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【発明の名称】 イモ焼酎及びその製造方法
【発明者】 【氏名】郷司 浩平

【氏名】栗山 謙一

【氏名】大槻 達也

【要約】 【課題】イモ焼酎の掛原料及び麹原料としてイモ類のみを用いて、イモ類由来の香味良好な風味を有するイモ焼酎及びその製造方法を提供する。

【解決手段】イモ焼酎の掛原料及び麹原料としてイモ類のみを用い、原料の少なくとも一部に乾熱処理イモ類を用いてなる焼酎であって、イソアミルアルコール含量が650mg/L以上、又は酢酸イソアミル含量が10.2mg/L超、あるいは前者が650mg/L以上であり、かつ後者が7.2mg/L超であるイモ焼酎。また、ファルネソール含量が260μg/L以上であるイモ焼酎。前記いずれの場合でも、麹歩合を5%以上50%未満とするイモ焼酎の製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イモ焼酎の掛原料及び麹原料としてイモ類のみを用い、原料の少なくとも一部に乾熱処理イモ類を用いてなる焼酎であって、イソアミルアルコール含量が650mg/L以上であることを特徴とするイモ焼酎。
【請求項2】
イモ焼酎の掛原料及び麹原料としてイモ類のみを用い、原料の少なくとも一部に乾熱処理イモ類を用いてなる焼酎であって、酢酸イソアミル含量が10.2mg/L超であることを特徴とするイモ焼酎。
【請求項3】
イモ焼酎の掛原料及び麹原料としてイモ類のみを用い、原料の少なくとも一部に乾熱処理イモ類を用いてなる焼酎であって、イソアミルアルコール含量が650mg/L以上であり、かつ、酢酸イソアミル含量が7.2mg/L超であることを特徴とするイモ焼酎。
【請求項4】
イモ焼酎の掛原料及び麹原料としてイモ類のみを用い、原料の少なくとも一部に乾熱処理イモ類を用いてなる焼酎であって、ファルネソール含量が260μg/L以上であることを特徴とするイモ焼酎。
【請求項5】
麹原料が、乾熱処理イモ類である請求項1〜4のいずれか1項に記載のイモ焼酎。
【請求項6】
乾熱処理の温度が、120〜400℃である請求項5に記載のイモ焼酎。
【請求項7】
イモ焼酎の掛原料及び麹原料としてイモ類のみを用い、原料の少なくとも一部に乾熱処理イモ類を用いて、原料を糖化及び醸造することにより得られるイモ焼酎を製造する方法において、麹歩合を5%以上50%未満とすることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のイモ焼酎の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、イモ類のみを原料とし、原料の少なくとも一部に乾熱処理イモ類を用いる、イモ類由来の香味良好な風味を有するイモ焼酎及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イモ類とは、植物の地下茎又は根部の発達したものを総称していうが、これにはサツマイモ(甘藷)、ジャガイモ、キャッサバ、ヤマノイモ、サトイモ、コンニャク、カシュウイモ、チョロギイモ、ハスイモ、ガガイモ等が含まれる。この中でサツマイモを例にとると、サツマイモの用途は、焼いたり、蒸したり、煮て食するほか、ヨウカン、あん、せんべい、アメ、デンプンの原料に使われ、また、酒類、アルコールの原料ともなる。
【0003】
サツマイモを原料とする酒類の製造方法として以下の方法がある。甘藷を洗浄して大形のものは輪切りとなし、小形のものはそのまま150〜200℃の乾熱器若しくはパン焼器中で1〜1.5時間焼き、焼酎の掛原料として使用することが知られている(非特許文献1)。また、洗浄済みの生サツマイモを100〜400℃の熱風とセラミック焼結体より放射される遠赤外線とで90〜120分焙煎処理した後、粉砕機で粉末状のサツマイモとなし、アルコール飲料にすることが知られている(特許文献1)。更に、イモ類を裁断し、裁断物となし、焙炒処理してなる焙炒イモ類、焙炒イモ類麹、及びそれらを用いる酒類の製造方法が知られている(特許文献2)。特許文献2では、焙炒イモ類を掛原料及び/又は麹原料として用いることにより、軽快できれいな酒質とすることができると記載されている。
【0004】
サツマイモを麹原料とする酒類の製造方法として以下の方法がある。生イモを洗浄後ミンチ状に細刻し、次いでこれを100℃の温度下で熱風乾燥させて得た乾燥イモを麹基質とし、30〜50%の含水状態で麹菌を散布し培養してイモ麹を得、これを用いてイモ焼酎を製造することが知られている(特許文献3)。また、イモ類を粉体化し、この粉体を原料とし、所定量の水を添加して、機械式ミキサーにより均一に混合し、アルファ化処理した後、麹菌を培養した粉体麹の製造方法、並びにその粉体麹を用いたイモ焼酎等の飲食品が知られている(特許文献4)。
