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【発明の名称】 石鹸廃棄物の資源化方法
【発明者】 【氏名】石野 義夫

【氏名】伊藤 貴敏

【氏名】三原 正稔

【氏名】阿部 真司

【氏名】増田 吉昭

【氏名】田中 喜昭

【要約】 【課題】石鹸廃棄物を産業廃棄物として廃棄する必要なく、資源として有効利用することができる石鹸廃棄物の資源化方法を提供する。

【構成】脂肪酸アルカリ塩を主成分とする石鹸廃棄物に、メタノール、エタノール、プロパノールから少なくとも1種選ばれるアルキルアルコールと、硫酸、塩酸、リン酸、過塩素酸から少なくとも1種選ばれる酸とを添加して反応させる。あるいは脂肪酸アルカリ塩を主成分とする石鹸廃棄物にアルキル化剤を添加して反応させる。石鹸廃棄物中の脂肪酸アルカリ塩を、燃料や界面活性剤などに有効再利用可能な脂肪酸アルキルエステルとして回収することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪酸アルカリ塩を主成分とする石鹸廃棄物に、メタノール、エタノール、プロパノールから少なくとも1種選ばれるアルキルアルコールと、硫酸、塩酸、リン酸、過塩素酸から少なくとも1種選ばれる酸とを添加して反応させ、石鹸廃棄物中の脂肪酸アルカリ塩を脂肪酸アルキルエステルに転換して回収することを特徴とする石鹸廃棄物の資源化方法。
【請求項2】
脂肪酸アルカリ塩を主成分とする石鹸廃棄物にアルキル化剤を添加して反応させ、石鹸廃棄物中の脂肪酸アルカリ塩を脂肪酸アルキルエステルに転換して回収することを特徴とする石鹸廃棄物の資源化方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、石鹸廃棄物を資源として有効利用するようにした石鹸廃棄物の資源化方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
石鹸は、脂肪酸アルカリ塩に色素や香料などの添加剤を配合して混練し、これを押出した後に所定形状に成型することによって製造されている。
【0003】
上記のように石鹸を製造する際に、添加剤を配合する工程、混練する工程、押出す工程、成型する工程などの各工程で製造機器内に残留するものや、各工程での不良品など、廃棄される石鹸が多量に発生する。これらの石鹸廃棄物は産業廃棄物として廃棄処理されている。またホテルの浴室などにおいて使い捨てとして備えられる石鹸の使用済み品なども産業廃棄物として廃棄処理されている。
【0004】
ここで、油脂製品の産業廃棄物については、植物油脂製造工程から生じる油滓を脂肪酸エステル化物として利用する方法が特許文献1で、廃食油を高級脂肪酸メチルエステルとして利用する方法が特許文献2で提案されている。しかしながら石鹸廃棄物を有効に利用する技術は未だに存在せず、産業廃棄物として廃棄処理をする他ないのが現状である。
【特許文献1】特開2004−91782号公報
【特許文献2】特許第3028282号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、石鹸廃棄物を産業廃棄物として廃棄する場合、廃棄による環境汚染が問題になり、また省資源の面から、廃石鹸をリサイクルして有効利用することが望まれるものである。
【0006】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、石鹸廃棄物を産業廃棄物として廃棄する必要なく、資源として有効利用することができる石鹸廃棄物の資源化方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に係る石鹸廃棄物の資源化方法は、脂肪酸アルカリ塩を主成分とする石鹸廃棄物に、メタノール、エタノール、プロパノールから少なくとも1種選ばれるアルキルアルコールと、硫酸、塩酸、リン酸、過塩素酸から少なくとも1種選ばれる酸とを添加して反応させ、石鹸廃棄物中の脂肪酸アルカリ塩を脂肪酸アルキルエステルに転換して回収することを特徴とするものである。
【0008】
