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【発明の名称】 耐火性グリース組成物
【発明者】 【氏名】林 健司

【氏名】辻 真悟

【要約】 【課題】潤滑性及び耐火性に優れ、特に着火するおそれがある箇所に好適に使用することができるグリース組成物を提供する。

【解決手段】基油と増ちょう剤を含むグリース組成物であって、さらに、吸水性樹脂を0.01〜5.0質量%、水を10〜60質量%、及び平均粒径が0.01〜20μmである炭酸カルシウムを3〜30質量%含有することを特徴とするグリース組成物。好ましくは、前記吸水性樹脂として、ポリアクリル酸塩架橋物又はポリアクリル酸塩部分中和物の架橋物を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基油と増ちょう剤を含むグリース組成物であって、さらに、吸水性樹脂を0.01〜5.0質量%、水を10〜60質量%、及び平均粒径が0.01〜20μmである炭酸カルシウムを3〜30質量%含有することを特徴とするグリース組成物。
【請求項2】
前記吸水性樹脂として、ポリアクリル酸塩架橋物又はポリアクリル酸塩部分中和物の架橋物を含むことを特徴とする請求項1記載のグリース組成物。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、産業用機械等の潤滑箇所へ適用することができる、耐火性及び潤滑性に優れたグリース組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、機械技術が益々発展する中で、機器は高速・高温・高荷重の条件下で運転されるようになってきている。このような条件下で稼働する機械等に使用するグリースは、劣化や異物の混入等により軟化し、高温箇所へ垂れ落ちることなどを想定しなければならない。また、鉄鋼設備等の火元のあるような苛酷な条件下で、ころがり軸受、すべり軸受、ギヤー駆動部等へのグリース充填作業が行われるような場合もある。そこで、これらの火災危険性のある箇所に用いるグリースは、より難燃性であるとともに、例え着火したとしても継続燃焼しないこと、すなわち耐火性に優れていることが望まれる。
【0003】
従来、グリースの耐火性等を向上させるため、配合を工夫した技術、例えば、基油に対して、水、乳化剤、及び水酸化アルミニウムをそれぞれ所定の配合割合で添加したグリース組成物(特許文献1参照)や、増ちょう剤及び基油の組成を改良したグリース組成物(特許文献2参照)、また、吸水性ポリマーと水とをグリースに使用したグリース組成物(特許文献3参照)等が開示されている。
【特許文献1】特開平8−199183号公報
【特許文献2】特開2004−67843号公報
【特許文献3】特開2002−146376号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
火災危険性のある箇所に用いる耐火性グリースは十分な耐火性が求められる。しかし、耐火性向上のために水を配合したグリースではグリース本来の潤滑性が低下する傾向にあり、耐火性とともに潤滑性のより一層の向上が望まれる。
【0005】
本発明は、潤滑性及び耐火性に優れ、特に着火するおそれがある箇所に好適に使用することができるグリース組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明では、以下のグリース組成物が提供される。
<1> 基油と増ちょう剤を含むグリース組成物であって、さらに、吸水性樹脂を0.01〜5.0質量%、水を10〜60質量%、及び平均粒径が0.01〜20μmである炭酸カルシウムを3〜30質量%含有することを特徴とするグリース組成物。
【0007】
