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木材片の熱水処理物及びそれを用いた酒類の芳香付与材 - 特開2008−220294 | j-tokkyo
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【発明の名称】 木材片の熱水処理物及びそれを用いた酒類の芳香付与材
【発明者】 【氏名】大島 宏

【氏名】阪田 祐作

【氏名】高島 征助

【要約】 【課題】焼酎等の蒸溜酒などに木材成分を微妙に制御しながら添加して風味を付与することが可能な技術を確立し、飲酒直前にその木材片の浸漬、振出処理によっても香りが楽しめるような芳香材を簡単な処理で得る。

【解決手段】木材片の電磁誘導加熱水処理により得られる分解処理物からなる木材片の熱水処理物であり、特に、木材片が酒類の貯蔵用樽の木材の微小片やスチック状のものである。木材片以外にも植物体の茎葉部分などの加熱水分解処理物も用いられ、これら処理物を透水性シートからなる袋に収容した浸漬、振出袋、あるいは箸、マドラーなど飲食器具などにして酒類の芳香付与材とした。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材片の電磁誘導加熱水処理により得られる分解処理物からなる木材片の熱水処理物。
【請求項2】
木材片が粒子径1〜30mmである請求項1記載の木材片の熱水処理物。
【請求項3】
木材片が板状又は棒状である請求項1記載の木材片の熱水処理物。
【請求項4】
木材片の電磁誘導加熱水処理は、セラミックパイプ内部の発熱体を電磁誘導加熱して得られる過熱水蒸気処理である請求項1記載の木材片の熱水処理物。
【請求項5】
木材片の電磁誘導加熱水処理は、温度100〜500℃、処理時間5〜30分の範囲である請求項1記載の木材片の熱水処理物。
【請求項6】
木材片の電磁誘導加熱水分解処理物である木材片の熱水処理物からの酒類への抽出成分は、主として炭素数3〜6の脂肪族アルコール、脂肪族エステル、脂肪族エーテルの混合物である木材片の熱水処理物。
【請求項7】
木材片が酒類の貯蔵用樽の木材として用いられている桧材、杉材、オーク材(ブナ科ナラ属)、モミ材、桜材の1種又は2種以上の混合物からなる微小片又はオガクズの熱水処理物である請求項1記載の木材片の熱水処理物からなる酒類の芳香付与材。
【請求項8】
木材片の電磁誘導加熱水分解処理物である木材片の熱水処理物を透水性シートの袋に収容した浸漬、振出袋からなる酒類の芳香付与材。
【請求項9】
木材片が酒類の貯蔵用樽の木材として用いられている桧材、杉材、オーク材(ブナ科ナラ属)、モミ材、桜材等の箸又は割箸状、マドラー等飲食器具の熱水処理物である請求項1記載の木材片の熱水処理物からなる酒類の芳香付与材。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、木材の加工時に発生する木片、オガクズ等を主に電磁誘導加熱装置から発生する過熱水蒸気による木材片の熱水処理物及びそれを用いた酒類の芳香付与材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、木チップのようなバイオマスの水蒸気分解はなされており、オートクレーブ中での高温高圧の水中反応で、フェノール類、フルフラール類のほか酸やアルデヒドに分解されることは、従来から知られている。また、特許文献1には、木質植物材料から天然液を抽出するための方法であって、木質植物材料を含む密閉エンクロージャを大気圧よりも高い圧力に加圧する段階と、飽和水蒸気を生成する、または注入する段階と、電磁波によって木質植物材料のコアまで加熱する段階と、 処理された木質植物材料から出る液体滲出物を重力により回収する段階とを含むことを特徴とする方法が記載されている。この工程により、木材からさまざまな天然分子を抽出してその分子を製薬、化粧品、食品産業、ファインケミストリなどのさまざまなビジネス部門で利用することが可能である。これらの液体を使用すると、後からフェノール、ポリフェノール、タンニン、テルペン、ビタミン、酢酸、サリチル酸、調味料などの抽出を行うことができる、とある。
