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【発明の名称】 物質を吸引又は吐出する装置及び方法
【発明者】 【氏名】西山 秀作

【要約】 【課題】安定した物質の吸引又は吐出が可能な装置及び方法を提供する。

【構成】物質を吐出又は吸引する細孔を有する孔部材と、前記孔部材にプラズマにより活性化した洗浄用ガスを照射する洗浄手段と、前記孔部材と前記洗浄手段の少なくとも一方を移動する移動手段とを有することを特徴とする装置を提供する。また、孔部材が有する細孔から物質を吐出又は吸引するステップと、前記吐出/吸引ステップの直前に前記孔部材を洗浄するステップとを有し、当該洗浄ステップは、前記孔部材にプラズマにより活性化した洗浄用ガスを照射するステップと、前記孔部材と前記洗浄用ガスの照射部の少なくとも一方を移動するステップとを有することを特徴とする方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物質を吐出又は吸引する細孔を有する孔部材と、
前記孔部材にプラズマにより活性化した洗浄用ガスを照射する洗浄手段と、
前記孔部材と前記洗浄手段の少なくとも一方を移動する移動手段とを有することを特徴とする装置。
【請求項2】
前記装置は、微小物体内に注射針を挿入して当該注射針から物質を前記微小物体に注入する注入装置であり、
前記孔部材は前記注射針であることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記装置は、容器の吸引口にそれぞれ保持された微小物体内に注射針を挿入して当該注射針から物質を前記微小物体に注入する注入装置であり、
前記孔は吸引口であり、前記孔部材は前記容器であることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項4】
前記孔部材の内部に負圧を加える減圧手段を更に有することを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項5】
前記孔又は前記孔部材と前記洗浄用ガスの照射部との距離を前記洗浄用ガスの温度情報に基づいて制御する制御部を更に有することを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項6】
前記洗浄用ガスの温度を検出し、前記温度情報を前記制御部に通知する検出手段を更に有することを特徴とする請求項5記載の装置。
【請求項7】
孔部材が有する細孔から物質を吐出又は吸引するステップと、
前記吐出/吸引ステップの直前に前記孔部材を洗浄するステップとを有し、
当該洗浄ステップは、
前記孔部材にプラズマにより活性化した洗浄用ガスを照射するステップと、
前記孔部材と前記洗浄用ガスの照射部の少なくとも一方を移動するステップとを有することを特徴とする方法。
【請求項8】
前記洗浄ステップは、前記孔部材が洗浄されている間に前記孔部材の内部に負圧を発生させるステップを更に有することを特徴とする請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記洗浄ステップは、前記孔部材が洗浄されている間に前記孔部材の内部に正圧を発生させるステップを更に有することを特徴とする請求項7記載の方法。
【請求項10】
前記洗浄用ガスの照射方向を前記孔部材の前記細孔の長手方向に一致又は平行にするステップを更に有することを特徴とする請求項7記載の方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、注射孔、吸引口などの微小な細孔を有する孔部材(例えば、注射針、容器、内視鏡)を使用して物質を吸引又は吐出する装置及び方法に関する。本発明は、例えば、細胞やコロイドなどの微小物体に微小針を介して遺伝子や薬剤などの物質を注入する注入装置(「マイクロインジェクション装置」ともいう。)及び注入方法に好適である。
【背景技術】
【0002】
近年、医療用途において、遺伝子及び薬剤などの注入物質を注入した細胞を利用する機会が増加している。このような医療用途では、研究用途とは異なり、細胞と注入物質の組合せを予め決定し、単一細胞について効果発現の有無を観察するなど、各細胞の個別的評価が必要となる。このため、多量の細胞にスループットと注入成功率良く物質を注入することが必要となる。
【0003】
スループットの向上のためには、注入を自動化した注入装置が必要となる。また、注入成功率を向上するためには、人工授精で広く使用されているインジェクション法を使用することに加え、微小針から注入物質を安定して吐出すると共に細胞を容器内で安定して固定する必要がある。この点、細胞が、シャーレ中で自由に移動可能であると注入作業が困難になるため、微細孔の空いた膜をフィルターの裏から多数の細胞を一括して吸引及び固定する方法が提案されている(例えば、特許文献1及び2を参照のこと)。
【0004】
その他の従来技術としては、例えば、特許文献3及び4がある。
【特許文献1】特開2006−149226号公報
【特許文献2】特開平2−117380号公報
【特許文献3】特開11−183522号公報
【特許文献4】特開2004−166653号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、微小針は、内径がφ1μm未満であるため、物質充填時に気泡を巻き込み、その気泡がダンパーとなって圧力を加えても物質を吐出しない場合がある。また、微小針の先端部は清浄でなければ同様に物質を吐出しにくい。微小針を製作する際に針先汚染(コンタミネーション)が発生する。また、細胞に物質を注入すると、物質や細胞の一部が微小針の外部及び内部の先端部に付着する。これらの汚染物質や付着物質により微小針の吐出口が詰まり、次回の注入が不良となったり困難になったりする。更に、微小物体の吸引口の中には時間と共に撥水性を帯びるものがあり、時間と共に浮遊物体を吸引しにくくなる。
【0006】
