トップ :: C 化学 冶金 :: C11 動物性または植物性油,脂肪,脂肪性物質またはろう;それに由来する脂肪酸;洗浄剤;ろうそく

【発明の名称】 高純度リン脂質の製造法
【発明者】 【氏名】久山 徹

【氏名】金田 輝之

【氏名】羽田 尚彦

【氏名】清水 芳雄

【要約】 【課題】所望されない有機溶媒の混入の少ない高純度なリン脂質の製造方法、および、その方法によって得られた高純度リン脂質含有組成物を提供することを、本発明の課題とする。

【構成】高純度のリン脂質を製造する方法であって、(a)油脂成分と極性の低い有機溶媒を混合する工程;(b)該混合物をシリカゲルに添加する工程;および(c)極性の低い有機溶媒を用いて、シリカゲルからリン脂質を溶出する工程、を包含する方法を提供することによって、本発明の課題は、解決された。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高純度のリン脂質を製造する方法であって、以下:
(a)油脂成分と極性の低い有機溶媒を混合する工程;
(b)該混合物をシリカゲルに添加する工程;および
(c)該極性の低い有機溶媒を該シリカゲルに添加して、シリカゲルからリン脂質を溶出する工程、
を包含する、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記極性の低い有機溶媒がヘキサンである、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、前記油脂成分と前記極性の低い有機溶媒との比率が、1対1〜1対1000の間である、方法。
【請求項4】
前記油脂成分が、リン脂質供給源より抽出用有機溶剤で抽出することによって調製されている、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法であって、前記抽出用有機溶剤が、以下:
エタノール、ヘキサン、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、アセトン、エーテル、クロロホルム、メタノール、あるいはこれらの混合物、からなる群から選択される、方法。
【請求項6】
リン脂質含有組成物であって、以下:
(a)油脂成分と極性の低い有機溶媒を混合する工程;
(b)該混合物をシリカゲルに添加する工程;および
(c)該極性の低い有機溶媒を該シリカゲルに添加して、シリカゲルからリン脂質を溶出する工程、
を包含する方法によって調製される、組成物。
【請求項7】
請求項6に記載の組成物を含む、食品用組成物。
【請求項8】
請求項6に記載の組成物を含む、医薬用組成物。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は天然物から抽出した総脂質を、リン脂質に簡単に精製することのできる、高純度リン脂質の製造方法であり、食品および医薬品に関する。
【背景技術】
【0002】
リン脂質は動物、植物等の生体内に広く分布しており、その植物性、動物性のいずれもが利用価値の高い物質である。例えば、リン脂質はその界面活性機能から食品分野、化粧品分野、医薬品分野に利用されている。特にリン脂質含量が高純度に精製されたリン脂質は乳化特性、安全性に優れていることから脂質輸液など医薬品分野での利用開発が行われている。
従来のリン脂質の精製法としては、アセトン分別法(特許文献1)とシリカゲルカラム法(特許文献2)が挙げられる。例えば、卵黄由来リン脂質としては、割卵分離して得られた卵黄液を一旦乾燥して乾燥卵黄としたものに、アルコールを作用させてアルコール可溶性成分を抽出した後、該アルコールを除去して得られたものが知られている。精製卵黄リン脂質を得る方法としては、こうして得られた卵黄リン脂質を原料として、リン脂質はアセトンに不溶であるが、中性脂質はアセトンに可溶であるとの性質を利用する方法がよく知られている(アセトン分別法)。しかし、アセトン分別法は大規模な製造には適していないことや、アセトンの残留を減らすことが容易でないだけでなく、さらにその縮合体で特有の臭いを有するメシチルオキサイドやイソホロンなどの有害物質が精製することが、欠点として挙げられる。
一方、シリカゲルカラム法は原料の卵黄リン脂質をシリカゲルカラムに負荷し、クロロホルム−メタノール混液のメタノール含量を除々に増加して中性脂質を溶出した後、リン脂質を溶出させる方法がよく知られている(シリカゲルカラム法)。しかし、シリカゲルカラム法はクロロホルムやメタノールを使用することから、食品分野へは利用できない。また、シリカゲルカラム法は2種類の溶媒を濃度調整するため操作が煩雑である。
【0003】
