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【発明の名称】 グリース組成物および転動装置
【発明者】 【氏名】傳寳 功哲

【要約】 【課題】インバータ制御回路を有する家電機器用モータ(ファンモータ、クリーナモータ、洗濯機モータ)、クリーンルーム用ファンモータ、換気扇用モータ、給湯器用モータ等においては通常毎分数百〜数千回転程度であるため、安定した除電が困難である。

【解決手段】誘電体セラミックスを0.1質量%以上20質量%含有し、比誘電率が3以上であるグリース組成物を転動装置に封入する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体セラミックスを0.1質量%以上20質量%含有し、比誘電率が3以上であるグリース組成物。
【請求項2】
添加剤としてイオン性液体および導電性カーボンブラックのいずれかまたは両方を含有する請求項1記載のグリース組成物。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載されたグリースを封入した転動装置。
【請求項4】
「比誘電率/油膜パラメータ」の値が0.8以上の状態になっていることを特徴とする請求項3記載の転動装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、グリース組成物を封入した転動装置に関し、特に、静電現象によって軌道輪と転動体との間に生じる電食を防止することができる電食防止可能な転がり軸受に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の転がり軸受は、家電機器用モータ(ファンモータ、クリーナモータ、洗濯機モータ)、クリーンルーム用ファンモータ、換気扇用モータ、給湯器用モータのように、比較的小型モータであり、インバータ制御回路を有するモータに使用されている。
上記用途では、インバータ回路から高周波の電流が発生し、この電流が軸受内の内輪、玉、外輪の間を通過して流れ、転動面(レース面)に電食を発生させるという問題があった。
【0003】
その対策として、例えば、外輪外径に絶縁材料からなる樹脂製のスリーブを取り付けた電食防止可能な転がり軸受が提案されている(特許文献1および2等)。
転動体に、絶縁性と長寿命を目的としたセラミックを使用し、いずれか一方若しくは両方の軌道輪の残留オーステナイトを2容量%以下とした転がり軸受が提案されている(特許文献3)。
事務機用軸受においては、通電ブラシを備えた軸受が使用されることがある(特許文献4)。
【特許文献1】実開平5−89953号公報
【特許文献2】特開平6−229425号
【特許文献3】特開2001−41248号公報
【特許文献4】実用新案登録第2582960号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、事務機用軸受の回転速度は毎分数十〜数百回転程度であるため、前記のような対策で対応できる。一方、インバータ制御回路を有する家電機器用モータ(ファンモータ、クリーナモータ、洗濯機モータ)、クリーンルーム用ファンモータ、換気扇用モータ、給湯器用モータ等においては通常毎分数百〜数千回転程度であるため、安定した除電が困難である。さらに重要な機能として軸受トルクが小さいことが望ましく、グリースを介して緩やかに除電させることが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、本発明は、誘電体セラミックスを0.1質量%以上20質量%含有し、比誘電率が3以上であるグリース組成物を提供する。
本発明のグリース組成物は、添加剤として、イオン性液体および導電性カーボンブラックのいずれかまたは両方を含有することが好ましい。
本発明はまた、本発明のグリースを封入した転動装置を提供する。
本発明の転動装置は、「比誘電率/油膜パラメータ」の値が0.8以上の状態になっていることが好ましい。油膜パラメータは「EHL油膜厚さ/合成表面粗さ」である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の転動装置は、比誘電率が高いグリース組成物が封入されているため、内外輪間で静電気が発生しても容易に緩和することができ、電食の発生を効果的に防止できる。