そこで、本発明は、安定した物質の吸引又は吐出が可能な装置及び方法を提供することを例示的な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面としての装置は、物質を吐出又は吸引する細孔を有する孔部材と、前記孔部材にプラズマにより活性化した洗浄用ガスを照射する洗浄手段と、前記孔部材と前記洗浄手段の少なくとも一方を移動する移動手段とを有することを特徴とする。かかる装置は洗浄手段を備えているので、物質の吐出又は吸引の直前に洗浄を行うことができる。孔部材を予め、例えば、工場出荷時に、洗浄しておくだけでは吐出又は吸引の直前に殺菌、滅菌及び濡れ性向上の洗浄効果が消失している場合があるからである。洗浄効果により物質の吐出又は吸引が安定する。また、洗浄は移動手段が移動することにより自動的に行われ、手動洗浄ではないために操作者の負担を軽減することができる。また、予め洗浄効果を確認しておくことで、手動洗浄では発生し得る洗浄ムラを防止して洗浄の信頼性を高めることができる。物質の種類は特に限定されない。移動手段は、孔部材及び/又は洗浄手段を移動すれば足りる。前記装置は、例えば、微小物体内に注射針を挿入して当該注射針から物質を前記微小物体に注入する注入装置である。また、前記孔部材は、前記注射針、容器、内視鏡その他の器具であり、前記孔は注射孔、吸引口その他の細孔である。孔部材は吐出と吸引の両方を行ってもよい。
【0008】
前記孔部材の内部に負圧を加える減圧手段を更に有することが好ましい。これにより、活性化した洗浄用ガスを積極的に孔部材の孔の内面に引き込むことができ、殺菌、滅菌及び濡れ性向上の洗浄効果を孔部材の内面に及ぼすことができる。この結果、気泡の影響や物質の詰まりを低減又は除去することができる。この場合、前記孔部材は複数の孔を有し、前記減圧手段は前記複数の孔に別個独立に負圧を加えてもよい。これにより、活性化した洗浄用ガスの引き込みなどが容易になる。
【0009】
また、前記孔部材の内部に負圧を加える減圧手段と、前記孔部材の内部に正圧を加える加圧手段と、前記減圧手段及び前記加圧手段を切り替える切替手段とを有する圧力調整機構と、前記切替手段による切替動作を前記注射針の洗浄時か前記孔部材の動作時かに応じて制御する制御部とを更に有してもよい。切替手段を加圧手段及び減圧手段に共通に使用して部品点数を抑えると共に切替手段による切替動作を自動化することによって操作者の負担を軽減することができる。この場合、前記孔部材は複数の孔を有し、前記圧力調整機構は前記複数の孔に別個独立に圧力を加えてもよい。これにより、活性化した洗浄用ガスの引き込みなどが容易になる。
【0010】
前記孔又は前記孔部材と前記洗浄用ガスの照射部との距離を前記洗浄用ガスの温度情報に基づいて制御する制御部を更に有することが好ましい。洗浄用ガスの温度情報は、例えば、洗浄用ガスの照射範囲における温度分布である。これにより、孔部材のプラズマ熱による変形や損傷を防止することができる。この場合、制御部は、前記洗浄用ガスの温度を検出し、前記温度情報を前記制御部に通知する検出手段の検出結果を利用してもよい。
【0011】
前記洗浄手段は、例えば、酸素供給源を含む。また、前記洗浄手段は、不活性ガス供給源を更に有してもよい。
【0012】
本発明の別の側面としての方法は、孔部材が有する細孔から物質を吐出又は吸引するステップと、前記吐出/吸引ステップの直前に前記孔部材を洗浄するステップとを有し、当該洗浄ステップは、前記孔部材にプラズマにより活性化した洗浄用ガスを照射するステップと、前記孔部材と前記洗浄用ガスの照射部の少なくとも一方を移動するステップとを有することを特徴とする。かかる注入方法は、吐出/吸引ステップの直前に孔部材を洗浄する。孔部材を予め、例えば、工場出荷時に、洗浄しておくだけでは吐出/吸引の直前に殺菌、滅菌及び濡れ性向上の洗浄効果が消失している場合があるからである。洗浄効果により物質の吐出/吸引が安定する。また、洗浄は移動ステップにより自動的に行われ、手動洗浄ではないために操作者の負担を軽減することができる。また、予め洗浄効果を確認しておくことで、手動洗浄では発生し得る洗浄ムラを防止して洗浄の信頼性を高めることができる。移動ステップは、孔部材及び/又は照射部を移動すれば足りる。
【0013】
前記吐出/吸引ステップは、例えば、微小物体内に注射針を挿入して当該注射針から物質を前記微小物体に注入するステップであり、前記孔部材は、例えば、注射針である。あるいは、前記方法は、例えば、容器の吸引口にそれぞれ保持された微小物体内に注射針を挿入して当該注射針から物質を前記微小物体に注入する方法であり、前記吐出/吸引ステップは、例えば、前記微小物体を容器の吸引口に吸引するステップであり、前記孔部材は、例えば、前記容器であり、前記孔は、例えば、前記吸引口である。
【0014】
前記洗浄ステップは、前記注入ステップの命令を受信したかどうかを判断するステップと、当該判断ステップが受信したと判断した場合に自動的に前記照射ステップ及び前記移動ステップを実行してもよい。これにより、洗浄の自動化の実行を図ることができる。
【0015】
前記洗浄ステップは、前記孔部材が洗浄されている間に前記孔部材の内部に負圧を発生させるステップを更に有することが好ましい。これにより、活性化した洗浄用ガスを積極的に孔部材の内面に引き込むことができ、殺菌、滅菌及び濡れ性向上の洗浄効果を孔部材の内面に及ぼすことができる。この結果、気泡の影響や物質の詰まりを低減又は除去することができる。また、前記洗浄ステップは、前記孔部材が洗浄されている間に前記孔部材の内部に正圧を発生させてもよい。特に、孔に物質が詰まった場合などに正圧は効果的である。
【0016】
前記洗浄用ガスの照射部と前記孔部材との距離を前記洗浄用ガスの温度情報に基づいて制御するステップを更に有することが好ましい。これにより、孔部材のプラズマ熱による変形や損傷を防止することができる。この場合、前記洗浄用ガスの温度を検出するステップを更に有し、前記制御ステップは前記検出ステップの検出結果に基づいて制御してもよい。
【0017】
前記洗浄用ガスの照射方向を前記孔部材の前記細孔の長手方向に一致又は平行にするステップを更に有してもよい。これにより、孔部材の内面への洗浄用ガスの引き込みが容易になる。
【0018】
本発明の更なる目的又はその他の特徴は、以下、添付図面を参照して説明される好ましい実施例によって明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、安定した物質の吸引又は吐出が可能な装置及び方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して、本発明の一実施形態の注入装置100について説明する。注入装置100は、細胞やコロイドなどの微小物体に対して所定の物質を、微小針(キャピラリ)を用いて注入する。本実施例の微小物体は、液体Lに分散し、浮遊可能な細胞Cである。液体Lは、例えば、細胞懸濁液及び培地である。ここで、図1は、注入装置100の概略断面図である。