【0003】
水などの液体を直接的に電磁誘導加熱することのできる装置については、特許文献2に記載され、その改良によって、かなり高温の水蒸気が得られている。ここでは、液体や気体等の流体に浸された発熱体を電磁誘導加熱で加熱し、流体の直接的な熱移動で加熱する電磁誘導加熱装置である。この装置は、 交番電源に接続されたコイルが巻かれて流体が通過するケースがあり、この流体に浸かるようケース内に収納されてコイルによる電磁誘導で加熱される発熱体は、周辺部と中心部がほぼ同等に発熱するように配設された薄肉部材の厚みが30ミクロン以上であり、交番電源が15〜150KHzの範囲で加熱する電磁誘導加熱装置がみられる。
【0004】
一方において、我が国では衣食住の多くの分野において、健康指向が強まり、中でも食生活の面では、従来の人工的な加工方法が施された食品よりも、自然食品類が推奨されている。それらのうち、酒類でも抗酸化性物質を含有している赤ワインが健康維持、老化防止に有効であるという風評から盲目的に飲用されているが、過度の飲用は健康に対して有害であることはあえて指摘するまでもない。
【0005】
更に、日本酒等の醸造酒中には、悪酔いの原因物質のアルデヒド類も含有されていること、高カロリーであるために肥満予防には不利とされ、含有物が低レベルで低カロリーの焼酎等蒸溜酒の消費量が急増していることは周知の通りである。
【0006】
そもそも酒類は食生活を豊かにする嗜好品であり、いかに肥満防止、悪酔いを回避するという理由だけで焼酎等蒸溜酒を飲用するのでは、多彩な食生活を享受しようとしている
現代生活から乖離することになる。
【0007】
このような酒類に対する要望から、酒類に香味を増す方策が種々試みられている。たとえば、ウイスキーは保存用のオーク材の樽の内面をガスバーナー等の炎で処理することによって、オーク材の含有成分が一気にウイスキー中に溶出することを制御しながら長い貯蔵期間中に熟成されて独自の風味が付与される。しかしながら、その溶出・熟成の度合いの目安は年単位の時間であり、人為的にはオーク材の表面の火炎による処理の度合いを変える程度しか制御方法はない。最近になって、酒樽本体に収納した酒に容器である酒樽本体の香りが過分に混入又は浸透しないようにするために、木製の酒樽本体の内面の少なくとも収納酒の接する面に柿渋を塗着した部分と塗着しない部分を形成する技術が特許文献3に記載されている。
【0008】
酒類に香味を付与するほかの試みとして、特許文献4には、良好な香りを有しまろやかであり且つ雑味が少ない酒の製造方法を提供し、不味い酒に良好な香りを付与し、まろやかにし、雑味を取り除くことにより美味しい酒を得ることができる酒類の改良方法が提供されている。その方策として、木炭と酒類とを接触させ、その後に前記木炭を酒類中から取り除くことによる酒類の製造方法が、提案されている。
【0009】
また、酒類に対する飲用添加料としては、特許文献5に、桧質木質体から構成されてなることを特徴とする飲用添加料である。更に、ウイスキーを、杉材、桧材及び山桜材からなる群から選ばれる1種又は2種以上の木材と接触処理するウイスキーの香味の改質方法が特許文献6に記載されている。接触処理は樽にウイスキーを貯蔵する一般的な方法である。従来、ウイスキーの貯蔵に用いられる樽は、ホワイトオーク材製の樽であり、ホワイトオークから、ウイスキー特有の芳香、ウイスキーの色である琥珀色が形成される。他の木材による樽は、ウイスキー特有の芳香や色が得られないために、また樽材として必要な物理的強度を持たないこと、欠減量が増加する危険性があること等から、ウイスキーの製造工程では用いられることがなかった、とある。
【0010】
特許文献6には、また、ウイスキーの香味の改質を行い、今までになかった新しいタイプのウイスキーを提供することを目的に、ウイスキーを、杉材、桧材及び山桜材からなる群から選ばれる木材と接触処理することにより、ウイスキーは従来にない香味と後味を有し、さらに木炭と接触処理させたウイスキーを配合することにより、全く新しい香味を有するとともに、クリーン度が高い味となめらかな口当たりと、べたつき感がない切れのあるすっきりとした後味を持つウイスキーを得ることができる。そして、杉材又は桧材と接触処理する場合、好ましいウイスキーを得るための指標としてウイスキー中への杉材又は桧材からの抽出成分であるδ−カジネンのウイスキーのへの移行量を知ることにより、改質方法の実施をコントロールすることができる、とある。
