Warning: copy(htaccessbak): failed to open stream: No such file or directory in /home/jtokkyo/public_html/header.php on line 10
蒸留酒の製造方法 - 特開2008−75 | j-tokkyo
トップ :: C 化学 冶金 :: C12 生化学;ビ−ル;酒精;ぶどう酒;酢;微生物学;酵素学;突然変異または遺伝子工学

【発明の名称】 蒸留酒の製造方法
【発明者】 【氏名】塚原 正俊

【氏名】渡嘉敷 唯章

【氏名】玉城 康智

【要約】 【課題】フェルラ酸を4−VGに転化する微生物を明らかにし、その微生物を用いて、従来よりも簡便な方法で香味豊かな穀類蒸留酒を製造する方法を提供すること。

【構成】植物由来の酒造原料を、麹菌および/または酵母で発酵させてもろみとし、これを蒸留する蒸留酒の製造方法において、もろみにラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)を作用させることを特徴とする蒸留酒の製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物由来の酒造原料を、麹菌および/または酵母で発酵させてもろみとし、これを蒸留する蒸留酒の製造方法において、もろみにラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)を作用させることを特徴とする蒸留酒の製造方法。
【請求項2】
植物由来の酒造原料が、穀類である請求項第1項記載の蒸留酒の製造方法。
【請求項3】
蒸留酒が、泡盛である請求項第1項記載の蒸留酒の製造方法。
【請求項4】
植物由来の酒造原料を、麹菌および/または酵母で発酵させてもろみとし、このもろみにラクトコッカス・ラクチスを作用させた後、これを蒸留することにより得られる蒸留酒。
【請求項5】
植物由来の酒造原料を、麹菌および/または酵母で発酵させてもろみとし、これを蒸留する蒸留酒の製造方法において、もろみにラクトコッカス・ラクチスを作用させることを特徴とする蒸留酒に香味を付与する方法。
【請求項6】
フェルラ酸にラクトコッカス・ラクチスを作用させることを特徴とする4−ビニルグアヤコールの製造方法。

【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、香味豊かな蒸留酒の製造方法に関し、更に詳細には、泡盛、焼酎等の蒸留酒の製造において、もろみ中に含まれるフェルラ酸の4−ビニルグアヤコール(4−VG)への転化を促進することによる、香味の豊かな蒸留酒の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、健康志向の高まりから、清酒等のいわゆる醸造酒よりも、泡盛、焼酎等の蒸留酒を愛好する人が多くなっている。この蒸留酒は、長期間の保存が可能であり、長期間保存(熟成)した後の蒸留酒は、製造直後のものよりも香味が高く、古酒として高い評価を得ている。
【0003】
ところで、沖縄県には47泡盛酒造所と1酒造組合があり、沖縄本島内のみならず周辺離島において、蒸留酒である泡盛が広く製造されている。その中でも、最近では特に「泡盛古酒」が注目されており、その芳醇な香りとまろやかな口あたりが人気を集めている。
【0004】
この泡盛古酒の香り成分は100種類以上あると言われ、それぞれの含有量やバランスが泡盛の個性を決定しているが、泡盛に含まれる重要な香味成分の一つにバニリンがある。バニリンはバニラに含まれる甘い芳香を持つ物質で、泡盛古酒が有する甘い香りの起因成分の一つとなっている。
【0005】
泡盛製造過程において下記式1に示されるようにバニリンは原料米由来のフェルラ酸が遊離し、これがもろみの酸や蒸留過程の熱により4−VGへと変化して泡盛中に移行する。さらに熟成により4−VGがバニリンへと変化することで泡盛中のバニリンが生成すると考えられている(非特許文献1〜3)。
[式1]


