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アントシアニン色素を活かした有色醸造酒の製造方法 - 特開2008−289391 | j-tokkyo
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【発明の名称】 アントシアニン色素を活かした有色醸造酒の製造方法
【発明者】 【氏名】永島 俊夫

【氏名】塚本 篤

【要約】 【課題】アントシアニン色素を含有する有色馬鈴薯を原料として用いる有色醸造酒の製造において、有色馬鈴薯特有のアントシアニン色素を活かした有色醸造酒の製造方法を提供する。

【解決手段】アントシアニン色素を含有する有色馬鈴薯を原料として用い、糖化液を調製する糖化工程及び該糖化液に酵母を添加した発酵液を発酵させる発酵工程を有する有色醸造酒の製造方法であって、前記糖化液又は前記発酵液にルチンを添加する工程をさらに有する、有色醸造酒の製造方法により解決する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アントシアニン色素を含有する有色馬鈴薯を原料として用い、糖化液を調製する糖化工程及び該糖化液に酵母を添加した発酵液を発酵させる発酵工程を有する有色醸造酒の製造方法であって、
前記糖化液又は前記発酵液にルチンを添加する工程をさらに有する、有色醸造酒の製造方法。
【請求項2】
加熱処理した前記有色馬鈴薯を、前記アントシアニン色素を含む色素抽出液とデンプンを含む残渣とに分離する工程と、
前記残渣を麦芽及び水に添加して糖化することにより糖化液を調製する糖化工程と、
前記糖化液を発酵させる発酵工程と、
前記ルチンを前記色素抽出液に添加する工程と、
前記ルチンを含む前記色素抽出液を前記発酵工程中に添加する工程と、
を有する、請求項1に記載の有色醸造酒の製造方法。
【請求項3】
前記発酵工程は、主としてエタノールの生産を行う一次発酵工程と、主として該一次発酵工程の後の発酵液の熟成を行う二次発酵工程とからなる、請求項1又は2に記載の有色醸造酒の製造方法。
【請求項4】
前記ルチンを前記色素抽出液に添加した後、前記色素抽出液の殺菌を行う工程をさらに有する、請求項2又は3に記載の有色醸造酒の製造方法。
【請求項5】
前記ルチンを含む前記色素抽出液は、前記一次発酵工程中に添加される、請求項3又は4に記載の有色醸造酒の製造方法。
【請求項6】
前記ルチンを含む前記色素抽出液は、前記二次発酵工程中に添加される、請求項3〜5のいずれか1項に記載の有色醸造酒の製造方法。
【請求項7】
前記ルチンは、有色醸造酒の全量に対して0.05〜1.5重量%添加される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の有色醸造酒の製造方法。
【請求項8】
さらにフィチン酸を添加する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の有色醸造酒の製造方法。
【請求項9】
前記フィチン酸は、有色醸造酒の全量に対して0.05〜1.0重量%添加される、請求項8に記載の有色醸造酒の製造方法。
【請求項10】
前記色素抽出液をpH3〜5に調整する工程をさらに有する、請求項2〜9のいずれか1項に記載の有色醸造酒の製造方法。
【請求項11】
前記発酵工程の後に、発酵終了後の発酵液のpHを調整して該発酵液の色調を変化させる工程をさらに有する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の有色醸造酒の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、有色醸造酒の製造方法に関し、詳細には、アントシアニン色素を含有する有色馬鈴薯を原料として用いる有色醸造酒の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビールの定義は、日本の酒税法によれば、(1)「麦芽、ホップ、水を原料として発酵させたもの(麦芽100%ビール)」、(2)「麦芽、ホップ、水及び麦その他の政令で定める物品を原料として発酵させたもの。ただし、その原料中当該政令で定める物品の重量の合計が、麦芽の重量の10分の5を超えないものに限る」と規定されている。ここで、「麦その他の政令で定める物品」とは、麦、米、とうもろこし、高粱、馬鈴薯、澱粉、糖類又はカラメルである。そして、上記(1)又は(2)の条件を満たすもののみがビールであり、それ以外は発泡酒に分類される。
