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【発明の名称】 多孔質澱粉、芳香組成物及び塗布された紙製品、並びに芳香組成物塗布方法
【発明者】 【氏名】鳥澤 孝弘

【氏名】上原 徹也

【要約】 【課題】揮発性の高い香料成分の放出速度を遅らせる多孔質澱粉、芳香組成物及びこれが塗布された紙製品、並びに芳香組成物塗布方法を提供する。

【解決手段】デキストリン、シクロデキストリン、難消化デキストリンを含む澱粉分解物のいずれか一種以上を酸素又は酸により分解し、その分解物を乾燥させ粉末化して生成した多孔質澱粉に香料を浸透させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デキストリン、シクロデキストリン、難消化デキストリンを含む澱粉分解物のいずれか一種以上を酸素又は酸により分解し、その分解物を乾燥させ粉末化して生成した多孔質澱粉に香料を浸透させた、
ことを特徴とする多孔質澱粉。
【請求項2】
デキストリン、シクロデキストリン、難消化デキストリンを含む澱粉分解物のいずれか一種以上を酸素又は酸により分解し、その分解物を乾燥させ粉末化して生成した多孔質澱粉に、トップノート、ミドルノート、ボトムノートの少なくとも3つの揮発性成分を備えた芳香組成物のうち、少なくともトップノートを浸透させた、
ことを特徴とする芳香組成物。
【請求項3】
請求項1記載の多孔質澱粉又は請求項2記載の芳香組成物を塗布された紙製品。
【請求項4】
トップノート、ミドルノート、ボトムノートの少なくとも3つの揮発性成分を備えた芳香組成物の紙製品への塗布方法であって、
少なくともトップノートの成分を、デキストリン、シクロデキストリン、難消化デキストリンを含む澱粉分解物のいずれか一種以上を酸素又は酸により分解し、その分解物を乾燥させ粉末化して生成した多孔質澱粉に予め浸透させ、
次いで、残りの成分を紙製品の塗布対象部分に吹き付け、
次いで、少なくともトップノートの成分を浸透させた前記多孔質澱粉を、吹き付けた前記残り成分とは別の塗布対象部分に散布、又は吹き付けた前記残り成分と同じ塗布対象部分で混合して散布することを特徴とする芳香組成物塗布方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質澱粉、芳香組成物及び塗布された紙製品、並びに芳香組成物塗布方法に関し、詳しくは揮発性の高い香料成分を多孔質体の孔に染み込ませた香料の放出制御技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、トイレットロール等の紙製品において、ロールシート等に香料を塗布して、使用時にその揮散した香りを嗅ぐようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−49724号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、香料成分は時間の経過と共に揮散するが、揮発性の高い香料成分は、短期間に揮散してしまい、例えば、製品を消費者が実際に使用する段階では香りの強弱が生じたり、均一な香りが維持できないという問題が生じたり、製品価値として十分とは言えないものであった。
そこで、本発明の主たる課題は、揮発性の高い香料成分の放出速度を遅らせる多孔質澱粉、芳香組成物及びこれが塗布された紙製品、並びに芳香組成物塗布方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決した本発明は、次のとおりである。
<請求項1記載の発明>
請求項1記載の発明は、デキストリン、シクロデキストリン、難消化デキストリンを含む澱粉分解物のいずれか一種以上を酸素又は酸により分解し、その分解物を乾燥させ粉末化して生成した多孔質澱粉に香料を浸透させた、ことを特徴とする多孔質澱粉である。
【0005】
<請求項2記載の発明>
