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【発明の名称】 高甘味度甘味料含有みりん類
【発明者】 【氏名】小宮 裕介

【要約】 【課題】高甘味度甘味料を含有するみりん類を調理に使用した際に認められる、単調でダイレクトな甘味質、後味のクセ、塩カドなどを改善した、高甘味度甘味料含有みりん類を提供することを目的とするものである。

【構成】高甘味度甘味料、及び好ましくはキサンタンガムを0.01〜0.5(重量/容量)%含有するみりん類を提供するものである。さらに、有機酸及び/又は無機酸を含有することを特徴とするみりん類を提供するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高甘味度甘味料及びキサンタンガムを含有するみりん類。
【請求項2】
キサンタンガムを0.01〜0.5(重量/容量)%含有することを特徴とする、請求項1に記載のみりん類。
【請求項3】
全甘味料の甘味度の総和中、高甘味度甘味料由来の甘味度の割合が、甘味度換算で25%〜100%となるように高甘味度甘味料を含有することを特徴とする、請求項1又は2のいずれかに記載のみりん類。
【請求項4】
高甘味度甘味料が、スクラロース及び/又はアセスルファムKであることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載のみりん類。
【請求項5】
有機酸及び/又は無機酸を含有することを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載のみりん類。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は高甘味度甘味料含有みりん類に関し、詳しくは高甘味度甘味料を使用したみりん類の欠点である、料理に使用した際の単調でダイレクトな(直接的な)甘味質、後味のクセ、塩カドなどを改善したみりん類に関する。
【背景技術】
【0002】
日本では、料理に用いられる甘味料として、主に砂糖とみりん類が用いられてきた。みりん類は、糖類を主成分とした液状の甘味調味料であり、主に煮物などに砂糖とは異なる上品な甘み付けのために用いられている。
近年、健康志向の上昇、肥満防止や糖尿病予防等の観点から、高甘味度甘味料を使用した低カロリーのみりん類に注目が集まっている。
【0003】
そのような低カロリーのみりん類として、例えば甘味糖類として糖アルコール及び/又は果糖を10〜80重量%含有するみりん類が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、高甘味度甘味料は、総じて、単調でダイレクトな(直接的な)甘さで、後味に苦味や甘みの後味が残るものが多い。
例えば、アスパルテームやステビア、カンゾウ抽出物(グリチルリチン)などは、後味まで甘味、苦味、渋味などが残ることが知られている。
一方、スクラロースやアセスルファムKは、甘味の立ちや切れは比較的早いものの、高甘味度甘味料独特の単調でダイレクトな甘味質を示す。
【0005】
このように、これら高甘味度甘味料は、飲料やデザートへの使用には適するが、そのままでは料理用調味料への利用には不適当であると認められる。
また、料理において、通常の糖類をこれら高甘味度甘味料に代替した場合、特に甘味度換算で25%以上を高甘味度甘味料で代替すると、ボディー感(味の厚み)が著しく欠如する。
【0006】
従って、上記特許文献1に係る発明を参考に、高甘味度甘味料を用いたみりん類を作製して使用した場合、前述と同様に、高甘味度甘味料が具備する味質上の欠点が料理にも受け継がれる。即ち、煮物などに使用した際の最終味質として、甘味がダイレクトであること、後味にクセが残ること、さらに甘味にボディー感がないため醤油などの塩味にカドが生じることなど、料理の味のバランスが悪くなる。
このような甘味質の改善は、主に高甘味度甘味料や併用する糖類の組み合わせよって行われてきたが、料理における甘味質を改善することは、極めて困難であった。
【0007】
【特許文献1】特開2000−23634号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明では、上記従来の問題点を解消し、高甘味度甘味料を含有するみりん類を調理に使用した際に認められる、単調でダイレクトな甘味質、後味のクセ、塩カドなどを改善した、高甘味度甘味料含有みりん類を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記従来の問題点を解消すべく鋭意検討を重ねた結果、従来行われている甘味料の組み合わせではなく、みりん類にキサンタンガムを添加することで、高甘味度甘味料を用いた際の、調理素材のダイレクトな甘みや塩味のカドをなくし、最終味質をまろやかにできることを見出した。
また、キサンタンガムは乳化安定化作用を有するため、調理後の外観上及び物性上の観点から、含有するキサンタンガムは0.5(重量/容量)%以下が適当であることを見出した。
さらに、有機酸や無機酸は、煮物などの調理の際、素材を柔らかくする効果を有することから、上記みりん類に有機酸及び/又は無機酸を加えることで、高甘味度甘味料の調理素材への浸透性を向上させ、食品の味質向上に有効であることを見出した。
本発明者らは、以上の手段により、上記課題を悉く解決しうることを見出し、かかる知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、請求項1に係る本発明は、高甘味度甘味料及びキサンタンガムを含有するみりん類を提供するものである。
請求項2に係る本発明は、キサンタンガムを0.01〜0.5(重量/容量)%含有することを特徴とする、請求項1に記載のみりん類を提供するものである。
請求項3に係る発明は、全甘味料の甘味度の総和中、高甘味度甘味料由来の甘味度の割合が、甘味度換算で25%〜100%となるように高甘味度甘味料を含有することを特徴とする、請求項1又は2のいずれかに記載のみりん類を提供するものである。
請求項4に係る発明は、高甘味度甘味料がスクラロース及び/又はアセスルファムKであることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載のみりん類を提供するものである。
請求項5に係る発明は、有機酸及び/又は無機酸を含有することを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載のみりん類を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高甘味度甘味料を用いた際の単調でダイレクトな甘味質、後味のクセ、塩カドなどの味バランスの悪さを顕著に改善し、本みりんと同レベルの最終味質のまろやかさや甘味質を調理素材に与え得る、高甘味度甘味料含有みりん類が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
