トップ :: C 化学 冶金 :: C12 生化学;ビ−ル;酒精;ぶどう酒;酢;微生物学;酵素学;突然変異または遺伝子工学

【発明の名称】 加熱及び冷却のための機器
【発明者】 【氏名】エマド サロフィム

【氏名】ゴラン サバティク

【要約】 【課題】核酸の迅速な増幅を都合よく可能にする機器及び方法の提供。

【構成】上部から下部まで以下の順序、少なくとも1つの実質的に平らな温度センサー素子1、熱伝導基板2、及びヒーター層3、において積み重ねた層を含んでなり、当該熱伝導基板が、流体が透過可能な1つ以上のチャネルを含んで成る、制御された方法において対象を加熱及び冷却するための機器。温度プロファイルを実施するための方法。核酸を増幅するための方法。液体を加熱するための系及び核酸を測定するための系。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御された方法において対象を加熱及び冷却するための機器であって、上部から下部まで以下の順序
−少なくとも1つの実質的に平らな温度センサー素子、
−熱伝導基板、及び
−ヒーター層、
において積み重ねた層を含んでなり、当該熱伝導基板が、流体が透過可能な1つ以上のチャネルを含んで成ることを特徴とする、前記機器。
【請求項2】
センサー素子が抵抗素子及びカバー層を含んでなり、当該カバー層は、当該抵抗素子を周囲との直接的な接触から保護し、25μm未満の厚さを有する、請求項1に記載の機器。
【請求項3】
カバー層が、物体の表面形状を反映する物体接触表面を有し、当該物体のセンサー接触表面に向いている、請求項2に記載の機器。
【請求項4】
センサー素子が、0.01μm〜10μm、好ましくは0.8μm〜1.2μmの厚さである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の機器。
【請求項5】
基板が、1mm〜10mmの厚さを有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の機器。
【請求項6】
熱伝導基板が、電気絶縁材料から作られる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の機器。
【請求項7】
ヒーターが、30μm未満の厚さを有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の機器。
【請求項8】
熱制御機器を更に含んで成る、請求項1〜7のいずれか一項に記載の機器。
【請求項9】
35℃未満の温度を有する流体の貯蔵容器を更に含んで成る、請求項1〜8のいずれか一項に記載の機器。
【請求項10】
−請求項1〜8のいずれか一項に記載の機器の中の装置を加熱すること
を含んで成る、装置中で温度プロファイルを実施するための方法。
【請求項11】
冷却液を、装置の基板のチャネルに通すことを更に含んで成る、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
流体が気体である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
流体が液体である、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
温度プロファイルが、繰り返される温度サイクルを含む、請求項9〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の機器及び試料を含む装置を含んでなり、当該機器が、試料中の核酸の測定の間、当該装置と物理的に接触している、試料中の核酸を測定するための系。
【請求項16】
a)核酸を含む液体の混合物を装置中に提供すること、
b)当該装置を、請求項1〜8のいずれか一項に記載の機器と物理的に接触させること、及び
c)当該装置中の当該試料を、温度サイクルにかけること
を含んで成る、核酸の増幅のための方法。
【請求項17】
−混合物を含むための1つ以上のチャンバーを含む装置、及び
−請求項1〜8のいずれか一項に記載の機器
を含み、当該装置が、当該混合物の加熱の間、当該機器と物理的に接触している、混合物を加熱するための系。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明の対象は、制御された方法において対象を加熱及び冷却するための機器、温度プロファイルを実施するための方法、核酸を増幅するための方法、液体を加熱するための系及び核酸を測定するための系である。
【背景技術】
【0002】
