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【発明の名称】 潤滑油組成物
【発明者】 【氏名】小金井 克也

【要約】 【課題】低温から高温にわたる広範囲の温度領域において、良好な泡立ち抑制効果を奏する潤滑油組成物を提供する。

【解決手段】潤滑油基油と、該基油に含有された添加剤とからなる潤滑油組成物であって、該添加剤が、25℃における動粘度が20mm2/s以上の粘度を有する少なくとも一種のパーフルオロポリエーテルの骨格構造を有する化合物を泡立ち抑制量、特に潤滑油組成物全重量基準で10ppm以上含有してなることを特徴とする潤滑油組成物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基油と該基油に含有された添加剤とからなる潤滑油組成物であって、該添加剤が、25℃における動粘度20mm2/s以上の少なくとも一種のパーフルオロポリエーテルの骨格構造を有する化合物を泡立ち抑制量含有してなることを特徴とする潤滑油組成物。
【請求項2】
前記パーフルオロポリエーテルの骨格構造を有する化合物の泡立ち抑制量が、潤滑油組成物全重量基準で10ppm以上である請求項1に記載の潤滑油組成物。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑油組成物に関するものであり、さらに詳しくは、低温から高温にわたる広範囲の温度領域において優れた泡立ち抑制効果を得ることが可能な潤滑油組成物に関するものである。
また、本発明は、自動変速機油、無段変速機油、油圧油、ギヤ油、コンプレッサー油、タービン油、エンジン油、特に動力伝達油等として好適な潤滑油組成物を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保全対策の観点から環境対応型潤滑油への要望が高まる一方にあり、省燃費性を向上させるため、潤滑油は低粘度化されると共に品質改善のための各種添加剤が多種使用される状況となっている。一方、自動変速機および油圧装置は、高性能化・小型化の傾向にあり、さらにこれに加えて内燃機関の高出力化が自動変速機内の油温を上昇させる傾向にある。かかる傾向は、自動変速機油にとっては空気の存在下において高温下、高速回転による撹拌、高速飛散等により油中に空気を取り込み、低粘度化と相挨って、発泡の原因となっている。また、高速回転による発泡現象は、高速のディーゼルエンジン油、極圧剤を含有するタービン油、トルクコンバータ油、無灰分散剤を含有するエンジン油、油圧作動油等においても発生する状況にある。
【0003】
このようにして発生した泡が油中に安定して存在するときは、例えば、自動変速機ではブリーザからの油漏れを起こしやすくするという問題を生じさせ、また、油膜破断による摩耗、焼付きを発生させやすくするという懸念もある。さらに、油圧系では泡が発生すると圧縮性に異常が生じ誤操作を導くことになり、高速ギヤボックスではギヤの歯面損傷を起こす等の難点を包蔵している。
【0004】
かかる状況下において、従来から泡消し剤として、ジメチルポリシロキサン(シリコーン)系化合物および変性シリコーン等が提案されてきている。例えば、摩擦調整剤により生ずる消泡性の悪化を解消するために比較的高粘度のジメチルポリシロキサンを摩擦調整剤(リン酸エステル、カルボン酸、カルボン酸エステル、硫黄化合物等)と共に配合してなる自動変速機油組成物(特許文献1(特開平4−209697号公報)参照。)が提案され、また、溶解性の高い炭化水素系合成油基油に対しては、密度1.15g/cm3(15℃)以上のポリフルオロアルキルシロキサンを配合してなる自動変速機油(特許文献2(特開2000−87069号公報)参照。)も提案されている。さらには、ポリアクリレート系泡消し剤として重合フッ素化アクリレートモノマーを含有するアクリレートコポリマーを炭化水素油に配合した耐発泡性炭化水素油組成物(特許文献3(特開2001−520302号公報)参照。)等も挙げることができる。
【0005】
しかしながら、前記の如き先行技術は、いずれも先に述べたような小型化・高性能化した装置または高速条件下の装置に対して泡立ち抑制作用は未だ十分でなく、しかも泡立ち抑制効果を奏する温度範囲が狭く、特に自動車用変速機等における如き潤滑条件の変動に対して対応が困難であるという問題があった。
【0006】
かかる状況において、前記の如き難点を解消した泡立ち抑制効果の大きい潤滑油組成物の開発が切望されてきた。
【特許文献1】特開平4−209697号公報
【特許文献2】特開2000−87069号公報
【特許文献3】特表2001−520302号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の課題は、前記の如き技術開発状況に鑑み、低温から高温までの広範囲の温度領域において、良好な泡立ち抑制効果を奏する潤滑油組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明者は、前記課題を解決するため、鋭意検討を重ねたところ、特定の粘度のフッ素系ポリエーテル化合物、特にパーフルオロポリエーテルの骨格構造を有する化合物が各種基油に対し不溶または難溶であり、表面張力が低いこと等から泡消し剤の資質を有することに着目し、これを潤滑油に配合することにより、基油の種類に拘らず広範囲の温度範囲において高度の泡立ち抑制効果を奏する潤滑油組成物が得られることを見出し、これらの知見に基づいて、本発明の完成に到達した。
【0009】
かくして、本発明によれば、
基油と該基油に含有された添加剤とからなる潤滑油組成物であって、該添加剤が、25℃における動粘度が20mm2/s以上の少なくとも一種のパーフルオロポリエーテルの骨格構造を有する化合物(以下、本明細書において「パーフルオロポリエーテル化合物」という。)を泡立ち抑制量含有してなることを特徴とする潤滑油組成物
が提供される。
【0010】
本発明は、前記の如く、パーフルオロポリエーテル化合物を泡立ち抑制有効量含有する潤滑油組成物を提供するものであるが、さらに、次の1)〜8)に掲げる好ましい実施の態様を包含する。
1)前記基油が、フェノール、フルフラール等の芳香族抽出溶剤を用いることに
より得られる抽出残油からなる溶剤精製鉱油および/または水素化分解、水素化精製等の処理で得られる水素化処理油である前記潤滑油組成物。
2)前記パーフルオロポリエーテル化合物が、炭素数1〜3のパーフルオロアルキレン基を有し、ポリエーテル構造を主鎖とする骨格構造を含有する化合物である前記潤滑油組成物。
3)前記パーフルオロポリエーテル化合物が、次の式(1)〜(4)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物である前記潤滑油組成物。
【0011】
【化1】


