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【発明の名称】 食酢の製造方法、及び該方法により製造された食酢
【発明者】 【氏名】宇賀神 忍

【氏名】大辻 吉彰

【要約】 【課題】糠を含有する原料を使用した食酢における独特のクセのある不快臭を緩和し、飲用、調理用等の広範な用途に利用することができる食酢の製造方法、及び該方法により製造された食酢を提供すること。

【解決手段】糠を含有する原料を使用する食酢の製造方法であって、異性化処理を行った糖化液を、糖分が8〜50重量/容量%であり、かつ、果糖濃度が3重量/容量%以上となるように、食酢中に含有させることを特徴とする食酢の製造方法、及び該方法によって製造された食酢を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
糠を含有する原料を使用する食酢の製造方法であって、異性化処理を行った糖化液を、糖分が8〜50重量/容量%であり、かつ、果糖濃度が3重量/容量%以上となるように、食酢中に含有させることを特徴とする食酢の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法で製造された食酢。
【請求項3】
請求項2に記載の食酢を含有する飲食品。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、食酢の製造方法、及び該方法により製造された食酢に関し、さらに詳細には、糠を含有する原料を使用する食酢、例えば玄米を用いて製造される黒酢や玄米酢などに対して、異性化処理を行った糖化液を、糖分が8〜50重量/容量%であり、かつ、果糖濃度が3重量/容量%以上となるように含有させることを特徴とする食酢の製造方法、及び該方法により製造される食酢に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食酢を飲用として摂取することが広まっており、なかでも玄米を原料として製造される黒酢には種々の健康機能が認められていることから、黒酢を飲用として摂取することがもてはやされ、さらに黒酢を使用したぽん酢醤油などの本来の酸味調味料としても人気が高まっている。
しかし、玄米を原料とする黒酢などは、食酢中の酢酸に起因するツンとする刺激に加えて、糠を含有する食酢独特のクセのある不快臭があり、利用が限られるなどの問題があった。
【0003】
このような、玄米を使用した食酢における独特のクセのある不快臭を緩和する方法としては、例えば、黒酢と醤油を含有するぽん酢醤油に対して昆布のだし汁を加える方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、このように昆布のだし汁を添加した場合は、飲用としての適性が低下したり、調味料としては昆布風味が強調されすぎてしまうなどの問題が生じることなどから、玄米を使用した食酢独特のクセのある不快臭を緩和することができ、かつ、広範な用途に適用可能な方法を開発することが望まれていた。
【0004】
なお、食酢の香味を改善する方法としては、黒酢にスクラロースを添加する方法(例えば、特許文献2参照)や、ソトロンおよびフルフラールを含有させる方法(例えば、特許文献3参照)などが開示されているが、いずれも食酢中の主要な有機酸である酢酸に由来する刺激的な酸味や酸臭を緩和する方法であって、黒酢などにおける独特のクセのある不快臭を緩和するものではなかった。
【0005】
糖分を食酢に含有させることについては、従来から酸味の緩和のために、食酢にハチミツ等の糖分を添加して飲用する方法がよく知られている。
さらに、酢酸発酵前の含アルコール原料液の糖分をあらかじめ10〜30%に調整し、次いで酢酸発酵を行って、酸度2%以上、糖分10〜30%、エキス分16〜40%としたことを特徴とする、玄米などを原料とした糖分濃度を従来よりも高めた飲用酢を製造する方法(例えば、特許文献4参照)が開示されている。
また、米醸造酢に果糖を添加した飲料(例えば、特許文献5参照)なども開発されている。
【0006】
しかしながら、このような甘味成分を添加する方法にあっては、酸味の刺激を和らげることができても、黒酢独特のクセのある香りは解消されないという問題があった。
すなわち、酸味の刺激を緩和すると同時に、黒酢特有のクセのある香りが緩和された、より飲みやすい黒酢を製造する方法を開発することが求められていた。
【0007】
【特許文献1】特開2004−49104号公報
【特許文献2】特開2002−335924号公報
【特許文献3】特開2001−69940号公報
【特許文献4】特開昭61−96981号公報