【0011】
【特許文献1】特表2002−542941公報(請求項1、[0040])
【特許文献2】特開平8−264272号公報(請求項1、[0033])
【特許文献3】特開2000−281060公報(請求項1)
【特許文献4】特開平9−206060号公報(請求項1、要約の課題)
【特許文献5】特開平7−169号公報(請求項1)
【特許文献6】特開平11−276151号公報(請求項1、[0003])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
以上の各文献にみられるように、酒類の風味改善のために古くから木製の樽が保存用に使用され、これの改良によって、芳香成分の酒への移動を加減しているが、いずれにしても長期間の保存中での移行であるから、簡単に芳香性を付与する手段ではない。たとえば、芳香成分の溶出・熟成の度合いの目安は年単位の時間であり、人為的にはオーク材の表面の火炎による処理の度合いを変える程度しか制御方法はない。最近になって、酒樽本体に収納した酒に容器である酒樽本体の香りが過分に混入又は浸透しないようにするために、木製の酒樽本体の内面の少なくとも収納酒の接する面に柿渋を塗着した部分と塗着しない部分を形成する技術なども提案されているのである。
【0013】
そこで本発明者らは、これら木製の樽によるウイスキーの風味の付与方法を参考にして鋭意検討して、焼酎等の蒸溜酒などに木材成分を微妙に制御しながら添加して風味を付与することが可能な技術を確立しようとして、木チップの予備的熱処理によって、芳香成分を短時間に放出可能な木材片を求め、できれば飲酒直前にその木材片の浸漬、振出処理によっても香りが楽しめるような芳香材を簡単な処理で得ようとした。
【課題を解決するための手段】
【0014】
すなわち、本発明では、高圧オートクレーブ処理と電磁波加熱を利用するような本格的な処理ではなく、簡単な木材片の電磁誘導加熱水処理により得られる分解処理物からなる木材片の熱水処理物であり、その芳香を利用して各種の飲食用器具を製造することができる。特に、酒類の貯蔵用樽の木材の微小片あるいは植物の各部分の加熱水分解処理物を透水性シートからなる袋に収容した浸漬、振出袋としたり、箸、割箸、マドラーなどの形態にしたりして、酒類の芳香付与材とした。
【0015】
ここで、使用する木材片は粒子径1〜30mmであり、好ましくは2〜20mmである木材片の熱水処理物である。この程度の大きさであると、不織布や耐水性紙等の透水性袋に入れてティーバッグのように振出タイプとしたり、そのまま木片をコップに注いだ酒類中に投入したりして、香りを楽しむことができる。また、木材片が粉粒体でなくても、たとえば、板状又は棒状で、箸又は割箸状やマドラーなどの飲食用器具に用いて独特の香りを楽しむことができる。
【0016】
木材片の電磁誘導加熱水処理は、セラミックパイプ内部の発熱体を電磁誘導加熱して得られる過熱水蒸気処理の分解処理物とし、木材片の電磁誘導加熱水処理は温度100〜500℃、好ましくは300〜450℃、処理時間5〜30分、好ましくは10〜20分の範囲で熱水処理物を得た。ここで用いる木材片は、前述の酒類の貯蔵用樽の木材として用いられている桧材、杉材、オーク材(ブナ科ナラ属)、モミ材、桜材の1種又は2種以上の混合物からなる微小片又はオガクズであり、これらの熱水処理物を酒類の芳香付与材とする。芳香成分は木材片の電磁誘導加熱水分解処理物からなる木材片の熱水処理物に含有するもので、これから酒類への抽出成分は、主として炭素数3〜6の脂肪族アルコール、脂肪族エステル、脂肪族エーテルの混合物である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の木材片の熱水処理物は、それ自身が芳香を放つので、一般的な芳香材として、あるいは木片炭化物などと混合して、室内の脱臭、消臭材に用いられる。