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【発明の名称】 アルコール飲料の割り材
【発明者】 【氏名】輿水 精一

【氏名】山田 祐理

【要約】 【課題】アルコール飲料の呈味を向上する割り材を提供する。

【構成】ブナ科コナラ属植物の溶媒抽出物をアルコール飲料用割材に添加する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブナ科コナラ属植物の溶媒抽出液、その濃縮物又は乾燥物のいずれか1種以上を添加した、アルコール飲料の割り材。
【請求項2】
ブナ科コナラ属植物が、スパニッシュオークである請求項1に記載の割り材。
【請求項3】
溶媒抽出液が、エタノール又はエタノール水溶液である、請求項1又は2に記載の割り材。
【請求項4】
水又はソーダ水である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の割り材。







【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、ブナ科コナラ属植物の溶媒抽出液、その濃縮物又は乾燥物のいずれか1種以上を添加した、アルコール飲料の割り材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水市場が急速に拡大し、硬水や軟水、天然水、海洋深層水など種々の水が市販されている。水の美味しさは、水分子の大きさに起因すると言われている。たとえば、天然湧水のように、カルシウムイオンがあると、水分子同士の大きな集団が壊れ、水の分子がカルシウムイオンを取り囲んで、水だけの場合と比較して、分子集団が小さくなる。そして、水の分子集団が小さいと、舌の味細胞(味らい)にすっぽりとはまり込むために美味しく感じる(非特許文献1)。
【0003】
一方、アルコール飲料においても、その分子構造と美味しさについての検討がなされている、例えば、酒の水分子クラスターを人為的に小さくすれば熟成に似た効果が得られるといった報告や、焼酎に割り水を行い一定期間(3日〜1週間)寝かせることにより、焼酎と水がとろりと解け合い、味がまろやかになるともいわれている。
【非特許文献1】食品と開発 vol.24, No.7, 82-85
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のとおり、水分子の構造と美味しさについての検討は種々なされているが、アルコール飲料に適した割り材、すなわちアルコール飲料用割材(例えば、水割り用の水やソーダ水)は提案されたことがなかった。
【0005】
本発明の目的は、これまで提案されたことのないアルコール飲料用の割り材を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、そのメカニズムは不明であるが、ブナ科コナラ属植物の溶媒抽出物を、水やソーダ水にわずかに添加するだけで、添加された水やソーダ水の味は全く変わらないのに、それをアルコール飲料の割り材(ウイスキー用の水又はソーダ水)として用いたときに、そのアルコールの呈味が格段と向上することを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、ブナ科コナラ属植物の溶媒抽出液、その濃縮物又は乾燥物のいずれか1種以上を添加した、アルコール飲料の割り材に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のアルコール飲料の割り材は、アルコール飲料と混合することにより、アルコール飲料の呈味を向上させることができる。本発明の割り材は、そのままで飲用してもブナ科コナラ属植物の溶媒抽出物の味は全く感じられないことから、通常の飲料として使用することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
ブナ科コナラ属植物