【0003】
従って、ビールの副原料や発泡酒の原料に種々のものを用いて発泡酒の味や色などを変えることが可能になる。例えば、原料に各地の農産物を用いることでビールや発泡酒の個性や付加価値を付与したり、地域の特色を出すことができるようになる。その結果、地域産業の活性化にもつながる可能性がある。
【0004】
1990年、有色馬鈴薯に属する新規馬鈴薯が開発され、2000年に品種登録された。そして、その起源地と皮肉部分の色に因み、紫皮肉のものは「インカパープル」、同じく赤皮肉のものは「インカレッド」と命名された。
【0005】
これら有色馬鈴薯は、デンプン価が20%前後で、通常の男爵薯より疫病にかかりにくく、アントシアニン色素のペタニンを生イモ1gあたり1.79mg含有しているという特徴を有している。そして、有色馬鈴薯由来のアントシアニンは、高い抗酸化性及び活性酸素消去能を示すと共に、ブルーベリー由来のアントシアニンには認められない抗インフルエンザ活性、アポトーシス誘導効果を有している。
【0006】
食味は普通の男爵薯とほぼ同様であるが、アントシアニン色素、カロテノイド色素を含む有色馬鈴薯は天然の色調を有し、着色料に頼ることのない色鮮やかな食品を作ることができる可能性を秘めており、健康面への効果も期待できる。
【0007】
そのため、このような有色馬鈴薯を用い、種々の食品に応用する試みがなされている。例えば、インカレッド及びインカパープルを用いて、菓子類、パン類、スープ類、揚げ物類、麺類、サラダ類、飲料類、アイスクリーム類を製造することが提案されており、特に、飲料類としては、アルコール発酵飲料にも使用することが提案されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2003−159025号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
有色馬鈴薯をアルコール発酵飲料の原料に利用する場合は、有色馬鈴薯のデンプンを酵素等により糖化して糖化液とし、そこに酵母を添加すれば理論的にはアルコール発酵飲料を製造することができる。
【0009】
しかしながら、有色馬鈴薯を糖化原料として添加しただけでは、糖化工程及び発酵工程において、加熱やアルコール等の影響により、有色馬鈴薯に特有のアントシアニン色素が退色し、有色馬鈴薯を原料に用いるという特徴を活かせないという問題があった。
【0010】
そこで、本発明は、アントシアニン色素を含有する有色馬鈴薯を原料として用いる有色醸造酒の製造において、有色馬鈴薯特有のアントシアニン色素を活かした有色醸造酒の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは有色馬鈴薯に含まれるアントシアニン色素を損なわない有色醸造酒の製造方法について種々の検討を行った結果、アントシアニン色素は特定の色素保持剤を添加することにより加熱やアルコール等の影響を低減させることができるとの知見を得た。本発明はかかる知見に基づきなされたものであり、(1)アントシアニン色素を含有する有色馬鈴薯を原料として用い、糖化液を調製する糖化工程及び該糖化液に酵母を添加した発酵液を発酵させる発酵工程を有する有色醸造酒の製造方法であって、前記糖化液又は前記発酵液にルチンを添加する工程をさらに有する、有色醸造酒の製造方法を提供するものである。
【0012】
