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【発明の名称】 アルコール飲料の原料となる蕎麦や米や麦などの穀類および果実を、寒流や冷水や積雪の中及び雪上にさらす事を特徴とする、寒さらし加工処理をした穀類および果実を原料としたアルコール飲料の製造方法
【発明者】 【氏名】小林 一郎

【要約】 【課題】多様化する嗜好に対応し、原料の特長を今まで以上に活かした、従来製品より優れる、香味良好な風味を有する日本酒、焼酎、ウィスキー、果実酒、ビールなどのアルコール飲料の製造方法を提供する。

【解決手段】蕎麦、米などの穀類および果実を、水や雪を利用した寒さらし加工処理することにより、アクが抜け、更には水中及び雪中に含まれる物質を吸収した蕎麦、米などの穀類および果実のアルコール飲料製造の原料を得られる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蕎麦や米や麦などの穀類および果実を原料とするアルコール飲料の製造おいて、蕎麦や米や麦などの穀類および果実の原料を、寒流や冷水や積雪の中及び雪上にさらす処理からなる、寒さらし加工処理を行うことを特徴としたアルコール飲料の製造方法。
【請求項2】
蕎麦や米や麦などの穀類および果実を原料とするアルコール飲料の製造おいて、蕎麦や米や麦などの穀類および果実の原料を、寒流や冷水や積雪の中及び雪上にさらす処理からなる、寒さらし加工処理を行うことによって得られたアルコール飲料。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、寒流や冷水や積雪の中及び雪上にさらす事を特徴とする、寒さらし加工処理を行い、原料の蕎麦や米や麦などの穀類および果実のアクを抜き、香味や風味や色合い良好なアルコール飲料を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
蕎麦や米や麦などの穀類および果実は、焼酎や日本酒などの原料として古くから日本人になじみの深いものである。
これら多くの穀類および果実は、これをそのまま洗浄しただけでアルコール飲料の原料として加工され、そのデンプン質を糖化し発酵させて得られる焼酎や日本酒やビールやウィスキーなどのアルコール飲料は古くから製造されているが、その原料が本来持っている香味や風味などは、アクの成分を含んでいるため、特徴を十分活かしきれているとはいえない。また消費者の嗜好が多様化している昨今、原料の特性をより以上に活かした、新しい酒質のアルコール飲料が求められている。
【特許文献1】特許公開2006−180839
【特許文献2】特許公開2006−101751
【特許文献3】特許公開2003−274921
【特許文献4】特許公開2000−189146
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
古くから食品素材を、寒流にさらす、冷水にさらす、積雪の中及び雪上にさらすなどの、いわゆる寒さらし処理による加工技術も各種食材製造に応用されてきた。
しかしながら、焼酎や日本酒などアルコール飲料の製造においては、原料を寒流にさらす、冷水にさらす、積雪の中及び雪上にさらすなどの加工技術は応用されておらず、寒さらし効果の検証や応用した加工技術も確立されたものとなっていないので、この寒さらし処理した原料によるアルコール飲料の製造方法を提供することにある。
【0004】
本発明の目的は、寒流にさらす、冷水にさらす、積雪中にさらす、雪上にさらすなどのいわゆる寒さらし処理による加工技術を踏まえ、独自に発見考案検証した寒さらし加工処理技術によって、多様化する嗜好に対応した穀物など各種アルコール飲料原料が本来持つ特徴の、香味や風味や色合いやまろやかさなどを十分に引き出した、アルコール飲料の提供をすることにある。
【0005】