【0021】
注入装置100は、図1に示すように、キャピラリ110と、圧力調整機構120と、キャピラリ駆動系130と、シャーレ140と、シャーレ駆動系150と、洗浄手段160と、温度検出系170と、制御系180と、図示しない観察系とを有する。
【0022】
キャピラリ110は、細胞Cの所定の部位(例えば、核や細胞質)に挿入され、所定の部位に遺伝子、薬剤、タンパク質などの所定の物質を注入する注射針である。キャピラリ110は、後述するローダノズル115と、プラスチックから構成される中空部材であるマニピュレータ部116と、圧力調整機構120に接続可能である。キャピラリ110は、図1及び図2に示すように、注射孔112aを有するガラス製の注射針112と、注射針112を保持するプラスチック製の保持部114とを有する。
【0023】
保持部114はI字形状断面を有し、マニピュレータ部116の一端に設けられたOリング117に結合されて軸方向の固定と気密保持を行うフランジ114aを有する。ローダノズル115は、キャピラリ110の内部に挿入され、図示しない物質充填手段から所定の物質を充填するガラス管である。マニピュレータ部116の他端には圧力調整機構120の圧力管126が固定される。マニピュレータ部116はプラスチック製で内部には流路118が形成されている。
【0024】
圧力調整機構120はマニピュレータ部116を介してキャピラリ110内の圧力を制御する。圧力調整機構120は、加圧手段121aと減圧手段121bとを有する。加圧手段121aは、正圧用ポンプ122a、正圧を一定に維持する圧力調整弁123a、吐出用の正圧を加えるタンク124a、三方向切替弁125、圧力管126を含む。減圧手段121bは、負圧用ポンプ122b、負圧を一定に維持する圧力調整弁123b、吸引用の負圧を加えるタンク124b、三方向切替弁125を含む。圧力調整機構120は各部に当業界で周知の構造を適用することができるため、詳しい説明は省略する。
【0025】
三方向切替弁125は加圧手段121aと減圧手段121bに共通に使用され部品点数を抑えている。三方向切替弁125は加圧手段121aと減圧手段121bのどちらかを選択する。制御系180の制御部182は、注射針112の注入時に加圧手段121aが選択され、注射針112の洗浄時に減圧手段121bが選択されるように、三方向切替弁125の切替動作を制御する。このような自動切替は操作者の負担を軽減する。
【0026】
圧力管126は一端が三方向切替弁125に接続され、他端がマニピュレータ部116の流路118に接続されている。流路118は注射針112の注射孔112aに接続されている。圧力管126は三方向切替弁125によって選択された加圧手段121a又は減圧手段121bのどちらかの圧力を流路118に伝達する。
【0027】
加圧手段121aは、内部に物質や細胞が詰まった状態での洗浄や物質の注入の際に使用される。
【0028】
減圧手段121bにより、後述する混合ガスラジカルを注射針112の内部に引き込むことができる。好ましくは、図2に示すOリング117直後の注射針112の注射孔112aの内面全部に引き込むことが好ましい。この結果、洗浄効果である殺菌、滅菌及び濡れ性の向上を注射針112の外面だけでなく内面にも及ぼすことができる。殺菌及び滅菌効果により、その後の注入動作におけるコンタミを防止することができる。また、濡れ性が向上するので円滑な物質注入動作を確保することができる。
【0029】
本実施例では、加圧手段121aが物質を細胞Cを損傷しないように注入する吐出力と減圧手段121bが酸素ラジカルを所定の位置までに引き込むための吸引力をシミュレーションや実験で予め設定されている。
【0030】
キャピラリ110は、キャピラリ駆動系130に接続されて駆動される。シャーレ140を固定支持するシャーレ駆動系150とキャピラリ駆動系130の少なくとも一方は、キャピラリ110と細胞Cとの位置及び姿勢を変化させる調節手段を有する。位置は、例えば、XYZ方向の一又は複数の位置であり、姿勢は、例えば、XYZ方向の各軸周りの一又は複数の角度である。本実施例では、シャーレ駆動系150はXY平面内でシャーレ140を移動するXYテーブルを有し、キャピラリ駆動系130はその他の方向の移動又は微調節機能を有する。
【0031】
キャピラリ駆動系130は、第1及び第2の移動手段と調節手段とを有する。
【0032】
第1の移動手段は、キャピラリ110を設定された方向(かかる方向を本実施例では「A軸方向」又は「挿入方向」と呼ぶ場合もある。)に移動させる。第1の移動手段は、キャピラリ110が固定され、キャピラリ110をA軸方向に移動するキャピラリ挿抜直動テーブル(A軸テーブル)を含む。
【0033】
第2の移動手段は、キャピラリ110を所定の位置と洗浄位置との間で移動させる。所定の位置は、特に限定されないが、例えば、キャピラリ110がA軸方向においてシャーレ140の上空にある注入準備位置であるか、注入動作終了後にキャピラリ110が復帰するホームポジションである。図1では、左側のキャピラリ110の位置が所定の位置で、右側のキャピラリ110の位置が洗浄位置である。
【0034】
第2の移動手段は、図1では直線的に延びる案内軸132と、キャピラリ110に固定されて案内軸132に沿って移動可能でキャピラリ110に固定された図示しない可動部134と、キャピラリ110の保持部114の窪みを固定するV字ブロック136とを有する。また、第2の移動手段は図示しないモータも有する。
【0035】
第2の移動手段は、案内軸132と可動部134に、ラックとモータ軸に固定されたピニオンのような機械的手段を適用してもよいし、リニアモータのような磁気的手段を適用してもよいし、その他の手段を適用してもよい。第2の移動手段による移動は、図1では、案内軸132に沿った一方向の直線移動であるが、多方向の直線移動や回転移動が含まれていてもよい。このような移動機構は当業界で周知のいかなる構成をも適用することができる。例えば、第2の移動手段は、注射針112を洗浄位置に移動した後で所定角度だけ回転させるなどである。係る回転により、後述するように、混合ガスラジカルの照射方向(図1で示す矢印方向)とキャピラリ110の軸方向とが一致又は平行になり、混合ガスラジカルを注射針112内部に引き込み易くなるからである。