上記発明の好ましい態様は次の通りである。(2)アントシアニン色素を含有する有色馬鈴薯を原料として用いる有色醸造酒の製造方法であって、加熱処理した前記有色馬鈴薯を、前記アントシアニン色素を含む色素抽出液とデンプンを含む残渣とに分離する工程と、前記残渣を麦芽及び水に添加して糖化することにより糖化液を調製する糖化工程と、前記糖化液を発酵させる発酵工程と、前記ルチンを前記色素抽出液に添加する工程と、前記ルチンを含む前記色素抽出液を前記発酵工程中に添加する工程と、を有する、前記(1)に記載の有色醸造酒の製造方法;
(3)前記発酵工程は、主としてエタノールの生産を行う一次発酵工程と、主として該一次発酵工程の後の発酵液の熟成を行う二次発酵工程とからなる、前記(1)又は(2)に記載の有色醸造酒の製造方法;
(4)前記ルチンを前記色素抽出液に添加した後、前記色素抽出液の殺菌を行う工程をさらに有する、前記(2)又は(3)に記載の有色醸造酒の製造方法;
(5)前記ルチンを含む前記色素抽出液は、前記一次発酵工程中に添加される、前記(3)又は(4)に記載の有色醸造酒の製造方法;
(6)前記ルチンを含む前記色素抽出液は、前記二次発酵工程中に添加される、前記(3)〜(5)のいずれか1に記載の有色醸造酒の製造方法;
(7)前記ルチンは、有色醸造酒の全量に対して0.05〜1.5重量%添加される、前記(1)〜(6)のいずれか1に記載の有色醸造酒の製造方法;
(8)さらにフィチン酸を添加する、前記(1)〜(7)のいずれか1に記載の有色醸造酒の製造方法;
(9)前記フィチン酸は、有色醸造酒の全量に対して0.05〜1.0重量%添加される、前記(8)に記載の有色醸造酒の製造方法;
(10)前記色素抽出液をpH3〜5に調整する工程をさらに有する、前記(2)〜(9)のいずれか1に記載の有色醸造酒の製造方法;
(11)前記発酵工程の後に、発酵終了後の発酵液のpHを調整して該発酵液の色調を変化させる工程をさらに有する、前記(1)〜(10)のいずれか1に記載の有色醸造酒の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の有色醸造酒の製造方法によれば、加熱処理やアルコール発酵で退色しやすいアントシアニン色素が、色素保持作用を有するルチンを添加することでその退色が低減され、有色馬鈴薯特有のアントシアニン色素を活かした有色醸造酒を製造することができる。さらに、本発明の製造方法で得られた有色醸造酒は、体内の脂質代謝を改善する効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明の有色醸造酒の製造方法の実施形態について、更に具体的に説明する。既述の通り、本発明は、アントシアニン色素を含有する有色馬鈴薯を原料として用い、糖化液を調製する糖化工程及び該糖化液に酵母を添加した発酵液を発酵させる発酵工程を有する有色醸造酒の製造方法であって、前記糖化液又は前記発酵液にルチンを添加する工程をさらに有する。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係る有色醸造酒の製造方法の概要を説明するための図である。以下、本実施形態について図1を参照しつつ説明する。
【0016】
(分離工程)
アントシアニン色素を含有する有色馬鈴薯としては、インカパープル、インカレッド、シャドークイーン、キタムラサキ等を挙げることができる。
【0017】
有色馬鈴薯10βは、デンプンをα化すると共に後述する色素抽出液の抽出を容易にするため、加熱処理が施される(S1)。加熱処理は、煮る(ボイル)、蒸す、焼く等、有色馬鈴薯10βに含まれる生デンプンを糊化させてαデンプンにすることできれば如何なる方法も用いることができるが、色素抽出液を回収することを考慮すれば、ボイルにより加熱処理することが好ましい。加熱処理された有色馬鈴薯10αは摩砕され、所定温度まで冷却される。
【0018】
次に、加熱処理された有色馬鈴薯10αは色素抽出液14と残渣16とに分離される(S2)。色素抽出液14と残渣16に分離する手段としては、例えば、摩砕された有色馬鈴薯10αに水12を添加し、圧搾装置(図示せず)を用いて圧搾することにより、有色馬鈴薯に含まれるアントシアニン色素を水と共に搾取する方法がある。これにより、アントシアニン色素を含有する色素抽出液14と、デンプン質を含む残渣16とに分離される。なお、水12の添加量は、糖化液の希釈を最小限とするため、有色馬鈴薯10αの重量を基準として、1〜3倍量であることが好ましい。
