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【発明の名称】 トマト果汁含有アルコール飲料及びその製造方法
【発明者】 【氏名】畠中 達也

【氏名】中村 繁幸

【氏名】石垣 賢一

【氏名】松本 雄大

【要約】 【課題】香味品質が改善され、オリの発生及び色調の変化の抑えられたトマト果汁含有アルコール飲料及びその製造方法を提供することを目的とする。

【解決手段】以下の工程(a)〜(c):(a) トマト果汁を含む液を乳酸菌で発酵させて、液中の乳酸を増加させることを含む、乳酸発酵トマト液を製造する工程;(b) トマト果汁を酵素処理し、濾過することを含む、清澄トマト果汁を製造する工程;(c) 前記乳酸発酵トマト液、前記清澄トマト果汁及びアルコール混合する工程;を含み、所望により、以下の工程(d):(d) 安定化リコピンを添加する工程;をさらに含む、トマト果汁含有アルコール飲料の製造方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)乳酸発酵トマト液及び(B)清澄トマト果汁を含み、トマト果汁含有量1w/w%以上、アルコール度数1〜25%である、トマト果汁含有アルコール飲料。
【請求項2】
(A)乳酸発酵トマト液及び(B)清澄トマト果汁を、同糖度が得られる量に換算した場合に(A):(B)=1:50〜50:1の重量比で含む、請求項1のトマト果汁含有アルコール飲料。
【請求項3】
乳酸含有量が0.005g/L以上であることを特徴とする、トマト果汁含有アルコール飲料。
【請求項4】
乳酸含有量が0.005g/L以上であるトマト果汁含有アルコール飲料であって、(A)乳酸発酵トマト液を含み、前記(A)乳酸発酵トマト液中のリンゴ酸含有量が1.5g/L以下であることを特徴とする、トマト果汁含有アルコール飲料。
【請求項5】
安定化リコピンを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のトマト果汁含有アルコール飲料。
【請求項6】
以下の工程(a)〜(c):
(a) トマト果汁を含む液を乳酸菌で発酵させて、液中の乳酸を増加させることを含む、乳酸発酵トマト液を製造する工程;
(b) トマト果汁を酵素処理し、濾過することを含む、清澄トマト果汁を製造する工程;
(c) 前記乳酸発酵トマト液、前記清澄トマト果汁及びアルコールを混合する工程;
を含み、所望により、以下の工程(d):
(d) 安定化リコピンを添加する工程;
をさらに含む、トマト果汁含有量1w/w%以上、アルコール度数4〜18%であるトマト果汁含有アルコール飲料の製造方法。
【請求項7】
前記工程(a)が、トマト果汁を含む液を乳酸菌で発酵させて、液中のリンゴ酸を減少させることをさらに含み、前記工程(b)における酵素処理がペクチナーゼ処理であり、前記工程(c)におけるアルコールが白ワイン及び/又はニュートラルスピリッツを含む、請求項6のトマト果汁含有アルコール飲料の製造方法。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の製造方法で得られたトマト果汁含有アルコール飲料。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、トマト果汁を含有するアルコール飲料及びその製造方法に関する。本発明は特に、香味品質が改善され、オリの発生及び色調の変化の抑えられたトマト果汁含有アルコール飲料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トマトは野菜の中でも特に人気が高く、近年その摂取頻度も増加している。このような背景の中、消費者の嗜好の多様化もあいまって、トマトを用いた新しい美味しさ、例えばトマトを用いたアルコール飲料に対する需要は増加傾向にある。しかし、「トマトは好きだがトマトジュースは嫌い」という消費者がいるように、トマトは加工中に本来の美味しさが失われ、嫌な香りや青臭さが強調されてしまうことがある。また、特にアルコール飲料においては、トマト果汁を配合すると味が変わる、オリ(沈殿物)が生じる、退色しやすい、等の問題があることが知られていた。
【0003】
これらの問題に対し、特許文献1は、精密濾過又は限外濾過の後脱色処理を施すことを含む、トマト飲料の製造方法を開示する。特許文献2は、ポリフェノール類添加により青臭(ヘキサナール臭)を抑えたトマト果汁含有飲料を開示する。特許文献3は、パルプ質含有トマト原料を含む混合物にワイン酵母を添加して発酵させ、その後酵母及びパルプ質を除去する工程を含む、発酵トマト飲料の製造方法を開示する。特許文献4は、トマトに含まれる色素であるリコピンの溶液中での安定性を改善する方法を開示する。また、乳酸菌を用いたトマト果汁の処理に関し、特にGABA(γ-アミノ酢酸)の生産に着目した乳酸発酵に関する開示がある(特許文献5、6)。
【特許文献1】特開2003-135038号
【特許文献2】特開2006-141260号
【特許文献3】特開2005-176727号
【特許文献4】特開平8-113723号
【特許文献5】特開2000-210075号