さらに、転動装置潤滑グリースに、直流電流による抵抗率でなく、周波数に関係するインピーダンス特性や比誘電率を規定することにより、インバータ制御駆動モータの高周波数ノイズによる電食を効果的に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明において転動装置の種類やその構造については何ら制限がないが、上記に挙げた各種用の転動装置、インバータ制御駆動モータが主たる対象となる。そして、これらの転動装置には、誘電体セラミックスを0.1質量%以上20質量%含有し、比誘電率が3以上であるグリース組成物を使用する。また、「比誘電率/油膜パラメータ」の値が0.8以上の状態になっている。
【0008】
[基油]
グリース組成物の基油は、グリース組成物としての比誘電率が3以上を満足する限り特に限定されないが、極性基が含まれている油がより好適である。
通常、潤滑油の基油として使用されている油は全て使用することができる。好ましくは、低温流動性不足による低温起動時の異音発生や、高温時の耐熱性の観点から、40℃における動粘度が、好ましくは5mm2 /sec以上300mm2 /sec未満、より好ましくは10mm2 /sec以上100mm2 /sec未満である基油が望ましい。
【0009】
具体的には、鉱油系、合成油系または天然油系の潤滑油などが挙げられる。前記鉱油系潤滑油としては、鉱油を減圧蒸留、油剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、硫酸洗浄、白土精製、水素化精製等を、適宜組み合わせて精製したものを用いることができる。
前記合成油系潤滑基油としては、炭化水素系油、芳香族系油、エステル系油、エーテル系油,ポリグリコール系油等が挙げられる。前記炭化水素系油としては、ノルマルパラフィン、イソパラフィン、ポリブテン、ポリイソブチレン、1−デセンオリゴマー、1−デセンとエチレンコオリゴマーなどのポリ−α−オレフィンまたはこれらの水素化物などが挙げられる。
【0010】
前記芳香族系油としては、モノアルキルベンゼン、ジアルキルベンゼン、などのアルキルベンゼン、あるいはモノアルキルナフタレン、ジアルキルナフタレン、ポリアルキルナフタレンなどのアルキルナフタレンなどが挙げられる。
前記エステル系油としては、二塩基酸と分岐アルコールとの反応から得られるジエステル油,一塩基酸と多価アルコールとの反応から得られるネオペンチル型ポリオーエステル油などを好適に挙げることができる。これらは単独でも複数種を併用してもよい。
【0011】
具体例を開示すると、ジエステルとしては、ジオクチルアジペート(DOA)、ジイソブチルアジペート(DIBA)、ジブチルアジペート(DBA)、ジブチルセバケート(DBS)、ジオクチルセバケート(DOS)、メチル・アセチルリシノレート(MAR−N)などが挙げられる。芳香族エステル油としては、トリオクチルトリメリテート(TOTM)、トリデシルトリメリテート、テトラオクチルピロメリテートなどが挙げられる。ネオペンチル型ポリオールエステルは、炭素数5〜12好ましくは5〜9のネオペンチル型ポリオールと、炭素数4〜18好ましくは6〜12の有機酸との反応によって作られる。
【0012】
上記のネオペンチル型ポリオールは、ネオペンチル構造を有する多価アルコールであり、例えば、2,2−ジメチル−プロパン−1,3−ジオール(すなわち、ネオペンチルグリコール)、2−エチル−2−ブチル−プロパン−1,3−ジオール、2,2−ジエチル−プロパン−1,3−ジオール、2−メチル−2−ブチル−プロパン−1,3−ジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ペンタエリスリトール等が使用できる。好ましくは2,2−ジメチル−プロパン−1,3−ジオール、2−メチル−2−ブチル−プロパン−1,3−ジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールであり、特に好ましくは2,2−ジメチル−プロパン−1,3−ジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールである。
【0013】
また、上記の有機酸としては、例えばn−ブタン酸、i−酪酸、n−ペンタン酸、i−吉草酸、n−ヘキサン酸、2−エチルブタン酸、i−ヘキサン酸、ヘキサヒドロ安息息酸、n−ヘプタン酸、i−ヘプタン酸、メチルヘキサヒドロ安息息酸、n−オクタン酸、ジメチルヘキサン酸、2−エチルヘキサン酸、2,4,4−トリメチルペンタン酸、i−オクタン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸、n−ノナン酸、i−ノナン酸、i−デカン酸、i−ウンデカン酸、2−ブチルオクタン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、オクタデカン酸等が使用できる。好ましくはn−ヘプタン酸、n−オクタン酸、ジメチルヘキサン酸、2−エチルヘキサン酸である。
