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【発明の名称】 インキュベータ及びインキュベータ用加湿皿
【発明者】 【氏名】大沢 慎次

【氏名】伊藤 健一

【要約】 【課題】加湿用の水が貯溜された加湿皿からの蒸発量を制御することを可能とし、培養空間における結露の発生を抑制することを可能とするインキュベータ及び当該インキュベータに用いられる加湿皿を提供する。

【構成】本発明のインキュベータ2は、培養室13内を培養物としての細胞の培養に適したガス、温度及び湿度環境とするものであって、培養室13内に設けられて加湿用の水を貯留する加湿皿55を備え、該加湿皿55は、培養室13内に露出される水面を制限するための蓋60を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
培養室内を培養物の培養に適したガス、温度及び湿度環境とするインキュベータにおいて、
前記培養室内に設けられて加湿用の水を貯留する加湿皿を備え、
該加湿皿は、前記培養室内に露出される水面を制限するための蓋を有することを特徴とするインキュベータ。
【請求項2】
熱伝導の良好な部材にて構成され、インキュベータの培養室内に設けられて加湿用の水を貯留する加湿皿において、
前記皿本体の上面開口に設けられた蓋を備え、該蓋は前記培養室内に露出される水面を制限することを特徴とするインキュベータ用加湿皿。
【請求項3】
前記蓋は、前記培養室内に露出される水面の面積を調整可能とされていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のインキュベータ又はインキュベータ用加湿皿。
【請求項4】
前記蓋は、前記加湿用の水を前記培養室内に露出させるための窓と、該窓内において露出される水面の面積を調整するための可動閉塞部材とを有することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載のインキュベータ又はインキュベータ用加湿皿。
【請求項5】
前記蓋は、前記窓より外側に位置するガス導入部を有することを特徴とする請求項4に記載のインキュベータ又はインキュベータ用加湿皿。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、内容室内を培養物の培養に適したガス、温度及び湿度環境とするインキュベータ及び当該インキュベータに用いられる加湿皿に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年のバイオ、再生医療関連の分野の発達に伴い、インキュベータを使用して細胞を培養する作業が、増加傾向にある。細胞の培養を促進するためには、それぞれの細胞に適した培養空間を整備する必要があり、従来より、培養空間の温度制御、湿度制御、雰囲気制御を行うインキュベータが開発されている。
【0003】
特に、培養条件としてCO2(二酸化炭素)ガス濃度の厳格な濃度条件を要求する細胞の培養を行う場合には、温度制御及び湿度制御を行うものに加えて、培養空間のCO2ガス濃度を制御可能とするCO2インキュベータが用いられている。
【0004】
また、培養条件としてO2(酸素)ガス濃度の厳格な濃度条件を要求する細胞の培養を行う場合には、温度制御及び湿度制御を行うものに加えて、培養空間のO2ガス濃度を制御可能とするインキュベータが用いられる。一般に、O2ガス濃度の濃度調整を行う場合には、設定O2ガス濃度が20%未満の場合には、O2ガスボンベからO2ガスを培養空間に供給し、設定O2ガス濃度が20%以下の場合には、N2ガスボンベからN2ガスを培養空間に供給する。
【0005】
また、培養空間では、細胞等の培養を促進するため、湿度を高く、例えば90%以上に維持する制御が行われる(例えば特許文献1及び特許文献2参照)。これら各特許文献に示される培養空間の加湿手段としては、水が貯溜された加湿トレイが培養空間の底面に設置されており、当該加湿トレイから自然蒸発される水分によって培養空間の加湿が行われていた。
【特許文献1】特開平10−234351号公報
【特許文献2】特開2002−112762号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、加湿トレイからの自然蒸発による培養空間の加湿方法では、培養空間の温度との関係により加湿トレイからの蒸発量によって成り行きに任せられたものであった。そのため、培養空間内の湿度が95%以上となると、培養空間を構成する内壁面や棚表面、更には培養物が収容された試料容器との間において少しの温度差(例えば0.5℃)が生じると、低い方の表面に結露が発生する問題があった。
【0007】