【0012】
(式(1)において、m+nは8〜45であり、m/nは20〜100
である。)
【0013】
【化2】


(式(2)において、oは7〜60である。)
【0014】
【化3】


(式(3)において、p+qは40〜180であり、p/qは0.5〜
2である。)
【0015】
【化4】


(式(4)において、rは10〜50である。)
前記式(1)〜(4)の各式において、
XおよびX1は、それぞれ
(i) フッ素原子
または
(ii)次の(a)〜(g)からなる群より選択されるいずれかの置換基Y
(a)−CH2OH
(b)−CH2(OC2H4)tOH
(c)
【0016】
【化5】


(d)
【0017】
【化6】


【0018】
(e)−CH2COOH
(f)−CF2COOH
(g)−CF2COONH3−(CH2)5−CH3
などが挙げられる。
4)前記XおよびX1が、いずれもフッ素原子である潤滑油組成物。
5)前記パーフルオロポリエーテル化合物の25℃における動粘度が、20〜1,200
mm2/sである前記潤滑油組成物。
6)前記パーフルオロポリエーテル化合物の泡立ち抑制量が、潤滑油組成物全重量基準で20ppm以上である前記潤滑油組成物。
7)前記基油に対し、潤滑油組成物全量基準で、パーフルオロポリエーテル化合物を10ppm以上配合し、さらに、粘度指数向上剤、無灰分散剤、酸化防止剤、摩耗防止剤、摩擦調整剤、有機酸金属塩、金属不活性化剤および流動点降下剤からなる群より選択される少なくとも一種の添加剤を配合してなる前記潤滑油組成物。
8)前記基油に対し、潤滑油組成物全量基準で、パーフルオロポリエーテル化合物を10ppm 以上配合し、0.01重量%〜30重量%の粘度指数向上剤、0.05重量%〜8重量%の無灰分散剤、0.05重量%〜5重量%の金属系清浄剤、0.05重量%〜5重量%の摩擦調整剤、0.01重量%〜5重量%の摩耗防止剤、0.05重量%〜5重量%の酸化防止剤、0.01重量%〜3重量%の金属不活性化剤および0.01重量%〜5重量% の流動点降下剤からなる群より選択される少なくとも一種の添加剤を配合してなる前記潤滑油組成物。
【発明の効果】
【0019】
以上述べた如く、本発明によれば、低温から高温までの広範囲の温度領域において良好な泡立ち抑制効果を奏する潤滑油組成物を提供することができる。
また、基油の種類を問わず、かつ添加剤の種類にも拘らず十分な泡立ち抑制効果を得ることもできる。
本発明に係る潤滑油組成物は、かかる性能を有することから、自動変速機油、無段変速機油、油圧油、ギヤ油、タービン油、コンプレッサー油、エンジン油として好適であり、特に自動変速機油、油圧油として優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
本発明に係る潤滑油組成物は、基油と、該基油に含有されたパーフルオロポリエーテル化合物を構成成分として含有するものであり、潤滑油の用途に応じて他の添加剤がさらに配合されたものである。
【0021】
潤滑油組成物の構成成分の基油は、通常の潤滑油基油として用いられ、また使用が可能なものであれば、特に限定されるものではないが、本発明に係る潤滑油組成物において用いられるパーフルオロポリエーテル化合物を完全に溶解せず分散させるものが好適である。具体的には、鉱油系基油、GTL(Gas to liquid)系基油、合成油系基油またはこれらの混合油系基油等が用いられる。
【0022】
鉱油系基油としては、パラフィン系、中間基系またはナフテン系原油の常圧蒸留装置の残渣油の減圧蒸留による留出油として得られる潤滑油留分を溶剤精製、水素化分解、水素化処理、水素化精製、溶剤脱蝋、接触脱蝋、白土処理等の各種精製工程を任意に選択して用いることにより処理して得られる溶剤精製鉱油または水素化処理油等の鉱油、減圧蒸留残渣油の溶剤脱瀝処理により得られる脱瀝油を前記の精製工程により処理して得られる鉱油、またはワックス分の異性化により得られる鉱油等またはこれらの混合油を基油基材として用いることができる。前記の溶剤精製においては、フェノール、フルフラール、N−メチル−2−ピロリドン等の芳香族抽出溶剤が用いられ、また、溶剤脱蝋の溶剤としては、液化プロパン、MEK/トルエン等が用いられる。一方、接触脱蝋においては、例えば形状選択性ゼオライト等が脱蝋触媒として用いられる。