<2> 前記吸水性樹脂として、ポリアクリル酸塩架橋物又はポリアクリル酸塩部分中和物の架橋物を含むことを特徴とする<1>記載のグリース組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、潤滑性及び耐火性に優れたグリース組成物が提供される。本発明に係るグリース組成物は、特に着火の可能性のある箇所に好適に使用することができ、実用上極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明に係るグリース組成物について詳細に説明する。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、水を含有させた耐火性グリースの潤滑性を向上させるためには、特に炭酸カルシウムを配合することが有効であることを見出した。さらに本発明者らが精査したところ、必須成分として、基油及び増ちょう剤のほか、吸水性樹脂を0.01〜5.0質量%、水を10〜60質量%、及び平均粒径が0.01〜20μmである炭酸カルシウムを3〜30質量%含有するグリース組成物とすることにより、耐火性が向上し、かつ水が配合されているにもかかわらず潤滑性も良好となることを見出した。更に、吸水性樹脂として、ポリアクリル酸塩架橋物又はポリアクリル酸塩部分中和物の架橋物を用いることにより耐火性を一層向上させることができることも見出し、本発明の完成に至った。
【0010】
<吸水性樹脂>
本発明に係るグリース組成物中に配合する吸水性樹脂は、グリースに安定的に水を保持できる程度の吸水性を有するものであれば特に限定されないが、好ましくは50g/g以上であり、より好ましくは100g/g以上であり、更に好ましくは200g/g以上であり、特に好ましくは400g/g以上である。吸水性樹脂1gあたりの吸水量が50g/g以上のものを用いることで、耐火性に必要な水をグリース中に安定して配合しやすくなる。この吸水量は高い程好ましいが、現在入手しうる吸水性樹脂としては1500g/g以下の樹脂となる。また、効果の面からも吸水量は1500g/gあれば十分であるが、吸水量が1500g/g以下の吸水性樹脂に限定されるものではない。
【0011】
本発明では、好ましくは上記の吸水量を満たす吸水性樹脂であれば、限定することなく使用することができる。このような吸水性樹脂としては、例えば、ポリアクリル酸塩架橋物、ポリアクリル酸塩部分中和物の架橋物、自己架橋型ポリアクリル酸塩、デンプン−アクリル酸塩グラフト共重合体架橋物、ビニルアルコール−アクリル酸塩共重合体、アクリルアミド共重合体架橋物の加水分解物、架橋イソブチレン−無水マレイン酸共重合体の中和物、カルボキシメチルセルロース塩の架橋物等が挙げられる。このうち、好ましいものはアクリル酸又はアクリル酸塩を主構成単位とする架橋重合物であり、特に好ましいものはポリアクリル酸塩架橋物及びポリアクリル酸塩部分中和物の架橋物である。本発明のグリース組成物は、吸水性樹脂として、ポリアクリル酸塩架橋物又はポリアクリル酸塩部分中和物の架橋物を含有することにより、グリース中の水を確実に保持して耐火性を一層向上させることができるとともに、高い潤滑性を確実に発揮させることができる。また、上記における塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、アミン塩等が挙げられる。
【0012】
本発明に係る吸水性樹脂の平均粒径は、水を安定して保持するとともに、要求されるグリース本来の潤滑性を保つことができれば特に限定されないが、好ましくは15〜750μmであり、より好ましくは15〜450μmである。吸水性樹脂の平均粒径が15μm以上であれば、配合された水をより安定して保持し易くなる。一方、吸水性樹脂の平均粒径が750μm以下であれば、グリース本来の特性である潤滑性の低下を防ぐとともに、グリース状にし易い。
【0013】
本発明に係るグリース組成物中の吸水性樹脂の配合量は、グリース全量に対して0.01〜5.0質量%、好ましくは0.1〜5.0質量%、特に好ましくは0.1〜3.0質量%である。吸水性樹脂の配合量が0.01質量%未満では十分な保水力が得られず、耐火性に必要な所定量の水を配合することができない。一方、吸水性樹脂を5質量%を超える量で配合しても耐火性の効果は飽和する傾向にあるほか、グリース本来の特性である潤滑性が低下してしまう。
【0014】
<水>
本発明に係るグリース組成物中の水は、水道水、純水、イオン交換水などを特に限定することなく使用することができる。
水の配合量は、グリース全量に対して10〜60質量%、好ましくは15〜55質量%、特に好ましくは25〜55質量%である。水の配合量は、10質量%未満では十分な耐火性を得ることができず、一方、60質量%を超える量で配合しても耐火性の効果は飽和する傾向にあるほか、グリース本来の特性である潤滑性が低下してしまう。
【0015】
<炭酸カルシウム>
本発明に係るグリース組成物は、炭酸カルシウムを含有することにより、水が配合されているにもかかわらず、グリースとして十分な潤滑性を維持することができる。
