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【発明の名称】 マイクロ流体素子及びそれを利用する方法
【発明者】 【氏名】劉 昌 恩

【氏名】朴 種 勉

【氏名】鄭 成 榮

【要約】 【課題】磁性ビーズの結合されている疎水性重合体が壁面に結合されているマイクロチャンネルまたはマイクロチャンバを備えるマイクロ流体素子及びそれを利用する方法を提供する。

【構成】マイクロチャンネルまたはマイクロチャンバの壁面に疎水性重合体が結合されており、前記疎水性重合体重合体には磁性ビーズが結合されているマイクロ流体素子である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロチャンネルまたはマイクロチャンバの壁面に疎水性重合体が結合されており、前記疎水性重合体には磁性ビーズが結合されている、マイクロ流体素子。
【請求項2】
前記疎水性重合体は、水接触角が70°〜90°である、請求項1に記載のマイクロ流体素子。
【請求項3】
前記疎水性重合体は、ビニル系単量体の重合体である、請求項1に記載のマイクロ流体素子。
【請求項4】
前記ビニル系単量体は、C−C20のアルキルアクリレート、C−C20のアルキルメタクリレート、及びスチレンから構成される群から選択される少なくとも1種である、請求項3に記載のマイクロ流体素子。
【請求項5】
前記疎水性重合体は、架橋性単量体により架橋重合されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載のマイクロ流体素子。
【請求項6】
前記架橋性単量体は、脂肪族架橋性単量体および芳香族架橋性単量体の少なくとも一方である、請求項5に記載のマイクロ流体素子。
【請求項7】
前記脂肪族架橋性単量体は、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ジビニルケトン、アリールアクリレート、ジアリルマレエート、ジアリルフマレート、ジアリルスクシネート、ジアリルカルボネート、ジアリルマロネート、ジアリルオキサレート、ジアリルアジペート、ジアリルセバケート、ジビニルセバケート、N,N’−メチレンジアクリルアミド、及びN,N’−メチレンジメタクリルアミドから構成される群から選択される少なくとも1種である、請求項6に記載のマイクロ流体素子。
【請求項8】
前記芳香族架橋性単量体は、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルナフタレン、ジアリルフタレート、ジビニルキシレン、及びジビニルエチルベンゼンから構成される群から選択される少なくとも1種である、請求項6または7に記載のマイクロ流体素子。
【請求項9】
前記磁性ビーズは、前記疎水性重合体に共有結合によって結合されている、請求項1〜8のいずれか1項に記載のマイクロ流体素子。
【請求項10】
ビニル系単量体と、ビニル結合を有する官能基を表面に有する磁性ビーズと、架橋性単量体と、光重合開始剤と、マイクロチャンネルまたはマイクロチャンバの壁面に存在するビニル結合を有する官能基と、を光重合することを含む、マイクロ流体素子の製造方法。
【請求項11】
前記光重合反応は、前記ビニル系単量体100質量部に対して、前記磁性ビーズ15質量部ないし33質量部、前記架橋性単量体25質量部ないし75質量部、及び前記光重合開始剤5質量部ないし13質量部を前記マイクロチャンネルまたはマイクロチャンバに注入し、紫外線を照射して行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ビニル系単量体は、C−C20のアルキルアクリレート、C−C20のアルキルメタクリレート、及びスチレンから構成される群から選択される少なくとも1種である、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記架橋性単量体は、脂肪族架橋性単量体および芳香族架橋性単量体の少なくとも一方である、請求項10または11に記載の方法。
【請求項14】
発光装置をさらに備える、請求項1〜9のいずれか1項に記載のマイクロ流体素子。
【請求項15】
前記マイクロチャンネルまたはマイクロチャンバと流体流通可能に連結されている反応チャンバ、前記反応チャンバに熱を提供するヒーター、および前記熱を冷却する冷却器を備えるPCR反応部が備えられている、請求項1〜9および14のいずれか1項に記載のマイクロ流体素子。
【請求項16】
