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【発明の名称】 細胞変態装置および細胞変態解析装置
【発明者】 【氏名】鈴 木 和 拓

【氏名】本 多 浩 大

【氏名】飯 田 義 典

【氏名】江 崎 瑞 仙

【氏名】成 瀬 雄二郎

【氏名】舟 木 英 之

【氏名】板 谷 和 彦

【氏名】内古閑 修 一

【要約】 【課題】生体に悪影響を及ぼす有害細胞を破壊することができる細胞変態装置および細胞が破壊するまでの変態を解析することができる細胞変態解析装置を提供することを可能にする。

【構成】マトリクス状に配置された複数のキャビティ22を有する基板11と、複数のキャビティに対応してキャビティ上に設けられ、それぞれがダイオード4を有し、細胞が含まれる媒液を保持可能な複数の媒液保持手段2と、媒液保持手段のそれぞれの周囲に設けられ、一端が前記ダイオードのアノードに接続する第1の配線を有し、媒液保持手段をキャビティ上で支持する第1のメカニカル支持体25と、媒液保持手段のそれぞれの周囲に前記第1のメカニカル支持体と絶縁して設けられ、一端がダイオードのカソードに接続する第2の配線を有し、媒液保持手段をキャビティ上で支持する第2のメカニカル支持体26と、を備えている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリクス状に配置された複数のキャビティを有する基板と、
複数の前記キャビティに対応して前記キャビティ上に設けられ、それぞれがダイオードを有し、細胞が含まれる媒液を保持可能な複数の媒液保持手段と、
前記媒液保持手段のそれぞれの周囲に設けられ、一端が前記ダイオードのアノードに接続する第1の配線を有し、前記媒液保持手段を前記キャビティ上で支持する第1のメカニカル支持体と、
前記媒液保持手段のそれぞれの周囲に前記第1のメカニカル支持体と絶縁して設けられ、一端が前記ダイオードのカソードに接続する第2の配線を有し、前記媒液保持手段を前記キャビティ上で支持する第2のメカニカル支持体と、
前記基板上に設けられ、前記第1のメカニカル支持体の前記第1の配線の他端と電気的に接続される第1の信号配線を有し、前記第1のメカニカル支持体を前記キャビティ上で支持する第3のメカニカル支持体と、
前記基板上に設けられ、前記第2のメカニカル支持体の前記第2の配線の他端と電気的に接続される第2の信号配線を有し、前記第2のメカニカル支持体を前記キャビティ上で支持する第4のメカニカル支持体と、
を備えたことを特徴とする細胞変態装置。
【請求項2】
前記複数の媒液保持手段のそれぞれに個別に振動を印加する振動印加手段を更に備えたことを特徴とする請求項1記載の細胞変態装置。
【請求項3】
前記複数の媒液保持手段のそれぞれに個別に電磁波を照射する電磁波照射手段を更に備えたことを特徴とする請求項1または2記載の細胞変態装置。
【請求項4】
前記媒液保持手段の前記媒液を保持する表面には撥水性被膜が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の細胞変態装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の細胞変態装置と、
前記複数の媒液保持手段の少なくとも1つを選択する選択部と、
前記選択された媒液保持手段のダイオードに前記第1および第2信号配線を介して電圧パルスを印加する電圧パルス印加部と、
前記選択された媒液保持手段に載置された前記媒液の前記細胞の温度を検出する温度検出部と、
を備えたことを特徴とする細胞変態解析装置。
【請求項6】
前記温度検出部は、前記選択されかつ前記細胞を含む媒液が載置された媒液保持手段のダイオードの定電流下での変化と、前記選択されかつ前記細胞を含む媒液が保持されない媒液保持手段のダイオードの両端電圧の変化との差に基づいて、前記細胞の温度を検出することを特徴とする請求項5記載の細胞変態解析装置。
【請求項7】
前記選択部は前記細胞を含む媒液が載置された前記媒液保持手段を順次選択することを特徴とする請求項5または6記載の細胞変態解析装置。
【請求項8】
前記媒液保持手段のそれぞれに、前記細胞を含む媒液が保持されることを特徴とする請求項5乃至7のいずれかに記載の細胞変態解析装置。
【請求項9】
前記媒液保持手段の複数個に亘って前記細胞を含む媒液が保持されることを特徴とする請求項5乃至7のいずれかに記載の細胞変態解析装置。
【請求項10】
前記温度検出部の出力を画像化する画像作成部を更に備えたことを特徴とする請求項9記載の細胞変態解析装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞変態装置および細胞変態解析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ウイルスや細菌によって誘発される肺炎、敗血症等の細菌性疾患に対しては、ペニシリン(Penicillin)、バンコマイシン(Vancomycin)、メチシリン(Methicillin)等の生化学的な抗生物質の投与が有効である。しかしながら、この種の抗生物質においては、副作用が生じる問題点、多剤耐性菌が発現する問題点、薬品間の相互作用による副作用が生じる問題点が指摘されている。また、この種の抗生物質は、バクテリアには有効であるが、ウイルスには有効でないという問題点も指摘されている。
【0003】
一方、生体から取り出した細胞の構造、状態若しくは機能を効率良く変化させる方法として、細胞を含む流体を収納する機械振動部と、この機械振動部に収納された上記流体中の振動子の質量と上記流体の減衰摩擦係数に基づいた固有の周波数の振動を上記振動子に印加する機械振動印加手段とを備えた細胞変態装置が、知られている(例えば、特許文献1参照)。ここで、細胞の構造等を変化させるとは、具体的には、細胞の核に存在するDNA(deoxyribonucleic acid)を取り出して遺伝子組み替えを行うこと、人工的に生成されたRNA(ribonucleic acid)や蛋白質を細胞質に注入して細胞分裂を制御したりウイルスへの抵抗力を高めたりすること等が含まれる。