【特許文献6】特開2000-308457号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、香味品質が改善され、色調変化が抑えられ、分散安定性の高い(オリの生じない)トマト果汁含有アルコール飲料への需要は未だ大きい。また、本発明者らは、トマトの香味を付与すべくトマト果汁の含有量を増加させるとpHが高くなり、開栓後雑菌が繁殖しやすくなること、雑菌繁殖を防止すべくアルコール度数の高い飲料とするとトマトの香味が感じられにくくなることをも見出した。従って、本発明は、トマト果実をかじった時に感じる新鮮な香味を充分に有し、トマトジュースに特徴的な青臭い好まれない香味は除去された飲料であって、かつ適度な酒感とトマトの旨みとのバランス、酸味と甘みとのバランスがしっかりと感じられる新しい香味のトマト果汁含有アルコール飲料及びその製造方法を提供することを目的とする。さらに、アルコール存在下においても、トマトの真っ赤な色が保たれ、トマト果汁を大量に配合しても沈殿物が生じることなく、安定な商品価値の前記飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、トマト果汁含有アルコール飲料の香味品質改善について検討した結果、トマト果汁をそのまま用いるのではなく、乳酸菌で発酵させた乳酸発酵トマト液と、濾過処理又は酵素処理後に濾過処理して得られた清澄トマト果汁とを混合することで、アルコール飲料であってもトマトの好ましい香味を損なわずにトマトジュースに特徴的な青臭い好まれない香味は除去することができることを見出し、さらに前記乳酸発酵トマト液と清澄トマト果汁との配合比を検討し、本発明を完成させるに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、(A)乳酸発酵トマト液及び(B)清澄トマト果汁を含み、トマト果汁含有量1w/w%以上、好ましくは10w/w%以上、より好ましくは30w/w%以上、さらに好ましくは50w/w%以上、アルコール度数1〜25%、好ましくは4〜18%、より好ましくは8〜14%である、トマト果汁含有アルコール飲料に関する。
本発明はまた、(A)乳酸発酵トマト液及び(B)清澄トマト果汁を、同糖度が得られる量に換算した場合に(A):(B)=1:50〜50:1、好ましくは1:10〜10:1、より好ましくは1:3〜3:1、さらに好ましくは1:2〜2:1、特に1:1の重量比で含む、前記トマト果汁含有アルコール飲料に関する。
本発明はまた、乳酸含有量が0.005g/L以上、好ましくは0.05g/L以上、より好ましくは0.1g/L以上、さらに好ましくは0.25g/L以上であることを特徴とする、トマト果汁含有アルコール飲料を提供する。
本発明はまた、乳酸含有量が0.005g/L以上、好ましくは0.05g/L以上、より好ましくは0.1g/L以上、さらに好ましくは0.25g/L以上であるトマト果汁含有アルコール飲料であって、(A)乳酸発酵トマト液を含み、前記(A)乳酸発酵トマト液中のリンゴ酸含有量が1.5g/L以下、好ましくは1.0g/L以下、より好ましくは0.5g/L以下、さらに好ましくは0.1g/L以下であることを特徴とする、トマト果汁含有アルコール飲料を提供する。
本発明はまた、安定化リコピンを含む、前記トマト果汁含有アルコール飲料に関する。
【0007】
本発明はまた、以下の工程(a)〜(c):
(a) トマト果汁を含む液を乳酸菌で発酵させて、液中の乳酸を増加、好ましくは0.1g/L以上増加、より好ましくは0.5g/L以上増加、さらに好ましくは1.0g/L以上増加、さらにより好ましくは1.5g/L以上増加させることを含む、乳酸発酵トマト液を製造する工程;
(b) トマト果汁を酵素処理し、濾過することを含む、清澄トマト果汁を製造する工程;
(c) 前記乳酸発酵トマト液、前記清澄トマト果汁及びアルコールを混合する工程;
を含み、所望により、以下の工程(d):
(d) 安定化リコピンを添加する工程;
をさらに含む、トマト果汁含有量1w/w%以上、好ましくは10w/w%以上、より好ましくは30w/w%以上、さらに好ましくは50w/w%以上、アルコール度数4〜18%、好ましくは8〜14%であるトマト果汁含有アルコール飲料の製造方法に関する。
本発明はまた、前記工程(a)が、トマト果汁を含む液を乳酸菌で発酵させて、液中のリンゴ酸を減少、好ましくは50%以上減少、より好ましくは90%以上減少、さらに好ましくは93%以上減少させることをさらに含み、前記工程(b)における酵素処理がペクチナーゼ処理であり、前記工程(c)におけるアルコールが白ワイン及び/又はニュートラルスピリッツを含む、前記トマト果汁含有アルコール飲料の製造方法に関する。
本発明はまた、前記の方法で製造したトマト果汁含有アルコール飲料に関する。
【0008】
さらに本発明は、糖度0〜30%、好ましくは3〜20%、より好ましくは10〜14%である、前記トマト果汁含有アルコール飲料に関する。
さらに本発明は、酸度がクエン酸換算で0〜2.5%、好ましくは0.2〜2.0%、より好ましくは0.7〜1.1%である、前記トマト果汁含有アルコール飲料に関する。