【特許文献5】特開昭56−64770号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、糠を含有する原料を使用した食酢における独特のクセのある不快臭を緩和し、飲用、調理用等の広範な用途に利用することができる食酢の製造方法、及び該方法により製造された食酢を提供することである。また、そのような食酢を使用することにより、独特のクセのある不快臭を緩和した飲食品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、糠を含有する原料を使用する食酢における糖分濃度を高めると同時に、異性化処理を行って果糖濃度を高めた糖化液を用いて当該食酢を製造することにより、食酢の酸味を和らげることはもちろん、驚くべきことに該食酢特有のクセのある香りを抑えることができ、より飲用に適した食酢を製造できることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は以下の(1)〜(3)に関する。
(1)糠を含有する原料を使用する食酢の製造方法であって、異性化処理を行った糖化液を、糖分が8〜50重量/容量%であり、かつ、果糖濃度が3重量/容量%以上となるように、食酢中に含有させることを特徴とする食酢の製造方法。
(2)上記(1)に記載の方法で製造された食酢。
(3)上記(2)に記載の食酢を含有する飲食品。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、糠を含有する原料を使用する食酢において、糠を含有する食酢独特の不快なクセのある香を緩和することができ、該食酢の飲用や調味用等を含めた広範な用途での利用を可能とすることができる。また、本発明の食酢を使用することにより、独特のクセのある不快臭を緩和した飲食品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
請求項1に記載の本発明は、糠を含有する原料を使用する食酢の製造方法であって、異性化処理を行った糖化液を、糖分が8〜50重量/容量%であり、かつ、果糖濃度が3重量/容量%以上となるように、食酢中に含有させることを特徴とする食酢の製造方法である。
【0013】
食酢は醸造酢と合成酢に大別され、本発明の食酢としては、原料を酢酸発酵させて得られる醸造酢が好ましい。醸造酢としては米黒酢、玄米酢、大麦黒酢、米酢、穀物酢などが挙げられ、中でも米黒酢、玄米酢が好ましい。
なお、米黒酢は、食酢品質表示基準(農林水産省告示第1821号平成16年10月7日改正)により、「穀物酢のうち、原材料として米(玄米の糠層の全部を取り除いて精白したものを除く)又はこれに小麦若しくは大麦を加えたもののみを使用したもので、米の使用量が穀物酢1Lにつき180g以上であって、かつ、発酵および熟成によって褐色又は黒褐色に着色したもの」と定義され、また、大麦黒酢は、「穀物酢のうち、原材料として大麦のみを使用したもので、大麦の使用量が穀物酢1Lにつき180g以上であって、かつ、発酵および熟成によって褐色又は黒褐色に着色したもの」と定義されている。
【0014】
本発明において糠とは、穀類を精白する過程で発生する外側部分(糠層)を指す。好ましくは、穀類が米であるときは、穀類表面を削る度合(以下、精白度と称する場合もある)が約6%未満の場合に発生するものを言い、穀類が大麦であるときは、精白度が約30%未満の場合に発生するものを言う。
本発明の「糠を含有する原料」には、いわゆる米糠や赤糠、麦糠などの糠だけでなく、玄米や玄麦、糠層の全部を除去していない部分的に精白した穀類など、糠層の少なくとも一部を有する穀類も包含される。中でも、玄米、部分精白米が好適に用いられ、特に玄米の使用が好ましい。
【0015】
糠には、タンパク質、ミネラル、食物繊維、油分等の栄養成分が豊富に含有され、さらに、ヘキサナール等のアルデヒド成分やヘキサノール等のアルコール成分をはじめとする香り成分も多く含有される。
糠を含有する原料を使用した食酢における独特のクセのある不快臭の原因物質は、はっきりとは解明されていないが、上記の香り成分がアルコール発酵や酢酸発酵により変化を受けて生じた物質などが複雑に関与しているものと推定される。
【0016】
本発明の食酢の製造方法における原料としては、上記の糠を含有する原料と共に、精白した米や小麦、大麦、コーンなど、糠を含まない他の穀物原料を併用してもよい。
本発明において、糠を含有する原料を含めたこれら原料の使用量は、1リッターの食酢に対して40〜1200g、好ましくは180〜1200gとすることができる。その内、糠を含有する原料の使用量は、1リッターの食酢に対して40〜700g、好ましくは180〜700gである。
【0017】
本発明の食酢の製造方法は、上記の「糠を含有する原料」を原料として使用し、異性化処理を行った糖化液を、糖分が8〜50重量/容量%であり、かつ、果糖濃度が3重量/容量%以上となるように、食酢中に含有させること以外は特に限定されず、一般的な食酢の製造方法を採用できる。
【0018】
一般的な食酢の製造方法の1例を以下に示す。
まず、麹や糖化酵素を用いて、糠を含有する原料中の糖質を糖化した後、ろ過などにより糖化粕などを除去した糖化液を調製する。次に、該糖化液を酵母により酒精発酵させた後、酒粕などの固形物をろ過などにより除去して、酒精発酵液を得る。さらに、得られた該酒精発酵液を含アルコール原料液として、種酢と混合したものを酢酸菌により酢酸発酵させる。酢酸発酵が終了した発酵液を適宜熟成させた後、ろ過、殺菌し、壜などの容器に充填して最終製品とする。