本発明は、ヘルスケアの分野において特に有用であり、そこでは、その中に含まれる成分に関する試料の信頼できる分析が必要とされる。加熱が必要とされる化学反応は、例えば分子診断から良く知られており、そこでは、核酸は、二本鎖のハイブリッドの融解温度を超えて熱を加えることにより、そのハイブリッドから変性、すなわち一本鎖となることが知られている。
【0003】
そのような変性段階を含む反応サイクルを用いる方法は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)である。この技術は、特定の配列の核酸の量を、ごく少量から検出可能な量まで増大させる手段を提供することにより、核酸処理、特に核酸の分析の分野に革命をもたらした。PCRは、欧州特許第0201184号及び欧州特許第0200362号に記載されている。
【0004】
引き伸ばした金属ブロックを加熱及び冷却することにより、チューブの中の試料について、制御された方法において温度サイクルを実施するための機器は、欧州特許第236069号に開示されている。
【0005】
PCR混合物の加熱は、現在は主に、積極的な加熱及び冷却を伴うペルチェ素子を用いて実施される。積極的な加熱及び消極的な冷却を伴う系と比較して、それらは複雑な電子技術を必要とする。
【0006】
米国特許第6633785号には、抵抗加熱又は誘導加熱のいずれかを用いて、マイクロチューブを加熱する方法が記載されている。
【0007】
米国特許第6602473号には、シリコンから作られた微細加工反応チャンバーが開示されている。この装置は、入口と出口を有し、機器内に挿入した場合に、PCR反応を実施するのに用いることができる。しかし、この系は、感受性が高く迅速な制御を可能にしない。
【0008】
国際公開第98/39487号には、チャンバーを有する装置を保持するための器具が開示され、当該器具は、装置が当該器具内に挿入された場合に、平らな装置の反対側の壁に配置された加熱又は冷却プレートを含んで成る。
【0009】
先行技術の機器により提供される温度変化は、比較的遅かった。従って、特に核酸の増幅の際に、流体中においてより速い温度変化を提供する必要があった。
【発明の開示】
【0010】
発明の概要
本発明の第一の対象は、上部から下部まで以下の順序
−実質的に平らな温度センサー素子、
−熱伝導基板、及び
−ヒーター層、
において積み重ねた層を含んでなり、当該熱伝導基板が、流体が透過可能な1つ以上のチャネルを含んで成ることを特徴とする、制御された方法において対象を加熱及び冷却するための機器である。
【0011】
本発明の第二の対象は、
−本発明の機器の中の装置を加熱すること
を含んで成る、装置中での温度プロファイルを実施するための方法である。
【0012】
本発明の第三の対象は、本発明の機器及び試料を含む装置を含んでなり、当該機器が、試料中の核酸の測定の間、当該装置と物理的に接触している、試料中の核酸を測定するための系である。
【0013】
本発明の第四の対象は、
a)核酸を含む液体の混合物を装置中に提供すること、
b)当該装置を、請求項1〜8のいずれか一項に記載の機器と物理的に接触させること、及び
c)当該装置中の当該試料を、温度サイクルにかけること
を含んで成る、核酸の増幅のための方法。
【0014】
本発明の第五の対象は、
−混合物を含むための1つ以上のチャンバーを含む装置、及び
−本発明の機器
を含み、当該装置が、当該混合物の加熱の間、当該機器と物理的に接触している、混合物を加熱するための系である。
【0015】
発明の詳細な説明
核酸の増幅のための方法は、知られている。それらは、標的核酸内の塩基配列を複製することのできる酵素の活性のためのテンプレートとしての機能を果たす標的核酸の初期の存在に基づく、大量の核酸を生み出すことを意図している。レプリコン自体は、配列、好ましくは既に第一の複製の対象であった塩基配列の複製のための標的として用いられる。従って、同一の配列を有する大量の核酸が生み出される。これは、標的核酸の非常に感受性の高い検出を可能にする。
【0016】
核酸の増幅のための特に十分に確立された方法は、欧州特許第200362号に開示されたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法である。この方法においては、反応混合物はを、温度プロファイルの繰り返されるサイクルにかけ、温度はアニーリングプライマーが標的核酸にもたらされるように適合され、テンプレートとして当該標的核酸を用いてアニーリングしたプライマーを伸張し、そしてテンプレートから伸長産物を分離する。
【0017】
第一の段階において、核酸を含む液体を調製する。当該液体は、増幅された核酸を含む任意の液体であることができる。更に、この液体は、核酸の増幅に必要な試薬を含む。それらの試薬は、各増幅方法に関して十分に知られており、好ましくは、プライマーを伸長するための薬剤、好ましくはテンプレート依存性DNA−又はRNA−ポリメラーゼ及び浸透のためのプライマーに結合する構成要素、例えばヌクレオチドを含む。更に、当該混合物は、用いる酵素の伸長反応のための条件を確立するのに有用な試薬、例えば緩衝液及び補助因子、例えば塩を含むだろう。
