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【発明の名称】 にごり酒の製造方法
【発明者】 【氏名】川島 紀慶

【氏名】山内 政宗

【氏名】光永 研一

【氏名】山内 徹

【要約】 【課題】にごり酒を製造する方法において、にごり酒製品中に含まれる固形分の粒度画分を好ましい範囲に調整することにより、見た目がよく、なめらかで口当りの良好なにごり酒の製造方法を提供する。

【構成】にごり酒を製造する方法において、にごり酒を超高圧ホモジナイザーにより圧力20MPa以上で撹砕することを特徴とするにごり酒の製造方法。にごり酒の固形分の粒度画分が100μm以下であり、かつ、10μm以下の粒度画分の割合が全固形分の50w/w%以上となるように撹砕することを特徴とするにごり酒の製造方法。前記いずれかの方法により得られるにごり酒。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
にごり酒を製造する方法において、にごり酒を超高圧ホモジナイザーにより圧力20MPa以上で撹砕することを特徴とするにごり酒の製造方法。
【請求項2】
にごり酒を製造する方法において、にごり酒の固形分の粒度画分が100μm以下であり、かつ、10μm以下の粒度画分の割合が全固形分の50w/w%以上となるように撹砕することを特徴とするにごり酒の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のにごり酒の製造方法により得られるにごり酒。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、にごり酒の製造方法に関し、詳細には、にごり酒において、その固形分のきめが細かく、なめらかで口当りの良好なにごり酒及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
にごり酒の製造方法については、一般に、清酒醪を3mm角のメッシュに通して漉す方法、更にそれをミルのようなものですり潰す方法、あるいは搾りたての清酒を静置し、その沈殿部分を回収したものを使用する方法などが挙げられるが、それらの方法では固形分の粒度が粗いか、大部分の粒子が細かくても部分的に大きな粒子を含むため、舌触りや喉越しに引掛りを感じてしまい、後味のキレの悪さの原因となっている。したがって、固形分の粒度が細かく、見た目もよい、口当りのなめらかなにごり酒の製造方法が求められていた。
【0003】
にごり酒の製造方法に関する従来技術としては、以下のものが知られている。
まず、常法により製造した火入れ済み清酒に所定量の酒粕を加え、粉砕、分散させ、必要に応じて粒径の大きい酒粕粒子をろ過により除去することからなるにごり酒の製造方法がある(特許文献1)。また、にごり酒を、清澄液と白濁液に分離し、清澄液に精密ろ過処理を、白濁液に高圧処理を施した後、両者を混合する保存性の高いにごり酒の製造方法がある(特許文献2)。更に、にごり酒を含むアルコール性飲料において、特定の粒径を持つ微細セルロースを含有することによって、分散、懸濁、乳化安定性に優れた、クラウディー感のあるアルコール性飲料が開示されている(特許文献3)。特許文献3では、平均粒径が8μm以下であって、10μm以上の粒子の割合が40%以下であると、ザラツキのないアルコール性飲料を提供することができるとしている。一方、にごり酒の懸濁粒子の安定化の検討として、高圧ホモジナイザーを用いて懸濁粒子を微細化し、懸濁粒子が沈降しにくいにごり酒の製造方法が開示されている(非特許文献1)。非特許文献1では、高圧ホモジナイザーを用いて、50〜200kg/cm(4.9〜19.6MPaに相当)の圧力で検討しているだけである。
【0004】
【特許文献1】特開昭58−28270号公報
【特許文献2】特開平6−113812号公報
【特許文献3】特開平8−173135号公報
【非特許文献1】日本醸造協会雑誌、第78巻、第10号、第758〜759頁(1983年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、にごり酒を製造する方法において、にごり酒製品中に含まれる固形分を超高圧ホモジナイザーで細かく撹砕し、固形分の粒度画分を好ましい範囲に調整することにより、なめらかで口当りの良好なにごり酒の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明を概説すれば、本発明の第1の発明は、にごり酒を製造する方法において、にごり酒を超高圧ホモジナイザーにより圧力20MPa以上で撹砕するにごり酒の製造方法に関する。本発明の第2の発明は、にごり酒を製造する方法において、にごり酒の固形分の粒度画分が100μm以下であり、かつ、10μm以下の粒度画分の割合が全固形分の50w/w%以上となるように撹砕するにごり酒の製造方法に関する。本発明の第3の発明は、第1の発明又は第2の発明に記載のにごり酒の製造方法により得られるにごり酒に関する。
