トップ :: C 化学 冶金 :: C11 動物性または植物性油,脂肪,脂肪性物質またはろう;それに由来する脂肪酸;洗浄剤;ろうそく

【発明の名称】 栽培した沈香
【発明者】 【氏名】ロバート エイ. ブランチェット

【氏名】ヘンリー ヒューベリング ヴァン ビーク

【要約】 【課題】沈香の再生可能な供給源としてのAquilaria属樹木または沈香の再生可能な供給源としてのGonystylus属樹木から、沈香を生成する方法を提供すること。

【解決手段】沈香を生成する方法であって、(a)Aquilaria属樹木において木部に人為的な傷を形成する工程、またはGonystylus属樹木において木部に人為的な傷を形成する工程;および(b)上記の人為的な傷を空気にさらす手段を提供する工程;を包含する、方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書中に記載されるような、沈香を産生するための方法
【発明の詳細な説明】【背景技術】
【0001】
(発明の背景)
沈香(agarwood)は、極めて稀な、非常に貴重な香である。沈香は、中東、中国および日本において少なくとも3000年の歴史を有する。インドおよびフランスの文献において、さらには旧約聖書において、沈香に対する言及が存在する。沈香は今日でも、世界で最も高価な香のままである。シンガポールのみから搬出される沈香の価値は、毎年、12億$を超えると見積もられている。E.Hansen、Saudi Aramco World 51:2−13(2000年12月)。この芳香のある樹脂は、以下を含む多くの俗称を有する:沈香、ガハル(gaharu)、イーグルウッド(eaglewood)、アロエスウッド(aloeswood)、アジーラウッド(agila wood)、アグル(aguru)、アガー(agar)、オウド(oud)、ウデ(ude)、ウド(ud)、オード(ood)、オーデ(oode)、チンコウ(jinkoh)、チンコウ(jinko)、チンクェイシャン(Ch’Ing Kuei Hsiang)、チェンシャンチャン(Ch’En Hsiang)、チャンシャン(Chan Hsiang)、チクシャン(Chi Ku Hsiang)、ホワンシュシャン(Huang Shu Hsiang)、カランバ(kalambak)、およびグリンドサナー(grindsanah)。
【0002】
この樹脂は、伝統的中国人医師、ウナナイ(Unanai)の医師、アーユルヴェーダによる医師、およびチベットの医師によって用いられる。医学的に用いられると、沈香は、神経障害(例えば、神経症、強迫行動、および極度疲労)のための治療薬である。沈香は、非常に精神活性であり、そして精神的儀式において用いられる。多くの宗教的グループは、これを心および精神を落ち着かせるための瞑想の香として尊ぶ。アーユルヴェーダ医学では、これは、広範囲の心の病を処置し、邪悪な精神を追い払うために用いられる。日本では、これは、多くの人々によって神聖であると考えられ、そして屍体に塗るために用いられる。仏教では、これは、多くの香混合物において主な成分として役立ち、そして白檀および丁子とともに、3つの絶対必要な香のうちの1つと考えられる。
【0003】
沈香の供給源は、Aquilaria樹木である。Aquilaria樹木は、40メートルの高さおよび60センチメートルの直径まで育つ、常緑樹である。これは、甘い香りのする白い花をつける。Aquilaria属は、分類学的にThymelaceaceae科に位置する被子植物である。15種のAquilariaが報告されており、全てが沈香を生産する。これらの種の分類は、完全には明らかでなく、全ての種が分類学者に認識されているわけではない。種としては、以下が挙げられる:Aquilaria malaccensis、A.agallocha、A.baillonii、A.crassna、A.hirta、A.rostrata、A.beccariana、A.cummingiana、A.filaria、A.khasiana、A.microcarpa、A.grandiflora、A.chinesisまたはA.sinensis、A.borneensis、およびA.bancana。Aquilaria bancanaは、Aquilariaの真の種であるか疑問がもたれており、Gonystylaceae科のGonystylus属のGonystylus bancanusとされている。Gonystylusもまた、沈香と同じかまたは沈香に非常に類似すると考えられる、芳香のある樹脂を生産することが見出されている。
【0004】
Aquilaria樹木は、北インドからベトナムおよびインドネシアまでのアジアに自生する。Aquilaria樹木の健康な樹木材は、白色で軟らかく、均等の木目があり、そして新たに切断した場合、臭いがしない。特定の病理学的条件下で、心材は、樹脂
で満たされはじめ、そして最終的に、硬い〜非常に硬くなる。最高級の沈香は、硬く、ほぼ黒色であり、水に入れた場合沈む。一般に、沈香は、色調が明るくなるにつれて樹脂の量が減って、劣ると考えられる。
【0005】
アガーが沈着するプロセスは、完全には理解されていない。1933年のオランダの文献(J.P.Schuitemaker、「Het garoehout van West Boreno」Boschbouwkundig Tijdschrift Tectona Uitgave der Vereeniging van Hoogere Ambtenaren bij het Boschwezen in Nederlands Oost−Indi 26:851−892)は、ボルネオにおける沈香の出現を報告し、そして樹木において生産される多くの異なる型の樹脂を考察した。現地人のほとんどは、当時、沈香は、不思議な方法で形成され、精神世界と関連すると考えていた。この著者は、「「聖なる」木材の不思議な出現は、超自然の力と結びついている」と述べ、そして沈香を、「神々の木材」と呼んだ。この著者はまた、「われわれは、原因未知の病理学的出現の可能性を排除できない」、「完全な樹木は、沈香を決して有さない」、そして沈香は、「幹の傷部分または朽ちた部分の周辺に形成される」と注記した。この著者はまた、樹木の孔に入れた塩が樹脂を促進し得ることを示唆した。この論文ではまた、沈香が感染性であるならば、茎に新たな切断した沈香をつけることによって幹を人工的に感染させることによって沈香形成を誘導することが可能かもしれないと言及された。
【0006】