【0019】
本発明の食酢の製造方法としては、糠を含有する原料を上記と同様に糖化させて得られる糖化液に対して異性化処理を行ったものに、アルコールを加えて酢酸発酵させる方法を採用してもよい。
本発明において酢酸発酵の方法は、酢酸菌を静置した発酵液表面に繁殖させて行ういわゆる静置発酵法や、通気攪拌発酵槽を用いて行う深部発酵法でもかまわない。
また、壷などの中で上記の糖化、異性化、酒精発酵、酢酸発酵の各工程を同時並行して行わせる方法で製造してもよい。
【0020】
本発明においては、上記した糠を含有する原料及び必要に応じて使用する大麦などの穀物原料を糖化処理して得られた糖化液に対して異性化処理を行うことにより、糖化液中に果糖を生成させた糖化液(以下、異性化糖化液と称する場合もある)を使用することが重要である。
この結果、従来の食酢と比較して質の良い甘みを付与することができ、またその甘みによって食酢の酸味を和らげることが出来る上に、異性化工程を加えることによって、糠を含有する原料を使用した食酢特有のクセのある香りを抑えることができる。
【0021】
本発明の食酢の製造方法は、上記のように糖化液を異性化処理した後、酒精発酵液を混合して酢酸発酵させることを特徴とするものである。以下、これらについて詳細に説明する。
【0022】
1.異性化糖化液の製造方法
(1)原料
本発明の糠を含有する原料として用いる米とは、玄米のぬか層の全部を取り除いて精白したもの以外の米であり、具体的には、玄米ないしは玄米からぬか部分を完全に除去しないように精白した米を意味する。玄米からぬか部分を完全に除去しないように精白した米とは、実質的には精白度約6%未満の米が該当する。本発明においては、特に精白度0〜5%の米が好適に用いられる。また、上記の米は、破砕あるいは粉砕したものを用いるのが好適である。
【0023】
また、本発明の糠を含有する原料として用いる大麦とは、上記米の場合と同様に、玄大麦ないしは玄大麦のフスマ層を完全に除去しないように精白した大麦を意味する。玄大麦からフスマ部分を完全に除去しないように精白した大麦とは、実質的には精白度約30%未満の大麦が該当する。本発明においては、特に精白度0〜15%の大麦が好適に用いられる。また、上記の大麦は、破砕あるいは粉砕したものを用いるのが好適である
【0024】
(2)液化および糖化反応
本発明における糖化液は、基本的には、通常の食酢の製造において用いられる糖化液と同様に調製することができる。すなわち、上記したような糠を含有する原料を後述するような割合で水に懸濁させ、麹あるいは糖化酵素を加えて糖化もろみとすることにより、糖化液を得ることができる。
【0025】
本発明の方法において、原料として上記のような米を用いる場合は、糖化液を調製する際の米の使用量は、糖化液(濾過前)に対して20〜45重量/容量%、好ましくは30〜40重量/容量%とすればよい。米の使用量が上限を超えると粘度上昇に伴い均一な糖化反応が得られないため好ましくなく、また、下限未満であると、目的とする高濃度の糖分を含有する食酢が得られないため好ましくない。
【0026】
なお、上記の米を主原料として使用する場合は、上記の米に対して大麦又は小麦を併用することもできる。このとき、大麦又は小麦の使用量は、米の使用量が食酢1リッターにつき180g以上となるように留意して調整される必要がある。
また、上記の大麦又は小麦を主原料として使用する際の使用量は、食酢1リッターにつき180g以上となるように留意して調整される必要がある。
【0027】
まず、糠を含有する原料を、液化酵素により液化して液化反応液を得る。酵素液化法の条件は特に限定されるものではないが、液化酵素としては、α−アミラーゼを用いることが好ましい。液化酵素の添加量、反応時間には特に制限がないが、0.1重量%〜5.0重量%添加し、30分〜6時間反応させることが好ましい。反応温度は、液化酵素であるα−アミラーゼの至適温度にするのがより好ましい。なお、ここで言う至適温度とは、酵素活性が最も高くなる温度のことである。反応終了後、至適温度より高い温度で10分から1時間加熱することにより酵素を失活させて、液化反応液を得る。
【0028】
次に、液化反応液を糖化酵素により糖化して、糖化もろみを得る。糖化酵素は、液化反応液を糖化できれば特に限定されるものでなく、例えば、α−アミラーゼ、β−アミラーゼにより糖化することができる。これらの酵素の起源も限定されるものではなく、大麦、大豆などの植物由来、Bacillus属、Pseudomonas属などの微生物由来のものなどを使用することができる。
【0029】
また、糖化酵素の添加量や糖化反応時間にも特に制限がないが、糖化酵素を0.001重量%〜0.05重量%添加し、8〜96時間反応させることが好ましい。さらに、反応温度は、短時間で失活しない程度に低く、雑菌汚染の恐れがない程度に高い温度であれば特に問題はない。通常は50〜70℃にするが、糖化酵素の至適温度にするのがより好ましい。