【0014】
これらの有機酸とネオペンチル型ポリオールとからのネオペンチル型ポリオールエステルの合成は、従来から知られている方法、例えば、酸性触媒の存在下で脱水縮合する方法によって行うことができる。
本発明組成物におけるネオペンチル型ポリオールエステルとしては(以下、ネオペンチルグリコールをNPG、トリメチロールプロパンをTMP、ペンタエリスリトールをPEと略す)、例えば、NPG・ジ−(ヘプタノエート)、NPG・ジ−(2−エチルブチレート)、NPG・ジ−[混合(ヘキサノエート、ヘプタノエート)]、TMP・トリ−(ペンタノエート)、TMP・トリ−(ヘキサノエート)、TMP・トリ−[混合(ブチレート、オクタデカノエート)]、TMP・トリ−[混合(ヘキサノエート、ヘプタノエート、オクタノエート)]、PE・テトラ(ペンタノエート)、PEと炭素数4〜8の直鎖状又は分岐状カルボン酸の混合物とのエステル等が挙げられる。
【0015】
また、NPG、TMPおよびPE以外のネオペンチル型ポリオール、すなわち2−メチル−2−プロピル−1,3−ジオール、2,2−ジメチル−プロパン−1,3−ジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールヘキサンと上記の有機酸の単独又は混合体とのネオペンチル型ポリオールエステル等が挙げられる。
分子内電気的極性を保つためには基油は炭化水素鎖長が比較的短く、分子量が小さい方が好ましい。さらにはまた、多価アルコールと二塩基酸・一塩基酸の混合脂肪酸とのオリゴエステルであるコンプレックスエステル油などが挙げられる。
【0016】
前記エーテル系油としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールモノエーテル、ポリプロピレングリコールモノエーテルなどのポリグリコール、あるいはモノアルキルトリフェニルエーテル、アルキルジフェニルエーテル、ジアルキルジフェニルエーテル、ペンタフェニルエーテル、テトラフェニルエーテル、モノアルキルテトラフェニルエーテル、ジアルキルテトラフェニルエーテルなどのフェニルエーテル油などが挙げられる。その他の合成潤滑基油としてはトリクレジルフォスフェート、シリコーン油、パーフルオロアルキルエーテルなどが挙げられる。
【0017】
ポリグリコール系油はポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレンオキサイドとエチレンオキサイドなどを共重合させたポリオキシアルキレングリコールなどが挙げられる。ポリグリコール油は、ポリエチレングリコールとプロピレングリコールなどの重合比率を変えることで水溶性や、油溶性に調整できる。
前記天然油系潤滑基油としては、牛脂、豚脂、大豆油、菜種油、米ぬか油、ヤシ油、パーム油、パーム核油等の油脂系油またはこれらの水素化物が挙げられる。
【0018】
グリースの比誘電率を上げるためには、基油中に極性基が含まれているエステル系油、エーテル系油等がより好ましい。
これらの基油は、単独または混合物として用いることができ、上述した好ましい動粘度に調整される。
【0019】
[増ちょう剤]
増ちょう剤は、グリース組成物としての比誘電率が3以上を満足し、かつ、上記の基油をゲル構造中に保持する能力があれば、特に制約はない。例えば、Li、Na等からなる金属石けん、Li、Na、Ba、Ca等から選択される複合金属石けん等の金属石けん類、ベントン、シリカゲル、導電性カーボン、ウレア化合物、ウレア・ウレタン化合物、ウレタン化合物等の非石けん類を適宜選択して使用できるが、グリースの耐熱性を考慮するとウレア化合物、ウレア・ウレタン化合物、ウレタン化合物または、これらの混合物が好ましい。
【0020】
このウレア化合物、ウレア・ウレタン化合物、ウレタン化合物としては、具体的にはジウレア化合物、トリウレア化合物、テトラウレア化合物、ポリウレア化合物、ウレア・ウレタン化合物、ジウレタン化合物またはこれらの混合物が挙げられ、これらの中でもジウレア化合物、ウレア・ウレタン化合物、ジウレタン化合物またはこれらの混合物がより好ましい。耐熱性を考慮すると、ジウレア化合物を配合することがより望ましい。
【0021】
また、本願発明のように比誘電率を上げるためには、金属石けん、金属複合石けん等の金属元素が含有した増ちょう剤を用いることが好ましい。脂肪酸として、炭素数C6からC18が好適である。中でも12−ヒドロキシステアリン酸や牛脂系脂肪酸であるステアリン酸などを挙げることができる。これらのなかで、12−ヒドロキシステアリン酸リチウムが望ましく、ステアリン酸リチウム石けんは耐フレッチング性、耐摩耗性を向上促進する。リチウム複合石けんは、グリースの滴点が高く耐熱性に優れるので好ましい。