特に、顕微鏡機能を備えたインキュベータにおいては、培養物の観察が行われるテーブル面と、培養空間との間に温度差が生じ、顕微鏡を構成するレンズや観察対象が収容される試料容器内面や外面等に結露が発生した場合には、顕微鏡によって培養物を観察することができなくなる問題がある。
【0008】
そこで、培養空間内の空気を漏出させ、新たなガス(CO2ガスやO2ガス又はN2ガス、外気)を導入することによって、高湿度、且つ、培養空間内に結露が生じにくい湿度(例えば90%程度)に維持することが考えられる。
【0009】
しかしながら、O2ガスやN2ガスは、比較的コストが高い。そのため、必要最低限のガス導入量によって、O2ガス濃度を調整することが好ましく、ガスの入替以外の方法によって、培養空間内の湿度を所定の高湿度に調整する機構の開発が望まれている。
【0010】
そこで、本発明は従来の技術的課題を解決するためになされたものであり、加湿用の水が貯溜された加湿皿からの蒸発量を制御することを可能とし、培養空間における結露の発生を抑制することを可能とするインキュベータ及び当該インキュベータに用いられる加湿皿を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のインキュベータは、培養室内を培養物の培養に適したガス、温度及び湿度環境とするものであって、培養室内に設けられて加湿用の水を貯留する加湿皿を備え、該加湿皿は、培養室内に露出される水面を制限するための蓋を有するものである。
【0012】
請求項2の発明のインキュベータ用加湿皿は、熱伝導の良好な部材にて構成され、インキュベータの培養室内に設けられて加湿用の水を貯留する加湿皿であって、皿本体の上面開口に設けられた蓋を備え、該蓋は培養室内に露出される水面を制限するものである。
【0013】
請求項3の発明は、上記各発明において、蓋は、培養室内に露出される水面の面積を調整可能とされているものである。
【0014】
請求項4の発明は、上記各発明において、蓋は、加湿用の水を培養室内に露出させるための窓と、該窓内において露出される水面の面積を調整するための可動閉塞部材とを有するものである。
【0015】
請求項5の発明は、上記発明において、蓋は、窓より外側に位置するガス導入部を有するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、培養室内を培養物の培養に適したガス、温度及び湿度環境とするインキュベータにおいて、培養室内に設けられて加湿用の水を貯留する加湿皿を備え、該加湿皿は、培養室内に露出される水面を制限するための蓋を有することにより、培養室内に露出される水面からの蒸発量を蓋の開閉によって調整することが可能となる。
【0017】
これにより、培養室内の湿度が所定の湿度以上に上昇し、結露の発生が生じやすい環境となった場合に、該蓋によって加湿皿の培養室内に露出される水面の面積を制限することにより、加湿皿からの蒸発量を制限することが可能となる。従って、結露の発生を抑制することが可能となる。
【0018】
請求項2の発明によれば、インキュベータ用加湿皿は、熱伝導の良好な部材にて構成され、インキュベータの培養室内に設けられて加湿用の水を貯留する加湿皿であって、皿本体の上面開口に設けられた蓋を備え、該蓋は培養室内に露出される水面を制限することにより、培養室内に露出される水面からの蒸発量を蓋の開閉によって制御することが可能となる。
【0019】
これにより、培養室内の湿度が所定の湿度以上に上昇し、結露の発生が生じやすい環境となった場合に、該蓋によって加湿皿の培養室内に露出される水面の面積を制限することにより、加湿皿からの蒸発量を制限することが可能となる。従って、結露の発生を抑制することが可能となる。
【0020】
また、請求項3の発明によれば、上記各発明に加えて、蓋は、培養室内に露出される水面の面積を調整可能とされているので、任意に培養室内に露出される水面の面積を調整することができ、培養室内に露出される水面の面積を微調整することが可能となる。これにより、完全に蓋によって培養室内に露出される水面が閉塞される場合や、完全に加湿皿内の水が培養室内に露出される場合に比して、目的とする湿度に培養室内を調整しやすくなる。
【0021】
これにより、湿度調整を容易に行うことが可能となり、結露の発生を抑制しつつ、培養物の培養に適した高湿度を維持することが可能となる。
【0022】
更に、請求項4の発明によれば、上記各発明に加えて、蓋は、加湿用の水を培養室内に露出させるための窓と、該窓内において露出される水面の面積を調整するための可動閉塞部材とを有することにより、簡素な構造にて培養室内に露出される水面の面積を微調整することが可能となる。
【0023】
これによっても、湿度調整を容易に行うことが可能となり、結露の発生を抑制しつつ、培養物の培養に適した高湿度を維持することが可能となる。