請求項2記載の発明は、デキストリン、シクロデキストリン、難消化デキストリンを含む澱粉分解物のいずれか一種以上を酸素又は酸により分解し、その分解物を乾燥させ粉末化して生成した多孔質澱粉に、トップノート、ミドルノート、ボトムノートの少なくとも3つの揮発性成分を備えた芳香組成物のうち、少なくともトップノートを浸透させた、ことを特徴とする芳香組成物である。
【0006】
<請求項3記載の発明>
請求項3記載の発明は、請求項1記載の多孔質澱粉又は請求項2記載の芳香組成物を塗布された紙製品である。
【0007】
(作用効果)
デキストリン、シクロデキストリン、難消化デキストリンを含む多孔質澱粉は、コスト的にも安価であり、人体に対する影響が極めて少ない。また、多孔質澱粉の表面に形成された複数の孔(凹み)の大きさは小さく、この孔における外気と接触する面積は少なくなっているため、この孔には、毛細管現象により、香料が浸透するようになっている。ここで、多孔質化している澱粉は、多孔質化していない澱粉よりも、表面積が大きくなるため、より多くの香料を浸透させることが可能となっている。また、孔の窪みの中に香料が入り込んでいるので、外気と接触する面積は少ないため、澱粉の表面全体に揮発性の高い香料が散布されている場合に比べて、香料の放出速度が遅延化し、香りの持続効果が向上する。
また、揮発性の高い少なくともトップノートを多孔質澱粉に浸透させ、揮発性の低い成分である残りの成分を多孔質澱粉に浸透させることなく従来のように塗布することで、3つの揮発性成分の均一な香りを、最初から最後まで変化させることなく維持させることができる。
【0008】
<請求項4記載の発明>
請求項4記載の発明は、トップノート、ミドルノート、ボトムノートの少なくとも3つの揮発性成分を備えた芳香組成物の紙製品への塗布方法であって、少なくともトップノートの成分を、デキストリン、シクロデキストリン、難消化デキストリンを含む澱粉分解物のいずれか一種以上を酸素又は酸により分解し、その分解物を乾燥させ粉末化して生成した多孔質澱粉に予め浸透させ、次いで、残りの成分を紙製品の塗布対象部分に吹き付け、 次いで、少なくともトップノートの成分を浸透させた前記多孔質澱粉を、吹き付けた前記残り成分とは別の塗布対象部分に散布、又は吹き付けた前記残り成分と同じ塗布対象部分で混合して散布することを特徴とする芳香組成物塗布方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、揮発性の高い香料成分の放出速度を遅らせることができる等の利点がもたらされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
<多孔質澱粉>
本発明に係る多孔質体としては、コスト的にも安価であり、人体に対する影響が極めて少ない点から、多孔質澱粉を用いることが好適である。多孔質澱粉1の粒径は1〜100μmであり、球体の表面には複数の孔(凹み)がランダムに形成されており、このため、多孔質化していない同体積の澱粉に比べて、密度比が0.1〜0.9(多孔質化していない澱粉を1とする)となっている。
多孔質澱粉1の構造は、図1及び図2に示すように、球体の表面に形成された複数の孔(凹み)の大きさ(孔径)は小さく、この孔における外気と接触する面積は少なくなっている。そして、この孔に毛細管現象により香料2が浸透するようになっている。ここで、多孔質化している澱粉は、多孔質化していない澱粉よりも、表面積が大きくなるため、より多くの香料を浸透させることが可能となっている。また、孔の窪みの中に香料2が入り込んでいるので、外気と接触する面積は少ないため、球体の表面全体に揮発性の高い香料が散布されている場合に比べて、香料2の放出速度が遅延化し、香りの持続効果が向上する。
デキストリン、シクロデキストリン、難消化デキストリンを含む澱粉分解物のいずれか一種以上を酸素又は酸により分解し、その分解物をドラムドライヤーにて乾燥させ、粉体状の多孔質澱粉1を製造する方法としては、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、甘藷澱粉、タピオカ澱粉、サゴ澱粉、米澱粉、アマランサス澱粉等の天然澱粉、それらのエーテル化、エステル化、架橋等の澱粉誘導体のいずれか1種以上を、酵素又は酸により分解した溶液を、ドラムドライヤーにて乾燥し粉末化する方法が挙げられる。
