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【発明の名称】 熱伝導性シリコーングリース組成物及びそれを用いた半導体装置
【発明者】 【氏名】星野 千里

【要約】 【課題】液ダレを抑制するとともに作業性に優れ、良好な熱伝導性を発揮する熱伝導性シリコーングリース組成物及びそれを用いた半導体装置を提供する。

【解決手段】熱伝導性シリコーングリース組成物は、(A)23℃における粘度が0.05〜10Pa・sであり、ケイ素原子に結合する有機基がすべてメチル基からなるジメチルポリシロキサン:100重量部、及び(B)熱伝導性充填剤:500〜2000重量部を含有し、23℃における粘度が400Pa・s以下、熱伝導率が2.0W/(m・K)以上である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)23℃における粘度が0.05〜10Pa・sであり、下記式:
【化1】


(R1は同一もしくは相異なる、メチル基、フェニル基及びビニル基から選ばれる基、pは正数、qは0以上の数、かつ、0.90≦p/(p+q)≦1を満足する数である。)で表されるポリオルガノシロキサン 100重量部、
及び
(B)熱伝導性充填剤 500〜2000重量部
を含有し、23℃における粘度が400Pa・s以下、熱伝導率が2.0W/(m・K)以上であることを特徴とする熱伝導性シリコーングリース組成物。
【請求項2】
前記(A)成分が、下記式:
【化2】


(式中、rは、50≦r≦1000を満足する数である。)で表されるポリオルガノシロキサンであることを特徴とする請求項1に記載の熱伝導性シリコーングリース組成物。
【請求項3】
前記(B)成分の平均粒径が、100μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の熱伝導性シリコーングリース組成物。
【請求項4】
前記(B)成分が、金属酸化物粉末及び/または金属粉末であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の熱伝導性シリコーングリース組成物。
【請求項5】
前記(B)成分が、酸化アルミニウム、酸化亜鉛及びアルミニウムから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の熱伝導性シリコーングリース組成物。
【請求項6】
発熱性電子部品と放熱体とを有し、前記発熱性電子部品と前記放熱体との間に請求項1乃至5のいずれか1項に記載の熱伝導性シリコーングリース組成物を介在させてなることを特徴とする半導体装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、液ダレを抑制するとともに作業性に優れ、良好な熱伝導性を発揮する熱伝導性シリコーングリース組成物及びそれを発熱性電子部品と放熱体との間に介在させてなる半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から電子部品の多くには、使用時の温度上昇による損傷や性能低下等を防止するために、ヒートシンク等の放熱体が広く用いられており、電子部品から発生する熱を放熱体に効率よく伝導させるため、一般に電子部品と放熱体との間には熱伝導性材料が使用される。
【0003】
熱伝導性材料としては、放熱シートや放熱グリースが知られている。一般に、放熱グリースはその性状が液体に近く、放熱シートと比べて、発熱性電子部品や放熱体表面の凹凸に影響されることなく両者に密着して界面熱抵抗を小さくすることができる。このような放熱グリースとしては、シリコーンオイルをベースとして、アルミニウム粉末などの熱伝導性充填剤を配合したシリコーングリース組成物が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
しかし、従来のシリコーングリース組成物は、熱伝導性充填剤を高充填すると熱伝導性能が改善されることが知られているが、製造過程において作業性の低下を招く傾向にあり、その配合量の上限は制限されていた。このため、近年の電子部品の高集積化、高速化にともなう発熱量のさらなる増大により、従来のシリコーングリース組成物では十分な熱伝導性効果を得られない。
【0005】
また、発熱性電子部品のON/OFFによる加熱/冷却サイクルにより、液ダレが発生して電子部品が汚染されやすい。この汚染によって、電子部品の本来の性能が発揮されない、あるいは作動し難い傾向があった。シリコーングリース組成物を高粘度にすれば、液ダレの低減を図ることができるが、作業性が悪化しやすい。
【特許文献1】特開2000−063873号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、液ダレを抑制するとともに作業性に優れ、良好な熱伝導性を発揮する熱伝導性シリコーングリース組成物及びそれを用いた半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、ベースオイルとして特定の置換基を有する液状シリコーンを配合して、組成物の粘度と熱伝導率を所定の範囲にすることによって、電子部品の冷熱サイクルによる液ダレを抑制し、作業性及び熱伝導性に優れた熱伝導性シリコーングリース組成物が得られることを見出し、本発明をなすに至った。
【0008】
すなわち、本発明の熱伝導性シリコーングリース組成物は、
(A)23℃における粘度が0.05〜10Pa・sであり、下記式:
【化3】