【0018】
更なる段階において、二本鎖核酸の変性、一本鎖へのプライマーのアニーリング、及びアニーリングしたプライマーの伸長を可能にするように、温度を調節する。伸長反応は、ポリメラーゼが活性である温度で実施する。好ましくは、熱安定性でサーモアクティブ(thermoactive)なポリメラーゼを用いる。形成した二本鎖は、上記の変性により分離する。
【0019】
この工程は、本発明の機器を用いて実施することができる。これのために、核酸を含む試料は、挿入された装置のチャンバー中に含まれ、或いは冷却及び加熱される対象として本発明の機器中に挿入される。以下において、より一般的な用語の対象は、好ましく典型的な用語の装置により置き換えられる。
【0020】
本発明の機器の第一の要素は、少なくとも1つの実質的に平らな温度センサー素子である。本明細書中で実質的に平らとは、センサーが、その平均的な周囲より1mmを超えて盛り上がらない、より好ましくはその平均的な周囲より0.1mmを超えて盛り上がらない表面を含むことを意味する。これは、当該装置の表面の、センサー素子及び隣接する層への優れた温度接触の利点を有する。それは、それが置かれた場所の温度を測定するように設計される。そのような素子は、当業者に十分知られており、好ましくは抵抗素子である。特に有用なセンサーは、0.01μm〜10μm、好ましくは0.8μm〜1.2μmの厚さである。典型的な、商業的に入手可能なセンサー素子は、1μmの厚さであり、Heraeus Sensor Technology(Kleinostheim,Germany)、JUMO GmbH&Co.KG(Fluda,Germany)又はInnovative Sensor Technology IST AG(Wattwil,Switzerland)のような会社から入手可能である。この素子は、センサー素子を、制御ユニットへと導く電線に永続的又は可逆的に接続するためのコネクターを有する。センサー素子は、既知の方法により製造することができる。それは独立に製造し、その後、既知の手段、例えば接着により他の要素と密接に固定することができる。好ましくは、センサー素子は、その材料の層を付随層へとスパッタリングすることにより製造する。薄層を適用するこのような方法も知られている。センサー素子のための好ましい材料は、ニッケル及び白金である。好ましくは、それは、白金又は白金の他の貴金属との混合物から作られる。
【0021】
好ましくは、温度センサー素子は、カバー層により、機械的及び化学的破壊から保護する。このカバー層は、好ましくはガラスから作られ、好ましくは1μm〜25μmの厚さである。それは、好ましくは、当業界で周知の厚膜蒸着により作られる。更に、好ましくは、この層は、低い電気伝導率及び高い熱伝導率を有する。
【0022】
好ましくは、温度センサー素子は、試料中の温度と十分に関連するように設計される。これは、素子の形を、それが試料を含む装置の形に良く似るように設計することにより達成することができる。保護カバーを含むセンサー素子の接触表面と装置の接触表面は、密接に接触している。機器及び装置の規定の配置により、試料中の温度は、センサー素子中で測定された温度から、高い確実性で推定することができる。
【0023】
温度測定の結果は、機器における加熱及び冷却工程を制御するのに用いられる。
【0024】
本発明の機器の第二の必須要素は、熱伝導基板である。好ましくは、この基板は、2×103〜5×106W/m2Kの熱伝導率を有する材料から構成される。更に、当該基板は、それが好ましくは0.1〜10mm、より好ましくは1〜5mmの厚さを有するので、平らである。好ましい基板は、堅い、すなわち実質的な機械的変形に対して安定である特徴を有する。更に、好ましくは、熱伝導基板は、0.1Ω-1-1未満の電気伝導率を有する電気絶縁材料から作られる。更に、好ましくは、この基板は、低い熱時定数(密度×熱容量/熱伝導率)、好ましくは105s/m2未満の熱時定数を有する。適切な材料は、アルミナ、銅、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、サファイア、銅、銀、金、モリブデン及び黄銅から成る群から選択される。低い電気伝導率を有する材料、例えば電気絶縁材料、例えば10-9Ω-1-1未満の電気伝導率を有する材料がより好ましい。従って、特に有用な材料は、セラミック材料、例えば酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素及びサファイアである。
