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【発明の名称】 細胞電気生理センサ
【発明者】 【氏名】牛尾 浩司

【氏名】中谷 将也

【氏名】平岡 聡一郎

【氏名】大島 章義

【要約】 【課題】貫通孔に細胞を保持密着させるため、貫通孔の下方側より吸引する手段が用いられるが、貫通孔の内部に気泡が存在していると細胞の安定した保持と高精度な測定に支障をきたすという課題を有していた。

【構成】第一の貫通孔5を有するウエル1と、このウエル1の下方に当接した第二の貫通孔6を有した保持プレート2と、この保持プレート2の下方に液体の流入口と流出口を両端に備えた空洞8を有した流路プレート3を当接し、第二の貫通孔6の内部に第三の貫通孔7を備えたダイアフラム9を有したセンサチップ4を当接した細胞電気生理センサであって、第三の貫通孔7に対向するように少なくとも一つの振動子13を設けた構成とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の貫通孔を有するウエルと、このウエルの下方に当接した第二の貫通孔を有した保持プレートと、この保持プレートの下方に液体の流入口と流出口を両端に備えた空洞を有した流路プレートを当接し、前記第二の貫通孔の内部に第三の貫通孔を備えたダイアフラムを有したセンサチップを当接した細胞電気生理センサであって、前記第三の貫通孔に対向するように少なくとも一つの振動子を設けた細胞電気生理センサ。
【請求項2】
第二の貫通孔と振動子の間に液体を充填した請求項1に記載の細胞電気生理センサ。
【請求項3】
振動子の振動周波数をダイアフラムが共振する周波数とした請求項1に記載の細胞電気生理センサ。
【請求項4】
振動子の振動によってダイアフラムを厚さ方向に振動させる請求項1に記載の細胞電気生理センサ。
【請求項5】
振動子の振動周波数を変化させる請求項1に記載の細胞電気生理センサ。
【請求項6】
振動子と第三の貫通孔との間に定在波を発生させる請求項1に記載の細胞電気生理センサ。
【請求項7】
振動子とダイアフラムの面を平行に配置した請求項1に記載の細胞電気生理センサ。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞の活動によって発生する物理化学的変化を測定するために用いられる細胞内電位あるいは細胞外電位等の細胞電気生理現象を測定するための細胞電気生理センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電気生理学におけるパッチクランプ法は、細胞膜に存在するイオンチャンネル機能を測定する方法として知られており、このパッチクランプ法によってイオンチャンネルの様々な機能が解明されてきた。そして、イオンチャンネルの働きは細胞学において重要な関心ごとであり、これは薬剤の開発にも応用されている。
【0003】
しかしながら、一方でパッチクランプ法は測定技術に微細なマイクロピペットを1個の細胞に高い精度で挿入するという極めて高い技能を必要としているため、熟練作業者が必要であり、高いスループットで測定を必要とする場合には適切な方法でない。
【0004】
このため、微細加工技術を利用した平板型プローブの開発がなされており、これらは個々の細胞についてマイクロピペットの挿入を必要としない自動化システムに適している。
【0005】
例えば、2つの領域を分離するキャリアに穴を設け、このキャリアの上下に設置した電極によって電界を発生させることで細胞を穴に効率よく保持し、上下の電極間で電気的測定を行うことで細胞の電気生理的測定を行う方法について開示している(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、一つのチャネルが貫通している表面に、細胞の下面から吸引して位置決めした後、圧力差を増大させて細胞の下面の一部を破裂させることにより、液体中に含まれる細胞の測定を行う方法について開示している(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
これらに開示しているように、平板に作成された穴(貫通孔)はガラスピペットにおける先端穴と同様の役割を果たし、高精度な細胞の電気生理現象を記録できるとともに、平板の裏面側からの吸引などの方法により、細胞が自動的に引きつけられて、細胞を容易に保持できるという利点を有している。
【特許文献1】特表2002−508516号公報