【0006】
このような知見に基づき本出願人はもろみ中の4−VG量と蒸留後の泡盛の4−VG量との関係を調べたところ、もろみ中の4−VG量が高い場合には蒸留後の泡盛の4−VG量も高くなる傾向があることを知った。また、本出願人は通常もろみの発酵に用いられる酵母にはフェルラ酸を4−VGに転化する能力がないので、もろみ中の4−VG生成に対してはもろみ中の酵母以外の何らかの微生物が関与していると判断した。
【0007】
【非特許文献1】小関ら、醸協、89、p.409−411、1994
【非特許文献2】小関ら、醸協、93、p.510−517、1998
【非特許文献3】小関卓也、生物工学会誌、78、p.465−467、2000
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、もろみ中でフェルラ酸を4−VGに転化する微生物を明らかにし、その微生物を用い、従来よりも簡便な方法で香味豊かな蒸留酒を製造する方法を提供することをその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、もろみの4−VG量と、この中に存在する微生物との関係を探索した結果、フェルラ酸を4−VGに転化すると思われる微生物を見出した。そしてもろみにこの微生物を作用させると、もろみ中の4−VG量が高くなることおよびこのもろみを蒸留した後の蒸留酒中の4−VG量も高くなることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち本発明は、植物由来の酒造原料を、麹菌および/または酵母で発酵させてもろみとし、これを蒸留する蒸留酒の製造方法において、もろみにラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)を作用させることを特徴とする蒸留酒の製造方法である。
【0011】
また本発明は、植物由来の酒造原料を、麹菌および/または酵母で発酵させてもろみとし、このもろみにラクトコッカス・ラクチスを作用させた後、これを蒸留することにより得られる蒸留酒である。
【0012】
更に本発明は、植物由来の酒造原料を、麹菌および/または酵母で発酵させてもろみとし、これを蒸留する蒸留酒の製造方法において、もろみにラクトコッカス・ラクチスを作用させることを特徴とする蒸留酒に香味を付与する方法である。
【0013】
また更に本発明は、フェルラ酸にラクトコッカス・ラクチスを作用させることを特徴とする4−VGの製造方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の蒸留酒の製造方法によれば、もろみの原料に含まれるフェルラ酸の4−VGへの転化が、ラクトコッカス・ラクチスの作用により促進されるため、もろみ中の4−VG量を高めることができる。その結果、もろみを蒸留後の蒸留酒中においても蒸留酒の香味の一つであるバニリンの前駆体である4−VG量を有意に高めることができる。
【0015】
従って、この製造方法により得られる蒸留酒は、通常の製法で得られる蒸留酒と同期間熟成させた場合であっても、甘い芳香と香味の増強された蒸留酒となる。
【0016】
また、本発明の蒸留酒に香味を付与する方法によれば、簡便な方法で蒸留酒に香味を付与することができる。
【0017】
更に、本発明の4−VGの製造方法によれば、フェルラ酸からバニリンの前駆体となる4−VGを効率よく製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の蒸留酒の製造方法(以下、「本発明製法」という)は、もろみにラクトコッカス・ラクチスを作用させる以外は、発酵したもろみを蒸留する公知の蒸留酒の製造方法により実施することができる。
【0019】
本発明製法に用いられるラクトコッカス・ラクチスは、自然界に広く分布するホモ発酵型乳酸菌の1種で、古くからゴーダーチーズ、チェダーチーズ等の半硬質タイプのチーズ、バター、発酵乳等の発酵食品の製造に用いられており、極めて安全な菌株である。このラクトコッカス・ラクチスの生理、生化学性状等は例えば、「乳酸菌の科学と技術」(乳酸菌研究談会編、学会出版センター、1996年)等に記載されている。また、ラクトコッカス・ラクチスの16S rDNAは細胞基準株データベース(http://www.nbrc.nite.go.jp)に登録されている。本発明製法においてはこれら生理、生化学性状および16S rDNAから、ラクトコッカス・ラクチスに分類される菌株であれば特に制限無く、例えば、ラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・ラクチス、ラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・クレモリス等の何れの亜種も使用することができる。なお、ラクトコッカス・ラクチスにフェルラ酸を4−VGに転化する能力があることはこれまで知られていない。
【0020】