【0024】
請求項5の発明によれば、上記発明に加えて、蓋は、窓より外側に位置するガス導入部を有することにより、加湿皿に貯溜される加湿用の水にガスを導入させることが可能となる。これにより、培養室内に導入されるガスを一旦加湿用の水によって加湿した後、培養室内に拡散させることができ、加湿効率の向上を図ることが可能となる。
【0025】
特に、ガス導入部は、蓋の窓より外側に位置して設けられることから、加湿用の水に導入されるガスにより生じる水跳ねが窓を介して外部に漏出する不都合を抑制することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
次に、図面を参照して本発明の実施形態について詳述する。図1は本発明のインキュベータを適用した培養物観察システムSを構成する培養物観察装置1の部分透視正面図、図2は図1の培養物観察装置1の側面図、図3は図1の培養物観察装置1の縦断側面図、図4は図1の培養物観察装置1の横断平面図、図5は培養物観察システムSを構成する制御装置の電気ブロック図をそれぞれ示している。
【0027】
本実施例の培養物観察システムSは、培養物として例えば、受精卵内に存在する未分化な幹細胞(所謂ES細胞)である胚性幹細胞や、既にできあがった体内の各器官に存在する未分化な幹細胞、例えば造血幹細胞や神経管細胞などの体性幹細胞等の再生医療等に用いられる細胞のみならず、受精卵などの細胞の培養操作に用いられるシステムであり、培養しつつ、該培養状況を観察可能とするシステムである。
【0028】
培養物観察システムSは、培養物としての細胞(以下、培養物として細胞を例に挙げて説明する)の培養に適した環境を構成するためのインキュベータ(培養手段)2と、細胞の顕微鏡画像を撮影するための撮像装置(撮像手段)3と、撮像装置3により撮影された顕微鏡画像を表示するためのディスプレイ(表示手段)4と、これらインキュベータ2、撮像装置3及びディスプレイ4を制御する制御手段としてのコンピュータ5とを備えるものである。このうち、インキュベータ2と、撮像装置3により図1に示す如き培養物観察装置1が構成され、コンピュータ5は、汎用のマイクロコンピュータにより構成されるPCなどから構成される。
【0029】
培養物観察装置1は、例えば一面(本実施例では前面)に開口10を有する断熱性の箱体により本体12が構成されており、この本体2内(庫内)上部には、インキュベータ2を構成する培養室13が形成されている。また、この培養室13の下方に位置する本体12内下部には、撮像装置3が配設される撮像室6が形成されている。
【0030】
そして、本体12には、前面開口10を開閉自在に閉塞するための内扉14が設けられていると共に、更に、内扉14の外方に位置して断熱扉15が設けられている。内扉14は、内部を透視可能とする透明ガラス板などにより構成されており、断熱扉15を開放し、内扉14を閉鎖した状態で、培養室13内を視認可能とされる。また、断熱扉15の前面には、コントロールパネル16が設けられていると共に、該断熱扉15の裏面外周縁には、内扉14の端面より外側に位置してガスケット17が取り付けられている。これにより、培養室13は、外部から密閉可能とされる。
【0031】
培養室13を構成する本体12内壁面には、所定間隔を存して熱良導性の区画壁20が配設されている。この区画壁20は、培養室13を構成する全面、即ち、天面、底面、左右側面、背面に位置して配設されており、当該区画壁20と本体12内壁面との間には、庫内ヒータ19(図5のみ図示する)が配設されている。尚、培養室13の下方には、撮像装置3が配設されているため、培養室13の底面は、当該撮像装置3が設けられている部分を除く部分に庫内ヒータ19が配設されているものとする。また、扉15を閉じた状態で、培養室13の前面を構成する断熱扉15の背面にも、扉ヒータ18(図5のみ図示する)が配設されている。これにより、培養室13は、区画壁20及び内扉14を介して間接的に六面すべての面から加熱可能とされている。
【0032】
また、培養室13の左右側壁を構成する各区画壁20には、内方に突出して図示しない棚架設部が複数段形成されており、当該棚架設部には、熱良導性、且つ、複数の連通穴が形成される棚板(棚)7が着脱可能に複数段(本実施例では6段)架設されている。尚、詳細は後述する如く、当該培養室13内後部には、光源47が配設されているため、本実施例では、棚板7の後端は光源47の前面より前方となるように架設可能とされているが、これに限定されるものではなく、培養室13を構成する背面に近接する位置まで延在し、光源47に対応する位置は、該光源47を回避する形状(断面U字状の切欠)としてもよい。
【0033】