本発明では、平均粒径が0.01〜20μmの炭酸カルシウムを使用する。炭酸カルシウムの平均粒径が0.01μm未満の場合や、20μmを超える場合は十分な潤滑性が得られない。本発明に係るグリース組成物中の炭酸カルシウムの平均粒径は、好ましくは0.01〜10μm、より好ましくは0.01〜5μm、更に好ましくは0.01〜3μm、特に好ましくは0.01〜1.5μmである。
【0016】
炭酸カルシウムの配合量は、グリース全量に対して3〜30質量%であり、好ましくは5〜20質量%、より好ましくは5〜15質量%である。炭酸カルシウムの配合量が3質量%未満では、炭酸カルシウムにより潤滑性を向上させる効果が十分得られず、水の影響により十分な潤滑性を維持することができない。一方、炭酸カルシウムの配合量が30質量%を超えると効果が飽和する傾向にあるほか、グリースの潤滑性を低下させてしまう。
【0017】
<基油>
本発明に係るグリース組成物の基油としては、通常のグリースに使用される公知の基油、すなわち、鉱油系潤滑油基油、合成系潤滑油基油、又はこれらの混合系のものなどの種々の潤滑油基油を用いることができる。
【0018】
鉱油系潤滑油基油としては、例えば原油の潤滑油留分を溶剤精製、水素化精製など適宜組み合わせて精製したものが挙げられる。合成系潤滑油基油としては、例えば、ポリα−オレフィン、ジエステル類、ポリオールエステル類、アルキルベンゼン類、ポリグリコール類、フェニルエーテル類などが挙げられる。
上記鉱油系潤滑油基油及び合成系潤滑油基油は、それぞれ1種単独であるいは2種以上を混合して使用することができる。
なお、基油の配合量としては、グリースとして潤滑性等の観点から、グリース全量に対して、好ましくは10〜87質量%であり、より好ましくは15〜70質量%、特に好ましくは20〜60質量%である。
【0019】
<増ちょう剤>
本発明に係るグリース組成物の増ちょう剤としては、一般的なグリースに使用される公知の増ちょう剤を用いることができる。例えば、カルシウム石けん、リチウム石けん、ナトリウム石けん、アルミニウム石けん等の金属石けん系増ちょう剤、複合体リチウム石けん、複合体アルミニウム石けん等の複合体金属石けん系増ちょう剤、及びポリウレア等が挙げられる。増ちょう剤の配合量は、グリース全量に対して3〜25質量%配合することが好ましい。
【0020】
<その他の成分>
本発明に係るグリース組成物は、必要に応じて、他の各種添加剤(任意成分)を適宜配合することもできる。
任意成分である添加剤としては、例えば、アルカリ土類金属スルホネート、アルカリ土類金属フェネート、アルカリ土類金属サリシレートなどの金属系清浄剤;アルケニルこはく酸イミド、アルケニルこはく酸イミド硼素化変性物、亜鉛系、硫黄系、アミン系、エステル系などの各種摩耗防止剤;2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールなどのアルキルフェノール類、4,4’−メチレンビス−(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)などのビスフェノール類、n−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェノール)プロピオネートなどのフェノール系化合物、ナフチルアミン類やジアルキルジフェニルアミン類などの芳香族アミン化合物などの各種酸化防止剤;ベンゾトリアゾール、ベンゾイミダゾールなどの各種腐食防止剤などが挙げられる。
上記のような各添加剤は、それぞれ1種単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの任意成分の配合量は、グリース全量に対して、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは5質量%以下である。
【0021】
以上のように、本発明に係るグリース組成物は、耐火性向上のため水を含んでいるにもかかわらず、耐火性が極めて優れるだけでなく、グリース本来の潤滑性も優れているため、特に着火の可能性のある箇所に好適に使用することができる。
【実施例】
【0022】
次に、本発明に係るグリース組成物の実施例及び比較例について説明する。なお、本発明は、下記の実施例及び比較例に限定されるものではない。