本発明製法に用いることのできるラクトコッカス・ラクチスの一例としては、独立行政法人製品評価技術基盤機構(〒292−0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8)等から購入可能な以下のものが挙げられる。
・ラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・ラクチス NBRC12007
・ラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・ラクチス NBRC100933
・ラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・クレモリス NBRC100676
【0021】
上記ラクトコッカス・ラクチスをもろみに作用させるには、植物由来の酒造原料を、麹菌および/または酵母で発酵させるもろみ調製工程の何れかの段階において、ラクトコッカス・ラクチスを接種するだけでよい。具体的にラクトコッカス・ラクチスを焼酎のもろみに作用させる場合には、一次もろみと二次もろみの二段のもろみ調製工程の何れかまたは両方のもろみ仕込み時あるいはもろみ発酵過程中にラクトコッカス・ラクチスを接種すればよい。また、ラクトコッカス・ラクチスを泡盛のもろみに作用させる場合には、一次もろみのみの一段のもろみ調製工程のもろみ仕込み時あるいはもろみ発酵過程中にラクトコッカス・ラクチスを接種すればよい。また、焼酎または泡盛のもろみを調製する何れの場合であっても、製麹開始時または製麹中の麹にラクトコッカス・ラクチスを接種して付着させ、この麹を用いてもろみを調製することにより、もろみにラクトコッカス・ラクチスを作用させてもよい。本発明製法において、ラクトコッカス・ラクチスのもろみへの接種量は、もろみ1Lあたり1×10〜1×1018cfu程度、好ましくは1×10〜1×1013cfu程度である。
【0022】
本発明製法に用いられるもろみとは、米、麦(麦芽)、トウモロコシ、そば、ひえ、あわ等の穀類、じゃがいも、さつまいも等の芋類、くり、ごま等の植物、黒糖、白ぬか、清酒粕等の植物由来の酒造原料を、アスペルギルス・オリゼー等の黄麹菌、アスペルギルス・カワチ等の白麹菌、アスペルギルス・アワモリ、アスペルギルス・サイトウイ等の黒麹菌等の麹菌および/またはサッカロマイセス・セレビシエ等の焼酎酵母、サッカロマイセス・パストリアヌス等のビール酵母等の酵母で発酵させたものをいう。なお、本発明製法においては、上記酒造原料のデンプン質を酵素等により糖化したものを上記酵母で発酵させたものももろみに含まれる。本発明製法においては、これらもろみの中でも穀類を麹菌および酵母で発酵させたものが好ましく、特に穀類を黒麹菌および焼酎酵母で発酵させたものが好ましい。前記穀類を原料とするもろみはフェルラ酸を多く含有するので本発明製法による効果が特に認められる。
【0023】
上記のようにしてラクトコッカス・ラクチスを作用させたもろみは、次に、公知の条件で蒸留することにより焼酎、泡盛等の蒸留酒が得られる。本発明においてはこれら蒸留酒の中でも泡盛が好ましい。
【0024】
本発明製法によれば、もろみにラクトコッカス・ラクチスを作用させることにより、もろみ中のフェルラ酸から4−VGへの転化が促進され、もろみ中の4−VG量が高くなる。そして、このもろみを蒸留して蒸留酒とすれば、もろみ中の4−VGが蒸留酒中に移行し、蒸留酒中の4−VG量が高くなる。具体的には、蒸留酒中の4−VG量は1〜50μg/ml程度になり、ラクトコッカス・ラクチスを作用させていないもろみを蒸留して得られる蒸留酒と比べて5.0質量%(以下、単に「%」という)以上、好ましくは10.0〜50.0%程度高くなる。更に、蒸留酒中に含まれる4−VGは蒸留工程での熱や、その後の熟成等により蒸留酒の香味成分の1つであるバニリンとなるので、本発明製法で得られる蒸留酒は香味豊かなものとなる。
【0025】
本発明製法の好ましい一態様として、泡盛の製造方法を示せば次の通りである。
まず、タイ米を洗米後、水に数十分間から一晩漬浸したものを蒸煮して蒸米とする。この蒸米を放冷後、市販黒麹菌を蒸米1kg当たり1×10〜1×1010cfu程度接種し、これを30〜45℃程度で、38〜45時間程度、適宜手入れを行いながら製麹する。この麹に、汲み水歩合150〜180%程度の水を加え、泡盛101号等の酵母をもろみ1L当たり1×10〜1×1013cfu程度およびフェルラ酸を4−VGに変換するラクトコッカス・ラクチスをもろみ1Lあたり1×10〜1×1018cfu程度接種してもろみを仕込み、15〜30℃程度で仕込みタンク中で発酵する。もろみの発酵時間は7日〜28日程度でよい。発酵の終了した熟成もろみを従来の方法に従い、蒸留機等を用いて85〜100℃程度で蒸留し、蒸留液として泡盛を得る。
【0026】