また本発明の請求項2に係る石鹸廃棄物の資源化方法は、脂肪酸アルカリ塩を主成分とする石鹸廃棄物にアルキル化剤を添加して反応させ、石鹸廃棄物中の脂肪酸アルカリ塩を脂肪酸アルキルエステルに転換して回収することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、石鹸廃棄物中の脂肪酸アルカリ塩を、燃料や界面活性剤などに有効再利用可能な脂肪酸アルキルエステルに転換して回収することができ、石鹸廃棄物を産業廃棄物として廃棄することなく資源として有効利用することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0011】
本発明において資源として利用する石鹸廃棄物は、脂肪酸ナトリウム塩や脂肪酸カリウム塩などの脂肪酸アルカリ塩を主成分として50質量%以上含有するものであり、既述の石鹸の製造工程から出る石鹸廃棄物や、その他、ホテルの浴室などにおいて使い捨てとして備えられる石鹸の使用済み品など、廃棄される石鹸の全てを含むものである。
【0012】
本発明において、石鹸廃棄物を資源化する第1の方法は、石鹸廃棄物にアルキルアルコールと酸とを添加して、還流下で攪拌することによって、石鹸廃棄物中の脂肪酸アルカリ塩をエステル化反応させるようにしたものである。
【0013】
このアルキルアルコールとしては、炭素数が1〜3のエタノール、メタノール、プロパノールを用いるものであり、これらの中から1種を選んで単独で用いる他、2種以上を併用することもできる。これらのメタノール,エタノール,プロパノールの沸点は低く、反応終了後に反応系から容易に回収することができるものである。また、本発明によって得られる脂肪酸アルキルエステルの用途として将来的に利用価値が高いと思われるバイオディーゼル燃料を考慮すると、得られる脂肪酸アルキルエステルの沸点は低いほうが良く、この点においても使用するアルキルアルコールはメタノール,エタノール,プロパノールの低級アルコールが好ましいものである。
【0014】
アルキルアルコールの添加量は、石鹸廃棄物中の脂肪酸アルカリ塩に対して化学当量あればよいが、反応率や反応液の粘性を考慮すれば化学当量の3.0〜30倍の範囲に設定するのが好ましい。複数種のアルキルアルコールを混合して用いる場合は、それぞれのアルキルアルコールの合計量がこの範囲であればよい。アルキルアルコールの添加量がこの範囲未満であると、反応率が低くなると共に、反応系の粘性が高くなって反応操作が困難になるおそれがある。またアルキルアルコールの添加量をこの範囲を超えて多くしても、得られる脂肪酸アルキルエステルの収率を高めることはできず、余剰のアルキルアルコールの回収量が多くなると共に、1バッチで処理できる石鹸廃棄物の量が少なくなるため、経済的に不利になるおそれがある。
【0015】
また酸としては、石鹸廃棄物中の脂肪酸アルカリ塩を中和できるものであれば良いが、安価であり、また脂肪酸アルカリ塩を中和した際の副生物塩が回収しやすいという点から、本発明では硫酸、塩酸、リン酸、過塩素酸を使用するものであり、これらの中から1種を選んで単独で用いる他、2種以上を併用することもできる。
【0016】
酸の添加量は、石鹸廃棄物中の脂肪酸アルカリ塩を中和するのに要する化学当量であればよいが、反応速度を考慮すれば化学当量の1.1〜4.0倍の範囲に設定するのが好ましい。酸の添加量がこの範囲未満であると、反応速度が遅くなって、反応に要する時間が長くなり、また酸の添加量をこの範囲を超えて多くしても、反応速度を速めることはできず、経済的に不利になるおそれがある。複数種の酸を混合して用いる場合は、それぞれの酸の合計量がこの添加量であればよい。
【0017】
また反応温度は、使用するアルキルアルコールの還流温度付近が望ましい。反応温度が低すぎると、反応に長時間を要し、反応温度が高すぎると、急激な反応による危険性が生じ、またエネルギー効率のうえでも問題が生じるおそれがある。反応は常圧で行なうことが一般に望ましいが、加圧下でも可能である。反応に要する時間は、アルキルアルコールや酸の種類、反応温度などによって異なるが、一般的には3〜8時間程度である。