【0023】
<実施例1〜5及び比較例1〜4>
実施例及び比較例では、以下に示す*1〜*9の各成分を表1に示した配合量(質量)の割合で含有させたグリース組成物を調製した。
【0024】
*1〜*9の各成分のうち、増ちょう剤*1及び*2については、その増ちょう剤の原料を基油に混合し、基油中でその原料を反応させて増ちょう剤を合成し、結果として*1〜*9の各成分を表1に示すような配合割合で含有するグリース組成物を調製した。なお、グリース組成物は、*1〜*9の各成分を適宜混合し、ミル処理を行ってグリース中に増ちょう剤を均一に分散させて調製した。
【0025】
*1.リチウム−12−ヒドロキシステアレート
耐熱容器に基油とリチウム−12−ヒドロキシステアレート(堺化学社製、商品名;S7000H)を投入して加熱し、約200℃付近で溶解させた。次いで、さらに基油を加え、冷却し、ミル処理を行うことによりリチウム−12−ヒドロキシステアレートの結晶を最適なものとし、基油中に混合分散させたグリースを調製した。
【0026】
*2.脂肪族ジウレア
耐熱容器に基油とジフェニルメタン−4,4−ジイソシアネートを投入して加熱した。次に、オクチルアミンを約60℃付近で添加し、約40分間反応させた。その後、撹拌しながら170℃に加熱し、さらに基油を加え、冷却した後、ミル処理を行うことによりジウレアの結晶を最適なものとし、基油中に混合分散させたグリースを調製した。
【0027】
*3.鉱油
40℃動粘度が100mm/sである水素化精製鉱油を用いた。
【0028】
*4.吸水性樹脂
ポリアクリル酸部分ナトリウム塩架橋物(吸水量は約700g/g、平均粒径(カタログ値)20〜50μm)。
【0029】
*5.水
イオン交換水を用いた。
【0030】
*6.炭酸カルシウムA(平均粒径0.04μm)
【0031】
*7.炭酸カルシウムB(平均粒径2.00μm)
【0032】
*8.硫化油脂
【0033】
*9.酸化防止剤(ジフェニルアミン)
【0034】
<評価方法>
得られたグリース組成物は、それぞれ以下のような燃焼性試験及び潤滑性試験により評価を行った。
【0035】
−燃焼性試験1−
500℃に温めたホットプレートの上に内径100mm、厚さ2mmの筒型の鋼製皿を載せた。そして、この鋼製皿に実施例1〜5及び比較例1〜4で調整した各グリースを3g入れ、3分間観察し、着火の有無を調べた。評価は以下の基準で行った。
○:着火なし
×:着火あり
【0036】
−燃焼性試験2−
内径100mm、厚さ2mmの筒型の鋼製皿を800℃の電気炉で20分間加熱した。その後、加熱した鋼製皿を500℃に温めたホットプレートの上に載せ、実施例1〜5及び比較例1〜4で調整した各グリースを3g入れ、3分間観察し、着火の有無を調べた。評価は以下の基準で行った。
○:着火なし
×:着火あり
【0037】
−潤滑性試験−
ASTM D2596に準拠し、シェル四球試験を行った。評価は融着荷重で行った。数値が高いほど潤滑性が良好であることを示す。
【0038】
【表1】


【0039】
【表2】


【0040】
実施例1〜5のグリース組成物は、表1に示すように、潤滑性及び耐火性がともに良好であり、特に実施例2〜5のグリース組成物は耐火性が優れていた。
一方、比較例のグリース組成物は、比較例1では潤滑性は高いものの耐火性が低かった。また、比較例2〜4のグリース組成物では、水の配合により耐火性は良好であったが、潤滑性が不十分であった。
【出願人】 【識別番号】398053147
【氏名又は名称】コスモ石油ルブリカンツ株式会社
【出願日】 平成19年4月27日(2007.4.27)
【代理人】 【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳

【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳

【識別番号】100085279
【弁理士】
【氏名又は名称】西元 勝一

【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志


【公開番号】 特開2008−274091(P2008−274091A)
【公開日】 平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願番号】 特願2007−118876(P2007−118876)