(R1は同一もしくは相異なる、メチル基、フェニル基及びビニル基から選ばれる基、pは正数、qは0以上の数、かつ、0.90≦p/(p+q)≦1を満足する数である。)で表されるポリオルガノシロキサン 100重量部、
及び
(B)熱伝導性充填剤 500〜2000重量部
を含有し、23℃における粘度が400Pa・s以下、熱伝導率が2.0W/(m・K)以上であることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の半導体装置は、発熱性電子部品と放熱体とを有し、前記発熱性電子部品と前記放熱体との間に上記熱伝導性シリコーングリース組成物を介在させてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
上記構成により、液ダレを抑制するとともに作業性に優れ、良好な熱伝導性を発揮する熱伝導性シリコーングリース組成物及びそれを用いた半導体装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の熱伝導性シリコーングリース組成物について説明する。
【0012】
[(A)成分]
(A)成分のオイル状のポリオルガノシロキサンは、電子部品の冷熱サイクルによる液ダレを抑制し、良好な作業性と熱伝導性を組成物に与える、本発明の特徴を付与する成分である。
【0013】
(A)成分は、下記式で表される。
【化4】


【0014】
式中、R1は、メチル基、フェニル基及びビニル基から選ばれる基であり、互いに同一でも異なっていてもよい。なかでも、液ダレを抑制し低粘度で作業性に優れた組成物を与える点から、すべてのR1がメチル基であることが好ましい。
【0015】
pは正数、qは0以上の数、かつ、0.90≦p/(p+q)≦1、好ましくは0.95≦p/(p+q)≦1を満足する数である。p+qは、限定されるものではないが、好ましくは50〜1000である。なお、p,qは、(A)成分の一般式での組成、数値を示しているにすぎず、分子レベルを制限するものではない。
【0016】
(A)成分の粘度は、23℃において0.05〜10Pa・s、好ましくは0.1〜5Pa・sである。粘度が0.05Pa・s未満であると、得られる組成物の安定性が悪化してオイル分離が起こり易くなる。一方、10Pa・sを越えると、組成物の流動性が乏しくなる。(A)成分は、1種単独または2種以上を組み合わせてもよい。
【0017】
(A)成分としては、例えばジメチルポリシロキサン、ジメチル−ジフェニルシロキサンコポリマー、ジメチル‐メチルフェニルシロキサンコポリマーなどが挙げられ、好ましくは、下記式で表されるような、分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサンである。
【化5】