日本各地で蕎麦や米や麦などの原料を利用したアルコール飲料の製造が地域振興の一環などとして行われているが、従来の類似製造品は従来の製造法で製造されている為、有意な差を生じるに至っていない。
このため新たな方法が求められ、蕎麦や米や麦などの原料を、寒流にさらす、冷水にさらす、積雪中にさらす、雪上にさらすなどの、いわゆる寒さらし処理による新たなアルコール飲料の製造方法を提供することで、地域振興の一助を行うことにある。
【0006】
上述の問題点を解決する為に、新たな製造方法の開発が求められ、これを解決した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、蕎麦種子を冷水に漬け込み、寒さらし処理を行った蕎麦種子を原料として、蕎麦焼酎を製造することにより、アクの抜けた新規な香味や風味や色合いやのど越しやまろやかさを持つ蕎麦焼酎を製造できることを見出した。この事例を端緒として本発明を完成させた。
【0008】
本発明は蕎麦や米や麦などアルコール飲料原料となる穀類および果実を、本来の生存環境とは異なる遭遇することがない環境下の、寒流や冷水や積雪の中及び雪上にさらし、水温の低い水中あるいは水分中に没した環境下に長時間遇わせることにより、原料となる穀類および果実などが生命体として本来持っている生命維持能力や自己防衛能力などの環境適応能力を人為的に生み出し、原料となる類および果実などが、水中あるいは水分中に没して水温が低くなると、自らの生命維持活動に必要な栄養成分を取捨選択し始め、アクや苦味などの原因となるマグネシウムを排出し、甘みを増幅させるカルシウムを水中から吸収することを繰り返す活動を発見し、この寒さらしを行える厳寒期または同一環境を人為的に作り出し、寒さらし効果を有効に出現させ、これらの寒さらし加工処理したアルコール飲料原料を利用した、香味や風味豊かなアルコール飲料の製造方法を完成させた。
【発明の効果】
【0009】
本発明の蕎麦や米や麦などアルコール飲料原料となる穀類および果実を、寒流や冷水や積雪の中及び雪上にさらす事を特徴とする寒さらし加工処理を行ったアルコール飲料原料などを利用して製造したアルコール飲料は、寒さらし処理の原料となる穀類などが生命体として本来持っている生命維持能力や自己防衛能力などの環境適応能力の発揮により、アクや苦味などの原因となるマグネシウムを排出し、甘みを増幅させるカルシウムを水中から吸収し、原料特有のアクや青臭さや苦味や辛味やえぐみが抑えられた原料本来の風味を生かした、上品な甘さやまろやかさや香味を伴ったアルコール飲料となる。
【0010】
たとえば本発明の寒流や冷水や積雪の中及び雪上にさらす事を特徴とする、寒さらし加工処理を行った玄蕎麦を使用して製造した蕎麦焼酎は、寒さらし処理の原料を使用しない従来の玄蕎麦のままを使用した蕎麦焼酎とは明らかに異なり、原料本来の風味を活かしながら原料特有のアクや青臭さや苦味や辛味やえぐみなどが抑えられた原料本来の蕎麦の上品な甘さ、まろやかさ、香味、色合いを伴ったアルコール飲料となる。
【0011】
たとえば本発明を米が原料となる日本酒製造に適用すれば、香味や甘さやまろやかさなどの品質向上について、蕎麦焼酎の事例と同等の効果を生むだけでなく、日本酒製造時に於ける特徴である、香味やまろやかさなどを生じさせるため行っている従来からの精米歩合が改善する。
つまり、従来からの日本酒製造過程においては、精米時には原料米の精米歩合を50%前後にして、アクやえぐみなどを生じさせている部分である米の外側部分を削り取ることにより、その部分に含まれるアクやえぐみなどを生じる部分を除去して、芯部分のみを取り出して、これを原料として製造し、良好な香味やまろやかさなどの品質を生じさせていた。
しかし、本発明の寒さらし処理を適用すれば、米の外側部分に含まれるアクやえぐみなどを生じる成分を取り除くことが出来るので、精米時に外皮部分を取り除くだけの精米歩合がたとえ10%であっても、旧来の50%前後精米した製法と同等以上の香味やまろやかさなどを伴う日本酒製造ができる。