【0004】
また、腫瘍細胞等の癌細胞のみを選択的に加熱して破壊するか、あるいは体液を濾過して癌細胞のみを選択的に除去する方法として、癌細胞に対して選択的に結合する抗体等で構成されたリガンドを発熱体に付着させた構成の発熱素子を癌細胞に付着した状態で、この発熱素子に電磁波を照射させて、発熱素子を誘導加熱し癌細胞を破壊する癌治療装置が、知られている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2005−102619号公報
【特許文献2】特開2004−290351号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述した生体への生化学的な抗生物質の投与は生体への副作用が懸念されるばかりか、多剤耐性菌の発現の可能性が高い。このため、このような多剤耐性菌を死滅させるには、新たな抗生物質の開発や新たな抗生物質の生体への投与を余儀なくされていた。
【0006】
また、上記特許文献1には、技術分野において、ウイルスや細胞を見分けて破壊する旨の記載はされているが、具体的には、効率良く細胞の構造、状態、機能等を変化させる手法が開示されているに留まり、細胞の破壊については具体的に記載されていない。
【0007】
更に、上記特許文献2には、癌細胞の細胞膜又は細胞壁の表面に発熱素子を癌細胞に吸着させて加熱により細胞破壊を起こす作用を用いているが、細胞によっては耐熱性の高い癌細胞もあり、すべての癌細胞を効果的に破壊するには限界がある。
【0008】
また、熱起因で与えられる細胞の破壊等について、その具体的なメカニズム、効果的なパラメータについて細胞スケールであるミクロンオーダでの解析手法が確立されていない。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、生体に悪影響を及ぼす有害細胞を破壊することができる細胞変態装置および細胞が破壊するまでの細胞の変態を解析することのできる細胞変態解析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様による細胞変態装置は、マトリクス状に配置された複数のキャビティを有する基板と、複数の前記キャビティに対応して前記キャビティ上に設けられ、それぞれがダイオードを有し、細胞が含まれる媒液を保持可能な複数の媒液保持手段と、前記媒液保持手段のそれぞれの周囲に設けられ、一端が前記ダイオードのアノードに接続する第1の配線を有し、前記媒液保持手段を前記キャビティ上で支持する第1のメカニカル支持体と、前記媒液保持手段のそれぞれの周囲に前記第1のメカニカル支持体と絶縁して設けられ、一端が前記ダイオードのカソードに接続する第2の配線を有し、前記媒液保持手段を前記キャビティ上で支持する第2のメカニカル支持体と、前記基板上に設けられ、前記第1のメカニカル支持体の前記第1の配線の他端と電気的に接続される第1の信号配線を有し、前記第1のメカニカル支持体を前記キャビティ上で支持する第3のメカニカル支持体と、前記基板上に設けられ、前記第2のメカニカル支持体の前記第2の配線の他端と電気的に接続される第2の信号配線を有し、前記第2のメカニカル支持体を前記キャビティ上で支持する第4のメカニカル支持体と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の第2の態様による細胞変態解析装置は、上記記載の細胞変態装置と、前記複数の媒液保持手段の少なくとも1つを選択する選択部と、前記選択された媒液保持手段のダイオードに前記第1および第2信号配線を介して電圧パルスを印加する電圧パルス印加部と、前記選択された媒液保持手段に載置された前記媒液の前記細胞の温度を検出する温度検出部と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、生体に悪影響を及ぼす有害細胞を破壊することが可能な細胞変態装置および細胞が破壊するまでの変態を解析することが可能な細胞変態解析装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の図面の記載において、同一または類似の部分には同一または類似の符号が付してある。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0014】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態による細胞変態装置は、有害細胞が含まれる媒液にナノ粒子を混合させた混合媒液を保持する媒液保持手段と、上記混合媒液に振動を印加する振動印加手段と、上記混合媒液に熱を加える媒液加熱手段と、上記混合媒液に光波を照射する手段と、を備えている。
【0015】
ここで、有害細胞とは、生体に悪影響を及ぼす細胞であって、核を持ち細胞分裂の際に染色体構造を生ずる真核細胞、構造的に区別できる核を持たない原核細胞の双方を含む意味において使用される。具体的には、生体から摘出した癌細胞、腫瘍等の細胞(真核細胞)、ウイルス、バクテリア等の細菌の細胞(原核細胞)のいずれも「有害細胞」に含まれる。
【0016】
ナノ粒子は、例えば、10nm〜100nmの範囲内の粒径を有する微粒子体であり、
具体的には、金(Au)、シリコン(Si)等を実用的に使用することができる。
【0017】
媒液保持手段は、混合媒液を保持することができ、混合媒液に、振動、加熱、光波等を与えることができれば、その素材、形状等は、限定されない。媒液保持手段は、例えば、マイクロディッシュ、シリコン基板、石英基板等で構成されている。媒液保持手段における前記混合媒液を保持する表面上には撥水性被膜が設けられていることが好ましい。媒液保持手段の表面には、混合媒液を滴下するため、このような撥水性被膜を設けることで、ウェットな環境下での電気的な短絡という不具合を排除し、静電気力駆動による励振状態を安定にかつ確実に作り出すことができる。
【0018】
振動印加手段は、混合媒液に少なくとも振動エネルギを与えることができれば、その手