【0023】
前記の如くして得られる精製基油基材として粘度レベルの異なる軽質ニュートラル油、中質ニュートラル油、重質ニュートラル油、ブライトストック等を挙げることができ、これらの基材を潤滑油製品の各用途に応じて動粘度等の要求性状を満たすように適宜調合することにより鉱油系基油を製造することができる。
【0024】
また、GTL系基油としては、GTLプロセスにより天然ガス等を原料として得られる液体生成物から分離される潤滑油留分、または生成ワックスの水素化分解により得られる潤滑油留分等を挙げることができる。さらには、アスファルト等の重質残油成分を原料とするATL(Asphalt to Liquid)プロセスにより得られる液状生成油から分離される潤滑油留分等も用いることができる。
【0025】
一方、合成油系基油としては、ポリα−オレフィンオリゴマー(例えば、ポリ(1−ヘキセン)、ポリ(1−オクテン)、ポリ(1−デセン)等およびこれらの混合物。);ポリブテン;エチレン−アルキレンコポリマー;アルキルベンゼン(例えば、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジ(2−エチルヘキシル)ベンゼン、ジノニルベンゼン等。);ポリフェニル(例えば、ビフェニル、アルキル化ポリフェニル等。);アルキル化ジフェニルエーテルおよびアルキル化ジフェニルスルフィドおよびこれらの誘導体;二塩基酸(例えば、フタル酸、コハク酸、アルキルコハク酸、アルケニルコハク酸、マレイン酸、アゼライン酸、スペリン酸、セバチン酸、フマル酸、アジピン酸、リノール酸ダイマー等。)と各種アルコール(例えば、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、2ーエチルヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエーテル、プロピレングリコール等。)とのエステル;炭素数5〜18のモノカルボン酸とポリオール(例えば、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール等。)とのエステル;その他、ポリオキシアルキレングリコール、ポリオキシアルキレングリコールエステル、ポリオキシアルキレングリコールエーテル、リン酸エステル等を挙げることができる。
【0026】
基油は、前記の基油基材を各々単独でまたは二種以上を混合して所望の粘度その他の性状を有するように調合して製造することができる。例えば、各種の基油基材の調合により、本発明の潤滑油組成物としては、100℃における動粘度を2〜20mm2/s、好ましくは3〜15mm2/sの範囲に調整すればよい。基油の動粘度が高すぎると、攪拌抵抗が大きくなり、また流体潤滑域での摩擦係数が高くなり省燃費特性が悪化する。一方、粘度が低すぎると、摺動部分、例えば内燃機関の動弁系、ピストンリングや軸受等において摩耗が増加するという難点が生じる。
【0027】
次に、本発明に係る潤滑油組成物の泡消し剤として用いられるパーフルオロポリエーテル化合物について説明する。
【0028】
本発明に係る潤滑油組成物の構成成分として用いられるパーフルオロポリエーテル化合物は、25℃における動粘度が好ましくは20mm2/s以上のものである。さらに好ましくは20〜1,200mm2/sであり、特に100〜500mm2/sのものである。25℃動粘度が20mm2/sに満たないと十分な泡立ち抑制効果が得られず、一方、粘度を増加させても極度に支障となることはないが、高粘度化により、特に高温での泡立ち抑制効果が低下する傾向にある。
【0029】
かかるパーフルオロポリエーテル化合物の骨格構造の例としては、パーフルオロアルキレン基を末端に有し、繰り返し単位のポリエーテル構造を主鎖として含有する化合物であり、次の式(1)〜(4)で表されるものが挙げられる。
【0030】
【化7】