【0005】
このように、サツマイモを含むイモ類を原料とする酒類の製造方法について、いろいろと検討され、また、原料が全量イモであると謳われている市販のイモ焼酎もいくつか市販されてはいるものの、イモ類のみを原料とするイモ焼酎で、より一層、原料であるイモ類の特徴を感じさせるイモ焼酎の開発が望まれていた。
【0006】
【特許文献1】特公平6−102008号公報
【特許文献2】特開2001−95523公報
【特許文献3】特開2002−330749公報
【特許文献4】特開2005−151813公報
【非特許文献1】甘藷焼酎醸造に関する研究(第3報)、鹿児島農林専門学校学術報告、第15号、第97〜100頁、1949年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記従来技術にかんがみ、イモ焼酎の掛原料及び麹原料としてイモ類のみを用い、原料の少なくとも一部に乾熱処理イモ類を用いて、イモ類由来の香味良好な風味を有するイモ焼酎及びその製造方法を提供することにある。独特なイモ臭があるイモ焼酎において、多様化する嗜好に対応し、万人から支持される全量イモ焼酎を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明を概説すれば、本発明の第1の発明は、イモ焼酎の掛原料及び麹原料としてイモ類のみを用い、原料の少なくとも一部に乾熱処理イモ類を用いてなる焼酎であって、イソアミルアルコール含量が650mg/L以上であるイモ焼酎に関する。本発明の第2の発明は、イモ焼酎の掛原料及び麹原料としてイモ類のみを用い、原料の少なくとも一部に乾熱処理イモ類を用いてなる焼酎であって、酢酸イソアミル含量が10.2mg/L超であるイモ焼酎に関する。本発明の第3の発明は、イモ焼酎の掛原料及び麹原料としてイモ類のみを用い、原料の少なくとも一部に乾熱処理イモ類を用いてなる焼酎であって、イソアミルアルコール含量が650mg/L以上であり、かつ、酢酸イソアミル含量が7.2mg/L超であるイモ焼酎に関する。本発明の第4の発明は、イモ焼酎の掛原料及び麹原料としてイモ類のみを用い、原料の少なくとも一部に乾熱処理イモ類を用いてなる焼酎であって、ファルネソール含量が260μg/L以上であるイモ焼酎に関する。本発明の第5の発明は、麹原料が、乾熱処理イモ類である第1〜第4のいずれかの発明のイモ焼酎に関し、本発明の第6の発明は、乾熱処理の温度が、120〜400℃である第5の発明のイモ焼酎に関する。本発明の第7の発明は、イモ焼酎の掛原料及び麹原料としてイモ類のみを用い、原料の少なくとも一部に乾熱処理イモ類を用いて、原料を糖化及び醸造することにより得られるイモ焼酎を製造する方法において、麹歩合を5%以上50%未満とする第1〜第6のいずれかの発明のイモ焼酎の製造方法に関する。
【0009】
本発明者らは、イモ類のみを原料とし、原料の少なくとも一部に乾熱処理イモ類を用い、これまでのイモ焼酎と比べて、より一層、原料であるイモ類の特徴を感じさせるイモ焼酎を提供すべく、鋭意検討を行った。その結果、麹歩合を工夫し、イソアミルアルコール含量を650mg/L以上とすることによって、また、酢酸イソアミル含量を10.2mg/L超とすることによって、あるいは、イソアミルアルコール含量を650mg/L以上とし、かつ、酢酸イソアミル含量を7.2mg/L超とすることによって、また、ファルネソール含量を260μg/L以上とすることによって、イモ類由来の香味良好な風味を有するイモ焼酎が得られることを見出した。すなわち、イモ焼酎の掛原料及び麹原料としてイモ類のみを用い、原料の少なくとも一部に乾熱処理イモ類を用いるイモ焼酎であって、原料であるイモ類の特徴が際立った酒質のイモ焼酎を得ることができ、本発明を完成させた。
【発明の効果】
【0010】