また、ラクトコッカス・ラクチスは上記した蒸留酒の製造以外にも、フェルラ酸を原料とした4−VGの製造に用いることもできる。具体的には、市販のフェルラ酸を含有させたMRS等の培地にラクトコッカス・ラクチスを培地1Lあたり1×10〜1×10cfu程度接種し、20〜45℃程度の条件で数時間〜数日程度培養することにより培地中に4−VGが生成される。この培地中に生成された4−VGは、高速液体クロマトグラフィー等の公知の方法により精製することもできる。また、上記のようにして得られる4−VGは熱や熟成、文献(特開2003−135051号公報)に記載のオゾンへの接触等によりバニリンにすることもできる。
【実施例】
【0027】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら制限されるものではない。
【0028】
実 施 例 1
フェルラ酸を4−VGに転化する微生物のスクリーニング:
(1)4−VGを多く含む酒造所の泡盛のもろみ中から分離した多数の菌株をそれぞれMRS培地にて10−1〜10−5まで段階希釈した。次に、それぞれ希釈したものを0.5%の炭酸カルシウムを含有するMRS寒天培地(15ml)に混釈し、それをシャーレに注いだ。更に、シャーレを嫌気条件下、30℃で24時間以上維持した後、ハローを形成したコロニーを釣菌した。
【0029】
試験管に滅菌したMRS培地を2〜10ml分注し、フェルラ酸を100μg/mlになるよう添加した。その後、上記で釣菌された菌株をMRS培地で前培養し、その10〜100μlを上記MRS培地中に播種し、30℃で48時間培養を行った。培養終了後、遠心分離した上清を0.45μmのフィルターに通し、培地中のフェルラ酸量および4−VG量をHPLCにより測定した。HPLC分析により培地中のフェルラ酸量が減少し、4−VG量が上昇した菌株としてS1株を得た。
【0030】
(2)上記(1)で得たS1株について、培地中のフェルラ酸量と4−VG量の経時変化と菌体量の増加を以下の方法により測定した。まず、50ml容量のスクリューキャップ付遠心沈殿管にフェルラ酸を100μg/mlに調整したMRS培地を30ml分注し、別途前培養を行ったS1株を0.1ml(1.0×10cfu)添加して、30℃で30時間培養を行った。この培養中は2時間ごとに1mlのサンプリングを行い、これを0.45μmのフィルターに通し、各培養時間におけるフェルラ酸量および4−VG量をHPLCにより測定した。また、各培養時間における濁度をバイオフォトメーター(ADVANTEC製)で吸光度600nmの吸収を測定することにより求めた。これらの結果を図1に示した。
【0031】
(3)上記(1)のようにして得られたS1株の16S rDNAについて、BLASTを用いた相同性検索を行ったところ、S1株の16S rDNAはラクトコッカス・ラクチスの3亜種の16S rDNAと高い相同性を示した。その中でもラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・ラクチスとは100%の相同性を示した。また、S1株の分子系統解析の結果、S1株はラクトコッカス・ラクチスの3亜種の16S rDNAが形成するクラスター内に含まれることが判った(図2)。更に、S1株の生理、生化学性状試験を行ったところ、S1株はラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・ラクチスの性状と一致した。以上の結果からS1株はラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・ラクチスに帰属する菌株と同定された。なお、S1株については寄託機関に寄託をしていないが、本株は特許法施行規則第27条の3の条件を満足する分譲の請求があった場合は、出願人において、同条の条件に従って分譲することを保証する。
【0032】
実 施 例 2
寄託菌株のフェルラ酸−4−VG転化活性についての検討:
(1)ラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・ラクチスNBRC12007、ラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・ラクチスNBRC100933およびラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・クレモリスNBRC100676(いずれも独立行政法人製品評価技術基盤機構より購入)を、実施例1(2)と同様にフェルラ酸を添加した培地中で培養し、培養18時間後におけるフェルラ酸量および4−VG量をHPLCにより測定し、フェルラ酸を4−VGに転化する活性(フェルラ酸−4−VG転化活性)の有無を調べた。なお活性の有無は以下の評価基準で評価した。
【0033】
<フェルラ酸−4−VG転化活性評価基準>
(評価) (内容)
++ :培養18時間でフェルラ酸の90%以上を4−VGに転化
+ :培養18時間でフェルラ酸の3%以上〜90%未満を4−VGに転化
− :培養18時間でフェルラ酸の3%未満を4−VGに転化
【0034】
【表1】


