総和分布を針位置極性検知部162へ受け渡す。
【0103】
針位置極性検知部162は、図14に示した方法で、焦点位置における針の先端部分の形状が右すぼみになるなかで微分総和分布の値が最大となるように、針の垂直方向の垂直位置を検知する。検知された針の垂直位置は、針駆動制御部151へ受け渡される。針駆動制御部151は、受け渡された垂直位置へ針122を移動させるように針制御ステージ123を駆動制御する。
【0104】
微分平均算出部157は、針位置極性検知部162により検知された針位置付近において針位置を微調整しながら取得した画像と背景画像との差分画像に基づいて、各差分画像の微分平均を算出する。算出された微分平均は、微分平均判定部156へ受け渡される。
【0105】
微分平均算出部157は、図16を参照して説明した方法で、受け渡された微分平均に基づき、該微分平均が所定閾値を超えるものであって最も低い針位置を判定して決定する。この決定された針位置は、針位置記憶部161へ渡され記憶される。また、決定された針位置は、針駆動制御部151へ渡され、該決定された垂直方向の針位置へ針を移動させるように針制御ステージ123が駆動制御される。針位置記憶部161に記憶された針位置情報は、次回のマイクロインジェクション開始時に読み出されて、針位置調整に利用される。
【0106】
このように、一度決定された針位置情報を記憶することによって、再度同じシャーレを用いる際には、針位置の探索処理を省略可能となるので、迅速にマイクロインジェクションを行うことが可能となる。即ち、針の先端部分が前記レンズの焦点面に接すると判定されたときの該針の垂直方向の位置を、基底面を有するシャーレを識別して記憶するので、シャーレの種別、個体毎に異なる底部の厚み、材質などの物理的属性及び光学的属性に応じた作業開始時の針の位置を予め計測して用意しておき、マイクロインジェクションの作業開始時には、この記憶された針の位置を利用することによって、作業開始時の針の位置の計測を行うことなく作業負担を少なく正確かつ迅速に作業開始可能となる。
【0107】
また、微分平均算出部157により垂直方向の針位置が決定されると、インジェクション制御部154に対してマイクロインジェクションの指示が出力される。インジェクション制御部154は、該指示が受け渡されると、自動的若しくは操作部136からのインジェクション操作指示に基づいてインジェクタ121を制御してマイクロインジェクションを実行させることとなる。
【0108】
なお、シャーレステージ駆動制御部153は、細胞有無判定部160からの次の観測サイトへの移動の指示のみならず、操作部136からの操作指示に基づいても、シャーレステージ110を適切な観測サイトへと移動させる。
【0109】
次に、実施例に係るマイクロインジェクション装置において実行される針位置自動調整処理手順について説明する。図21は、針位置自動調整処理手順を示すフローチャートである。同図に示すように、先ず、シャーレ200上の1mmの位置へ焦点位置を移動させ(ステップS101)、当該焦点位置において参照画像となる画像を取得する(ステップS102)。さらに、シャーレ200上の200μmへ焦点位置を移動させ(ステップS103)、当該焦点位置において画像を取得する(ステップS104)。
【0110】
次に、ステップS102で取得された参照画像とステップS104で取得された画像との差分画像を計算し(ステップS105)、差分画像を二値化する(ステップS106)。続いて、二値化された差分画像に含まれる輝度が閾値以下である低輝度領域の面積を計算し(ステップS107)、該低輝度領域における最小輝度を検出する(ステップS108)。そして、最小輝度と低輝度領域の面積との相関からマイクロインジェクションに適した正常細胞の当該視野における有無を判定する(ステップS109)。
【0111】
次に、当該視野において細胞なしエリアが検出できたか否かを判定し(ステップS110)、検出できたと判定された場合に(ステップS110肯定)、針検出処理(ステップS111)及び針位置精密調整処理(ステップS112)を実行する。針検出処理及び針位置精密調整処理手順の詳細は後述する。
【0112】
また、ステップS110において、当該視野において細胞なしエリアが検出できたと判定されなかった場合に(ステップS110否定)、ステップS113へ処理を移す。ステップS113では、次のシャーレステージ110を駆動制御して次の観測サイトへと移動させる。ステップS113が終了すると、ステップS104へ処理を移す。
【0113】