本発明で用いられるブナ科(Fagacwae)コナラ属(Quercus sp)の植物としては、例えば、コナラ(ナラ)(Quercus serrata Thunb.)、ミズナラ(オオナラ)(Quercus grosseserrata Blume , Quercus crispula Blume , Quercus mongolica Fisch. var.grosseserata (Blume) Rehd. et Wils.),クヌギ(Quercus acutissima Carruth.),アベマキ(Quercus variabilis Blume),カシワ(Quercus dentata Thunb.),ナラガシワ(Quercus aliena Blume),ウバメガシ(Quercus phillyraeoides A. Gray),シラカシ(クロガシ)(Quercusmyrsinaefolia Blume , Cyclobalanopsis myrsinaefolia (Blume) Oerst.),アラカシ(Quercus glauca Thunb. , Cyclobalanopsis glauca (Thunb.) Oerst.),ツクバネガシ(Quercus paucidentata Franch. , Quercus salicina Blume , Cyclobalanopsis paucidentata Kudo et Masam. , Quercus sessilifolia Blume, Cyclobalanopsis sessilifolia Blume),ウラジロガシ(Quercus stenophylla Makino , Quercus salicina Blume , Cyclobalanopsis salicina (Blume) Oerst.),ヨコメガシ(シマガシ)(Quercus glauca Thunb. var.fasciata Blume),ヒリュウガシ(Quercus glauca Thunb. var. lacera Matsum.),アカガシ(オオガシ,オオバガシ)(Quercus acuta Thunb. , Cyclobalanopsis acuta (Thunb.) Oerst.),イチイガシ(Quercus gilva Blume ,Cyclobalanopsis gilva (Blume) Oerst.),ホワイトオーク(Quercus alba L.),アリゾナホワイトオーク(Quercus arizonica),スワンプホワイトオーク(Quercus bicolor Willd.),ターキーオーク(イタリアンオーク)(Quercus cerris L.),モールオーク(キャニオンライブオーク、アリゾナスクラブオーク)(Quercus chrysolepis Liebm.),ブラックジャックオーク(Quercus marilandica),石栗(Quercus cornea Lour., Lythocarpus cornea(Lour.)Rehd.),シンオーク(Quercus gambelii Nutt.),エンシナ(Quercus agrifolia Nee),ブルーオーク(Quercus douglasii),ウォーターオーク(Quercus nigra),パルマーオーク(Quercus palmeri),ピンオーク(Quercus palustris),カルフォルニアスクラブオーク(Quercus dumosa),アモリーオーク(Quercus emoryi Torr.),メサオーク(Quercus engelmannii Greene),オレゴンホワイトオーク(Quercus garryana Dougl.),オレゴンホワイトオーク(Quercus garryana Dougl.),カリフォルニアホワイトオーク(Quercus lobata Nee),ブラックオーク(Quercus velutina),カリフォルニアブラックオーク(Quercus kelloggii),バーオーク(Quercus macrocarpa),ウェイビーリーフオーク(Quercus undulata Torr.),コルクオーク(コルクガシ)(Quercus lucombeana Sweet ,Quercus suber L.),ホーリーオーク(Quercus ilex L.),オキナワウラジロガシ(Quercus miyagii Koidz. , Cyclobalanopsis miyagii(Koidz.)Kudo et Masamune),スモールオーク(Quercus pungens),モンゴリナラ(モウコガシワ)(Quercus mongolicaFisch.var.mongolica),チェスナッツオーク(Quercus prinus L.),コモンオーク(リムザンオーク、イングリッシュオーク、フレンチオーク)(Quercus robur L.),スパニッシュオーク(サウザンレッドオーク)(Quercus falcata),ノーザンレッドオーク(Quercus rubra),バージニアライブオーク(Quercus virginiana),インテリアライブオーク(Quercus wislizeni),ポストオーク(Quercus stellata),高山櫟(Quercus semicarpifolia Sm.),セシルオーク(Quercus peraea (Mattuschka) Lieblein)等を挙げることができる。