請求項1〜9、14および15のいずれか1項に記載のマイクロ流体素子のマイクロチャンネルまたはマイクロチャンバを介して、細胞またはウイルスを含む試料を流しながら、細胞またはウイルスを疎水性重合体に付着させる段階を含む、細胞またはウイルスをマイクロチャンネルまたはマイクロチャンバ内で濃縮する方法。
【請求項17】
前記細胞またはウイルス試料のpHは、pH2.0〜7.0である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
請求項1〜9、14および15のいずれか1項に記載のマイクロ流体素子のマイクロチャンネルまたはマイクロチャンバを介して、細胞またはウイルスを含む試料を流しながら、細胞またはウイルスを前記疎水性重合体に付着させる段階と、
前記マイクロチャンネルまたはマイクロチャンバ内の磁性ビーズに光を照射して熱を発生させることで、細胞またはウイルスを破砕する段階と、
を含む細胞またはウイルスを破砕する方法。
【請求項19】
請求項1〜9、14および15のいずれか一項に記載のマイクロ流体素子のマイクロチャンネルまたはマイクロチャンバ流通を介して、細胞またはウイルスを含む試料を流しながら、細胞またはウイルスを前記疎水性重合体に付着させる段階と、
前記マイクロチャンネルまたはマイクロチャンバ内の磁性ビーズに光を照射して熱を発生させることで、細胞またはウイルスを破砕して細胞またはウイルス破砕物を得る段階と、
前記細胞またはウイルス破砕物を鋳型としてPCRを行う段階と、
を含む細胞またはウイルスから標的核酸を増幅する方法。
【請求項20】
請求項15に記載のマイクロ流体素子において、PCRがマイクロ流体素子内のPCR反応部で行われる、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ流体素子、ならびにそれを利用した細胞またはウイルス濃縮、核酸抽出及び増幅方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ流体素子は、細胞濃縮、細胞分離、破砕、及び核酸の増幅のためのラボオンチップ(Lab−on−a−chip)として広く使われている。
【0003】
一方、“磁性ビーズ”は、主に金属酸化物粒子が硬い重合体コーティング層で被覆されている。前記金属酸化物粒子は、常磁性または超常磁性特性を有する任意の金属酸化物または金属合金を意味する。“常磁性粒子”とは、外部磁場に敏感であるが、永久磁性ドメインを維持できない金属酸化物粒子をいう。“硬い”という用語は、粒子が被覆されて維持されるように、コーティング内で前記金属酸化物粒子を安定化させる程度に架橋された重合体コーティングを意味する。このような磁性ビーズは、当業界の周知の方法によって製造することができる。例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3に多様な磁性ビーズについて開示されている。
【0004】
また、特許文献4には、複合磁性ビーズとして、a)一つ以上のビニル単量体を含む第1重合体の微多孔性マトリクス及びb)誘導可能な磁性特性を有する金属酸化物及び一つ以上のビニル単量体を有する第2重合体コーティングを含む複数個の一次ビーズであり、前記コーティングは、前記金属酸化物を被覆し、前記複数個の一次ビーズは、前記微多孔性マトリクスにわたって分布されている複合磁性ビーズが開示されている。
【特許文献1】米国特許第5,395,688号明細書
【特許文献2】米国特許第5,318,797号明細書
【特許文献3】米国特許第5,283,079号明細書
【特許文献4】米国特許第5,834,121号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、磁性ビーズが共有結合して疎水性重合体マトリクスとしてマイクロチャンネルまたはマイクロチャンバの壁面に共有結合されているマイクロ流体素子は、まだ開示されていない。
【0006】
本発明の目的は、磁性ビーズが結合された疎水性重合体がマイクロチャンネルまたはマイクロチャンバの壁面に共有結合されているマイクロ流体素子を提供することである。
【0007】
本発明の他の目的は、本発明のマイクロ流体素子を用いて細胞またはウイルスを濃縮する方法を提供することである。
【0008】
本発明のさらに他の目的は、本発明のマイクロ流体素子を用いて細胞またはウイルスを破砕する方法を提供することである。
【0009】