これらの一連の処理を実行することによって、対物レンズ132の対象視野内に付着細胞が存在しない観測点を自動的に探索し、この観測点において針を検出し、針を検出したならば、針位置を精密調整することが可能となる。即ち、針122の垂直方向の位置を手動で動かして、針の先端が付着細胞の対物レンズ132の焦点面に一致するように手作業で調整するという試行錯誤を行う必要がなく、作業の煩わしさから解放され、より正確に針の位置を調整し、より効率的にマイクロインジェクションの作業を行うことが可能となる。また、上記の一連の処理が自動的に行われることから、マイクロインジェクション時に針122を破損するという心理的負担、心理的疲労をより軽減することができる。
【0114】
次に、針検出処理手順について説明する。図22は、図21に示した針検出処理手順の詳細を示すフローチャートである。同図に示すように、先ず、細胞なしエリアを視野中央へ移動させ(ステップS121)、背景画像を取得し(ステップS122)、針を微調整位置へ移動させる(ステップS123)。
【0115】
続いて、針画像を取得し(ステップS124)、針画像と背景画像との差分画像を取得し(ステップS125)、差分画像の二値化を行う(ステップS126)。続いて、針が視野内に存在するか否かを判定し(ステップS127)、存在すると判定されたならば(ステップS127肯定)、針の先端位置を検知し(ステップS128)、針の先端位置を視野中央に移動させる(ステップS130)。ステップS130が終了すると、ステップS131へ移る。
【0116】
一方、ステップS127で、針が視野内に存在すると判定されなかったならば(ステップS127否定)、針の位置を移動させる(ステップS129)。ステップS129が終了すると、ステップS122へ移る。
【0117】
ステップS131では、針画像を取得し、続いて、針画像とステップS122で取得された当該視野の背景画像との差分画像を取得する(ステップS132)。続いて、差分画像の微分総和を算出する(ステップS133)。
【0118】
続いて、差分画像の微分総和が所定閾値を超えるか否かを判定し(ステップS134)、超えると判定されたならば(ステップS134)、針検出処理を終了し、針位置自動調整処理のステップS112(図21)へ移る。一方、差分画像の微分総和が所定閾値を超えると判定されなかったならば(ステップS134)、針位置極性検知処理を行う(ステップS135)。この針位置極性検知処理の詳細は後述する。ステップS135が終了すると、ステップS131へ移る。
【0119】
次に、針位置極性検知処理について説明する。図23は、図22のステップS135に示した針位置極性検知処理手順の詳細を示すフローチャートである。同図に示すように、先ず、差分画像の二値化画像のX軸射影分布を算出する(ステップS141)。続いて、差分画像の二値化画像のX軸射影分布上のX軸成分の中点付近のある一点を選択し(ステップS142)、この一点におけるX軸射影分布曲線の接線の傾きを算出する(ステップS143)。
【0120】
続いて、ステップS143で算出された傾きの絶対値は所定値以上であるか否かを判定し(ステップS144)、所定値以上であると判定されたならば(ステップS144肯定)、傾きの符号は正か否かを判定する(ステップS145)。所定値以上であると判定されなかったならば(ステップS144否定)、ステップS146へ移る。ステップS146が終了すると、ステップS143へ移る。
【0121】
ステップS145で、傾きの符号が正であると判定されたならば(ステップS145肯定)、針制御ステージ123において針を1ステップ(1移動単位)だけ上へ移動させる(ステップS147)。一方、傾きの符号が正であると判定されなかったならば(ステップS145否定)、針制御ステージ123において針を1ステップだけ下へ移動させる(ステップS148)。ステップS147又はステップS148が終了すると、針検出処理のステップS131(図22)へ移る。
【0122】
次に、針位置精密調整処理について説明する。図24は、図21のステップS112に示した針位置精密調整処理手順の詳細を示すフローチャートである。同図に示すように、先ず、針は上昇中か否かを判定する(ステップS201)。針が上昇中であると判定されるならば(ステップS201肯定)、ステップS202へ移り、針が上昇中であると判定されなかったならば(ステップS201否定)、ステップS210へ移る。
【0123】
ステップS202では、針を1ステップ(1移動単位)だけ上方へ移動させる。続いて、針画像を取得し(ステップS203)、背景画像と針画像との差分画像を取得し(ステップS204)、差分画像を微分し(ステップS205)、差分画像の微分平均を算出する(ステップS206)。
