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【発明の名称】 イオン液体潤滑剤
【発明者】 【氏名】大野 弘幸

【氏名】福元 健太

【氏名】森 誠之

【氏名】南 一郎

【氏名】稲垣 隆司

【氏名】山川 義和

【要約】 【課題】イオン液体潤滑剤の耐摩耗性を向上させる。

【解決手段】アスパラギン酸及びグルタミン酸の誘導体をアニオンとする新規な塩を製造し、これをイオン液体潤滑剤の添加剤に用いることにより、耐摩耗性の向上したイオン液体潤滑剤を得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式I:


[式中、R、R、R及びRはそれぞれ独立に炭素数1〜12のアルキル基を示し、Rは水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、またはアリールアルキル基を示し、Rは炭素数1〜10のアルキル基、アリールアルキル基、またはアシル基を示し、Xは窒素原子またはリン原子を示し、nは1または2を示す。]
で表されるイオン液体及び塩。
【請求項2】
、R、R及びRがそれぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基であり、Rが水素原子であり、Rがアセチル基である請求項1記載のイオン液体及び塩。
【請求項3】
、R、R及びRがそれぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基であり、R及びRがそれぞれベンジル基である請求項1記載のイオン液体及び塩。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のイオン液体又は塩を、一般式II:


[式中、R、Rはそれぞれ独立に炭素数1〜6のアルキル基を表し、Rは水素原子またはメチル基を示す]
で表される置換イミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドと共に含有するイオン液体潤滑剤。
【請求項5】
該イオン液体又は塩の含有量が0.01〜50重量%である請求項4記載のイオン液体潤滑剤。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑剤およびその製造法に関する。特に、本発明はイオン液体の潤滑剤としての性能を向上させるための添加剤としての新規イオン液体及び塩、並びにそれらを添加したイオン液体潤滑剤に関する。
【背景技術】
【0002】
産業機器、装置、情報機器その他機器の耐久性、信頼性の向上や精密機器、真空機器、磁気記憶装置などへの用途特化に伴って、潤滑剤にはより高度な耐摩耗性の向上が求められている。潤滑剤として使用するため既存実用油は添加剤を加えて総合性能を向上させている。潤滑剤は使用とともに化学的に分解するので特に熱安定性や酸化安定性に優れたものが求められ、環境保全の観点から蒸発による環境への拡散が少なく、潤滑剤の組成としても天然に近い素材を用いる環境調和型の潤滑剤が求められている。(非特許文献1参照のこと)このような背景のもとに、熱安定性、酸化安定性、導電性、低揮発性、低引火性などの基本特性に優れているイオン液体を潤滑剤として使用する提案がなされている。(特許文献1〜2及び非特許文献2参照のこと)
【0003】
【特許文献1】特開2004−183868号公報
【特許文献2】特開2005−314467号公報
【非特許文献1】H. Kamimura, T. Kubo, I. Minami, S. Mori, Tribology International, 40, 620-625(2007)
【非特許文献2】森 誠之、新材料シリーズ、イオン液体II−驚異的な進歩と多彩な近未来−(シーエムシー出版、2006年3月30日発行、監修:大野弘幸)、p277−282 第23章 新規分野の創成 1.トライボロジー
【非特許文献3】H. Kamimura, T. Chiba, N. Watanabe, T. Kubo, H. Nanao, I. Minami, S. Mori, Tribology Online, 1, 2(2006), 40-43
【非特許文献4】R. A. Reich, P. A. Stewart, J. Bohaychick, J. A. Urbanski, "Base Oil Properties of Ionic Liquids", Lubrication Engineering, 59, 16-22(2003)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
イオン液体を潤滑剤として使用するため、摩擦面での化学反応による腐食摩耗性の低減が求められている。置換イミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドは融点が低くまた粘度も低いことが特徴的なイオン液体として代表的なものであり、潤滑剤としての使用が提案されているが、それ自体では摩擦面での摩耗性があるため耐摩耗性の向上が求められ、改善のための添加剤の検討も報告されている。(非特許文献3参照のこと)しかしながら、既存の潤滑油に使用する添加剤はイオン液体に対して難溶である点が問題であり、また、添加剤自体がイオン液体又は塩ではないために潤滑剤に求められているイオン液体の特性が活かされず揮発性、酸化安定性、熱安定性などに問題がある。(非特許文献4参照のこと)
【0005】
本発明の目的は、イオン液体からなる潤滑剤において、イオン液体の持つ特性を失うことなく、耐摩耗性を向上する添加剤としてアミノ酸誘導体イオン液体及びアミノ酸誘導体塩を提供し、それらの添加剤を含有するイオン液体潤滑剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、イオン液体の潤滑剤としての耐摩耗性を向上する方法について鋭意検討の結果、驚くべきことに、イオン液体である置換イミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドに、アスパラギン酸及びグルタミン酸の誘導体から製造した新規イオン液体及び塩を添加剤として添加することにより耐摩耗性が著しく向上したイオン液体潤滑剤が得られ、上記課題を解決できることを見出した。本発明は、添加剤としての新規イオン液体及び塩、及びそれらを添加剤として用いるイオン液体潤滑剤を提供するものである。
【0007】
1)ある局面において、本発明は、一般式I:


[式中R、R、R及びRはそれぞれ独立に炭素数1〜12のアルキル基を示し、Rは水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、またはアリールアルキル基を示し、Rは炭素数1〜10のアルキル基、アリールアルキル基、またはアシル基を示し、Xは窒素原子またはリン原子を示し、nは1または2を示す。]
で表されるイオン液体及び塩を提供する。
【0008】
2)さらなる局面において、本発明は、R、R、R及びRがそれぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基であり、Rが水素原子であり、Rがアセチル基である上記1)項に記載のイオン液体及び塩を提供する。
【0009】
3)さらなる局面において、本発明は、R、R、R及びRがそれぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基であり、R及びRがそれぞれベンジル基である上記1)項に記載のイオン液体及び塩を提供する。
【0010】
4)別の局面において、本発明は、上記1)〜3)項のいずれかに記載のイオン液体又は塩を、一般式II:


[式中、R、Rはそれぞれ独立に炭素数1〜6のアルキル基を示し、Rは水素原子及びメチル基を示す]
で表される置換イミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドと共に含有するイオン液体潤滑剤を提供する。
【0011】
5)さらなる別の態様において、本発明は、該イオン液体又は塩の含有量が0.01〜50重量%である上記4)項に記載のイオン液体潤滑剤を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、潤滑剤の添加剤としてアスパラギン酸及びグルタミン酸の誘導体からなる新規なイオン液体及び塩が提供でき、これらを置換イミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドとともに含有するイオン液体潤滑剤は、以下のような効果を有する。
(1)耐摩耗性が向上し潤滑剤としての性能が上がる。
(2)熱安定性、酸化安定性、導電性に優れ、低揮発性、低引火性であるイオン液体の特性により潤滑剤としての性能が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0014】
本発明は、下記一般式Iで表されるアスパラギン酸及びグルタミン酸の誘導体からなる新規なイオン液体及び塩を提供し、さらに、それらをイオン液体である一般式IIで表される置換イミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドに添加したイオン液体潤滑剤を提供する。
【0015】