本発明のさらに他の目的は、本発明のマイクロ流体素子を用いて細胞またはウイルスから核酸を増幅する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、マイクロチャンネルまたはマイクロチャンバの壁面に疎水性重合体が結合されており、前記疎水性重合体には、磁性ビーズが結合されているマイクロ流体素子を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のマイクロ流体素子によれば、細胞またはウイルスを濃縮、破砕及び細胞またはウイルスから核酸を増幅する過程のうち、一つ以上の過程を効率的に行うことができる。
【0012】
本発明の細胞またはウイルスをマイクロチャンネルまたはマイクロチャンバ内で濃縮する方法によれば、細胞またはウイルスを前記マイクロチャンネルまたはマイクロチャンバ中に効率的に濃縮できる。
【0013】
本発明の細胞またはウイルスを破砕する方法によれば、細胞またはウイルスをマイクロチャンネルまたはマイクロチャンバ内で効率的に破砕できる。
【0014】
本発明の細胞またはウイルスから標的核酸を増幅する方法によれば、細胞またはウイルスから標的核酸を効率的に増幅できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、マイクロチャンネルまたはマイクロチャンバの壁面に疎水性重合体が結合されており、前記疎水性重合体には磁性ビーズが結合されている、マイクロ流体素子である。
【0016】
本発明において、“マイクロ流体素子”とは、マイクロチャンネルまたはマイクロチャンバなどのマイクロ流体要素を含む装置を指す。一つ以上の入口及び出口は、マイクロチャンネルまたはマイクロチャンバを介して連結されている。入口または出口がマイクロチャンネルまたはマイクロチャンバを介して連結されているものであれば、その名称に関係なくマイクロ流体素子に含まれる。例えば、マイクロチップやラボオンチップが含まれうる。このようなマイクロ流体素子は、細胞濃縮、細胞分離、破砕、及び核酸の増幅のために広く使われている。しかし、本願のマイクロ流体素子が、マイクロチップやラボオンチップに限定されるものではなく、単純に入口及び出口が備えられており、前記入口と出口との間がマイクロチャンネルによって連結されているか、マイクロチャンネルによって連結されたマイクロチャンバが備えられていればよい。
【0017】
本発明において、疎水性重合体は、水接触角が70°〜90°の重合体でありうる。水接触角が70°〜90°である前記重合体は、細胞またはウイルスのような物質を結合して濃縮できる。本発明において、前記重合体は、接触角が前記範囲に含まれるものであれば、いずれの重合体でもよく、例えば、共重合体、及び架橋重合体などが含まれ、望ましくは、網状媒質を形成する架橋重合体である。
【0018】
本発明において、“水接触角”とは、Kruss Drop Shape Analysis System Type DSA 10 Mk2によって測定された水接触角を意味する。具体的には、1.5μlの蒸溜水滴を試料上に自動的に位置させ、前記水滴をCCD−カメラによって0.2秒ごとに10秒間モニターし、Drop Shape Analysis software〈DSA version 1.7、Kruss〉によって分析した値を採用する。前記水滴の完全な形状は、タンジェント方法によって一般的円錐曲線の切片方程式〈general conic section equation〉に適合化した(fitted)。前記角は、右側及び左側のいずれも測定し、平均値を各水滴に対して決定し、試料当たり全5滴を測定した。前記5滴の平均を水接触角とした。
【0019】
本発明において、前記重合体の平均分子量は、特に制限されるものではないが、GPC(ゲル浸透クラマトグラフ)による測定で重量平均分子量が100,000〜1,000,000であることが好ましい。なお、GPCは、J.Polymer Science, part B, Polymer Physics, Vol. 38, p. 1348, 2000;Chemistry Letters, p. 1049,2000;などに記載されている方法によって行われる。
【0020】
本発明のマイクロ流体素子において、前記疎水性重合体は、フリーラジカル重合反応によって重合されうるビニル二重結合を有するビニル系単量体の重合体でありうる。したがって、前記ビニル系単量体には、例えば、アクリル基を有する単量体も含まれうる。ここで、「ビニル系単量体の重合体」とは、ビニル系単量体の共重合体、ビニル系単量体と重合しうる他の単量体との共重合体、ビニル系単量体と後述する架橋性単量体との架橋重合体を含む概念である。前記ビニル系単量体は、特に限定されるものではないが、C−C20、好ましくはC−C10、より好ましくはC−Cのアルキルアクリレート、C−C20、好ましくはC−C10、より好ましくはC−Cのアルキルメタクリレート及びスチレンから構成される群から選択される少なくとも1種である。C−Cのアルキル(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、iso−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0021】