【0124】
続いて、微分平均が所定閾値を超えるか否かを判定し(ステップS207)、所定閾値を超えると判定されたならば(ステップS207肯定)、ステップS202へ移り、所定閾値を超えると判定されなかったならば(ステップS207否定)、ステップS208へ移る。ステップS208では、針を1ステップだけ下方へ移動させる。続いて、現在の針ステージの位置を焦点として記憶させる(ステップS209)。
【0125】
一方、ステップS210では、針を1ステップ(1移動単位)だけ下方へ移動させる。続いて、針画像を取得し(ステップS211)、背景画像と針画像との差分画像を取得し(ステップS212)、差分画像を微分し(ステップS213)、差分画像の微分平均を算出する(ステップS214)。
【0126】
続いて、微分平均が所定閾値を超えるか否かを判定し(ステップS215)、所定閾値を超えると判定されたならば(ステップS215肯定)、ステップS209へ移り、所定閾値を超えると判定されなかったならば(ステップS215否定)、ステップS210へ移る。
【0127】
ステップS202〜ステップS207若しくはステップS210〜ステップS215を繰り返し実行することにより、針の先端部分がレンズの焦点面に接すると判定されるまで特定方向へ移動させ、針の先端部分がレンズの焦点面に至るまで針探索の作業を自動的に行って、作業負担の軽減を図ることができる。
【0128】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は、これに限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した技術的思想の範囲内で、更に種々の異なる実施例で実施されてもよいものである。また、実施例に記載した効果は、これに限定されるものではない。
【0129】
具体的には、上記実施例に示したマイクロインジェクション装置100及びその制御部150の構成及び各機能ブロックはあくまで一例を示したものに過ぎず、特許請求の範囲に記載したマイクロインジェクション装置及びマイクロインジェクション方法を実現するために、マイクロインジェクション装置100及びその制御部150の構成及び各機能ブロックは、この特許請求の範囲を逸脱しない範囲において変更可能である。
【0130】
(付記1)垂直方向の位置が可変の微細な針を基底面に付着した細胞に突き刺して該細胞に目的物を注入するマイクロインジェクション装置であって、
前記針の先端部分を含んだ画像をレンズを通して撮像する画像撮像手段と、
前記画像撮像手段により撮像された画像から前記針の先端部分を検出する針検出手段と、
前記針検出手段により検出された前記針の先端部分の画像に基づく微分総和が第1の閾値を下回る場合に、該針の先端部分の画像における該針の先端部分の形状を判定する針形状判定手段と、
前記針形状判定手段により判定された前記針の先端部分の形状に応じて該針の垂直方向の位置を移動させる針移動手段と
を備えたことを特徴とするマイクロインジェクション装置。
【0131】
(付記2)前記針移動手段により特定方向へ移動させられた位置において前記画像撮像手段により撮像された該針の先端部分の画像に基づく微分総和が前記第1の閾値を超えた場合に、該画像の微分平均と第2の閾値との大小関係に基づいて、該針の先端部分が前記レンズの焦点面に接するか否かを判定する針先端合焦判定手段をさらに備えたことを特徴とする付記1に記載のマイクロインジェクション装置。
【0132】
(付記3)前記針先端合焦判定手段により前記針の先端部分が前記レンズの焦点面に接すると判定されたときの該針の垂直方向の位置を、前記基底面を有するシャーレを識別して記憶する針位置記憶手段をさらに備えたことを特徴とする付記2に記載のマイクロインジェクション装置。
【0133】
(付記4)前記針移動手段は、前記針先端合焦判定手段により前記針の先端部分が前記レンズの焦点面に接すると判定されなかった場合に前記針を前記特定方向へさらに移動させることを特徴とする付記2又は3に記載のマイクロインジェクション装置。
【0134】
(付記5)前記基底面における前記細胞の観測位置において、前記レンズの基準となる焦点位置において前記画像撮像手段により撮像された前記細胞の画像である参照画像と、前記レンズの第1の焦点間隔の各焦点位置で前記画像撮像手段により撮像された前記細胞の画像との差分画像に基づいて算出された、該第1の焦点間隔の焦点位置に応じた微分総和分布が最大値を取る前記レンズの第1の焦点位置を検出する第1の焦点位置検出手段と、