【特許文献2】特表2003−511699号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記従来の構成における細胞電気生理センサの主な目的は細胞の電気生理現象を従来のパッチクランプ法で使われる微細プローブを用いることなく簡便に計測することであり、そのためには確実に平板の一部に形成した貫通孔(穴)に細胞を密着保持させて測定することが必要である。
【0009】
しかしながら、特に気泡が貫通孔(穴)の中に残存した場合、高精度な細胞の電気生理現象の測定ができなくなるという課題を有していた。
【0010】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、貫通孔の内部に気泡の残留を少なくし、高精度に電気生理現象を測定することが可能な細胞電気生理センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記従来の課題を解決するために、本発明は、第三の貫通孔を有するウエルと、このウエルの下方に当接した第二の貫通孔を有した保持プレートと、この保持プレートの下方に液体の流入口と流出口を両端に備えた空洞を有した流路プレートを当接し、前記第二の貫通孔の内部に第三の貫通孔を備えたダイアフラムを有したセンサチップを当接した細胞電気生理センサであって、前記第三の貫通孔に対向するように振動子を少なくとも一つ以上設けた構成とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の細胞電気生理センサは、細胞を保持するための貫通孔の内部の閉空間における気泡の残留を少なくすることによって、安定した細胞の保持を実現した細胞電気生理センサを実現し、電気生理現象を高精度に測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1における細胞電気生理センサについて図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1は本発明の実施の形態1における細胞電気生理センサの断面図であり、図2はその要部拡大断面図である。
【0015】
図1および図2において、1は樹脂よりなるウエルであり、このウエル1に細胞外液18を貯留しておくための第一の貫通孔5を形成している。この第一の貫通孔5は断面形状をテーパー状に形成しておくことによって、電解液などの液体または細胞などを投入するときに効率が良い。
【0016】
また、前記ウエル1の下方には第二の貫通孔6を有した樹脂よりなる保持プレート2を当接しており、この保持プレート2の第二の貫通孔6の内部には、少なくとも一つの第三の貫通孔7を備えたダイアフラム9を有したセンサチップ4がセットされている。このセンサチップ4はシリコン基板またはシリコン酸化物をフォトリソグラフィー、ドライエッチングなどの半導体加工技術によって形成することによって効率良く作製することが可能であり、そのときの寸法形状としては、ダイアフラム9の厚み;20μm、第三の貫通孔7の開口径:5μmφ以下の形状で一体的に形成している。この第三の貫通孔7の開口径は細胞を保持するために最適な大きさの寸法形状とすることができ、この第三の貫通孔7の開口径は細胞20の大きさによって適宜選択することができる。
【0017】
さらに、前記保持プレート2の下方には、その両端に液体を流出入させるための空洞8を有した流路プレート3を当接して細胞電気生理センサを構成しており、前記第三の貫通孔7の上面に細胞20を密着保持し、この細胞の電気生理現象を測定することができるようになっている。そして、前記空洞8には入口16から細胞内液19を充填し、出口17から吸引ポンプなどを用いて吸引することによって細胞内液19を充填することができる。
【0018】
また、前記ウエル1、保持プレート2、および流路プレート3はすべて樹脂で構成しておくと都合がよい、特に好ましくは熱可塑性樹脂を用いることがより好ましい。これにより、これらの材料は熱溶着などの手段を用いることによって接着剤を使用することなく互いに強固に接合することができる。さらに好ましくは、これらの熱可塑性樹脂はポリカーボネート(PC)、ポリエチレン(PE)、オレフィンポリマー、ポリメタクリル酸メチルアセテート(PMMA)のいずれか、またはこれらの組み合わせを用いることである。これらの材料は熱溶着によって接合を効率良く行いやすい。さらに好ましくは、これら熱可塑性樹脂が環状オレフィンポリマー、線状オレフィンポリマー、またはこれらが重合した環状オレフィンコポリマー、またはポリエチレン(PE)からなる熱可塑性樹脂が作業性、製造コスト、材料の入手性の観点から好ましい。特に、環状オレフィンコポリマーは透明性、アルカリ・酸などの無機系薬剤に対する耐性が強く、本発明の製造工程もしくは使用環境に適している。