【0025】
この基板は、既知の方法で製造することもできる。好ましくは、基板は、セラミックスの焼結により製造される。基板は、基板の形に似た形態、好ましくは再利用可能な形態で調製することができ、或いは焼結工程の後に適切な大きさの要素へと切断することができる。
【0026】
本発明は、基板が1つ以上のチャネルを含んで成ることを必要とする。チャネルは、基板の中又は上の任意の位置に存在することができる。第一の実施態様において、チャネルは基板内に形成され、チャネルの側壁は、基板を構成する材料により完全にカバーされる。チャネルは、冷却液のための入口及び出口として設計される位置で、基板の表面に達する。この実施態様は、慎重な製造を必要とし、チャネルは流体に対して実行可能であるが、一方で漏れないことを確実にする。別の実施態様(好ましい実施態様)においては、チャネルは、基板の表面において溝として形成され、別の層の材料の層によりカバーされる。この材料は、基板の材料と同一であることができるが、異なることもできる。いずれにしても、溝は慎重に閉じられ、流体が、チャネルから、流体のための入口及び出口以外の周囲へと漏れ得ないことを確実にする必要がある。溝の閉鎖は、同一の材料の2つの部分の直接的な結合により、或いは追加の薄い接着剤を用いることにより達成することができる。これらの2つの方法は、周知である。基板の表面に溝を含んで成る本発明の実施態様は、更に2つの有力な実施態様を有する。第一の実施態様において、溝は、センサー素子の方を向いて、基板の表面に位置する。好ましい実施態様は、溝が、ヒーター層に向いて、基板の表面に位置する実施態様である。
【0027】
チャネルの大きさは、必要とされる冷却容量及び用いられる冷却液に依存するだろう。好ましくは、チャネルは、0.2mm2〜4mm2、より好ましくは0.5mm2〜2.5mm2の断面積を有する。断面は、流体がチャネルを速く流れることを可能にする任意の形態を有することができる。好ましくは、断面は、円形、卵形であることができ、或いは長方形、正方形又は台形の直径を有することができる。断面は、チャネルの全長にわたって同一であることができ、或いはチャネルの全長にわたって異なり変化することができる。好ましくは、直径は、基板内のチャネルの全長にわたって、実質的に同一である。チャネルは、できるだけ効率的に基板を冷却することが必要とされ得る。大量の短いチャネルは、少量の長いチャネルよりも効率的であり得ることが理解されるだろう。チャネルは、必要に応じて均一に基板を冷却するように、基板中に配置することができる。例えば、それらは互いに並置することができ、各入口は基板の遠位端に存在する。チャネルの形状は、基板の大きさ及び形、並びに/又は冷却する装置に適合させることができる。好ましい形状は、蛇行形状である。チャネルは、直線であることができ、或いは曲がっていることができ、或いは更に基板を通る道において、複数の通路に分岐又は分割することができる。
【0028】
基板を冷却するのに用いる流体は、十分な熱容量を有する任意の流体であることができる。最も好ましい流体は水又は空気であるが、任意の他の熱媒体を用いることができる。そのような熱媒体は、一般的に知られている。
【0029】
冷却液をチャネル中に導入するのを可能にするために、装置は、好ましくは、チャネルの端に入口と出口を有する。入口及び出口は、通常、流体の供給機器から又は供給機器へと導く管を受ける器具を有する。流体は、好ましくは、チャネルに圧力差を適用することにより、チャネルに導入される。これは、好ましくは、冷却液を加圧下でチャネルの入口に適用することにより、又は/及び低い圧力又は真空をチャネルの出口に提供することにより実施する。
【0030】
流体供給機器は、本発明の機器の一部であることができ、好ましくは冷却液の貯蔵容器である。都合良くは、その貯蔵容器は、流体からの熱を周囲に導く冷却器ユニットを含んで成る。流体を冷却するのに適した任意のユニットを用いることができ、好ましくは冷蔵庫に類似した冷却器である。冷却器はPCにより制御して、流体を、基板を冷却するのに必要とされる温度にし、流体をその温度に保持することができる。基板を逃がす場合、冷却液は冷却器に戻し、再び冷却して、基板の冷却に再利用することができる。流体をチャネルに通すために、好ましくは、機器は、流体をチャネルに送り込むモーターを含んで成る。また、モーターはコンピューターにより制御し、所定の熱容量、規定の温度及び規定の流速の流体を用いて、基板から取り除く流体の粘度及び熱に依存して、必要とされる温度まで基板を冷却することができる。冷却液の温度は、4〜35℃、好ましくは15〜27℃の範囲から選択することができる。
【0031】