本発明のイモ焼酎は、原料が100%イモ類であり、自然なイモ類の風味があり、原料であるイモ類の特徴が際立った酒質のイモ焼酎である。更に、イモ焼酎の掛原料及び麹原料としてイモ類のみを用い、原料の少なくとも一部に乾熱処理イモ類を用いて、原料を糖化及び醸造することにより得られるイモ焼酎を製造する方法において、麹歩合を5%以上50%未満とすることにより、目的とする酒質のイモ焼酎を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明でいうイモ類とは、植物の地下茎又は根部の発達したものを総称したイモ類であり、サツマイモ(甘藷)、ジャガイモ、キャッサバ、ヤマノイモ、サトイモ、コンニャク、カシュウイモ、チョロギイモ、ハスイモ、ガガイモ等が挙げられる。また、多くの品種も知られているが、品種にも限定されない。更に、イモ類の皮の剥皮の有無は問わない。生イモ類は、水分含量が多く、長期保存には耐えないので、収穫後速やかに使用することが好ましいが、本発明でいうイモ類とは、凍結保存等をしたものも含む。また、生イモ類は、必要に応じて、処理して水分を減少させたものでもよく、処理加工(浸漬、温水浸漬等)したものであってもよく、特に限定はないが、作業、エネルギー面からは生イモ類が好適である。
【0012】
本発明に用いる掛原料、麹原料としてのイモ類の形態は限定されず、そのままあるいは粉状でもよい。掛原料としては、蒸しサツマイモが特に好ましい。サツマイモの品種に限定はないが、通常イモ焼酎の原料として用いられている黄金千貫、ベニサツマ、ベニアズマ、ベニハヤト、ジョイホワイト、シロユタカ、金時イモ、ムラサキイモ等が挙げられる。麹原料は、前記した掛原料と同様、サツマイモを用いる場合には、サツマイモの品種に限定はない。麹原料としては、イモ類を乾熱処理した乾熱処理イモ類が好ましく、イモ類を焙炒処理した焙炒イモ類が特に好ましい。乾熱処理には、焙炒法等の乾燥熱風による直接加熱法、熱源から隔壁を通して加熱する間接加熱法等がある。直接加熱法の一例としては気流乾燥、噴霧乾燥が、間接加熱法の一例としてはドラム乾燥が挙げられる。なお、本発明の乾熱処理には、通常の蒸気による蒸きょう処理以外で、原料水分が減少する処理も含み、例えば、乾き飽和水蒸気を更に加熱して飽和蒸気温度を超える温度に上昇させた状態の水蒸気である過熱蒸気を用いる過熱蒸気処理によって原料処理を行うこともできる。乾熱処理する条件は、被処理物の種類及び形態や乾熱処理方法により適宜選択され、温度は120〜400℃の範囲から、時間は0.1秒〜数時間の範囲から適宜選択すればよい。焙炒法の乾燥熱風による直接加熱法(以下、焙炒処理と略述する)を用いる場合には、イモ類を、例えばフルイ目1〜10mmを通過するように裁断し、裁断物となし、焙炒処理すればよい。焙炒処理は、イモ類を高温の熱風で短時間加熱処理をする方法、及びこれと同等の効果を有する加熱処理方法をいう。焙炒処理の温度は120〜400℃の範囲から、時間は数秒〜10分の範囲から適宜選択すればよい。焦げ臭を発生しない処理条件を選択すればよい。焙炒イモ類を製麹して焙炒イモ類麹の調製方法は、特開2001−95523公報記載の方法を参考にすればよい。
【0013】
本発明のイモ焼酎は、イモ焼酎の掛原料及び麹原料としてイモ類のみを用いることが特徴である。原料の少なくとも一部に乾熱処理イモ類を用いればよく、掛原料、麹原料として、例えば通常の条件で蒸きょうした蒸しイモ類、焙炒処理した焙炒イモ類を用いることができる。本発明におけるイモ焼酎の製造方法自体は、通常の焼酎の製造方法であれば特に限定はない。焼酎の製造は、原料処理、仕込、発酵(糖化・発酵)、蒸留及び精製工程よりなる。なお、原料処理には、製麹工程、原料液化、液化・糖化工程も含むものとする。通常、焼酎の製造において、一次醪は麹を水と混合して仕込み、酵母を添加して増殖させて得ることができる。次に、得られた一次醪に、イモ類を、例えば蒸きょうし掛原料として添加して二次醪とする。次に得られた二次醪を蒸留することによって高品質のイモ焼酎を得ることができる。蒸留方法には特に限定はなく、例えば、甲類焼酎を得るための連続蒸留法、乙類焼酎を得るための単式蒸留法、また、醪を通常の大気圧下で蒸留する常圧蒸留法、真空ポンプで醪を大気圧より低くして蒸留する減圧蒸留法などがある。イモ類の原料特性が特徴としてよく出るという観点より、常圧蒸留法が好ましいが、きれいな酒質とする場合には減圧蒸留法を用いればよい。
【0014】