請求項1に係る本発明は、高甘味度甘味料及びキサンタンガムを含有するみりん類である。
本発明で言うみりん類としては、以下のものが挙げられる。
アルコールを1容量%以上、かつエキス分40度以上含む酒税法上の本みりん;糖類を主成分としてエキス分55度以上、かつアルコールを1容量%未満含有するみりん風調味料;アルコールを1容量%以上含有し、食塩等の不可飲処置が施されて酒税法上の酒類に該当しない醸造調味料;或いは、高甘味度甘味料を使用することで甘味度を担保した液状甘味調味料等が挙げられる。
【0013】
さらに本発明で言うみりん類としては、一般にみりんと呼ばれるものだけでなく、みりんと同様の機能(調理具材への甘味、てりなどの付与)を有する調味料(例えば、通常みりん風調味料と呼ばれるものなど)も含まれる。
これらみりん類の甘味度は、調理時の利便性の観点から、容量あたりで同じ範囲であり、その範囲とはショ糖水溶液換算で20〜50(重量/容量)%である。
なお、ここでいうエキス分とは、15℃において100立方センチメートル中に含有する不揮発成分のグラム数のことを言う。
【0014】
本発明に用いる高甘味度甘味料としては、特に限定することなく用いることができる。例えば、アスパルテーム(甘味度:200)、アセスルファムK(甘味度:200)、スクラロース(甘味度:600)、ステビア(甘味度:150〜300)、カンゾウ抽出物(グリチルリチン)(甘味度:250)、サッカリン及びサッカリンNa(甘味度:300〜500)、ラカンカエキス(甘味度:300)、ソーマチン(甘味度:3000〜5000)、ネオテーム(甘味度:9000)などの合成および天然の高甘味度甘味料を挙げることができる。
なお、甘味度とは、ショ糖1gを1とした場合の甘味料1g当りの甘味強度を言う。これら高甘味度甘味料は、低カロリーのみりん類を作製するにあたり、削減した糖類の甘味を補強する効果を有する。
【0015】
本発明における高甘味度甘味料の含有量は、全甘味料(高甘味度甘味料及び糖類などの低甘味度甘味料などを含めた全ての甘味料)の甘味度の総和中の、高甘味度甘味料由来の甘味度の割合であり、例えば、スクラロース(甘味度:600)1重量部とショ糖(甘味度:1)600重量部の組成物の場合、スクラロースの含有量は甘味度換算で50%である。
【0016】
高甘味度甘味料の含有量は、請求項3に記載したように、全甘味料の甘味度の総和中、高甘味度甘味料由来の甘味度の割合が、甘味度換算で25%〜100%、好ましくは40%〜100%、さらに好ましくは50〜100%である。
ここで、高甘味度甘味料の含有量が少な過ぎる場合には、みりん類全体の甘味度を満たすためには、その他の糖類を多く含ませる必要が生じることから、低カロリーのみりん類を達成することができなくなる。そればかりか、高甘味度甘味料の含有量が少な過ぎる場合には、本発明により高甘味度甘味料を用いた際の甘味質を改善する必要性も乏しくなる。
【0017】
また、キサンタンガムによる調理素材の甘味質改善効果は、直接的な甘味質の改善に適することから、前記の高甘味度甘味料の中でも、請求項4に記載したように、特にスクラロースやアセスルファムKを使用した場合に、本発明の効果が発揮されやすい。
【0018】
本発明に用いるキサンタンガムとは、微生物キサントモナス・キャンペストリス(Xanthomonas campestris)の発酵により得られる増粘多糖類である。
本発明においては、増粘多糖類の中でも特にキサンタンガムを用いることが必要であるが、必要に応じて、その他の増粘多糖類、例えばグァーガム、カラギナン、アラビアガム、プルラン、ローカストビーンガム、ペクチン、ジュランガム、カードラン、タマリンドシードガム、寒天などを併用してもよい。
【0019】
キサンタンガムの含有量としては、請求項2に記載したように、0.01〜0.5(重量/容量)%、好ましくは0.01〜0.3(重量/容量)%、より好ましくは0.03〜0.1(重量/容量)%である。
キサンタンガムの含有量が少な過ぎると、本発明による甘味質改善等の効果が発揮しにくくなるため好ましくない。また、キサンタンガムは乳化安定化作用を有することから、調理後の外観上、及び物性上の観点から、キサンタンガムの含有量は、0.5(重量/容量)%以下、好ましくは0.3(重量/容量)%以下、より好ましくは0.1(重量/容量)%以下とする。
【0020】
本発明のみりん類には、糖類として、例えばショ糖、転化糖、異性化糖、ぶどう糖、果糖、乳糖、麦芽糖、水あめ、果糖ぶどう糖液糖、フラクトオリゴ糖、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、乳化オリゴ糖、マルチトール、ソルビトール、マンニトール、エリスリト−ル、キシリトール、ラクチトール、パラチニット、還元水あめ、還元麦芽糖水あめ、及び水溶性食物繊維などを、高甘味度甘味料と併用することができる。
【0021】
さらに、本発明のみりん類には、請求項5に記載したように、有機酸及び/又は無機酸を用いることができる。
本発明に用いる有機酸としては、例えば酢酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸、フマル酸、アジピン酸、グルコン酸などが挙げられ、さらにこれらを有する食酢、食品などを用いることができる。
【0022】
また、無機酸については、りん酸、フィチン酸などが挙げられる。
これら有機酸及び無機酸は、素材への高甘味度甘味料の浸透を促進させることから、本発明のみりん類に併用することが望ましい。
【0023】
また、本発明のみりん類には、必要に応じて調味料区分を用いてもよい。
調味料区分とは、甘味料以外の調味料であり、例えば、発酵によって得られる醸造調味料や、グルタミン酸ナトリウム,アラニン,グリシンなどのアミノ酸系調味料、イノシン酸ナトリウム,グアニル酸ナトリウムなどの核酸系調味料、蛋白加水分解物、酵母エキスなどが挙げられる。
なお、ここで言う醸造調味料とは、米やもち米、コーンスターチ、小麦、ぶどう糖などに米麹、酵素、酵母などを加えて仕込みもろみを作り、糖化発酵及び/又は酒精発酵させた後、食塩の添加、圧搾、ろ過、火入れ殺菌の工程を順次行い、得られるものである。
この醸造調味料は、アミノ酸や有機酸などコク旨み成分を含有することから、調理素材に深みを付与するのに役立つことが知られている。
本発明のみりん類は以上の如きものである。
【実施例】
【0024】
次に、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明はこれにより何ら制限されるものではない。
【0025】
実施例1及び比較例1〜5〔増粘多糖類の種類の違いによる甘味改善効果の比較〕
(1)みりん類の作製
下記表1の処方に従って原料を加え、均一になるように攪拌混合して1,000mlとし、これを80℃、15分間の加熱殺菌を行い、下記の各種みりん類を得た。
【0026】
【表1】