段、装置、構成等には限定されない。ここでいう振動エネルギとは、上下左右方向にナノ
粒子が振動するエネルギのことを指す。振動印加手段は、例えば、媒液保持手段に離間して配置された電圧供給体で構成されている。この電圧供給体と媒液保持手段との間に交流バイアスを印加させることで媒液保持手段を振動させてナノ粒子に振動エネルギを与えることができる。
【0019】
媒液加熱手段は、本実施形態ではダイオードであって、媒液保持手段となるマイクロディッシュに設けられ、混合媒液に熱エネルギを加える。ここでいう熱エネルギとは、上記振動印加手段により与えたナノ粒子の振動エネルギを増加させるエネルギであり、例えば、ナノ粒子が発熱するエネルギのことを指す。
【0020】
このように、本実施形態による細胞変態装置は、ナノ粒子に対して、振動エネルギと熱エネルギを与えることで、ナノ粒子が振動エネルギにより所定の方向に振動し、熱エネルギによりその振動が加速されるため、強い加速力で有害細胞に衝突させることができ、有害細胞を破壊することが可能となる。
【0021】
本実施形態による細胞変態装置は、混合媒液に磁場を印加する磁場印加手段をさらに備えていることが好ましい。磁場印加手段は、混合媒液に磁場を印加することができれば、その手段、装置、構成等には限定されない。磁場印加手段は、例えば、インダクタで構成されている。このように、混合媒液に磁場を印加することで、前記振動印加手段および媒液加熱手段により加速されたナノ粒子の方向性を所定の方向に制御することができる。そのため、より多くのナノ粒子を有害細胞に衝突させることができるため、有害細胞を破壊する確率が増加する。
【0022】
本実施形態による細胞変態装置は、混合媒液に電磁波を照射する電磁波照射手段を、さらに備えていることが好ましい。電磁波照射手段は、混合媒液に電磁波を照射することができれば、その手段、装置、構成等には限定されない。電磁波照射手段は、例えば、発光素子等で構成されている。これにより、振動印加手段及び媒液加熱手段で加速されたナノ粒子に、さらに高い熱エネルギ(光エネルギ)を与えることができるため、さらに、強い加速力で有害細胞に衝突させることができ有害細胞を破壊することが可能となる。
【0023】
次に、本実施形態による細胞変態装置について、図1乃至図4を参照して詳細に説明する。図1は本実施形態による細胞変態装置の要部斜視図、図2は図1に示す細胞変態装置の全体の斜視図、図3は図1に示す細胞変態装置のA−A切断線で切った要部断面図、図4は図1に示す細胞変態装置のB−B切断線で切った要部断面図である。
【0024】
図1乃至図4に示すように、本実施形態による細胞変態装置1は、ダイヤフラムとして使用され、有害細胞にナノ粒子を加えた混合媒液を表面上に保持することが可能な媒液保持手段としてのマイクロディッシュ2と、マイクロディッシュ2に離間しかつ対向して配置された電圧供給体としての基板11とを備えている。詳しくは、マイクロディッシュ2は、基板11に設けられた凹形状のキャビティ22に離間しかつ対向して、マトリクス状に規則的に複数配列されている。なお、ここでいうマイクロディッシュ2とは、図2乃至図4に示されたマイクロディッシュ2のうち一つの単位のことを指す。すべてのマイクロディッシュ2は、同一の平面形状により構成され、かつ同一の断面構造を備えている。なお、本実施形態においては、図3および図4からわかるように、各マイクロディッシュ2に対応してキャビティ22が設けられている。なお、マイクロディッシュ2は、数μmから数百μmオーダのサイズを有しており、半導体の微細加工プロセスで形成される。
【0025】
マイクロディッシュ2と基板11とは交流電圧供給源30に接続されている。細胞変態
装置1は、マイクロディッシュ2と基板11との間に交流バイアスを印加してマイクロディッシュ2を振動させる振動印加手段を備えている。
【0026】
マイクロディッシュ2は、図3、4に示すように、区画された絶縁体12と、この絶縁体12の表面上に設けられた活性層13と、この活性層13の表面上に形成された第1の配線16と、この第1の配線16上に形成された層間絶縁膜17、18と、この層間絶縁膜18の表面上に形成され第1の配線16と接続する第2の配線20と、この第2の配線20上に形成された保護膜21と、更に保護膜21の表面上にコーティングされた撥水性被膜23とを備えている。マイクロディッシュ2内の活性層13は、p型不純物を注入若しくは拡散して形成したアノード領域14と、このアノード領域14の表面部分にn型不純物を注入若しくは拡散して形成したカソード領域15とのpn接合により構成されたダイオード4が形成されている。各々のマイクロディッシュ2は、その周縁に機械的に連結された第1のメカニカル支持体25及び第2のメカニカル支持体26により支持され、第1および第2のメカニカル支持体25、26は、第3および第4のメカニカル支持体27、28に各々連結されている。第3および第4のメカニカル支持体27、28は、図1乃至図4からわかるように、基板11上に形成され、第1のメカニカル支持体25及び第2のメカニカル支持体26をそれぞれキャビティ22上で支持している。
【0027】
第1および第2のメカニカル支持体25、26はそれぞれ、絶縁体12と、この絶縁体12上に形成された活性層13と同一層となるSTI(Sallow Trench Insulation)層13Aと、STI層13A上に配線16と同一層となるように形成された配線16Aと、配線16Aを覆うように形成された層間絶縁膜17と、層間絶縁膜17上に形成された層間絶縁膜18と、を有している。また、第3のメカニカル支持体27は、図4に示すように、絶縁体12と、この絶縁体12上に形成されたSTI層13Aと、STI層13A上に配線16と同一層となるように形成されかつ後述する垂直信号線となる配線16Bと、配線16Bを覆うように形成された層間絶縁膜17と、層間絶縁膜17上に形成された層間絶縁膜18と、を有している。