【0030】
また、糖化工程と同時に、プロテアーゼによりタンパク質分解工程を行うことがより好ましい。これにより、アミノ酸が生成するので、得られた糖化液を使用して製造された食酢のアミノ酸量が多くなることにより、品質をさらに高めることができる。タンパク質分解工程は、糖化工程と同時に行ってもよいし、また糖化工程終了後に実施してもよい。
【0031】
プロテアーゼとしては、カビ由来、植物由来、動物由来等の各種由来のプロテアーゼを用いることができる。また、酸性プロテアーゼ、中性プロテアーゼ、アルカリ性プロテアーゼの何れを用いてもよい。プロテアーゼの添加量、反応時間には特に制限がないが、0.0001重量%〜0.01重量%添加し、8〜96時間反応させることが好ましい。反応温度は、通常30〜70℃にするが、プロテアーゼの至適温度にするのがより好ましい。
【0032】
(3)異性化反応
次に、得られた糖化もろみを異性化して、異性化糖化もろみを得る。異性化工程の手法としては、糖化もろみを異性化できれば特に限定されるものではなく、例えばグルコースイソメラーゼなどの異性化酵素を添加することによって異性化することができる。異性化酵素の起源等は限定されるものではなく、また精製品であっても、粗精製品であっても用いることが可能であるが、食品の安全性を確保できる程度のものであるのが好ましい。
【0033】
また、異性化酵素の使用方法については、遊離の形態で糖化液と接触させる方法、もしくは樹脂等に酵素或いは酵素を内包する菌体を固定化し、カラム等に充填された状態で使用し、カラムに糖化もろみを通過させる過程で酵素反応を進行させる方法の、いずれの方法でも良い。
【0034】
異性化酵素の添加量、反応温度、反応時間には特に制限がないが、異性化糖化液の果糖濃度が3%以上となるような反応条件とすることが好ましい。このような反応条件の例としては、酵素が遊離の形態であるならば、0.1重量%〜5.0重量%の添加量で、55〜62℃の温度として10分から24時間実施すれば良く、また、固定化された形態であれば、55〜62℃の温度として、時間当たり0.5〜5倍量の糖化もろみがカラム内を通過するように流速を設定して反応させれば良い。
【0035】
次に、得られた異性化糖化もろみを、遠心分離やフィルタープレス、ろ過などによる不溶部の除去や、可溶部をケイソウ土や活性炭などの濾過助剤を用いたろ過を行うことにより、異性化糖化液を得る。なお、こうした遠心分離やフィルタープレス、ろ過のかわりに、セラミックなどを素材とする精密ろ過を行ってもよい。
【0036】
このようにして調製された異性化糖化液の糖分濃度は10〜25重量/容量%であるので、これよりも糖分濃度の高い異性化糖化液が必要なときは、減圧濃縮などの公知の方法により濃縮して、糖分濃度を高めた異性化糖化液を調製して使用することも可能である。
本発明において異性化糖化液とは、このような濃縮異性化糖化液をも包含するものである。
【0037】
2.異性化糖化液を原料とする食酢の製造
一般的な食酢の製造は以下の方法により行われる。
すなわち、糠を含有する原料に対して、糖化酵素を用いて原料中の糖質を糖化した後、ろ過などにより糖化粕などを除去した糖化液を調製する。その後、該糖化液を酵母により酒精発酵させた後、酒粕などの固形物を濾過などにより除去して、酒精発酵液を得る。さらに、得られた該酒精発酵液を含アルコール原料液として、種酢と混合したものを酢酸菌により酢酸発酵させる。酢酸発酵が終了した発酵液を適宜熟成させた後、濾過、殺菌し、壜などの容器に充填して最終製品とする。
なお、壷などの中で、上記の糖化、異性化、酒精発酵、酢酸発酵の各工程を同時並行して行わせて製造する方法も知られている。
【0038】
このような一般的な方法で食酢の製造を行うと、原料である米や大麦などに由来する糖分の殆どが酒精発酵工程においてアルコールに消費されてしまうため、食酢中の糖分濃度は一般に低く、例えば8重量/容量%以上の糖分濃度の食酢は製造されないのが一般的である。
【0039】
本発明の方法は、糖分濃度が高く、かつ果糖含量を高めたために、そのまま水で希釈するだけでおいしく飲用できるような、糠を含有する原料を使用した食酢を製造しようとするものであり、そのためには、原料由来の糖分を従来の食酢よりも高濃度に含有させ、かつ異性化処理を行う必要がある。
【0040】
そこで、本発明の方法においては、酢酸発酵前の含アルコール原料液を調製する際に、一般的には原料の糖化液を酒精発酵させて得られる酒精発酵液を含アルコール原料液としているところ、異性化糖化液を酒精発酵液に添加したものを含アルコール原料液とし、含アルコール原料液の糖分濃度を高めて酢酸発酵を行うことによって、原料に由来する糖分を8〜50重量/容量%含有する、糖分濃度の高い食酢を製造する。
【0041】
このように、本発明における含アルコール原料液は、糠を含有する原料の糖化液を異性化処理して得られる異性化糖化液と、該異性化糖化液を酒精発酵させて得られる(あるいは、上記原料について糖化、異性化および酒精発酵を同時並行させて得られる)酒精発酵液、および必要に応じて添加する水とを混合することにより調製される。なお、含アルコール原料液を調製する際の各原料の使用割合および種酢との混合割合は、得ようとする最終食酢の糖分濃度や酸度などに応じて適宜調整することができる。