コーンスターチ澱粉を例として挙げると、分解前の密度は約0.5〜0.6g/mlで、分解後の密度は約0.4〜0.6g/mlとなる。また、分解前の吸油能は0.4〜0.5ml/gで、分解後の吸油量は0.8〜1.1ml/gとなる。(JIS顔料の油吸着試験法による)多孔質の内部にさまざまなものを包接することができ、不安定な物質を包接することにより安定性や除放性を付与できる利点がある。
本発明に係る香料2としては、特に限定されるものではないが、例えば、リュウゼン香、安息香、海狸香、霊猫香、丁字油、ガルバナム、ジャスミンアブソリュート、ラブタナム、マテ茶、メリロット、ミモザ、ムスクトンキン、ミルラ、オークモスまたはモスドシェーヌ、乳香、ビャクシ香、オリス、バチュリ、ローズマリー油、白檀油、ベチバー油、バイオレットリーフアブソリュートなどの天然香料、高級アルコール、アルデヒド、ベンズアルデヒド、安息香酸、ケイ皮酸、ケイ皮アルデヒド、ケイ皮アルコール、クマリン、エステル、インドール、ケトン、サリチル酸と関連化合物、テルペノイド、バニリンなどの各種の合成香料あるいはこれらの2つ以上の混合物を挙げることができる。市販品を使用することもできる。
多孔質澱粉1の孔に揮発性の高い香料成分を染み込ませることによって、揮発を遅らせ、香りを変化させることなく持続させることができる。
【0011】
<多孔質澱粉の芳香組成物への適用>
様々な香料から構成される芳香組成物は、主に3つの揮発性成分(トップノート・ミドルノート・ボトムノート)から成り立っているが、時間が経過するとともに、トップの成分は揮発性が最も強いため、早く揮発する。そうすると、香りの成分比が変化してしまうため、香りがもとのものと違うものになってしまう。そこで、多孔質澱粉の孔に揮発性が最も強いトップノートを少なくとも浸透させることによって、少なくともトップノートの放出速度を緩やかにさせることができ、揮発性成分比を著しく変化させることなく、同じ香りを持続することができるようになる。この場合、揮発性の低い成分であるその他の成分(ミドルノート・ボトムノート)も多孔質澱粉に浸透させてもよいが、揮発性の高いトップノートを多孔質澱粉に少なくとも浸透させ、揮発性の低い成分であるその他の成分を多孔質澱粉に浸透させることなく従来のように塗布することで、3つの揮発性成分の均一な香りを、最初から最後まで変化させることなく維持させることができる。
ここで、トイレットロール(図示せず)の軸芯となる紙管部10に、芳香組成物のトップノートを少なくとも浸透させた多孔質澱粉1を用いた場合のトイレットロールの製造方法(芳香組成物塗布方法)について図3及び図4に基づき説明する。
まず、図示はしないが、芳香組成物の揮発性の高いトップノートの成分を、多孔質化した澱粉に少なくとも予め吸収(浸透)させる。次いで、図3に示すように、残りの成分を紙管部10に吹付ける。この際の吹付方法は、公知の吹付方法でよい。
次いで、図4に示すように、トップの成分を少なくとも吸着させた多孔質澱粉1を、吹き付けた残りの成分の上からスプレーやロール転写等の公知の散布方法で散布(吹き付けた残り成分と同じ塗布対象部分で混合させる)すればよい。これにより、少なくともトップ成分の揮発を抑え、香りを変化させることなく保持することができる。また、トップの成分を少なくとも吸着させた多孔質澱粉1を、吹き付けた残り成分と同じ塗布対象部分で混合させることに換えて、図示はしないが、吹き付けた残り成分とは別の塗布対象部分に散布してもよい。さらに、図示はしないが、トップの成分を少なくとも吸着させた多孔質澱粉1を塗布対象部分に散布した後に、残り成分を吹き付けてもよい。
なお、トイレットロールの紙管部に限らず、図示はしないが、カートン、フィルム、衛生薄用紙等の様々な種類の紙製品に適用してもよい。
【実施例】
【0012】
以下では、実施例1〜5と比較例6〜9について、トイレットロール保存試験(加速試験)を行なった。