増ちょう剤の総量は適切なグリースちょう度を得るために特に制約がないが、2 〜30質量%程度である。
【0022】
[誘電体セラミックス]
グリースの比誘電率を上げるために加える誘電体セラミックスには、4族元素、ランタノイイド元素、2族元素の単独もしくは組み合わせたものが原料に挙げられる。4族元素、ランタノイイド元素について具体的には、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、ラザホージウム(Rf)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセジウム(Pr)、ネオジウム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)を原料としたものが挙げられる。2族元素について具体的には、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ラジウム(Ra)が挙げられ、特にCa、Sr、Baが好ましい。上記元素以外にはスズ(Sn)、アンチモン(Sb)、テルル(Te)、ビスマス(Bi)が好適である。
【0023】
誘電体セラミックスの具体例は、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、ランタンド−プチタン酸鉛(PLZT)、チタン酸鉛などがある。
誘電体セラミックスは粉末状にしてグリースに添加される。粉末の平均一次粒子径2μm以下が好ましい。2μmを超えた粉末をグリースに含む場合、軸受の振動を引き起こす恐れがあるので、好ましくない。
誘電体セラミックスに並び、導電性カーボンブラックが好適である。具体的にはケッチェンブラック(ライオン)、#3350B、#3050B、#3030B(三菱化学)などは、導電性と増ちょう性の双方を備えているので、比誘電率の低い基油への組合せに好適である。
【0024】
[添加剤]
(酸化防止剤)
グリースの酸化を防ぐ為に酸化防止剤が使用され、アミン系、フェノール系の化合物や亜鉛ジチオカーバメート等を挙げることができる。
(防錆剤・油性剤)
先に例示した界面活性剤と重複するが、例えばオレイン酸やステアリン酸等の脂肪酸、オレイルアルコール等の脂肪酸アルコール、ポリオキシエチレンステアリン酸エステル等の脂肪酸エステル、トリクレジルフォスフェート、ラウリル酸エステル、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸等のリン酸エステル等を使用することができる。
【0025】
防錆剤として、金属系では油溶性スルホネート等が良く用いられ、例えば(石油)スルホネートのバリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、ナトリウム塩、亜鉛塩、アルミニウム塩、リチウム塩などがある。他にフェネート、サリシレート、ホスホネート、無灰系では、コハク酸イミド、ベンジルアミン、コハク酸エステル、コハク酸ハーフエステル、ポリメタクリレート、ポリブテン、ポリカルボン酸アンモニウム塩などを挙げる事ができる。
【0026】
(摩耗防止剤)
耐荷重性能を高める為必要に応じて以下の添加剤を適宜加える事ができる。例えば、亜鉛、モリブデン、テルル、アンチモン、セレン、鉄、銅等のジチオカルバミン酸塩やその組み合わせ等、亜鉛、モリブデン、アンチモン等のジチオリン酸塩等、オクチル酸鉄、ナフテン酸銅、ジブチルスズサルファイド、フェネート、ホスフェート等の有機金属化合物も必要に応じて使用できる。
【0027】
(その他添加剤)
界面活性剤を加えることは有効で、液状のものが特に好ましい。界面活性剤にはスルホン酸型例えばアルコールサルフェート、アルコールエトキシサルフェート、アルコールエーテルサルフェート、芳香族エーテルサルフェート、リン酸エステル型たとえば芳香族リン酸エステル、脂肪族リン酸エステル、ソルビダン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、イミダゾリン型などが挙げられる。特開2003−42166のごとく金属酸化物粒子によって、摩耗による酸化被膜や、電食による凹凸の損傷をミクロ的に平滑化できるため、さらに長時間安定した機能を保つことができる。これらの添加剤の総量は10質量%以下が好ましい。
【0028】
この発明に用いるグリースについては、その効果を阻害しない限り適宜、酸化防止剤、油性剤、摩耗防止剤の類を添加する。特に、室温において粘性液体であるものはぐリースを軸受に封入した際軸受の音響、振動に影響を与えないので好ましい。また、添加剤は分子内極性を持つものが好ましく、添加剤はグリース中の電気配向性を高め、導電率を高めることができる。