【0042】
本発明の方法により製造される食酢は、このようにして糖分濃度を高めたものであり、具体的な糠を含有する原料に由来する糖分濃度は8〜50重量/容量%程度、好ましくは15〜35重量/容量%程度である。
【0043】
このとき、酒精発酵液の糖分は酒精発酵に使用されてほとんど含まれていないため、最終的な食酢中の糖分のほとんどは異性化糖化液に由来する。したがって、食酢中の糖分濃度及び糖組成は、上記のようにして含アルコール原料液を調製する際の異性化糖化液の糖分濃度や糖組成、及びその使用比率を加減することによって調整することができる。
【0044】
該食酢中の糖分濃度が8重量/容量%未満では、従来の食酢と同様に糖分が少なく、糠を含有する食酢特有のクセのある香りを和らげる効果が弱いので、そのまま水で希釈するだけでおいしく飲用することに適しておらず、好ましくない。また、食酢中の糖分濃度を50重量/容量%よりも高くすると、酢酸菌が生育しにくくなり、酢酸発酵がうまく実施できなくなるため、好ましくない。
【0045】
また、食酢中の糖分の糖組成については、原料の異性化糖化液由来の果糖が3重量/容量%未満では、従来の食酢と同様に甘みの強さ及び質が好ましくなく、また糠を含有する原料を用いた食酢特有のクセのある香りを和らげる効果が弱いので、そのまま水で希釈するだけではおいしく飲用することに適しておらず、好ましくない。
【0046】
なお、本発明における糖分とは甘みを有する糖質の合計であり、具体的には、グルコース、マルトース、果糖、シュクロース、ソルビトール、グリセロールの濃度(重量/容量%)を合計して求めることができる。該糖質の測定は、例えば糖分析用の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用い、下記のHPLC条件で実施することができる。
【0047】
<HPLC条件>
カラム:Shodex Asahipak NH2P−50 4E(4.6mmID×250mm)(昭和電工社製)
溶離液:CHCN/HO=75/25
検出:RI検出器
流速:1.0mL/min
カラム温度:30℃
【0048】
また、本発明の方法により製造される食酢中における酢酸等の有機酸の濃度については特に制限はないが、水で希釈するだけでおいしく飲用できるという観点からは、酸度2〜6%程度であることが好ましい。なお、酸度(%)は、酢酸等の有機酸を水酸化ナトリウム溶液を用いて中和滴定し、酢酸濃度に換算して求めることができる。
【0049】
このようにして製造された請求項2に係る本発明の食酢は、糠を含有する原料を多く使用して、原料由来の糖分を8〜50重量/容量%含有し、かつその原料の異性化糖化液に由来する果糖を3重量/容量%以上含有したものである。その結果、甘みによって酸味がやわらげられ、しかも、原料糖化液に異性化工程を加えることにより、糠を含有する原料を用いた食酢特有のクセのある香りが和らげられており、従来の食酢よりも優れた風味を有する飲用に適した黒酢である。
【0050】
本発明の食酢は、飲食品の製造に用いることができる。
本発明の食酢を含有する飲食品としては、例えば、清涼飲料水などの飲料や、ポン酢、ドレッシング、たれなどの調味料、寿司、酢の物、サラダなどの加工食品等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0051】
これらの飲食品は通常行われる方法で製造することができ、本発明の食酢を含有する清涼飲料水の場合は、たとえば本発明の食酢に果汁やハチミツなどを加え、適宜希釈することにより製造することができる。
また、本発明の食酢を含有するポン酢の場合は、たとえば本発明の食酢に砂糖、塩、醤油、油、香辛料などを加えることにより製造することができる。
【実施例】
【0052】
以下に、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0053】
(実施例1) 異性化工程の効果
1.米糖化もろみの調製
粉砕した米(精白度5%)6Kgを全容量20リッターになるように水に懸濁させ、液化型アミラーゼ製剤(クライスターゼT−5:大和化成社製)20gを加え、攪拌しながら90℃で90分間保持して液化させた。液化後、120℃で20分間加熱して液化酵素を失活させ、さらに58℃に冷却した後、糖化型アミラーゼ製剤(スミチーム:新日本化学社製)40g及びプロテアーゼ製剤(スミチームLP −50:新日本化学社製)10gを加えて、さらに58℃で18時間糖化処理を行い米糖化もろみ液を得た。
【0054】
2.米糖化もろみの異性化及び濃縮異性化米糖化液の調製
上記の糖化もろみにグルコースイソメラーゼ製剤(合同酒精社製)を0.5重量%投入し、60度で8時間異性化反応を行った。異性化反応終了後、さらに95度で15分間加熱することにより、異性化酵素を失活させた。