チャネルを含む基板は、保護カバー層により、隣接する層、例えばヒーター層から分離することができる。このような保護カバー層は、ガラス、ガラスセラミック又はポリマー化合物から作ることができる。
【0032】
本発明の機器の第三の必須要素は、ヒーターである。ヒーターは、好ましくは実質的に平らであり、より好ましくは抵抗ヒーターである。そのようなヒーターは、一般的に当業界で知られている。好ましくは、ヒーターは、例えば酸化ルテニウム、銀、金、白金、銅、パラジウム及び他の金属から成る群から選択される高い電気抵抗を有する物質の層である。最も好ましい物質は、酸化ルテニウムである。この層は、好ましくは10μm〜30μm、より好ましくは15μm〜20μmの厚さである。ヒーターは、好ましくは、15〜40W/cm2の加熱強度を有する。
【0033】
加熱層は、好ましくは、特定の形態の物質のペーストをコーティング又はスクリーン印刷し、当該混合物を、その特定の物質が焼結するのに十分な温度まで加熱することにより調製する。好ましくは、物質はそれにより、それが焼結される層に接着する。
【0034】
本発明のヒーターは、好ましくは、抵抗ヒーターである。電流の小さな直径の電線の抵抗が、熱によりエネルギーの損失をもたらす効果を用いる。好ましいデザインは、抵抗加熱のための規定の抵抗を有する加熱コイルである。このコイルは、電線により形成されることができ、或いはそれは別の方法で、例えばプリント基板上或いはセラミック又はポリイミドのような基板上の任意の種類の物質の導体として設計することができる。1つの他の選択は、コイルが、適切な基板上での薄膜又は厚膜技術により形成されることである。コイルは、コイルのデザインに依存して、装置がコイルの内側に存在する方法において、容器の下、上又は側面、或いは装置の周りに位置することができる。
【0035】
上記の機器の異なる層は、好ましくは、互いに密接に接触して位置し、対象からの又は対象への効率的な熱の流れを可能にする。好ましくは、冷却容量は、加熱容量より十分に高い。
【0036】
本発明の機器及び/又は方法で用いる装置は、その方法の条件下で、試料を含んで成る混合物を保持するための容器である。従って、装置は、混合物に供給される熱の量及び種類に対して熱抵抗であり、且つ混合物中に含まれる試薬に対して耐性であり、且つ混合物が容器から漏れないようにきつくあるべきである。
【0037】
図1は、いくつかの好ましい追加の特徴を含む、組み立てた形態の例示的な系の必須要素を示す。熱伝導性密封ホイル(5)で閉じられたボディー(7)の中のチャンバー(6)を含んで成る装置は、試料を含む。それは、温度センサー素子(1)に近接して設置される。センサー素子(1)は、装置から基板(2)を分ける。基板は、チャネルを通って流体が運ばれることを可能にする流体チャネル(4)を含んでなり、基板の温度を実質的に低下させる。最終的に、機器は、更に、基板の温度を上昇させることを可能にするヒーター層(3)を含んで成る。
【0038】
図2においては、本発明の機器の基板(2)の断面A−A’における流体チャネル(4)の上面図を示す。流体チャネルは、並行に配置して、基板全体の均質な冷却を可能にすることができる。集中冷却のための別の配置においては、流体チャネルの周辺の基板の特定の領域又は様々な特定の領域が冷却される。流体チャネルの双方の例示的な配置においては、流体は入口から導入され、出口の流体チャネルから出る。
【0039】
本発明の機器の使用は、好ましくは、温度の効率的な制御を含み、温度プロファイル、好ましくは例えばPCRにおける温度サイクルに有用な繰り返される温度サイクルを確実に実施する。好ましくは、温度及び熱制御は、以下の段階を含む
−センサー素子を用いて、装置内の試料の温度を測定すること、
−測定温度と、試料中で到達されることが意図された温度とを比較すること、及び
−ヒーター素子により試料に熱を加えて、試料の温度が必要とされる温度より低い場合には、温度を上昇させ、或いは、試料の温度が必要とされる温度と同じ場合には、試料中の温度を維持すること。
【0040】
従って、非常に好ましい様式においては、本発明は、液体の温度に依存して、コンピュータープログラムにより、加熱工程を制御及び調節することを含んで成る。ヒーターの制御に用いられるユニットは、熱制御機器と呼ばれる。
【0041】
平らなセンサー素子により、温度の測定は、非常に迅速で、大きな電子機器を必要としない。測定温度と、必要とされる温度との比較に必要とされるアルゴリズムも、非常に単純である。当業界で知られている単純なPID(比例、積分、微分)制御アルゴリズムで十分である。
【0042】