【0019】
そして、前記第三の貫通孔7とダイアフラム9に対向する位置に振動エネルギを発生させるための振動子13を配置し、この振動子13を保持しておくための振動プレート12を設けた構成としている。この振動子13としては、例えば圧電材料を上下の電極で挟んだ構造からなる圧電素子、あるいは電磁コイルからなる電磁素子などを所定の寸法に加工して作製したものを用いることができる。
【0020】
特に、薄膜プロセスによって圧電薄膜を形成することがこの細胞電気生理センサの大きさを考慮すると適している。この圧電薄膜を用いた振動子13は白金などの貴金属電極からなる下部電極の上にPZT薄膜を成膜形成し、このPZT薄膜の上に金電極などの上部電極を形成することによって積層構造を有した圧電薄膜振動子からなる振動子13を形成することができる。このとき、振動プレート12はガラス基板あるいはシリコン基板などの耐熱性を有する材料を用いることが好ましい。
【0021】
また、圧電素子、電磁素子などの振動子13を貼り付ける場合には樹脂材料などを用いることができる。
【0022】
さらに、前記振動子13は細胞外液18の中で用いることを前提としており、前記細胞外液18の中で振動子13に電位あるいは電流を印加することから、絶縁性を確保しておく必要があり、絶縁材にて被覆しておくことが不可欠である。これらの材料としては、二酸化ケイ素、酸化アルミニウムなどの無機酸化物によるパッシベーション膜、あるいはシリコン樹脂、エポキシ樹脂などの防水性に優れた有機絶縁性樹脂が好ましい。
【0023】
そして、細胞20を保持した第三の貫通孔7を介して第一の電極14と第二の電極15との間において、細胞20を保持したセンサチップ4で発生する電気的指標、たとえば電位、電流などを測定することができる。ここで、第一の電極14は薄膜プロセスを用いて金属薄膜を形成し、第二の電極15は第二の貫通孔6を塞ぐように導電性樹脂ペーストなどを用いて充填して形成することができる。
【0024】
そして、これらの第一の電極14および第二の電極15は配線パターン電極へと接続している。
【0025】
次に、本発明の細胞電気生理センサを用いて細胞の電気生理活動を測定する方法について簡単に述べる。
【0026】
まず、図2に示すようにウエル1に細胞外液18を充填し、空洞8に細胞内液19をウエル1の入口16から出口17にかけて吸引することで充填する。ここで、細胞外液18とは、K+イオンが4mM程度、Na+イオンが145mM程度、Cl-イオンが123mM程度添加された電解液であり、細胞内液19とは、例えば哺乳類筋細胞の場合、代表的にはK+イオンが155mM、Na+イオンが12mM程度、Cl-イオンが4.2mM程度添加された電解液である。
【0027】
この状態で、ウエル1の内部に設置された第一の電極14と空洞8の内部に設置された第二の電極15との間で、100kΩ〜10MΩ程度の抵抗値を観測することができる。これは細胞外液18あるいは細胞内液19が浸透し、第一の電極14と第二の電極15との間で電気回路が形成されるからである。
【0028】
ここで、ウエル1と空洞8とセンサチップ4に細胞外液18を充填する時、第三の貫通孔7が細胞20を保持できる程度の微小な形状となっているため、第三の貫通孔7の中に細胞外液18あるいは細胞内液19が浸透せず気泡が残る場合がある。この気泡が残留した場合、ウエル1の内部に設置した第一の電極14と空洞8に連通するように設置した第二の電極15との間で抵抗値が不安定となったり、細胞20の微小な電気的変化を検出することが困難となる。
【0029】
そのため、この気泡を除去しない限り、次のステップである細胞20の投入と細胞20の保持、そして最終目的である細胞の電気生理現象の測定を行うことができない。そこで、この残留した気泡を除去するため、第三の貫通孔7およびダイアフラム9に対向するように設けた振動子13によって振動を与えることで、液体である細胞外液18を介して第三の貫通孔7とダイアフラム9に振動エネルギを伝えることができる。そして、このダイアフラム9が振動することによって第三の貫通孔7の内壁が振動・変形し、第三の貫通孔7の内部に留まっていた気泡も振動することになり、第三の貫通孔7の内壁から気泡が離れる機会ができることになる。この振動を連続して、あるいは間欠的に繰り返し与えるなかで、確実に効率良く第三の貫通孔7の内部から気泡を除去することができる。
【0030】