本発明のイモ焼酎の製造方法において、醪性状の改良や発酵の促進等のために酵素剤の使用は任意であり、動物、植物、微生物由来の酵素剤を用いればよい。添加量は目的とする製造物の種類、原料の種類、特性等に応じて適宜選択すればよい。例えば、焼酎を製造する場合、一次仕込みにペクチナーゼ、セルラーゼを添加すると、やわらかい醪になり、仕込み初期の発酵が非常に旺盛となり、二次仕込みにグルコアミラーゼを添加すると、二次仕込みの発酵が促進されることになる。仕込みの方法に限定はなく、一段(次)仕込み、二段(次)仕込み、三段(次)仕込み、多段(次)仕込み等が可能であるが、本発明の製造方法の主要部は、麹歩合を5%以上50%未満とすることである。麹歩合が5%未満では、麹の糖化酵素活性が不足することになる。麹歩合が50%以上では、麹臭に原料であるイモ類の特徴がやや隠れてしまうことになり、また、酸が多くなるので、酸臭が感じられることになる。得られるイモ焼酎の香味のバランスの上からは、麹歩合を15%以上33%以下とすることが好ましく、より好ましくは15%以上25%以下である。なお、焼酎における麹歩合は、掛原料質量に対する麹原料質量の百分率をいい、焼酎における一般的な麹歩合は、米焼酎、麦焼酎では、30〜50%、甘藷焼酎では、16〜20%(ただし、米麹、麦麹使用)である。本発明では、麹原料として乾熱処理イモ類を用いる場合は、掛原料質量に対する乾熱処理イモ類質量の百分率を麹歩合と定義する。
【0015】
本発明の第1の発明のイモ焼酎は、イモ焼酎の掛原料及び麹原料としてイモ類のみを用い、原料の少なくとも一部に乾熱処理イモ類を用いてなる焼酎であって、イソアミルアルコール含量が650mg/L以上であることを特徴とする。イソアミルアルコール含量の好適な範囲は670〜730mg/Lであり、上限値は850mg/Lである。イソアミルアルコール含量が高すぎると、原料であるイモ類の特徴が隠れてしまうことになる。
【0016】
本発明の第2の発明のイモ焼酎は、イモ焼酎の掛原料及び麹原料としてイモ類のみを用い、原料の少なくとも一部に乾熱処理イモ類を用いてなる焼酎であって、酢酸イソアミル含量が10.2mg/L超であることを特徴とする。酢酸イソアミル含量の好適な範囲は10.8〜16.5mg/Lであり、上限値は20.0mg/Lである。酢酸イソアミル含量が高すぎると、吟醸香が立ちすぎ、原料であるイモ類の特徴が隠れてしまうことになる。
【0017】
本発明の第3の発明のイモ焼酎は、イモ焼酎の掛原料及び麹原料としてイモ類のみを用い、原料の少なくとも一部に乾熱処理イモ類を用いてなる焼酎であって、イソアミルアルコール含量が650mg/L以上であり、かつ、酢酸イソアミル含量が7.2mg/L超であることを特徴とする。イソアミルアルコール含量の好適な範囲は670〜730mg/Lであり、かつ、酢酸イソアミル含量の好適な範囲は10.8〜16.5mg/Lである。イソアミルアルコール含量の上限値は850mg/Lであり、かつ、酢酸イソアミル含量の上限値は20.0mg/Lである。イソアミルアルコール含量、酢酸イソアミル含量が高すぎると、イモ焼酎の香味のバランスが悪くなる。
【0018】
本発明の第4の発明のイモ焼酎は、イモ焼酎の掛原料及び麹原料としてイモ類のみを用い、原料の少なくとも一部に乾熱処理イモ類を用いてなる焼酎であって、ファルネソール含量が260μg/L以上であることを特徴とする。ファルネソール含量が260μg/L以上であると、香味のバランスがよくなり、香りもしまり、サツマイモの甘い香りが引立つことになる。ファルネソールは、イモ焼酎に多量に含有していても他の香味成分に影響を与えることもなく、原料であるイモ類の特徴が際立った酒質をもたらすので、ファルネソール含量に特に上限はない。ファルネソール含量3,000μg/Lとしたイモ焼酎の香味が良好であることは確認済みである。
なお、本発明でいうファルネソールとは、直鎖セスキテルペンの一種のテルペノイド有機化合物で、バラやレモングラス、シトロネラの精油に含まれそれらの芳香をもたらす成分の一つであり、最も単純なセスキテルペンであるが、多くのより複雑なセスキテルペンの前駆体である。
イモ焼酎の掛原料及び麹原料としてイモ類のみを用いて全量イモ焼酎を製造する際に、原料の少なくとも一部に乾熱処理イモ類を用いる、麹歩合を工夫することによって、自然なイモ類の甘い風味がありながらも、原料であるイモ類の特徴が際立った酒質の全量イモ焼酎を得ることができる。
【0019】
本発明では、中高沸点香気成分のうち、フルフラール含量を減少させることができるのも特徴である。フルフラールは、焦げ臭、加熱臭のような不快な香りを有し、後留臭とも言われている。米麹を用いたイモ焼酎では、5.6〜7.2mg/Lのフルフラール含量となるが、4.8mg/L以下とすることができ、より好ましい酒質とすることができる。本発明のイモ焼酎は、原料が100%イモ類であり、イモ類由来の香味良好な風味を有する、すなわち、原料であるイモ類の特徴が際立った高品質のイモ焼酎である。
【0020】
以下、検討例によって本発明を更に具体的に説明する。
検討例1
掛原料として蒸しサツマイモ、麹原料としても蒸しサツマイモを用いるイモ焼酎の製造を行った。仕込配合を表1に示す。
【0021】
【表1】