【0036】
また、本実施例は、第2の移動手段を設けてキャピラリ110を洗浄位置に移動しているが、洗浄手段160を移動する移動手段を設けてホームポジション又はその他の位置でキャピラリ110を洗浄してもよい。また、第2の移動手段と洗浄手段160の移動手段を設けてキャピラリ110と洗浄手段160の両方を移動してもよい。洗浄手段160を移動する場合は、後述するように洗浄手段160の全部を搭載しなくてもよい。
【0037】
調節手段は、キャピラリ110の細胞Cに対する位置及び姿勢を変化させる。図1の例では、「A軸方向」はキャピラリ110の軸方向と一致している。調節手段は、図示しないキャピラリXY軸と、キャピラリZ軸と、β軸テーブルと、γ軸テーブルと、α軸テーブルとを有する。図示しないキャピラリXY軸は、キャピラリ110をXY方向に微調節する。図示しないキャピラリZ軸は、キャピラリ110をZ軸方向に移動する。図示しないβ軸テーブルは、キャピラリ110をY軸周り(本実施例では「β軸方向」ともいう。)に回転する。図示しないγ軸テーブルは、キャピラリ110をZ軸周り(本実施例では「γ軸方向」ともいう。)に回転する。γ軸テーブルはシャーレ140の周りに設けられ、例えば、中空円板形状を有する。図示しないα軸テーブルは、X軸周り(本実施例では「α軸方向」ともいう。)にキャピラリを回転する。
【0038】
シャーレ140は複数の細胞Cを収納する容器であり、図1には省略されている捕獲部142を有する。但し、細胞Cは増殖時にシャーレ面に付着するため、捕獲部142を設けるかどうかは選択的である。シャーレ140は、液体L及びそれに浮遊する複数の細胞Cを収納する円筒形状の水槽であり、例えば、ガラスやプラスチックから構成される。シャーレ140は別の実施例では流路を構成する容器に置換される。シャーレ140には、細胞C及び液体Lが供給される図示しない一又は複数の供給部に接続される。
【0039】
シャーレ140に満たされる液体Lの量は、通常時は細胞Cが捕獲部142に接触せずに浮遊することができ、吸引時には細胞Cが捕獲部142上に拘束される量である。また、後述する吸引口143から液体Lは捕獲部142内に流入するため、その後も細胞Cが捕獲部142に接触せずに浮遊することができるのに十分な量がシャーレ140に供給される必要がある。
【0040】
シャーレ140には液体Lの高さを検知するセンサが設けられ、液体の量が一定の高さ以下になった場合には制御系180が図示しない供給部から液体Lが供給する。シャーレ140には、所定の物質が注入された細胞(即ち、処理済の細胞)を後段の回収部に搬送する流路が接続されていてもよい。
【0041】
捕獲部142は、図3に示すように、シャーレ140の内面に適合する円筒形状の部材であり、細胞Cを捕獲する。捕獲部142は、液体L及び細胞Cよりも比重が大きく、液体Lを汚染しない材料(例えば、ガラスやプラスチック)から構成される。捕獲部142は、シャーレ140の一部であってもよい。ここで、図3は、シャーレ140の詳細な構成を示す概略断面図である。
【0042】
捕獲部142は、複数の(図3では4つの)同一寸法の吸引口143を有する。吸引口143は、細胞Cを吸引及び捕獲するための直径数μm程度の穴である。本実施例では、4つの吸引口143の中心は正方形の頂点に対応するが、吸引口143の配置は単なる例示である。吸引口143の数は同時に捕獲可能な細胞Cの最大数である。吸引口143は、細胞Cの吸引・吐出、液体Lの吐出が可能であり、圧力調整機構145に接続されている。また、シャーレ140の内部には流路144が形成されており、各吸引口143は流路144に接続されている。
【0043】
流路144は、図4(a)に示すように、全ての吸引口143に共通に接続された円板状の空洞部144aと、空洞部144aに一端が接続され他端が圧力調整機構145に接続された円柱状の貫通孔140bとを有する。この場合、全ての吸引口143には同一の圧力が同時に加えられ、独立した圧力制御は得られない。
【0044】
より好ましい実施例では、流路144は、図4(b)に示すように、各吸引口143に一端が接続され他端が別個の圧力調整機構145に接続された円柱形状の貫通孔140bとを有する流路144Aに置換される。この場合、各吸引口143には別個独立に圧力が加えられるために、独立した圧力制御が可能であるが、吸引口143毎に圧力調整機構145を設ける必要がある。
【0045】
更に好ましい実施例では、流路144は、図4(c)に示すように、各吸引口143に一端が接続され他端が吸引口143を選択するための図示しない制御弁を介して同一の圧力調整機構145に接続された円柱形状の貫通孔140bとを有する流路144Bに置換される。この場合、各吸引口143には別個独立に圧力が加えられる。吸引口143は制御弁が切り替える。独立した圧力制御が可能であり、全ての吸引口143に対して一の圧力調整機構145のみを設ければよいという長所がある。制御弁の動作は制御部182が制御する。
【0046】
圧力調整機構145は、加圧手段145aと減圧手段145bとを有する。
【0047】
加圧手段145aは、正圧用ポンプ146a、正圧を一定に維持する圧力調整弁147a、吐出用の正圧を加えるタンク148a、三方向切替弁149を含む。減圧手段145bは、負圧用ポンプ146b、負圧を一定に維持する圧力調整弁147b、吸引用の負圧を加えるタンク148b、三方向切替弁149を含む。圧力調整機構145は圧力調整機構120と同様の構成を有するため詳しい説明は省略する。
【0048】
三方向切替弁149は加圧手段145aと減圧手段145bの一方の流路を選択する。制御系180の制御部182は、吸引口143の吐出時に加圧手段145aが選択され、吸引口143の吸引時に減圧手段145bが選択されるように、三方向切替弁149の切替動作を制御する。自動切替動作によって操作者の負担を軽減することができる。
【0049】
圧力管141は一端が三方向切替弁149に接続され、他端が流路144に接続されている。流路144は上述の流路144A又は144Bでもよい。圧力管141は三方向切替弁149によって選択された加圧手段145a又は減圧手段145bのどちらかの圧力を流路144に伝達する。
【0050】