さらに本発明は、前記(A)乳酸発酵トマト液中のジメチルスルフィド及び/又はフルフラールがトマト果汁と比較して減少した、前記トマト果汁含有アルコール飲料に関する。
さらに本発明は、前記清澄トマト果汁が、酵素処理、遠心分離及び/又は濾過等で沈殿物を生じないように清澄化処理を施された、前記トマト果汁含有アルコール飲料に関する。
さらに本発明は、前記(B)清澄トマト果汁の濁度が10,000Helm以下、好ましくは1,000Helm以下、より好ましくは500Helm以下、さらに好ましくは200Helm以下である、前記トマト果汁含有アルコール飲料に関する。
さらに本発明は、前記(A)乳酸発酵トマト液中の乳酸量が0.1g/L以上、好ましくは0.5g/L以上、より好ましくは1.0g/L以上、さらに好ましくは1.5g/L以上である、前記トマト果汁含有アルコール飲料を提供する。
さらに本発明は、乳酸含有量が0.005g/L以上、好ましくは0.05g/L以上、より好ましくは0.1g/L以上、さらに好ましくは0.25g/L以上であるトマト果汁含有アルコール飲料であって、前記(A)乳酸発酵トマト液中のリンゴ酸含有量が1.5g/L以下、好ましくは1.0g/L以下、より好ましくは0.5g/L以下、さらに好ましくは0.1g/L以下である、前記トマト果汁含有アルコール飲料を提供する。
本発明はまた、容器詰飲料である、前記トマト果汁含有アルコール飲料に関する。
さらに本発明は、前記工程(a)における乳酸菌がLactbacillus属である、前記トマト果汁含有アルコール飲料の製造方法に関する。
【0009】
本発明において用いるトマトは、一般にトマトジュース、トマトピューレ、トマトペースト等トマト加工品の製造に用いられる品種であれば特に限定されず、1種又は複数を組合せて用いることが出来る。代表的な品種としては、加工用として使われるサン・マルツァーノ、ローマ、珠玉、くりこま、ふりこまに加え、生食用のファースト、桃太郎、福寿、世界一、豊玉、栗原、栄、群玉、市原早生、コメット、プリンス・オブ・ウェールズ、ミニトマト等を使用することができる。また、上記のトマトを、例えば、そのまま、冷凍して、粉砕して若しくは乾燥した形態で、又はそれらを一定期間保管した形態で用いることが出来る。
【0010】
本明細書中において、「トマト果汁」というときは、トマトを収穫後、所望により加熱し、ジューサー等で粉砕して得たトマトピューレを、遠心分離して皮、種子等の固形分を除去したものを指し、以下に詳述する清澄トマト果汁を含む。以下に詳述する乳酸発酵トマト液は、本明細書中におけるトマト果汁に含まないものとする。輸送コスト、微生物的安定性向上(水分活性を下げる)、解凍作業を容易にする等の利点があることを考慮し、前記トマト果汁は濃縮されたものであってもよい。
【0011】
本明細書中において、「乳酸発酵トマト液」とは、上記のトマト搾汁を、好ましくはトマト果汁とし、次いで乳酸菌で発酵させることを含む工程で得られたものであって、食用に適さない副生成物を含有しないものを指す。このような乳酸発酵トマト液は、トマト果汁と比較してトマトジュースの青臭さのもととなる成分が減少している。さらに、発酵の際に産生される副生成物を含有してもよい。このような乳酸発酵トマト液を用いることにより、トマトジュースの青臭さ、製造における加熱殺菌等で発生する嫌な香りが減少し、かつ味わい、特に旨味が付与され、酸変換によりまろやかさの向上した飲料を得ることが可能になる。
【0012】
乳酸発酵トマト液は上記の特徴を有するものであれば特に制限されないが、味に厚みやまろやかさが付与され望ましい香味の飲料を得るという観点からは、トマトジュースの青臭さのもとである成分であるジメチルスルフィド(dimethyl-sulfide)、フルフラール(furfural)がトマト果汁と比較して減少し、乳酸含有量が0.1g/L以上、好ましくは0.5g/L以上、より好ましくは1.0g/L以上、さらに好ましくは1.5g/L以上であるものが好ましい。トマト果汁と比較して、バラ様、フローラル様の香気成分が生成又は増量した乳酸発酵トマト液、コハク酸が増加した乳酸発酵トマト液も、好ましい。また、香味改善という観点から発酵が充分に行われたことを示す指標としてリンゴ酸含有量を用いることが出来るため、リンゴ酸含有量が1.5g/L以下、好ましくは1.0g/L以下、より好ましくは0.5g/L以下、さらに好ましくは0.1g/L以下である乳酸発酵トマト液も、好ましい。これらの成分は、当業者に公知の手法、例えばガスクロマトグラフィー、液体クロマトゲラフィーを用いて測定することができる。
【0013】
本発明における好ましい乳酸発酵トマト液は、上記トマト果汁を含む液を、乳酸菌で発酵させて、液中の乳酸を、増加、好ましくは0.1g/L以上増加、より好ましくは0.5g/L以上増加、さらに好ましくは1.0g/L以上増加、さらにより好ましくは1.5g/L以上増加させることを含む製造方法によって得ることが出来る。発酵によって糖分が分解し、酸味成分(乳酸等)と旨味成分が生成する。前記乳酸菌は、所望の乳酸発酵トマト液を得られる菌であれば制限されず、例えばLactobacillusbrevisLactobacillus plantarumLactobacillus casei等、Lactobacillus属の菌を用いることが出来る。発酵は、当業者に公知の手法を用いて行うことができる。