【0019】
得られた色素抽出液14は、アントシアニン色素の安定化を図るため、色素保持剤30が添加される。色素保持剤30を添加することにより、アントシアニン色素の加熱による退色や発酵工程中の径時的な退色を抑制することができる。
【0020】
色素保持剤30としては、ルチン、フィチン酸等を挙げることができる。ルチン単独でも色素の保持効果を得ることができるが、フィチン酸を併用することで、より色素保持効果を高めることができる。
【0021】
ルチンの添加量は、色素保持効果と醸造酒の風味とのバランスを考慮すれば、有色醸造酒の全量に対して0.05〜1.5重量%であることが好ましく、0.1〜1.0重量%であることがより好ましい。フィチン酸の添加量は、上記と同様の観点から、有色醸造酒の全量に対して0.05〜1.0重量%であることが好ましく、0.1〜0.5重量%であることがより好ましい。
【0022】
さらに、色素抽出液14のアントシアニン色素の更なる安定化を図るため、有機酸によりpHを調整することが好ましい。有機酸としては、有色醸造酒の味に与える影響を考慮すれば、リンゴ酸、乳酸、コハク酸を用いることが好ましい。また、pHは上記と同様の観点から、pH3以上5未満に調整することが好ましく、pH4前後に調整することがより好ましい。なお、pHの調整は色素保持剤30が添加される前に行っても、添加された後に行ってもよい。但し、フィチン酸の添加によりpHが変化するため、色素保持剤30としてフィチン酸を用いる場合は、pHの調整は色素保持剤30の添加後に行うことが好ましい。
【0023】
ルチン及び/又はフィチン酸が添加された色素抽出液14は、衛生上の観点及び後述する発酵工程において安定した発酵を行う観点からは、殺菌処理を行うことが好ましい。殺菌処理は、その方法に特に限定はないが、加熱殺菌が最も容易でコストもかからないため好ましい。
【0024】
加熱殺菌は、発酵液への雑菌の混入を防止するために行われるという観点から、例えば、80〜85℃、10〜15分の条件で行うことが好ましい。
【0025】
(糖化工程)
分離された残渣16は、麦芽18及び水20と混合されて、糖化処理がなされる(S3)。糖化は、例えば、50〜70℃、65〜90分の条件で行うことができる。なお、糖化温度と時間は、用いる麦芽の糖化力に応じて適宜設定される。
【0026】
麦芽はビール醸造又は発泡酒醸造に一般的に用いられる麦芽を使用することができ、その種類に特に制限はない。麦芽の配合量は、ビールを製造するか、発泡酒を製造するかによって適宜選択することができる。例えば、酒税法に定義するビールを製造するためには、麦芽重量が67重量%を超えるように調節する。
【0027】
残渣16の添加量は、上記のように、麦芽の添加量に応じて適宜設定されるが、麦芽の風味を残しつつ、有色馬鈴薯の特徴を活かすという観点からは、原料の全量を基準(100重量%)とした場合に、60〜70重量%であることが好ましく、35〜65重量%であることがより好ましく、40〜60重量%であることが更に好ましい。
【0028】
糖化の終了後、残渣16と麦芽18の混合液は濾過処理がなされ、粗糖化液22を得る。なお、必要に応じて60〜70℃の温水(スパージ水)を濾過後の残渣(図示せず)に散布して麦汁(残余の糖化液)を得て、これを前記粗糖化液22に混合することもできる。
【0029】
(煮沸工程)
得られた粗糖化液22はそのまま発酵させることもできるが、ホップを添加し、苦味と香味を付与することもできる。苦味付けのホップを添加する場合は、その添加後、60〜100分間煮沸される(S4)。これにより、糖化液22中にホップの成分が抽出されると共に、糖化液22中の過剰なタンパク質(酵素を含む)を沈殿させて有色醸造酒を清澄なものにすることができる。なお、ホップとしては、有色醸造酒に主に苦味を付与するビターホップと主に香りを付与するアロマホップがあるが、これらは単独でも、2種を混合して用いることもできる。
【0030】