【0029】
添加剤はグリースの各種機能を高めることができるが、ちょう度などグリース性状に悪影響を及ぼす恐れがあり、その他添加剤の総量は10質量%未満が好ましい。
高誘電性を示すイオン性液体を、添加剤として使用することができる。イオン性液体とは常温溶融塩とも呼ばれ、液体状でイオン結合を成している。具体的には、脂肪族アミン系、脂環式アミン系、イミダゾリウム系、ピリジン系等をカチオンに挙げることができる、アニオン(X- )には、BF4 - ,PF6 - ,[(CF3 SO2 2 N]- ,Cl- ,Br- 等を挙げることができる。
【0030】
【化1】


【0031】
イオン結合を成しているイオン性液体は、比誘電率が高く好ましい。
グリースちょう度は特に限定しないがNLGIでNo. 1〜4程度(混和ちょう度340〜175)が好ましい。より好ましくは220〜295程度が好ましい。グリースが硬過ぎると、トルクの安定性に問題がでるので好ましくない。一方やわらか過ぎると塗布部からグリース漏洩し、十分な効果が得られなくなるので好ましくない。
【実施例】
【0032】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はこれによって何ら制限されるものではない。
軸受鋼(SUJ2)製の6201型深溝玉軸受(内径12mm、外径32mm、幅10mm)に、潤滑用のグリースを空間容積の30%相当充填し、シールド板を取り付けた。軸受にはインバータからの漏れ電流を流した(特開2004−92750に同様)。本実施例のインバータキャリア周波数は16kHzとした。
【0033】
室温で、軸を他の軸受で支持し、継ぎ手を介してモータに接続し、本実施形態の軸受にインバータからの漏れ電流を流す。
アキシアル荷重39.2N 所定の回転速度、時間(試験回数n=3)で試験した。試験後、アンデロン装置(音響測定装置)を用いて、試験前後のアンデロン値の上昇が3未満のものを「◎」、3以上5以下のものを「○」、5以上20以下のものを「△」、20以上のもの「×」とした。表に、試験したグリース組成と代表性状を示す。
【0034】
表中に記載していないが、全ての実施例及び比較例にアミン系酸化防止剤1%,防錆剤として亜鉛スルホネート1%が添加してある。
絶縁抵抗計にてグリースの抵抗を測定し、直流電流による体積低効率を換算し参考値とした表中に記載した。使用したイオン性液体の構造式を以下に示す。
【0035】
【化2】


【0036】
<グリースLCRメータ測定>
電極(直径:38mm、厚さ:0.3mm)にグリースを充填し、LCRメータを接続させ、25℃の雰囲気でその間のインピーダンスZ(Ω),位相角θ(°),キャパシタンスCp (F),抵抗Rp (Ω)を測定した。測定したインピーダンスの値は、測定電極の断面積と厚さから体積抵抗率に換算した。
周波数は50Hz〜1MHzの範囲を測定した。インバータキャリア周波数の16kHzの値で評価した。
【0037】
また、比誘電率は以下式に代入して求めた。
比誘電率:εr =√[(εr ’)2 +(εr ”)2
εr ’:複素誘電率の実数部 =Cp /C0
εr”:複素誘電率の虚数部 =1/(2πf×C0 ×RP
f :周波数(Hz)
p :試料グリースのキャパシタンス(F)
0 :空気(グリースを取り除いた状態)のキャパシタンス(F)
P :試料グリースの抵抗(Ω)
【0038】
【表1】


【0039】
本願における軸受判定試験では、「比誘電率/油膜パラメータ」の値が0.8以上で良好な値を得ている。
【出願人】 【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
【出願日】 平成19年4月25日(2007.4.25)
【代理人】 【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也

【識別番号】100075579
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 嘉昭

【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】崔 秀▲てつ▼


【公開番号】 特開2008−274021(P2008−274021A)
【公開日】 平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願番号】 特願2007−115973(P2007−115973)