前記参照画像と、前記観測位置において前記第1の焦点位置検出手段により検出された前記第1の焦点位置を含む所定範囲内で前記第1の焦点間隔よりも狭い第2の焦点間隔の各焦点位置で前記画像撮像手段により撮像された前記細胞の画像との差分画像に基づいて算出された、該第2の焦点間隔の各焦点位置に応じた微分総和分布が最小値を取る前記レンズの第2の焦点位置を検出する第2の焦点位置検出手段と、
前記第2の焦点位置検出手段により検出された前記第2の焦点位置に基づいて前記針の垂直方向の位置を決定する針位置決定手段とをさらに備え、
前記画像撮像手段は、前記針が前記針位置決定手段により決定された針位置を作業開始位置として前記針の先端部分を含んだ画像の撮像を開始することを特徴とする付記1〜4のいずれか一つに記載のマイクロインジェクション装置。
【0135】
(付記6)前記針位置決定手段は、前記基底面を有するシャーレの垂直方向の位置の第1の基準値からの変量が該シャーレの底部の厚みの第2の基準値からの変量に比べて小さい場合に、該底部の厚みの変量に該底部の屈折率を乗じた結果を加算して前記針の垂直方向の位置を決定することを特徴とする付記5に記載のマイクロインジェクション装置。
【0136】
(付記7)前記針は、前記基底面が配置される水平面に対して一定の鋭角を保ちつつ該水平面において特定の一方向に位置が可変であり、
前記画像撮像手段は、該水平面において前記一定の鋭角の補角をなす方向に前記針の先端部分を所定量だけオフセットさせた針位置を作業開始位置として該針の先端部分を含んだ画像の撮像を開始することを特徴とする付記1〜6のいずれか一つに記載のマイクロインジェクション装置。
【0137】
(付記8)垂直方向の位置が可変の微細な針を基底面に付着した細胞に突き刺して該細胞に目的物を注入するマイクロインジェクション方法であって、
前記針の先端部分を含んだ画像をレンズを通して撮像する画像撮像工程と、
前記画像撮像工程により撮像された画像から前記針の先端部分を検出する針検出工程と、
前記針検出工程により検出された前記針の先端部分の画像に基づく微分総和が第1の閾値を下回る場合に、該針の先端部分の画像における該針の先端部分の形状を判定する針形状判定工程と、
前記針形状判定工程により判定された前記針の先端部分の形状に応じて該針の垂直方向の位置を移動させる針移動工程と
を含んだことを特徴とするマイクロインジェクション方法。
【0138】
(付記9)前記針移動工程により特定方向へ移動させられた位置において前記画像撮像工程により撮像された該針の先端部分の画像に基づく微分総和が前記第1の閾値を超えた場合に、該画像の微分平均と第2の閾値との大小関係に基づいて、該針の先端部分が前記レンズの焦点面に接するか否かを判定する針先端合焦判定工程をさらに含んだことを特徴とする付記8に記載のマイクロインジェクション方法。
【0139】
(付記10)前記針移動工程は、前記針先端合焦判定工程により前記針の先端部分が前記レンズの焦点面に接すると判定されなかった場合に前記針を前記特定方向へさらに移動させることを特徴とする付記9に記載のマイクロインジェクション方法。
【0140】
(付記11)前記基底面における前記細胞の観測位置において、前記レンズの基準となる焦点位置において前記画像撮像工程により撮像された前記細胞の画像である参照画像と、前記レンズの第1の焦点間隔の各焦点位置で前記細胞画像撮像工程により撮像された前記細胞の画像との差分画像に基づいて算出された、該第1の焦点間隔の焦点位置に応じた微分総和分布が最大値を取る前記レンズの第1の焦点位置を検出する第1の焦点位置検出工程と、
前記参照画像と、前記観測位置において前記第1の焦点位置検出工程により検出された前記第1の焦点位置を含む所定範囲内で前記第1の焦点間隔よりも狭い第2の焦点間隔の各焦点位置で前記画像撮像工程により撮像された前記細胞の画像との差分画像に基づいて算出された、該第2の焦点間隔の各焦点位置に応じた微分総和分布が最小値を取る前記レンズの第2の焦点位置を検出する第2の焦点位置検出工程と、
前記第2の焦点位置検出工程により検出された前記第2の焦点位置に基づいて前記針の垂直方向の位置を決定する針位置決定工程とをさらに含み、
前記画像撮像工程は、前記針が前記針位置決定工程により決定された針位置にある状態から前記針の先端部分を含んだ画像の撮像を開始することを特徴とする付記7、8又は9に記載のマイクロインジェクション方法。
【産業上の利用可能性】
【0141】
本発明は、垂直方向の位置が可変の微細な針を基底面に付着した細胞に突き刺して該細胞に目的物を注入するマイクロインジェクション装置及びマイクロインジェクション方法において、針の作業開始位置を作業負担を少なく迅速に決定したい場合に有用であり、マイクロインジェクション作業を効率的に行うために有効である。
