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【発明の名称】 発泡性アルコール飲料の製造方法
【発明者】 【氏名】高橋 浩一郎

【要約】 【課題】製造上の問題を引き起こすことなく、香味、泡持ちがすぐれた発泡性アルコール飲料の製造方法、及び、該製造方法により製造した発泡性アルコール飲料の提供。

【解決手段】発泡性アルコール飲料の製造方法において、重量平均分子量10,000〜50,000のタンパク分解物を、酵母による発酵前の発酵原料液の一部として用いること、を特徴とする発泡性アルコール飲料の製造方法、及び、該製造方法により製造した発泡性アルコール飲料。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡性アルコール飲料の製造方法において、重量平均分子量10,000〜50,000のタンパク分解物を、酵母による発酵前の発酵原料液の原料の一つとして用いること、を特徴とする発泡性アルコール飲料の製造方法。
【請求項2】
前記タンパク分解物を、発酵原料液の煮沸処理前又は煮沸処理中に混合することを特徴とする、請求項1記載の発泡性アルコール飲料の製造方法。
【請求項3】
前記タンパク分解物の重量平均分子量が13,000〜43,000である、請求項1又は2記載の発泡性アルコール飲料の製造方法。
【請求項4】
前記タンパク分解物の重量平均分子量が15,000〜35,000である、請求項1又は2記載の発泡性アルコール飲料の製造方法。
【請求項5】
前記タンパク分解物が、大豆タンパク分解物である、請求項1〜4のいずれか記載の発泡性アルコール飲料の製造方法。
【請求項6】
前記タンパク分解物の混合が、液糖、窒素源、ホップ、色素、及び温水からなる群より選ばれる1以上と共になされるものである、請求項1〜5のいずれか記載の発泡性アルコール飲料の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか記載の発泡性アルコール飲料の製造方法によって製造された発泡性アルコール飲料。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパク分解物を用いた発泡性アルコール飲料の製造方法及び該製造方法により製造した発泡性アルコール飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ビールに続く新たなアルコール飲料として、米やコーンスターチ等の麦芽以外の原料を多く使用した発泡酒や、麦芽を一切使用しないビール様発泡性アルコール飲料(ビールのような風味を有する発泡性アルコール飲料)が開発された。しかしながら、発泡酒やビール様発泡性アルコール飲料は、ビールに比べ、香味や泡品質等が劣るという問題がある。特に、泡は、ビール類にとって重要な外観品質であり、泡持ちが劣ることは、消費者にとっての発泡酒等の魅力を半減させてしまうものであり、泡品質の改善が強く望まれている。
【0003】
発泡酒等の香味や泡品質等の問題を解決すべく、種々の方法が開示されている。例えば、ビールの泡は麦芽由来の泡タンパク質によるものであるため、起泡性タンパク質の欠乏を補うべく、大豆タンパクを添加することにより、泡持ちを改善する方法がある。
【0004】
一方、大豆タンパクの分解物を用いた方法として、例えば、(1)ビールや雑酒のような発酵アルコール飲料の製造方法において、原料の一部に小麦グルテンや大豆タンパクのようなビール酵母高資化性アミノ酸高含有蛋白原料の分解物又はその調製物を用いることにより、ビール酵母による発酵を促進して、味覚・風味を増進させ、異臭や未熟臭のない、すっきりとした味覚であり、しかもボディ感のある発酵アルコール飲料を製造する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
その他、(2)平均分子量200〜4,000のペプチドを主発酵の初期以前の時点で発酵原料液に添加して発酵を行うことにより、従来にない香味を有するビールを製造し得ることを特徴とする、新規ビールの製造方法が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2006−158268号公報
【特許文献2】特許第3547532号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、大豆タンパクをそのまま添加すると、液粘性が上がり、濾過が遅延する等の製造上の問題が引き起こされてしまう。また、大豆タンパクは溶解度が低く、利用効率が劣るという問題もある。
一方、該(1)及び(2)の方法により、香味の問題は解決され、かつ、液粘性が下がり、濾過遅延等の問題も解決されるが、特許文献1及び2には、泡品質の向上については一切記載がない。