古来、ウイスキーやブランデー等の製造、貯蔵用の樽の原料として用いられてきた植物の多くはこの属に属される。特にオーク類と称される植物が好ましい。本発明でいうオーク類とは、ブナ科コナラ属の植物のうち、ウイスキーやブランデー等の製造、貯蔵用の樽の原料として用いられた植物群を言う。本発明においてはこのオーク類を好適に用いることができる。中でも、ホワイトオーク、コモンオーク、セシルオーク、スパニッシュオーク、バーオークやミズナラを特に好適に用いることができ、特にスパニッシュオークを好適に用いることができる。
【0010】
これらの植物について、原料として用いる部位には特に制限されるものではなく、幹、葉、枝、樹皮、花、実などを用いることができるが、幹及び主枝から樹皮を除いた心材から抽出するのが好ましい。また、それらは採取直後でもよいし、乾燥させた後に用いてもよい。必要により粉砕、切断、細切、成形等の加工をして用いることもできる。かかる植物の木材から得られるチップ、木粉、樽等が加工品として挙げられる。樽は溶媒抽出に使用する前に内面を焼く等の加熱処理をするのが好ましい。
【0011】
ブナ科コナラ属植物の溶媒抽出物
本発明で用いる抽出溶媒としては、好ましくは低級アルコールの水溶液を用いることができる。ここで低級アルコールとしては、炭素数が1ないし4のアルコール(例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等)を挙げることができるが、飲食品に用いることを考慮すると、抽出溶媒としては、安全性の観点からエタノール水溶液を用いることが好ましい。またここでいう抽出溶媒には、低級アルコールと水のほか、抽出効率を大きく損わない範囲で他の成分が含まれていてもよい。例えば、所望により糖類、塩類またはアミノ酸などの水溶性成分や各種他の溶媒が含まれていてもよい。
【0012】
従って、低級アルコールとして、例えばエタノールを用いる場合、エタノール水溶液として、工業的な試薬を水と混合したものを用いてもよいし、あるいは、各種アルコール製品やその仕掛品を用いてもよい。例えばブランデー、ウイスキー、焼酎、日本酒、ビール、発泡酒、スピリッツ、ウオッカまたはそれらの仕掛品が挙げられる。これらの製造方法は常法に従えばよい。植物原料で樽を成形し、その中に溶媒を注入して抽出を行う場合には、溶媒として、エタノール含有物を蒸留したものを好適に用いることができる。ここでいう、エタノール含有物を蒸留したものとは、エタノールを含有する液を蒸留して得られる蒸留物をいう。具体的には、麦芽、米、ブドウ等を原料の一部として糖化、醗酵させて得られるエタノール含有物を、単式蒸留または複式蒸留して得ることができる。例えば、焼酎、ウォッカ、ウイスキー貯蔵前原酒(モルトウイスキーの原酒のニューポット、グレンウイスキーの原酒のニューメイク)、ブランデー貯蔵前原酒(ヌーベル)、を用いるのが好ましい。中でも、ウイスキー貯蔵前原酒、ブランデー貯蔵前原酒を好適に用いることができる。これらの製造方法は常法に従えばよい。この場合には、抽出条件は室温で約半年〜30年程度とすることが好ましい。
【0013】
本発明で原料として用いられる植物の溶媒による抽出方法としては、特に限定されるものではなく、溶媒を上記植物原料と接触させることにより行われる。溶媒中に原料を浸漬させるか、あるいは、植物原料を用いて樽等の容器を成形しその中に溶媒を注入してもよい。静置保存してもよいし、加熱還流や浸漬抽出など、抽出様式は公知手段に従い所望に応じて適宜設定することができる。抽出は常温で行われても加温で行われてもよい。抽出温度は特に限定されないが、操作上、溶媒の沸点以下であることが好ましい。抽出に要する時間は、温度条件や抽出方法にもよるが、通常約30分程度以上である。抽出時間の上限は特に制限されないが、約30年程度で充分な場合が多い。もちろん、本発明では30年以上でもよい。
【0014】
本発明によれば、上記抽出後、公知の手段に従って、ブナ科コナラ属植物、その処理物またはその加工品を、香味改善作用を有する抽出液と分離する。分離手段としては、公知手段に従ってよく、例えば遠心分離、ろ過などが挙げられる。
【0015】