加圧手段145aは吸引口143に圧力を加えて液体Lを噴出する。これにより、捕獲した細胞Cを解放したり、凝集した複数の細胞Cを分離したりすることができる。加圧手段145aは、内部に物質や細胞が詰まった状態での洗浄にも使用される。
【0051】
減圧手段145bは微小物体を固定するために従来から備わっている減圧手段をそのまま使用することができる。減圧手段145bにより、後述する混合ガスラジカルを吸引口143の内部に引き込むことができる。この結果、洗浄効果である殺菌、滅菌及び濡れ性の向上を吸引口143の内面に及ぼすことができる。殺菌及び滅菌効果により、その後の注入動作におけるコンタミを防止することができる。また、濡れ性が向上するので細胞Cを確実に捕獲することができる。減圧手段145bが流路144A又は144Bによって個々の吸引口143にのみ作用すれば、全ての吸引口143に作用する場合よりも混合ガスラジカルを所望の吸引口143を引き込み易くなる。
【0052】
また、本実施例の制御部182は加圧手段145aの吐出力と減圧手段145bの吸引力を制御する。細胞Cを損傷しない程度に捕獲する吸引力、酸素ラジカルを所定の位置までに引き込むための吸引力、処理済みの細胞Cを解放する吐出力はシミュレーションや実験で予め設定されているが、細胞Cを吸引口に引き寄せる際の吸引力や凝集した細胞Cを分散させるための液体Lの吐出力は調節可能であり、これにより、捕獲動作の効率を高めることができる。
【0053】
シャーレ駆動系150は、シャーレ140を水平に固定及び支持する手段であり、XYテーブルを有する。XYテーブルはX軸テーブル152とY軸テーブル154とを含む。X軸テーブル152は、シャーレ140を図1の紙面に平行な方向に移動する。Y軸テーブル154は、シャーレ140を図1の紙面に垂直な方向に移動する。XYテーブルは、水平に維持されて固定された円板形状を有し、制御系180によってXY平面内で大まかに位置決めされる。キャピラリ110と細胞Cとの微調節はキャピラリ駆動系130によって行われる。
【0054】
図示しない観察系は、細胞Cの形状を計測する計測手段と、細胞Cの目標挿入位置にキャピラリ110が到達したかどうか、及び、物質の注入が終了したかを観察するための状況観察手段とを有する。計測手段は、細胞Cの姿勢情報を取得する光学系と、画像処理部と、CCDなどの撮像手段とを含み、計測器として具体化される。
【0055】
洗浄手段160は、注射針112とシャーレ140の吸引口143にプラズマにより活性化した洗浄用ガス(混合ガスラジカル)を照射する。共通の洗浄手段を使用すれば部品点数を抑えることができるが、別の実施例では、注射針112を洗浄する洗浄手段160と吸引口143を洗浄する洗浄手段とは別個のものである。
【0056】
注入装置100は洗浄手段160を備えているので、注入直前に洗浄を行うことができる。この点、キャピラリ110を予め、例えば、工場出荷時に、洗浄しておくことも考えられる。しかし、洗浄効果は永久的ではなく最初又は何回目かの注入前に殺菌、滅菌及び濡れ性向上の洗浄効果が消失している場合があるからである。洗浄効果により薬剤の注入が安定する。
【0057】
同様に、注入装置100は、細胞Cの吸引前に吸引口143の洗浄を行うことができる。吸引口143を予め、例えば、工場出荷時に、洗浄しておくだけでは吸引直前に殺菌、滅菌及び濡れ性向上の洗浄効果が消失している場合があるからである。洗浄効果により細胞Cの吸引口143における捕獲が安定になるため、注入動作が安定になる。
【0058】
また、注射針112の洗浄は第2の移動手段が移動することにより自動的に行われ、手動洗浄ではないために操作者の負担を軽減する。また、予め洗浄効果を確認しておくことで、手動洗浄では発生し得る洗浄ムラを防止して洗浄の信頼性を高めることができる。但し、本発明は注射針112を移動する実施例に限定されず、注射針112及び/又は洗浄手段160を移動すれば足りる。吸引口143の自動洗浄については後述する。
【0059】
洗浄手段160は、ガス供給手段161と、プラズマ発生手段167とを有する。複数の洗浄手段160が設けられる場合に、ガス供給手段161が共通に使用されてもよい。
【0060】
ガス供給手段161は、図5(a)に示すように、ガス供給源162a及び162bと、逆止弁163a及び163b、圧力計付き開閉弁164a及び164b、ガス混合器165、ガス流量計166を有する。ガス供給源162aは反応ガスとしての酸素ガスを貯蔵すると共に図1に示す矢印方向に酸素ガスを連続的に噴出してこれを供給する。ガス供給源162bはプラズマの効率を高めるための不活性ガスとしてのアルゴンガスを貯蔵すると共に図1に示す矢印方向にアルゴンガスを連続的に噴出してこれを供給する。なお、ガス流量計166とプラズマ反応管168dとの間はチューブで接続されていてもよい。
【0061】
反応ガス又は処理ガスはプラズマにより活性種となり、洗浄、殺菌、滅菌、濡れ性の向上などの機能を発揮する。注射針112の硝材の汚れは高分子の場合が多く、酸素ラジカルは高分子中の炭素と結合してCOとしてこれを除去する効果がある。但し、反応ガスは酸素ガスに限定されるものではなく、水素など他の種類のガスであってもよい。不活性ガスはアルゴンに限定されるものではなく、ネオン、キセノン、ヘリウム、ラドン、クリプトンなど他の種類のガスであってもよい。
【0062】
プラズマ発生手段167として、図1及び図5(a)は、誘電結合型(ICP)プラズマ発生装置を使用している。プラズマ発生手段167が、高周波電源168aと、整合回路(マッチングボックス)168bと、誘導コイル168cと、プラズマ反応管168dとを有する。但し、本発明は、プラズマ発生手段をICPに限定するものではなく、図5(b)に示すマイクロ表面波プラズマ発生装置その他のプラズマ発生手段を使用することができる。但し、プラズマ発生手段167は、減圧環境ではなく大気中でプラズマを発生することができることが好ましい。図5(b)に示すプラズマ発生手段167Bは、マイクロ波発信機169a、サーキュレータ169b、方向性結合器169c、テーパー導波管169d、プラズマ反応管169eを有する。なお、誘電結合型プラズマ発生装置やマイクロ表面波プラズマ発生装置は従来の構造を使用することができるので、ここでは詳しい説明は省略する。
【0063】