【0006】
本発明は、製造上の問題を引き起こすことなく、香味、泡持ちがすぐれた発泡性アルコール飲料の製造方法、及び該製造方法により製造した発泡性アルコール飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、大豆タンパクの分解度を指標に検討し、発酵前の発酵原料液の原料の一つとして、適当な大きさのタンパク分解物を用いることにより、製造上の問題を引き起こすことなく、香味、泡持ちがすぐれた発泡性アルコール飲料が製造できることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、発泡性アルコール飲料の製造方法において、重量平均分子量10,000〜50,000のタンパク分解物を、酵母による発酵前の発酵原料液の原料の一つとして用いること、を特徴とする発泡性アルコール飲料の製造方法を提供するものである。
また、前記タンパク分解物を、発酵原料液の煮沸処理前又は煮沸処理中に混合することを特徴とする、発泡性アルコール飲料の製造方法を提供するものである。
また、本発明は、前記タンパク分解物の重量平均分子量が13,000〜43,000である、発泡性アルコール飲料の製造方法を提供するものである。
また、本発明は、前記タンパク分解物の重量平均分子量が15,000〜35,000である、発泡性アルコール飲料の製造方法を提供するものである。
また、本発明は、前記タンパク分解物が、大豆タンパク分解物である、発泡性アルコール飲料の製造方法を提供するものである。
また、本発明は、前記タンパク分解物の混合が、液糖、窒素源、ホップ、色素、及び温水からなる群より選ばれる1以上と共になされるものである、発泡性アルコール飲料の製造方法を提供するものである。
また、本発明は、前記いずれか記載の発泡性アルコール飲料の製造方法によって製造された発泡性アルコール飲料を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、泡持ちがすぐれた発泡性アルコール飲料を製造することができる。泡持ちは、消費者が発泡性アルコール飲料を選択する上で重要な要素であり、本発明に係る製造方法により製造された発泡性アルコール飲料には、外観品質上の優位性がもたらされると期待される。
また、液粘性が下がるため、濾過遅延等の製造上の問題が解決され、かつ、過度なエステル類等の香味成分の生成が抑制される結果、本発明に係る製造方法により製造された発泡性アルコール飲料の嗜好性が向上する。
予め、泡持ちに最適な大きさのタンパク分解物を用意し、これを発酵原料液に混合することにより、泡持ちや香味のよい発泡性アルコール飲料を再現性良く製造することができるため、製品の品質管理上も好ましい。
さらに、タンパク分解物の利用効率改善の結果、製造コストの改善も期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明における発泡性アルコール飲料とは、酒税法上の分類にとらわれず、炭酸ガスによる発泡性を有し、かつアルコールを含有する飲料を意味する。したがって、発泡性アルコール飲料には、ビール、発泡酒、麦芽を使用しない発泡性アルコール飲料等が含まれる。このうち、発泡酒又は麦芽を使用しない発泡性アルコール飲料が好ましい。
【0011】
まず、一般的な発泡性アルコール飲料の製造工程を示す。麦芽を原料として使用する場合と、麦芽を原料として使用しない場合を、それぞれ分けて示す。
【0012】
ビールや発泡酒等の麦芽を原料として使用する発泡性アルコール飲料は、次の工程で製造される。まず、主原料である麦芽の破砕物と、副原料である米やコーンスターチ等の澱粉質に、温水を加えて混合・加温し、主に麦芽の酵素を利用して、澱粉質を糖化させる。この糖化液を濾過して得られた濾液にホップを加え、煮沸する。ホップは煮沸開始から煮沸終了前であればどの段階で混合してもよい。煮沸後、ワールプールと呼ばれる槽でホップ粕等の沈殿物を除去し、プレートクーラーにより適切な発酵温度まで冷却する。冷却した濾液に酵母を接種して、発酵を行う。次いで得られた発酵液を熟成させた後、濾過により酵母及びタンパク質等を除去して、目的の発泡性アルコール飲料を得る。
【0013】
麦芽を使用しない発泡性アルコール飲料を製造する場合には、炭素源を含有する液糖、麦又は麦芽以外のアミノ酸含有材料としての窒素源、ホップ、色素等を、温水と共に混合し、液糖溶液を調製する。該液糖溶液を、麦芽を原料として使用する発泡性アルコール飲料の製造工程と同様に、煮沸し、ホップ粕等の沈殿物を除去して冷却後、酵母を接種して発酵させ、濾過することにより、目的の発泡性アルコール飲料を得る。ホップは煮沸開始前ではなく、煮沸中に、該液糖溶液に混合してもよい。
【0014】