【0014】
乳酸発酵トマト液製造の際に、通常発酵の進行度の指標となる酸度があまり変化しない場合には、乳酸の増加、リンゴ酸の減少割合で発酵の進行度を確認することが出来る。例えば、リンゴ酸が発酵前と比較して50%以上減少、より好ましくは90%以上減少、さらに好ましくは93%以上減少した時点を発酵の終点とすることができる。
【0015】
乳酸発酵トマト液の製造プロセスの一例を以下に示す:仕込み(水、トマト果汁、及び発酵を促進させるためのものとしてリンゴ果汁、酵母エキス、アミノ酸、ビタミン、金属塩等を加えることが出来る) => 殺菌 => スターター接種 => 培養 => 遠心分離 => 殺菌 => 充填 => 冷却 => 出荷。当業者であれば、本明細書の記載を参照して上記プロセスに適宜変更を加えることが可能であろう。
【0016】
本明細書中において、「清澄トマト果汁」とは、上記のトマト果汁について沈殿物を生じないように清澄化処理を施したものを指し、このような清澄化処理として、酵素処理、遠心分離及び濾過等の工程を単独で又は組合せて用いることが出来る。一例として、清澄化処理前の濁度が約40000Helmであるトマト果汁を清澄化処理し、200Helm以下の清澄トマト果汁を得ることができる。清澄トマト果汁を用いることにより、乳酸発酵トマト液のみからでは得られないトマトの新鮮な香りを付与することができ、かつ、アルコール度数の高い飲料であっても、色調や味の変質及びオリの発生が抑制され、加熱殺菌しても安定なトマト果汁含有アルコール飲料を得ることが出来る。
【0017】
酵素処理は、トマト果汁中の植物組織を崩壊するために行い、ペクチナーゼ、ペクトリア−ゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、プロテアーゼ、アミラーゼ、リパーゼ等を用いて、各酵素の至適pH、至適温度付近で行うことが出来る。例えば市販のペクチナーゼ酵素製剤を用い、ペクチナーゼ酵素をトマト果汁に添加し、適切な温度、pHで一定時間保持するペクチナーゼ処理によって酵素処理を行うことが出来る。ペクチナーゼ酵素製剤は一般に微生物を培養することによって産生され、この培養液から酵素を単離・精製されたものが酵素製剤として市販されている。培養に用いられる微生物として、例えばAspergillusnigerが挙げられる。同時にセルラーゼ等を作用させてもよい。ペクチナーゼ処理により、トマト果汁中の繊維質が消化される。上記酵素処理に続く濾過処理は、当業者に公知の手法、例えば珪藻土濾過、膜濾過等により行うことができる。
【0018】
清澄トマト果汁の製造プロセスの一例を以下に示す:トマト果汁の希釈 => 酵素処理(ペクチナーゼ) => 珪藻土濾過 => 濃縮=> 殺菌=> 充填。当業者であれば、本明細書の記載を参照して上記プロセスに適宜変更を加えることが可能であろう。
【0019】
一態様において、本発明のトマト果汁含有アルコール飲料は、上記(A)乳酸発酵トマト液及び(B)清澄トマト果汁を、同糖度が得られる量に換算した場合に(A):(B)=1:50〜50:1、好ましくは1:10〜10:1、より好ましくは1:3〜3:1、さらに好ましくは1:2〜2:1、特に1:1の重量比で含む。(A)乳酸発酵トマト液が多い場合、トマトの新鮮な香りは弱く、旨味が強い飲料が得られ、一方(B)清澄トマト果汁が多い場合、トマトの新鮮な香りが強く、旨味の弱い飲料が得られる傾向がある。また、本発明の飲料における(A)乳酸発酵トマト液、(B)清澄トマト果汁等の配合量決定には、それぞれの糖度を考慮する。本明細書中において、「同糖度が得られる量に換算」とは、特に濃縮原料を用いた場合等に、原料の配合量を、所定の糖度が得られる量に換算することをいう。例えば後述の実施例に記載の手法、特に表3-2、表5-2の記載を参照し、上記(A)及び(B)それぞれを日本農林規格(JAS)規定の濃縮前のトマト果汁(ストレート果汁)の基準糖度である4%(Bx.4)が得られる量に換算し、上記の配合比を決定することができる。不足分や超過分は水の配合量で調整する。
【0020】
トマトの香味特徴を充分に表現するという観点から、本発明のトマト果汁含有アルコール飲料の、トマト果汁含有量は1w/w%以上、好ましくは10w/w%以上、より好ましくは30w/w%以上、さらにより好ましくは50w/w%以上である。本明細書中におけるトマト果汁含有量は、上記JAS規定のトマトのストレート果汁の基準糖度である4%(Bx.4)が得られる量に換算して計算する。例えば濃縮トマト果汁(濃縮清澄トマト果汁を含む)を用いる場合、Bx.20の濃縮トマト果汁を10w/w%配合した場合のトマト果汁含有量は50w/w%である。
【0021】