図1乃至3、6及び7は、混合ガスラジカルの照射範囲IRを炎のように描いている。これは、図1に矢印で示すように、酸素ガス、アルゴンガスが矢印で示す風の向きに噴射されている。かかる噴射方向とキャピラリ110の軸方向が一致又は平行になることが好ましい。これは、噴射方向に正対することによって注射孔112aの内部に混合ガスラジカルを引き込み易くなるからである。
【0064】
図3では、キャピラリ駆動系130の第2の移動手段の案内軸132に可動部138を介してプラズマ発生手段167を固定している。案内軸132とキャピラリ110の可動部と同様に、案内軸132と可動部138の構造は限定されない。可動部138は案内軸132に沿って図3の水平方向に移動可能である。吸引口143の洗浄はかかる第2の移動手段が移動することにより自動的に行われる。手動洗浄ではないために操作者の負担を軽減する。また、予め洗浄効果を確認しておくことで、手動洗浄では発生し得る洗浄ムラを防止して洗浄の信頼性を高めることができる。但し、本発明は洗浄手段160を移動する実施例に限定されず、シャーレ140及び/又は洗浄手段160のプラズマ照射部(168b〜168d)を移動すれば足りる。なお、図1、3、6及び7では整合回路168bを省略している。
【0065】
洗浄時に注射針112や吸引口143をプラズマ熱による変形や損傷から保護するためには照射範囲IRの温度分布を予め測定して変形しない位置に注射針112や吸引口143を配置する必要がある。
【0066】
そこで、温度検出系170は、洗浄用ガスである酸素ラジカルの照射範囲IRにおける温度分布を検出し、その温度情報を制御部182に通知する。図1に示す温度検出系170は、図6(a)に示す温度検出系170A、図6(b)に示す温度検出系170B、図6(c)に示す温度検出系170Cのいずれも適用可能であるし、これらに限定されるものではない。温度検出系170A乃至Cは、熱電対172aを異なる空間配置を示す概略側面図である。
【0067】
温度検出系170Aは、図6(a)に示すように、正方形の4つの頂点位置に配置された4本の支柱171aと所定間隔で配置されたリング171bとを有する構造体171と、と有する。一のリング171bに複数の熱電対172aが対称な位置に固定され、酸素ラジカルの照射範囲IRの温度T、T、T・・・を同一リング171bに固定された熱電対172aの平均値として検出する。172はシース熱電対の素線である。
【0068】
温度検出系170Bは、図6(b)に示すように、複数の熱電対172aをパイプ173に取り付けて、パイプ173に熱電対172aに対応する位置に穴を開けて熱電対172aを露出している。素線172をパイプ173に取り付けるのは素線172を固定するためであるが、素線172の直線性が確保されれば係る固定は必ずしも必要ではない。
【0069】
温度検出系170Cは、図6(c)に示すように、複数の熱電対172aを石英ガラス管174に取り付けて、ガラス管174に熱電対172aに対応する位置に穴を開けて熱電対172aを露出している。
【0070】
プラズマ反応管168dを通過した混合ガスラジカルは四方に拡散するため、温度検出系170A及びBは実際の照射範囲IRに近い温度分布を検出する。温度検出系170Cはガラス管174が混合ガスラジカルの流路を規定しているので実際の照射範囲IRの温度分布よりは高い温度分布を検出するだろう。
【0071】
図7は、2つの洗浄手段160と2つの温度検出系170Aを有する注入装置100Aの概略断面図である。一方の洗浄手段160は、準備位置近傍で移動可能に設けられ、対応する温度検出系170Aは準備位置にある注入装置フレーム102に設けられる。もう一方の洗浄手段160(のプラズマ発生手段170)は可動部138に搭載され、対応する温度検出系170Aはシャーレ駆動系150に設けられる。2つの温度検出系170Aは、いずれも照射範囲IRの温度を検出した後で洗浄を行う。
【0072】
キャピラリ110は、下端を中心として傾斜可能なL字形状の支持部材104に搭載される。具体的には、支持部材104は保持部114を保持する。その後、キャピラリ110は準備位置で洗浄され、その後、ローダノズル115が挿入されて注入物質が充填される。図7は、洗浄中にローダノズル115がキャピラリ110に挿入されているが、実際には、ローダノズル115は洗浄後にキャピラリ110に挿入される。注入物質を充填後にローダノズル115はキャピラリ110から除去される。その後、支持部材104は下端を中心に矢印のように反時計回りに回転する。次いで、紙面の奥側から手前側にV字ブロック136が移動し、キャピラリ110の保持部114を保持及び位置決めする。その後、マニピュレータ部116が右下方向に移動してOリング117がフランジ部114aと結合する。
【0073】
制御系180は、制御部182と、メモリ184と、タイマ186とを有する。
【0074】
制御部182は、観察系の計測手段による計測結果からキャピラリ110が挿入されるべき細胞Cの挿入方向及び挿入位置を算出する。次に、制御部182は、算出された挿入方向及び挿入位置に基づいてキャピラリ駆動系130の第1の移動手段と調節手段、及び、シャーレ駆動系150の駆動を制御する。
【0075】
また、制御部182は、温度検出系170から洗浄用ガス(混合ガスラジカル)の温度情報を取得する。制御部182は、かかる温度情報に基づいて、注射針112及び吸引口143と洗浄用ガスの照射部との距離を、注射針112及び吸引口143がプラズマ熱で変形や損傷しないように、制御する。必要があれば、制御部182は洗浄手段160の移動手段や洗浄手段160のガス供給手段161のガス流量計166やプラズマ発生手段167の高周波電源168aを制御してもよい。その他、制御部182は、注入装置100の各部(細胞Cの吸引/吐出部、液体Lの供給部、物質の注入部など)を制御する。
【0076】
メモリ184は、制御部182が実行する図8乃至11を参照して後述する制御方法や各種データを格納する。各種データは、照射範囲IRの温度分布情報、注射針112や吸引口143が変形しない照射時間や照射温度、洗浄条件と洗浄効果との関係、ガス流量計166による流量、高周波電源168aの電圧などを含む。
【0077】
タイマ186は、所定の時間、例えば、プラズマ照射時間、を計数する。
【0078】
以下、図8乃至図10を参照して、本実施例の洗浄方法について説明する。ここで、図8は、制御部182による洗浄方法を示すフローチャートである。
【0079】
まず、制御部182は洗浄条件を決定する(ステップ1100)。ステップ1100の詳細を図9に示す。