これに対し、以下に示す本発明方法によれば、総脂質中に相当量の中性脂質が含まれていても、リン脂質のみをシリカゲルから溶出させ、中性脂質のみをシリカゲルに吸着させることができるので純度の高いリン脂質を得ることができる。
【0004】
この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、次のものがある。
【特許文献1】特開2001−72693号公報
【特許文献2】特開昭49−93400号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は工業的に大量に高純度リン脂質を容易に製造する方法であって、安全で、リン脂質純度が高く、食品および医薬品に適したものを見いだすことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、天然物原料からアルコール抽出により得られた総脂質をヘキサンに溶解してシリカゲル処理することで、リン脂質のみが溶出し中性脂質はシリカゲルに吸着することを見出し、種々検討を行った結果本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は
(1)天然物原料から有機溶剤を用いて抽出した総脂質をヘキサンに溶解してシリカゲル処理することで、ヘキサン溶出液に精製リン脂質が得られる製造方法、
(2)天然物由来の脂質をヘキサンに溶解してシリカゲル処理することで、ヘキサン溶出液に精製リン脂質が得られる製造方法
に関する。
また、本願発明においては、以下が提供される。
(項目1)
高純度のリン脂質を製造する方法であって、以下:
(a)油脂成分と極性の低い有機溶媒を混合する工程;
(b)該混合物をシリカゲルに添加する工程;および
(c)該極性の低い有機溶媒を該シリカゲルに添加して、シリカゲルからリン脂質を溶出する工程、
を包含する、方法。
(項目2)
項目1に記載の方法であって、前記極性の低い有機溶媒がヘキサンである、方法。
(項目3)
前記極性の低い有機溶媒がn-ヘキサンである、項目2に記載の方法。
(項目4)
項目1に記載の方法であって、前記油脂成分と前記極性の低い有機溶媒との比率が、1対1〜1対1000の間である、方法。
(項目5)
項目4に記載の方法であって、前記油脂成分と前記極性の低い有機溶媒との比率が、1対10〜1対50の間である、方法。
(項目6)
前記油脂成分が、リン脂質供給源より抽出用有機溶剤で抽出することによって調製されている、項目1に記載の方法。
(項目7)
項目6に記載の方法であって、前記抽出用有機溶剤が、以下:
エタノール、ヘキサン、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、アセトン、エーテル、クロロホルム、メタノール、あるいはこれらの混合物、からなる群から選択される、方法。
(項目8)
リン脂質含有組成物であって、以下:
(a)油脂成分と極性の低い有機溶媒を混合する工程;
(b)該混合物をシリカゲルに添加する工程;および
(c)該極性の低い有機溶媒を該シリカゲルに添加して、シリカゲルからリン脂質を溶出する工程、
を包含する方法によって調製される、組成物。
(項目9)
項目8に記載の組成物を含む、食品用組成物。
(項目10)
項目8に記載の組成物を含む、医薬用組成物。
【0008】
通常総脂質をクロロホルム等の有機溶媒に溶解し、シリカゲルカラムに負荷すると、中性脂質が溶出し、リン脂質はシリカゲルに吸着する。リン脂質を溶出するには極性の高いメタノール等の溶媒を用いることが常識であり、総脂質を極性の低いヘキサンに溶解しシリカゲルカラムに負荷するとリン脂質が中性脂質より先に溶出するなどとは、夢想だにできないことであった。
【0009】
本発明は、従来全く想像すらされていなかった精製(製造)方法を用いて、高純度かつ有害な有機溶媒の混入のないリン脂質を提供することを可能にする。
(定義)
本明細書において使用する場合、用語「リン脂質」とは、リンを含む脂質をいう。リン脂質としては、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸が挙げられるが、これに限定されない。本明細書において使用する場合、リン脂質供給源としては、天然物原料、化学合成品、などが挙げられる。リン脂質供給源としての天然物原料としては、例えば、卵黄、卵巣、精巣、大豆、魚卵、魚介類(例えば、イカの可食部)などが挙げられるが、これに限定されない。
本明細書において使用する場合、用語「油脂成分」とは、天然または非天然のリン脂質供給源より有機溶媒によって抽出される成分であって、かつ、リン脂質を含有する成分をいう。