【0022】
一次仕込みは、生サツマイモ(黄金千貫)を洗浄後、両端と病根部を切除し、50分間蒸きょう及び放冷して、市販の焼酎用白麹菌を接種し、蒸しサツマイモ麹を調製し、この蒸しサツマイモ麹に汲水及び酵母を加え、25℃で7日間培養を行い、一次醪とした。
【0023】
二次仕込みは、生サツマイモ(黄金千貫)を洗浄後、両端と病根部を切除し、50分間蒸きょうしたものを、掛原料として用いた(麹歩合50%、汲水歩合40%)。一次醪に蒸しサツマイモ及び汲水を加え二次仕込みを行い、25℃で14日間発酵させた。
【0024】
発酵終了醪を、常法により単式蒸留機を用いて常圧蒸留(中留カットアルコール度数10v/v%)し、得られた蒸留液に冷却ろ過を実施し、アルコール分25v/v%に割水してイモ類のみを原料とするイモ焼酎を得た。得られたイモ焼酎の低沸点香気成分の分析値(ヘッドスペースガスクロマトグラフィー法、アルコール分25v/v%換算値)と官能評価結果を表2に示す。
【0025】
【表2】


【0026】
前記した酢酸イソアミル含量が6.4mg/L、イソアミルアルコール含量が545.0mg/Lのイモ焼酎に、酢酸イソアミル、イソアミルアルコールを添加して、種々のイモ焼酎を調製し、原料に由来するイモ類の香りに及ぼす影響について調べた。なお、酢酸イソアミル、イソアミルアルコールは、それぞれ25v/v%エタノール溶液に高濃度で溶解して添加したので、アルコール濃度は25v/v%と同じである。10名のパネラーにより官能評価試験を行った。3点法(1:良、2:普通、3:悪)で評価し、各パネラーによる官能評価の平均値より、1.0〜1.5を◎、1.5超〜2.0を○、2.0超〜2.5を△、2.5超〜3.0を×で示した。調製したイモ焼酎の酢酸イソアミルアルコール含量、酢酸イソアミル含量、及び官能評価結果を表3、表4、表5に示す。
【0027】
【表3】