その後、圧搾ろ過して異性化米糖化液を得た。この異性化米糖化液の糖分濃度は20重量/容量%であった。さらに、該糖化液を減圧下濃縮して、糖分60重量/容量%の濃縮異性化米糖化液を調製した。
【0055】
3.米酒精発酵液の調製
まず、精白度5%の米を定法に従い常圧で蒸煮後冷却し、種麹菌アスペルギルス・オリゼーを接種後、30℃で3日間培養し、乾燥させたものを米麹とした。
次に、米(精白度5%)を破砕したものを6Kg、粉砕した上記米麹1Kg、液化型アミラーゼ製剤(クライスターゼT−5:大和化成社製)20g、糖化型アミラーゼ製剤(スミチーム:新日本化学社製)20g、及びプロテアーゼ製剤(スミチームLP−50:新日本化学社製)40gを、全容量20リッターになるように水に懸濁し、酵母(サッカロミセス・セレビシエ(オリエンタル酵母工業社製))25gを添加して30℃で5日間酒精発酵し、ろ過して、米酒精発酵液を得た。なお、この米酒精発酵液のアルコール濃度は15容量/容量%であった。
【0056】
4.米黒酢の製造
表1に示すように、上記の濃縮異性化米糖化液及び米酒精発酵液を水と適宜混合して調製した含アルコール原料液(アルコール濃度2.5%)70容量部と、種菌液(種酢)30容量部を混合し、アルコール濃度0.3容量/容量%程度になるまで、深部発酵法(30℃、500rpm、0.2vvm)で酢酸発酵を行なった。
その後、約3ヶ月間熟成させ、熟成終了後にろ過し、さらに壜に充填して加熱殺菌後、密閉して試験区1−Aの黒酢を得た。こうして得られた黒酢におけるグルコース及び果糖の濃度は、それぞれ10重量/容量%であった。
【0057】
なお、上記の種菌液(種酢)としては、深部発酵槽で、上記の米酒精発酵液を用いて、30℃、500rpm、0.2vvmの条件で、酸度7.5重量/容量%及びアルコール濃度0.4容量/容量%で旺盛に連続酢酸発酵を継続している酢酸菌アセトバクター・アセチを含む発酵液を使用した。
【0058】
また、上記米黒酢の製造方法において、表1に記載したとおり、濃縮異性化米糖化液を使用せずに、米酒精発酵液にグルコースと果糖の濃度が試験区1−Aと同じ濃度になるよう添加して調製した含アルコール原料液(アルコール濃度2.5%)を用いて酢酸発酵を行い、上記と同様にして、熟成、ろ過、さらに壜充填、加熱殺菌して得られた黒酢を試験区1−Bとした。
【0059】
また、濃縮異性化米糖化液を使用せず、米酒精発酵液のみを用いて調製した含アルコール原料液を用いて酢酸発酵し、熟成したものに、グルコースと果糖の濃度が試験区1−Aと同じ濃度になるよう添加した後、上記と同様にして、ろ過、さらに壜充填、加熱殺菌したものを試験区1−Cとした。
さらに、米酒精発酵液のみを用いて調製した含アルコール原料液を用いて酢酸発酵し、上記と同様にして熟成、ろ過、さらに壜充填、加熱殺菌して得られた黒酢を試験区1−Dとした。
【0060】
5.風味評価
官能評価の専門パネラー20名により、上記方法で調製した黒酢のクセのある香り、及び酸の刺激の各項目について5段階評価を実施した。クセのある香りについては、クセのある香りを強く感じれば5、やや強く感じれば4、ふつうに感じれば3、弱く感じれば2、ほとんど感じなければ1とした。また、酸の刺激については、酸の刺激を強く感じれば5、やや強く感じれば4、ふつうに感じれば3、弱く感じれば2、ほとんど感じなければ1とした。
【0061】
6.風味評価結果
各サンプルについての風味評価の結果を下記の表1に示す。
【0062】
【表1】


【0063】
以上の結果より、糖分を殆ど含有しない試験区1−Dの黒酢に比較して、試験区1−A、1−B、及び1−Cのように果糖などの糖分を含有する黒酢は、酸の刺激が抑制されることが確認できた。
さらに、果糖を含有する黒酢の中では、単に果糖そのものを添加した試験区1−Bや試験区1−Cの黒酢に比較して、異性化工程を加えた異性化米糖化液を用いて製造した試験区1−Aの黒酢の方が、黒酢特有のクセのある香りが低減される点で優れていることがわかった。
【0064】
(実施例2) 最適な異性化率の評価
1.米糖化もろみの調製
粉砕した米(精白度5%)2.4Kgを全容量20リッターになるように水に懸濁させ、液化型アミラーゼ製剤(クライスターゼT−5:大和化成社製)8gを加え、攪拌しながら90℃で90分間保持して液化させた。液化後、120℃で20分間加熱して液化酵素を失活させ、さらに58℃に冷却した後、糖化型アミラーゼ製剤(スミチーム:新日本化学社製)16g及びプロテアーゼ製剤(スミチームLP −50:新日本化学社製)4gを加えて、さらに58℃で18時間糖化処理を行い米糖化もろみ液を得た。
【0065】
2.米糖化もろみの異性化及び濃縮異性化米糖化液の調製
上記の糖化もろみにグルコースイソメラーゼ製剤(合同酒精社製)を0.5重量%投入し、異性化反応を行った。この際の異性化反応は60℃で行い、反応時間を以下の通り変化させた。すなわち、反応時間1時間(試験区2−1)、反応時間3時間(試験区2−2)、反応時間8時間(試験区2−3)とした。
【0066】