本明細書において使用する場合、用語「極性の低い有機溶媒」とは、シリカゲルカラムに負荷する物質を調製するために油脂成分と混合される有機溶媒であって、例えば、ヘキサン、n−ヘキサンが挙げられるが、これに限定されない。
本明細書において使用する場合、用語「シリカゲル」とは、SiO・nHOの非晶質ケイ酸をいう。本発明において使用する場合、好ましくは、シリカゲルの粒子径は0.005mm〜10mmであり、球状でも破砕状でもよい。
本明細書において使用する場合、用語「抽出用有機溶媒」とは、本発明の方法によって高純度なリン脂質を製造するために極性の低い有機溶媒と混合されるための油脂成分を抽出によって調製する際に、その抽出に使用される有機溶媒をいう。抽出用有機溶媒としては、エタノール、ヘキサン、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、アセトン、エーテル、クロロホルム、メタノール、あるいはこれらの混合物、が挙げられるが、これに限定されない。
また、本発明で製造される高純度リン脂質は、食品としての経口摂取が可能であることから、健康食品としての利用も可能である。
【発明の効果】
【0010】
本発明で得られた天然物からの高純度リン脂質の製造方法は、工業的に大量の高純度リン脂質を容易に製造できるので、安全で有用なリン脂質を安価に提供することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明に係るリン脂質製造方法における1つの実施形態においては、天然物原料から抽出用有機溶剤で総脂質を抽出する工程、有機溶剤を留去して得た総脂質を極性の低い有機溶媒に再溶解する工程、および、シリカゲル処理する工程を包含する。本発明において用いられる天然物原料は限定されず、種類、産地、形態も問わないが、適度に粉砕して表面積を増やしたものが、抽出処理をより円滑に進めることができるために好ましく用いられる。また原料を予めタンパク質分解酵素等で処理して細かくしておくことも可能である。これらの原料は、抽出を行う前に、乾燥処理等の前処理をして減容処理したものを用いることもできる。
天然物などの供給源から、本発明の精製方法の出発物質である油脂成分(例えば、総脂質)の抽出には、抽出用有機溶剤を用いる。抽出用有機溶剤は、通常抽出溶剤として用いられる、エタノール、ヘキサン、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、アセトン、エーテル、クロロホルム、メタノール等からなる群より選択される1種または2種以上の有機溶剤が挙げられるが、これに限定されない。
【0012】
本発明において使用するリン脂質の供給源としては、動物、植物、魚介類、藻類、微生物が挙げられる。採取効率および作業・操作の容易性等の点を考慮すれば、動物性原料または魚介類由来の原料を選択し、これから抽出用有機溶媒を用いて油脂成分を抽出することが望ましい。動物性原料としては牛、豚、鶏、アザラシ、ハープシール、オットセイ、セイウチ、トド等の各種動物臓器、ならびに魚介類を使用することが可能である。好ましい供給源は、魚介類である。
【0013】
魚介類の供給源としては、カツオ、マグロ、イワシ等の魚類の組織が挙げられるが、これらに限定されない。魚類の組織としては、例えば、精巣および卵巣が挙げられるが、これらに限定されない。
【0014】
魚介類のさらなる供給源としては、ケンサキイカ、コウイカ、マイカ、マツイカ、スルメイカ、ホタルイカ、ヤリイカ等のイカ組織およびこれらの皮(例えば、可食部)が挙げられるが、これらに限定されない。イカ組織から抽出して得られる油分は、本発明のリン脂質の好ましい供給源である。イカ皮(外套筋)も同様に本発明のリン脂質の好ましい供給源である。
油脂成分(例えば、総脂質)の有機溶剤による抽出温度は0℃〜90℃、好ましくは30℃から70℃の範囲である。抽出液からの溶媒の留去は常圧下での蒸留、または分子蒸留等の減圧蒸留で行う。抽出回数は数回繰り返して行うことができるが、効率の面から2回程度繰り返すことが好ましい。
本発明に係るシリカゲル処理は、有機溶剤で抽出して得た油脂成分を、総油脂成分重量の0.1倍〜1000倍、好ましくは10倍〜50倍の量の極性の低い有機溶媒(例えば、ヘキサン)に溶解した後に行う。シリカゲル処理におけるシリカゲルの量は油脂成分の0.1倍から30倍であり、より好ましくは1倍から5倍である。シリカゲル処理はカラム式でもバッチ式でもよい。極性の低い有機溶媒を回収した後、収率を上げるためにさらに極性の低い有機溶媒でシリカゲルを洗ってもよい。極性の低い有機溶媒の留去は常圧下での蒸留、または分子蒸留等の減圧蒸留で行う。
