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【発明の名称】 黒酢の製造方法
【発明者】 【氏名】鮫島 純二

【要約】 【課題】仕込み水に海洋深層水を用いることにより付加価値の高い黒酢を製造する。

【解決手段】米麹、蒸し米、仕込み水を用いて黒酢を製造する方法であって、該仕込み水として海洋深層水を用いることを特徴とする。米麹の製造に使用する麹菌として、黄麹菌又は黒麹菌を用いることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
米麹、蒸し米、仕込み水を用いて黒酢を製造する方法であって、該仕込み水として海洋深層水を用いることを特徴とする黒酢の製造方法。
【請求項2】
前記米麹は、黄麹菌を用いて製造されたものである請求項1に記載の黒酢の製造方法。
【請求項3】
前記米麹は、黒麹菌を用いて製造されたものである請求項1に記載の黒酢の製造方法。
【請求項4】
前記米麹、蒸し米の製造に用いる米は、玄米、又は分つき玄米である請求項1、2又は3に記載の黒酢の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は仕込み水に海洋深層水を用いた黒酢の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
黒酢は鹿児島県などの南九州一帯で伝統的に製造されており、玄米乃至分つき玄米を主たる澱粉質原料として用いて製造されている。農林水産省の食酢品質表示基準によれば、このような伝統的な黒酢は、米黒酢という名称で呼ばれ、定義されている。
【0003】
黒酢の伝統的な製造方法としては、ツボに米麹、蒸煮米、水を仕込んでからさらに水面に振り麹をして麹で薄く覆うことにより、麹が蓋となる。該ツボを日当たりのよい屋外に並べ、ツボ内で糖化、アルコール発酵、酢酸発酵が並行して進む。さらに酢酸発酵が進むことにより水面を覆っていた麹が沈む。約3カ月の発酵期間と3カ月以上の熟成期間、好ましくは6カ月以上の熟成期間を経て製品となる。このように一つのツボ内で、糖化、発酵、熟成を行うことにより、濃い褐色の、旨味、コク、香りが深まった黒酢が出来上がる。
【0004】
熟成された黒酢には、品質の向上につながるアミノ酸が豊富に含まれるようになり、一般的な黒酢には、酸度4.2%で、240mg/ml前後の必須アミノ酸の合計量が含まれている。
【非特許文献1】http://www.kenko-club.biz/kurozu/koutei.htm
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
仕込み水に海洋深層水を用いることにより付加価値の高い黒酢を製造することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した課題を解決するための本発明の黒酢の製造方法は、米麹、蒸し米、仕込み水を用いて黒酢を製造する方法であって、該仕込み水として海洋深層水を用いることを特徴とする。
【0007】
本発明の黒酢の製造方法に用いる米麹製造用の麹菌として、黄麹菌又は黒麹菌が使用できる。
【発明の効果】
【0008】
海洋深層水を仕込み水として使用した本発明の黒酢は、仕込み水として通常の水を使用した従来の伝統的な製造法による黒酢に比べて、必須アミノ酸含有量が高いことから、海洋深層水は麹を活性化させ、発酵度合いを早め、酵母の働きを促進させ、米の分解を速める。本発明の黒酢は、仕込み水として地下水等の一般的な水を使用した従来の伝統的な製造法による黒酢に比べて米の分解速度が速いことから熟成が促進され、まろやかな香味を持つ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
1)蒸し米製造工程
玄米、又は分つき玄米を洗浄し、水に浸漬したのち水切りしたものを蒸して蒸し米を得る。
【0010】
2)米麹製造工程
上記1)と同様にして製造した蒸し米(玄米、又は分つき玄米)に、原料に対して約2%程度の水を加水し、さらに蒸した後、黄麹菌又は黒麹菌を接種して全体を混ぜ込み、約36℃まで下げる。麹棚に移し、培養を100〜150時間程度行う。この間、数回の切り返しを行って米麹とする。
【0011】
3)振り麹製造工程
玄米、又は分つき玄米を蒸して、約60℃まで放冷し、加水する。加水は蒸し上がったときの米の水分が37〜38%になるように調節する。次いで、2回目の蒸気を通し、放冷した後、黄麹菌又は黒麹菌を接種して製麹を行う。その間数回の切り返しを行い、その後自然乾燥して振り麹を得る。
【0012】
4)仕込み工程
前記工程1)で得た蒸し米と、前記工程2)で得た米麹と、海洋深層水をツボに入れ、前記工程3)で得られた振り麹を表面を覆うように撒く。さらに発酵補助として酵母菌を入れ、アルコール発酵を確認後に、酢酸菌を投入する。なお、酵母菌や酢酸菌を投入せずにツボ内に生息する菌により自然発酵させてもよい。
【0013】
5)発酵、熟成工程
約3カ月の発酵期間と3カ月以上の熟成期間を経て、好ましくは6カ月以上の熟成期間を経て熟成を終える。発酵醪をろ過することにより、約6%程度の原酢が得られるが、これを水で希釈して酸度を4.2%に調整して黒酢とする。
【0014】
海洋深層水を仕込み水として使用した本発明の黒酢は、従来の伝統的な製造法による黒酢に比べて、熟成が速く進む結果、必須アミノ酸合計量が増大し、まろやかな香味を持つ黒酢となる。
【0015】
黒麹仕込みによる黒酢の製造過程において仕込み時にクエン酸が製造されるが、カメ熟成時の5カ月間においてカメ内の温度が上昇することで殆どのクエン酸が消失する。
【0016】
本発明の黒酢は、農水省の食酢品質標準基準において、「米黒酢」に分類されており、玄米又は分つき玄米の使用量が、酢1Lにつき180g以上のものである。原料としてさらに、小麦もしくは大麦を加えることができる。
【実施例】
【0017】
[実施例1]
蒸し米製造工程
(1)七分つき玄米30kgをドラムに入れ、洗浄し、一晩水に浸漬した。次いで、ドラムを回転させ、1時間水切りを行った。次いで、ドラム下部から導入した蒸気が米の上部に噴き出して(蒸気の足が形成して)から50分間蒸しの1回蒸しを行って、蒸し上がり水分35.2%の七分つき玄米の蒸し米を得た。
【0018】
(2)玄米30kgを46時間浸漬し、発芽玄米を製造した。上記(1)と同様にして50分間蒸しの1回蒸しを行って、蒸し上がり水分32.1%の発芽玄米の蒸し米を得た。
【0019】
米麹製造工程
七分つき玄米30kgを用いて、上記(1)の蒸し米の製造工程と同様にして、蒸し米を得た。65℃までドラムを回転させながら通風冷却させ、原料に対して2%の水(600g)を加水し、ドラムを回転させながら全体になじませた。次いで、1回目の蒸しと同様にして2回目の蒸しを1時間行った。次いで、米に黄麹菌をつけ、ドラムを回転させ、全体に混ぜ込み、36℃まで温度を下げた。混ぜたものを麹棚に移し、128時間培養した。その間、計4回の切り返しを行うことにより、米麹を得た。
【0020】
振り麹製造工程
七分つき玄米2.5kgを一晩水に浸漬した。1/3量を蒸し器に入れ、蒸気を40分間通した。全体的に白くなった時点でさらに残りの1/3量ずつ入れ、蒸気を通した。次いで、60℃まで放冷し、加水した。加水は蒸し上がったときの米の水分が37〜38%になるように調節した。次いで、2回目の蒸気を40分間通した。次いで、放冷した後、米に黄麹菌をつけ、35℃で5日間培養した(製麹)。その間、計8回の切り返しを行った。次いで、1週間自然乾燥した。
【0021】
仕込み工程
前記蒸し米製造工程の(1)で得られた蒸し米6kgと、前記米麹製造工程で得られた米麹3.3kgと海洋深層水32リットルをツボに投入し、撹拌して内容物をよく混合した。次いで、酵母菌10ccを注入した。前記振り麹製造工程で得られた振り麹400gを仕込み液面が塞がるまで振った。次いで、上面を紙で覆い、さらにプラスチック製の蓋を被せることにより仕込みを完了した。
仕込みの約4日後、アルコール発酵を確認後に、酢酸菌を投入した。
【0022】
仕込みから半年後の発酵醪をろ過して、酸度6.8(滴定法)の酢酸溶液を得た。得られた酢酸溶液を水で希釈して酸度を4.2%に調整して黒酢とした。得られた黒酢についてアミノ酸測定を行い、その結果を表1に示す。
【0023】
比較のために前記仕込み工程において、海洋深層水の代わりに、地下水を使用した以外は、前記製造と同様にして、従来の伝統的な製造法による黒酢を得た。得られた黒酢についてアミノ酸測定を行い、その結果を表1に示す。
【0024】
【表1】