【0080】
まず、制御部182は必要な耐熱特性情報をメモリ184に格納する(ステップ1102)。耐熱特性情報は、注射針112や吸引孔143周囲の材質(ガラスやプラスチック)が変形や損傷しないプラズマ照射温度や照射時間に関する情報を含む。
【0081】
次に、制御部182は必要な洗浄情報をメモリ184に格納する(ステップ1104)。洗浄情報は、洗浄範囲、洗浄力、洗浄効果に関する情報を含む。洗浄範囲は、例えば、孔部材である注射針112はシャーレ140の外面と内面の洗浄すべき範囲、吸引口143の数、座標をいう。洗浄力は、負圧力、プラズマ密度、洗浄時間などのパラメータを有する。負圧力は、洗浄時に孔部材内部の所定範囲に混合ガスラジカルを引き込むのに必要な負圧力である。プラズマ密度は、高周波電源168aの電圧に依存する。洗浄効果は、求められる殺菌、滅菌、濡れ性の向上の効果を含む。また、洗浄力は通常使用回数と共に低下するから、制御部182は使用回数を考慮して洗浄情報を設定してもよい。例えば、初回注入前の洗浄力よりも100回注入した注射針112の洗浄力を数倍にするなどである。
【0082】
次に、制御部182は照射範囲IRの温度分布情報を温度検出系170から取得する(ステップ1106)。最後に、制御部182は、温度検出系170が検出した温度情報から照射時間、照射位置、その他の照射条件を決定する(ステップ1108)。制御部182は、照射位置として、孔部材のプラズマ熱による変形や損傷がない位置を選択するが、当該照射位置で所期の洗浄効果が確保されるようにしなければならない。この場合、制御部182は、当該照射位置でのプラズマ密度を推定し、洗浄力を推定する。
【0083】
次に、決定された洗浄条件に基づいて洗浄を行う(ステップ1200)。ステップ1200の詳細を図10に示す。
【0084】
まず、制御部182は洗浄命令があったかどうかを判断する(ステップ1202)。洗浄命令は、独立した洗浄命令であってもよいが、細胞Cへの注入や細胞懸濁液の投入についての外部入力であってもよい。これにより、物質の吐出/吸引動作直前の洗浄を自動化することができるからである。
【0085】
次に、制御部182は、キャピラリ駆動系130とシャーレ駆動系140を介して、洗浄対象としての孔部材と洗浄手段160の少なくとも一方を洗浄位置に移動させる(ステップ1204)。洗浄位置が図1に示す右側の位置に限定されない。洗浄手段160を移動させる場合、洗浄手段160全体を移動させなくても上述のように、洗浄用ガスである混合ガスラジカルの照射部のみを移動させればよい。また、移動とは姿勢調節を含む意味である。即ち、洗浄用ガスの照射方向を孔部材の細孔の長手方向に一致又は平行にすることが好ましい。これにより、洗浄用ガスの孔部材内部への引き込みが容易になるからである。
【0086】
次に、制御部182は、移動対象である前記少なくとも一方が所定位置に移動した結果、孔部材が所定の照射位置に到達したかどうかを判断する(ステップ1006)。制御部182は、孔部材を直接図示しない検出部によって検出してもよいし、移動手段からの情報、例えば、モータの回転角度、から判断してもよい。
【0087】
次に、制御部182は、洗浄手段160のガス供給手段161とプラズマ発生手段167を起動すると共に(ステップ1208)、減圧手段121b又は145bを起動する(ステップ1210)。減圧手段145bは個別の吸引口143毎に動作することが好ましい。これにより、孔部材の洗浄が開始する。ステップ1206が孔部材を所定の照射位置に配置しているので、孔部材はプラズマ熱による変形や損傷から保護される。このように、洗浄は移動ステップ(ステップ1204)後に自動的に行われ、手動洗浄ではないために操作者の負担を軽減することができる。また、予め洗浄効果を確認しておくことで、手動洗浄では発生し得る洗浄ムラを防止して洗浄の信頼性を高めることができる。
【0088】
次に、制御部182は、設定された照射時間が経過したかどうかをタイマ186の計時に基づいて判断する(ステップ1212)。制御部182は設定された照射時間が経過するまでプラズマ洗浄を継続する。制御部182は設定された照射時間が経過したと判断すると(ステップ1212)、洗浄手段160のガス供給手段161とプラズマ発生手段167を停止すると共に(ステップ1214)、減圧手段121b又は145bを停止する(ステップ1216)。
【0089】
次に、制御部182は、洗浄が終了したかどうかを判断する(ステップ1218)。例えば、孔部材がシャーレ140であれば、全ての吸引口143を洗浄まで洗浄は繰り返される。従って、制御部182は、一の吸引口143の洗浄が終了すると、ステップ1206に帰還し、隣接する未洗浄の吸引口143に照射位置を変更して処理を継続する。
【0090】
制御部182は、洗浄が終了したと判断すると(ステップ1218)、キャピラリ駆動系130とシャーレ駆動系140を介して、前記少なくとも一方を元の位置に移動させる(ステップ1220)。
【0091】
再び図8に戻って、次に、物質の注入(吐出)又は吸引動作を行う(ステップ1300)。このように、本実施例では、吐出又は吸引ステップ(ステップ1300)の直前に孔部材である注射針112やシャーレ140を洗浄する(ステップ1200)。孔部材を予め、例えば、工場出荷時に、洗浄しておくだけでは吐出/吸引直前に殺菌、滅菌及び濡れ性向上の洗浄効果が消失している場合があるからである。洗浄効果により物質の吐出/吸引が安定する。注射針112であれば直接に注入(吐出)が安定する。吸引口143であれば細胞Cの吸引又は固定が安定するので注入動作が安定することになる。
【0092】
ステップ1300は、洗浄対象が注射針112であれば、遺伝子や薬剤などの物質をキャピラリ110に充填し、キャピラリ110を第1の移動手段及び調整手段で移動・調整し、加圧手段121aを制御して注射針112から物質を細胞Cに注入する。洗浄により注入動作は安定する。また、ステップ1300は、洗浄対象がシャーレ140の吸引口143であれば、細胞懸濁液をシャーレ140に投入し、減圧手段145bを動作させて細胞Cを吸引する。洗浄により吸引動作は安定するのでその後の物質注入動作も安定する。
【0093】
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明はその要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、本実施例は、孔部材が注射針112やシャーレ140としているが、内視鏡その他の細孔を有する器具であってもよい。