(式(1)において、m+nは8〜45であり、m/nは20〜100
である。)
【0031】
【化8】


(式(2)において、oは7〜60である。)
【0032】
【化9】


(式(3)において、p+qは40〜180であり、p/qは0.5〜
2である。)
【0033】
【化10】


(式(4)において、rは10〜50である。)

前記の式(1)〜(4)の各式においては、骨格構造に特徴があり、
XおよびX1は、特に制限されるものではないが、
(i)フッ素原子
または
(ii)下記の架橋基Wおよび官能基Zの各群からそれぞれ選択され構成されて
なる置換基Y
(ここで、Y=WS−Z(sは0または1)
が好ましい。
【0034】
前記架橋基Wとしては
(1)−O−
(2)−CH2−
(3)−CH2CH2O−
(4)−CH2CH(CH3)O−
(5)−COO−
(6)−COS−
(7)−CO−
(8)−(O−CH2CH2)t− (t=0〜3)
等を挙げることができる。
【0035】
また、官能基Zとしては
(1)−OH
(2)−COOH
(3)−SH
(4)−NH2
(5)−CH=CH2
(6)−CN
(7)−NCO
(8)
【0036】
【化11】


(該シリル基は、R1、R2およびR3が、次の(A)〜(D)に示す側鎖
である3種のタイプのものである。
【0037】
(A) R1、R2、R3がいずれもベンジル基またはいずれも
フェニル基。
(B)-(1) R1がアクリル基、R2、R3がいずれもメチル基。
(B)-(2) R1がビニル基、R2、R3がそれぞれメチル基。
(B)-(3) R1、R2、R3がいずれもビニル基。
(C) R1がビニル基、R2、R3がいずれもフェニル基。
(D) R1、R2、R3がいずれもエチル基。
(9)
【0038】
【化12】


【0039】
(10)−CH(OH)CH2OH
等を挙げることができるが、潤滑油用泡消し剤の成分として、好ましい官能基Zは、−OH、−COOH、
【0040】
【化13】


【0041】
【化14】


等であり、架橋基Wとしては-CH2-、-CH2O-、-CH2- (O-CH2CH2)t-等が好ましい。架橋基Wと官能基Zとからなる特に好ましい置換基Yとしては、
(a)−CH2OH
(b)−CH2(OCH2CH2) t−OH
(c)
【0042】
【化15】


(d)
【0043】
【化16】


(e)−CH2COOH
(f)−CF2COOH
(g)−CF2COONH3−(CH2)5−CH3
等を挙げることができる。なお、置換基Yとしては架橋基Wを有しないものであってもよい。
【0044】
本発明に係る潤滑油組成物の構成成分として特に好ましい具体例は、前記XおよびX1がそれぞれフッ素原子であり、骨格構造の両末端がフッ素原子で封鎖されたものであって、下記の式I〜IVで表される化合物を挙げることができる。
【0045】
第一の化合物は、次の式;
【0046】
【化17】