本発明方法で得られる高純度リン脂質は、リン脂質含量が80%〜100%であり、リン脂質の優れた特性により極めて広範囲な分野で有効に用い得る。従って本発明は上記の方法で得られた高純度リン脂質を提供するものである。本発明の高純度リン脂質はリン脂質が用いられるあらゆる分野での使用に適し、例えば食品分野で乳化剤として用いることができる。また高純度リン脂質としての効果が期待される医薬あるいは健康食品分野でも有用である。医薬として用いる場合、経口または非経口投与のための適当な剤形、例えばカプセル剤、懸濁剤、注射用懸濁剤、軟膏等に製剤化すると良い。また健康食品の場合適当な食品に添加したり、飲料として用いることができる。
【0015】
本発明の薬学的組成物および飲食用組成物は、高度に精製されたリン脂質を有効成分として含有する。本発明の薬学的組成物および飲食用組成物は、活性成分としてリン脂質のみを単独で配合した形態、あるいはリン脂質以外の活性成分と組み合わせた形態形態において構成され、望ましくはリン脂質の含有量が20重量%以上、さらに好ましくは30重量%以上である。本発明の所望の効果を阻害しない範囲および程度であれば、他の公知の成分あるいは原材料を適宜に併用せしめてもよい。これらの例としてアスコルビン酸、アミノ酸、ペプチド、蛋白質およびこの分解物、各種糖質、澱粉およびこの分解物、ミネラル類、ビタミンE、トコフェロール、フィトステロール、カテキン、グァバ葉等のポリフェノール類等およびこれらの誘導体を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0016】
これらの併用物質がアスコルビン酸パルミテート、フィトステロール、ビタミンE等のように油溶性の場合は、本発明に係る高純度リン脂質と混合して均一状態となし、また、アスコルビン酸、アミノ酸、ミネラル、蛋白質等のように水溶性ないしは水分散性の場合は、例えばその乾燥粉末を本発明に係るリン脂質と混練して分散状態にするか、水および適宜に界面活性剤を共存させて乳化状態となすこともできる。
【0017】
本発明では、前述のように、リン脂質を有効成分としてなる医薬が提供されるが、さらにこの予防剤を配合してなる組成物も提供される。この組成物の態様としては医薬用組成物および食用組成物が好適である。
【0018】
(薬学的組成物の処方)
本発明はまた、有効量の治療剤の被験体への投与による、高純度リン脂質によって治療および/または予防され得る疾患または障害(例えば、気管支喘息および骨粗鬆症)の処置および/または予防の方法を提供する。治療剤は、薬学的に受容可能なキャリア型(例えば、滅菌キャリア)と組み合せた、本発明の組成物を意味する。
【0019】
治療剤を、個々の患者の臨床状態(特に、治療剤単独処置の副作用)、送達部位、投与方法、投与計画および当業者に公知の他の因子を考慮に入れ、医療実施基準(GMP=good medical practice)を遵守する方式で処方および投薬する。従って、本明細書において目的とする「有効量」は、このような考慮を行って決定される。
【0020】
一般的提案として、用量当り、経口的に投与される治療剤の合計薬学的有効量は、患者体重の、約10mg/kg/日〜10000mg/kg/日の範囲にあるが、上記のようにこれは治療的裁量に委ねられる。さらに好ましくは、本発明の高純度リン脂質含有医薬について、この用量は、少なくとも100mg/kg/日、最も好ましくはヒトに対して約500mg/kg/日である。
【0021】
治療剤を、経口的、直腸内、非経口的、槽内(intracistemally)、膣内、腹腔内、局所的(粉剤、軟膏、ゲル、点滴剤、または経皮パッチによるなど)、口内あるいは経口または鼻腔スプレーとして投与し得る。本発明の薬学的組成物の代表的投与経路は、経口投与である。
【0022】
「薬学的に受容可能なキャリア」とは、非毒性の固体、半固体または液体の充填剤、希釈剤、被包材または任意の型の処方補助剤をいう。
【0023】
本発明の治療剤はまた、徐放性システムにより適切に投与される。徐放性治療剤の適切な例は、経口的、直腸内、非経口的、槽内(intracistemally)、膣内、腹腔内、局所的(粉剤、軟膏、ゲル、点滴剤、または経皮パッチによるなど)、口内あるいは経口または鼻腔スプレーとして投与され得る。「薬学的に受容可能なキャリア」とは、非毒性の固体、半固体または液体の充填剤、希釈剤、被包材または任意の型の処方補助剤をいう。本明細書で用いる用語「非経口的」とは、静脈内、筋肉内、腹腔内、胸骨内、皮下および関節内の注射および注入を含む投与の様式をいう。
【0024】
