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【発明の名称】 焼酎蒸留廃液を用いた醸造酢の製造方法及び加工食品
【発明者】 【氏名】岩井 謙一

【氏名】河野 邦晃

【氏名】久光 晶子

【氏名】木田 建次

【氏名】森村 茂

【要約】 【課題】焼酎蒸留廃液の効率的利用及び製造期間の短縮化を図ると共に、アミノ酸類を豊富に含み栄養価が高く、色調及び香味に優れた醸造酢の製造方法及び加工食品を提供する。

【解決手段】ムラサキマサリを原料とした焼酎蒸留廃液に、麹、酵母菌培養液を添加し、温度を20℃〜40℃に調整し、初めの約24時間は酵母菌の増殖を促すため、通気量0.2〜1.0vvm、攪拌速度200〜600rpmの条件下で好気培養を行う。次に1日から6日程度通気を止め、攪拌速度0〜250rpmの条件下で嫌気培養を行いモロミを得る。次いで、得られたモロミに酢酸培養液を添加し、温度を20〜40℃に調整し、通気量0.2〜1.0vvm、攪拌速度200〜600rpmの条件下で好気培養を行うと20〜50時間で酢酸発酵が終了する。発酵後、約85℃で約10分間滅菌処理し、デカンターで遠心分離後、膜濾過して除菌及び精製して醸造酢を得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
甘藷の一種であるムラサキマサリを主原料とした焼酎蒸留廃液に、麹、酵母菌培養液を添加してアルコール発酵を行い、次いで、酢酸菌培養液を添加して酢酸発酵を行うことを特徴とする醸造酢の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の醸造酢の製造方法によって得られる醸造酢を用いて成る加工食品。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、焼酎蒸留廃液を用いた醸造酢の製造方法及びその加工食品に関するものである。甘藷の一種であるムラサキマサリを主原料とする焼酎蒸留廃液をアルコール発酵し、さらにそのアルコール発酵液を酢酸発酵した醸造酢を、それ自体として、また、飲料や他の調味料等の加工食品の製造原料として利用する。
【背景技術】
【0002】
2004年には九州全土で85万トンもの焼酎蒸留廃液が排出されているが、年々この廃液の処理規制が厳しくなってきており、焼酎製造業界では廃液の効率的処理技術が求められている。焼酎蒸留廃液利用の一つとして醸造酢の製造が知られている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1における焼酎蒸留廃液からの醸造酢製法は、糖質原料、麹、種酢そして水と焼酎蒸留廃液の混合液を仕込み、糖化、アルコール発酵、酢酸発酵を行うことで焼酎蒸留廃液の有効利用及び多様な風味を有する醸造酢を製造できることを特徴としている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−235538号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記製法は醸造酢仕込みに焼酎蒸留廃液と水との混合液を使用しているため、焼酎蒸留廃液の利用割合が少なく、水を使用することによりコストが嵩む。また、糖化、アルコール発酵、酢酸発酵の全工程で約三ヶ月間という長期間を要している。
本発明は、焼酎蒸留廃液の効率的利用及び製造期間の短縮化を図ると共に、アミノ酸類を豊富に含み栄養価が高く、色調及び香味に優れた醸造酢の製造方法及び加工食品を提供することを目的とする。
【0005】
すなわち、本発明は、焼酎蒸留粕液部の持つ機能性を食品の材料として用いることで、焼酎粕に含まれる有効成分を活用し、健康に有益な食品を提供すると共に、焼酎蒸留粕の再資源化を図るものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
また、本発明による醸造酢の製造方法は、甘藷の一種であるムラサキマサリを主原料とした焼酎蒸留廃液に、麹、酵母菌培養液を添加してアルコール発酵を行い、次いで、酢酸菌培養液を添加して酢酸発酵を行うことを第1の特徴とする。また、本発明の醸造酢の製造方法によって得られる醸造酢を用いて成る加工食品を第2の特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、焼酎製造業者に求められている焼酎蒸留廃液の廃棄量削減という主要効果以外にも下記の優れた効果を有する。
(1)醸造酢を短期間で製造することができる。
(2)本発明の醸造酢は市販の黒酢等に比べ、ポリフェノールやアミノ酸類濃度が高く、これを用いて高機能な飲料や加工食品が得られる。
【0008】
本発明における焼酎蒸留廃液は、甘藷の一種であるムラサキマサリを原料にした焼酎の製造において排出され常圧又は減圧焼酎蒸留廃液を無処理で用いることができる。好ましくは常圧焼酎蒸留廃液である。焼酎蒸留廃液は原料によって異なるが、糖質、有機酸、アミノ酸等多様な成分が含有され、製造された醸造酢は、旨み、コクのある風味を有する。また、含有する栄養成分が酵母菌、酢酸菌の生育を促し、それぞれの発酵を理想的な状態で推進させる。麹には、米麹、麦麹、芋麹等を用いることができる。
【0009】
酵母菌培養液は、重量比で焼酎蒸留廃液100に対し、麹10〜40を加え、そこに酵母菌を接種したものが好ましい。酢酸菌培養液は焼酎蒸留廃液に、アルコール濃度が4〜6vol%になるようにアルコールを加え、そこに酢酸菌を接種したものが好ましく、酢酸菌としてはクエン酸耐性のあるAcetobacter属が用いられる。
【0010】
本発明の醸造酢製造方法における各原料の仕込み割合は、重量比で焼酎蒸留廃液100に対し、麹10〜40、酵母培養液2〜20、酢酸菌培養液2〜20の範囲が好適である。一般的な醸造酢の製造ではアルコール発酵と酢酸発酵を同時に行うが、アルコール発酵は嫌気状態、酢酸発酵は好気状態で進行しやすい。そのため、効率的な発酵及び発酵期間短縮のためには、アルコール発酵と酢酸発酵とを別々に行うことが好ましい。本発明では、先ず、アルコール発酵を行ってモロミを得る。次いで、このモロミを酢酸発酵する。
【0011】
本発明の醸造酢製造方法におけるアルコール発酵では、焼酎蒸留廃液に、麹、酵母菌培養液を添加し、温度を20℃〜40℃に調整し、初めの約24時間は酵母菌の増殖を促すため、通気量0.2〜1.0vvm、攪拌速度200〜600rpmの条件下で好気培養を行う。次に1日から6日程度通気を止め、攪拌速度0〜250rpmの条件下で嫌気培養を行いモロミを得る。次いで、得られたモロミに酢酸培養液を添加し、温度を20〜40℃に調整し、通気量0.2〜1.0vvm、攪拌速度200〜600rpmの条件下で好気培養を行うと20〜50時間で酢酸発酵が終了する。発酵後、約85℃で約10分間滅菌処理し、デカンターで遠心分離後、膜濾過して除菌及び精製して醸造酢を得た。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明する。
【実施例】
【0013】
甘藷の一種であるムラサキマサリを原料とした焼酎蒸留廃液40リットルに米麹10kg、酵母菌培養液5.1リットルを添加し、温度を30℃に調整した。初めの24時間は、通気量25リットル/min、攪拌速度350rpmの条件下で好気培養を行い、次の144時間は通気を止め、攪拌速度150rpmで嫌気培養を行いモロミを得た。次いで、得られたモロミに酢酸菌培養液5.15リットルを添加し、温度を30℃に調整し、通気量30リットル/min、攪拌速度350rpmの条件下で好気培養を行った。発酵後、85℃で10分間滅菌処理し、デカンター(石川島播磨重工業株式会社製)で遠心分離後、膜濾過で除菌及び精製して醸造酢を得た。尚、膜濾過には、マイクローザMFラボモジュール膜UMP−153(商品名:旭化成ケミカルズ株式会社製)を使用した。表1に酢酸発酵時間及び酢酸酸度を示す。
【0014】
[比較例1]
甘藷の一種である黄金千貫を用いて製造した焼酎蒸留廃液40リットルに米麹8kg、酵母菌培養液4.9リットルを添加し、温度を30℃に調整した。初めの24時間は、通気量25リットル/min、攪拌速度350rpmの条件下で好気培養を行い、次の24時間は通気を止め、攪拌速度150rpmで嫌気培養を行った。発酵後、65℃で30分間高温処理し、酵母菌の活性を下げた。次いで、得られたモロミに酢酸培養液5リットルを添加し、温度を30℃に調整し、通気量30リットル/min、攪拌速度350rpmの条件下で好気培養を行った。発酵後、85℃で10分間滅菌処理し、遠心分離、膜濾過で除菌及び精製し醸造酢を得た。表1に酢酸発酵時間及び酢酸酸度を示す。
【0015】
【表1】