なかでも、本発明で提案しているように、基本的には木材中の成分によって蒸溜酒にウイスキーのような風味を付与しようというものであるが、樽中で保存するというような大掛かりな方法ではなくて、インスタント紅茶、あるいは緑茶に使用されている紙製パックに後述するオガクズ等、あるいはそのために微小片に粉砕した木材の水蒸気存在下で得られた加熱分解処理物を充填し、これを所定時間、蒸溜酒中に浸漬することによって酒中に分解処理物中の成分が溶出して独自の風味を付与することを可能とする。また、箸又は割箸状、マドラー等飲食器具の形にして、本発明の熱水処理物にすると、これらを紙パックと同様に所定時間、蒸溜酒中に浸漬することによっても、酒類の芳香が増すと同時に箸等の香りも増幅され、かつ、そのアルコール消毒にもなる。
【0018】
本発明での核心部分となる木材片の加熱分解法は、ほぼ密閉された炉内へ木材片として板状、棒状あるいは微小片を一定量仕込み、所定温度(100〜500℃、好ましくは300〜450℃)に設定された過熱水蒸気で5〜30分の連続加熱処理で可能であるので、簡単かつ効率が良い。本分解法は電磁誘導加熱水によるので、その加熱装置は特別な容器を必要とせず、ほぼ密閉されたトンネル炉を使用すれば連続的な処理も可能である。
【0019】
本発明の電磁誘導加熱水分解は、加熱処理温度を任意に変更することが可能であり、吹き込む加熱水蒸気の量も変更が可能であり、得られる処理物の物性も同じ原材料を使用してもそれだけ多種類の製品が得られるという大きな特徴をもっている。また、様々な処理条件で得られた製品を任意に混合することによって、芳香成分の多様性が期待でき、特に酒類に期待以上の風味を付与することができるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の好ましい実施態様及び実施例によって、具体的かつ詳細に説明する。図1ないし図4は、木材片の電磁誘導加熱水分解物の焼酎浸漬液への溶出成分のガスクロ−マス(GC−MS)分析チャートである。木材片として使用する木材の種類は特に限定するものではないが、酒類に付与される風味を考慮すれば、桧材、杉材、オーク材(ブナ科ナラ属)、モミ材、桜材等、通常酒類の貯蔵用の樽材として使用されているものが望ましい。木材の微小片や細片あるいは成形加工物の処理に際しては、これらの1種又は2種以上の混合物も使用できる。
【0021】
本発明での核心部分となる木材片の加熱水分解方法は、誘導加熱炉の内容積に対して2〜5:1の割合で木材の微小片や所定形状の木材片を仕込み、水蒸気を吹き込んだ後、密閉して各々所定温度(100〜450℃)にて10〜20分加熱処理する。加熱処理後、それを風乾して微細片や細片の場合は紙製パックに1〜5g充填した。
【0022】
この処理物を充填した紙製パックを酒中に、通常、重量浴比50:1で所定時間(1〜24時間)浸漬した。ただし、この浸漬時間も飲用者の好みに合わせて任意に選択して構わない。特に、低温領域での処理物には比較的低沸点成分が残留しており、長時間浸漬すれば、それだけ酒中への溶出量が増加して風味も濃くなる。
【0023】
使用する木材によっても、また、水蒸気による加熱処理条件によっても当然生成する化学物質は異なってくるのであるが、杉及び桧の微小片を使用した際の加熱温度による生成物の変化をみた結果は、図1〜4のGC−MSチャートにみられるように、生成物の種類はせいぜい10種類程度であった。
【0024】
すなわち、木材片の電磁誘導加熱水処理の条件を次のように設定した。
a.未処理
b.水蒸気加熱温度:250〜350℃
c.水蒸気加熱時間:10〜30分
【0025】
次いで、以下の条件について焼酎への浸漬試験を行った。
浸漬条件:各試料の各々1gを50mlの焼酎に24時間浸漬した。
各々の試料を回収後、各々の焼酎をガスクロマトグラフィー(水素炎イオン化検出方法、FID−GC)で測定した。しかし、これらの嗅覚試験では明らかな差異があるもののクロマトグラムには何らの差異は確認されず、これらのことから、焼酎に溶出した香気成分の濃度はFID−GCの検出感度以下であった。
【0026】