本発明のマイクロ流体素子において、前記重合体は、ビニル系単量体と架橋性単量体の重合体とよって得られる架橋重合されたものでありうる。ビニル系単量体と架橋性単量体との混合比は、特に限定されるものではないが、ビニル系単量体100重量部に対して、好ましくは架橋性単量体25〜75重量部、より好ましくは25〜50重量部である。
【0022】
前記架橋性単量体は、当業界に知られた任意の架橋性単量体が使われうる。例えば、脂肪族架橋性単量体または芳香族架橋性単量体が使われうる。前記脂肪族架橋性単量体は、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ジビニルケトン、アリールアクリレート、ジアリルマレエート、ジアリルフマレート、ジアリルスクシネート、ジアリルカルボネート、ジアリルマロネート、ジアリルオキサレート、ジアリルアジペート、ジアリルセバケート、ジビニルセバケート、N,N’−メチレンジアクリルアミド、及びN,N’−メチレンジメタクリルアミドから構成された群から選択されたものでありうる。これらのうち、好ましくは、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレートであり、より好ましくは、トリメチロールプロパントリメタクリレートである。
【0023】
また、前記芳香族架橋性単量体は、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルナフタレン、ジアリルフタレート、ジビニルキシレン、及びジビニルエチルベンゼンから構成された群から選択されたものが含まれうる。上記脂肪族架橋性単量体または芳香族架橋性単量体は、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0024】
本発明のマイクロ流体素子において、前記磁性ビーズは、前記疎水性重合体に共有結合によって結合されていてもよい。前記重合体と磁性ビーズとの共有結合は、当業界に知られた任意の方法によって製造できる。例えば、前記磁性ビーズの表面を一つ以上のビニル二重結合を有する官能基に官能化させ、このビニル官能基を含む磁性ビーズを前記ビニル系単量体及び/または架橋性単量体の存在下でイオンラジカル重合を行うことによって製造できる。
【0025】
また、前記疎水性重合体とマイクロチャンネルまたはマイクロチャンバの壁面との結合は、望ましくは共有結合である。前記壁面と前記疎水性重合体との共有結合も、当業界に知られた任意の方法によって行われうる。例えば、前記共有結合は、前記磁性ビーズが結合されている重合体を合成した後に、得られた重合体を官能化された壁面に反応させて結合されるか、前記壁面をフリーラジカル重合できるビニル官能基を有するように官能化した後に、フリーラジカル反応を前記マイクロチャンネルまたはマイクロチャンバ内で行うことで行われうる。前記壁面にビニル官能基を導入する方法は、実施例に記載されているような、ビニル官能基を有する酸化ケイ素を利用する方法が含まれる。また、酸化ケイ素の表面ではない場合では、他の方法が使用されうる。例えば、PMMA及びCOCのようなプラスチックにビニル官能基を導入しようとする場合、実施例に記載された3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレートのような、シリル化合物がではないアクリレートまたはメタクリレート基を有する化合物を用いてUVを照射することで、ビニル基を導入する方法が使われる。
【0026】
本発明で使われる磁性ビーズは、当業界に知られた任意の磁性ビーズであり、米国特許第5,395,688号、第5,318,797号、及び第5,283,079号公報に記載された磁性ビーズが使われうる。
【0027】
本発明のマイクロ流体素子の製造方法の一具体例は、ビニル系単量体と、ビニル結合を有する官能基を表面に有する磁性ビーズと、架橋性単量体と、光重合開始剤と、マイクロチャンネルまたはマイクロチャンバの壁面に存在するビニル結合を有する官能基と、を光重合することを含む。
【0028】
マイクロチャンネルあるいはマイクロチャンバの壁面、または磁性ビーズの表面に、ビニル結合を有する官能基を存在させる方法としては、ビニル結合を有する化合物とマイクロチャネル等とを常温で数時間反応させる方法が挙げられる。