本発明において用いられる麦芽の破砕物、米やコーンスターチ等の澱粉質、ホップ、炭素源を含有する液糖、麦又は麦芽以外のアミノ酸含有材料としての窒素源、色素等の原料は、特に限定されるものではなく、通常発泡性アルコール飲料を製造する場合に用いられるものを、通常用いられる量で用いることができる。
【0015】
本発明において用いられるタンパク分解物は、植物由来、動物由来又は微生物由来のいずれのタンパク分解物でもよいが、ことに大豆タンパク分解物が好ましい。大豆は非常に優れた栄養的性質を有しており、消化吸収性も良いため、近年高まっている消費者の健康志向に添うためである。
【0016】
また、本発明において用いられるタンパク分解物は、原料となる植物等の組織や培養液から、抽出・精製分離後、分解することにより得られたものを用いることができる。例えば、大豆タンパク分解物は、大豆を脱脂した脱脂大豆を水抽出して酸沈殿させ、生じた分離大豆タンパクカードを調製し、分解することにより得ることができる。該分解方法はタンパク質を部分分解し得る方法であれば特に限定されるものではない。例えば、熱や圧力による分解、酸やアルカリによる分解、酵素による分解がある。簡便であり、かつ、工程制御しやすいため、酵素による分解が好ましい。
【0017】
該酵素は、タンパク質分解酵素であれば、特に限定されるものではない。市販されているタンパク質分解酵素のうち、いずれの酵素を用いても良く、またこれらを組み合わせて用いることもできる。エキソ型プロテアーゼ活性の高い酵素は、短鎖ペプチドや遊離アミノ酸を多く産生するため、タンパク質を部分分解するためには、エキソ型プロテアーゼ活性の高い酵素よりも、エンド型プロテアーゼ活性の高い酵素の方が好ましい。
【0018】
本発明において用いられる重量平均分子量10,000〜50,000のタンパク分解物は、上記方法により得られる。上記方法により得られたタンパク分解物が、重量平均分子量10,000〜50,000の範囲にない場合は、タンパク分解物を大きさにより分離し、重量平均分子量10,000〜50,000の大きさのタンパク分解物を精製することにより、得ることができる。該分離方法は、タンパク分解物を大きさにより分離できる方法であれば、特に限定されるものではない。例えば、ゲル透過クロマトグラフィー法、濾過法、電気泳動法、又は遠心分離法により、大きさの混在するタンパク分解物から、目的の大きさのタンパク分解物のみを単離精製することができる。
【0019】
さらに、本発明において用いられるタンパク分解物は、重量平均分子量10,000〜50,000のものであれば、どのような大きさのものでもよい。重量平均分子量が10,000未満のタンパク分解物を用いると、泡持ち効果が低く、かつ、エステル類が過度に合成されるため、官能上、好ましくない。一方、重量平均分子量50,000超のタンパク分解物を用いると、液粘性が上がり、発酵後の濾過や出荷のための瓶詰工程が遅延するという製造上の問題が生ずる。特に、重量平均分子量が13,000〜43,000のタンパク分解物が好ましく、重量平均分子量が15,000〜35,000のタンパク分解物がより好ましい。泡持ちが顕著に改善され、かつ、香味成分の過剰な合成が抑制されることにより嗜好性が向上するためである。
【0020】
本発明において用いられる酵母による発酵前の発酵原料液は、上記発泡性アルコール飲料の製造工程において、煮沸処理がなされる溶液に、タンパク分解物が混合されたものである。すなわち、麦芽を原料として使用する発泡性アルコール飲料の場合には、糖化液を濾過して得られた濾液に、また、麦芽を使用しない発泡性アルコール飲料の場合には、液糖等を混合した液糖溶液に、それぞれタンパク分解物を混合したものである。
タンパク分解物は、煮沸前から発酵前の、いずれの段階において発酵原料液に混合してもよく、炭素源を含有する液糖、窒素源、ホップ、色素及び温水等からなる群より選ばれる1以上と共に、混合してもよい。例えば、ホップを煮沸途中に添加する場合には、ホップと共にタンパク分解物を混合してもよい。
【0021】
発酵末期以降に混合すると、混合したタンパク分解物により沈殿や濁りが生じてしまうため、好ましくない。煮沸時の加熱によりタンパク分解物が若干変性され、沈殿や濁りを生ずるタンパク質を沈降除去できることから、泡持ち向上のために混合するタンパク分解物は、発酵原料液の煮沸処理前又は煮沸処理中に混合することが好ましい。
【0022】
発酵原料液の一部として用いるタンパク分解物量は、特に限定されるものではないが、発酵原料液に0.01%(重量/体積)〜3%(重量/体積)が好ましい。
【0023】
より具体的には、例えば、麦芽を原料として使用する発泡性アルコール飲料の場合、通常の製造工程において、糖化液を濾過して得られた濾液の煮沸開始時に大豆タンパク分解物を混合し、95〜105℃で煮沸する。麦芽を使用しない発泡性アルコール飲料の場合には、煮沸釜に必要量の液糖、窒素源、カラメル、ホップ及び温水と共に大豆タンパク分解物を混合し、同様に煮沸する。煮沸時間は特に限定されるものではないが、60分〜100分が好ましい。