また、第4のメカニカル支持体28は、図3に示すように、絶縁体12と、この絶縁体12上に形成されたSTI層13Aと、STI層13A上に形成された層間絶縁膜17と、層間絶縁膜17上に形成された層間絶縁膜18と、層間絶縁膜18上に配線20と同一層となるように形成されかつ後述する水平信号線となる配線20Aと、配線20A上に形成された保護膜21と、を有している。なお、図示しないが第1のメカニカル支持体25の配線16Aは、一端が第3のメカニカル支持体27の配線16Bに電気的に接続され、他端が後述するマイクロディッシュ2内のダイオード4のアノード領域14に電気的に接続されている。また、図示しないが第2のメカニカル支持体26の配線16Aは、一端が第4のメカニカル支持体28の配線20Aに電気的に接続され、他端がダイオード4のカソード領域15に接続されている。第2のメカニカル支持体26の配線16Aと第4のメカニカル支持体28の配線20Aとは、層間絶縁膜17、18内に形成されたコンタクト(図示せず)によって電気的に接続される。
【0028】
このように、マイクロディッシュ2は、第1乃至第4のメカニカル支持体25,26,27、28と、基板11とで連結されて支持されているので、基板11の表面に対して垂直方向に振動可能なメカニカルダイヤフラムとして機能する。すなわち、交流電圧供給源30から基板11及びマイクロディッシュ2に交流バイアスが供給され、基板11とマイクロディッシュ2との間に交流バイアスが印加されると、静電気力が発生し、図5(a)に示すように、基板11の表面に対して垂直方向にマイクロディッシュ2が振動する。なお、図5(a)、(b)、(c)において、符号40は細胞を示し、符号45はナノ粒子を示す。
【0029】
マイクロディッシュ2内の活性層13のアノード領域14は、第1のメカニカル支持体25と機械的な接続されるとともに、第1のメカニカル支持体25の配線16Aと電気的に接続される。したがってアノード領域14は、第1のメカニカル支持体25の配線16Aおよび第3のメカニカル支持体27の配線16Bを介して基板11の外部に配設されている直流電圧供給源31に接続されている。これにより、アノード領域14に順方向電流が供給される。
【0030】
カソード領域15はその直上において配設された配線16に電気的に接続され、この配線16はコンタクト19を通して配線20と電気的に接続されている。配線20は、第2のメカニカル支持体26の配線16Aおよび第4のメカニカル支持体28の配線20Aを介して直流電圧供給源31に電気的に接続されており、アノード領域14に供給された順方向電流を帰還させる。すなわち、図5(b)に示すように、ダイオード4は、順方向電流を流して熱を発生させ、マイクロディッシュ2を局所的に加熱する加熱体としての機能を備えている。ここで、熱せられるマイクロディッシュ2の温度は、バイアス値によって定義することができる。
【0031】
第1および第2のメカニカル支持体25、26は、マイクロディッシュ2の周縁に対して一定間隔において離間しその周縁に沿って延在しており、更に、第1および第2のメカニカル支持体25、26の配線16Aは、インダクタとして機能する。加熱体となるダイオード4を加熱する際、第1および第2のメカニカル支持体25、26の配線16Aには順方向電流が流れるので、例えば、第1および第2のメカニカル支持体25、26の配線16Aを中心としてマイクロディッシュ2の領域にまで及ぶ磁界が発生する。本実施形態において、インダクタの巻数が1.5程度になるように、マイクロディッシュ2の一端に連結された第1のメカニカル支持体25はマイクロディッシュ2の3辺に沿って巻き回され、マイクロディッシュ2の他端に連結された第2のメカニカル支持体26はマイクロディッシュ2の3辺に沿って巻き回されている。
さらに、本実施形態における細胞変態装置は、図5(c)に示すように、外部から光波60を照射する電磁波照射手段を、更に備えていても良い。本実施形態では、対象となる細胞40等にピンポイントで当てることができるレーザ光源が好適に用いられる。レーザ光源は、その入力バイアス値により、パワーを変化させることができ、出力パワー値に基づく温度を効率的に上げることができる。また、レーザ光源は、可視域から赤外域まで幅広い波長の光源を用いることができる。
【0032】
なお、図2に示すように、格子上に配列された複数のマイクロディッシュ2が形成された領域の、基板11上の周辺領域には、例えば、ダイオード4に電流を流す回路等が形成される回路領域90が設けられている。
【0033】
基板11には半導体基板、特にシリコン単結晶基板を実用的に使用することができる。
【0034】
絶縁体12にはシリコン酸化膜を実用的に使用することができ、この絶縁膜12はBOX
(buried oxide)層として働く。活性層13には半導体活性層、特にシリコン単結晶層又
はシリコン多結晶層を実用的に使用することができる。すなわち、細胞変態装置1は、基
板11、絶縁膜12、活性層13で構成されたSOI(silicon on insulator)基板により構成されている。細胞変態装置1の平面形状は正方形若しくは長方形により構成されて
いる。なお、この細胞変態装置1の平面形状は、正方形及び長方形を含む方形状に限定されるものではなく、円形状、楕円形状、五角形以上の多角形形状のいずれであってもよい。
【0035】
配線16、16A、16Bには、受動素子や能動素子の電極に使用されるゲート材、具体的にはシリコン多結晶膜、シリコンと高融点金属との化合物膜若しくは高融点金属膜の単層、又はシリコン多結晶膜上に化合物膜若しくは高融点金属膜を積層した複合層を実用的に使用することができる。
【0036】
配線20、20Aには、配線16に比べて抵抗値の小さい金属材、具体的にはアルミニウム合金膜を実用的に使用することができる。アルミニウム合金膜は、アロイスパイクを抑制するシリコン(Si)やマイグレーションを抑制する銅(Cu)を添加したアルミニウム膜である。
【0037】
なお、配線16と配線20とは、層間絶縁膜17及び18に配設された接続孔内に埋設された接続孔配線(コンタクト)19を通して電気的に接続されている。層間絶縁膜17、18、保護膜21のそれぞれには、シリコン酸化膜やシリコン窒化膜、又はそれらを組み合わせた複合膜を実用的に使用することができる。