煮沸により、ホップ粕や凝固したタンパク質が副生されるため、これらは濾過等により除去される。これにより、ホップの成分が抽出された糖化液24が得られる。糖化液24は10〜20℃に冷却され、発酵タンクへ送られる。
【0031】
(発酵工程)
次に、糖化液24は、有色馬鈴薯10αから抽出された色素抽出液14と酵母26が添加されてアルコール発酵が行われる(S5)。以後、本工程以降の糖化液24を「発酵液」という。なお、色素保持剤30を含む色素抽出液14の添加は、酵母26が添加される前でも後でもよい。
【0032】
色素抽出液14は、前記分離工程で得られた色素抽出液14の全量を発酵液に添加してよい。発酵液に対する色素抽出液13の割合は、前記発酵液の全量を基準(100重量%)とした場合に、10〜25重量%であることが好ましく、15〜20重量%であることがより好ましい。かかる範囲の添加量であれば、有色醸造酒の味に影響を与えることなくアントシアニン色素の鮮やかな色調を付与することができる。
【0033】
ここで、色素抽出液14を前記発酵液に添加する前に、前記発酵液をpH5以下に調整することが色素抽出液14中のアントシアニン色素を安定化する観点から好ましい。pHの調整は、クエン酸等の有機酸を用いて行うことができる。なお、pHの調整は後述する後処理工程でも行うことができる。
【0034】
酵母は、アルコール発酵を行うことができる酵母であれば特に制限はないが、ビール醸造用において一般的に用いられる上面発酵酵母又は下面発酵酵母を用いることができる。上面発酵酵母としては、例えば、サッカロマイセス セルビシエ(Saccharomyces cerevisiae)等を挙げることができ、下面発酵酵母としては、例えば、サッカロマイセス カールスバージェンシス(Saccharomyces carlsbergensis)等を挙げることができる。
【0035】
発酵(S5)は、主としてエタノールの生産を行う一次発酵工程(S5a)と、主として該一次発酵工程の後の発酵液の熟成を行う二次発酵工程(S5b)とからなることが好ましい。一次発酵工程の後、二次発酵工程を経ることにより、有色醸造酒の味や香りをより向上させることができる。
【0036】
一次発酵(S5a)では、例えば、5〜10℃で8〜12日間発酵が行われる。これにより発酵液中の糖分を酵母が資化してエタノールの生産を行うほか、炭酸ガスの生成や香気成分の生成等が行われる。
【0037】
二次発酵(S5b)では、例えば、0〜2℃で20〜40日間発酵が行われる。これにより、一次発酵(S5a)の後の発酵液の熟成が行われるほか、残存エキスの発酵、一次発酵により発生した炭酸ガスの発酵液中への溶存、発酵液の若臭物質の排出、残存酵母及び混濁物質等の沈殿物の沈下等が行われる。
【0038】
色素抽出液14の発酵液への添加は、一次発酵(S5a)の発酵液に添加しても、二次発酵(S5b)の発酵液に添加してもよい。なお、有色醸造酒の風味を向上させる観点及び糖化液24の加熱後の余熱を利用して色素抽出液14の殺菌を行う観点からは、図1におけるAで示すように、一次発酵(S5a)の発酵液に添加することが好ましい。また、一次発酵工程における酵母やアルコールの影響を避け、アントシアニン色素の色調がより活かされた有色醸造酒を製造する観点からは、図1におけるBで示すように、二次発酵(S5b)の発酵液に添加することが好ましい。
【0039】
このようにして得られた有色醸造酒28は、アントシアニン色素の色調が鮮やかに表れたビール又は発泡酒となる。なお、アルコール度は4.5〜6%である。
【0040】
(後処理工程)
上記のようにして得られた有色醸造酒28はそのまま飲用に供することができるが、発酵終了後に、有色醸造酒28のpHを調整して有色醸造酒28の色調を変化させることもできる。例えば、発酵工程でpH処理を行わなかった場合は、得られた有色醸造酒28のpHをアルカリ側に調整すると、灰赤色となり、酸性側に調整すると、赤紫色となる。
【0041】
なお、本実施形態では、有色馬鈴薯を色素抽出液14と残渣16とに分離し、色素抽出液14に色素保持剤30を添加した場合について説明したが、これに限定されず、他の方法でもアントシアニン色素を有する有色醸造酒を製造することができる。