【0029】
上記ビニル結合を有する化合物としては、3−(トリメトキシシリル)C−Cアルキルメタクリレート、3−(トリメトキシシリル)C〜Cアルキルアクリレートが挙げられる。C−Cのアルキルとしては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基が挙げられる。
【0030】
本発明のマイクロ流体素子の製造方法の一具体例は、前記光重合反応は、前記ビニル系単量体100重量部に対して、前記磁性ビーズを15重量部ないし33重量部、前記架橋性単量体を25重量部ないし75重量部、及び前記光重合開始剤を5重量部ないし13重量部を前記マイクロチャンネルまたはマイクロチャンバに注入し、紫外線を照射して行われるマイクロ流体素子でありうる。紫外線照射の条件は、特に限定されるものではないが、2500〜7500mJ/cmであることが好ましい。
【0031】
本発明の前記具体例において、前記ビニル系単量体は、C−C20、好ましくはC−C10、より好ましくはC−Cのアルキルアクリレート、C−C20、好ましくはC−C10、より好ましくはC−Cのアルキルメタクリレート及びスチレンから構成される群から選択されるものでありうる。また、前記架橋性単量体は、脂肪族架橋性単量体または芳香族架橋性単量体の少なくとも一方であるが、脂肪族架橋性単量体であることが好ましい。なお、脂肪族架橋性単量体、芳香族架橋性単量体は、上記で列挙した単量体を具体的に用いうる。架橋性単量体のうち、好ましくは、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレートであり、より好ましくは、トリメチロールプロパントリメタクリレートである。
【0032】
本発明の前記具体例において、前記光重合開始剤は、従来公知のものを用いることができるが、アセトフェノン誘導体であることが好ましく、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノンであることがより好ましい。
【0033】
本発明のマイクロ流体素子において、前記マイクロチャンネルまたはマイクロチャンバの内部に光を提供できるように発光装置をさらに備えてもよい。前記発光装置は、前記ビーズが吸収できる波長帯の光を出す発光装置であれば、いずれも使用できる。例えば、前記発光装置は、レーザーであってもよい。前記発光装置、例えば、レーザーは、前記マイクロチャンネルまたはマイクロチャンバにレーザーを印加して、その内部の重合体に結合されている磁性ビーズに適用できるものであれば、前記マイクロチャンネルまたはマイクロチャンバの内部または外部に位置してもよい。前記マイクロチャンネルまたはマイクロチャンバの外部に位置する場合、前記マイクロチャンネルまたはマイクロチャンバと接触するか、離隔されうる。この場合、前記マイクロチャンネルまたはマイクロチャンバの一つ以上の壁面は、透光性材質からなる。前記発光装置、例えば、レーザーは、磁性ビーズにレーザーを印加してレーザー加熱を誘発させて、試料中の細胞を破砕でき、蛋白質などの生物学的物質を変性させることができる。
【0034】
本発明のマイクロ流体素子において、前記マイクロ流体素子は、前記マイクロチャンネルまたはマイクロチャンバと流体流通可能に連結されている反応チャンバ、前記反応チャンバに熱を提供するヒーター、及び前記熱を冷却する冷却器を有するPCR反応部が備えられていてもよい。したがって、本発明のマイクロ流体素子は、前記マイクロチャンネルまたはマイクロチャンバで細胞またはウイルスを含んでいる生物学的試料を濃縮し、破砕した後に得られる細胞破砕物を直接的に使用してPCRを行うことができる。
【0035】
本発明はまた、本発明によるマイクロ流体素子の前記マイクロチャンネルまたはマイクロチャンバを介して細胞またはウイルスを含む試料を流しながら、細胞またはウイルスを前記疎水性重合体に付着させる段階を含む細胞またはウイルスを前記マイクロチャンネルまたはマイクロチャンバ内で濃縮する方法を提供する。
【0036】
本発明の濃縮方法は、本発明によるマイクロ流体素子の前記マイクロチャンネルまたはマイクロチャンバを介して細胞またはウイルスを含む試料を流す段階を含む。前記マイクロチャンネルまたはマイクロチャンバには、前記疎水性重合体が付着されているため、細胞またはウイルスがこれらの重合体に結合される。前記細胞またはウイルス試料のpHは、pH2.0〜7.0、好ましくは、pH2.5〜4.0である。
【0037】