本明細書中において、「トマト果汁含有アルコール飲料」とは、トマト果汁を含み、さらにエタノールが含まれる飲料をいう。色調の安定化という観点から、含有されるトマト果汁の濁度は、好ましくは10,000Helm以下、より好ましくは1,000Helm以下、さらに好ましくは200Helm以下が望ましい。このような濁度のトマト果汁を得るべく、本発明のトマト果汁含有アルコール飲料に含有されるトマト果汁中の前記清澄トマト果汁量を適宜規定することができる。例えば、含有されるトマト果汁中の、好ましくは50%以上、より好ましくは75%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上が、前記清澄トマト果汁である。アルコール飲料は、日本の酒税法で定められるものであれば特に限定されないが、トマトの香味特徴の表現及び微生物管理の観点からは甘味果実酒に分類されるものが好ましい。
【0022】
本発明の一態様において、上記の方法で得られた乳酸発酵トマト液及び清澄トマト果汁を、アルコールと混合する工程を含み、所望により、安定化リコピンを添加する工程をさらに含む製造方法により、トマト果汁含有アルコール飲料を製造することができる。また、本発明のトマト果汁含有アルコール飲料には、所望により、酸化防止剤、糖類、酸味料、色素、香料、スパイス等を適宜添加することが出来る。
【0023】
トマト果汁含有アルコール飲料の製造プロセスの一例を以下に示す:アルコール(アルコール度数12%)、糖類、酸味料、水を混合 => アルコール(アルコール度数60%、香料、スパイス含)、乳酸発酵トマト液、清澄トマト果汁、酸化防止剤をさらに混合 => 色素をさらに混合 => ストレーナー濾過 => 瓶詰 => 加熱殺菌 => 冷却。濾過により飲料の香味品質に影響を与え得るという観点からは、濾過回数の少ない飲料の製造方法を提供可能であることも、本発明の特徴の1つである。
【0024】
本明細書中において、アルコールとは、特別な場合を除き、飲用アルコールを指し、純粋なアルコール、アルコールを含む飲用可能な溶液及びアルコールを含み食品製造に使用可能な溶液を含む。また、アルコール度数は、溶液100ml中に含まれる純粋アルコールの量(容積/容積)を表したものである。
【0025】
アルコールは、種類、製法、原料等特に限定されない。例えば、原料用アルコール(糖蜜を原料とするニュートラルスピリッツ、穀物を原料とするグレーンスピリッツ等)、蒸留酒(焼酎、ウイスキー、ブランデー、ジン等)、醸造酒類(清酒、果実酒等)、発泡酒、混成酒類(合成清酒、甘味果実酒、リキュール等)等の飲用可能なアルコールを、1種又は複数を組合せて用いることが出来る。微生物管理や香味等の観点からは、果実酒、特に白ワインをアルコールの一部又は全部として用いることができる。本発明の一態様において、アルコールとして白ワイン及びニュートラルスピリッツを単独で又は組合せて用いることで、微生物管理や香味等の観点において特に好ましいトマト果汁含有アルコール飲料を得ることができる。白ワインは、ワイン特有のまろやかな味わいがトマトの旨みと非常に相性がいいだけでなく、甘味果実酒にすることで、含有亜硫酸によって微生物管理の観点からより安定な飲料(特に容器詰飲料)を製造することが出来る。
【0026】
本発明のトマト果汁含有アルコール飲料は、香味、安定性、微生物管理等の観点から、アルコール度数1〜25%、好ましくは4〜18%、より好ましくは8〜14%である。アルコール度数が高いとトマトの香味特徴が感じられにくく、アルコール度数が低いと微生物が発生しやすくなる。
【0027】
上記の糖類は、飲食品製造の分野で用いられるものであれば限定されず、例えば、砂糖、果糖、ブドウ糖、果糖ブドウ糖液糖等を1種又は複数組合せて用いることが出来る。トマトの香味特徴を表現するという観点から、異性化糖(ブドウ糖:果糖=1:1)を主として用いることができる。原料とするトマトの品種、収穫時期等によりトマト果汁の糖度が変化することを考慮し、適宜糖類の配合量を調節する。
【0028】
一態様において、本発明は、糖度0〜30%、好ましくは3〜20%、より好ましくは10〜14%のトマト果汁含有アルコール飲料を提供する。糖度は、当業者に公知の手法を用いて測定することが出来る。糖度は、低すぎると味わいが水っぽく感じられ、逆に高すぎるとトマトのフレッシュな爽やかさが損なわれる。
【0029】
上記の酸味料としては、例えば、クエン酸、リンゴ酸、リン酸等を使用することが出来る。原料とするトマトの品種によりトマト果汁の酸度が変化することを考慮し、適宜酸味料の配合量を調節する。一態様において、本発明は、酸度がクエン酸換算で0〜2.5%、好ましくは0.2〜2.0%、より好ましくは0.7〜1.1%である、トマト果汁含有アルコール飲料を提供する。酸度は、当業者に公知の手法を用いて測定することが出来る。酸度は、糖度とのバランスを見ながら調節していくが、糖度に対して少なすぎると甘みを強く感じ、トマトのフレッシュ感がなくなる。逆に、酸味が強すぎると、酸っぱいトマト飲料となってしまい、トマトの旨みやまろやかさを感じにくくなる。
【0030】
一態様において、本発明は、pH2.5〜5.0、好ましくはpH3.0〜4.2、より好ましくはpH3.5〜3.8であるトマト果汁含有アルコール飲料を提供する。トマト果汁はpHが下がりにくいため、微生物管理の点で注意を要する。
【0031】