【0042】
例えば、図2に示すように、有色馬鈴薯10βを加熱処理した後、デンプンがα化された有色馬鈴薯10αと、色素保持剤30とを添加して麦芽18及び水20に添加し、糖化を行う(S3)。粗糖化液22を得た後、煮沸し(S4)、糖化液24を得る。
【0043】
色素保持剤30を添加することにより、加熱処理後の糖化液においても、アントシアニン色素が保持された糖化液24を得ることができる。なお、色素保持剤30としては、上述の実施形態と同様、ルチン単独でも色素の保持効果を得ることができるが、フィチン酸を併用することで、より色素保持効果を高めることができる。ルチン及びフィチン酸の添加量は、上述した実施形態と同様である。
【0044】
その後、発酵(S5)を行うことで、アントシアニン色素を有する有色醸造酒28を得ることができる。本実施例の有色醸造酒28は、早期の段階で色素保持剤30を添加するため、得られる有色醸造酒28の風味は色素保持剤30の添加の影響がなく良好なものとなる。
【実施例1】
【0045】
以下の要領で、原料の配合割合が、有色馬鈴薯10kg、麦芽10kg、水80l(内20lは色素抽出液に用いた)である発泡酒を製造した。有色馬鈴薯としては、北海道農業研究センターにより平成15年及び平成16年度に収穫された「シャドークイーン」(以下、単に「有色馬鈴薯」と称する)を用いた。
【0046】
(1)色素抽出液の調製
二重釜にて有色馬鈴薯10kgを40分間茹でることにより生デンプンを糊化(α化)した後、茹でた有色馬鈴薯を摩砕して冷却した。そして、有色馬鈴薯の2倍量の水20lを添加し撹拌した。これを袋状にしたさらし布に入れ、圧搾機にて圧搾することにより、濾液と残渣に分離した。さらに、色素保持剤として、αGルチン(東洋精糖社製)0.1重量%及びフィチン酸(築野食品工業社製)0.2重量%を色素抽出液に添加し、クエン酸を用いてpH4に調整した。その後、濾液を80℃、10分間加熱殺菌し、得られた液体を色素抽出液として一時的に冷凍保存した。残渣は後の糖化に用いた。
【0047】
(2)糖化
煮沸釜に水60klと麦芽10kgを加えて52℃で15分タンパク分解を行った後、引き続き62℃で40分糖化し、上記(1)で得られた残渣を添加し、70℃で30分糖化を行うことにより、有色馬鈴薯を含有する麦汁を得た。
【0048】
(3)濾過
糖化終了後、上記(2)で得られた麦汁を仕込み槽に移し濾過することにより、1番麦汁を得た。1番麦汁を得た後、この1番麦汁の残渣にスパージ水(60℃)を撒水して2番麦汁を得た。そして、1番麦汁と2番麦汁とを混合することにより、粗糖化液を得た。
【0049】
(4)煮沸
上記(3)で得られた粗糖化液を煮沸釜で加熱し、液温が約90℃になったときにビターホップであるナゲット40gを加え、90分間煮沸した。更に、煮沸終了間際にアロマホップであるハラタウアロマ4gを加え、煮沸を終了した。
【0050】
(5)沈殿除去
上記(4)の煮沸処理で副生したタンパク質の凝固物やホップの粕を除去するために、ワールプールに粗糖化液を移した。そして、タンパク質の凝固物やホップの粕を除去することにより糖化液を清澄化し、発酵用の糖化液を得た。そして、この糖化液を、クエン酸により、pH4に調整した。
【0051】
(6)一次発酵
麦汁10mlに、酵母としてサッカロマイセス セルビシエ(Saccharomyces cerevisiae)LAGER 2007 Pilsen(Logsdon's Wyeast Laboratories社製)を接種し、30℃で24時間培養した。次いで、酵母の培養液を麦汁5mlに対し1mlの割合で添加し、30℃で24時間培養することにより、酒母を得た。
【0052】
発酵用の糖化液を冷却した後、発酵タンクに移し、上記のように調製した酒母を糖化液に添加し、5〜10℃にて10日間、一次発酵を行った。
【0053】
(7)二次発酵
一次発酵が終了した発酵液を貯酒タンクに移し、上記(1)で得た色素抽出液20Lを添加した。そして、最終的に発酵液の温度が1℃になるように温度を調整し、30日間、二次発酵を行った。二次発酵の終了後、瓶詰めを行い、所望の発泡酒を得た。