熱は、任意に既知の方法において、例えば電流を抵抗ヒーターに継続的に適用することにより、或いは電流パルス又は交流電流を用いて熱を導入することにより、ヒーターを通して適用することができる。温度の特定の増大を達成するために必要とされる電流のパルスの長さ又は量の詳細については、単純な実験において、典型的な試料中の温度を決定し、所定の冷却容量での電流の量及び/又はパルスの長さを変えることにより決定することができる。
【0043】
好ましくは、これは、機器中に含まれる制御ユニットを用いること、センサーから温度測定値を受け取ること、及び必要とされる温度に達するまで、加熱しない、或いは継続的に又は間隔をおいて加熱することをヒーターに指示することにより実施される。より詳細には、液体中の温度は、試料を含む装置に接触した温度センサーによる測定を用いて、相互作用の物理的状態を知ることにより決定することができる。時間とともに液体中の所望の温度プロファイルを制御するために、最も小さな時間間隔で、所望の温度と測定温度をも考慮しながら、PID制御アルゴリズムは必要とされる加熱/冷却力を決め、所望の時点で適切な温度を達成するだろう。試料を含む装置と接触した温度センサーは、既知の方法で、すなわち、装置と接触したセンサーの観点から、全ての接触表面にわたる設計された側面温度強度分配に比例して、温度を測定するだろう。装置に接触したセンサーにおいて、予想されたよりも低い温度が測定された場合には、機器と装置との間の機械的接触は不十分であると考えられる。測定温度と予想温度が相互に関連する場合、機械的接触は、作業条件内であると考えられる。別の実施態様において、第二のセンサー素子は、試料中の温度を決定し、機器と装置との間の接触を評価するのに用いることができる。この場合、測定温度分解能は、たった一つのセンサーを用いる実施態様と比較して2倍になり、試料中の不適切な温度を得る危険性を顕著に低下させる。
【0044】
本発明の別の実施態様は、
−本発明の機器中で対象を加熱及び冷却すること
を含んで成る、対象の温度プロファイルを実施するための方法である。
【0045】
温度プロファイルは、試料中で達せられる一連の温度である。好ましくは、当該プロファイルの全ての温度は、室温を超え、より好ましくは37〜98℃、最も好ましくは40〜96℃である。このプロファイルは、温度が時間とともに上昇する上昇プロファイルであるか、或いは、温度が時間とともに低下する下降プロファイルであることができる。最も好ましいのは、最高及び最低温度を有する、すなわち上昇及び降下温度を有するプロファイルである。本発明の最も好ましい実施態様において、温度プロファイルは、PCRを実施するのに必要とされる繰り返される温度サイクルを含む。それらの温度サイクルは、二本鎖核酸の一本鎖への変性を可能にする最高温度、及び一本鎖核酸の二本鎖へのアニーリングを可能にする最低温度を含むだろう。
【0046】
好ましくは、本発明の方法は、更に装置を冷却することを含んで成る。本明細書中において、好ましくは、冷却は、機器、より好ましくは基板に含まれるチャネルを、その入口から流体、好ましくは気体(例えば、空気)(これは、チャネルを通過する)の流れにかけることによりなされる。流体の量及びその温度は、冷却のスピードを決定するだろう。冷却容量が十分大きい場合、冷却工程は、ヒーターにより熱が機器に加えられる場合でも実施され得る。加熱/冷却される対象から離れて基板の側面にヒーターを設置することにより、対象を冷却する間にヒーターにより生み出される熱は、冷却工程の効率を実質的に減少させるには十分でないだろう。例えば、冷却液の流れを遅くし又は止めることにより、或いはより高い温度の流体をチャネルに通すことにより、冷却を止めるとすぐに、ヒーター中で生み出される熱は流体により導き出されず、それにより対象の加熱を可能にするだろう。
【0047】
上記で概説したように、対象の加熱は、ヒーターを操作することにより、例えば電流を抵抗ヒーターに通すことにより実施される。冷却は、冷却液をチャネルに通すことにより実施される。加熱及び冷却工程は、意図された温度となるのに対象に対して必要な限り実施し、温度をある期間一定に保持する場合には、より長く実施する。加熱、冷却又は温度を保持する期間は、適用、例えばPCRに対して必要な限り選択され得る。加熱、冷却及び保持に用いる時間は、流れ及び流体に依存して、加熱及び冷却工程の開始及びそれらの強度を指示するコンピューターユニットと組み合わせた温度センサーにより制御することができる。このセンサーは、対象の中の温度を測定するのに用いることができる。コンピューターは、対象の中の温度が、従われるプロファイルの温度と等しいかどうかを決定するのに用いることができる。
【0048】