本発明の治療剤はまた、徐放性システムにより適切に投与される。徐放性治療剤の適切な例は、適切なポリマー物質(例えば、成形品(例えば、フィルムまたはマイクロカプセル)の形態の半透過性ポリマーマトリックス)、適切な疎水性物質(例えば、許容品質油中のエマルジョンとして)またはイオン交換樹脂、および貧可溶性誘導体(例えば、貧可溶性塩)を包含する。
【0025】
徐放性マトリックスとしては、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号、EP58,481)、L−グルタミン酸およびγ−エチル−L−グルタメートのコポリマー(Sidmanら、Biopolymers 22:547−556(1983))、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)(Langerら、J.Biomed.Mater.Res.15: 167−277(1981)、およびLanger,Chem.Tech.12:98−105(1982))、エチレンビニルアセテート(Langerら、同書)またはポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸(EP133,988)が挙げられる。
【0026】
徐放性治療剤はまた、リポソームに包括された本発明の治療剤を包含する(一般に、Langer,Science 249:1527−1533(1990);Treatら,Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer,Lopez−Berestein and Fidler(編),Liss,New York,317−327頁および353−365(1989)を参照のこと)。治療剤を含有するリポソームは、それ自体が公知である方法により調製され得る:DE3,218,121;Epsteinら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:3688−3692(1985);Hwangら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4030−4034(1980);EP52,322;EP36,676;EP88,046;EP143,949;EP142,641;日本国特許出 願第83−118008号;米国特許第4,485,045号および同第4,544,545号ならびにEP第102,324号。通常、リポソームは、小さな(約200〜800Å)ユニラメラ型であり、そこでは、脂質含有量は、約30モル%コレステロールよりも多く、選択された割合が、最適治療剤のために調整される。
【0027】
なおさらなる実施態様において、本発明の治療剤は、ポンプにより送達されうる(Langer、前出;Sefton、CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.14:201(1987);Buchwaldら、Surgery 88:507(1980);Saudekら、N.Engl.J.Med.321:574(1989)を参照のこと)。
【0028】
他の制御放出系は、Langer(Science 249:1527−1533(1990))による総説において議論される。
【0029】
非経口投与のために、1つの実施態様において、一般に、治療剤は、それを所望の程度の純度で、薬学的に受容可能なキャリア、すなわち用いる投薬量および濃度でレシピエントに対して毒性がなく、かつ処方物の他の成分と適合するものと、単位投薬量の注射可能な形態(溶液、懸濁液または乳濁液)で混合することにより処方される。例えば、この処方物は、好ましくは、酸化、および治療剤に対して有害であることが知られている他の化合物を含まない。
【0030】
一般に、治療剤を液体キャリアまたは微細分割固体キャリアあるいはその両方と均一および緊密に接触させて処方物を調製する。次に、必要であれば、生成物を所望の処方物に成形する。好ましくは、キャリアは、非経口的キャリア、より好ましくはレシピエントの血液と等張である溶液である。このようなキャリアビヒクルの例としては、水、生理食塩水、リンゲル溶液およびデキストロース溶液が挙げられる。不揮発性油およびオレイン酸エチルのような非水性ビヒクルもまた、リポソームと同様に本明細書において有用である。
【0031】