このため原料米を寒さらし処理すれば、同じ量の原料米から得られる日本酒の製造量が増大するため、原料の効率的利用が可能となる。
【0012】
本発明者は居住地近隣に、寒さらし処理加工に適する環境を探索して利用し、これまで価値が低いと見られていた山間地に新たな利用価値を付加した。
【0013】
アルコール飲料原料となる、寒さらし処理を行った場合の玄蕎麦に含まれる金属成分を分析することにより本発明の効果を検証した。
1.検証方法
玄蕎麦1.50g、蕎麦殻1.00gを採り、水洗し100ml三角フラスコにいれタンク設置場所の川の水100mlを加える。フラスコは摂氏1.5度の冷蔵庫に静置し、ときどき混和する。期間は14日間。
2.それぞれの浸出液の上澄み25mlを取り、硝酸2mlを加え、加熱分解を行う。
ICP発光分光光度法などにより、金属成分を測定し、空試験との差を求め溶出量とする。
3.検証者 堀邦昌(環境計量士:登録番号 第環4380号)
4.検証結果を表1に示す。
【0014】
【表1】


1.一番多く溶出したのは、水に溶けやすいカリウムであった。
2.アク、苦味の主原因となるマグネシウム類、カリウムは玄蕎麦から水中へ溶出し、水中のカルシウムは吸着された。
【0015】
本発明の方法により製造した蕎麦焼酎を、製造者、販売者、購入者の、試飲者合計100人に飲んでもらい、官能検査を実施した。検査結果を、表2に示す。
【0016】
【表2】


特徴として感じた内容
1.香りが良い(馥郁とした香り)
2.のどに焼酎特有の刺激がない
3.まろやかで甘い
4.水などで割っても風味が損なわれない
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0018】
本発明の寒流や冷水や積雪の中及び雪上にさらす事を特徴とする、寒さらし加工処理することを特徴としたアルコール飲料の製造の中心をなす、冷水に漬け込み、水の流下による寒さらし加工処理工程において、蕎麦種子を原料として蕎麦焼酎を製造する環境としては、
1.摂氏1〜3度の冷水で清流の導水、排水ができること。
2.上流に水質汚濁の原因となる人家、人工的排水がないこと。
3.アルコール飲料製造の原料を多量に投入できる容器を設置する場所が確保できること
4.上記容器設置場所で原料投入、搬出などの作業が容易にできること
5.厳寒期の作業となるため、容器設置場所に至る道路、容器周辺の除雪が容易にできること
6.容器設置場所へ原料運搬のため、小型トラックなどの自動車が容易に出入りできること
7.作業者の移動手段の自動車が必要台数駐車できること
8.工場製作の場合は、上記と同じ条件が揃えば可能である。
これらが必要となる。
【0019】
本発明を実施する際、次の点に留意しなければ十分な効果を得ることができない。
1.寒さらしする原料を袋に入れたあと、容器に投入せず直接川底に沈めると、原料が水生生物や川特有の川魚臭さの匂いを吸着することにより、優良な香味などを損なうため、寒さらし専用の容器を設置し、これを使う。
2.原料の蕎麦種子は、摂氏4度以上の水温で寒さらし処理を行うと、発芽して芽が伸び始める。このため水中に没する期間が短くなり、本発明の効果を生まなくなり、原料として不適切なものとなる。
3.使用する水は、溜めたままで入れ替えをしないと水が酸欠状態となり、原料の穀類及び果実が腐敗し始め、原料として不適切なものとなる。
【0020】
本発明と類似した方法に、摂氏零度の氷温水や唯単に寒風の寒にさらすことを利用した原料および加工品の品質向上を試みる例があるが、同じ呼び方の寒さらしではあるが、以下の理由により、本発明の寒さらし加工処理することを特徴としたアルコール飲料の製造では、これを行わない。