これによって、細胞電気生理現象の測定の第一段階であるウエル1の内部に設置した第一の電極14と空洞8の内部に設置した第二の電極15との間の導通抵抗値を安定して維持することができ、その後の細胞電気生理現象の測定を効率良く、確実に行うことができることになる。
【0031】
なお、ダイアフラム9を振動させることから、ダイアフラム9の表面あるいは近傍に付着した気泡も除去できるという効果も有していることはいうまでもない。
【0032】
また、第三の貫通孔7の内部に残留した気泡を完全に除去するために最適な位置に振動子13を配置することが重要であり、振動子13と、第三の貫通孔7およびダイアフラム9とが液体18を介して対向する位置に平行で配置することが、最も効率良く振動子13の振動エネルギを第三の貫通孔7およびダイアフラム9に伝達し、気泡の除去に最も効果的な振動を与えることができる。
【0033】
また、振動子13は振動プレート12の一部に固着している。この振動プレート12は振動子13を固着保持しておくためのものであり、この振動プレート12の形状を最適な形状とし、可動可能とすることによって気泡の除去に最適な位置に振動子13を配置することができる。例えば、ダイアフラム9との距離を変化させたり、角度を傾斜させたりすることも可能である。
【0034】
そして、振動子13に電気接続を前記振動プレート12の配線パターンを介して接続することができる。
【0035】
なお、振動子13の振動効率を高めるために振動プレート12と振動子13の間に振動を制御するゴムなどの弾性体を介して固定することが効果的である。
【0036】
また、本実施の形態1における細胞電気生理センサにおいては、振動子13とダイアフラム9との距離を0.5〜3.0mmを移動させた場合において、その効果を確認している。さらに、ダイアフラム9に対して振動子13の振動面の傾き角が±10度の範囲においても同じ効果を発揮することを確認している。
【0037】
次に、気泡を除去した細胞電気生理センサにウエル1から細胞20を投入する。そして、ウエル1の入口16または出口17の一方を減圧すると、細胞20は第三の貫通孔7に引き付けられた後、この第三の貫通孔7を塞いで密着保持され、ウエル1側と空洞8側の電気抵抗が十分に高いGΩ以上の絶縁状態となる(ギガシールと呼ぶ)。
【0038】
この状態において、細胞20の電気生理活動によって細胞内外の電位が変化した場合に、わずかな電位差あるいは電流変化であっても高精度な測定が可能となる。
【0039】
さらに好ましくは、気泡を除去するステップにおいて、振動子13の振動周波数をダイアフラム9が共振する周波数とすることによって、ダイアフラム9、つまり第三の貫通孔7の壁面を大きく共振振動させ、さらに効率良く気泡を除去することができる。ダイアフラム9の外径;500μmφ、厚み;20μmとしたとき、そのときの共振周波数は1.2MHzであり、そのときの振動子13の形状としては、外径;700μm、厚み;50μmの圧電薄膜を形成することによって振動周波数1.0〜1.4MHzのものを発振させることができた。
【0040】
また、ダイアフラム9の振動モードを、ダイアフラム9の全面が厚み方向に振動する振動モードとすることによって、第三の貫通孔7の内壁がハの字型に開閉振動することになり、気泡も大きく伸縮振動・変形することになる。
【0041】
その結果、効率良く第三の貫通孔7の内部から気泡を除去することができるようになり、これによって微小な気泡であっても確実に効率良く気泡を除去することが可能である。
【0042】
また、前記振動子13の振動周波数を変化させながら振動を与えることによって、ダイアフラム9を様々なモードで振動・変形させることによって、前記と同様に第三の貫通孔7の内部の気泡の除去を確実に行うことができる。例えば、前記形状の振動子13を用いて1〜1.4MHzの範囲で周波数を可変させることによってサイズの異なる気泡に対して有効である。これは、振動子13の振動周波数を変化させながら振動を与えることによって、第三の貫通孔7の中の様々な大きさの気泡を直接、共振振動させ変形させるとともに、気泡を破壊することができ、第三の貫通孔7より様々な大きさの気泡を除去することができるからであると考えられる。
【0043】
また、振動周波数を変化させながら行うことによって、気泡に対して直接振動を与えるだけでなく、先に説明したダイアフラム9の共振振動による気泡の除去も行え、さらに効率良い気泡の除去を行うことができる。
【0044】