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、にごり酒を超高圧ホモジナイザーにより圧力20MPa以上で細かく撹砕し、にごり酒の固形分の粒度画分が100μm以下であり、かつ、10μm以下の粒度画分の割合が全固形分の50w/w%以上となるように撹砕することによって、舌触りや喉越しに引掛りを感じず、後味のキレの悪さがない、すなわち、なめらかで口当りの良好なにごり酒を得ることができることを見出し、本発明を完成させた。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、アルコールを含有し、固形分を含有するにごり酒において、にごり酒の固形分の粒度画分を官能的に好ましい範囲に調整することができ、見た目もよい、なめらかで口当りの良好なにごり酒を提供することができる。なめらかで口当りの良好なにごり酒となるので、アルコール感をあまり感じず、後味のキレがよく、すっきりしているにごり酒を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明におけるにごり酒の製造方法は、にごり酒を製造する方法において、にごり酒を超高圧ホモジナイザーにより圧力20MPa以上で処理し、また、にごり酒の固形分の粒度画分が100μm以下で、かつ、10μm以下の粒度画分の割合が全固形分の50w/w%以上となるようにすることを特徴とする。本発明では、にごり酒の固形分を超高圧ホモジナイザーで細かく処理することを撹砕若しくは擂砕と定義する。
本発明におけるにごり酒とは、清酒若しくはその他の酒類において、液中に固形分を含むアルコール飲料であれば特に限定はなく、例えば、清酒、どぶろく、マッカリ等が挙げられる。また、にごり酒の液中に占める固形分の割合にも限定はないが、0.5w/v%から30w/v%の範囲内であることが望ましい。固形分の割合が0.5w/v%未満では、官能において固形分を感じることができず、また、30w/v%超では、固形分が多すぎて超高圧ホモジナイザーにより撹砕しにくくなるので操作性が悪いという問題点がある。
【0010】
均質機には、遠心式均質機、超音波処理装置、高圧型均質機の三種類がある。そのうち、高圧型に属する本発明で用いる超高圧ホモジナイザーは、にごり酒の固形分を撹砕し、均質化できる機械であれば特に限定はないが、大量の固形分をより小さな粒子径にまで連続的に撹砕、均質化することのできる超高圧型均質機が好適である。ホモジナイザーにより撹砕処理する圧力は20MPa以上であり、好ましくは30MPa以上、より好ましくは50MPa以上である。なお、本発明でいう均質化とは、液体中に存在する粒子状物質を機械的に破砕・微細化して均一な懸濁状態をつくり出すことである。
【0011】
本発明では、にごり酒の固形分の粒度画分が100μm以下であり、かつ、10μm以下の粒度画分の割合が全固形分の50w/w%以上、好ましくは70w/w%以上となるように撹砕することを特徴とする。にごり酒の固形分の粒度画分が100μm超のものが混在すると、ざらつきが感じられる。また、10μm以下の粒度画分の割合が全固形分の50w/w%未満では、舌触りや喉越しに若干引掛りを感じ、後味のキレの悪さがある。10μm以下の粒度画分の割合が全固形分の50w/w%以上では、舌触りや喉越しに引掛りを感じず、後味のキレの悪さがない、すなわち、なめらかで口当りの良好なにごり酒となり、特に70w/w%以上では、官能的に差が明確で、見た目もよい、にごり酒を得ることができる。
【0012】
以下、実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、本発明がこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0013】
常法により調製した清酒醪を3mm角のメッシュで漉してにごり酒を得た。得られたにごり酒の固形分の粒度分布より、固形分を粒度画分が10μm以下、10超〜100μm、100μm超の3区分に分けた。にごり酒の粒度分布は、マイクロトラック粒度分布装置を用いて、レーザー回折・散乱法により求めた。市販の清酒にそれぞれの区分を5w/v%添加して官能評価試験を行った。結果を表1に示す。
【0014】
【表1】