【0018】
上記のように石鹸廃棄物にアルキルアルコールと酸とを添加して、石鹸廃棄物中の脂肪酸アルカリ塩をエステル化反応させることによって、脂肪酸アルキルエステルを生成させることができる。アルキルエステルとしてメチルアルコールを用いる場合には脂肪酸メチルエステルを、エチルアルコールを用いる場合には脂肪酸エチルエステルを、プロピルアルコールを用いる場合には脂肪酸プロピルエステルを得ることができるものであり、アルキルエステルとしてメチルアルコールを、酸として硫酸を用いた場合のエステル化反応の一例を次に示す。
【0019】
RCOOM + 1/2HSO → RCOOH + 1/2MSO
RCOOH + MeOH → RCOOMe + H
(Rは脂肪族炭化水素基、Mはアルカリ金属、Meはメチル基である)
そして、上記のように反応させた後、反応液を蒸留して余剰の溶媒を回収し、次いで得られた脂肪酸アルキルエステル相を水洗し、さらに静置して脂肪酸アルキルエステル相と水相とに分離し、分液操作をして脂肪酸アルキルエステルを得ることができるものである。反応系からの脂肪酸アルキルエステルの単離回収は、このような洗浄による方法の他に、減圧蒸留やカラムクロマトグラフィーによる方法など、任意の方法で行なうことができる。
【0020】
次に本発明において、石鹸廃棄物を資源化する第2の方法は、石鹸廃棄物にアルキル化剤を添加し、攪拌することによって、石鹸廃棄物中の脂肪酸アルカリ塩をアルキル化反応させるようにしたものである。
【0021】
このアルキル化剤としては、カルボキシル基をアルキル化することができるものであれば何でもよく、特に限定されるものではないが、硫酸ジアルキル、p−トルエンスルホン酸アルキル、炭酸ジアルキル、リン酸トリアルキル、クロロ炭酸アルキル、アルキルハライド、テトラアルキルシラン等を挙げることができる。
【0022】
これらのなかでも、コストや反応効率等の面から、硫酸ジアルキルやp−トルエンスルホン酸アルキルが特に好ましい。また反応効率の面からアルキル化剤のアルキル基は、炭素数1〜3のものが好ましい。好ましいものを具体的に挙げると、硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、硫酸ジプロピル、p−トルエンスルホン酸メチル、p−トルエンスルホン酸エチル、p−トルエンスルホン酸プロピルなどである。本発明で得られる脂肪酸アルキルエステルをバイオディーゼル燃料などの燃料として使用する場合には、燃料の気化効率の点から、アルキル化剤のアルキル基はメチル基であることが好ましい。
【0023】
そして、石鹸廃棄物にアルキル化剤を添加し、必要に応じて還流下、攪拌することによって、次の反応式のように石鹸廃棄物中の脂肪酸アルカリ塩をアルキル化剤でアルキル化反応させ、脂肪酸アルキルエステルを得ることができるものである。
【0024】
COOM + RX → RCOOR + MX
(Rは脂肪族炭化水素基、Mはアルカリ金属、RXはアルキル化剤である)
アルキル化剤の添加量は、石鹸廃棄物中の脂肪酸アルカリ塩に対して化学当量であればよいが、反応率を考慮すると化学当量の1.0〜3.0倍の範囲に設定するのが好ましい。尚、アルキル化剤の化学当量は反応に関与するアルキル基1当量を含むアルキル化剤の量を指す。アルキル化剤の添加量がこの範囲未満であると、アルキル化反応が不十分になって、脂肪酸アルキルエステルの収率が低下し、またアルキル化剤の添加量をこの範囲を超えて多くしても、脂肪酸アルキルエステルの収率を高めることはできず、経済的に不利になるおそれがある。
【0025】
反応系の粘性が高く操作がし難い場合や、アルキル化反応の速度を制御して熱暴走を回避する場合には、溶媒を用いて反応系を希釈するようにしてもよい。この溶媒としては、アルキル化剤を分解しないものである必要があるが、極性溶媒であればプロトン性溶媒であっても、非プロトン性溶媒であってもよい。例えばメタノール、エタノール等の低級アルコールなどを用いることができ、一種を単独で用いるようにしても、二種以上を併用するようにしてもよい。溶媒の使用量は特に制限されるものではなく、必要に応じた任意の量を使用することができる。