本発明はまた、本発明によるマイクロ流体素子において、マイクロ流体素子のマイクロチャンネルまたはマイクロチャンバを介して、細胞またはウイルスを含む試料を流しながら細胞またはウイルスを前記疎水性重合体に付着させる段階と、前記マイクロチャンネルまたはマイクロチャンバ内の前記重合体に光を照射して熱を発生させることで、細胞またはウイルスを破砕する段階と、を含む細胞またはウイルスを破砕する方法を提供する。
【0038】
本発明において、前記光は、前記磁性ビーズが吸収できる波長帯の光であり、前記発光装置は、前記磁性ビーズが吸収できる波長帯の光を出すものであれば、いずれも使用可能である。前記発光装置は、例えば、レーザー発生器でありうる。
【0039】
本発明の細胞またはウイルスを破砕する方法は、前記のように、マイクロ流体素子のマイクロチャンネルまたはマイクロチャンバを介して細胞またはウイルスを含む試料を流しながら、細胞またはウイルスを前記疎水性重合体に付着させる段階を含む。
【0040】
本発明の細胞またはウイルスを破砕する方法は、前記マイクロチャンネルまたはマイクロチャンバ内の前記重合体に光を照射して熱を発生させて細胞またはウイルスを破砕する段階を含む。光、例えばレーザー光を前記重合体に印加することによって、前記磁性ビーズと反応して熱を発生させ、これによって細胞またはウイルスが破砕される。破砕の際、用いられる緩衝液としては、Tris緩衝液であることが好ましい。
【0041】
本発明はまた、本発明によるマイクロ流体素子において、前記マイクロチャンネルまたはマイクロチャンバの内部に光を提供できるように発光装置をさらに含んでおり、前記マイクロチャンネルまたはマイクロチャンバと流体流通可能に連結されている反応チャンバ、前記反応チャンバに熱を提供するヒーター、及び前記熱を冷却する冷却器を備えるPCR反応部がさらに備えられているマイクロ流体素子のマイクロチャンネルまたはマイクロチャンバを介して、細胞またはウイルスを含む試料を流しながら細胞またはウイルスを前記疎水性重合体に付着させる段階と、前記マイクロチャンネルまたはマイクロチャンバ内に前記磁性ビーズに光を照射して熱を発生させることで、細胞またはウイルスを破砕する段階と、前記細胞またはウイルス破砕物を鋳型としてPCRを行う段階とを含む細胞またはウイルスから標的核酸を増幅する方法を提供する。
【0042】
本発明において、前記光は、前記ビーズが吸収できる波長帯の光であり、前記発光装置は、前記ビーズが吸収できる波長帯の光を出すものであれば、いずれも使用可能である。前記発光装置は、例えば、レーザー発生器でありうる。
【0043】
本発明の細胞またはウイルスから標的核酸を増幅する方法は、マイクロ流体素子のマイクロチャンネルまたはマイクロチャンバを介して細胞またはウイルスを含む試料を流しながら、細胞またはウイルスを前記疎水性重合体に付着させる段階と、前記マイクロチャンネルまたはマイクロチャンバ内の前記磁性ビーズに光を照射して熱を発生させることで、細胞またはウイルスを破砕する段階とを含み、これらについては前記した通りである。
【0044】
本発明の細胞またはウイルスから標的核酸を増幅する方法はまた、前記細胞またはウイルス破砕物を鋳型としてPCRを行う段階を含む。“PCR(polymerase chain reaction)”は当業界で周知である。例えば、米国特許第4,683,195号、第4,683,202号、及び第4,965,188号公報にPCRについて詳細に記載されており、これらの方法によってPCRを行うことができる。PCRは、適切な条件下でDNAポリメラーゼのような重合剤及びdNTPの存在下でプライマーを標的核酸(“鋳型”ともいう)の鎖に混成化することに関連する。プライマー延長産物が変成されれば、前記鋳型の一つのコピーが製造されたことであり、アニーリング、延長及び変性の周期を所望の回数だけ行って、標的核酸と同じ配列を有する核酸の量を指数的に増加させる。
【0045】
本発明の細胞またはウイルスから標的核酸を増幅する方法において、前記PCRは、前記マイクロ流体素子内の前記PCR反応部で行われる。
【実施例】
【0046】
以下、本発明を実施例を通じてさらに詳細に説明する。しかし、それら実施例は、本発明を例示的に説明するためのものであり、本発明の範囲がそれら実施例に限定されるものではない。
【0047】
実施例1:マイクロチャンネルまたはマイクロチャンバ内で磁性ビーズと共重合された重合体の合成