そこで、これらの微小片の細孔にトラップされている焼酎中には木材表面を水の存在下で加熱処理した際に生成した極微量成分が溶出していると予想してそれらを回収して測定する方法について検討した。
【0027】
すなわち、それぞれ処理条件で得られた木材の微小片0.5gをガラス製試験管に充填して開口部を溶封した。ただし、これを溶封する際に細管状に引き伸ばし、その先端を盲管にした。これらの試験管を130℃の油浴中に加熱した。この加熱処理によって、木材の微小片の細孔にトラップされた低沸点成分が封管内で気化して試験管の上部の細管部分で空冷・液化された。試験管のこの部分を開封してトラップされた液状試料を回収してガスクロマトグラム/質量分析計(GC−MS)の分析システムにて試料中の成分を同定した(装置:Hewlett Packard Co. HP6890 Series GC System:G1530A,MS System:HP5937,Mass Selective Detector G1098A)。結果を一括して表1に示す。また、表1中の一部実施例と比較例等のGC−MSのチャートについては、図1〜4に示すところである。
【0028】
【表1】


【0029】
表1及び図1〜4の結果、盲管にトラップされた化学物質は、桧材や杉材の水蒸気加熱処理条件によってかなり異なるが、共通した芳香成分である1−ブタノール−3−メチル成分が増大し、これによって芳香性が増大しているものと思われる。そのほか、1−ブタノール−3−メチル、1−プロペン2−メトキシ、蟻酸エチルエステル、蟻酸プロピルエステル、1−プロパノール−2−メチル、1−ブタノールなどが生成している。以下、実施例の試料の生成物について簡単に説明する。
【0030】
このように、未処理あるいは250℃、10分という比較的緩やかな加熱処理を行った場合には、図3や図4にみられるように、1−プロパノールや1−ブタノールの脂肪族飽和アルコールが検出されたが、有害物質のメタノールの生成は認められなかった。木材乾留では処理条件によってはメタノールが生成されるおそれもあるが、本発明の方法ではメタノールは生成しないという利点がある。また、1−プロパノール、1−ブタノールの毒性についても高濃度の被曝では、目、鼻、喉への刺激のおそれ、頭痛、胃腸障害、眩暈等も惹起されるが、本発明で明らかにされたようなFID−GCでようやく検知されるような極低濃度ではこれらの症状が惹起されるおそれは極めて低い。また、シエトキシメタンのエーテル類の麻酔作用も懸念されるが、臨床麻酔領域で使用されるジメチルエーテルやジエチルエーテルの蒸気濃度は通常1〜5%であり、本発明では検出されない程度の濃度であるから何ら問題はない。また、酢酸エチルエステル、蟻酸エチルエステル、蟻酸プロピルエステルなどは本来果物の香気成分である。したがって、本発明の技術は食品工業の領域において極めて高い安全性も持っている。
【0031】
更に、人の味覚は、これらの個々の化学物質を分離して感知するのではなく、これらの物質の総和として感知されるものである。しかも、クロマトグラム上の大きいピークに帰属する化学物質が必ずしも酒の風味にほとんど関与しないことも稀ではない。また、味覚はそれを飲用する個々人によって異なるものであり、画一的に規定できるものではない。しかしながら、ここに、6人の味覚テストの結果を表2にまとめたが、明らかに本発明の方法で得られた木材片の電磁誘導加熱水分解物を先のGC−MS分析の資料と同様の浸漬条件で、各試料の各々10gを500mlの焼酎に24時間浸漬した焼酎を用意して、味覚テスト用のサンプルとした。
【0032】
【表2】


【0033】
表2の結果から明らかなように、木材片の電磁誘導加熱水分解物の焼酎浸漬液への溶出成分のGC−MS分析チャートから同定できた焼酎浸出物のエステル類の芳香成分の増大が、焼酎本来の香りを更に増大させ、その結果、良好な杉や桧の香りを簡単に楽しめることが確認できた。
【0034】
以上は、木材微細片の紙パック充填物によるテスト結果であるが、浸漬時間を若干長くすれば、箸又は割箸状、マドラー等飲食器具の形の木材片も良好な結果が得られた。これは、箸などのスチック自体が芳香を放つので、これによって焼酎中の芳香成分含有量以上に感応すると思われる。したがって、これらを紙パックと同様に所定時間、蒸溜酒中に浸漬することによっても、酒類の芳香が増すと同時に箸等の香りも増幅され、かつ、箸等のアルコール消毒にもなる効果も得られた。