さらに、振動子13をダイアフラム9に対してほぼ平行に対向配置することによって、振動子13の振動が細胞外液18あるいは細胞内液19を介して効率良くダイアフラム9に伝達し、第三の貫通孔7の中の気泡が抜けやすい方向へダイアフラム9が振動することになり、第三の貫通孔7の内部に残留した気泡の除去を速やかに行うことができる。
【0045】
なお、振動子13による振動を与えながら流路プレート3の空洞8側を減圧することで、振動子13の振動によって気泡が振動・変形するとともに、気泡が変形したところにさらに圧力が加わることで、第三の貫通孔7の側壁から気泡を除去できやすくなる。
【0046】
さらに、振動子13の振動周波数を第三の貫通孔7の中に入る大きさの体積の気泡を共振させる周波数とし、気泡自身を直接振動・変形させることによって、第三の貫通孔7の内壁から気泡を移動させる、あるいは気泡を破壊することもできる。これによって、気泡の除去を効率的に行うことができることから、細胞の電気生理現象の測定を効率良く確実に行うことができる。
【0047】
次に、振動子13の振動によって振動子13と流路プレート3の壁面との間で振動子13の面と流路プレート3の壁面と平行な方向に節あるいは山ができるように定在波を発生させることによって、定在波の節に気泡を留ませることができる。これは振動子13の振動による音波の放射圧によって気泡が力を受けるためであり、定在波の山の部分では気泡に与える力が大きく、節の部分では力が0となるため、定在波の節に気泡が集まるような力を受けるからである。例えば、ダイアフラム9と振動子13との距離を3.0mmとしたとき、定在波の節を3個発生させるためには1.0MHz以上の周波数で振動させることによってその効果を発揮することができる。
【0048】
そして、その後振動子13の位相を変化させることで定在波を移動させ、定在波の節に留まった気泡も運ぶことができる。その結果、第三の貫通孔7の中の気泡を除去することができ、これによっても細胞20の測定を効率良く、確実に行うことができる。また、ダイアフラム9と振動子13との距離を短くするためには振動周波数を高く設定する必要がある。
【0049】
このとき、振動子13をダイアフラム9に対して対向して設置し、かつ振動子13の面とダイアフラム9の面を平行に設置することによって、振動子13と流路プレート3と壁面との間に定在波を確実に発生させることができ、より効率良く気泡除去を行うことができる。
【0050】
なお、この細胞電気生理センサは第三の貫通孔7において設置する方向として、ダイアフラム9が第一の貫通孔5側へ近くなるようにセットしても良い。この選択は測定する細胞20の性質によって最適に決定されるべきである。
【0051】
(実施の形態2)
以下、本発明の実施の形態2における細胞電気生理センサについて図面を参照しながら説明する。
【0052】
図3は本発明の実施の形態2における細胞電気生理センサの断面図であり、図4は別の例の細胞電気生理センサの構成を説明するための断面図である。なお、本実施の形態2における細胞電気生理センサの基本的な構成は実施の形態1で説明した細胞電気生理センサの構成とほぼ同様であり、図面において実施の形態1と同じ機能を持つ構成部材については同番号を付与し、その説明は省略する。
【0053】
ここでは、本実施の形態2における細胞電気生理センサが実施の形態1における細胞電気生理センサの構成と大きく異なっているところについて詳細に説明する。
【0054】
図3において、本実施の形態2における細胞電気生理センサが実施の形態1の構成と大きく異なっている点は、流路プレート3に設けた空洞8の一部に第三の貫通孔7に対向して配置するように振動子13を配置していることである。
【0055】
このような構成の振動子13に、電流あるいは電圧を印加することによって振動を与え、液体18を媒体としてダイアフラム9または第三の貫通孔7の中の気泡に振動エネルギを伝達し、この振動エネルギによって気泡を除去することができる。これによって、実施の形態1と同様の構成と効果を実現することができる。
【0056】
また、このような構成とすることによって、第一の貫通孔5および第二の貫通孔6の寸法形状が小さい場合、最適な位置に振動子13を配置することができない構造であったとしても、所望の位置に振動子13を配置することができる。そして、振動プレート12が不必要となり、製造プロセスを簡略化することができる。
【0057】
また、ダイアフラム9と振動子13の配置関係が少しずれたとしても、外形の大きな振動子13を配置することによって、その振動面積が大きいことから、確実に、より大きな振動エネルギをダイアフラム9へ伝達することができる。
【0058】