キャリアは、等張性および化学安定性を高める物質のような微量の添加剤を適切に含有する。このような物質は、用いる投薬量および濃度でレシピエントに対して毒性がなく、このような物質としては、リン酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、酢酸および他の有機酸またはその塩類のような緩衝剤;アスコルビン酸のような抗酸化剤;低分子量(約10残基より少ない)ポリペプチド(例えば、ポリアルギニンまたはトリペプチド);血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリンのようなタンパク質;ポリビニルピロリドンのような親水性ポリマー;グリシン、グルタミン酸、アスパラギン酸またはアルギニンのようなアミノ酸;セルロースまたはその誘導体、ブドウ糖、マンノースまたはデキストリンを含む、単糖類、二糖類、および他の炭水化物;EDTAのようなキレート剤;マンニトールまたはソルビトールのような糖アルコール;ナトリウムのような対イオン;および/またはポリソルベート、ポロキサマーもしくはPEGのような非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0032】
治療剤は、代表的には約100mg/ml〜2,000mg/ml、好ましくは500〜2,000mg/mlの濃度で、約6〜9のpHで、このようなビヒクル中に処方される。前記の特定の賦形剤、キャリアまたは安定化剤を使用することにより、塩が形成されることが理解される。
【0033】
治療的投与に用いられるべき任意の薬剤は、生物・ウイルスを含まない状態、すなわち、無菌状態であり得る。滅菌濾過膜(例えば0.2ミクロンメンブレン)で濾過することにより無菌状態は容易に達成される。一般に、治療剤は、滅菌アクセスポートを有する容器、例えば、皮下用注射針で穿刺可能なストッパー付の静脈内用溶液バッグまたはバイアルに配置される。
【0034】
治療剤は、通常、単位用量または複数用量容器、例えば、密封アンプルまたはバイアルに、水溶液または再構成するための凍結乾燥処方物として貯蔵される。凍結乾燥処方物の例として、10mlのバイアルに、滅菌濾過した5%(w/v)治療剤水溶液5mlを充填し、そして得られる混合物を凍結乾燥する。凍結乾燥した治療剤を、注射用静菌水を用いて再構成して注入溶液を調製する。
【0035】
本発明はまた、本発明の治療剤の1つ以上の成分を満たした一つ以上の容器を備える薬学的パックまたはキットを提供する。医薬品または生物学的製品の製造、使用または販売を規制する政府機関が定めた形式の通知が、このような容器に付属し得、この通知は、ヒトへの投与に対する製造、使用または販売に関する政府機関による承認を表す。さらに、治療剤を他の治療用化合物と組み合わせて使用し得る。
【0036】
本発明の治療剤は、単独または他の治療剤と組合わせて投与され得る。組合わせは、例えば、混合物として同時に;同時にまたは並行してだが別々に;あるいは経時的のいずれかで投与され得る。これは、組み合わされた薬剤が、治療用混合物として共に投与されるという提示、およびまた、組み合わされた薬剤が、別々にしかし同時に、例えば、同じ個体に別々の静脈ラインを通じて投与される手順を含む。「組み合わせて」の投与は、一番目、続いて二番目に与えられる化合物または薬剤のうち1つの別々の投与をさらに含む。
【0037】
本発明の高純度リン脂質の製剤化にあたっては、前述の抽出物をそのまま使用してもよいが、これをさらに分画処理して有効成分であるリン脂質をより高濃度に含有する分画物として用いてもよい。
【0038】
(飲食用組成物の製造)
本発明の好適な態様は飲食用組成物である。すなわち、前述のようにして得られる高純度リン脂質を有効成分として含む薬学的組成物または飲食用組成物は、これをそのまま液状、ゲル状あるいは固形状の食品、例えばジュース、清涼飲料、コーヒー、紅茶、日本茶、ウーロン茶、野菜ジュース、天然果汁、乳飲料、牛乳、豆乳、スポーツ飲料、ニアウォーター系飲料、栄養補給飲料、コーヒー飲料、ココア、スープ、ドレッシング、ムース、ゼリー、ヨーグルト、プリン、ふりかけ、育児用粉乳、加工乳、スポーツドリンク、栄養ドリンク、ケーキミックス、パン、ピザ、パイ、クラッカー、ビスケット、ケーキ、クッキー、スパゲティー、マカロニ、パスタ、うどん、そば、ラーメン、キャンデー、ソフトキャンデー、ガム、チョコレート、おかき、ポテトチップス、スナック、アイスクリーム、シャーベット、クリーム、チーズ、粉乳、練乳、乳飲料などの粉末状または液状の乳製品、饅頭、ういろ、もち、おはぎ、醤油、たれ、麺つゆ、ソース、だしの素、シチューの素、スープの素、複合調味料、カレーの素、マヨネーズ、ケチャップ、レトルトカレー、レトルトシチュー、レトルトスープ、レトルトどんぶり、缶詰、ハム、ハンバーグ、ミートボール、コロッケ、餃子、ピラフ、おにぎり、冷凍食品および冷蔵食品、ちくわ、蒲鉾、弁当のご飯、寿司、乳児用ミルク、離乳食、ベビーフード、スポーツ食品、栄養補助食品、サプリメント、健康食品等に添加したり、必要に応じてデキストリン、乳糖、澱粉等の賦型剤や香料、色素等とともにペレット、錠剤、顆粒等に加工したり、またゼラチン等で被覆してカプセルに成形加工して健康食品や栄養補助食品等として利用できる。