【0026】
またアルキル化反応の反応温度は、使用するアルキル化剤や溶媒の種類に応じて設定されるものであり、好ましくは、室温から還流温度までの範囲である。反応温度が低すぎると、反応に長時間を要し、反応温度が高すぎると、急激な反応による危険性が生じ、またエネルギー効率のうえでも問題が生じる。反応は常圧で行なうことが一般に望ましいが、加圧下及び減圧下のいずれでも可能である。アルキル化反応に要する時間は、アルキル化剤の種類や反応温度などによって異なるが、一般的に0.5〜2時間程度である。
【0027】
このようにして得られた脂肪酸アルキルエステルは、既述の方法で単離回収することができる。
【0028】
尚、本発明において、石鹸廃棄物に、アルキルアルコールと、酸と、アルキル化剤とを添加して、石鹸廃棄物中の脂肪酸アルカリ塩をアルキルアルコールと酸とでエステル化反応させると同時に、アルキル化剤でアルキル化反応させることによって、脂肪酸アルキルエステルを生成させることもできる。この場合、得られる脂肪酸アルキルエステルは、アルキルアルコールが反応した脂肪酸アルキルエステルと、アルキル化剤が反応した脂肪酸アルキルエステルとの混合物となる。
【0029】
上記の各方法で得られた脂肪酸アルキルエステルは、用途に応じて必要な純度まで精製して使用することができる。精製の方法は特に制限されるものではなく、蒸留、抽出、水洗、分離、遠心分離、乾燥、ろ過、脱臭、脱色等の一般的な方法を適用することができる。そしてこの脂肪酸アルキルエステルは、界面活性剤や、燃料などの原料として用いることができるものである。
【0030】
従って本発明によれば、石鹸製造工程から出る石鹸の廃棄物や使用済みの石鹸などの石鹸廃棄物を資源として、界面活性剤や燃料などの原料となる脂肪酸アルキルエステルを得ることができるものであり、石鹸廃棄物をリサイクルして有効利用することができ、また石鹸廃棄物を廃棄処理する必要がなくなって、環境汚染の問題を生じることがなくなると共に廃棄のためのコストも不要にすることができるものである。
【実施例】
【0031】
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0032】
(実施例1〜7)
表1に、石鹸廃棄物A〜Cの組成を示す。
【0033】
そして1Lの四つ口フラスコに表2に示す配合量で石鹸廃棄物、濃硫酸、硫酸ジメチル、メタノールを仕込み、攪拌しながら70℃で表2に示した時間加熱することによって反応させた。反応終了後、余剰のメタノールを蒸留して回収した。次いで、生成された脂肪酸メチルエステルと副生成物の塩を分離するため、水を50g添加して室温下で30分間攪拌し、その後静置することによって、脂肪酸メチルエステル相と水相とに分離した。そしてこの反応混合液を分液操作して脂肪酸メチルエステル相を回収した。この脂肪酸メチルエステル相には色素や香料が含まれており、着色された相であるが、これを247Pa(2mmHg)、80〜180℃で減圧蒸留することによって、無色透明の脂肪酸メチルエステルを得た。
【0034】
【表1】


【0035】
【表2】


【0036】
この脂肪酸メチルエステルについてガスクロマトグラフィー分析を行なったところ、表3に示す結果が得られた。
【0037】
【表3】


【0038】
表3にみられるように、石鹸廃棄物中の脂肪酸アルカリ塩を脂肪酸アルキルエステルとして回収することができるものであった。
【出願人】 【識別番号】390029654
【氏名又は名称】株式会社マックス
【識別番号】591030499
【氏名又は名称】大阪市
【出願日】 平成18年6月29日(2006.6.29)
【代理人】 【識別番号】100087767
【弁理士】
【氏名又は名称】西川 惠清

【識別番号】100085604
【弁理士】
【氏名又は名称】森 厚夫


【公開番号】 特開2008−7648(P2008−7648A)
【公開日】 平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願番号】 特願2006−179911(P2006−179911)