それぞれの試験区において、異性化反応終了後、さらに95℃で15分間加熱することにより、異性化酵素を失活させた。その後、圧搾ろ過して異性化米糖化液を得た。この異性化米糖化液の糖分濃度は8重量/容量%であった。さらに、上記米糖化液を減圧下濃縮して、糖分24重量/容量%の濃縮異性化米糖化液を調製した。
【0067】
さらに、上記の米糖化もろみの異性化処理をすることなしに、圧搾ろ過して米糖化液を得た。この米糖化液の糖分濃度は8重量/容量%であった。さらに、この米糖化液を異性化することなく、減圧下濃縮することで糖分24重量/容量%の濃縮米糖化液を調製して試験区2−4とした。
【0068】
3.米酒精発酵液の調製
まず、精白度5%の米を定法に従い常圧で蒸煮後冷却し、種麹菌アスペルギルス・オリゼーを接種後、30℃で3日間培養し、乾燥させたものを米麹とした。
米(精白度5%)を破砕したものを6Kg、粉砕した米麹1Kg、液化型アミラーゼ製剤(クライスターゼT−5:大和化成社製)20g、糖化型アミラーゼ製剤(スミチーム:新日本化学社製)20g、及びプロテアーゼ製剤(スミチームLP−50:新日本化学社製)40gを、全容量20リッターになるように水に懸濁し、酵母(サッカロミセス・セレビシエ(オリエンタル酵母工業社製))25gを添加して30℃で5日間酒精発酵し、ろ過して、米酒精発酵液を得た。この米酒精発酵液のアルコール濃度は15容量/容量%であった。
【0069】
4.米黒酢の調製
表2に示すように、上記の試験区2−1〜2−4の何れかの濃縮異性化米糖化液または濃縮米糖化液と上記米酒精発酵液を、水と適宜混合して調製した含アルコール原料液(アルコール濃度2.5%)70容量部と、種菌液(種酢)30容量部を混合し、アルコール濃度0.3容量/容量%程度になるまで、深部発酵法(30℃、500rpm、0.2vvm)で酢酸発酵を行なった。
その後、約3ヶ月間熟成させ、熟成終了後にろ過し、さらに壜に充填して加熱殺菌後、密閉して黒酢を得た。
【0070】
なお、上記の種菌液(種酢)としては、深部発酵槽で、上記の米酒精発酵液を用いて、30℃、500rpm、0.2vvmの条件で、酸度7.5重量/容量%及びアルコール濃度0.4容量/容量%で旺盛に連続酢酸発酵を継続している酢酸菌アセトバクター・アセチを含む発酵液を使用した。
【0071】
ここで、試験区2−1の濃縮異性化米糖化液を用いて調製した含アルコール原料液を用いて調製した米黒酢を試験区2−A、試験区2−2の濃縮異性化米糖化液を用いて調製した含アルコール原料液を用いて調製した米黒酢を試験区2−B、試験区2−3の濃縮異性化米糖化液を用いて調製した含アルコール原料液を用いて調製した米黒酢を試験区2−C、試験区2−4の濃縮米糖化液を用いて調製した含アルコール原料液を用いて調製した米黒酢を試験区2−Dとした。
こうして得られた黒酢のグルコース及び果糖の濃度は、酢酸発酵に用いた糖化液の濃度により表2に記載のとおりになった。何れのサンプルも酢酸発酵の時間は一定にした。
【0072】
5.風味評価
官能評価の専門パネラー20名により、上記方法で調製した黒酢のクセのある香り、及び酸の刺激の各項目について5段階評価を実施した。クセのある香りについては、クセのある香りを強く感じれば5、やや強く感じれば4、ふつうに感じれば3、弱く感じれば2、ほとんど感じなければ1とした。また、酸の刺激については、酸の刺激を強く感じれば5、やや強く感じれば4、ふつうに感じれば3、弱く感じれば2、ほとんど感じなければ1とした。
【0073】
【表2】


【0074】
以上の結果より、異性化工程を加えておらず果糖を殆ど含有しない試験区2−Dの黒酢に比較して、試験区2−A、2−B、及び2−Cのように異性化工程を加え果糖を含有する黒酢は、酸の刺激が抑制されることが確認できた。
さらに、果糖を3重量/容量%以上含有する黒酢(試験区2−B及び試験区2−C)において、酸の刺激が和らげられると同時に、クセのある香りも抑えられていたことから、果糖濃度が3重量/容量%となるような程度に異性化反応を行うことが好ましいことが明らかとなった。
【0075】
(実施例3)
1.米糖化もろみの調製
粉砕した米(精白度5%)6Kgを全容量20リッターになるように水に懸濁させ、液化型アミラーゼ製剤(クライスターゼT−5:大和化成社製)20gを加え、攪拌しながら90℃で90分間保持して液化させた。液化後、120℃で20分間加熱して液化酵素を失活させ、さらに58℃に冷却した後、糖化型アミラーゼ製剤(スミチーム:新日本化学社製)40g及びプロテアーゼ製剤(スミチームLP−50:新日本化学社製)10gを加えて、さらに58℃で18時間糖化処理を行い米糖化もろみ液を得た。
【0076】
2.米糖化もろみの異性化及び濃縮異性化米糖化液の調製
上記の糖化もろみにグルコースイソメラーゼ(合同酒精社製)を0.5重量%投入し、異性化反応を行った。この際の異性化反応は60℃で行い、反応時間を以下の通り変化させた。すなわち、反応時間1時間(試験区3−1)、反応時間2時間(試験区3−2)、反応時間4時間(試験区3−3)、反応時間6時間(試験区3−4)、反応時間8時間(試験区3−5)とした。