【0024】
煮沸処理後、発酵原料液からホップ粕等の沈殿物を除去して冷却し、酵母を接種して発酵・熟成させ、濾過により酵母及びタンパク質等を除去することにより、目的の発泡性アルコール飲料を得ることができる。沈殿物の除去、冷却、発酵等の方法は、特に限定されるものではなく、通常発泡性アルコール飲料を製造する場合に用いられる方法で行うことができる。発酵に用いられる酵母も、特に限定されるものではないが、安全性、入手の容易さ等からサッカロマイセス属に属するものが好ましい。
【0025】
次に分析例、試験例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の分析例、試験例に限定されるものではない。なお、本発明は麦芽を原料として使用しない場合に限定されず、麦芽を原料として使用する場合にも該当する。
【0026】
(分析例)
50mMリン酸緩衝液(1%(重量/体積)SDS、1.2%(重量/体積)NaCl、pH7.0 )を用いて希釈調整した大豆タンパク分解物溶液を、10分間超音波処理を行った後、0.2μmフィルターを用いて濾過した。得られた濾液を、TSK G3000SWXLカラム(東ソー社製)に通し、上記リン酸緩衝液を用いて大豆タンパク分解物を溶出した。大豆タンパク分解物の検出は220nmの吸光度を測定して行った。これにより、各画分に分離精製されたタンパク分解物の重量平均分子量を、GPCソフトウェア(東ソー社製)を使用して得られたチャートから算出した。分子量マーカーは、670,000(Thyrogloblin、和光純薬工業)、67,000(Albumin、SIGMA)、20,150(Trypsin inhibitor from Glycine max ; soybean、SIGMA)、5,807(Insulin、SIGMA)、1,627(Neurotensin、SIGMA)、426(Leupeptin、SIGMA)を用いた。
【0027】
(試験例1)
エンドプロテアーゼ活性を有する酵素の添加量と反応時間を変化させ、重量平均分子量が、約7,000、約13,000、約25,000、約43,000、及び約55,000の大豆タンパク分解物を得た。
【0028】
液糖40kg、酵母エキス0.5kg、カラメル0.2kg、ホップ0.02kg、及び上記方法で得た大豆タンパク分解物0.5kgを混合し、温水を約160L加えることにより、約200Lの発酵原料液を調整した。該発酵原料液を100℃で90分間煮沸した後、ワールプールでホップ粕を除去した。除去後の発酵原料液約180L(糖度14%)に温水20Lを加え、糖度12.6%に調製した後、プレートクーラーにより5℃まで冷却して、冷却した発酵原料液約170リットルを得た。該冷却済発酵原料液を発酵タンクに移し、液汁1mlあたり25×106個の泥状酵母を接種し、10℃で168時間発酵を行った。得られた発酵液を、−1℃で7日間熟成(後発酵)させた。得られた発酵液をキャンドルフィルターを用いて珪藻土濾過を行い、酵母及びタンパク等を除去し、目的の発泡性アルコール飲料(アルコール度5%、麦芽使用比率0%)を得た。
【0029】
得られた5つの発泡性アルコール飲料の物理化学分析、官能検査、及び珪藻土濾過試験を行った。表1は物理化学分析の結果を、表2は官能検査の結果を、表3は珪藻土濾過試験の結果をそれぞれ示したものである。
発泡性アルコール飲料の物理化学分析は、ASBC(American Society of Brewing Chemists)及びEBC(European Brewery Convention)の両組織に採用されており、ビール分析の国際基準とされている分析法に準じて行った(ビール酒造組合著、「BCOJビール分析法」1996年)。具体的には、各発泡性アルコール飲料のNIBEM値と粘度を測定し、3種の香味成分(酢酸エチル、イソアミルアルコール、βフェネチルアルコール)を定量した。NIBEM値は、注がれた泡の崩壊速度を電気伝導度で測定したものであり、ビール等の泡持ち評価に一般的に用いられているものである。
官能検査は、やはりビール官能評価の国際基準であるASBC及びEBCの両組織に採用されている官能評価法に準じて行った(ビール酒造組合著、「BCOJ官能評価法」2002年)。具体的には、ビール醸造技術者10名のパネリストで行い、味感、ビールらしい香味(ビールテイスト)や泡の質感について5段階で評価した。
珪藻土濾過試験は、発泡性アルコール飲料を、キャンドル型システムを用いて珪藻土濾過をした場合の、キャンドルフィルターの差圧上昇度合いを測定することにより行った。
【0030】
【表1】