【図面の簡単な説明】
【0142】
【図1】付着細胞へのマイクロインジェクションを説明するための説明図である。
【図2】実施例に係る針位置自動調整方法の処理の概略を説明するための説明図である。
【図3】実施例に係る針位置自動調整方法の光学系の概略を説明するための説明図である。
【図4】実施例の針位置自動調整に影響する要因を説明するための説明図である。
【図5】実施例の針位置のオフセットの概略を説明するための説明図である。
【図6】実施例に係る針位置自動調整方法における細胞の有無判定の概略を説明するための説明図である。
【図7−1】実施例に係る針位置自動調整方法における細胞の処理画像を示す図である。
【図7−2】実施例に係る針位置自動調整方法における細胞の処理画像を示す図である。
【図7−3】実施例に係る針位置自動調整方法における細胞の処理画像を示す図である。
【図7−4】実施例に係る針位置自動調整方法における細胞の処理画像を示す図である。
【図8】実施例に係る針検出処理の概略を説明するための説明図である。
【図9】実施例に係る針検出処理における画像処理の概略を説明するための説明図である。
【図10−1】実施例に係る針検出処理における処理画像を示す図である。
【図10−2】実施例に係る針検出処理における処理画像を示す図である。
【図10−3】実施例に係る針検出処理における処理画像を示す図である。
【図10−4】実施例に係る針検出処理における処理画像を示す図である。
【図11】実施例に係る針検出処理における差分画像の判定方法の概略を説明するための説明図である。
【図12−1】実施例に係る針検出処理における差分画像を示す図である。
【図12−2】実施例に係る針検出処理における差分画像を示す図である。
【図12−3】実施例に係る針検出処理における差分画像を示す図である。
【図12−4】実施例に係る針検出処理における差分画像を示す図である。
【図13】実施例に係る針検出処理における針位置とぼやけとの相関を示す図である。
【図14】実施例に係る針位置極性検知処理の概略を説明するための説明図である。
【図15】実施例に係る針位置精密調整処理の概略を説明するための説明図である。
【図16】実施例に係る針位置精密調整処理における焦点探索の処理例の概略を説明するための説明図である。
【図17】実施例に係る針位置自動調整方法におけるマイクロインジェクション装置への入力情報を説明するための説明図である。
【図18】実施例に係る針位置自動調整方法におけるマイクロインジェクション装置からの出力情報を説明するための説明図である。
【図19】実施例に係るマイクロインジェクション装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図20】実施例に係るマイクロインジェクション装置の制御部の構成を示す機能ブロック図である。
【図21】針位置自動調整処理手順を示すフローチャートである。
【図22】針検出処理手順を示すフローチャートである。
【図23】針位置極性検知処理手順を示すフローチャートである。
【図24】針位置精密調整処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0143】
100 マイクロインジェクション装置
110 シャーレステージ
121 インジェクタ
122 針
123 針制御ステージ
123 対物レンズ
131 照明光源
132 対物レンズ
133 反射鏡
134 結像レンズ
135 CCDカメラ
136 操作部
137 表示部
138 対物レンズ駆動部
150 制御部
151 針駆動制御部
152 対物レンズ駆動制御部
153 シャーレステージ駆動制御部
154 インジェクション制御部
155 微分総和分布算出部
156 微分平均判定部
157 微分平均算出部
158 画像取得部
159 差分画像計算部
160 細胞有無判定部
161 針位置記憶部
162 針位置極性検知部
200 シャーレ
【出願人】 【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
【出願日】 平成18年7月28日(2006.7.28)
【代理人】 【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明


【公開番号】 特開2008−29266(P2008−29266A)
【公開日】 平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願番号】 特願2006−206963(P2006−206963)