本発明のトマト果汁含有アルコール飲料には、所望により、色素を添加することが出来る。飲料の香味と一致する外観を得るという観点から、トマト由来の色素であるリコピンを添加することが望ましい。ここで、リコピンは溶液中で非常に不安定であり、リコピンを含有するトマト果汁やトマトペーストをそのまま飲料に配合する、又は単にそれらから単離精製したリコピン(天然リコピン)を飲料に配合すると、赤色の沈殿、退色、ネックリング等が生じることが知られる。従って、本発明のトマト果汁含有アルコール飲料に含まれるリコピンは、溶液中での安定性を高めたリコピンであることが好ましい。
【0032】
本明細書中において、安定化リコピンとは、本発明の飲料中での経時での安定性が天然リコピンと比較して高い、すなわち、経時での色調変化の少ない、経時での分散安定性の高い、リコピンを指す。そのような安定化リコピンの一例としては、特許文献6に記載のように、結晶を微粉砕し、分散剤を添加し、均質化する、等の手法により、溶液中での安定性を高めた結晶分散型製剤であるリコピンが挙げられる。入手可能な安定化リコピンとしては、例えば三栄源FFI(株)、稲畑香料(株)、イスラエルLYCO RED社等から市販されているものが挙げられる。好ましい態様として、本発明のトマト果汁含有アルコール飲料は、上記安定化リコピン以外のリコピン(天然リコピン等)含有量が、沈殿発生量以下であり、例えば後述の実施例に記載のように、50℃で14日静置保存しても沈殿が発生しない。リコピン、安定化リコピンの配合量は、所望の飲料の色調により、例えば後述の実施例の記載を参照して決定し、一態様において、リコピン換算で0.01w/w%以上、好ましくは0.05w/w%以上、より好ましくは0.15w/w%以上である。
【0033】
上記の酸化防止剤は、飲食品製造の分野で用いられるものであれば限定されず、例えば、ビタミンC、亜硝酸塩等を1種又は複数組合せて用いることが出来る。酸化防止剤の添加は、リコピンの安定性向上にも寄与する。リコピン安定性向上という観点から、例えば、ビタミンCを200mg/L以上、亜硫酸塩を総亜硫酸濃度として200〜250mg/L程度添加することが出来る。
【0034】
本発明のトマト含有アルコール飲料を容器詰する場合の装容器に特に制限はなく、瓶、缶、紙、ペットボトル等、種々の形態の容器を利用することができる。飲料の色調変化及びオリの発生が抑えられているため、瓶詰飲料としても何ら問題はない。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、トマト果実をかじった時に感じる新鮮な香味を充分に有し、トマトジュースに特徴的な青臭い好まれない香味は除去された飲料であって、かつ適度な酒感とトマトの旨みとのバランス、酸味と甘みとのバランスがしっかりと感じられる新しい香味のトマト果汁含有アルコール飲料を提供することができる。さらに、アルコール存在下においても、トマトの真っ赤な色が保たれ、トマト果汁を大量に配合しても沈殿物が生じることなく、微生物の発生も抑えられた、安定な商品価値の前記飲料を提供することができる。また、本発明の方法によればトマトから好ましい香味のみ取り出し、無駄なく使用することができ、かつさまざまな香味バリエーションを持った飲料の中味設計にも迅速に対応することができる。本発明の方法によれば、原料トマトを一旦分離精製し、再びブレンドに用いるため、原料トマトロットの品質のバラツキにも対応しやすく、製品の品質安定化が容易であるというメリットもある。
【実施例】
【0036】
以下、本発明を実施例に基づいてより具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1:トマト果汁含有アルコール飲料の色調及びオリ安定性
(1-A) トマト果汁含有アルコール飲料の製造方法
表1に示す処方に従い、各原料を混合溶解後、瓶容器に充填密栓をした。その後、瓶容器を湯浴中にて65℃、10分間加熱殺菌し、飲料を製造した。
ニュートラルスピリッツは、糖蜜を原料とし、アルコール度数95%のものを用いた。
濃縮トマトペーストは、トマト果実を加熱・圧搾した後、種子、皮を除去したトマトパルプを濃縮したものである。本実験では、冷凍濃縮トマトペーストBx.37(販売元:キャンベルジャパン(株)、糖度37%、pH 4.4)を用いた。
清澄トマト果汁は、トマトペーストを遠心分離し固形分を除去したトマト果汁にペクチン酵素処理を施し、珪藻土濾過によりオリ(沈殿物)を完全に取り除いたものである。本実験では、三栄源FFI社製のトマト濃縮汁(清澄)NO.17100(販売元:三栄源FFI(株)、糖度60%、酸度(クエン酸として)4.6%、pH 4.1、濁度124Helm)を用いた。
安定化リコピンは、トマトより抽出精製された後、結晶分散化された製剤を用いた。本実験では、三栄源FFI社製のトマトリコピン製剤を用いた。
【0037】
糖度は、アタゴ社製デジタル屈折計 RX-5000αを用いて測定した。濁度は、シグリスト社製濁度計Laboratory Turbidimeter KTL30-2型を用いて測定した。濃縮トマトペースト及び清澄トマト果汁の配合量は、得られる飲料中の糖度が等しくなるよう、その配合量を決定した。
【0038】
【表1】