【0028】
【表4】







【0029】
【表5】


【0030】
表3より、イソアミルアルコール含量を650mg/L以上とすることにより、サツマイモの甘い香りを引出すことができることがわかった。また、表4より、酢酸イソアミル含量を10.2mg/L超とすることにより、香味のバランスを損なわずにサツマイモの甘い香りを際立たせることができることがわかった。更に、表5より、イソアミルアルコール含量が例えば700mg/Lのとき、酢酸イソアミル含量は8.0mg/Lであっても、香味のバランスはよくサツマイモの甘い香りを際立たせることができることがわかった。
【0031】
検討例2
掛原料として蒸しサツマイモ、麹原料として焙炒サツマイモを用い、麹歩合を変えてイモ焼酎の製造を行った。麹歩合50%のときの仕込配合を表6に示す。
【0032】
【表6】


【0033】
蒸しサツマイモは、生サツマイモ(黄金千貫)を洗浄後、両端と病根部を切除し、50分間蒸きょうした。焙炒サツマイモは、生サツマイモ(黄金千貫)を洗浄後、両端と病根部を切除し、3mm×5mm×5mm角に裁断し、裁断物を調製した。該裁断物を焙炒機で240℃、120秒の条件で焙炒処理し、焙炒サツマイモを得た。該焙炒サツマイモを放冷後、市販の焼酎用白麹を接種し、製麹〔前半30時間は高温経過(38〜40℃)、後半15時間は低温経過(33〜35℃)〕して焙炒サツマイモ麹を得た。一次仕込みは、焙炒サツマイモ麹に汲水及び酵母を加え、25℃で7日間培養を行い、一次醪とした。
【0034】
二次仕込みは、前記した蒸しサツマイモを掛原料として用いた。麹歩合は、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%とし、一次醪に蒸しサツマイモを加え二次仕込みを行い、25℃で14日間発酵させた。麹歩合を変更した場合は、醪容量の合計が同じとなるように汲水で調整した。
【0035】
発酵終了醪を、常法により単式蒸留機を用いて常圧蒸留(中留カットアルコール度数10v/v%)し、得られた蒸留液に冷却ろ過を実施し、アルコール分25v/v%に割水してイモ類のみ全量を原料とするイモ焼酎を得た。10名のパネラーにより官能評価試験を行った。3点法(1:良、2:普通、3:悪)で評価し、各パネラーによる官能評価の平均値より、1.0〜1.5を◎、1.5超〜2.0を○、2.0超〜2.5を△、2.5超〜3.0を×で示した。結果を表7に示す。
【0036】
【表7】


【0037】
表7より、イモ焼酎の掛原料及び麹原料としてイモ類のみを用いるイモ焼酎において、麹歩合を5%以上50%未満とすることによって、香味が良好で、サツマイモの甘い香りを感じることのできるイモ焼酎とすることができた。特に麹歩合が15%以上25%以下とすることによって、香味のバランスがよく、サツマイモの甘い香りを際立たせることができることがわかった。
【0038】
検討例3
掛原料として蒸しサツマイモ、麹原料として蒸し米を用いるイモ焼酎の製造を行った。仕込配合を表8に示す。
【0039】
【表8】