さらに、より広い面積に振動エネルギを伝達することができることから、センサチップ4近傍の保持プレート2の下面などに残存している気泡を除去することも可能である。このように、周辺部分に残留した気泡なども含んで、より効率良く気泡を除去することができる細胞電気生理センサを実現することができる。
【0059】
また、ダイアフラム9の直下に振動子13を配置できることから、ダイアフラム9と振動子13との距離を近距離に配置することが可能であり、0.2〜1.0mmまでの距離に振動子13を配置することが可能である。
【0060】
なお、空洞8の中に振動子13を形成するためには、圧電素子からなる振動子13を接着剤などを用いて空洞8の所定の部所に接合することによって安価に作製することができる。また、実施の形態1と同様にして薄膜プロセスを用いて圧電薄膜からなる積層圧電素子を直接空洞8の所望の位置へ形成しても良い。
【0061】
そして、前記振動子13は細胞内液19の中で、電圧あるいは電流を印加することから、絶縁性を確保しておくことが必要である。そのため、振動子13の表面を絶縁材にて被覆しておくことが重要である。これらの材料としては、絶縁性無機材料、シリコン樹脂、エポキシ樹脂などの防水性に優れた絶縁性樹脂が好ましい。
【0062】
また、空洞8の内部で細胞内液19を介して定在波を発生させ、この定在波によって第三の貫通孔7の中の気泡を補足し、移動・除去することができる。例えば、ダイアフラム9と振動子13との距離を0.5mmとしたとき、振動子13の振動周波数を6.0MHzとすることによって、ダイアフラム9と振動子13との間に3個の定在波の節を形成することができる。このように、定在波の節を3個以上形成し、その定在波の節を移動させることによって気泡を移動除去させることができる。これによっても、実施の形態1で説明した定在波の効果と同様の効果を得ることができる。
【0063】
次に、本実施の形態2における別の例の細胞電気生理センサの構成について図4を用いて説明する。図4において、特に異なっている点は、振動子13をセンサチップ4のダイアフラム9の一面に形成していることである。
【0064】
このような構成とすることによって、第三の貫通孔7の中の気泡を効率よく移動・除去することができる。
【0065】
なお、図4では、振動子13をダイアフラム9の下面に形成しているが、ダイアフラム9の上面に形成しても同様の効果を発揮することができる。
【0066】
そして、この振動子13はダイアフラム9の表層に薄膜プロセスを用いて圧電薄膜を形成することによって、例えば外径;500μmφ、厚み;20μmの積層の薄膜圧電素子からなる振動子13を直接ダイアフラム9の表層に形成することができる。
【0067】
この振動子13は振動周波数;1.5MHzで振動させることができ、第三の貫通孔7の内部に残留した気泡を効率よく除去することができた。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の細胞電気生理センサは、細胞電気生理活動の測定を効率良く、確実に行うことにおいて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の実施の形態1における細胞電気生理センサの断面図
【図2】同要部拡大断面図
【図3】本発明の実施の形態2における細胞電気生理センサの断面図
【図4】同別の例の細胞電気生理センサの要部拡大断面図
【符号の説明】
【0070】
1 ウエル
2 保持プレート
3 流路プレート
4 センサチップ
5 第一の貫通孔
6 第二の貫通孔
7 第三の貫通孔
8 空洞
9 ダイアフラム
12 振動プレート
13 振動子
14 第一の電極
15 第二の電極
16 入口
17 出口
18 細胞外液
19 細胞内液
20 細胞
【出願人】 【識別番号】000005821
【氏名又は名称】松下電器産業株式会社
【出願日】 平成18年6月23日(2006.6.23)
【代理人】 【識別番号】100097445
【弁理士】
【氏名又は名称】岩橋 文雄

【識別番号】100109667
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 浩樹

【識別番号】100109151
【弁理士】
【氏名又は名称】永野 大介


【公開番号】 特開2008−79(P2008−79A)
【公開日】 平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願番号】 特願2006−173325(P2006−173325)