後の著者はまた、長年にわたる考えが、真菌による攻撃の結果、アガー沈着物が樹木による免疫応答として作製されると報告した。I.H.Burkill、A dictionary of the economic products of the Malay Peninsula.第I巻、Crown Agents for the Colonies、London 197−205頁。1940年代および1950年代には、何人かの研究者がアガー沈着物の起源を調査し、種々の、そして時には矛盾する結果が得られた。RahmanおよびBasak、Bano Biggyan Patrika
9:87−93(1980)。他の研究者は、沈香の産生のためには特定の真菌原因が存在するようではないと結論した。Gibson、Bano Biggyan Patrika 6:16−26(1977)。樹脂沈着物が、傷と弱い病原体によるその後の侵入に対する樹木の茎組織の直接応答として生じ得ることが示唆された。同書。
【0007】
RahmanおよびBasakは、傷が、いくつかの「オレオレジン」沈着物を有する木材において色の変化を生じたことを示唆した。RahmanおよびBasak、Bano Biggyan Patrika 9:87−93(1980)。彼らは、露出した開口傷の存在が、傷内の真菌の特定の種の存在よりもさらに重要であるようであると仮定した。しかし、彼らは、彼らの論文において、どの因子が傷においてアガー沈着に重要であるものを担うかを決定するにはさらなる調査が必要であると述べることに終わった。
【0008】
アガーを有する少ない比率の樹木を同定することは困難でかつ破壊的であり、このことは、自然の立ち木のほぼ全滅の大きな一因である。また、大規模の伐採搬出作業は、Aquilaria樹木が見出される多くの森林地帯を破壊した。従って、沈香の現在の供給源である、天然で生長した樹齢の古いAquilaria樹木は、消滅し始めている。今日まで、沈香を好首尾に栽培した者はいない。E.Hansen、Saudi Aramco World 51:2−13(2000年12月)。それゆえ、沈香の再生可能な供給源として、沈香を産生するAquilaria樹木を栽培するための手段についてのますます大きくなる必要性が存在する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の要旨)
本発明は、AquilariaまたはGonystylus樹木において木部に人工の傷を形成し、そしてこの傷に通気するための手段を提供することによって、沈香を産生する方法を提供する。さらなる傷は、この樹木において変色領域が形成され始めたのと同時またはその後のいずれかで形成され得る。この傷は、切断、穿孔、もしくは切り倒しによって、またはクギを挿入することによって形成され得る。この傷は、木部に到達するように形成される。この傷は、木部中で少なくとも約1〜10cmの深度になるように形成され得る。1つの実施形態では、この傷は、約4〜6cmの深度になるように形成される。この傷は、樹木において、一連の間隔の近い傷として作製され得る。例えば、一連の傷(例えば、約30〜100箇所の傷)は、樹木に対して螺旋状に上るように付けられ得る。これらの傷は、約5cm離れた間隔で付けられ得る。
【0010】
本発明の方法では、通気手段は、傷に挿入された通気デバイス(例えば、傷に挿入されたクギ、チューブまたはパイプ)であり得る。通気デバイスは、その中に通気孔を含み得、そして/またはその外表面に溝を含み得る。通気デバイスは、プラスチック、タケ、木材もしくは他の有機材料、または金属(例えば、鉄)から作製され得る。これは、直径約2cmであり得る。挿入された場合、通気デバイスは、樹木の外部から外に(例えば、樹木の外部から約2〜15cm)広がり得る。
【0011】
あるいは、本発明の通気手段は、傷の周期的(例えば、毎月)再創傷であり得る。これは、その樹木の生涯にわたって1回以上、傷の周囲の形成層のパッチを刻み付けることによって行われ得る。これはまた、傷に隣接した形成層の領域を除去することによって行われ得る。
【0012】
本発明はまた、樹脂誘導剤を、傷の周囲の細胞に適用することを含み得る。この樹脂誘導剤は、樹木における樹脂産生を刺激する。これは、木部の傷付いた領域の周囲の生きた柔組織細胞を殺傷し得る。樹脂誘導剤は、化学的薬剤であり得る。化学的薬剤が用いられる場合、これは、細胞を局所的に殺傷し得る。これは、例えば、重亜硫酸ナトリウム、NaCl、塩化鉄III、塩化鉄II、キチン、ギ酸、セロビオース、サリチル酸、鉄粉末、または酵母抽出物であり得る。特に、これは、1:1:3の重亜硫酸ナトリウム、Difco酵母抽出物および鉄粉末であり得る。あるいは、またはさらに、樹脂誘導剤は、生物(例えば、昆虫または微生物(例えば、真菌(例えば、Deuteromyota sp.、Ascomycota sp.、Basidiomycota sp.)であり得る。
【0013】
本発明において用いられる樹木は、樹齢100年未満であり、好ましくは樹齢約2〜80年、より好ましくは樹齢3〜20年、またはさらには樹齢はほんの約3〜12年であり得る。本発明で用いられる樹木は、老樹林に自然に生長したものではない。「老樹林(old growth forest)」は、本明細書中では、生態学的に成熟しており、かつ非天然の妨害(例えば、伐採搬出、道路建設(roading)および除去(clearing))を無視し得る程度しか受けていない、森林と定義される。この定義には、妨害の影響が現在無視し得る、生態学的に成熟した森林もまた含まれる。このような老樹林では、上層または上層形成樹は、成熟後期〜盛りを過ぎた成長期にある。本発明において用いられ得る樹木の種類としては、例えば、以下が挙げられる:Aquilaria malaccensis、A.agallocha、A.baillonii、A.crassna、A.hirta、A.rostrata、A.beccariana、A.cummingiana、A.filaria、A.khasiana、A.microcarpa、A.grandiflora、A.chinesisもしくはA.sinensis、A.borneensis、およびA.bancana、またはGonystylus bancanus。
【0014】
本発明はまた、上記の方法によって産生される沈香を提供する。本発明はさらに、家庭菜園、プランテーション、温室または農地において生長した樹木由来の沈香を提供する。
【0015】