【0016】
一般式Iで表されるイオン液体又は塩は、一般式IIIで表されるアンモニウム化合物又はホスホニウム化合物と、一般式IVで表されるアスパラギン酸又はグルタミン酸の誘導体を反応させて製造することが出来る。
【0017】
反応はアンモニウム化合物又はホスホニウム化合物の水酸化物を、アスパラギン酸誘導体又はグルタミン酸誘導体と1:1のモル比で、水又は有機溶媒中で混合して実施するのがよい。
【0018】
反応後、濃縮し溶媒及び副生物である水を除去し、必要であれば不溶性物質をろ過により除き、又は混和しにくい有機溶媒で洗浄した後、更に濃縮、乾燥するのがよい。
【0019】
反応温度は特に限定されず室温でよく、有機溶媒としては特に限定されず濃縮、乾燥で除去しやすい溶媒が好ましい。
【0020】
反応で得られる塩がイオン液体として得られるか結晶として得られるかは予測できないが、イオン液体となる場合には濃縮、乾燥により油状物として得られる。塩が結晶となる場合には、析晶、ろ過、洗浄、乾燥など一般的な方法で単離することが出来る。
【0021】
一般式IIIで表されるアンモニウム化合物又はホスホニウム化合物のR、R、R及びRとしては炭素数1〜12のアルキル基であれば特に限定されないが、炭素数1〜4のアルキル基、特にn−ブチル基が好ましい。
【0022】
一般式IVで表されるアスパラギン酸及びグルタミン酸の誘導体としてはそれらのアミノ基の水素原子の1個又は2個が置換された誘導体が用いられる。置換基としては炭素数1〜10のアルキル基、アリールアルキル基、及びアシル基のものが用いられ、特に限定されないが、置換基としてはベンジル基、アセチル基などが好ましい。
【0023】
これらのアスパラギン酸及びグルタミン酸の誘導体から得られる一般式Iで表される化合物はイオン液体又は塩として得られる。
【0024】
アスパラギン酸及びグルタミン酸の誘導体から得られる一般式Iで表されるイオン液体又は塩を、一般式IIで表される置換イミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドに添加剤として添加することにより本発明のイオン液体潤滑剤が得られる。
【0025】
一般式IIで表される置換イミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドとしては、置換基R及びRが同一又は異なって炭素数1〜6のアルキル基であり、Rが水素原子又はメチル基であるものが使用されるが、限定されるものではないがRが水素原子であるものが好ましい。
【0026】
一般式Iで表される化合物が常温で結晶である場合にも、それらをイオン性液体である一般式IIで表される置換イミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドに添加した組成物はイオン液体であることが見出された。
【0027】
これらの添加剤の添加温度は特に限定されないが常温でよく、混合により均一な溶液にすればよい。混合は溶媒を用いて均一に溶解させた後に溶媒を除去、乾燥して実施してもよく、溶媒としてはメタノール、エタノール、n-プロパノールなどの低級アルコールが好ましい。
【0028】
添加剤の濃度は潤滑剤として摩耗性が向上できる濃度であればよく、特に限定されないが、重量濃度で0.01〜50%がよく、好ましくは0.05〜10%がよい。
一般式Iで表されるイオン液体又は結晶は2種以上を一般式IIで表されるイオン液体に添加してもよく、また、一般式IIで表されるイオン液体は2種以上を添加剤として用いてもよい。
【0029】
一般式IIIで表される4級アンモニウム水酸化物及びホスホニウム水酸化物、一般式IVで表されるアスパラギン酸及びグルタミン酸の誘導体はそれぞれ市販品又は公知の方法で製造し入手することが出来る。
【0030】
以下、実施例に基づいて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は本実施例に限定されるものではない。熱物性測定において、示差走査熱量測定(Seiko Instrument Inc.DSC120使用)は測定温度範囲−130〜200℃、昇温速度5℃/minで実施し、熱重量測定(Seiko Instrument Inc.TG/DTA220使用)は測定温度範囲22〜500℃、昇温速度10℃/minで実施した。
【実施例1】
【0031】
N,N−ジベンジルアスパラギン酸テトラメチルアンモニウム塩の製造