本実施例では、磁性ビーズとTMC−1000(サムスンテックウィン)用マイクロチップのマイクロチャンバ(体積6μl)の表面とを3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレートと反応させて、ビニル官能基を有するようにした。前記マイクロチップのマイクロチャンバは、湿式エッチングされたシリコンと孔を有するガラスとを接合させて製作されたものである。次に、前記磁性ビーズ、ビニル系単量体としてブチルメタクリレート、架橋性単量体としてトリメチロールプロパントリメタクリレート、及び光重合開始剤として2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノンを前記マイクロチャンネル内でUVを照射して光重合させることで、磁性ビーズが結合されている架橋されたポリブチルメタクリレートが壁面に共有結合されているマイクロチャンバを製造した。
【0048】
(1)磁性ビーズのメタクリレート官能基化
酸化ケイ素表面を有する磁性ビーズ(BIOCINE社、直径1μl)1ml(40mg)をマイクロチューブに添加し、0.1N NaOHで3回、蒸溜水で1回、0.1N HClで3回、蒸溜水で1回洗浄した後、アセトンで3回洗浄した。磁石を用いて前記磁性ビーズを溶液から分離した後、ここに30% 3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート溶液(v/v、アセトン)を加え、12時間よく混合しながら反応させた。反応が完了した後、アセトンで3回、メタノールで3回洗浄した後、メタノール1mlに懸濁して保管した。
【0049】
(2)マイクロチャンバの内部表面のメタクリレート官能基化
TMC−1000(サムスンテックウィン)用マイクロチップのマイクロチャンバ(体積6μl)に0.1N NaOHを入れて20分間放置した後、溶液を除去して水で洗浄した。さらに0.1N HClを入れて20分間放置した後、溶液を除去して水とアセトンとでそれぞれ洗浄した。
【0050】
マイクロチャンバを乾燥させた後、30% 3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート溶液(v/v、アセトン)を加え、12時間常温で放置した後、アセトンで3回洗浄した後、オーブンで乾燥した。
【0051】
(3)ブチルメタクリレート共重合体の合成
15重量%のブチルメタクリレート、10重量%のトリメチロールプロパントリメタクリレート(TRIM)、50重量%のメタノール、25重量%のヘキサンを含む溶液を製造した後、ここに2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン10mg(ブチルメタクリレート100重量部に対して6.7重量部)を溶解した。
【0052】
得られた混合溶液100μlに、(1)で磁石を用いて除去して得られたメタクリレート官能化した磁性ビーズ100μl(ブチルメタクリレート100重量部に対してメタクリレート官能化した磁性ビーズ26.7重量部)を添加し、よく混合した。この溶液を(2)でメタクリレート官能化したマイクロチャンバに注入した後、ここにUV−crosslinker(CL−1000)を用いて5000mJ/cmのエネルギーで4分間254nmの光に露光した。次に、反応物中の溶液をチップ自体を遠心分離して除去し、反応産物をメタノールで3回洗浄した後、オーブンで乾燥した。対照群として、磁性ビーズが結合されていない重合体は、磁性ビーズを混合する過程を除いては同一に合成した。
【0053】
図1は、マイクロチャンバ内で合成された磁性ビーズが結合されている架橋されたポリブチルメタクリレートを示す図である。図1に示すように、架橋されたポリブチルメタクリレートには、多くの気孔が存在する。合成された疎水性重合体の水接触角は、75°であった。
【0054】
実施例2:磁性ビーズの結合されている疎水性重合体が結合されているマイクロチャンバでの細胞濃縮
本実施例では、磁性ビーズの結合されている架橋されたポリブチルメタクリレートが結合されているマイクロチャンバで細胞を含む試料を流して細胞を濃縮した。
【0055】
まず、100mMリン酸緩衝液(pH4.0)中に0.01 OD600となるように大腸菌を添加し、大腸菌溶液を実施例1で準備した重合体が結合されているマイクロチャンバに50μl/分の速度で3分間流した。前記マイクロチャンバ通過前後の溶液を1×PBSで10,000倍希釈し、細胞培養に使われるフィルムである3M PetriFilmに塗抹し、生育された大腸菌コロニー数を測定して、前記マイクロチャンバ通過前後の細胞濃度を測定した。これに基づいて、前記マイクロチャンバ通過前後の細胞数を比較して、前記マイクロチャンバ中の重合体に大腸菌が結合した結合比率を計算し、マイクロチャンバの体積とマイクロチャンバを通過した溶液の体積とを比較して、大腸菌の濃縮率を計算した(表1参照)。