【0031】
物理化学分析結果より、用いた大豆タンパク分解物の重量平均分子量が大きくなるほど、泡持ちが改善され、酢酸エチル等の香味成分が減少することが分かった。特に、重量平均分子量が約13,000以上の大豆タンパク分解物を用いた発泡性アルコール飲料において香味成分が顕著に減少されており、重量平均分子量が約25,000以上の大豆タンパク分解物を用いた発泡性アルコール飲料において泡持ちが顕著に改善されていることが明らかである。一方、粘度に関しては、重量平均分子量が約55,000の大豆タンパク分解物を用いた発泡性アルコール飲料では、重量平均分子量が約43,000以下の大豆タンパク分解物を用いた発泡性アルコール飲料と比較して、急激に高くなっていることが分かった。
【0032】
【表2】


【0033】
官能検査の結果から、重量平均分子量が約7,000の大豆タンパク分解物を用いた発泡性アルコール飲料は、エステル(香味成分)が強く、官能上好ましくないが、重量平均分子量が約13,000以上の大豆タンパク分解物を用いた発泡性アルコール飲料は、良好な官能特性を示し、嗜好性が向上されていることが明らかである。
【0034】
【表3】


【0035】
珪藻土濾過試験の結果、重量平均分子量が約55,000の大豆タンパク分解物を用いた発泡性アルコール飲料では、急激な差圧上昇が認められ、濾過が不能となり、濾過量が大幅に減少することが認められた。したがって、重量平均分子量が50,000超の大豆タンパク分解物を用いると、濾過遅延等の製造上の問題が生ずることが明らかである。
【0036】
以上の試験例の結果から、重量平均分子量が10,000〜50,000程度の大きさの大豆タンパク分解物を用いることにより、濾過遅延等の製造上の問題を引き起こすことなく、泡持ち、香味のよい発泡性アルコール飲料を製造することができることが明らかである。特に、重量平均分子量が15,000〜35,000程度の大きさの大豆タンパク分解物を用いることにより、発泡性アルコール飲料の泡持ちと香味の両方が、顕著に改善されることがわかる。
【0037】
(試験例2)
次に、重量平均分子量が約25,000の大豆タンパク分解物を混合する時期を、煮沸開始時、煮沸中(煮沸終了30分前)、及び、発酵終了時の、それぞれにおいてする以外は、試験例1と同様にして、発泡性アルコール飲料を得た。
【0038】
得られた3つの発泡性アルコール飲料の、物理化学的分析を行った。それぞれの分析は、瓶詰めした最終製品を用いて実施した。具体的には、各発泡性アルコール飲料のNIBEM値と混濁度(EBC)を測定した。測定結果は表4のようになった。
【0039】
【表4】


【0040】
試験例2の結果から、大豆タンパク分解物を、煮沸前又は煮沸中に発酵原料液に混合したほうが、発酵終了後に混合するよりも、泡持ちの良好な発泡性アルコール飲料を得ることができることがわかった。
また、大豆タンパク分解物を発酵終了後に混合した場合の発泡性アルコール飲料は、煮沸処理前又は煮沸処理中に混合したものと比べ、混濁度が高いことがわかった。混濁度が高い、すなわち、濁りのある発泡性アルコール飲料は、外観品質が劣り、好ましくない。したがって、タンパク分解物は、発酵前、特に、発酵原料液の煮沸処理前又は煮沸処理中に混合するほうが好ましいことが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明に係る発泡性アルコール飲料の製造方法は、製造上の問題を引き起こすことなく、香味、泡持ちがすぐれた発泡性アルコール飲料を提供することができるため、発泡性アルコール飲料の製造分野で利用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】麦芽を使用しない発泡性アルコール飲料の製造工程の概略を示したものである。
【出願人】 【識別番号】000000055
【氏名又は名称】アサヒビール株式会社
【出願日】 平成18年12月1日(2006.12.1)
【代理人】 【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄

【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武

【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子


【公開番号】 特開2008−136412(P2008−136412A)
【公開日】 平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願番号】 特願2006−325382(P2006−325382)