N,N−ジベンジルアスパラギン酸9.4g(0.03mol)と25%テトラメチルアンモニウムハイドロキサイド水溶液10.9g(0.03mol)を混合し、80〜90℃で1時間撹拌した後、水が留出しなくなるまで濃縮し、残渣にメタノール10mLを加え、加温溶解後、濃縮した。残渣に酢酸エチル25mLとメタノール5mLを加え、70〜75℃で加熱溶解し、20〜30℃まで冷却後、不溶物を濾去、濾液を濃縮して得られた結晶を粉砕後、100℃以下で乾燥し、N,N−ジベンジルアスパラギン酸テトラメチルアンモニウム塩の淡黄色結晶を11.3g、収率97.5%で得た。本品の熱物性測定結果は分解温度(Td) 190.3℃であり、1H-NMR測定結果は以下のようになった。
1H-NMR(CDCl3、δ/ ppm、TMS基準):2.69(1H, dd), 2.87(1H, dd), 3.23(12H, s), 3.52(1H, dd), 3.71(2H, d), 4.04(2H, d), 7.17-7.42(10H, m).
<原料N,N−ジベンジルアスパラギン酸の調製>
アスパラギン酸10.0g(75.1mmol)、水100mLと水酸化ナトリウム15.0g(375mmol)を混合し、90℃付近まで加熱した。そのままの温度で塩化ベンジル20.9g(165mmol)とトルエン50mLの混合液を約20分間で滴下した。90℃付近で約9時間撹拌し、水酸化ナトリウム7.50g(188mmol)l)と塩化ベンジル10.5g(87.5mmol)を追加し、一晩撹拌した。加熱を止め、室温まで冷却し、水層を分取、トルエン50mLで洗浄した。得られた水層に濃塩酸34.1gを加え、pHを約1にし、氷冷後、析出した結晶を濾取し、脱イオン水で振り掛け洗浄し、60℃以下で乾燥し、N,N−ジベンジルアスパラギン酸の白色結晶を17.8g、収率75.5%で得た。本品の1H-NMR 測定結果は以下のようになった。
1H-NMR(D2O、δ/ ppm、TMS基準):2.35-2.45(2H, m), 3.43-3.47(3H, m), 3.70(2H, d), 7.08-7.27(10H, m).
【実施例2】
【0032】
N,N−ジベンジルアスパラギン酸テトラエチルアンモニウム塩の製造
N,N−ジベンジルアスパラギン酸9.4g(0.03mol)と35%テトラエチルアンモニウムハイドロキサイド水溶液10.9g(0.03mol)を混合し、80〜90℃で1時間撹拌した後、水が留出しなくなるまで濃縮し、残渣にエタノール5mLを加え、加温溶解後、濃縮した。残渣に酢酸エチル28mLとメタノール5mLを加え、70〜75℃で加熱溶解し、20〜30℃まで冷却後、不溶物を濾去、濾液を濃縮し、残渣に酢酸エチル30mLを加え、濃縮乾固し得られた結晶を粉砕後、デシケーター中、真空ポンプで乾燥し、N,N−ジベンジルアスパラギン酸テトラエチルアンモニウム塩の淡黄色結晶を13.0g、収率97.9%で得た。本品の熱物性測定結果は融点(Tm)109.1℃、分解温度(Td) 191.9℃であり、1H-NMR測定結果は以下のようになった。
1H-NMR(CDCl3、δ/ ppm、TMS基準):1.27-1.29 (12H, m), 2.73(1H, d), 2.91(1H, dd), 3.25(8H, q), 3.53(1H, d), 3.72(2H, d), 4.10(2H, d), 7.15-7.43(10H, m).
【実施例3】
【0033】
N,N−ジベンジルアスパラギン酸テトラプロピルアンモニウム塩の製造
N,N−ジベンジルアスパラギン酸9.4g(0.03mol)と35%テトラプロピルアンモニウムハイドロキサイド水溶液30g(0.03mol)を混合し、水が留出しなくなるまで濃縮し、残渣にメタノール10mLを加え、加温溶解後、濃縮した。残渣に酢酸エチル30mLを加え、20〜30℃まで冷却後、不溶物を濾去、濾液を濃縮し、残渣を真空ポンプにより濃縮した。酢酸エチル25mLを加え、不溶物を濾去し、濃縮乾固し得られた結晶を粉砕後、デシケーター中、真空ポンプで乾燥することで、N,N−ジベンジルアスパラギン酸テトラプロピルアンモニウム塩の淡黄色結晶を11.6g、収率93.2%で得た。本品の熱物性測定結果は融点(Tm)88.0℃、分解温度(Td) 194.5℃であり、1H-NMR測定結果は以下のようになった。