【0038】
撥水性皮膜23は、例えば、撥水性を備えたシリコーン等で構成され、その表面上に滴
下される媒液の接触角を高め、滴下状態の混合溶媒をマイクロディッシュ2の表面上において励振させることができる性質を備えている。撥水性皮膜23は、例えば、C8134
SiCl3ガスとH2Oガスとの混合ガス雰囲気中に細胞変態装置1を置くことによって、
形成することができる。
【0039】
必ずしもここで例示した寸法に限定されるものではないが、本実施の形態に係る細胞変
態装置1において、1つのマイクロディッシュ2は平面の1辺の長さを20μmとする正
方形形状において構成される。更に、1つのマイクロディッシュ2と、それを支持する第1乃至第4のメカニカル支持体25、26、27、28と、を配設する領域は平面の1辺の長さを30μmとする正方形状において構成されている。この後者の長さはマイクロディッシュ2の配列間隔に相当する。
【0040】
次に、本実施形態の細胞変態装置の製造方法を、図6乃至図9を参照して説明する。
【0041】
まず、支持基板11、BOX層12、活性層13を有するSOI基板を用意し、マイクロディッシュ2が形成される領域以外の領域の活性層13を除去し、活性層13と同一層となるSTI層13Aを形成する(図6参照)。続いて、マイクロディッシュ2が形成される領域の活性層13にp型の不純物を注入し、アノードとなるp型の不純物領域14を形成する。その後、形成したp型の不純物領域14にn型の不純物を注入し、カソードとなるn型の不純物領域15を形成する。これにより、マイクロディッシュ2が形成される領域の活性層13にp型の不純物領域14およびn型の不純物領域15からなるダイオード4が形成される。続いて、ポリシリコンを堆積し、これをパターニングすることにより、カソードとなるn型の不純物領域15上に配線16を、STI層13A上に配線16Aを形成する。このとき、図6は図1に示す切断線A−Aに沿った断面であるので、図6には示されないが、図1に示す切断線B−Bに沿った断面では、STI層13A上に配線16B(図4参照)が形成される。その後、配線16、16A、16Bを覆うように層間絶縁膜17を形成し、さらに層間絶縁膜17を覆うように層間絶縁膜18を形成する。そして、配線16に接続するコンタクト孔およびn型の拡散層15に接続するコンタクト孔を層間絶縁膜17,18に形成し、これらのコンタクト孔を例えばタングステン等の金属で埋め込み、コンタクト19を形成する。次に、層間絶縁膜18上に、これらのコンタクト19に接続する例えばアルミニウムからなる金属配線20およびSTI層の直上に位置するアルミニウムからなる金属配線20A等を層間絶縁膜18上に形成する。その後、これらの配線20を覆うようにTEOS(Tetra Ethyl Ortho Silicate)層21を形成する(図6参照)。
【0042】
次に、図7に示すように、TEOS層21、層間絶縁膜18、層間絶縁膜17、STI層13A、およびBOX層12を、RIEを用いて支持基板11をエッチングストップとしてパターニングし、2次元マトリクス状に配列されたマイクロディッシュ2およびこのマイクロディッシュ2に接続する第1乃至第4のメカニカル支持体25、26、27、28を形成する。なお、図7は図1に示す切断線A−Aに沿った断面であるので、第3のメカニカル支持体27は図7には示されていない。
【0043】
次に、XeFガスあるいは異方性エッチャント(KOH、TMAH等)によってSiのエッチングを用いることにより、マイクロディッシュ2直下の領域にキャビティ22を形成する(図8参照)。ここで、図6に示す工程で形成されたSiからなる支持基板11の露出面がエッチングホールとして作用する。
【0044】
次に、水分による張り付き(スティクション)を防止するため、Cl3SiClとHOの混合ガスによりマイクロディッシュ2を含むダイアフラムの表面に撥水性コート23を施す(図9参照)。
【0045】
上記マイクロディッシュ2は基板11上に2次元マトリクス状に配列することができる。従って、振動、熱、および光エネルギを並列に入力でき、1度の操作で複数の条件で試行できる。図10は、アレイ状に配列されたマイクロディッシュ2を有する本実施形態の細胞変態装置に加振を実施するためのブロック図を示している。ここで、図11に示すように、キャビティ22を介してマイクロディッシュ2と、基板11とに電圧を印加することで、これらは平行平板として動作する。なお、図11は、図1に示す切断線B−Bで切断した断面を示す。ここで、基板11側に交流信号を与えることで、キャビティ22に発生した静電気力によって任意の周波数でマイクロディッシュ2を励振させることができる。例えば、基板側を高濃度でイオン注入することで、基板抵抗を下げることもできる。また、マイクロディッシュ2側に交流信号を与えても勿論良い。
【0046】
同様に、図12はマイクロディッシュ2を加熱することを説明したブロック図を示している。図13はマイクロディッシュ2のダイオード4に順方向電流Ifを印加した際の温度上昇ΔTshの関係を示している。つまり、p−n接合14,15と、順方向電流Ifと発熱の関係を示している。図13に示すように、順方向電流Ifによってマイクロディッシュ2の温度を任意にコントロールできる。加熱体として、発熱体にダイオードを採用することで、クリティカルな温度設定およびレスポンシビリティ(スイッチング特性)が得られることが大きな利点である。
【0047】