で示されるようにポリエーテル構造が分岐構造のものであり、
【0047】
【化18】



【0048】
【化19】


とのランダム重合により得られるものである。式Iにおいて、m+nは8〜45であり、m/nは20〜100であるものが泡消し剤として好適である。
【0049】
第二の化合物は、次式で示すように、分子中、分岐鎖を有するポリエーテル構造のホモポリマーである。式IIにおいて、oが7〜60である。
【0050】
【化20】


【0051】
第三の化合物は、次の式IIIで示すように、ポリエーテル構造が直鎖状であり、低粘度のものである。
【0052】
【化21】


【0053】
式III において、p+qは40〜180に、また、p/qは0.5〜2に制御されたものである。
【0054】
第四の化合物は、式IVにより示されるようにヘキサフルオロプロピレンオキシドのホモポリマーであり、rは10〜50である。
【0055】
【化22】


【0056】
前記式I〜IVの化合物は、各式におけるm、n、o、p、qおよびrを、パーフルオロポリエーテル化合物の前記25℃動粘度が20mm2/s以上になるようにそれぞれ前記の範囲に制御したものである。
また、本発明に係る潤滑油組成物に用いられるパーフルオロポリエーテル化合物としては、その片末端または両末端に前記置換基Yが導入されたものも好ましく、前記式(1)〜(4)で表される各パーフルオロポリエーテル化合物のXおよびX1が、それぞれ前記(a)〜(g)から選択された置換基である。特に、XおよびX1が各化合物においてそれぞれ同一の置換基であることが好ましい。
【0057】
これらのなかから具体例を挙げると、前記式(3)のパーフルオロポリエーテル化合物について
(1)X=X1=−CH2OHの場合
【0058】
【化23】