1H-NMR(CDCl3、δ/ ppm、TMS基準):0.83(12H, t), 1.62-1.72(8H, m), 2.74(1H, dd), 2.91(1H, dd), 3.16-3.20(8H, m), 3.55(1H, dd), 3.72(2H, d), 4.11(2H, d), 7.21-7.37(10H, m).
【実施例4】
【0034】
N,N−ジベンジルアスパラギン酸テトラブチルアンモニウム塩の製造
N,N−ジベンジルアスパラギン酸8.00g(25.5mmol)と40%テトラブチルアンモニウムハイドロキサイド水溶液16.6g(25.5mmol)を混合し、10mLのメタノールを加え、加熱溶解後、水が留出しなくなるまで濃縮した。残渣に酢酸エチル15mLを加え、不溶物を濾去後、濾液を濃縮した。残渣を外温105℃で真空ポンプを用い乾燥した後冷却し、N,N−ジベンジルアスパラギン酸テトラブチルアンモニウム塩の淡黄色結晶を13.9g、収率98.3%で得た。本品の熱物性測定結果は融点(Tm)106.5℃、分解温度(Td) 201.3℃であり、1H-NMR測定結果は以下のようになった。
1H-NMR(CDCl3、δ/ ppm、TMS基準):0.96(12H, t), 1.34(8H, td), 1.56-1.64(8H, m), 2.73(1H, dd), 2.91(1H, dd), 3.20-3.24(8H, m), 3.55(1H, dd), 3.72(2H, d), 4.11(2H, d), 7.14-7.43(10H, m).
【実施例5】
【0035】
N−アセチルアスパラギン酸テトラプロピルアンモニウム塩の製造
N−アセチルアスパラギン酸5.00g(28.5mmol)と1Mテトラプロピルアンモニウムハイドロキサイド水溶液28.5mL(28.5mmol)を混合し、水が留出しなくなるまで濃縮し、残渣にクロロホルム60mLを加え、不溶物を濾去後、濾液を濃縮し、残渣をヘキサンと酢酸エチルから結晶化し、得られた結晶を40℃以下で減圧乾燥し、N−アセチルアスパラギン酸テトラプロピルアンモニウム塩の淡黄色結晶を9.78g、収率95.2%で得た。本品の熱物性測定結果は融点(Tm)80.2℃、分解温度(Td) 212.9℃であり、1H-NMR測定結果は以下のようになった。
1H-NMR(CDCl3、δ/ ppm、TMS基準):1.03(12H, t), 1.70-1.79(8H, m), 1.98(3H, s), 2.60(1H, dd), 2.81(1H, dd), 3.22-3.26(8H, m), 4.37(1H, ddd), 6.86(1H, d).
【実施例6】
【0036】
N−アセチルアスパラギン酸テトラブチルアンモニウム塩の製造
N−アセチルアスパラギン酸5.37g(30.7mmol)と40%テトラブチルアンモニウムハイドロキサイド水溶液19.9g(30.7mmol)を混合し、加熱溶解した。溶液を水が留出しなくなるまで濃縮後、真空ポンプを用い、外温105℃で乾燥した後冷却し、N−アセチルアスパラギン酸テトラブチルアンモニウム塩の白色結晶を12.5g、収率97.7%で得た。本品の熱物性測定結果は融点(Tm)74.7℃、分解温度(Td) 208.8℃であり、1H-NMR測定結果は以下のようになった。
1H-NMR(CDCl3、δ/ ppm、TMS基準):0.99(12H, t), 1.39(8H, td), 1.62-1.70 (8H, m), 1.97(3H, s), 2.58(1H, dd), 2.80(1H, dd), 3.24-3.28(8H, m), 4.35(1H, ddd), 6.86(1H, d).
【実施例7】
【0037】
N−アセチルグルタミン酸テトラブチルホスホニウム塩の製造
N−アセチルグルタミン酸5.00g(26.4mmol)と40.43%テトラブチルホスホニウムハイドロキサイド水溶液18.1g(26.4mmol)を混合し、水が留出しなくなるまで濃縮した。外温105℃で真空ポンプを用いて乾燥し、N−アセチルグルタミン酸テトラブチルホスホニウム塩の無色油状物を11.9g、収率98.3%で得た。本品の熱物性測定結果はガラス転移温度(Tg)−16.5℃、分解温度(Td) 223.6℃であり、1H-NMR測定結果は以下のようになった。
1H-NMR(CDCl3、δ/ ppm、TMS基準):0.96(12H, t), 1.51-1.57 (16H, m), 1.65(1H, tt), 1.96(3H, s), 2.21-2.42(10H, m), 2.65(1H, td), 4.38(1H, dt), 6.86(1H, d).