また、前述したように、光波を照射するシステムも可能である。この光波の光源にはLDやLEDを用いても良い。なお、マイクロディッシュ2が2次元マトリクス状に配列されていること、および複数の細胞に対して並列に光エネルギを照射することを考慮すれば、光波の光源に垂直共振器表面発光レーザ(VCSEL)の適応が望ましい。VCSELは微小な間隔で2次元的に配列できることから、マイクロディッシュ2との整合性が高い。図14はマイクロディッシュアレイが形成されたチップとVCSELアレイ70を各素子が対向するように配置した様子の斜視図を示している。マイクロディッシュアレイとVCSELアレイ70は例えばフリップチップボンディング等を用いれば、各素子に電気的に配線されたマウントも可能になる。各VCSEL素子に個別の電流源を用意しておけば、電流源の入力バイアスを変化させることで、様々なパワーの光出力を同時に放出することができる。また、変調等の動作も容易に実現でき、光出力の違いや、出力によって細胞へ様々な条件で放射することができる。また、VCSELの基板材料を変更することで、650nm〜1500nm範囲の波長の入力もできる。従って、光出力や光波の波長の違いなど複数の細胞に対して、複数のパラメータを振り分けた条件での操作が可能になる。
【0048】
以上説明したように、本実施形態によれば、各マイクロディッシュ2に対応してキャビティ22が設けられ、マイクロディッシュ2を支持する第3および第4のメカニカル支持体27、28が支持基板上に接するように支持されているため、マイクロディッシュ2毎に振動、加熱、光波の条件を変えて細胞の破壊を行うことが可能となり、生体に悪影響を及ぼす有害細胞の破壊を解析することができる。
【0049】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態による細胞変態解析装置を説明する。
【0050】
まず、細胞変態解析装置の概要について示す。これまで種々の研究から、有害細胞の破壊メカニズムに外部からのエネルギの印加に伴う加温効果が有効的であることが解明されてきた。しかしながら、細胞サイズのようなミクロンスケールでの、熱変遷の様子を検出できる方式はほとんど無いのが現状である。本実施形態では、外部からのエネルギ印加に伴う細胞レベルでの熱変遷を時系列的に検出し、かつ並列処理が可能な細胞変態解析装置を提供する。
【0051】
図15に本実施形態の細胞変態解析装置の構成を示し、図16に本実施形態の細胞変態解析装置の断面を示す。本実施形態の細胞変態解析装置は、ディッシュアレイ100と、垂直信号線101と、水平信号線102とを備え、シリコン基板11上に形成される。このディッシュアレイ100は、第1実施形態と同様の細胞40が含まれる媒液とナノ粒子との混合液が載置されマトリクス状に配列された複数のマイクロディッシュ2と、列毎に設けられたマイクロディッシュ2A、2Bとを備えている。
【0052】
マイクロディッシュ2、2A、2Bには、第1実施形態で説明したように、発熱体であるととともに温度センサとなるダイオード4が設けられている。マイクロディッシュ2のダイオード4は対象細胞の温度効果を検出するセンサ素子として機能し、マイクロディッシュ2Aのダイオード4はマイクロディッシュ2に対し、上昇温度を比較するための参照素子として機能し、マイクロディッシュ2Bのダイオード4は測定環境によらず、常に定常状態にあり、基板11の温度を測定するための参照素子として機能する。
【0053】
マイクロディッシュ2、2Aは基板11からの熱を分離するために、図16に示すように、その直下のシリコン基板11にキャビティ22が設けられ、マイクロディッシュ2Bは基板11の温度を測定するために、シリコン基板11と繋がった構造となる。ここで、マイクロディッシュ2は対象細胞の温度を検出するが、この熱効果がマイクロディッシュ2A、2Bのダイオード4に影響を受けないように、マイクロディッシュ2に対してマイクロディッシュ2A、2Bは十分離れたところに位置するように配置される。
【0054】
また、マイクロディッシュ2、2A、2Bは、第1実施形態と同様に、第1乃至第4のメカニカル支持体25、26、27、28によって支持されている。なお、図16は図1に示す切断線B−Bに沿った断面であるので、第4のメカニカル支持体28は図16には表示されていない。しかし、マイクロディッシュ2Bはシリコン基板11と繋がった構造となっているので、このマイクロディッシュ2Bを支持する第1乃至第2のメカニカル支持体25、26は第1実施形態の場合と異なり、シリコン基板11に接するように形成される。
【0055】
本実施形態においては、同一列のマイクロディッシュ2のダイオード4のアノードと、対応する列のマイクロディッシュ2A、2Bのダイオードのアノードとは垂直信号線101によって接続されている。また、同一行のマイクロディッシュ2のダイオード4のカソードは水平信号線102に接続されている。垂直信号線101は、第1実施形態で説明した第3のメカニカル支持体27内に設けられた配線16Bであり、水平信号線102は、第1実施形態で説明した第4のメカニカル支持体28内に設けられた配線20Aである。
【0056】
また、本実施形態の細胞変態解析装置においては、読み出し回路120と、Xデコーダ122と、Yデコーダ124と、ディッシュアレイ100の列毎に設けられた負荷トランジスタ130と、列毎に設けられた列並列積分回路140と、水平スキャナ150と、読み出しトランジスタ155とを備えている。列並列積分回路140は、カップリングキャパシタ141と、増幅トランジスタ142と、フィードバックトランジスタ143と、リセットトランジスタ144と、積分容量145とを備えている。
【0057】
垂直信号線101の一端は負荷トランジスタ130を介してXデコーダ122に接続され、他端はカップリングキャパシタ141の一端に接続されている。水平信号線102は、一端が対応する列のマイクロディッシュ2、2A、2Bのダイオード4のカソードに接続され、他端がYデコーダ124に接続される。
【0058】
カップリングキャパシタ141の他端は増幅トランジスタ142のゲートに接続されている。増幅トランジスタ142のソースは接地されている。また、フィードバックトランジスタ143は増幅トランジスタ142のゲートとドレインを接続する。リセットトランジスタ144はソースにリセット電圧Vrsが印加され、ゲートにリセット信号Vrs+が印加され、ドレインが積分容量145の一端および増幅トランジスタ142のドレインに接続されている。積分容量145の他端は接地されている。また、読み出しトランジスタ155のソースは増幅トランジスタ142のドレインに接続され、ドレインが読み出し回路120に接続され、ゲートに水平スキャナ150からの読み出し信号HCLKを受ける。