【0018】
rは、50≦r≦1000、好ましくは100≦r≦800を満足する数である。
【0019】
[(B)成分]
(B)成分としては、熱伝導率が良好なものであればよく、例えば酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム等の金属酸化物粉末、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等の金属窒化物粉末、アルミニウム、銅、銀、ニッケル、鉄、ステンレス等の金属粉末が挙げられ、なかでも金属酸化物粉末、金属粉末が好ましく、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、アルミニウムがより好ましい。(B)成分は、1種単独または2種以上を混合して用いてもよい。
【0020】
(B)成分の平均粒径は、100μm以下、好ましくは0.1〜80μmである。平均粒径が100μmを超えると、得られる組成物の安定性が悪化し、オイル分離等が起こり易くなる。平均粒径は、例えばレーザー光回折法で求めることができる。(B)成分の形状は、球状、不定形状のいずれでもよい。
【0021】
(B)成分は、そのまま用いてもよいが、樹脂成分との濡れ性を向上させる点から、1種または2種以上の周知の表面処理剤(ウエッター)でその表面を予め疎水化処理したものを用いてもよい。あるいはこのような表面処理剤を別途組成物中に配合してもよい。
【0022】
(B)成分の配合量は、(A)成分100重量部に対して500〜2000重量部、好ましくは800〜1500重量部である。配合量が500重量部未満であると、所望の熱伝導率が得られにくい。一方、2000重量部を越えると、作業性の低下を招く。
【0023】
[その他任意成分]
上述した(A)成分と(B)成分を基本成分とし、これらに必要に応じてその他任意成分として表面処理剤(ウエッター)、耐熱性向上剤、着色剤、接着性付与材、組成物の粘度や作業性を良好にする上で希釈剤(例えば、付加反応に寄与しないポリオルガノシロキサン)などを本発明の目的を損なわない範囲で添加してもよい。
【0024】
ウエッター成分は、(B)成分の粉末表面を処理することにより、前記粉末とベースオイルである(A)成分との濡れ性を向上させるものである。
【0025】
ウエッター成分としては、一般式:
Si(OR4−(b+c)
で表されるアルコキシシランを用いることが好ましい。
【0026】
式中のRは、炭素原子数6〜15のアルキル基であり、例えばヘキシル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基等が挙げられる。また、Rは炭素原子数1〜8の飽和又は不飽和の一価炭化水素基であり、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基、オクチル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロヘキシル基、ビニル基、アリル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、2−フェニルエチル基、2−メチル−2−フェニルエチル基等のアラルキル基、3,3,3−トリフロロプロピル基、2−(パーフロロブチル)エチル基、2−(パーフロロオクチル)エチル基、p−クロロフェニル基等のハロゲン化炭化水素基などが挙げられ、好ましくはメチル基、エチル基である。Rはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などの炭素原子数1〜6の1種もしくは2種以上のアルキル基であり、好ましくはメチル基、エチル基である。bは1〜3の整数であり、好ましくは1である。cは0〜2の整数、b+cは1〜3の整数である。
【0027】
ウエッター成分の配合量は、(B)成分と(A)成分との濡れ性を向上させる上で、(A)成分100重量部に対して0.01〜10重量部である。
【0028】
本発明の熱伝導性シリコーングリース組成物の製造方法としては、上述した(A)〜(B)成分及びその他任意成分を周知の混練機で、常温、または必要に応じて加熱(例えば50〜150℃)しながら混練する方法が挙げられる。混練機としては、必要に応じて加熱手段や冷却手段を備えた周知の装置を使用でき、例えばプラネタリーミキサー、3本ロール、ニーダー、品川ミキサー、トリミックス、ツインミックス等が挙げられ、単独またはこれらを組み合わせて使用することができる。
【0029】
熱伝導性シリコーングリース組成物の23℃における粘度(JIS K 6249)は、400Pa・s以下、好ましくは100〜350Pa・sである。粘度が400Pa・sを超えると、作業性が悪化しやすく、シリンジやディスペンサ等を用いて電子部品に塗布する場合に、吐出し難くなり所望の厚さになりにくい。
【0030】
熱伝導性シリコーングリース組成物は、23℃における熱伝導率が2.0W/(m・K)以上である。熱伝導率が2.0W/(m・K)未満であると、熱伝導性能が不十分になる場合があり、用途が限定され易くなる。
【0031】
よって、本発明の熱伝導性シリコーングリース組成物は、電子部品のON/OFFによる冷熱サイクルでの液ダレを抑制するとともに、低粘度で作業性に優れ、良好な熱伝導性を発揮するため、発熱性電子部品と放熱体との間に介在される熱伝導性材料として好適である。
【0032】
次に、本発明の半導体装置について図面を参照して説明する。図1は、本発明に係る半導体装置の一例を示す断面図である。
【0033】
半導体装置1は、配線基板2に実装されたCPU3等の発熱性電子部品とヒートシンク4等の放熱体との間に、上述した熱伝導性シリコーングリース組成物5を介在させてなる。このような半導体装置1は、配線基板2に実装されたCPU3に、例えばシリンジで熱伝導性シリコーングリース組成物5を塗布した後、ヒートシンク4と配線基板2とをクランプ6等で押圧することによって得られる。
【0034】
熱伝導性シリコーングリース組成物5の厚さは、5〜300μmであることが好ましい。厚さが5μmより薄いと、押圧の僅かなずれによりCPU3とヒートシンク4との間に隙間が生じる恐れがある。一方、300μmより厚いと、熱抵抗が大きくなり、放熱効果が悪化し易い。
【実施例】
【0035】
本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。実施例及び比較例中、平均粒径はレーザー光回折法により測定した値である。実施例及び比較例で得られた熱伝導性シリコーングリース組成物は、以下のようにして評価し、結果を表1に示した。表1に示した特性は、23℃において測定した値である。
【0036】
[垂れ性試験]
銅板とガラス板で熱伝導性シリコーングリース組成物を挟み込み、冷熱サイクル試験(1サイクル:0℃×15分+120℃×15分)を300サイクル行い、液ダレを目視で観察した。
【0037】
[粘度]
JIS K 6249に準拠して、23℃で測定した。
【0038】
[熱伝導率]
熱伝導率計(京都電子工業社製、QTM−500)を用いて測定した。
【0039】
[実施例1]
(A−1)23℃における粘度が0.5Pa・sであり、下記式:
【化6】