一方、本体12には、培養室13内と連通するようにCO2ガス供給口23と、O2・N2ガス供給口21が設けられており、各ガス供給口21、23には、それぞれ図示しないガス供給管が接続されている。CO2ガス供給口23に接続されるガス供給管には、CO2ガス電磁弁24を介してCO2ガスボンベ(CO2ガス供給手段)が接続されている。
【0034】
また、O2・N2ガス供給口21に接続されるガス供給管には、O2ガス電磁弁25を介してO2ガスボンベ(O2ガス供給手段)及びN2ガス電磁弁22を介してN2ガスボンベ(N2ガス供給手段)が接続されている。尚、本実施例では、各O2ガス、N2ガスはO2・N2ガス供給口21により培養室13へ供給されているが、これに限定されるものではなく、同様にO2ガス及びN2ガスの培養室13への供給を行うためのN2ガスはO2・N2ガス供給口を更にもう一つ設け、これによって、ガス供給を円滑なものとしても良い。
【0035】
各ガスボンベには、所定純度以上のガスが封入されているものとする。各電磁弁22、24、25は、詳細は後述するインキュベータ側制御装置C1にて開閉制御される。これによって、所定のCO2濃度、O2濃度のガスを培養室13に供給可能としている。また、本実施例では、O2ガス及びN2ガスの両者を供給可能としているが、どちらか一方のみを供給可能としても良い。
【0036】
また、本体12内には、培養室13の空気温度を検出するための庫内温度センサ26と、培養室13のCO2ガス濃度を検出するためのCO2ガス濃度センサ27、培養室13のO2ガス濃度を検出するためのO2ガス濃度センサ28が設けられている。これらセンサ26、27、28は、いずれもインキュベータ側制御装置C1に接続されており、これらセンサの検出に基づき、上記庫内ヒータ19、扉ヒータ18、CO2ガス電磁弁24、O2ガス電磁弁25、N2ガス電磁弁22が制御され、詳細は後述する如く設定された培養環境の温度やガス濃度が制御される。
【0037】
尚、本体12には、培養室13内の空気をサンプルとして取り出すためのサンプル採取口29が設けられている。また、本体12内には、培養室13内の空気を撹拌し、空気の状態を均一とするための図示しない送風機が設けられている。この送風機は送風機用モータ32により作動するものであり、該送風機用モータ32は、インキュベータ側制御装置C1により制御される。
【0038】
そして、上述した如きO2・N2ガス供給口21の培養室13側には、該O2・N2ガス供給口21と連通して形成されるガス導入ポート30が形成されており、該ガス導入ポート30には、ガス配管54を介して、加湿皿55の空気導入ポート58に接続される。
【0039】
ここで、図6乃至図10を参照して、加湿皿55の構成について説明する。図6は加湿皿55の縦断側面図、図7は図6の加湿皿55の平面図、図8は図6の加湿皿55の縦断正面図、図9は蓋60の縦断側面図、図10は図9の蓋60の縦断正面図を示している。
【0040】
本実施例における加湿皿55は、培養室13に架設される最上段の棚板7に載置されるものであり、上面に開口する本体56と、当該上面開口を閉塞する蓋60とから構成される。本体56及び蓋60は、抗菌処理が施され、且つ、熱伝導の良好な部材、例えば、金属材料にて構成される。
【0041】
本体56は、所定の容積を有する容器状に構成され、内部に加湿用の水、例えば蒸留水を貯溜可能とする。尚、後述する蓋60が取り付けられていない状態では、本体56内に貯溜される加湿用の水のすべての水面は、培養室13内に露出された状態となる。
【0042】
蓋60は、本体56内に貯溜される加湿用の水を培養室13内に露出させるための窓61が形成されており、この窓61には、同様の材料にて構成される可動閉塞部材62が摺動自在に取り付けられる。また、この蓋60には、一端がガス導入ポート30に接続されるガス配管54を接続するための空気導入ポート(ガス導入部)58が窓61の外側に位置して設けられている。本実施例では、当該空気導入ポート58が設けられる側を培養室13の奥側に配置し、可動閉塞部材62が窓61を閉塞した状態から、空気導入ポート58とは反対側の方向に対し、前方に摺動することで、窓61を開放可能とする。
【0043】
ここで、例えば、可動閉塞部材62の開放方向に位置する辺を除く蓋60に形成される窓61の下縁部(本実施例では3面)には、本体56底面に向けて垂下して閉塞面57が形成される。本実施例における閉塞面57は、本体56の底面との間に、通水可能とする隙間が形成される寸法に形成されており、窓61の投影面であって、且つ、可動閉塞部材62にて開放されている面以外に位置する本体56内の水面が培養室13内に露出しない構成とされている。
【0044】