【0059】
このように構成された本実施形態においては、2次元マトリクス状に配置されたマイクロディッシュに形成されたダイオードによる表面温度の測定が並列で可能となる。これを以下に説明する。
【0060】
図17(a)は、マイクロディッシュ2、2A、2Bのダイオード4に印加される電圧パルスVCLKを示す波形図であり、図17(b)は、電圧パルスVCLKが印加されたときのマイクロディッシュ2、2A、2B対する温度変動を示した波形図である。なお、図17(a)、(b)の横軸は時間tを示し、図17(a)の縦軸は電圧を示し、図17(b)の縦軸は温度Tを示している。本実施形態においては、パルス電圧VCLKを各マイクロディッシュのダイオード4に入力することで、負荷トランジスタ130を流れる電流に対応した順方向電圧がダイオード4に現れる。この順方向電圧はマイクロディッシュの温度上昇とともに低下するため、その低下分を検出することでマイクロディッシュの温度が得られる。図17(b)のマイクロディッシュ2Bは自身、すなわちシリコン基板11の温度、Δtsub成分を有している(グラフg参照)。
【0061】
まず、対象細胞を含む混合液が載置されたマイクロディッシュ2と同列のマイクロディッシュ2Aを選択するためのアドレス信号が読み出し回路120からXデコーダ122およびYデコーダ124に送られる。すると、上記列に対応する負荷トランジスタ130をオンさせる信号がXデコーダ122から出力されて負荷トランジスタ130をオンする。Yデコーダ124によってマイクロディッシュ2AにパルスVCLKを入力する。すると、上記負荷トランジスタ130がオンし、マイクロディッシュ2Aのダイオード4に電圧パルスVCLKが入力される。このとき、マイクロディッシュ2Aでは、ダイオード4で自己加熱が生じ、図17(b)に示すように、温度がΔTsh分上昇する(グラフg参照)。
【0062】
これに対して、物理エネルギー(例えば、振動、熱、光波)が付与された細胞の温度を直接センシングするマイクロディッシュ2では、電圧パルスVCLKの入力前の初期状態において、マイクロディッシュ2AよりもΔTcell分温度が高く、電圧パルスVCLの入力後は、図17(b)に示すように、この温度(=(ΔTsh+ΔTcell))からさらにΔTshだけ温度が上昇する(グラフg参照)。
【0063】
ここで、マイクロディッシュ2Aと、マイクロディッシュ2との温度の差分を取ることで、対象細胞に対する実効的な上昇温度成分ΔTcellが求められる。差分を取る手法として、図15中の列並列積分回路140の増幅トランジスタ142のゲートとドレインを接続するフィードバックトランジスタ143を用いる。まず、マイクロディッシュ2Aを選択したときに垂直信号線101の電位はVCLK−VdBとなる。ここでVdBはマイクロディッシュ2Aのダイオード4の順方向電圧である。このとき、フィードバックトランジスタ143をオンしておくことによって、増幅トランジスタ142のゲート電位が高くなっているため、カップリングキャパシタ141の他端から、フィードバックトランジスタ143を通して増幅トランジスタ142のドレイン、ソースへと電流が流れる。この電流は増幅トランジスタ142のゲート電位が閾値電圧Vthとなったときに流れなくなり、このときにフィードバックトランジスタ143をオフすることにより、垂直信号線101の電位がVCLK−VdB、増幅トランジスタ142のゲート電位がVthというデータがマイクロディッシュ2Aの情報としてメモリされる。
【0064】
しかる後に、読み出し回路120から、Xデコーダ122、Yデコーダ124にアドレス信号を送り、対象細胞を含む混合液が載置されたマイクロディッシュ2を選択し、このマイクロディッシュ2のダイオード4にパルス電圧VCLKを印加する。すると、垂直信号線101の電位はVCLK−VdAとなる。ここでVdAはマイクロディッシュ2のダイオード4の順方向電圧であり、VdBよりも細胞の温度効果分低い電圧(この差をΔVcellとする)であるため、垂直信号線101の電位はマイクロディッシュ2Aの選択時よりもΔVcellだけ高い電圧となる。すると、増幅トランジスタ142のゲート電位はVthからΔVcellだけ持ち上がり、この増分が増幅されて蓄積容量145に電荷として積分される。この積分値は読み出しトランジスタ155を介して読み出し回路120によって読み出される。以上の動作により、マイクロディッシュ2とマイクロディッシュ2Aの温度差分信号を増幅出力することができる。
【0065】
従来、細胞スケールにおける高分解能の温度効果をセンシングするのは困難とされてきたが、本実施形態によれば、経過時間に対して高分解能の時系列的な温度変化を検出でき、この時間域でまさにミクロンスケールである対象細胞の温度変遷がセンシング可能となる。これは、対象細胞のメカニズムを得るうえで大きな指標となり、創薬等の分野において大きく貢献できる。
【0066】
また、同様に、ここで、マイクロディッシュ2Aと、マイクロディッシュ2Bとの温度の差分を取ることで、シリコン基板11自身の温度も反映することができるため、対象細胞に対するより実効的な上昇温度成分ΔTcellが求められる。差分を取る手法として、前述したマイクロディッシュ2Aと、マイクロディッシュ2との温度の差分を取る方法と同様な方法で行うことができる。
【0067】
本実施形態においては、図18(a)、18(b)に示すように、各マイクロディッシュ2には、細胞を含む混合液が個別に載置される。図18(a)は細胞を含む混合液がマイクロディッシュ2に載置されたときの本実施形態の断面図を示し、図18(b)はそのときの平面図を示す。細胞を含む混合液がマイクロディッシュ2に載置されたときは、図18(a)、18(b)に示すように、第3および第4のメカニカル支持体27、28上には異なるマイクロディッシュ上に載置された混合液が混ざらないようにスペーサ80が設けられる。このように隣接する各マイクロディッシュは完全に分離されているので、Xデコーダ122、Yデコーダ124によって細胞を含む混合液が載置されたマイクロディッシュを順次選択し、対象細胞の温度を測定すれば、多数の細胞を一度に並列処理することができる。前述したように、対象細胞のメカニズムを抽出するうえで、様々なパラメータを必要とするが、この構成によれば上記パラメータを様々な組み合わせで一度に並列処理でき、効果的なパラメータの検出に掛かる時間の短縮が可能となる。この場合、マイクロディッシュ2のサイズzは、細胞のサイズにもよるがサブnm〜数十μmとなる。