本発明はまた、上記の通りに産生された沈香を提供し、そしてこの沈香から沈香樹脂を精製することによる、沈香樹脂を精製する方法を提供する。本発明はさらに、この方法に従って精製された沈香樹脂を提供する。用語「樹脂」は、当業者によって用いられる用語法に従って本明細書中で使用される。すなわち、植物からの滲出物または抽出物として得られた、固体〜軟らかい半固体の非晶質の、可融性で可燃性の物質である。この用語樹脂は、沈香油(または他の形態の濃縮沈香)を包含し、これは、樹脂性物質を含む油抽出物である。沈香油は、沈香の蒸留および芳香物質の濃縮から得られ得る樹脂性物質が溶解した濃厚な液体である。本発明はさらに、上記の方法によって産生された沈香樹脂から作製された、濃縮沈香製品を提供する。
・本発明はさらに、以下を提供し得る:
・(項目1)
沈香を生成する方法であって、以下:
(a)Aquilaria属樹木またはGonystylus属樹木において、木部に人為的な傷を形成する工程、および
(b)該傷を空気にさらす手段を提供する工程
を包含する、方法。
・(項目2)
aおよび/またはbの工程を繰り返す工程をさらに包含する、項目1に記載の方法。
・(項目3)
前記樹木において変色領域が形成され始めた後で、aおよび/またはbの工程を繰り返す、項目2に記載の方法。
・(項目4)
前記繰り返される傷付けが、前記変色領域においてである、項目3に記載の方法。
・(項目5)
前記傷が、切断によってか、穿孔によってか、もしくは切り倒しによってか、または釘を挿入することによって形成される、項目1に記載の方法。
・(項目6)
前記傷が、前記木部に到達するまで形成される、項目1に記載の方法。
・(項目7)
前記傷が、木部に少なくとも約1〜10cmの深度まで形成される、項目1に記載の方法。
・(項目8)
前記傷が、約4〜6cmの深度まで形成される、項目1に記載の方法。
・(項目9)
近接して間隔を隔てられた一連の傷が、前記樹木において作製される、項目1に記載の方法。
・(項目10)
前記一連の傷が、前記樹木を螺旋状に昇るように位置づけられる、項目9に記載の方法
・(項目11)
30〜100個の傷が作製される、項目9に記載の方法。
・(項目12)
前記一連の傷が、約5cm離れた間隔で位置づけられる、項目9に記載の方法。
・(項目13)
前記空気にさらす手段が、前記傷に挿入された通気デバイスである、項目1に記載の方法。
・(項目14)
前記通気デバイスが、前記傷に挿入された釘、管、またはパイプである、項目13に記載の方法。
・(項目15)
前記通気デバイスが、通気孔を備える、項目13に記載の方法。
・(項目16)
前記通気デバイスが、溝を有する外表面を備える、項目13に記載の方法。
・(項目17)
前記通気デバイスが、プラスチック、竹材、木材、もしくは他の有機材料、または金属である、項目13に記載の方法。
・(項目18)
前記通気デバイスが、直径約2cmである、項目13に記載の方法。
・(項目19)
前記通気デバイスが、鉄製である、項目13に記載の方法。
・(項目20)
前記通気デバイスが、前記樹木の外面から突き出している、項目13に記載の方法。
・(項目21)
前記通気デバイスが、前記樹木の外面から2〜15cm突き出している、項目20に記載の方法。
・(項目22)
前記空気にさらす手段が、周期的に傷を再度傷つける、項目1に記載の方法。
・(項目23)
前記空気にさらす手段が、1ヶ月に1回で傷を再度傷つける、項目22に記載の方法。
・(項目24)
前記傷を空気にさらす手段が、前記樹木の寿命の間にわたって1回以上、該傷の周辺にある一区画の形成層のパッチを刻み付けることを含む、項目1に記載の方法。
・(項目25)
前記傷に隣接している形成層の領域を取り除く工程をさらに包含する、項目1に記載の方法。
・(項目26)
前記傷の周辺にある細胞に樹脂誘導化薬剤を適用する工程をさらに包含する、項目1に記載の方法。
・(項目27)
前記薬剤が樹脂の生成を刺激する、項目26に記載の方法。
・(項目28)
前記薬剤が、前記木部の傷付けた領域の周囲にある生存している柔組織細胞を死滅させる、項目26に記載の方法。
・(項目29)
前記樹脂誘導化薬剤が、化学薬剤または生物である、項目26に記載の方法。
・(項目30)
前記生物が、微生物または昆虫である、項目26に記載の方法。
・(項目31)
前記化学薬剤が、局所的に細胞を死滅させる、項目29に記載の方法。
・(項目32)
前記化学薬剤が、亜硫酸水素ナトリウム、NaCl、塩化第二鉄、塩化第一鉄、キチン、ギ酸、セロビオース、サリチル酸、鉄粉、または酵母抽出物である、項目30に記載の方法。
・(項目33)
前記化学薬剤が、亜硫酸水素ナトリウム:Difco酵母抽出物:鉄粉が1:1:3である、項目29に記載の方法。
・(項目34)
前記微生物が真菌である、項目26に記載の方法。
・(項目35)
前記真菌が、Deuteromyota sp.、Ascomycota sp.、Basidiomycota sp.である、項目34に記載の方法。
・(項目36)
前記樹木が100年齢未満である、項目1に記載の方法。
・(項目37)
前記樹木が約2〜80年齢である、項目36に記載の方法。
・(項目38)
前記樹木が約3〜20年齢である、項目36に記載の方法。
・(項目39)
前記樹木が約3〜12年齢である、項目36に記載の方法。
・(項目40)
前記樹木が、原生林において天然には生育していない樹木である、項目36に記載の方法。
・(項目41)
前記樹木が、Aquilaria malaccensis、A.agallocha、A.baillonii、A.crassna、A.hirta、A.rostrata、A.beccariana、A.cummingiana、A.filaria、A.khasiana、A.microcarpa、A.grandiflora、A.chinesis、もしくはA.sinensis、A.borneensis、およびA.bancana、またはGonystylus bancanusの種の樹木である、項目36に記載の方法。
・(項目42)
項目1に記載の方法により生成された、沈香。
・(項目43)
自家菜園、プランテーション、温室、または農地において生育された樹木に由来する、沈香。
・(項目44)
沈香樹脂を精製する方法であって、以下
(a)項目42または43に記載の沈香を提供する工程、および
(b)該沈香から樹脂を精製する工程、
を包含する、方法。
・(項目45)
項目44に記載の方法に従って精製された沈香樹脂を含む、組成物。
・(項目46)
沈香樹脂を精製する方法であって、以下