可動閉塞部材62は、断面略L字状に折曲形成された板状部材であり、蓋60の上面に対し略水平に位置する上面62Aと、当該上面62Aの端部から本体56底面に向けて垂下して形成される閉塞面62Bとから構成される。これにより、閉塞面57が形成されていない面についても当該可動閉塞部材62に形成される閉塞面62Bにより、窓61の投影面であって、且つ、可動閉塞部材62にて開放されている面以外に位置する本体56内の水面が培養室13内に露出しない構成とすることができる。
【0045】
ここで、上面62Aは、蓋60に形成される窓61の幅寸法(該可動閉塞部材62の摺動方向と直交する方向の寸法)よりも幅広に、具体的には、窓61の開口縁上に安定して載置可能とする寸法に形成されている。そして、少なくとも一方の側部、即ち摺動方向に延在する側部には、予め蓋60の窓61縁部に形成される係合孔63と重合し、図示しないネジにて螺合可能とする複数の係合孔64が所定間隔を存して形成されている。
【0046】
可動閉塞部材62の閉塞面62Bは、挿入される窓61の幅寸法(即ち、該可動閉塞部材62の摺動方向と直交する方向の寸法)よりも少許小さく形成されている。そして、閉塞面62Bの下端は、蓋60の窓61に形成される閉塞面57の下端よりも少許短く形成されている。これにより、可動閉塞部材62を窓61に取り付けられた状態で、該可動閉塞部材62を前後に摺動させても該可動閉塞部材62の閉塞面62Bが両端に位置する閉塞面57と接触し、不快な接触音の発生や当接により生じる傷などの発生を抑制することが可能となる。
【0047】
他方、蓋60に形成される空気導入ポート58は、図10に示すように、断面略クランク状の管状部材により構成されており、一端が蓋60上方に位置し、他端が容器56内に位置する。両端は、いずれも開口して形成されており、一端から導入された空気を他端から排出可能な構成としている。また、本実施例における空気導入ポート58は、下端、即ち、容器56内に位置する端部は、容器56の下部に位置しており、容器56内に収容される加湿用の水が少量となった場合であっても、空気導入ポート58の一端から導入された空気を水中に排出可能としている。
【0048】
そして、容器56内には、所定量の加湿用の水を貯溜し、蓋61を取り付けた状態で、培養室13内に設置する。培養室13内の湿度が所定の培養条件に適した値にまで到達していない場合、例えば、少なくとも湿度が90%以下である場合には、可動閉塞部材62を前方に引きだし、窓61を全開とする。
【0049】
他方、この本体12内に形成される培養室13内には、詳細は後述する撮像室6内に配設される倍率変更レンズ等のレンズ35やCCDカメラ36等と共に撮像装置3を構成するテーブル37が配設されている。このテーブル37は、熱良導性の材料にて構成されると共に、図4に示されるように本実施例では平面略円形を呈した板状部材である。該テーブル37には、細胞等の試料を収容した試料容器42を複数設置するため連通して形成される保持穴43が複数形成されている。本実施例では、6個の保持穴43が所定間隔を存して形成されると共に、これら保持穴43は、いずれもテーブル中心から所定寸法を存して形成される。
【0050】
試料容器42は、少なくとも底面及び上面が透光性を有する容器、例えば、透明のガラス又は樹脂製にて構成されており、光源47からの照射光を透過し、対物レンズ44により内容物を観察可能なものとされている。また、この試料容器42の開口は、通気性を有するフィルタを備えた蓋部材にて閉塞可能とされており、容器42内の湿度、ガス濃度を培養室13内と同様とすることができる。
【0051】
また、テーブル37の中心には、熱良導性材料にて構成される回転軸38が取り付けられている。この回転軸38は、一端が撮像室6内に配設される回転移動用ステージモータ39(図5のみ図示する)に接続され、当該ステージモータ39の駆動により、水平方向に回転可能とされる。また、この回転軸38は、直線移動用のステージモータ40によって、一方向、本実施例では、前後方向に移動可能とされている。これにより、回転移動、直線移動によってテーブル37を移動させることで、テーブル37に設置された試料容器42内の細胞等を移動させることができる。
【0052】
この回転軸38には、ステージヒータ41が取り付けられており、回転軸38の一端に取り付けられる熱良導性のテーブル37を所定の温度に加熱することが可能とされる。尚、テーブル37には、該テーブル37の温度を検出するためのステージ温度センサ46が取り付けられている。
【0053】
そして、テーブル37は配設される培養室13と、撮像装置3が配設される撮像室6内とは、仕切壁45にて区画されており、培養室13内の調整された空気が撮像室6内に進入しないように密閉構造とされている。
【0054】