試験の条件としては、芳香組成物の揮発性の高いトップノートの成分を、多孔質化した澱粉に少なくとも予め吸収(浸透)させる。次いで、図3に示すように、残りの成分を紙管部10に吹付ける。この際の吹付方法は、公知の吹付方法でよい。
次いで、図4に示すように、トップの成分を少なくとも吸着させた多孔質澱粉1を、吹き付けた残りの成分の上からスプレーやロール転写等の公知の散布方法で散布(吹き付けた残り成分と同じ塗布対象部分で混合させる)すればよい。これにより、少なくともトップ成分の揮発を抑え、香りを変化させることなく保持することができる。また、トップの成分を少なくとも吸着させた多孔質澱粉1を、吹き付けた残り成分と同じ塗布対象部分で混合させることに換えて、図示はしないが、吹き付けた残り成分とは別の塗布対象部分に散布してもよい。さらに、図示はしないが、トップの成分を少なくとも吸着させた多孔質澱粉1を塗布対象部分に散布した後に、残り成分を吹き付けてもよい。なお、使用した多孔質澱粉1は、コーンスターチ澱粉より生成された日澱化学株式会社製「ロンフードOWP」である。
上記の方法で製造したトイレットロールを密閉可能な袋に入れる。これを一定温度50℃の条件下に設置するものである(50℃に上げることによって、時間の経過を加速させる)。数日おきにトイレットロールを袋から取り出し、官能評価を行なう。官能評価を行なったサンプルは再び密栓可能な袋に戻し入れ、50℃の恒温層へ戻す。対照試験として、袋に入れ室温(1℃〜30℃)に設置したもの、袋に入れず室温に設置したものも同時に行なう。サンプルの評価期間は30日程度とし、20日間保存で室温3年間保存に相当するものとみる。
官能評価の方法は、香りの強度と、香質の変化の2水準とする。香りの強度は、基準となる香料を付けたロールの香りの強度を5とし5段階評価する。5、4、3は合格レベル。2、1は不合格レベルとする。香質の変化は、基準となる香料を付けたロールの香りの香質を3とし3段階評価をとる。3、2は合格レベル。1は不合格レベルとする。
【0013】
【表1】


【0014】
ここで表1の「RT(Room Temperature)」とは、上記の方法で製造したトイレットロールを密閉可能な袋に入れ、これを室温の条件下(1℃〜30℃)に設置した状態を示している。また、「50℃」とは上記の方法で製造したトイレットロールを密閉可能な袋に入れ、これを50℃の恒温槽の条件下に設置した状態を示している。さらに、「開放RT」とは、上記の方法で製造したトイレットロールを袋に入れず、これを室温の条件下に設置した状態を示している。
なお、表1中の「フローラル感減る」、「劣化」とは、ブランクと比較したときの香りの強さ、香質の変化における官能的評価のコメントである。なお、ブランクとは、対照サンプルのことをいい、上記の方法で製造したトイレットロールで、香りの強さ、香質において時間を経過させていないサンプルを指すものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る香料を浸透させた多孔質澱粉の概略図である
【0016】
【図2】そのI−I断面図である。
【図3】多孔質化した澱粉に予め吸収(浸透)させた成分以外の成分を吹付けた状態の紙管部を示す斜視図である。
【図4】その上に少なくともトップノートを浸透させた多孔質澱粉を散布した状態の紙管部を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0017】
1…多孔質澱粉、2…香料、3…ミドルノート、4…ボトムノート、10…紙管部。
【出願人】 【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
【出願日】 平成19年1月31日(2007.1.31)
【代理人】 【識別番号】100082647
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 義久


【公開番号】 特開2008−189702(P2008−189702A)
【公開日】 平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願番号】 特願2007−22482(P2007−22482)