【実施例8】
【0038】
N,N−ジベンジルアスパラギン酸テトラブチルホスホニウム塩の製造
N,N−ジベンジルアスパラギン酸15.0g(47.9mmol)と40.43%テトラブチルホスホニウムハイドロキサイド水溶液32.7g(47.9mmol)を混合し、水が留出しなくなるまで濃縮、酢酸エチルを加え、不溶物を濾去後、濾液を濃縮し、外温105℃で真空ポンプを用い乾燥し、N,N−ジベンジルアスパラギン酸テトラブチルホスホニウム塩の淡黄色油状物を25.8g、収率94.2%で得た。本品の熱物性測定結果はガラス転移温度(Tg)−25.1℃、分解温度(Td) 206.7℃であり、1H-NMR測定結果は以下のようになった。
1H-NMR(CDCl3、δ/ ppm、TMS基準):0.93(12H, t), 1.47-1.49(16H, m), 2.18-2.26(8H, m), 2.72(1H, dd), 2.90-2.97(1H, m), 3.55(1H, dd), 3.71(2H, d), 4.10(2H, d), 7.15-7.42(10H, m).
【実施例9】
【0039】
N−アセチルアスパラギン酸テトラブチルホスホニウム塩の製造
N−アセチルアスパラギン酸5.00g(28.5mol)と40.43%テトラブチルホスホニウムハイドロキサイド水溶液19.5g(28.5mmol)を混合し、水が留出しなくなるまで濃縮した。残渣を外温105℃で真空ポンプを用い乾燥し、N−アセチルアスパラギン酸テトラブチルホスホニウム塩の白色固体を12.2g、収率98.7%で得た。本品の熱物性測定結果は融点(Tm)41.7℃、分解温度(Td) 236.9℃であり、1H-NMR測定結果は以下のようになった。本品の1H-NMR測定結果は以下のようになった。
1H-NMR(CDCl3、δ/ ppm、TMS基準):0.97(12H, t), 1.51-1.55(16H, m), 1.97(1H, s), 2.20-2.27(8H, m), 2.58(1H, dd), 2.81(1H, dd), 4.37(1H, dq), 6.83(1H, s br).
【実施例10】
【0040】
潤滑剤Aの製造
1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド8.39g(20.0mmol)にN−アセチルグルタミン酸テトラブチルホスホニウム塩38mg(0.085mmol)を加え、室温で5分間かき混ぜ、澄明な溶液としてイオン液体潤滑剤を得た。本品の熱物性測定結果はガラス転移温度(Tg)−85.6℃、融点(Tm)−0.6℃であった。このイオン液体潤滑剤を潤滑剤Aとした。
【実施例11】
【0041】
潤滑剤Bの製造
1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド8.39g(20.0mmol)にN,N−ジベンジルアスパラギン酸テトラブチルホスホニウム塩49mg(0.085mmol)を加え、室温で5分間かき混ぜ、澄明な溶液としてイオン液体潤滑剤を得た。このイオン液体潤滑剤を潤滑剤Bとした。
【実施例12】
【0042】
潤滑剤Cの製造
1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド8.39g(20.0mmol)にN−アセチルアスパラギン酸テトラブチルホスホニウム塩37mg(0.085mmol)を加え、室温で5分間かき混ぜ、澄明な溶液としてイオン液体潤滑剤を得た。このイオン液体潤滑剤を潤滑剤Cとした。
【実施例13】
【0043】
潤滑剤Dの製造
N−アセチルグルタミン酸テトラブチルホスホニウム塩1.9g(4.2mmol)、N−アセチルアスパラギン酸テトラブチルホスホニウム塩1.8g(4.2mmol)を加え、室温で5分間かき混ぜ、澄明油状物を得た。本品の熱物性測定結果はガラス転移温度(Tg)−23.7℃、分解温度(Td) 239.7℃であった。この油状物37mgを1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド8.39g(20mmol)に加え、室温で5分間かき混ぜ、澄明な溶液としてイオン液体潤滑剤を得た。このイオン液体潤滑剤を潤滑剤Dとした。
【実施例14】
【0044】
潤滑剤Eの製造