【実施例2】
【0054】
色素抽出液の加熱殺菌を行わなかったこと及び色素抽出液を一次発酵の発酵液に添加して発酵させたこと以外は、実施例1と同様の要領で発泡酒を製造した。
【実施例3】
【0055】
ルチンのみを色素抽出液に添加し、フィチン酸は色素抽出液に添加しなかったこと以外は、実施例1と同様の要領で発泡酒を製造した。
【実施例4】
【0056】
フィチン酸の添加量を0.5重量%としたこと以外は、実施例1と同様の要領で発泡酒を製造した。
【実施例5】
【0057】
以下の要領で、原料の配合割合が、有色馬鈴薯10kg、麦芽10kg、水80lである発泡酒を製造した。有色馬鈴薯としては、北海道農業研究センターにより平成15年及び平成16年度に収穫された「シャドークイーン」(以下、単に「有色馬鈴薯」と称する)を用いた。
【0058】
(1)有色馬鈴薯の処理
二重釜にて有色馬鈴薯10kgを40分間茹でることにより生デンプンを糊化(α化)した後、茹でた有色馬鈴薯を摩砕して冷却した。
【0059】
(2)糖化
煮沸釜に水60klと麦芽10kgを加えて52℃で15分タンパク分解を行った後、引き続き62℃で40分糖化し、上記(1)で得られた有色馬鈴薯と、色素保持剤としてαGルチン(東洋精糖社製)0.1重量%を添加し、70℃で30分糖化を行うことにより、有色馬鈴薯を含有する麦汁を得た。
【0060】
(3)濾過
糖化終了後、上記(2)で得られた麦汁を仕込み槽に移し濾過することにより、1番麦汁を得た。1番麦汁を得た後、この1番麦汁の残渣にスパージ水(60℃)を撒水して2番麦汁を得た。そして、1番麦汁と2番麦汁とを混合することにより、粗糖化液を得た。
【0061】
(4)煮沸
上記(3)で得られた粗糖化液を煮沸釜で加熱し、液温が約90℃になったときにビターホップであるナゲット40gを加え、90分間煮沸した。更に、煮沸終了間際にアロマホップであるハラタウアロマ4gを加え、煮沸を終了した。
【0062】
(5)沈殿除去
上記(4)の煮沸処理で副生したタンパク質の凝固物やホップの粕を除去するために、ワールプールに粗糖化液を移した。そして、タンパク質の凝固物やホップの粕を除去することにより糖化液を清澄化し、発酵用の糖化液を得た。そして、この糖化液を、リンゴ酸を用いて、pH4に調整した。
【0063】
(6)一次発酵
麦汁10mlに、酵母としてサッカロマイセス セルビシエ(Saccharomyces cerevisiae)LAGER 2007 Pilsen(Logsdon's Wyeast
Laboratories社製)を接種し、30℃で24時間培養した。次いで、酵母の培養液を麦汁5mlに対し1mlの割合で添加し、30℃で24時間培養することにより、酒母を得た。
【0064】
発酵用の糖化液を冷却した後、発酵タンクに移し、上記のように調製した酒母を糖化液に添加し、5〜10℃にて10日間、一次発酵を行った。
【0065】
(7)二次発酵
一次発酵が終了した発酵液を貯酒タンクに移し、上記(1)で得た色素抽出液20Lを添加した。そして、最終的に発酵液の温度が1℃になるように温度を調整し、30日間、二次発酵を行った。二次発酵の終了後、瓶詰めを行い、所望の発泡酒を得た。
【実施例6】
【0066】
色素保持剤として、ルチン0.1重量及びフィチン酸0.2重量%を添加した以外は、実施例5と同様の要領で発泡酒を製造した。
【0067】
[比較例1]
ルチン及びフィチン酸を色素抽出液に添加しなかったこと以外は、実施例1と同様の要領で発泡酒を製造した。
【0068】
[比較例2]
ルチン及びフィチン酸を色素抽出液に添加しなかったこと以外は、実施例2と同様の要領で発泡酒を製造した。
【0069】
表1に、実施例及び比較例についてのルチン及びフィチン酸の添加量、色素抽出液の殺菌処理の有無、色素抽出液の添加のタイミングを示した。なお、実施例5及び6は色素抽出液を調製していないため加熱殺菌は行っていないが、糖化工程後に煮沸されている点ではいずれもアントシアニンは加熱処理を経ている。