で表されるジメチルポリシロキサン100重量部、(B−1)平均粒径10μmのアルミナ1120重量部、(B−2)平均粒径0.5μmのアルミナ280重量部をプラネタリーミキサー(ダルトン社製)にて室温(23℃)で60分間混練し、120℃で減圧混練を120分間行った後、室温になるまで冷却減圧混練を30分間続けて、希釈剤として23℃における粘度が0.1Pa・sであり、両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたポリジメチルシロキサン40重量部を上記プラネタリーミキサーに加え常温で30分間混練して、熱伝導性シリコーングリース組成物を得た。
この組成物の特性を測定し、結果を表1に示した。
【0040】
[実施例2]
(A−1)ジメチルポリシロキサン100重量部、(B−3)平均粒径10μmのアルミニウム300重量部、(B−4)平均粒径0.3μmの酸化亜鉛300重量部をプラネタリーミキサー(ダルトン社製)にて室温(23℃)で60分間混練し、120℃で減圧混練を120分間行った後、室温になるまで冷却減圧混練を30分間行い、熱伝導性シリコーングリース組成物を得た。
この組成物の特性を測定し、結果を表1に示した。
【0041】
[比較例1]
(A−2)23℃における粘度が0.6Pa・sであり、下記式:
【化7】


で表されるメチルデシルポリシロキサン100重量部、(B−1)平均粒径10μmのアルミナ800重量部、(B−2)平均粒径0.5μmのアルミナ200重量部をプラネタリーミキサー(ダルトン社製)にて室温(23℃)で60分間混練し、120℃にて減圧混練を120分間行った後、室温になるまで冷却減圧混練を30分間行い、熱伝導性シリコーングリース組成物を得た。
この組成物の特性を測定し、結果を表1に示した。
【0042】
[比較例2]
(A−2)メチルデシルポリシロキサン100重量部、(B−3)平均粒径10μmのアルミニウム480重量部、(B−4)平均粒径0.3μmの酸化亜鉛480重量部をプラネタリーミキサー(ダルトン社製)にて室温(23℃)で60分間混練し、120℃で減圧混練を120分間行った後、室温になるまで冷却減圧混練を30分間行い、熱伝導性シリコーングリース組成物を得た。
この組成物の特性を測定し、結果を表1に示した。
【表1】


【0043】
表1から明らかなように、ベースオイルの(A)成分として、ケイ素原子に結合する有機基が全てメチル基からなるジメチルポリシロキサンを配合した各実施例は、冷熱サイクルによる液ダレを抑制できる。さらに、熱伝導率が2.0W/(m・K)以上であるため優れた熱伝導性を発揮でき、23℃における粘度が400Pa・s以下であるため電子部品に塗布する場合には、良好な作業性を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の半導体装置の一例を示す断面図。
【符号の説明】
【0045】
1…半導体装置、2…配線基板、3…CPU、4…ヒートシンク、5…熱伝導性シリコーングリース組成物、6…クランプ。
【出願人】 【識別番号】000221111
【氏名又は名称】モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社
【出願日】 平成19年4月6日(2007.4.6)
【代理人】 【識別番号】100077849
【弁理士】
【氏名又は名称】須山 佐一


【公開番号】 特開2008−255275(P2008−255275A)
【公開日】 平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願番号】 特願2007−100696(P2007−100696)