【0035】
ここで説明した実験結果は、水蒸気による加熱温度が200〜350℃の場合であるが、その上下の温度領域で木材の微小片を処理することも差し支えない。また、ここでは木材を通常、酒類の貯蔵用の樽の原料として使用されている杉、桧についての検討結果に基づいているが、これ以外の香木等を使用することも何ら差し支えない。更にまた、現在、酒類に各種のフレーバー成分を含有している植物の葉、茎、根の部分、さらには花びら、果実を浸漬して酒類に風味を付与する方法も汎用されているが、これらの植物のそれぞれの部分を本発明の電磁誘導加熱水分で処理することも可能である。
【0036】
このように、本発明は木材の微小片の加熱水分解処理物の製造に止まらず、植物の全ての部分に適応される方法である。しかも、加熱処理温度を任意に変更することが可能であり、添加する水の量によって水蒸気圧も変更することが可能であり、得られる処理物の物性も同じ原材料を使用してもそれだけ多種類の製品が得られるという大きな特徴を持っている。また、様々な処理条件で得られた製品を任意に混合することによって、酒類に期待以上の風味を付与することも可能である。
【0037】
更に、本製造方法は、食品添加物として重要な細菌等の微生物に対して完全な無菌性の確保も具備している。すなわち、現行の日本薬局法に定められている高圧蒸気滅菌処理方法は、飽和蒸気下、131℃、10分で耐熱性指標菌:Bacillus Stearothermophilusを完全に殺滅されることが確認されているから、上述のように、消毒性は抜群である。
【0038】
本発明で設定している処理条件は、それよりも極めて処理温度も含めて過酷な領域で操作するものであり、それだけ食品添加物としての絶対的な微生物による汚染に対して安全性が保証されるものである。そのうえ、酒類の主成分のエタノールも殺菌作用を有しており、食品衛生面からも安全性は充分に確保されている。
【0039】
このような見地からすれば、得られた製品の酒類への浸漬方法も上記の紙製パックに充填して使用する方法に限定するものではなく、紙の代わりにポリエステル等の繊維を素材にした袋を使用することも何ら差し支えない。また、製品を袋に入れることなく直接酒類に浸漬することも可能であるから、本発明方法で得られる木材片等の応用範囲は極めて広い。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】桧材片の焼酎浸漬液への溶出成分のGC−MS分析チャートである。
【図2】桧材片の電磁誘導加熱水分解物の焼酎浸漬液への溶出成分のGC−MS分析チャートである。
【図3】杉材片の焼酎浸漬液への溶出成分のGC−MS分析チャートである。
【図4】杉材片の電磁誘導加熱水分解物の焼酎浸漬液への溶出成分のGC−MS分析チャートである。
【符号の説明】
【0041】
1 ピーク1、エタノール
2 ピーク2、1−ブタノール−3−メチル
3 ピーク3、1−プロペン2−メトキシ
4 ピーク4、蟻酸エチルエステル
5 ピーク5、蟻酸プロピルエステル
6 ピーク6、1−プロパノール−2−メチル
7 ピーク7、1−ブタノール
8 ピーク8、1−ブタノール−3−メチル
【出願人】 【識別番号】000250580
【氏名又は名称】立花容器株式会社
【出願日】 平成19年3月14日(2007.3.14)
【代理人】 【識別番号】100075960
【弁理士】
【氏名又は名称】森 廣三郎

【識別番号】100114535
【弁理士】
【氏名又は名称】森 寿夫

【識別番号】100113181
【弁理士】
【氏名又は名称】中務 茂樹

【識別番号】100126697
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 瑞枝


【公開番号】 特開2008−220294(P2008−220294A)
【公開日】 平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願番号】 特願2007−64672(P2007−64672)