【0070】
【表1】


【0071】
[試験例1]発泡酒の色調の測定
実施例1、2及び比較例1で得られた発泡酒を用いて、発泡酒の色調の測定を行った。発泡酒の色調の測定は、分光側色計(ミノルタ社製CM−3500d)を用い、JIS
Z 8729に規定されているL表色系で表した。そして、下記の評価基準を用いて各発泡酒の色調を評価した。評価結果を測定値と併せて表2に示す。なお、今回、アントシアニン色素の赤紫色がより強く表れているものを良好な発泡酒と評価したため、a値が高く、b値が低いものを評価の高い発泡酒とした。
【0072】
A:aが6以上 bが2未満
B:aが4以上6未満 bが2以上13未満
C:aが4未満 bが13以上
【0073】
【表2】


【0074】
[試験例2]脂質代謝改善効果の検討
実施例3で得られた有色醸造酒をサンプルとして、脂質代謝改善効果への影響を検討した。Male F344/DuCrj (7 wk old) ラット(n=5)を1週間予備飼育し、サンプルを1日1回の割合で経口投与し、5週間にわたり飼育した。その間、0週目、1週目、2週目、4週目、5週目に採血を行い、血中の中性脂質を測定した。
【0075】
なお、サンプルの投与量は、0週目から1週目までは1.0ml/日、1週目から2週目および2週目から3週目までは1.5ml/日、3週目から4週目および4週目から5週目までは2.0ml/日とした。
【0076】
給餌は、カゼイン200g/kg、スクロース100g/kg、ミネナール35g/kg、ビタミン10g/kg、α-コーンスターチ549.486g/kg、L-システイン3g/kg、セルロース粉末50g/kg、大豆油50g/kg、重酒石酸塩コリン2.5g/kg、t-ブチルヒドロキシノン0.014g/kgからなる実験食餌を、実験期間中自由摂取させた。
【0077】
比較例として、有色馬鈴薯を原料として用いていない十勝ビール社製ラガービール(商品名「十勝ラガー」)を用いた(表3において「比較例3」と表記する)。さらに、参考例として、比較例1で得られた有色醸造酒をサンプルとして用いた(表3において「参考例」と表記する)。結果を表3に示す。
【0078】
【表3】


【0079】
以上の結果、実施例3の有色醸造酒は、有色馬鈴薯を原料として用いていないラガービールと比較して、中性脂肪の上昇が有意に抑制されることが判明した。また、同様の要領で血清総コレステロールについても検討を行ったところ、実施例3の有色醸造酒を摂取したラットは、比較例3の有色醸造酒を摂取したラットよりも血清総コレステロールの上昇が抑制されることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明はアントシアニン色素を含有する有色馬鈴薯を原料として用いる有色醸造酒の製造において、有色馬鈴薯特有のアントシアニン色素を活かした有色醸造酒を製造することができるため、醸造業において有色馬鈴薯の利用の促進を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の実施形態に係る有色醸造酒の製造方法の概要を説明するための図である。
【図2】本発明の他の実施形態に係る有色醸造酒の製造方法の概要を説明するための図である。
【符号の説明】
【0082】
10α及び10β…有色馬鈴薯、12…水、14…色素抽出液、16…残渣、18…麦芽、20…水、22…粗糖化液、24…糖化液、26…酵母、28…有色醸造酒、30…色素保持剤
【出願人】 【識別番号】598096991
【氏名又は名称】学校法人東京農業大学
【識別番号】505434733
【氏名又は名称】十勝ビール株式会社
【出願日】 平成19年5月23日(2007.5.23)
【代理人】 【識別番号】100122574
【弁理士】
【氏名又は名称】吉永 貴大


【公開番号】 特開2008−289391(P2008−289391A)
【公開日】 平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願番号】 特願2007−136527(P2007−136527)