【0094】
本発明は更に以下の事項を開示する。
【0095】
(付記1) 物質を吐出又は吸引する細孔を有する孔部材と、前記孔部材にプラズマにより活性化した洗浄用ガスを照射する洗浄手段と、前記孔部材と前記洗浄手段の少なくとも一方を移動する移動手段とを有することを特徴とする装置。(1)
(付記2) 前記装置は、微小物体内に注射針を挿入して当該注射針から物質を前記微小物体に注入する注入装置であり、前記孔部材は前記注射針であることを特徴とする付記1記載の装置。(2)
(付記3) 前記装置は、容器の吸引口にそれぞれ保持された微小物体内に注射針を挿入して当該注射針から物質を前記微小物体に注入する注入装置であり、前記孔は吸引口であり、前記孔部材は前記容器であることを特徴とする付記1記載の装置。(3)
(付記4) 前記孔部材の内部に負圧を加える減圧手段を更に有することを特徴とする付記1記載の装置。(4)
(付記5) 前記孔部材は複数の孔を有し、前記減圧手段は前記複数の孔に別個独立に負圧を加えることを特徴とする付記4記載の装置。
【0096】
(付記6) 前記孔部材の内部に負圧を加える減圧手段と、前記孔部材の内部に正圧を加える加圧手段と、前記減圧手段及び前記加圧手段を切り替える切替手段とを有する圧力調整機構と、前記切替手段による切替動作を前記注射針の洗浄時か前記孔部材の動作時かに応じて制御する制御部とを更に有することを特徴とする付記1記載の装置。
【0097】
(付記7) 前記孔部材は複数の孔を有し、前記圧力調整機構は前記複数の孔に別個独立に圧力を加えることを特徴とする付記6記載の装置。
【0098】
(付記8) 前記孔又は前記孔部材と前記洗浄用ガスの照射部との距離を前記洗浄用ガスの温度情報に基づいて制御する制御部を更に有することを特徴とする付記1記載の装置。(5)
(付記9) 前記洗浄用ガスの温度を検出し、前記温度情報を前記制御部に通知する検出手段を更に有することを特徴とする付記8記載の装置。(6)
(付記10) 前記洗浄手段は、酸素供給源を含むことを特徴とする付記1乃至9のうちいずれか一項記載の装置。
【0099】
(付記11) 孔部材が有する細孔から物質を吐出又は吸引するステップと、前記吐出/吸引ステップの直前に前記孔部材を洗浄するステップとを有し、当該洗浄ステップは、前記孔部材にプラズマにより活性化した洗浄用ガスを照射するステップと、前記孔部材と前記洗浄用ガスの照射部の少なくとも一方を移動するステップとを有することを特徴とする方法。(7)
(付記12) 前記吐出/吸引ステップは、微小物体内に注射針を挿入して当該注射針から物質を前記微小物体に注入するステップであり、前記孔部材は注射針であることを特徴とする付記11記載の方法。
【0100】
(付記13) 前記方法は、容器の吸引口にそれぞれ保持された微小物体内に注射針を挿入して当該注射針から物質を前記微小物体に注入する方法であり、前記吐出/吸引ステップは、前記微小物体を容器の吸引口に吸引するステップであり、前記孔部材は前記容器であり、前記孔は前記吸引口であることを特徴とする付記11記載の方法。
【0101】
(付記14) 前記洗浄ステップは、前記注入ステップの命令を受信したかどうかを判断するステップと、当該判断ステップが受信したと判断した場合に自動的に前記照射ステップ及び前記移動ステップを実行することを特徴とする付記11記載の方法。
【0102】
(付記15) 前記洗浄ステップは、前記孔部材が洗浄されている間に前記孔部材の内部に負圧を発生させるステップを更に有することを特徴とする付記11記載の方法。(8)
(付記16) 前記洗浄ステップは、前記孔部材が洗浄されている間に前記孔部材の内部に正圧を発生させるステップを更に有することを特徴とする付記11記載の方法。(9)
(付記17) 前記洗浄用ガスの照射部と前記孔部材との距離を前記洗浄用ガスの温度情報に基づいて制御するステップを更に有することを特徴とする付記11記載の方法。
【0103】
(付記18) 前記洗浄用ガスの温度を検出するステップを更に有し、前記制御ステップは前記検出ステップの検出結果に基づいて制御することを特徴とする付記17記載の方法。
【0104】
(付記19) 前記洗浄用ガスの照射方向を前記孔部材の前記細孔の長手方向に一致又は平行にするステップを更に有することを特徴とする付記11記載の方法。(10)
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明の一実施例としての注入装置の概略断面図である。
【図2】図1に示すキャピラリの圧力調整機構を説明する概略断面図である。
【図3】図1に示す注入装置においてシャーレ近傍の構造を詳細に示す概略断面図である。
【図4】図4(a)乃至図4(c)は、図3に示すシャーレに形成される、異なる流路例の透過平面図である。
【図5】図5(a)及び図5(b)は、図1又は図3に注入装置に適用可能な洗浄手段の例を示す概略ブロック図である。
【図6】図6(a)乃至図6(c)は、図1又は図3に注入装置に適用可能な温度検出系の例を示す概略斜視図である。
【図7】図1に示す注入装置の変形例の概略断面図である。
【図8】本発明の一実施例の洗浄方法を説明するフローチャートである。
【図9】図8に示す洗浄条件決定ステップの詳細を示すフローチャートである。
【図10】図8に示す洗浄ステップの詳細を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0106】
100 注入装置
110 微小針(キャピラリ)
121b、145b 減圧手段
130 キャピラリ駆動系
140 シャーレ(容器)
150 シャーレ駆動系
160 洗浄手段
182 制御部
【出願人】 【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
【出願日】 平成18年7月24日(2006.7.24)
【代理人】 【識別番号】100110412
【弁理士】
【氏名又は名称】藤元 亮輔


【公開番号】 特開2008−22805(P2008−22805A)
【公開日】 平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願番号】 特願2006−201013(P2006−201013)