【0027】
(2)調理及び評価
次に、前記で得られた、キサンタンガム(実施例1)、グァーガム(比較例1)、プルラン(比較例2)、カラギナン(比較例3)、アラビアガム(比較例4)をそれぞれ含有したみりん類、及び増粘多糖類無添加のみりん類(比較例5)を用いて、常法に従い筑前煮を作製した。
また、これらと同時に、高甘味度甘味料と増粘多糖類を含まない、市販の本みりん(アルコール14%、エキス分47度)でも同様に筑前煮を作製して、コントロールとした。
筑前煮に用いた調味料としては、みりん類:醤油:酒=3容量:2容量:1容量の割合で使用し、加熱条件は一定になるようにつまみ式のIHクッキングヒーター(電磁調理器)にて作製した。
【0028】
調理した筑前煮は、市販の本みりんを使用したものをコントロールとして、外観(増粘剤の使用により、白濁など料理の外観に及ぼす影響を観察)、甘味質の好ましさ、及びまろやかさの3項目について、下記の評価基準に従い官能検査を行なった。
該検査において、本みりんは料理に甘味付与する調味料として好まれていることから、開発されたみりん類は、本みりん使用時と同等の外観、甘味質の好ましさ、まろやかさを具備することが望まれる。
【0029】
官能検査の結果は、15名のパネルによる平均値として表2に記載した(n=15)。なお、官能検査の際、各検体は名前を伏せ、ランダムに並べられた。
【0030】
〔評価基準〕
3点:コントロールと同等である。
2点:コントロールと比較して、やや劣っている。
1点:コントロールと比較して、劣っている。
【0031】
【表2】