(1-B) 色調及びオリ安定性試験
上記(1-A)で製造した各トマト果汁含有アルコール飲料を50℃で14日間静置保存した後、その外観観察を行った。その結果、表2に示すとおり、比較例1では、赤色の鮮やかさがなくなり、薄黒く変色し、容器底部に沈殿物の生成が見られた。一方、実施例1では、鮮やかな赤色を保つとともに、沈殿物の生成も一切見られなかった。
【0039】
【表2】


実施例2:乳酸発酵トマト液と清澄トマト果汁との組合せによる香味品質の改善
トマト果汁を乳酸発酵させることによりトマトの青臭い未熟香味は低減するが、このように得られた乳酸発酵トマト液はトマトのフレッシュな香りが少ない。トマト果汁含有アルコール飲料として適切な香味品質を実現するため、乳酸発酵トマト液を清澄トマト果汁と組合せることによる香味品質の改善を検討した。
【0040】
(2-A) トマト果汁含有アルコール飲料の製造方法
表3-1に示す処方に従い、各原料を混合溶解後、瓶容器に充填密栓をした。その後、瓶容器を湯浴中にて65℃、10分間加熱殺菌し、飲料を製造した。
【0041】
乳酸発酵トマト液は、トマトペーストから固形分を遠心分離で除去したトマト果汁に発酵促進剤を加え、乳酸菌を用いて発酵させ、更に遠心分離等の処理を施したものである。本実験では、乳酸発酵トマト液 Bx.20(販売元: 大洋香料(株)、糖度20%、酸度(クエン酸として)1.1%、pH 4.2)を用いた。その他の原料については、実施例1と同様のものを用いた。清澄トマト果汁と乳酸発酵トマト液の配合量は、糖度Bx.4に換算したときの量が表3-2に記載の配合比となるよう決定した。
【0042】
【表3−1】