1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド8.39g(20.0mmol)にN−アセチルアスパラギン酸テトラプロピルアンモニウム塩31mg(0.085mmol)を加え、室温で5分間かき混ぜ、澄明な溶液としてイオン液体潤滑剤を得た。本品の熱物性測定結果はガラス転移温度(Tg)−85.6℃、融点(Tm)−0.9℃であった。このイオン液体潤滑剤を潤滑剤Eとした。
【実施例15】
【0045】
潤滑剤Fの製造
1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド8.39g(20.0mmol)にN−アセチルアスパラギン酸テトラブチルアンモニウム塩35mg(0.085mmol)を加え、室温で5分間かき混ぜ、澄明な溶液としてイオン液体潤滑剤を得た。このイオン液体潤滑剤を潤滑剤Fとした。
【実施例16】
【0046】
1−メチル−3−ブチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド4.19g(10.0mmol)にメタノール3ml、N−アセチルアスパラギン酸テトラプロピルアンモニウム塩466mg(1.29mmol)を加えて室温でかき混ぜた。得られた均一溶液を濃縮後、真空ポンプで乾燥しイオン液体潤滑剤を得た。本品の熱物性測定結果はガラス転移温度(Tg)−83.0℃、融点(Tm)−2.0℃であった。
[比較例1]
【0047】
潤滑剤G
1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドを用意し、このイオン液体潤滑剤を潤滑剤Gとした。
[比較試験例1]
【0048】
実施例10〜15の潤滑剤A〜F及び比較例1の潤滑剤Gを用いて次のような往復動摩擦試験を行いトライボロジー特性評価を行った。
【0049】
図1に示したボール−平板式摩擦試験機を用い、鋼板の上に潤滑剤を供給し鋼球を押し付けた鋼板を往復動させた。鋼球にかかる荷重を10N、20N、40N、60Nに変化させ、30分間の摩擦後に鋼球及び鋼板を光学顕微鏡で観察して、鋼球の摩耗痕径及び鋼板の摩耗痕幅を求めた。
【0050】
鋼球の摩耗痕径による評価試験結果を図2に示し、鋼板の摩耗痕幅による評価試験結果を図3に示した。図2及び図3の結果から明らかなように、本発明のイオン液体潤滑剤は、比較例のイオン液体潤滑剤に比べて、鋼球の摩耗痕径及び鋼板の摩耗痕幅を大幅に減少し、耐摩耗性を向上できることがわかった。例えば実施例10のイオン液体潤滑剤Aの場合には荷重10N、20Nで鋼球の摩耗痕径が半減しており、実施例11のイオン液体潤滑剤Bの場合には荷重10N〜30Nで鋼板の摩耗痕幅が半減していることがわかる。また、2種の添加剤を添加した実施例13のイオン液体潤滑剤Dでも同様に耐摩耗性が向上していることがわかる。
【0051】
図4には本発明の潤滑剤Bと比較例の潤滑剤Gを用いた場合の往復動摩擦試験後の鋼球及び鋼板の摩耗痕写真を示した。摩耗痕の写真を比較すると潤滑剤Bでは摩耗による表面損傷領域が小さいだけでなく、表面の状態も平滑である。これらの事実から潤滑剤Bの摩耗防止性能が極めて優れていることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】往復動摩擦試験機概略図を示す。
【図2】往復動摩擦試験における鋼球の摩耗痕径を示す。
【図3】往復動摩擦試験における鋼板の摩耗痕幅を示す。
【図4】本発明の潤滑剤Bと比較例の潤滑剤Gを用いた場合の往復動摩擦試験後の鋼球及び鋼板の摩耗痕写真を示す。
【出願人】 【識別番号】000154749
【氏名又は名称】株式会社片山製薬所
【出願日】 平成19年4月27日(2007.4.27)
【代理人】 【識別番号】100068526
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 恭生

【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦

【識別番号】100098925
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 敏夫

【識別番号】100126778
【弁理士】
【氏名又は名称】品川 永敏


【公開番号】 特開2008−274087(P2008−274087A)
【公開日】 平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願番号】 特願2007−118794(P2007−118794)