テーブル37の下方には、仕切壁45を介して撮像室6側から突出して対物レンズ44が設けられている。この対物レンズ44は、テーブル37の保持穴43に設置された試料容器42内の細胞等を観察可能とするものであり、回転軸38(テーブル中心)から所定間隔を存した位置、即ち、保持穴43が形成される位置に対応する位置に設けられる。そして、当該対物レンズ44に対向する位置(対物レンズ44の上方)には、撮像装置3を構成する光源47がアーム48を介して培養室13内に位置する本体12に設けられている。
【0055】
本実施例における光源47は、LED照明が用いられており、培養室13内に上下に延在して配設され、上方から対物レンズ44と該光源47の照射孔との間に位置する細胞等を照明する。尚、光源47は、LED照明に限定されるものではなく、例えば水銀ランプや光ファイバーなどであっても良いものとする。
【0056】
尚、本実施例では、テーブル37の上方の培養室13には、複数段の棚板7・・が架設可能とされることから、光源47は、前面開口10から行われる培養物(容器に収容された状態の細胞など)の納出作業の邪魔とならない位置、本実施例では培養空間後部に配置されるものとする。また、光源47の照射孔に対向して設けられる対物レンズ44も同様に、培養空間後部に位置して配設されるものとする。
【0057】
そして、これら対物レンズ44と、光源47と、テーブル37と共に、撮像装置3を構成する倍率変更レンズ35やCCDカメラ36等は、上述した如きモータ39、40と共に、撮像室6内に配設される。尚、当該対物レンズ44や倍率変更レンズ35、CCDカメラ36等により構成される撮像システムについては、従来の構造と同様のものであるため、詳細な説明は省略する。
【0058】
次に、図5の電気ブロック図を参照して、本実施例における培養物観察システムSの制御システム(制御手段)について説明する。上述したように培養物観察システムSは、培養室13に培養環境を構成するインキュベータ2と、該インキュベータ2内(培養室13内)において培養される細胞等(培養物)の撮像を実行する撮像装置3とを備えた培養物観察装置1と、該培養物観察装置1と通信線により接続されるコンピュータ5とから構成される。培養物観察装置1は、インキュベータ側制御装置C1と、撮像装置側制御装置C2を備えている。
【0059】
インキュベータ側制御装置C1の入力側には、庫内温度センサ26、CO2ガス濃度センサ27、O2ガス濃度センサ28、ステージ温度センサ46、コントロールパネル16が接続され、出力側には、庫内ヒータ19、扉ヒータ18、ステージヒータ41、CO2ガス電磁弁24、O2ガス電磁弁25及び送風モータ32が接続されている。また、インキュベータ側制御装置C1には、コンピュータ5とデータ通信を実行するための通信線50が接続されている。また、インキュベータ側制御装置C1は、メモリ53を内蔵しており、コンピュータ5からの出力及びコントロールパネル16の操作に基づく出力に基づいて、各設定値をメモリ53に保存可能とし、当該設定値に基づいて培養室13の温度、ガス濃度及びテーブル37の温度が制御される。また、各温度データやガス濃度データは、インキュベータ側制御装置C1により、コンピュータ5へ出力される。
【0060】
撮像装置側制御装置C2の出力側には、撮像装置3を構成するレンズ35、CCDカメラ36、ステージモータ39、40、光源47等が接続される。また、撮像装置側制御装置C2には、コンピュータ5とデータ通信を実行するための通信線51(画像取込用通信線、制御用通信線などから構成される)が接続されている。これにより、コンピュータ5からの出力に基づいて、観察する座標移動や光源27による照射ON/OFF、輝度調整、CCDカメラ36による画像取込などの制御が行われる。また、観察する座標位置データや光源の輝度データは、撮像装置側制御装置C2により、コンピュータ5へ出力される。
【0061】
コンピュータ5は、培養物観察装置1の制御及び各種データの取込、そのデータの参照・保存を可能とするアプリケーションプログラム(記憶手段としてのメモリ9を内蔵)を備えており、接続されるディスプレイ4の表示画面に各種データや取得画像(顕微鏡画像)を表示可能とする。各種設定は、ディスプレイ4に表示される画面に従って、数値入力や決定操作を行うことによって実行することが可能とされる。また、コンピュータ5には、操作手段としてマウス8が接続されている。
【0062】
次に、本実施例の培養物観察システムSの動作について説明する。コントロールパネル16、又は、コンピュータ5を操作することにより、培養室13における培養条件、本実施例では、庫内温度、庫内CO2ガス濃度、O2ガス濃度を設定する。ここでは、庫内温度は+37.0℃、CO2ガス濃度は5.0%、O2ガス濃度は5.0%とする。
【0063】