表8
【0040】
一次仕込みは、精米歩合70%の白米を常法により水浸漬、水切り、蒸きょう及び放冷して、市販の焼酎用白麹菌を接種し、米麹を調製し、この米麹に汲水及び酵母を加え、25℃で7日間培養を行い、一次醪とした。
【0041】
二次仕込みは、生サツマイモ(黄金千貫)を洗浄後、両端と病根部を切除し、50分間蒸きょうしたものを、掛原料として用いた(麹歩合20%、汲水歩合50%)。一次醪に蒸しサツマイモ及び汲水を加え二次仕込みを行い、25℃で14日間発酵させた。
【0042】
発酵終了醪を、常法により単式蒸留機を用いて常圧蒸留(中留カットアルコール度数10v/v%)し、得られた蒸留液に冷却ろ過を実施し、アルコール分25v/v%に割水して米麹を用いるイモ焼酎を得た。得られたイモ焼酎の低沸点香気成分の分析値(ヘッドスペースガスクロマトグラフィー法、アルコール分25v/v%換算値)、ファルネソールの分析値(GC−MS法、アルコール分25v/v%換算値))と官能評価結果を表9に示す。
【0043】
【表9】


【0044】
前記したファルネソール含量が148.3μg/Lのイモ焼酎に、ファルネソールを添加して、種々のイモ焼酎を調製し、原料に由来するイモ類の香りに及ぼす影響について調べた。なお、ファルネソールは、25v/v%エタノール溶液に高濃度で溶解して添加したので、アルコール濃度は25v/v%と同じである。10名のパネラーにより官能評価試験を行った。3点法(1:良、2:普通、3:悪)で評価し、各パネラーによる官能評価の平均値より、1.0〜1.5を◎、1.5超〜2.0を○、2.0超〜2.5を△、2.5超〜3.0を×で示した。調製したイモ焼酎のファルネソール含量及び官能評価結果を表10に示す。
【0045】
【表10】


【0046】
表10より、ファルネソール含量を260μg/L以上とすることにより、香味のバランスがよくなり、香りもしまり、サツマイモの甘い香りを引立たせることができることがわかった。
【0047】
以下、実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、本発明がこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0048】
掛原料として蒸しサツマイモ、麹原料として焙炒サツマイモ(本発明1)を用いるイモ焼酎の製造を行った。対照は、麹原料として蒸しサツマイモを用いた。仕込配合を表11に示す。麹歩合は45%となる。
【0049】
【表11】


【0050】
蒸しサツマイモは、生サツマイモ(黄金千貫)を洗浄後、両端と病根部を切除し、50分間蒸きょうした。焙炒サツマイモは、生サツマイモ(黄金千貫)を洗浄後、両端と病根部を切除し、3mm×5mm×5mm角に裁断し、裁断物を調製した。該裁断物を焙炒機で200℃、180秒の条件で焙炒処理し、焙炒サツマイモを得た。蒸しサツマイモ、焙炒サツマイモをそれぞれ放冷後、市販の焼酎用白麹を接種し、製麹〔前半30時間は高温経過(38〜40℃)、後半15時間は低温経過(33〜35℃)〕して蒸しサツマイモ麹、焙炒サツマイモ麹を得た。一次仕込みは、それぞれの麹に汲水及び酵母を加え、25℃で7日間培養を行い、一次醪とした。
【0051】
二次仕込みは、前記した蒸しサツマイモを掛原料として用いた。一次醪に蒸しサツマイモを加え二次仕込みを行い、25℃で14日間発酵させた。
【0052】
発酵終了醪を、常法により単式蒸留機を用いて常圧蒸留(中留カットアルコール度数10v/v%)し、得られた蒸留液に冷却ろ過を実施し、アルコール分25v/v%に割水してイモ類のみ全量を原料とするイモ焼酎を得た。10名のパネラーにより官能評価試験を行った。3点法(1:良、2:普通、3:悪)で評価し、各パネラーによる官能評価の平均値より、1.0〜1.5を◎、1.5超〜2.0を○、2.0超〜2.5を△、2.5超〜3.0を×で示した。得られたイモ焼酎の低沸点香気成分の分析値(ヘッドスペースガスクロマトグラフィー法、アルコール分25v/v%換算値)と官能評価結果を表12に示す。
フルフラールの分析は、次の通り行った。各試料を秤量し、その5倍量の水を添加してサンプル液を調製した。ヘッドスペースバイアル中に各サンプル液を入れ、内部標準物質としてはシクロヘキサノールを添加し、固相マイクロ抽出法によりヘッドスペースガスのGC−MS分析を行った。カラムは、DB−WAX(長さ60m×内径0.25mm)〔アジレント・テクノロジー(株)製〕を用いた。
【0053】
【表12】