【0016】
表1から分かるように、実施例及び比較例1のいずれにおいても2日以内で酢酸発酵が終了し、酸度においても4%以上となり、一般的な醸造酢とされる酢酸酸度に達した。実施例は米麹添加量を増やしたため、発酵時間が若干長くなり、酢酸酸度は上昇した。
【0017】
実施例及び比較例1のタンパク質及びポリフェノール濃度の分析結果を表2に示す。
【0018】
【表2】


表2から分かるように、実施例は比較例1に比べ、タンパク質は約2倍、ポリフェノールは約3倍含有されていることが分かった。実施例はムラサキマサリを原料とした焼酎蒸留廃液を使用しているため、ポリフェノールの一種であるアントシアニンを豊富に含んでいる。このように、ポリフェノールを多く含むことから、抗酸化作用、血圧上昇抑制等の機能性に優れている。
【0019】
実施例1、比較例1及び比較例2(市販の黒酢:株式会社ミツカン製)の遊離アミノ酸類濃度の分析結果を表3に示す。単位はすべてmg/100mリットル。
【0020】
【表3】


【0021】
表3から分かるように、実施例は比較例1や比較例2に比べて必須アミノ酸のほとんどが最も多く含まれ、とくに、抑制性神経伝達物質であり、鎮静効果や血圧上昇抑制効果等を有するg−ABA(γ―アミノ酪酸)は比較例2の約5倍も含有されていた。
【0022】
次に、官能試験を行った結果を表4に示す。官能試験用サンプルは飲み易いように酢酸酸度を0.8%に調整した。また、評価は3点評価(1.良い 2.普通 3.劣る)と、飲み易さ(1.飲み易い 2.普通 3.飲み難い)とし、11人のパネラーに評価してもらいコメントを得た。
【0023】
【表4】


【0024】
実施例はパネラーに最も好評で、3点評価及び飲み易さのいずれについても比較例1及び比較例2を上回っていた。口当たりが柔らかく飲みやすい、色調が赤紫で鮮やかで良いといったコメントも得た。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明で得られた醸造酢は、タンパク質、ポリフェノール、遊離アミノ酸類濃度が極めて高いことから、健康機能性醸造酢としての飲料や加工食品、例えば、ソース、マヨネーズ、ドレッシング等の調味料に用いれば、ムラサキマサリ本来の色調や香味を有する優れたものとなる。
【出願人】 【識別番号】598092683
【氏名又は名称】霧島酒造株式会社
【出願日】 平成18年11月17日(2006.11.17)
【代理人】 【識別番号】240000039
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人 衞藤法律特許事務所


【公開番号】 特開2008−125388(P2008−125388A)
【公開日】 平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願番号】 特願2006−311761(P2006−311761)