が提供される。
【0059】
また、
(2)X=X1=−CH2 (−O−CH2−CH2−)t−OHの場合;
【0060】
【化24】


(3)
【0061】
【化25】


の場合
【0062】
【化26】


(4)
【0063】
【化27】


の場合
【0064】
【化28】


(5)X=X1=−CH2COOHの場合
【0065】
【化29】


の各化合物
が提供される。
【0066】
なお、他の式(1)、(2)および(4)で表されるパーフルオロポリエーテル化合物についても式(3)の化合物と同様にXおよびX1が前記の置換基から選択されたものと同一のものを得ることができる。
【0067】
また、パーフルオロポリエーテル化合物の添加量は、潤滑油組成物の全重量を基準として10ppm(0.001重量%)以上、好ましくは20ppm(0.002重量%)以上である。添加量が10ppmに達しないと泡立ち抑制効果が十分得られないおそれが生ずるので、油種等の相違に応じて泡立ち抑制に有効量を選択して用いればよい。
【0068】
前記式Iおよび式IIで示されるパーフルオロポリエーテルを含有する添加剤は、市販品としては、例えば、ソルベイソレクシス社製の商品名FOMBLIN Y タイプおよびデュポン社製KRYTOX GLP タイプをそれぞれ入手することができる。ソルベイソレクシス社製の商品名 FOMBLIN Y タイプは、
−(−CF(CF3)CF2O−)−と−(CF2O−)−のランダム重合体で主鎖の繰り返し単位が分岐構造を有するものである。一方、KRYTOXタイプはヘキサフルオロイソプロピレンのホモポリマーを含有する化合物である。また、式IIIおよびIVで示されるパーフルオロポリエーテルを含有する添加剤は、市販品としては、例えば、ソルベイソレクシス社製の商品名FOMBLIN Zタイプおよびダイキン工業(株)製の商品名デムナム(Demnum)タイプをそれぞれ入手することができる。FOMBLIN Zタイプは、−(−CF2−CF2−CF2O−)−と−(CF2O−)−の重合体で直鎖構造を有するもので、低粘度のものである。デムナムタイプは、へキサフルオロプロピレンオキシドのホモポリマーである。また、パーフルオロポリエーテル両末端に極性基を有するパーフルオロポリエーテル化合物(極性基として水酸基を導入)としてソルベイソレクシス社製の商品名FOMBLIN Z-DOLおよび同社製商品名FOMBLIN AM2001(極性基としてピペロニル基を導入)等を入手することができる。
【0069】
さらに、本発明の潤滑油組成物の成分としてパーフルオロポリエーテル化合物は、前記に掲げたものを一種または二種以上を選択して用いることができる。また、ポリフルオロアルキルシロキサン、ポリジメチルシロキサン等の従来から用いられている消泡剤と共存しても本発明に係るパーフルオロポリエーテル化合物の作用効果を低減させることがなければ十分使用することができる。
【0070】
本発明に係る潤滑油組成物を調製するには、パーフルオロポリエーテル化合物の分散方法として(1)少量の基油または組成物と混合し、ホモジナイザーでプレ分散したものをマスタバッチの形態で用いる方法、または(2)撹拌中の組成物にパーフルオロポリエーテル化合物または該化合物のプレ分散したものを高圧噴霧などにより微粒化した状態で混合する方法を採用することができる。
【0071】
本発明に係る潤滑油組成物は、自動変速機油、無段変速機油、油圧油、ギヤ油、タービン油、コンプレッサー油およびエンジン油等として好適なものであり、用途に応じてそれぞれ要求される性能を満たすために各種添加剤、例えば、粘度指数向上剤、無灰分散剤、有機酸金属塩(金属系清浄剤)、摩擦調整剤、摩耗防止剤、酸化防止剤、極圧剤、金属不活性化剤、流動点降下剤、防錆剤、着色剤などを適宜添加することができる。
【0072】
粘度指数向上剤としては、一般に非分散型ポリメタアクリレート、分散型ポリメタアクリレート、非分散型オレフィンコポリマー(ポリイソブチレン、エチレン−プロピレン共重合体)、分散型オレフィンコポリマー、ポリアルキルスチレン、スチレン−ブタジエン水添共重合体、スチレン−無水マレイン酸エステル共重合体、星状イソプレン等が挙げられる。非分散型オレフィンコポリマーとは、分子中に酸素または窒素を含有せずに分散性能を有しているものである。ポリイソブチレンやエチレン−プロピレン共重合体の分子量としては、重量平均分子量で10万以上(GPC分析においてポリスチレン換算量)のものが好ましい。これらは単独だけでなく複数のものを併用してもよい。通常0.01重量%〜30重量%の割合で使用される。
【0073】