これらの食品類あるいは飲食用組成物における本発明の高純度リン脂質またはこれを含む抽出物の配合量は、当該食品や組成物の種類や状態等により一律に規定しがたいが、約0.01〜50重量%、より好ましくは0.1〜30重量%である。配合量が0.01重量%未満では経口摂取による所望の効果が小さく、50重量%を超えると食品の種類によっては風味を損なったり当該食品を調製できなくなる場合がある。なお、本発明の高純度リン脂質の活性を保持する抽出物は、これをそのまま食用に供してもさしつかえない。
【実施例】
【0039】
以下、比較例と実施例により本発明を詳細に説明する。ただし本発明はこれに限定されるものではない。
(比較例1)
原料となる天然物として生のカツオ卵巣100gをフリーズドライし、乾燥物30gを得た。乾燥物に99%純度のアルコール300mlを加え60℃で2時間抽出した。抽出終了後、ろ過し抽出液を得た。抽出液を濃縮し、10gの総脂質を得た。抽出物10g全量を200mlのクロロホルムに溶解し、総脂質の2倍量に相当する20gのシリカゲルを添加した。スターラーで5分間撹拌した後、ろ過しクロロホルム溶液を回収した。回収したクロロホルムを濃縮し、6.3gの回収物を得た。本回収物のリン脂質含量は8%であった。以後すべてのサンプルのリン脂質含量の測定は基準油脂試験分析法に従い行った。薄層クロマトグラフィーの結果を、図1に示す。
(実施例1)
原料となる天然物として生のカツオ卵巣100gをフリーズドライし、乾燥物30gを得た。乾燥物に99%純度のアルコール300mlを加え60℃で2時間抽出した。抽出終了後、ろ過し抽出液を得た。抽出残渣から同様の抽出およびろ過をもう一度行い、抽出液を合わせて濃縮し、10gの総脂質を得た。抽出物10g全量を200mlのヘキサンに溶解し、総脂質の2倍量に相当する20gのシリカゲルを添加した。スターラーで5分間撹拌した後、ろ過しヘキサン溶液を回収した。回収したヘキサンを濃縮し、2.4gの高純度リン脂質を得た。本リン脂質のリン脂質含量は95%であった。薄層クロマトグラフィーの結果を、図1に示す。
(実施例2)
原料となる天然物として生のスルメイカ可食部100gをフリーズドライし、乾燥物22gを得た。乾燥物に99%純度のアルコール300mlを加え60℃で2時間抽出した。抽出終了後、ろ過し抽出液を得た。抽出残渣から同様の抽出およびろ過をもう一度行い、抽出液を合わせて濃縮し、2.5gの総脂質を得た。抽出物2.5g全量を50mlのヘキサンに溶解した。総脂質の2倍量に相当する5gのシリカゲルをガラスカラムに充填し、先の調製したヘキサン溶液50mlをシリカゲルカラムに負荷した。ヘキサン溶液を回収し、回収したヘキサンを濃縮し、0.8gの高純度リン脂質を得た。本リン脂質のリン脂質含量は100%であった。薄層クロマトグラフィーの結果を、図1に示す。
(実施例3)
原料となる天然物として大豆油滓50gに99%純度のアルコール300mlを加え60℃で2時間抽出した。抽出終了後、ろ過し抽出液を得た。抽出残渣から同様の抽出およびろ過をもう一度行い、抽出液を合わせて濃縮し、10gの抽出物を得た。抽出物10g全量を200mlのヘキサンに溶解し、抽出物の2倍量に相当する20gのシリカゲルを添加した。スターラーで5分間撹拌した後、ろ過しヘキサン溶液を回収した。回収したヘキサンを濃縮し、3.8gの高純度リン脂質を得た。本リン脂質のリン脂質含量は85%であった。薄層クロマトグラフィーの結果を、図1に示す。
【0040】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】図1は、本発明の比較例1および実施例1〜3の薄層クロマトグラフィーの結果を示す図である。
【出願人】 【識別番号】391007356
【氏名又は名称】備前化成株式会社
【出願日】 平成18年8月4日(2006.8.4)
【代理人】 【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策

【識別番号】100062409
【弁理士】
【氏名又は名称】安村 高明

【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹


【公開番号】 特開2008−38011(P2008−38011A)
【公開日】 平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願番号】 特願2006−213727(P2006−213727)