【0054】
表12より、麹原料に焙炒サツマイモを用いることにより、イソアミルアルコール含量は、本発明1では670.0mg/Lとすることができ、また、酢酸イソアミル含量は、本発明1では10.8mg/Lとすることができた。対照(麹原料が蒸しサツマイモ)と比べてサツマイモの甘い香りが引出すことができることがわかった。更に、フルフラール含量を、本発明1では4.3mg/Lとすることができた。
【実施例2】
【0055】
実施例1と同様にして、掛原料に蒸しサツマイモ、麹原料に焙炒サツマイモを用いるイモ焼酎の製造を行った。麹歩合は15%、25%、30%とした。なお、サツマイモの品種は金時イモとし、焙炒処理条件は、270℃、80秒とした。
【0056】
発酵終了醪を、常法により単式蒸留機を用いて常圧蒸留(中留カットアルコール度数10v/v%)し、得られた蒸留液に冷却ろ過を実施し、アルコール分25v/v%に割水してイモ類のみ全量を原料とするイモ焼酎を得た。10名のパネラーにより官能評価試験を行った。3点法(1:良、2:普通、3:悪)で評価し、各パネラーによる官能評価の平均値より、1.0〜1.5を◎、1.5超〜2.0を○、2.0超〜2.5を△、2.5超〜3.0を×で示した。得られたイモ焼酎の低沸点香気成分の分析値(ヘッドスペースガスクロマトグラフィー法、アルコール分25v/v%換算値)、ファルネソールの分析値(GC−MS法、アルコール分25v/v%換算値)と官能評価結果を表13に示す。フルフラールの分析は、実施例1と同様にして行った。
【0057】
【表13】


【0058】
表13より、麹原料に焙炒サツマイモを用いて麹歩合を変更することにより、イソアミルアルコール含量は、本発明2(麹歩合15%)では730.0mg/L、本発明3(麹歩合25%)では711.6mg/L、本発明4(麹歩合30%)では705.5mg/Lとすることができ、また、酢酸イソアミル含量は、本発明2(麹歩合15%)では16.5mg/L、本発明3(麹歩合25%)では15.1mg/L、本発明4(麹歩合30%)では14.5mg/Lとすることができた。いずれもイソアミルアルコール含量を650mg/L以上とすることができ、また、酢酸イソアミル含量を10.8mg/L以上とすることができ、香味のバランスがよく、サツマイモの甘い香りを引出す、又は際立たせることができた。ファルネソール含量は、本発明2(麹歩合15%)では293.1μg/L、本発明3(麹歩合25%)では321.7μg/L、本発明4(麹歩合30%)では289.2μg/Lとすることができ、特に麹歩合15〜25%では、香味のバランスが非常によく、自然なイモ類の甘い風味があり、サツマイモの甘い香りが際立っていた。更に、フルフラール含量をいずれも4.8mg/L以下とすることができ、不快な香りを感じさせない高品質の全量イモ焼酎を得ることができた。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明のイモ焼酎は、原料が100%イモ類であり、自然なイモ類の風味があり、原料であるイモ類の特徴が際立った高品質のイモ焼酎である。イモ焼酎の掛原料及び麹原料としてイモ類のみを用い、原料の少なくとも一部に乾熱処理イモ類を用いて、サツマイモの甘い香りを際立たせ、イモ類由来の香味良好な風味を有するイモ焼酎とすることができるので、本発明は優れたイモ焼酎及びその製造方法である。
【出願人】 【識別番号】302026508
【氏名又は名称】宝酒造株式会社
【出願日】 平成19年10月26日(2007.10.26)
【代理人】 【識別番号】100087022
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 昭

【識別番号】100096415
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 大


【公開番号】 特開2008−271951(P2008−271951A)
【公開日】 平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願番号】 特願2007−278472(P2007−278472)