【0035】
フェルラ酸を4−VGに転化する能力はラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・ラクチスおよびサブスピーシーズ・クレモリスにも認められた。以上の結果より、フェルラ酸を4−VGに転化する能力は前記S1株だけでなく、ラクトコッカス・ラクチス全般に認められることが判った。
【0036】
実 施 例 3
ラクトコッカス・ラクチスを用いたもろみの調製(1):
タイ米を洗米し、水に浸漬した後水切りを行い、50gずつフラスコに分取した。次いで、この洗浄米を121℃のオートクレーブで10分間の蒸煮をして蒸米を得た。麹菌は事前にPDA培地で培養を行い、胞子懸濁液を調製し、これをフラスコ内の蒸米1gに対し4×10cfu/gになるように接種した。培養は、温度38℃、相対湿度95%の恒温恒湿機(CRH−210、タバイエスペック製)で42時間培養を行った。培養開始から18時間と24時間にフラスコ内の米を攪拌して麹を得た。得られた麹50gに水80mlを添加し、これに前培養した酵母を1.0×10cfu/mlとなるように加え、更に、前培養を行ったS1株(実施例1で得られたもの)を1.0×10cfu/mlとなるように添加し、25℃で14日間発酵させてもろみを得た。発酵開始直後、3日後、6日後、10日後および14日後のフェルラ酸量および4−VG量を実施例1と同様にHPLCにより測定した。なお、S1株を添加しない以外は上記と同様にして調製されたもろみを対照とした。これらの結果を図3および図4に示した。
【0037】
もろみ中のフェルラ酸量は、S1株を添加したもろみとS1株を添加していないもろみとで、ほとんど変化がなかった。しかし、S1株を添加したもろみ中の4−VG量は、S1株を添加していないもろみよりも約20%増加していた。
【0038】
実 施 例 4
蒸留酒の製造(1):
実施例3で得られたS1株を添加したもろみ(発酵14日)について85〜100℃程度で蒸留を行い、蒸留酒(泡盛)を製造した。蒸留酒中のフェルラ酸量および4−VG量を実施例1と同様にHPLCにより測定した。また、S1株を添加していないもろみについても同様に蒸留を行い、蒸留酒を製造し、同様の測定をした。
【0039】
フェルラ酸は、もろみの蒸留により蒸留酒中に移行しないため、S1株を添加したもろみから蒸留された蒸留酒およびS1株を添加していないもろみから蒸留された蒸留酒のいずれにも検出されなかった。しかし、4−VG量は、S1株を添加したもろみから蒸留された蒸留酒の方が、S1株を添加していないもろみから蒸留された蒸留酒よりも約30%も増加していた。
【0040】
実 施 例 5
蒸留酒の製造(2):
実施例3の方法に従い作製した麹50gに水80mlを添加し、これに前培養した酵母を1.0×10cfu/mlとなるように加え、更に、前培養を行ったラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・ラクチスNBRC12007を1.0×10cfu/mlとなるように添加し、25℃で7日間発酵させてもろみを得た。
【0041】
上記で得られたもろみ(発酵7日間)について85〜100℃程度で蒸留を行い、蒸留酒(泡盛)を製造した。蒸留酒中の4−VG量を実施例1と同様にHPLCにより測定したところ、ラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・ラクチスNBRC12007株を添加したもろみから蒸留された蒸留酒の方が、ラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・ラクチスNBRC12007株を添加していないもろみから蒸留された蒸留酒よりも4−VG量が約30%も増加していた。
【0042】
以上の結果より、もろみにラクトコッカス・ラクチスを作用させることにより、もろみを蒸留した蒸留酒中に、蒸留酒の香味の一つであるバニリンの前駆体である4−VG量を有意に増加できることが判った。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の蒸留酒の製造方法によれば、ラクトコッカス・ラクチスの作用により、蒸留酒中の4−VGを増加させることができる。この様にして製造される蒸留酒は、通常の製法で得られる蒸留酒と同期間熟成させた場合であっても、甘い芳香と香味の増強された蒸留酒となり、商品価値が高いものとなる。
【0044】
また、ラクトコッカス・ラクチスはフェルラ酸からバニリンの前駆体となる4−VGを製造するのにも利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】図1は、MRS培地中のフェルラ酸量、4−VG量および濁度とS1株の培養時間との関係を示す図面である。
【図2】図2は、S1株の分子系統解析の結果を示す図面である。
【図3】図3は、S1株を添加したもろみ中のフェルラ酸量と培養日数との関係を示す図面である。
【図4】図4は、S1株を添加したもろみ中の4−VG量と培養日数との関係を示す図面である。
【出願人】 【識別番号】592234908
【氏名又は名称】株式会社トロピカルテクノセンター
【識別番号】591272756
【氏名又は名称】日本酒造組合中央会
【出願日】 平成18年6月22日(2006.6.22)
【代理人】 【識別番号】100086324
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 信夫


【公開番号】 特開2008−75(P2008−75A)
【公開日】 平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願番号】 特願2006−172915(P2006−172915)