【0068】
一方、本実施形態の変形例のように、一つの細胞に対して複数(NxN)のマイクロディッシュ2Dを用いて検出する例を図19(a)、(b)に示す。図19(a)は本変形例において細胞を含む混合液がマイクロディッシュ2Dに載置されたときの断面図を示し、図19(b)はそのときの平面図を示す。
【0069】
本変形例によれば、各マイクロディッシュ2Dは半導体の微小プロセスを適応するため、極度の小型化が図れる。ここで、一つの細胞を複数のマイクロディッシュ2Dで検出することで、微小な細胞の部位別の温度効果が検出できる。この分解能は、配置したマイクロディッシュ2Dの数によって定義される。なお、マイクロディッシュ2Dのサイズzは、細胞のサイズにもよるがサブnm〜数十μmとなる。
【0070】
図20(a)に示すように、各マイクロディッシュ2Dからの出力を並列出力することで、細胞の部分的な熱分布を得ることが出来る。ここで、図20(b)に示すように、各マイクロディッシュ2Dから得られた出力値を合成することで画像として可視化することも可能である。
【0071】
本変形例によれば、これまでサイズ分解能の間隔が低く、微小な対象の検出に不向きであったサーモグラフィを、ミクロンスケールで実現可能となる。
【0072】
以上説明したように、本実施形態およびその変形例によれば、生体に悪影響を及ぼす有害細胞が変態するのを解析することができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の第1実施形態による細胞変態装置に係る一マイクロディッシュを示す斜視図。
【図2】第1実施形態による細胞変態装置を示す斜視図。
【図3】図1に示す切断線A−Aで切断した第1実施形態の細胞変態装置の断面図。
【図4】図1に示す切断線B−Bで切断した第1実施形態の細胞変態装置の断面図。
【図5】第1実施形態の細胞変態装置のマイクロディッシュに印加される物理エネルギーを説明する図。
【図6】第1実施形態の細胞変態装置の製造工程を示す断面図。
【図7】第1実施形態の細胞変態装置の製造工程を示す断面図。
【図8】第1実施形態の細胞変態装置の製造工程を示す断面図。
【図9】第1実施形態の細胞変態装置の製造工程を示す断面図。
【図10】第1実施形態の細胞変態装置に係るマイクロディッシュに振動を印加するときの説明図。
【図11】第1実施形態の細胞変態装置に係るマイクロディッシュに振動を印加するときの説明図。
【図12】第1実施形態の細胞変態装置に係るマイクロディッシュに熱を印加するときの説明図。
【図13】マイクロディッシュのダイオードの順方向電流と発生する温度との特性関係を示す図。
【図14】第1実施形態の細胞変態装置に係るマイクロディッシュに光波を印加するときの説明図。
【図15】本発明の第2実施形態による細胞変態解析装置を示すブロック図。
【図16】第2実施形態の細胞変態解析装置の断面図。
【図17】第2実施形態による細胞変態装置の動作を説明する図。
【図18】第2実施形態による細胞変態解析装置の、細胞を含む混合液を各マイクロディッシュに載置した場合の説明図。
【図19】第2実施形態の変形例による細胞変態解析装置の、細胞を含む混合液を各マイクロディッシュに載置した場合の説明図。
【図20】第2実施形態の変形例による細胞変態解析装置のデータ処理を説明する図。
【符号の説明】
【0074】
1 細胞変態装置
2 マイクロディッシュ
2A マイクロディッシュ
2B マイクロディッシュ
4 ダイオード
11 支持基板
12 BOX層
13 SOI層(活性層)
13A STI層
14 アノード領域
15 カソード領域
16 配線
16A 配線
16B 配線
17 層間絶縁膜
18 層間絶縁膜
19 コンタクト
20 配線
20A 配線
21 保護層
23 撥水性被膜
25 第1のメカニカル支持体
26 第2のメカニカル支持体
27 第3のメカニカル支持体
28 第4のメカニカル支持体
30 交流電圧供給源
31 直流電圧供給源
40 細胞
45 ナノ粒子
70 VCLSELアレイ
80 スペーサ
100 ディッシュアレイ
101 垂直信号線
102 水平信号線
120 読み出し回路
122 Xデコーダ
124 Yデコーダ
130 負荷トランジスタ
140 列並列積分回路
141 カップリングキャパシタ
142 増幅トランジスタ
143 フィードバックトランジスタ
144 リセットトランジスタ
145 積分容量
150 水平スキャナ
155 読み出しトランジスタ
【出願人】 【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
【出願日】 平成18年7月19日(2006.7.19)
【代理人】 【識別番号】100075812
【弁理士】
【氏名又は名称】吉武 賢次

【識別番号】100088889
【弁理士】
【氏名又は名称】橘谷 英俊

【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和

【識別番号】100096921
【弁理士】
【氏名又は名称】吉元 弘

【識別番号】100103263
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 康


【公開番号】 特開2008−22736(P2008−22736A)
【公開日】 平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願番号】 特願2006−196851(P2006−196851)