無灰分散剤としては、コハク酸イミド、コハク酸アミド、ベンジルアミン、コハク酸エステル、コハク酸エステル−アミド等を含有する添加剤およびそれらのホウ素含有物等が挙げられるが、コハク酸イミド系およびホウ素含有コハク酸イミド系が好ましく用いられる。コハク酸イミド系およびホウ素含有コハク酸イミド系の配合量は、0.05重量%〜8重量%である。
【0074】
金属系清浄剤としては、例えば、カルシウム、マグネシウム、バリウム等のスルホネート、フェネート、サリシレート、カルボキシレートから選択される化合物を含むものが挙げられ、過塩基性塩、塩基性塩、中性塩等の塩基価の異なるものを任意に選択して用いることができる。これらの配合量は、金属元素量として、通常0.05重量%〜5重量%の範囲で使用することが好ましい。
【0075】
摩擦調整剤としては、例えば、有機モリブデン系化合物、脂肪酸、高級アルコール、脂肪酸エステル、油脂類、アミン、ポリアミド、硫化エステル、リン酸エステル、酸性リン酸エステル、亜リン酸エステル、リン酸エステルアミン塩等が挙げられる。これらは、通常0.05重量%〜5重量%の割合で使用される。
【0076】
摩耗防止剤としては、一般にジチオリン酸亜鉛、ジチオリン酸金属塩(Pb,Sb,Moなど)、ジチオカルバミン酸金属塩(Zn、Pb、Sb、Moなど)、ナフテン酸金属塩(Pbなど)、脂肪酸金属塩(Pbなど)、ホウ素化合物、リン酸エステル、亜リン酸エステル、リン酸エステルアミン塩等が挙げられ、通常0.1重量%〜5重量%の割合で使用される。
【0077】
酸化防止剤としては、一般にアルキル化ジフェニルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、アルキル化フェニル−α−ナフチルアミン等のアミン系酸化防止剤、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、イソオクチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のフェノール系酸化防止剤、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネイト等の硫黄系酸化防止剤、ホスファイト等のリン系酸化防止剤、モリブデン系酸化防止剤、さらにジチオリン酸亜鉛等が挙げられ、特に、アミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤およびこれらの組合せが好ましく用いられる。これらは、通常0.05重量%〜5重量%の割合で使用される。
【0078】
極圧剤としては、一般に無灰系サルファイド化合物、硫化油脂、リン酸エステル、亜リン酸エステル、リン酸エステルアミン塩等が挙げられ、これらは、通常0.05重量%〜3重量%の割合で使用される。
【0079】
金属不活性化剤としては、ベンゾトリアゾール、トリアゾール誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体等が挙げられ、これらは、通常0.01重量%〜3重量%の割合で使用される。
【0080】
流動点降下剤としては、一般にエチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化パラフィンとナフタレンとの縮合物、塩素化パラフィンとフェノールとの縮合物、ポリメタクリレート、ポリアルキルスチレン等が挙げられ、特に、ポリメタアクリレートが好ましく用いられる。これらは、通常0.01重量%〜5重量%の割合で使用される。
【0081】
防錆剤としては、例えば、脂肪酸、アルケニルコハク酸ハーフエステル、脂肪酸セッケン、アルキルスルホン酸塩、多価アルコール脂肪酸エステル、脂肪酸アミン、酸化パラフィン、アルキルポリオキシエチレンエーテル等が挙げられ、これらは、通常0.01重量%〜3重量%の割合で使用される。
また、特に、自動変速機油としては、各種添加剤の好ましい含有量は、次の通りであり、本発明に係るパーフルオロポリエーテル系泡消し剤10ppm以上の配合により、発泡を抑制することができ、如何なる添加剤フォーミュレーションによっても泡立ち抑制上での問題は生じない。
【0082】
好ましい含有量(重量)
泡消し剤 10ppm以上
有機酸金属塩 0.05〜 5.0
粘度指数向上剤 4.0 〜 30.0
無灰分散剤 0.1 〜 5.0
酸化防止剤 0.1 〜 3.0
極圧剤 0.1 〜 2.0
金属不活性化剤 0.01〜 2.0
摩耗防止剤 0.1 〜 3.0
摩擦調整剤 0.1 〜 5.0
流動点降下剤 0.01 〜 8.0
腐食防止剤 0.01 〜 5.0