【0032】
表2の結果によれば、高甘味度甘味料を使用したみりん類における、甘味質の改善効果及び味質をまろやかにする効果は、全ての増粘多糖類で発揮されるのではなく、キサンタンガム(実施例1)に特有であることが明らかになった。
【0033】
実施例2〜4及び比較例6〜7〔キサンタンガムの含有量の違いによる甘味改善効果の比較〕
(1)みりん類の作製
下記表3の処方に従って原料を加え、均一になるように攪拌混合して1,000mlとし、80℃、15分間加熱殺菌を行い、下記の各種みりん類を得た。
【0034】
【表3】


【0035】
(2)調理及び評価
次に、前記のキサンタンガムの添加量がそれぞれ異なる5種類のみりん類(比較例6〜7及び実施例2〜6)をそれぞれ用いて、常法によりカレイの煮物を調理した。
また、これらと同時に、市販の本みりん(実施例1及び比較例1〜5のコントロールに使用したもの)でも同様にカレイの煮物を調理した。
調味料としては、みりん類:醤油:酒=4容量:2容量:5容量の割合で使用し、火力は実施例1と同様の方法で調整した。調理したカレイの煮物は、上記実施例1及び比較例1〜5で行った方法に従い、市販の本みりんを用いたものをコントロールとして官能検査を行った(n=15)。
【0036】
【表4】


【0037】
表4の結果によれば、高甘味度甘味料及びキサンタンガムを使用したみりん類における甘味質の味質改善効果は、キサンタンガムの添加量が0.01(重量/容量)%以上のときに発揮されることが明らかになった。
さらに、キサンタンガムの添加量が1(重量/容量)%であると、その乳化安定化作用により、外見が著しく劣ることから、その適量は0.5(重量/容量)%以下が望ましいことが明らかになった。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明によれば、低カロリー性及び本みりんと同質の味質を同時に具備した、高甘味度甘味料含有みりん類が提供される。
従って、本発明は食品産業において有効に利用することができる。
【出願人】 【識別番号】301058355
【氏名又は名称】株式会社ミツカン
【識別番号】398065531
【氏名又は名称】株式会社ミツカングループ本社
【出願日】 平成18年7月10日(2006.7.10)
【代理人】 【識別番号】100086221
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 裕也


【公開番号】 特開2008−11827(P2008−11827A)
【公開日】 平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願番号】 特願2006−188897(P2006−188897)