(a)項目1に記載の方法に従って、沈香を生成する工程、および
(b)該沈香から樹脂を精製する工程、
を包含する、方法。
・(項目47)
項目46に記載の方法に従って精製された沈香樹脂を含む、組成物。
【0016】
不定冠詞「a」および「an」ならびに定冠詞「the」が、特許出願で一般的であるように、文脈が明らかにそうでないことを示さない限り、1以上を意味するように本明細書中で用いられることに留意されるべきである。
【0017】
(発明の詳細な説明)
Aquilariaは、独特の解剖学的構造を有し、若木に沈香を誘導しようとする者は、その解剖学的構造を理解しなければならない。木部の外側に(形成層の周囲から増殖する)篩部細胞を産生する被子植物(Angiospemae)における大部分の樹木とは異なり、Aquilariaは、木部全体ならびに木部に対して外部の層にわたる篩部細胞の束を産生する。これは、木部(導管、繊維および柔組織細胞からなる)もまた、放射(有孔)型の、含まれた篩部または木部間(interxlyary)篩部と呼ばれる篩部細胞群を含むことを意味する。樹木が傷付けられた場合、樹木は、形成層によって新たな木質細胞を形成することによって応答する。これらの細胞は分化し、そして新たに産生された細胞でこの傷を閉鎖する(Blanchette R.A.1992.Anatomical responses of xylem to injury and invasion by fungi.:Defense Mechanisms of
Woody Plants Against Fungi.R.A.BlanchetteおよびA.R.Biggs編.Springer−Verlag Berlin.76−95頁)。一旦傷が閉鎖したら、影響を受けた木材への通気は停止し、空気を必要とする内部プロセスは止まる。大部分の樹木は、傷が付いた形成層の縁部で新たな細胞を産生することによって傷を閉鎖する。Aquilaria樹木は、木部の内部ならびに外部で傷を閉鎖する。
【0018】
本実験は、Aquilaria樹木の形成層が、傷の周りおよびさらに傷の表面全てに新たな細胞を産生することによって、傷付けることに対して反応することを示した。図1を参照のこと。篩部細胞は、新たな分化木質細胞を産生する、新たな形成層細胞を明らかに産生する。傷の閉鎖は、迅速に生じる。露出した木部の表面の篩部の束は、新たな細胞を産生して、傷を封鎖および閉鎖する、二次形成層細胞を産生する。表面の大きな傷は、露出した木部の表面全体が新たな形成層細胞を生成し、次いでこの形成層細胞は分化して、傷を閉鎖する新たな木質細胞を産生する代わりに、(大部分の樹木と同様)傷の縁部でカルスを産生することだけによっては閉鎖されない。
【0019】
傷を付けることは、沈香を引き起こすと示唆されているが、樹木において産生される代表的な型の傷は、沈香を産生しない。人工の傷が、樹木に孔を開けることによって木部に作製された場合、傷付けられた部位全体に存在する、含まれる篩部は反応し、そして新たな形成層細胞を産生し得る。この新たな形成層から形成される新たな木材は、傷付けられ
た木部内で増殖する。これは、内部の傷を封鎖して傷を閉鎖する。内部の傷を有するAquilaria樹木は、樹木の内側から、ならびに樹木の外表面の傷付けられた表面に沿って、傷を封鎖して閉鎖し得る。本実験は、傷の閉鎖が沈香形成を停止させることを示す。
【0020】
文献は、傷付けられたAquilaria樹木中で増殖する真菌が、沈香形成を引き起こし得ることを示唆した。以下を含む、種々の型の真菌が、示唆されている:Phialophora parasitica、Torula sp.、Aspergillus
sp.、Penicillium sp.、Fusarium sp.、Cladosporium sp.、Epicoccum granulatum、Cylimndrocladium、Sphaeropsis sp.、Botryodiplodia theobromae、Trichoderma sp.、Phomopsis sp.、およびCunninghamella echinulata。可能な原因であると示唆されているが、真菌が沈香形成を担うという明らかで明確な研究がない、これらの真菌の全てを用いて、研究者らは、「アガー(agaru)が、以前に想像(invisage)されたよりもずっとより一般化された原因から生じること」を示した(Gibson、Bano Biggyan Patrika 6:16−26(1977))。PunithalingamおよびGibson、Nova Hedwigia 29:251−255(1978)は、Aquilaria由来のPhomopsisの新たな種を報告したが、「この真菌がアガー形成の原因であることを示す証拠は得られなかった」ことを示す。「人工接種および傷を付けることによる、アガー樹木における沈香産生」についてのRahmanおよびBasakによる論文(Bano Biggyan Patrika 9:87−93(1980))では、沈香を産生するための実験後、彼らは、「アガー沈着の作製が完全に理解される前に、より多くの実験的研究が行われることが必要である。われわれは、アガー製品の確実な供給を提供する技術の開発からほど遠いことに疑いはない。」と結論した。RaoおよびDayalによる論文(International Association of Wood Anatomist Bulletin N.S.、13:163−172(1992))は、沈香の形成を考察し、そして沈香を有する天然で生長する樹木由来の、影響を受けた木材の顕微鏡図を提供する。彼らは、沈香がどのようにして形成されるかを決定するためには、「樹齢、樹木内の季節による応答性の変動、および環境の変動のような要因を研究することが重要である」と示唆することによって結論する。本発明者らによる研究は、樹齢が重要ではなく(森林において天然に生長したのではない移植した若木は、沈香を産生し得る)、そしてベトナムの3つの異なる地理的位置の樹木において沈香が産生されたことを示し、環境における変動が重要な要因ではないことを示した。
【0021】
沈香は、傷を付けること、昆虫および/または微生物の侵襲に対する非特異的宿主応答として、樹木によって産生される樹脂性物質である。この樹脂は、芳香性テルペンが存在する樹木抽出物を含む。上記で考察したように、Aquilariaは、木部内に篩部束を産生するという点で独特である。篩部および柔組織細胞のこのネットワークは、樹木の防御反応として樹脂を産生して、影響を受けた領域の周囲にこの樹脂を分配する。老木のみが樹脂を産生し得ると以前は考えられていた。