【実施例】
【0083】
以下、本発明について、実施例および比較例によりさらに具体的に説明する。もっとも本発明は、実施例等により限定されるものではない。
【0084】
なお、実施例等により得られた潤滑油組成物の泡立ち抑制効果は、次の泡立ち性試験により評価した。
【0085】
また、実施例等における、「%」は、ことわりのない限り「重量%」を示す。
(1)泡立ち性試験
泡立ち抑制性は、ASTM D892(Seq. I, II, III)およびASTM D6082(Seq. IV)の方法により評価した。なお、Seq. IVは高温における泡立ち性を評価することを目的として設定された試験法である。
【0086】
Seq. I〜IVの基本操作および主要な試験条件は次の通りであるが、詳細はASTM D892およびD6082に規定するところによる。
Seq.I;(ASTM D892) 1,000mlのメスシリンダに試料油190ml採り、
24℃に保ち、ディフューザーピストン付き空気導入管を差し
込み、94ml/分の乾燥空気を5分間吹き込み発生した泡の量を
泡立ち度とする。さらに10分間放置後の泡の量を泡安定度と
する。
Seq.II;(ASTM D892)新たに試料油を採取し、試料油温度を93.5℃
とすること以外はSeq.Iと同一の試験を行い、泡立ち度およ
び泡安定度を測定する。
Seq.III;(ASTM D892) Seq. II試験後の試料油を、そのまま24℃に
温度を下げてSeq. Iと同一の泡立ち試験を行い、泡立ち度お
よび泡安定度を測定する。
Seq.IV; (ASTM D6082) 試料油温度を150℃、乾燥空気量を200ml/分
に設定したこと以外Seq.Iと同一の試験を行い、泡立ち度お
よび泡安定度を測定する。
実施例1
パラフィン系精製鉱油(100℃における動粘度;4mm2/s)にパーフルオロポリエーテル(25℃における動粘度;182 mm2/s(ソルベイソレクシス社製 FOMBLIN Y25)を0.004%(40ppm)配合し、さらに、その他の添加剤として粘度指数向上剤(ポリメタクリレート 5%)、無灰清浄分散剤(コハク剤イミド 4%)、有機酸金属塩(カルシウムスルホネート 0.1%)、摩擦調整剤(オレイン酸アミド 0.3%、酸性リン酸エステル 0.3%)、酸化防止剤(アルキル化ジフェニルアミン 0.3%、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール 0.3%)および金属不活性剤(ベンゾトリアゾール 0.05%)を配合し、表1に示す潤滑油組成物を調製した。泡立ち抑制能を前記泡立ち性試験法で測定した泡立ち量により評価した。評価結果(泡立ち性試験結果)を表1に示す。ここで得られた潤滑油組成物は、Seq. I〜IVの各目標値のすべてに合格し、泡立ち抑制能について低温から高温にわたり顕著な効果を得た。
実施例2
25℃ 動粘度 182 mm2/sのパーフルオロポリエーテルの代わりに25℃動粘度 29 mm2/s のパーフルオロポリエーテル(ソルベイソレクシス社製 FOMBLIN Y04)を0.004%(40ppm)用いたこと以外すべて実施例1の潤滑油組成物の組成と同一の組成の表1に示す潤滑油組成物を得た。前記泡立ち性試験により、泡立ち抑制能を評価したところ、Seq.IIの泡立ち量が若干増加したが、目標値を十分満足し、全体として実施例1の潤滑油組成物の評価結果とほとんど遜色はみられなかった。
実施例3
25℃動粘度182mm2/sのパーフルオロポリエーテルの代わりに133mm2/sのパーフルオロポリエーテル(デュポン社製 KRYTOX GPL104)を0.004%(40ppm)用いたこと以外すべて実施例1の潤滑油組成物の組成と同一の組成の表1に示す潤滑油組成物を得た。前記泡立ち性試験に供したところ、実施例1の潤滑油組成物と同等の泡立ち抑制能の評価結果を得た。
実施例4
25℃動粘度182 mm2/sのパーフルオロポリエーテルの代わりに25℃動粘度1,060 mm2/s のパーフルオロポリエーテル(ソルベイソレクシス社製 FOMBLIN YPL1500)を用いたこと以外すべて実施例1の潤滑油組成物の組成と同一の組成の表1に示す潤滑油組成物を得た。前記泡立ち性試験に供したところ、実施例1の潤滑油組成物と同等の泡立ち抑制能の評価結果を得た。
比較例1
パラフィン系精製鉱油(100℃動粘度;4mm2/s)に実施例1で使用した「その他の添加剤」と同一組成の添加剤混合物を10.35%配合し、泡消し剤を配合していない潤滑油組成物を調製し、前記泡立ち性試験により泡立ち抑制能を評価した。表2に示すように、泡立ち抑制能は、低いものであり、特に低温において不良であった。
比較例2
25℃動粘度182mm2/sのパーフルオロポリエーテルの代わりに25℃動粘度2mm2/sのパーフルオロポリエーテル(ソルベイソレクシス社製 GALDEN)を0.004%(40ppm)を用いたこと以外すべて実施例1の潤滑油組成物の組成と同一の組成の表2に示す潤滑油組成物を調製した。この結果から、パーフルオロポリエーテルの粘度が低すぎるとSeq. I とSeq. IIIの泡立ち量の増加で示すように低温での泡立ち抑制効果が低下することが示された。
比較例3
25℃動粘度182 mm2/sのパーフルオロポリエーテルの代わりに25℃動粘度12,500 mm2/sのポリジメチルシロキサン(信越シリコーン社製 KF96H)を用いて潤滑油組成物を調製したこと以外すべて実施例1の潤滑油組成物の組成と同一組成の潤滑油組成物を調製した。前記泡立ち性試験の結果、表2に示すように高温での泡立ち量が多く、シリコーン系消泡剤は、実施例の各パーフルオロポリエーテルに比較して特に高温での泡立ち抑制効果が劣ることが判明した。
比較例4
25℃動粘度182mm2/sのパーフルオロポリエーテルの代わりに「分子量50,000のパーフルオロオクチルエチルアクリレート」/「ステアリルアクリレート」=10:90の共重合体をポリマー有効濃度で0.004%を用いたこと以外は実施例1の潤滑油組成物の組成と同一の組成の潤滑油組成物を調製した。評価結果を表2に示す。
【0087】
【表1】


【0088】
【表2】


【出願人】 【識別番号】000108317
【氏名又は名称】東燃ゼネラル石油株式会社
【出願日】 平成20年7月4日(2008.7.4)
【代理人】 【識別番号】100087918
【弁理士】
【氏名又は名称】久保田 耕平


【公開番号】 特開2008−266656(P2008−266656A)
【公開日】 平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願番号】 特願2008−176271(P2008−176271)