本発明の別の実施態様は、本発明の機器、及び試料を含むか又は試料を受けるために設計された装置を含んで成る、試料中の核酸を測定するための系である。この系は、本発明の核酸を増幅するための方法において用いることができる。従って、都合良くは、系は、増幅及び測定を実施するための試薬及び消耗品を含んでなり、任意に装置及び/又は飼料を扱うためのロボットの包含により自動化することもできる。この系において、装置は挿入され、電流の適切な適用及び機器の要素に対する冷却容量を確実にし、最終的に活性場所に含まれる装置を加熱及び冷却する。
【0049】
本発明の別の実施態様は、本発明の機器の中の装置中に核酸を含む液体及び増幅試薬の混合物を供給すること、及び当該装置中の混合物を温度サイクルにかけることを含んで成る、核酸を増幅するための方法である。
【実施例】
【0050】
実施例1
本発明の機器の製造
第一段階において、平らなパターン化セラミックウエハーを製造する。様々な標準的厚さの平らなセラミックウエハーは、CeramTec AG(Plochingen,Germany)から注文することができる。本明細書中で用いるように、それは酸化アルミニウムから作られ、635μmの厚さを有する。流体チャネル、すなわち一側面の開口チャネルを含むパターン化セラミックウエハーは、当業界で周知のセラミック射出成形技術により成形する。2つのセラミックプレートを接触させ、更なる焼結段階により互いに結合させる。次の段階において、Heraeusから入手可能な白金から作られる薄膜温度センサーを、セラミックバルクの大きな表面の1つにコーティングし、ガラスで作られた20μmの厚さを有するカバー層により保護する。薄膜センサーは、ヒーターとしても用いることができる。更なる製造段階において、厚膜ヒーター(材料、酸化ルテニウム、厚さ15μm)を、セラミックバルクの反対側において製造する。厚膜層も、ガラスから作られた20μmの厚さのカバー層により保護する。
【0051】
実施例2
本発明の機器を用いたPCRの実施
実施例1に記載したサーマルサイクラーを用いて、リアルタイムPCR検出のための、商業的に入手可能なLightCycler ParvoB19 Kit(Cat No 3246809、Roche Diagnostics GmbH,Germany)を利用して、キット中で提供される製造業者の指示に従って、テンプレートとしてLightCycler Parvo B19 Standardを用いて、いくつかのPCRを実施する。図3に示す温度プロファイルは、PCR曲線を生み出すように設定した。温度勾配は、PCR効率が優れている方法において選択し、一方で、サーマルサイクラーは、更に速い勾配、例えば20℃/sを扱うことができる。
【0052】
2つの実験に関する結果の図(記載した温度センサーを利用し、LightCycler ParvoB19 Kit(Roche Diagnostics GmbH,Germany)に記載した蛍光基質を励起及び測定することのできる、ブレッドボードリアルタイム蛍光測光器を用いて、記載したサーマルサイクラーを有するブレッドボード上で測定した)を、図に示す。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】図1は、本発明の機器の典型的な組立品の略図である。
【図2】図2は、均質な冷却のための配列又は集中的な冷却のための配列における、本発明の機器の基板の断面A−A’における、流体チャネルの上面図を示す。
【図3】図3は、PCR曲線を生み出すための、機器に設定された温度プロファイルを示す。
【図4】図4は、本発明の機器を用いて実施した2つの実験の結果を図で示す。
【符号の説明】
【0054】
1 温度センサー素子
2 基板
3 ヒーター層
4 流体チャネル
5 熱伝導性密封ホイル
6 反応チャンバー
7 装置のボディー
【出願人】 【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【出願日】 平成19年7月10日(2007.7.10)
【代理人】 【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤

【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬

【識別番号】100087871
【弁理士】
【氏名又は名称】福本 積

【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次

【識別番号】100145436
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 慎太郎


【公開番号】 特開2008−17843(P2008−17843A)
【公開日】 平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願番号】 特願2007−180812(P2007−180812)