【0056】
【表1】


【0057】
表1に示したように、大腸菌は、磁性ビーズが結合されているか否かに関係なく、約10倍以上濃縮されたことが分かる。
【0058】
実施例3:磁性ビーズの結合されている疎水性重合体が結合されているマイクロチャンバでの細胞濃縮及び細胞破砕、及び前記細胞破砕物を利用したPCR
本実施例では、実施例2で濃縮された大腸菌をレーザーを用いて破砕し、その破砕物を直接PCRに用いて大腸菌核酸を増幅した。
【0059】
まず、実施例2のように大腸菌濃縮が完了した後、マイクロチャンバから溶液を除去し、ここにTris(10mM、pH9.0)または1×PBS溶液を満たした。次に、前記マイクロチャンバの上部基板を通じて808nm波長のレーザー光をレーザー発生器(Hamamatsu 8446−72社、1W)を用いて40秒間前記重合体−磁性ビーズに照射した。その結果から得られる細胞破砕物をPCRに直接使用した。
【0060】
PCRマスター混合物は、10×Solgent緩衝液20μl、tagポリメラーゼ(Solgent)4μl、dNTP(10mMm、Solgent)4μl、フォワードプライマー(10μM)及びリバースプライマー(10μM)をそれぞれ10μl(それぞれ配列番号1及び2)及びTaqMan probe(10μM)(配列番号3)8μlの混合物(総56μl)であり、前記マスター混合物と前記マイクロチャンバから分離された細胞破砕物とを3:1(v/v)で混合した後、TMC−1000のPCR反応チャンバに1μl注入してPCRを行った。
【0061】
PCR条件は、95℃で1分間変性させた後、95℃で5秒、45℃で20秒、72℃で20秒を40回行った。リアルタイムでPCRを行いつつCt値を測定した。その結果は表2のようである。
【0062】
【表2】


【0063】
表2に示したように、重合体−磁性ビーズを使用した場合のCt値が、使用しない場合に比べて減少した。これは、磁性ビーズが存在する場合にレーザー光によって細胞破砕がさらに効率的に起こるためであると考えられる。
【0064】
本実施例では、前記PCR産物を電気泳動し、それから得られた産物をLabChip(Agilent社)を用いて分析した。その結果は表3のようである。
【0065】
【表3】


【0066】
表3に示したように、Tris緩衝液を破砕緩衝液として使用した場合、Ct値と一致して磁性ビーズが結合された共重合体で産物がさらに多く増幅された。
【0067】
図2は、磁性ビーズが結合されている疎水性重合体が共有結合されているマイクロチャンバで大腸菌細胞を濃縮し、レーザーを用いて細胞を破砕し、細胞破砕物を直接鋳型としてPCRして得られた産物を電気泳動した結果を示す図である。各レーンについての説明は、前記表3に示した通りである。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、マイクロ流体素子関連の技術分野に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】マイクロチャンバ内で合成された磁性ビーズが結合されている架橋されたポリブチルメタクリレートを示す図である。
【図2】図2は磁性ビーズが結合されている疎水性重合体が共有結合されているマイクロチャンバで大腸菌細胞を濃縮し、レーザーを用いて細胞を破砕し、細胞破砕物を直接鋳型としてPCRを行って得られた産物を電気泳動した結果を示す図である。
【出願人】 【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【出願日】 平成19年6月29日(2007.6.29)
【代理人】 【識別番号】100072349
【弁理士】
【氏名又は名称】八田 幹雄

【識別番号】100110995
【弁理士】
【氏名又は名称】奈良 泰男

【識別番号】100114649
【弁理士】
【氏名又は名称】宇谷 勝幸

【識別番号】100129126
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 健

【識別番号】100130971
【弁理士】
【氏名又は名称】都祭 正則

【識別番号】100134348
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 俊弘


【公開番号】 特開2008−11859(P2008−11859A)
【公開日】 平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願番号】 特願2007−172701(P2007−172701)