【0022】
本発明者らは、どのようにして沈香が天然で形成されるかを決定し、そしてこの情報を用いて、若い栽培したAquilaria樹木において沈香を産生した。この樹木は、例えば、家庭菜園もしくは協同菜園において、またはプランテーション、または温室において生長させ得る。沈香を産生するための本技術は、プランテーションで生長させた若い樹木(樹齢約3〜8年)に対して用いられた。この技術は、これよりも古い樹木に対して実施され得るが、経済的理由から、より若い樹木を用いることが有益である。本発明者らは、Aquilaria樹木において沈香の産生を誘導するために2つの要因が必要である
ことを見出した:(1)この樹木に傷を開くこと、および(2)この開いた傷に通気しなければならないこと。
【0023】
樹木は、穿孔で傷付けられて、木部への孔が作製される。多くの型の傷が試みられ、そして木部を横切って切断する孔が必要とされる。孔のサイズは、重要ではない。主に重要なのは、この孔がカルス組織によって閉鎖されてはならないことである。小さな穿孔傷は、迅速に生長する熱帯の樹木においては、新たな木材生長によって1年以内に閉鎖され得る。傷が閉鎖されないことを保障するために、形成層の領域は、穿孔傷の周囲で切断され得る。これは形成層を除去し、カルス形成および傷の閉鎖を遅延させる。このプロセスは、傷が閉鎖されるようであれば繰返し行われる必要がある。別の方法は、頑強なプラスチック、タケ、木材もしくは他の有機材料、または金属のチューブまたはパイプ(全てこのチューブの側面に沿って作製された孔を有する)を穿孔傷に挿入して、これを樹木から突出させたままにすることである。図2Aおよび2Bを参照のこと。樹木が生長するにつれて、このチューブは、樹木の傷が閉鎖されるのを防止する。傷の閉鎖を防止するためのこれらおよび任意の他の方法が用いられ得る。
【0024】
沈香産生を最大にするために、孔が作製された後に孔に沿って並ぶ樹木の細胞を妨害し得る。生存細胞の破壊が多ければ多いほど、沈香が形成される内部面積が広くなることが見られた。孔が空けられた場合、沈香は、傷の縁部の周囲にのみ(かつ通気が行われる間のみ)形成される。穿孔傷が作製され、そしていくつかの木細胞を殺傷する物質(樹脂誘導剤)が導入された場合、この樹脂は、ずっと大きな面積にわたって形成される。図3を参照のこと。多くの異なる樹脂誘導物質(例えば、NaCl、塩化鉄III、塩化鉄II、キチン、ギ酸など)が用いられ得る。また、微生物は、樹木に接種されて、より激しい宿主応答を誘導し得る。ベトナムで生長した老樹の木材における沈香柱から単離された、分類学的に、Deuteromycota群、Ascomycota群およびBasidiomycota群由来の真菌種を、試験樹木に接種した。いくつかの真菌の存在は、傷が開いたままであって樹木の生存細胞を破壊し続けるのを助け得、それゆえ、誘導剤として作用し得る。老樹の木材およびプランテーションで生長した若い樹木における、天然に存在する樹脂由来の沈香において産生されたセスキテルペンを化学的に分析し、そしてこの樹脂は同じであった。
【0025】
本発明の1つの実施形態では、この方法は、樹木を螺旋状に上る、作製された一連の穿孔傷(樹木1本あたり30〜100+)を含む。各傷は、短い間隔によって隔てられる。各傷は、チューブ(例えば、プラスチックチューブ)を受け、そのチューブの壁に多くの孔を有する。このチューブは穿孔傷に挿入され、そして樹木から2〜15cm外へ伸ばした。このチューブはまた、誘導剤を含む。別の方法は、樹木を螺旋状に上る孔を開けることであり、そして誘導剤は、傷に直接的に添加される。各傷は、孔の周囲に形成層のパッチを切り取るように刻み付けられる。この傷は、経時的に調べられ、そして新たな画線および/または穿孔を用いて、孔が開いたままにする。樹木を、沈香産生のために自然または温室内で生長させ得る。
【0026】
以下の実施例は、本発明を例示することを意図するが、本発明を限定しない。
【実施例】
【0027】
ベトナムのAn Giang ProvinceまたはPhu Quoc Islandにおけるプランテーションで生長させた、樹齢約4〜5年の樹木を、実験1〜8のために用いた。
【0028】
(実施例1)
樹木を、各樹木の主幹に6箇所の斧傷を作製することによって傷付けた。6ヵ月後に収穫した樹木を切断し、そして傷付けた領域を通るように割った。変色面積を、露出した長手方向面について測定した。樹脂形成(沈香)は、(生じる場合)傷付けて変色した木材と、生存して未変化の木材との間の小さな領域において生じた。6ヵ月後、6箇所の斧傷の変色の平均面積は6.1cmであり、1.6〜9.1cmの範囲にわたり、そして樹脂形成の明瞭な領域は見られなかった。21ヵ月後、6箇所の斧傷の平均面積は0.3cmであり、0.0〜1.5cmの範囲にわたり、樹脂は見られなかった。この研究からの結果は、斧で樹木を傷付け、そして作製することは、浅い表面の傷は沈香を産生しないことを示す。
【0029】
(実施例2)
樹木に、5/8インチの穿孔傷を約5cmの深度で作製した。6箇所の傷を、螺旋状の様式で樹木の幹に約20cmの間隔をおいて作製した。6箇所の傷のうちの1箇所を、コントロールとして供し、そして他の5箇所の傷に、天然で生産される沈香を有する、森林由来の樹木由来の沈香(1箇所の傷あたり約0.5g)を充填した。この樹木は、密猟者によって切断されたが、この樹木のいくつかの部分は残ったままであり、ここからいくらかの新鮮な沈香が得られた。沈香の小さな切片を切断し、穿孔傷に入れた。6ヵ月後および18ヵ月後、樹木を収穫し、そして以下の結果を用いて評価した。
【0030】
【表1】


変色の量は、斧傷を用いた場合よりもいくらか多く、そして樹脂であるように見える非常に小さな領域が、変色した木材と健全な木材との間の界面に見出された。しかし、樹木
は、迅速に閉鎖し、そして沈香形成プロセスは、18ヵ月後に存在した比較的小さな変色面積に見られたように、進行しなかった。
【0031】
(実施例3)