【0043】
【表3−2】


(2-B) トマト果汁含有アルコール飲料の香味評価
上記(2-A)で製造した各飲料について、専門パネラー4名に試飲してもらい、呈味及び香りについて以下のような評価を得た。
比較例2: トマトのフレッシュさとともに、青臭い未熟香が感じられる。
実施例2-1: 未熟香は比較例2より弱くなり、味わいの厚み、旨みが増している。
実施例2-2: 未熟香は弱く、フレッシュな香りもあり、バランスが良い。
実施例2-3: 未熟香は弱いが、フレッシュさも少ない。ただし、旨みはしっかりとある。
【0044】
また、表4に記載の各評価項目について5段階で評価をした。各項目とも、強く感じる場合を5、ほとんど感じない場合を1とした。各項目における評価の平均値を表4に示す。
【0045】
【表4】


実施例3:新規トマト果汁含有アルコール飲料
実施例1及び2で得た知見をもとに、トマト果汁含有アルコール飲料を製造し、その特性を評価した。
【0046】
(3-A) トマト果汁含有アルコール飲料の製造
表5-1に示す処方に従い、各原料を混合溶解後、瓶容器に充填密栓をした。その後、瓶容器を湯浴中にて65℃、10分間加熱殺菌し、飲料を製造した。各原料は実施例1及び2と同様のものを用いた。トマトペースト、清澄トマト果汁と乳酸発酵トマト液の配合量は、糖度Bx.4に換算したときの量が表5-2に記載の配合比となるよう決定した。
【0047】
【表5−1】


【0048】
【表5−2】


(3-B) トマト果汁含有アルコール飲料の香味評価
上記(3-A)で得た各飲料について、専門パネラー4名に試飲してもらい、呈味及び香りについて下記のような評価を得た。
比較例3: トマトのフレッシュはあるが、青臭い未熟香が感じられる。トマトの味わいが薄く、旨みに乏しい。
実施例3: 青臭い未熟香は少なくなり、トマトの味わい、旨みがしっかりと感じられる。トマトのフレッシュさも適度に感じられる。
【0049】
(3-C) 色調及びオリ安定性試験
上記(3-A)で得た各飲料について、50℃で14日間静置保存した後、その外観観察を行った。その結果、表6に示すとおり、比較例3では、赤色の鮮やかさがなく、容器底部に沈殿物の生成と容器上部に透明な部分(上透き)が見られた。一方、実施例3では鮮やかな赤色が維持され、沈殿物の生成も一切見られなかった。
【0050】
【表6】


(3-D) 製品一般分析値及び有機酸分析結果
上記(3-A)で得た各飲料について、一般分析値を表7に、有機酸分析の結果を表8に示す。有機酸分析は以下の条件で行った。
[使用機器] Hewlett Packard 110 series 液体クロマトグラフィー、[カラム] BIO-RAD HPX-87H Ion Exclusion Column 300mm×7.8mm、[溶媒] 2.5mmol/L硫酸、[カラム温度] 40℃、[流速] 0.6ml/min、[波長] 0min〜214nm,8.8min〜230nm,11.0min〜214nm、[リテンションタイム] クエン酸=7.75min,酒石酸=8.23min,リンゴ酸=9.38min,コハク酸=11.90min,乳酸=12.54min,フマル酸=14.18min。
【0051】
【表7】


【0052】
【表8】


【出願人】 【識別番号】000001904
【氏名又は名称】サントリー株式会社
【出願日】 平成19年3月5日(2007.3.5)
【代理人】 【識別番号】100089705
【弁理士】
【氏名又は名称】社本 一夫

【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎

【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰

【識別番号】100080137
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 昭男

【識別番号】100096013
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 博行

【識別番号】100134876
【弁理士】
【氏名又は名称】白石 真琴


【公開番号】 特開2008−212070(P2008−212070A)
【公開日】 平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願番号】 特願2007−54922(P2007−54922)