【0025】
表1によれば、海洋深層水を仕込み水として使用した本発明の黒酢は、従来の伝統的な製造法による黒酢に比べて、必須アミノ酸合計量が増大し、発酵・熟成が促進されていることが分かる。さらに6カ月以上熟成させれば、必須アミノ酸合計量が増大することが予測される。
【0026】
海洋深層水を使用した本実施例の黒酢と、比較のための地下水を使用した黒酢との官能評価を旨味、コク、香りについて、熟練されたパネラー18名によりパネルを構成して、好ましい方を選択する二者択一法により行った。その結果を下記の表2に示す。
【0027】
【表2】


【0028】
表2によれば、海洋深層水を仕込み水として使用した本発明の黒酢は、従来の伝統的な製造法による黒酢に比べて、旨味、コク、香り共に有意な差異があることが分かる。
【0029】
[実施例2]
上記実施例1の黒酢の製造方法において、米麹製造工程及び振り麹製造工程に用いる黄麹菌に代えて、黒麹菌を用い、発酵期間を10カ月とした以外は前記実施例1と同様にして酢酸発酵液を得た。得られた酢酸発酵液は、酸度7.6(滴定法)、全窒素0.24%(ケルダール法)、ホルモール窒素132mg/100ml(滴定法)、直接還元糖0.12%(フェーリング・レーマン・シュール法)、着色度0.267(波長420nmの光電分光光度系による吸光度)であった。
得られた酢酸発酵液を水で希釈して酸度を4.2%に調整して黒酢とした。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の黒酢の製造方法は、熟成が促進される黒酢の製造方法として有用であり、該方法により得られる黒酢は、熟成の進んだまろやかな香味を持つ黒酢として有用である。
【出願人】 【識別番号】502360994
【氏名又は名称】鹿児島くみあい食品株式会社
【出願日】 平成18年10月19日(2006.10.19)
【代理人】 【識別番号】100099139
【弁理士】
【氏名又は名称】光来出 良彦


【公開番号】 特開2008−99613(P2008−99613A)
【公開日】 平成20年5月1日(2008.5.1)
【出願番号】 特願2006−285405(P2006−285405)