樹木に、5/8インチの穿孔傷を約5cmの深度で作製した。6箇所の傷を、螺旋状の様式で樹木の幹に約20cmの間隔をおいて作製した。6箇所の傷のうちの1箇所を、コントロールとして供し、そして他の5箇所の傷に、ベトナムの自然森林から得た、新鮮な沈香から単離した真菌の純粋培養物を接種した。AscomyotaおよびDeuteromycotaの異なる種を代表する、5つの異なる真菌を用いた。これらの属および種は、決定されなかったが、培養物の形態は、各真菌が異なる属を代表することを示した。沈香を刺激するために好首尾であるようにと証明された唯一の培養物は、野外でのデータが得られた後に、種まで同定されるべきであった。真菌を、添加された栄養素について麦芽抽出物ブロスを補充した無菌のオートムギで増殖させた。培養物を、オートムギ/麦芽抽出物基質で3週間にわたって増殖させた。真菌を接種した穿孔傷に、真菌/オートムギ接種物を充填した。6ヵ月後、18ヵ月後および21ヵ月後、これらの樹木を収穫し、そして以下の結果が得られた。
【0032】
【表2】


これらの結果は、ベトナムにおける新鮮な沈香に関連した共通の真菌が、沈香の形成を有意に刺激しないことを示す。変色領域および非常にわずかな量の樹脂産生の中間領域は、非接種穿孔傷と真菌の純粋培養物を受けた傷との間で類似していた。沈香産生の有意な増加は、3回の収穫日にわたって生じなかった。
【0033】
(実施例4)
樹木に、5/8インチの穿孔傷を、約5cmの深度で作製した。6つの傷を、約20cm離して、各樹木の幹に螺旋様式で作製した。この6つの傷のうちの2つは、コントロールとして供され、そして他の4つの傷に、異なる型の栄養増殖培地(研究室において微生物を培養するために使用されたもの)または土を接種した。
【0034】
処理は、以下を含んだ:
−−コントロール 未処理
−−Difco麦芽抽出物(ME) 1傷あたり約0.1g添加した
−−Difco菌学的寒天(MYCO) 1傷あたり約0.1g添加した
−−Difco酵母抽出物(YE) 1傷あたり約0.1g添加した
−−土 この樹木が生育していたプランテーション由来の土を、1傷あたり約0.25g添加した。
【0035】
12ヵ月後
傷 処理 変色面積
1 コントロール 未処理 16.7
2 ME 11.2
3 MYCO 12.3
4 YE 8.1
5 土 7.3
6 コントロール 未処理 6.4。
【0036】
21ヵ月後
傷 処理 変色面積
1 コントロール 未処理 6.0
2 ME 7.2
3 MYCO 16.8
4 YE 10.8
5 土 10.5
6 コントロール 未処理 12.6。
【0037】
これらの結果により、培養において真菌を増殖させるために使用された栄養素のみを使用した場合には、沈香の誘発は見られないことが示される。穿孔の傷の中に配置された土もまた、沈香の形成を刺激しなかった。すべての傷は、表面の形成層細胞から傷を閉鎖する形跡を有し、そして木部の中に含まれた師部細胞は、新たな細胞を生成して、穿孔の内部から傷を閉鎖した。
【0038】
(実施例5)
異なる型の化合物が沈香の生成を刺激し得るか否かを試験するために、5/8インチの穿孔傷を、若年のプランテーション樹木の主幹に約5cmで作製し、そして異なる物質を使用して、その穿孔傷を処理した。使用された化学薬品は、Sigma Chemicals Inc.、St.Louis、MissouriまたはMallinckrodt
Inc.、Paris、Kentuckyからのものであった。1樹木あたり1つの穿孔傷は、いかなる処理も受けず、そして他は、以下の処理のうちの1つを受けた:
キトサン−精製キチン 1傷あたり、約0.2gのキチンを添加した
ギ酸−1傷あたり、約0.1gのギ酸を添加した
塩化ナトリウム−1傷あたり、約0.2gを添加した
セロビオース−1傷あたり、約0.2gを添加した
石灰−1傷あたり、約0.1gの炭酸カルシウムを添加した。
【0039】
樹木を、12ヵ月後、18ヵ月後、および21ヵ月後に採集した。
【0040】
12ヵ月後
傷 処理 変色面積
1 コントロール 未処理 11.2
2 キトサン 9.0
3 ギ酸 28.5
4 NaCl 49.3
5 石灰 10.0
6 セロビオース 9.9。
【0041】
18ヵ月後
傷 処理 変色面積
1 コントロール 未処理 25.4
2 キトサン 22.1
3 ギ酸 18.6
4 NaCl 44.7
5 石灰 18.7
6 セロビオース 20.3。
【0042】
21ヵ月後
傷 処理 変色面積
1 コントロール 未処理 11.1
2 キトサン 3.8
3 ギ酸 31.8
4 NaCl 36.4
5 石灰 9.7
6 セロビオース 7.4。
【0043】
これらの結果により、樹木における反応領域および変色面積は、木部の傷付けた領域の周囲にある生存している柔組織細胞を死滅させる化合物で増加され得ることが示される。沈香樹脂の沈着は、この変色領域の縁で形成された。低いpHを有するギ酸のような物質および高いpHを有するNaClのような物質は両方とも、生存している細胞を破壊し得、そしてコントロールの傷よりも多い量の沈香を誘導し得る。樹木が生育し、そして傷が閉鎖するにつれて、罹患した領域は減少する。キトサン、セロビオースおよび石灰のような他の物質は、試験された濃度で、樹木において変色面積を増加させない。しかし、傷付けた領域に隣接した生存している細胞に有害な量で添加された場合、これらは、影響を有する。微視的な観察によって、NaClまたはギ酸で処理された傷の周辺の細胞は広範に反応し、そして師部細胞が樹脂で満たされることが示されている。これらの細胞は、形成層の最初の細胞を生成する能力を有さず、そして傷の閉鎖は遅延される。木部における生存している柔組織細胞および師部細胞に影響を及ぼす物質は、樹脂生成を刺激し、そして沈香の生成を誘導する。これらはまた、外側の形成層からの傷の閉鎖、ならびに、含まれる師部により形成される新たな細胞を阻害する。
【0044】
(実施例6)
天然の沈香および実験的に生成された沈香の化学的組成に関する分析を、存在するセスキテルペンを指標とすることにより実施した。サンプルを、37.5℃でメチレンジクロリド中で抽出し、そして窒素を使用して、容量を少なくとも0.1mlにまで減少させた。メチル化剤を、15m×0.25mm DB−1カラムを備えたHewlett−Pa
ckard 5890ガスクロマトグラフに注入する前に添加した。注入器の温度は280℃であった。4分後、50℃の最初のカラム温度を、10C/1分間で340℃まで上昇させた。溶離剤は、280℃での界面でHewlett−Packard 5972質量選択的検出器により検出された。
【0045】
シンガポール商人から商業的に入手された、下等、中等および高等の沈香サンプルは、サンプルの0.3〜10%の範囲に及ぶセスキテルペンのレベルを有した。セスキテルペンは、アロマデンドレン、β−セリネン、γ−カジネン、α−ガイエンおよびβ−ガイエンを含んだ。実験樹木からの沈香のサンプルに由来するセスキテルペンのレベルは、0%(コントロールの傷)〜1.5%(12ヶ月後の、NaCl処理された穿孔傷処理)であった。セスキテルペンは、アロマデンドレン、β−セリネン、γ−カジネン、α−ガイエンおよびβ−ガイエン、ならびにα−フムレンを含んだ。