これに基づきインキュベータ側制御装置C1は、庫内ヒータ19、扉ヒータ18、ステージヒータ41の通電制御を行い、培養室13及びテーブル37の温度を設定温度である+37.0℃に維持する。具体的には、庫内温度センサ26が+36.5℃に低下した場合に、庫内ヒータ19及び扉ヒータ18を通電し、+37.5℃に上昇した場合に庫内ヒータ19及び扉ヒータ18を非通電とする。また、ステージ温度センサ46が+36.5℃に低下した場合に、ステージヒータ41を通電し、+37.5℃に上昇した場合にステージヒータ41を非通電とする。
【0064】
このように、庫内ヒータ19と扉ヒータ18は、ステージヒータ41とは独立して温度制御が行われる。この場合において、本実施例では、インキュベータ側制御装置C1は、テーブル37の温度を培養室13内の温度以下であって、培養物としての細胞の培養に適した温度に制御する。即ち、制御装置C1は、テーブル37の温度を培養室13内の温度と同じか、若しくは、培養室13内の温度よりも低く、且つ、細胞の培養に適した温度(本実施例では+36.5℃)より高い温度となるように制御を行う。
【0065】
これにより、常に培養室13内の空気温度をテーブル37の温度以上とすることが可能となる。従って、テーブル37の保持穴43に設置された試料容器42上部の温度(培養室13内の空気温度に近似)がテーブル37に接触する試料容器42下部の温度(テーブル37の温度に近似)より低くなることで、試料容器42内面に結露が発生する不都合を回避することが可能となる。
【0066】
また、インキュベータ側制御装置C1は、CO2ガス濃度センサ27及びO2ガス濃度センサ28により検出される培養室13内の各ガス濃度(CO2ガス濃度、O2ガス濃度)に基づき、CO2ガス電磁弁24、O2ガス電磁弁25、排気弁30の開閉制御を行い、培養室13内を設定ガス濃度(本実施例では、CO2ガス濃度は5.0%、O2ガス濃度は5.0%)に維持する。
【0067】
一方、培養室13内には、詳細は上述した如き加湿皿55が設けられているため、培養室13内の空気温度によって、加湿皿55内に貯溜された加湿用の水が蒸発し、培養室13内の加湿を行う。また、ガス導入ポート30は、ガス配管54を介して、加湿皿55の空気導入ポート58に接続されているため、培養室13内に導入されるO2ガス又はN2ガス(本実施例では、O2の設定ガス濃度が5.0%であるため、N2ガス)は、一旦、加湿皿55の空気導入ポート58により、本体56内に貯溜される加湿用の水内に排出され(バブリングされ)た後、加湿皿55の蓋60に形成される窓61等により培養室13内に導入される。そのため、培養室13内は、加湿皿55内の加湿用の水でバブリングされた後の加湿されたN2ガス(又はO2ガス)によっても、効率的に加湿される。
【0068】
このとき、培養室13内の湿度は、培養に適した湿度、例えば90%以上であることが好ましいが、加湿が進行し、例えば95%以上となった場合では、培養室13内において結露の発生が著しくなる。
【0069】
ここで、加湿皿55の加湿用の水からの蒸発量は、培養室13内に露出される水面の面積によって変化する。そこで、培養室13の内壁面への結露や試料容器42への結露が発生した際には、加湿皿55を構成する可動閉塞部材62を後方に摺動させ、蓋60に形成される窓61の開放面積、即ち、本体56内に貯溜される加湿用の水の培養室13への露出面積を制限する調整を行う(図7では点線で示す)。
【0070】
これにより、加湿皿55内に貯溜される加湿用の水の水面は、窓61下縁に形成される閉塞面57と、後方に摺動される可動閉塞部材62の上面62A及び閉塞面62Bによって培養室13内に露出される水面の面積が狭められる。
【0071】
従って、培養室13内への加湿用の水の露出面積は、窓61の投影面であって、各閉塞面57、62Bによって囲繞された面積のみに狭められることによって、加湿皿55内の加湿用の水の蒸発量が制限され、加湿の程度が抑制される。これにより、例えば培養室13内の湿度を結露の発生が生じやすい95%以上から、結露の発生が抑制され、且つ、細胞の培養に適した湿度、例えば、91%や92%程度に調整することが可能となる。
【0072】
また、閉塞面57、62Bにて、囲繞された培養室13内に露出される水面から加湿用の水の蒸発が行われることとなるが、当該囲繞される空間部分には、各閉塞面57、62Bの下端と、本体56の底面との間に形成される隙間から通水可能とされているため、当該空間部分に適切な給水が行われる。
【0073】
更に、可動閉塞部材62は、任意に窓61の縁部に沿って摺動させることによって、開閉量を調整することが可能であるため、簡素な構造にて任意に培養室13内に露出される水面の面積を微調整することが可能となる。これにより、完全に蓋60によって培養室13内に露出される水面が閉塞される場合や、完全に加湿皿55内の水が培養室13内に露出される場合に比して、目的とする湿度に培養室13内を調整しやすくなる。