1.摂氏零度の氷温水を利用した場合は、食品原料の本来持つ生命維持活動が摂氏零度により休眠状態となり、寒さらしの効果を減少させ、本発明の効果を減退するためこれを行わない。
2.寒風にさらす場合も、本発明は原料を水温の低い水中あるいは水分中に没した環境下に遇わせることにより、原料となる穀類および果実などが生命体として本来持っている生命維持能力や自己防衛能力などの環境適応能力を発揮させる事を目的としているので、唯単に寒風を利用した加工は、本発明の効果を生まないためこれを行わない。
【0021】
アルコール飲料の原料を寒さらし加工処理する場合、発芽が促されない限り、さらす水温が高いほどその寒さらし効果は早く現れる。
【0022】
アルコール飲料の原料となる穀類および果実を、寒流や冷水や積雪の中及び雪上にさらす事を特徴とする寒さらし加工処理する場合、その原料が発芽し始める水温は、原料の本来の原産がどこであったのかで違いが生まれ、原産の違いにより、蕎麦のような北方系は水温が低くても発芽し、米のような南方系は水温が高くても発芽しない。このためそれぞれの原料をさらす水温には特段の注意を要する。
【実施例1】
【0023】
玄蕎麦を原料として冷水に漬け込み、水の流下による、寒さらし蕎麦焼酎の製造を行った。
【0024】
玄蕎麦は水に晒しやすいように網状の袋に入れる。この際、玄蕎麦が水分を吸収し膨張するので、袋の容量の半分程度とする。
【0025】
玄蕎麦を投入し水に浸すため、ホーロー製タンクの容器を設置する。この際外気が接するタンク外部を断熱する。外気温が摂氏零度以下に下がると、タンク内部が寒さの為に外周部が凍り、袋が接していると袋が凍り付いて離れなくなるので。
【0026】
容器に玄蕎麦を入れた袋を投入し、袋が浮き上がり浮遊しないように固定し、水温摂氏1〜3度の新しい水を常に供給し、水の入れ替えを図る。
【0027】
水中に浸された玄蕎麦が生物として本来持っている自己防衛能力、環境適応能力により、成分を変化させる寒さらし効果を生じる期間として、おおむね7日間から14日間掛かる。この間導水と排水を続ける。
【0028】
容器設置場所の気温が下がり、外気気温が氷点下8度以下になると、水温は水路やタンク内では摂氏1度であるが、たとえ流水であっても導水路や排水路やタンクの外気に接する外周部分の水が凍り始める。凍った場合は速やかに氷を撤去し、期間中は適正な導水、排水を維持する。
【0029】
上記期間経過後、容器から玄蕎麦の袋を取り出し乾燥作業を行う。
【0030】
乾燥後の玄蕎麦を寒さらし蕎麦の原料とする場合は水分比率14%程度まで乾燥させる。
【0031】
乾燥後のアルコール飲料製造作業は通常の工程に従う。
【実施例2】
【0032】
実施例1と同様にして、寒さらしを行った米等の穀類を原料とするアルコール飲料も同等に考えられる。
【実施例3】
【0033】
実施例1、実施例2と同様にして、寒さらしを行った果実を原料とするアルコール飲料も同等に考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、寒さらし蕎麦焼酎製造や寒さらし日本酒製造等の事例の他、穀類および果実のアルコール飲料のどんなものにも利用できるが、寒さらし作業工程以外は、通常のアルコール飲料製造工程などに、なんらの影響を与えるものでなく、寒さらし作業工程以外に、特別な設備、加工方法を要するものではない。
このため、従来の設備、加工方法などに負荷なく、新たな付加価値を伴うアルコール飲料製造方法として有効である。
【出願人】 【識別番号】500143874
【氏名又は名称】小林 一郎
【出願日】 平成18年12月4日(2006.12.4)
【代理人】
【公開番号】 特開2008−136472(P2008−136472A)
【公開日】 平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願番号】 特願2006−357059(P2006−357059)