【0046】
(実施例7)
複数の小さな穿孔傷を、各樹木に3箇所作製して、沈香形成に対する傷のサイズおよび複数の傷の効果を観察した。約5mm直径の20個の孔を、樹木の木部に約5cmで穿孔した。5つの傷の列を4つ、約2cm離して作製した。傷の群を、樹木の異なる側面に30cmの間隔で作製した。10×10cmの面積の樹皮を、20個の傷の各群の周辺で切り出した。樹木を18ヵ月後に採集した。小さな穿孔傷によって生じた変色領域は共に融合し、その縁に沿って形成されたいくらかの沈香樹脂を有する広い変色領域を生じた。傷および傷の閉鎖部の周辺にある細胞の正常な機能を破壊するために供された複数の傷は、遅延した。樹木に作製された単一の小さな穿孔傷は、有意な量の沈香樹脂を生成しない。なぜなら、樹木に作製された単一の小さな穿孔傷は迅速に閉鎖するが、樹木において共に接近して作製された複数の傷の群は、木部の正常な機能を破壊し、そして沈香生成を刺激したからである。
【0047】
(実施例8)
フーコック島(Phu Quoc Island)におけるプランテーションで生育した14本の樹木を使用して、異なる処理を試験した。各々の樹木は、約20cm離れて樹木の主幹を螺旋状に昇る8個の傷を受けた。一通りの範囲の異なる型の傷および処理、ならびにコントロールを、各樹木において作製した。各処理を、各樹木の異なる位置に作製して、傷の位置が影響を有さないことを保証した。樹木を15ヶ月後に採集し、そして分析のために研究所に持ち込んだ。
【0048】
処理は、以下を含んだ:
1.約5×5cmの表面傷を、樹皮を切り、そして樹皮組織を取り外して木部を露出させることによって作製した。穿孔は作製しなかった。
2.5/8インチの穿孔傷を、木部に約5cmで作製した。
3.5/8インチの穿孔傷を、木部に約5cmで作製し、そして5×5cm切片の樹皮をその穿孔の周辺で取り外し、そして約0.3gの滅菌Aquilaria木屑を、その穿孔傷に添加した。
4.#3と同じであるが、約0.3gの1:1比の塩化第一鉄:滅菌Aquilaria木屑を、穿孔傷に添加した。
5.#3と同じであるが、約0.3gの1:2比のNaCl:滅菌Aquilaria木屑を、穿孔傷に添加した。
6.#3と同じであるが、約0.3gの1:4比のDifco酵母抽出物:滅菌Aquilaria木屑。
7.#3と同じであるが、約0.3gの1:1比の亜硫酸水素ナトリウム:滅菌Aquilaria木屑。
8.#3と同じであるが、約0.3gの1:2:4比のDifco栄養素ブロス:Dif
co麦芽抽出物:滅菌Aquilaria木屑。
【0049】
15ヵ月後に、8本の樹木を採集し、そして分析のために研究所に持ち込んだ。変色面積および樹脂形成は、樹木を割ることによって決定されたが、傷付けた領域および影響を受けた領域は、画像分析器を使用して測定された。面積(cm)を、長軸方向の平面におけるすべての傷について決定した。各値は、8個の傷の平均である。
【0050】
傷の処理 変色面積/樹脂
1 表面傷 1.4
2 穿孔傷 46.3
3 表面傷および穿孔傷 27.3
4 傷/塩化第一鉄 112.5
5 傷/NaCl 48.1
6 傷/酵母抽出物 28.6
7 傷/亜硫酸水素ナトリウム 182.0
8 傷/栄養素培地 34.3。
【0051】
この研究によって、若年のAquilaria属樹木におけるかなりの量の沈香の生成について、いくつかの処理の有効性が示された。表面傷は、沈香を生成しない。深く貫通する傷は、その傷の部位が開かれたままであれば、いくらかの沈香を生成し得る。木部における穿孔傷の周辺にある生存している細胞にチャレンジされる化合物(例えば、NaCl、亜硫酸水素ナトリウム、塩化第一鉄、および生存している樹木細胞の正常な機能を破壊する任意の他の化学薬品)は、樹木における変色面積および形成される沈香樹脂の量を増加させる。
【0052】
(実施例9)
自家菜園および農地(コントゥム(Kon Tum)、ベトナムおよびヌイカム(Nui Cam)、ベトナム)における二箇所で生育している若年の樹木に、1樹木あたり8個の傷を与えた。5/8インチ直径の穿孔傷を、約20cm離して螺旋様式で、各樹木の主幹に約5cmで作製した。すべての穿孔傷を刻んで、その傷周辺の5×5cm面積の樹皮を取り外した。真菌処理は、ベトナムにおけるAquilaria属樹木から得られた3つの異なる型のBasidiomycotaから構成された。これらの分離株は、属まで同定されなかったが、培養形態は、それらが異なる属であることを示していた。培養物を、麦芽抽出物を補充された滅菌イネにおいて増殖させた。培養物を、接種する前の3週間にわたり増殖させた。
【0053】
処理は、以下を含んだ:
1.滅菌イネを受けたコントロール傷
2.真菌培養物97−14−5
3.真菌培養物97−13−7
4.真菌培養物97−11−25
5.5gの滅菌Aquilaria木屑を受けたコントロール傷
6.約0.5gの1:4比の亜硫酸水素ナトリウム:滅菌Aquilaria木屑
7.約0.5gの1:2比のサリチル酸:滅菌Aquilaria木屑
8.約0.5gの1:4比の塩化第一鉄:滅菌Aquilaria木屑。
【0054】
15ヵ月後に、各場所から2本の樹木を採集し、そして分析のために研究室に持ち込んだ。各々の傷の型についての平均面積を算出した。
場所 コントゥム(Kon Tum)
傷の処理 変色面積 cm
1 コントロール 22.7
2 97−14−5 14.5
3 97−13−7 18.0
4 97−11−25 17.5
5 コントロール 11.1
6 亜硫酸水素ナトリウム 52.3
7 サリチル酸 16.9
8 塩化第一鉄 18.4。
【0055】

場所 ヌイカム(Nui Cam)
傷の処理 変色面積 cm
1 コントロール 15.5
2 97−14−5 18.2
3 97−13−7 31.2
4 97−11−25 20.9
5 コントロール 20.6
6 亜硫酸水素ナトリウム 56.9
7 サリチル酸 25.5
8 塩化第一鉄 23.3。
【0056】