【0074】
これにより、湿度調整を容易に行うことが可能となり、結露の発生を抑制しつつ、細胞の培養に適した高湿度を維持することが可能となる。そのため、テーブル37に設置された試料容器42に発生する結露を回避することが可能となるため、該結露により、試料容器42を介して行われる細胞の撮影に結露が邪魔となる不都合を回避することができる。これによって、テーブル37上に設置された細胞を適切に観察することが可能となる。
【0075】
また、可動閉塞部材62は、上面62Aに形成される複数の係合孔64の何れかを、蓋60に形成される係合孔63と重合させ、ネジにて螺合することにより、所定の露出面積を固定することが可能となる。これにより、係合孔64を選択することで、水面の露出面積を調整しやすくなり、利便性の向上を図ることが可能となると共に、容易に可動閉塞部材62が移動してしまう不都合を回避することが可能となる。
【0076】
更に、本実施例では、培養室13内に導入されるO2ガス又はN2ガスは、当該加湿皿55内の加湿用の水を介して培養室13内に導入されるが、空気導入ポート58は、窓61の外側に位置して設けられているため、係るバブリングによって生じる水跳ねが、加湿皿55外に出てしまうことを、蓋60及び閉塞面57、62Bによって阻止することが可能となる。
【0077】
そのため、導入されるO2ガス又はN2ガスを加湿しながら、培養室13内に導入した際に、バブリングによって生じる水跳ねにより、培養室13内が水浸しになってしまう不都合を回避することが可能となる。これにより、湿度の微調整を可能としながら、快適な細胞の培養を実現することが可能となる。
【0078】
尚、加湿皿55を構成する蓋60自体の開閉(着脱)によっても、培養室13内に露出される加湿用の水の水面からの蒸発量を調整することが可能となる。そのため、培養室13内の湿度を早期に上昇させる場合には、蓋60を取り外し、本体56に貯溜される加湿用の水の培養室13への露出面積を増大させ、蒸発量の増大促進を行っても良いものとする。
【0079】
また、加湿皿55内に貯溜された加湿用の水は、蒸発により減少するが、1週間〜1ヶ月程度で、追加、若しくは、交換することが好ましい。
【0080】
係る構成により、培養室13内は、上述した如く設定された温度、ガス濃度、適切な湿度とすることが可能となる。そのため、培養室13内に設けられるテーブル37の各保持穴43に細胞等を収容した各試料容器42を設置することで、当該培養条件によって、該細胞の培養を行うことが可能となる。尚、当該テーブル37に設置された細胞等は、撮像装置3によって、観察可能とされる。また、本実施例では、培養室13内に複数の棚板7が架設されていることから、当該棚板7に培養物(細胞等)を収容した容器を載置することで、同培養条件によって、該細胞の培養を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明を適用した培養物観察システムを構成する培養物観察装置の部分透視正面図である。
【図2】図1の培養物観察装置の側面図である。
【図3】図1の培養物観察装置の縦断側面図である。
【図4】図1の培養物観察装置の横断平面図である。
【図5】培養物観察システムを構成する制御装置の電気ブロック図である。
【図6】加湿皿の縦断側面図である。
【図7】図6の加湿皿の平面図である。
【図8】図6の加湿皿の縦断正面図である。
【図9】蓋の縦断側面図である。
【図10】図9の蓋の縦断正面図である。
【符号の説明】
【0082】
S 培養物観察システム
1 培養物観察装置
2 インキュベータ(培養手段)
7 棚板(棚)
10 開口
12 本体
13 培養室
15 断熱扉
21 O2・N2ガス供給口
22 N2ガス電磁弁
23 CO2ガス供給口
24 CO2ガス電磁弁
25 O2ガス電磁弁
27 CO2ガス濃度センサ
28 O2ガス濃度センサ
37 テーブル
42 試料容器
54 ガス配管
55 加湿皿
56 本体
57 閉塞面
58 空気導入ポート
60 蓋
61 窓
62 可動閉塞部材
62A 上面
62B 閉塞面
63 係合孔
【出願人】 【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
【出願日】 平成18年6月29日(2006.6.29)
【代理人】 【識別番号】100098361
【弁理士】
【氏名又は名称】雨笠 敬


【公開番号】 特開2008−5759(P2008−5759A)
【公開日】 平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願番号】 特願2006−179332(P2006−179332)