【0077】
それぞれの試験区において、異性化反応終了後、さらに95度で15分間加熱することにより、異性化酵素を失活させた。その後、圧搾ろ過して異性化米糖化液を得た。この異性化米糖化液の糖分濃度は20重量/容量%であった。さらに、上記米糖化液を減圧下濃縮して、糖分60重量/容量%の濃縮異性化米糖化液を調製した。
【0078】
さらに、上記の米糖化もろみの異性化処理をすることなしに、圧搾ろ過して米糖化液を得た。この米糖化液の糖分濃度は20重量/容量%であった。さらに、この米糖化液を異性化することなく、減圧下濃縮することで糖分60重量/容量%の濃縮米糖化液を調製して試験区3−6とした。
【0079】
3.米酒精発酵液の調製
まず、精白度5%の米を定法に従い常圧で蒸煮後冷却し、種麹菌アスペルギルス・オリゼーを接種後、30℃で3日間培養し、乾燥させたものを米麹とした。
米(精白度5%)を破砕したものを6Kg、粉砕した米麹1Kg、液化型アミラーゼ製剤(クライスターゼT−5:大和化成社製)20g、糖化型アミラーゼ製剤(スミチーム:新日本化学社製)20g、及びプロテアーゼ製剤(スミチームLP−50:新日本化学社製)40gを、全容量20リッターになるように水に懸濁し、酵母(サッカロミセス・セレビシエ(オリエンタル酵母工業社製))25gを添加して、30℃で5日間酒精発酵し、ろ過して、米酒精発酵液を得た。この米酒精発酵液のアルコール濃度は15容量/容量%であった。
【0080】
4.米黒酢の調製
表3に示すように、上記の試験区3−1〜3−7の何れかの濃縮異性化米糖化液または濃縮米糖化液と米酒精発酵液を、水と適宜混合して調製した含アルコール原料液(アルコール濃度2.5%)70容量部と、種菌液(種酢)30容量部を混合し、アルコール濃度0.3容量/容量%程度になるまで、深部発酵法(30℃、500rpm、0.2vvm)で酢酸発酵を行なった。その後、約3ヶ月間熟成させ、熟成終了後にろ過し、さらに壜に充填して加熱殺菌後、密閉して黒酢を得た。
【0081】
なお、上記の種菌液(種酢)としては、深部発酵槽で、上記の米酒精発酵液を用いて、30℃、500rpm、0.2vvmの条件で、酸度7.5重量/容量%及びアルコール濃度0.4容量/容量%で旺盛に連続酢酸発酵を継続している酢酸菌アセトバクター・アセチを含む発酵液を使用した。
【0082】
ここで、試験区3−1の濃縮異性化米糖化液を用いて調製した含アルコール原料液を用いて調製した米黒酢を試験区3−A、試験区3−2の濃縮異性化米糖化液を用いて調製した含アルコール原料液を用いて調製した米黒酢を試験区3−B、試験区3−3の濃縮異性化米糖化液を用いて調製した含アルコール原料液を用いて調製した米黒酢を試験区3−C、試験区3−4の濃縮異性化米糖化液を用いて調製した含アルコール原料液を用いて調製した米黒酢を試験区3−D、試験区3−5の濃縮異性化米糖化液を用いて調製した含アルコール原料液を用いて調製した米黒酢を試験区3−E、また試験区3−6の濃縮米糖化液を用いて調製した含アルコール原料液を用いて調製した米黒酢を試験区3−Fとした。
こうして得られた黒酢のグルコース及び果糖の濃度は、酢酸発酵に用いた糖化液の濃度により、表2に記載のとおりになった。なお、何れのサンプルも酢酸発酵の時間は一定にした。
【0083】
5.風味評価
官能評価の専門パネラー20名により、上記方法で調製した黒酢のクセのある香り、及び酸の刺激の各項目について5段階評価を実施した。クセのある香りについては、クセのある香りを強く感じれば5、やや強く感じれば4、ふつうに感じれば3、弱く感じれば2、ほとんど感じなければ1とした。また、酸の刺激については、酸の刺激を強く感じれば5、やや強く感じれば4、ふつうに感じれば3、弱く感じれば2、ほとんど感じなければ1とした。
【0084】
【表3】


【0085】
以上の結果より、異性化工程を加えておらず果糖を殆ど含有しない試験区3−Fの黒酢に比較して、試験区3−A、3−B、3−C、3−D及び3−Eのように、異性化工程を加え果糖を含有する黒酢は、酸の刺激が抑制されることが確認できた。
さらに、果糖を3重量/容量%以上含有する黒酢(試験区3−Bないし試験区3−E)において、酸の刺激が和らげられると同時に、クセのある香りが抑えられていたことから、果糖を3重量/容量%以上含有する程度に異性化反応を行うのが好ましいことが明らかとなった。
【出願人】 【識別番号】398065531
【氏名又は名称】株式会社ミツカングループ本社
【識別番号】301058355
【氏名又は名称】株式会社ミツカン
【出願日】 平成19年2月26日(2007.2.26)
【代理人】 【識別番号】100086221
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 裕也


【公開番号】 特開2008−206431(P2008−206431A)
【公開日】 平成20年9月11日(2008.9.11)
【出願番号】 特願2007−45230(P2007−45230)