【0015】
表1より、固形分の粒度画分が10μm以下では、なめらかで口当りの良好なものとなった。固形分の粒度画分10超〜100μmでは、やや舌触りにざらつきがあり、100μm超では、はっきりとざらつきが感じられ、喉越しに引掛りを感じるという評価であった。
【実施例2】
【0016】
常法により調製した清酒醪を3mm角のメッシュで漉したにごり酒を得た。得られた固形分を含むにごり酒を超高圧ホモジナイザーに通液して撹砕処理した。撹砕処理の圧力は、15MPa、30MPa、50MPaとした。なお、超高圧ホモジナイザーは、空油圧型2段式均質、流量75〜200L/h、最大圧力100MPa仕様の超高圧ホモジナイザーを用いた。比較例として、石臼型のミルを用いてにごり酒の処理を行った。対照の未処理も含めて、それらの粒度分布の測定を行い、また、官能評価試験を行った。粒度分布は、マイクロトラック粒度分布装置を用いて、レーザー回折・散乱法により求めた。官能評価試験の結果を表2に示す。
官能評価の判定は、◎:非常によい、○:よい、△:あまりよくない、×:悪いの4段階で行った。
なお、対照(未処理)、比較例1(石臼型のミルでの処理)、超高圧ホモジナイザー処理(圧力15MPa、比較例2)、超高圧ホモジナイザー処理(圧力30MPa、本発明1)、及び超高圧ホモジナイザー処理(圧力50MPa、本発明2)のそれぞれについて、固形分の粒度分布のデータより累計を算出し、粒度分布累計として図1に示す。
【0017】
【表2】


【0018】
表2より、にごり酒をホモジナイザーに通液して、圧力30MPa以上、好ましくは50MPa以上の撹砕処理を行えば、短時間でにごり酒の固形分を100μm以下の粒度画分とすることができ、また、10μm以下の粒度画分の割合が全固形分の70%以上、80%近くまでとすることもできた。官能評価では、圧力30MPaの超高圧ホモジナイザー処理を行ったにごり酒は、なめらかで非常に口当りがよい、喉越し良好であるとの評価を得た。更に、圧力50MPaの超高圧ホモジナイザー処理を行ったにごり酒は、なめらかで非常に口当りがよい、喉越し良好に加えて、後味のキレがよく、すっきりしているとの評価を得た。また、圧力30MPa以上の超高圧ホモジナイザー処理を行ったにごり酒は、見た目もよいものであった。
【0019】
以上述べたように、にごり酒を製造する方法において、にごり酒の固形分を超高圧ホモジナイザーにより圧力20MPa以上で撹砕することにより、にごり酒の固形分の粒度画分が100μm以下であり、かつ、10μm以下の粒度画分の割合が全固形分の50w/w%以上となるように撹砕することによって、舌触りや喉越しに引掛りを感じず、後味のキレの悪さがない、すなわち、なめらかで口当りの良好で、かつ見た目もよいにごり酒を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明の製造方法によれば、にごり酒の固形分の粒度画分を小さくすることができ、後味のキレの悪さがない、すなわち、なめらかで口当りの良好で、かつ見た目もよいにごり酒を得ることができる。したがって、本発明は極めて優れたにごり酒の製造方法であり有用である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】にごり酒を超高圧ホモジナイザー処理することにより、固形分の粒度画分が上方向に推移していく状態を示す図である。
【出願人】 【識別番号】302026508
【氏名又は名称】宝酒造株式会社
【出願日】 平成18年8月11日(2006.8.11)
【代理人】 【識別番号】100087022
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 昭

【識別番号】100096415
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 大


【公開番号】 特開2008−43215(P2008−43215A)
【公開日】 平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願番号】 特願2006−219403(P2006−219403)