この研究によって、使用された3つの異なる担子菌綱真菌が、さほど広い変色面積を生じさせず、そしてその面積はコントロール傷と大して相違しないことが示された。実施例8との比較において使用された減少した濃度の亜硫酸水素ナトリウムは、変色および沈香樹脂の量の減少を引き起こすこともまた示された。より小さな変色面積が見出されたが、この変色した/無傷と傷の界面では、沈香樹脂が形成された。この木材を、傷の周辺から取り出し、そして燃やした場合、この木材は、特有の沈香の芳香を生じさせた。サリチル酸および塩化第一鉄のようないくつかの化合物は、大きな変色面積を生じさせなかった。これらの化合物は明らかに、穿孔傷に隣接した、木部における生存細胞に影響を及ぼすに十分な濃度で適用されねばならない。例えば、この実施例では、塩化第一鉄を、1:4の比で木屑と共に使用し、そして中程度の量の変色が観察された。以前の実施例では、塩化第一鉄は1:1の比で使用され、より多い量の反応および沈香生成を、傷付けた木部において伴った。
【0057】
(実施例10)
実験樹木において配置された鉄釘は、6ヵ月後、15ヵ月後または18ヵ月後に採集された場合に、少量ではあるが有意な量の沈香を示した。木部において観察された反応は、鉄が樹脂生成を刺激し、そして、鉄釘または他の鉄供給源が、沈香形成に影響し得ることを示している。
【0058】
(実施例11)
二箇所(ベトナムのヌイカム(Nui Cam)およびコントゥム(Kon Tum))で生育している若い5〜6年齢の樹木を、その木部に約5.0cmの深度で5/8インチの穿孔傷を作製することによって傷付けた。傷を、約10cm離して、その樹木を螺旋状に昇るように配置した。5×5cm面積の樹皮を、傷周辺から取り外し、そしてプラスチック管を、傷に挿入した。プラスチック管は、側面に穿孔された通気孔およびその表面に作製された浅い溝を有し、樹木に挿入された場合にその管に沿った空気の移動を容易にした(図3を参照のこと)。その管は、樹木から約10cm突き出し、そのためその孔は多年にわたり閉鎖しない。この管により、傷が開かれたままとなり、そして内部の傷付けた木部に空気が接近可能であることが保証される。管をのみを受ける傷に加えて、挿入さ
れた管を有する他の傷は、添加された1:1:3の亜硫酸水素ナトリウム:Difco酵母抽出物:鉄粉の組み合わせを有した(鉄粉は、J.T.Baker Inc.Phillipsburg、NJにより製造された、99.6%Feの粉末であった)。木部および師部細胞の正常な機能の局所的破壊を引き起こす他の化合物もまた、内部に含まれる師部が、二次細胞(これは、穿孔傷の内側から傷を閉鎖し得る)を生成するのを妨げるために、そして、木部におけるより広い細胞領域を破壊するために使用され得る。傷が空気に対して開かれたままである限り、沈香は徐々に蓄積する。(樹木を死滅させずに)傷周辺の生存細胞の破壊が大きくなるにつれて、沈香生成は高まる。死滅した樹木は沈香を形成しないので、樹木は、沈香を形成するために生きたままでなければならない。樹木が新たな木質を成長させるにつれて、さらなる孔を作製して、沈香の領域が新たな木部に移動することを可能にした(図4)。
【0059】
(実施例12)
二箇所(ベトナムのヌイカム(Nui Cam)およびコントゥム(Kon Tum))にある樹木を、約5cmの深度まで、5/8インチドリルを使用して傷つけた。傷を、地面のラインから樹冠まで、樹木において螺旋様式で配置した。傷を、3〜5cm離して配置した。経時的に、傷を再度傷つけて、傷を開いたままで維持した。これを、傷がどんな傷閉鎖を有するように見えた場合でも行った。ベトナムのこれらの領域で、傷は、2〜3ヶ月ごとに検査され、そして再度傷付けられた。樹木は、樹木のサイズに依存して、30〜70個の傷を傷つけられた。これらの研究は、木部において深く作製された繰り返しの機械的傷が、外部の形成層からの傷閉鎖および含まれる師部による内部の二次細胞増殖を妨げることによって、傷を開いたまま維持することを示している。傷が開かれたままである限り、局所的な沈香領域は、その傷にすぐ隣接して蓄積した。
【0060】
すべての刊行物、特許および特許文書が、個々に援用されているかのごとく、本明細書中で参考として援用される。本発明を、種々の特定の実施形態および技術ならびに好ましい実施形態および技術を参照して記載した。しかし、多くのバリエーションおよび改変が、本発明の範囲内にあるままでなされ得ることが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】含まれる篩部細胞の束によって産生される内部カルス形成および穿孔傷の内側からの傷閉鎖部を示す、沈香を促進するために何も行わなかった、収穫時の、傷が付けられたAquilariaの木の模式図。表面の細胞はまた、カルス組織および穿孔傷の外縁部から生じる傷閉鎖部を産生する。変色はほとんど形成されず、そして(あったとしても)些細な量の沈香が、変色した木材と健全な未変化の木部との間に、非常に細い帯状に形成され得る。
【図2A】傷が付けられ、そして通気孔にチューブが挿入された、Aquilariaの木の模式図。
【図2B】傷が付けられ、そして複数の通気チューブが木に挿入された、木の図面。
【図3】穿孔穴にプラスチックチューブが挿入された、収穫時の、傷が付けられたAquilariaの木を示す、模式図。木を、重亜硫酸ナトリウムで処理した。傷が付いた領域の周辺の変色した領域は、傷の上、下および周辺に広がる。沈香樹脂の領域は、変色した木材と、健全な未変化の木部との間に太いバンドを形成する。沈香産生のこの領域は、時間が経つにつれて、より大きく、そしてより濃くなる。
【図4】元の傷の約1年後に作製した新たな傷の影響を示す模式図。これらの新たな傷は、沈香が、元の傷が作製された後に産生された新たな木部に形成されるのを可能にする。
【出願人】 【識別番号】305023366
【氏名又は名称】リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ ミネソタ
【出願日】 平成20年2月26日(2008.2.26)
【代理人】 【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策

【識別番号】100062409
【弁理士】
【氏名又は名称】安村 高明

【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹


【公開番号】 特開2008−202051(P2008−202051A)
【公開日】 平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願番号】 特願2008−45217(P2008−45217)