本発明においては、上記のようにして得られたブナ科コナラ属植物の溶媒抽出液をさらに精製して精製された抽出物として用いてもよい。ここで、この精製抽出物は、溶媒抽出液を多孔質樹脂に吸着させ、エタノールで溶離して得られる樹脂吸着エタノール溶離成分の一部又は全部を、ブナ科コナラ族植物の溶媒抽出液から選択的に除去して製造される。多孔質樹脂としては、スチル−ベンゼン系合成樹脂、特にスチレン−ジビニルベンゼン系合成樹脂(例えば三菱化成工業(株)社製 DIAION HP-10,20,30,40,50 、オルガノ(株)社製アンバーライトXAD-2,4 、或いは住友化学工業(株)社製デュオライトsシリーズなど)や、デキストラン系合成樹脂(例えばファルマシア社製Sephadex LH-20)を用いることができる。
【0016】
このようにして得られた溶媒抽出物は、抽出液の状態で割材に添加してもよいし、この抽出液を濃縮または乾燥して、濃縮物や乾燥物(濃縮乾固物)として添加してもよい。濃縮は常圧または減圧下に行われる。濃縮によって濃縮液の容積を約5〜70容量%、好ましくは約10〜50容量%に減少させるのがよい。乾固物は、抽出液から溶媒を好ましくは減圧下に蒸発させることによって得られる。
【0017】
本発明の溶媒抽出物のアルコール飲料の割り材への添加量は、特に限定されないが、抽出物の性状(抽出液、濃縮物、または乾燥物)により、例えば、割り材1kgあたり、約1μg〜1g、好ましくは100μg〜100mgである。
【0018】
なお、本発明の割り材とは、アルコール飲料と混合して、混合酒を作るための飲料を意味し、具体的には、水、ソーダ水、コーラ、オレンジジュース、レモンジュース、グレープフルーツジュース等の各種果汁、緑茶、ウーロン茶等の茶飲料等を例示できる。
【実施例】
【0019】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。
[実施例1]オーク材の溶媒抽出物の製造及びそれを添加した割り材
樽材として用いられるスパニッシュオークを用い、これらの溶媒抽出物を調製した。まず、これらの樽材(新材)を爆砕機にかけ、おが屑状に破砕した。このおが屑状にした樽材100kgを、連続式焙煎機を用いて200℃で30分間加熱焙煎した。この焙煎した樽材100kgを60%エタノール水溶液2000Lに浸漬し、80℃で24時間還流抽出した。これを濾過して抽出液(試料A)を分離し、ロータリーエバポレーターで加熱濃縮した後、凍結乾燥して溶媒抽出物(乾燥物A)を得た。また、試料Aを、スチレン−ジビニルベンゼン系合成樹脂(三菱化成工業(株)社製 DIAION HP-20)に通液して透過液(試料B)を回収し、ロータリーエバポレーターで加熱濃縮した後、凍結乾燥して溶媒抽出物(乾燥物B)を得た。この乾燥物A,B3mgを、水割り用の水1L又はソーダ水1Lに添加し、この水でアルコール飲料の水割りを調製した(アルコール飲料:水=1:2、アルコール飲料:ソーダ水=1:3)。固形乾燥物の添加による呈味改善効果を専門パネラー3名により官能評価により評価した。評価は、溶媒抽出物無添加の水割りを0点とし、−2点(極めて劣る)、−1点(劣る)、0点(変わらない)、+1点(優れている)、+2点(極めて優れている)の5点法により行った。結果を表1に示す(表中の値は、平均値)。
【0020】
【表1】


【0021】
通常の水割りと比較して、本発明の精製抽出物を添加した水又はソーダ水で調製したアルコール飲料が、無添加の水又はソーダ水を用いて製造されたアルコール飲料と比較して、香味の点で優れていた。
【出願人】 【識別番号】000001904
【氏名又は名称】サントリー株式会社
【出願日】 平成18年8月25日(2006.8.25)
【代理人】 【識別番号】100089705
【弁理士】
【氏名又は名称】社本 一夫

【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎

【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰

【識別番号】100080137
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 昭男

【識別番号】100096013
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 博行

【識別番号】100129458
【弁理士】
【氏名又は名称】梶田 剛


【公開番号】 特開2008−48692(P2008−48692A)
【公開日】 平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願番号】 特願2006−229942(P2006−229942)