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【発明の名称】 油類用添加剤およびこれを含有する潤滑油
【発明者】 【氏名】日吉 聡

【氏名】中山 真吾

【氏名】雨宮 信仁

【氏名】加藤 繁明

【氏名】稲山 俊宏

【氏名】磯貝 幸宏

【氏名】南 一郎

【氏名】森 誠之

【要約】 【課題】金属分およびリン分を含有せず、潤滑油基油などの油類に対して摩擦低減性と摩耗低減性とをともに付与できる油類用添加剤およびこれを含有する潤滑油の提供。

【解決手段】式(I)で表されるエステルからなる油類用添加剤を使用する。R、Rはヒドロカルビル等、a、bは0〜5の整数、X、Yは、硫黄原子または単結合、W、Zは水素原子、−NR等、W、Zは同時に水素原子ではなく、W、Zの一方が水素原子の場合、X、Yは同時に単結合ではなく、R、Rは水素原子、ヒドロカルビル等。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】


[式(I)中、RおよびRは同一または異なって、酸素原子、硫黄原子からなる群より選ばれる1種以上を含んでもよいヒドロカルビルを表し、aおよびbは、同一または異なって、0〜5の整数を表し、XおよびYは同一または異なって、硫黄原子または単結合をそれぞれ表し、WおよびZは、同一または異なって、水素原子、式(II)
【化2】


{式(II)中、RおよびRは同一または異なって、水素原子、置換基を有していてもよいヒドロカルビル、置換基を有していてもよいヒドロカルビルカルボニル、置換基を有していてもよいヒドロカルビルオキシカルボニル、置換基を有していてもよいヒドロカルビルスルホニルを表すか、または、RおよびRが隣接する窒素原子と一緒になって置換基を有していてもよい含窒素複素環基を形成する}、
式(III)
【化3】


{式(III)中、RおよびRは同一または異なって、水素原子、置換基を有していてもよいヒドロカルビル、置換基を有していてもよいヒドロカルビルカルボニルを表すか、またはRおよびRが隣接する炭素原子と一緒になって置換基を有していてもよい環状のヒドロカルビルを形成する}、
または、式(IV)
【化4】


{式(IV)中、nは1〜10の整数、RおよびRは、同一または異なって、水素原子、置換基を有していてもよいヒドロカルビル、置換基を有していてもよいヒドロカルビルカルボニルを表すか、RとRがおのおの隣接する2つの炭素原子と一緒になって、置換基を有していてもよいシクロアルカン、または置換基を有していてもよい芳香環を形成する}(ただし、WおよびZは同時に水素原子ではなく、WおよびZのいずれか一方が水素原子の場合はXおよびYは同時に単結合ではない)を表す]で表されるエステルを含有する油類用添加剤。
【請求項2】
Xが硫黄原子を表す請求項1に記載の油類用添加剤。
【請求項3】
XおよびYが同一であり硫黄原子を表す、請求項1に記載の油類用添加剤。
【請求項4】
aおよびbが同一であり1〜2の整数を表す請求項1〜3のいずれかに記載の油類用添加剤。
【請求項5】
およびRが同一または異なって、炭素数1〜20のアルキル、炭素数2〜20のアルケニル、炭素数3〜20のシクロアルキル、または炭素数4〜20のアリールを表す請求項1〜4のいずれかに記載の油類用添加剤。
【請求項6】
およびRが、同一または異なって、炭素数1〜20のアルキルまたは炭素数2〜20のアルケニルを表す請求項1〜4のいずれかに記載の油類用添加剤。
【請求項7】
Wおよび/またはZが式(II)を表し、RおよびRが、同一または異なって、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のシクロアルキル、置換基を有していてもよい炭素数4〜20のアリール、置換基を有していてもよい炭素数5〜20のアラルキル、置換基を有していてもよい炭素数2〜21のアルカノイル、置換基を有していてもよい炭素数3〜21のアルケノイル、置換基を有していてもよい炭素数5〜21のアロイル、置換基を有していてもよい炭素数2〜21のアルコキシカルボニル、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル、置換基を有していてもよい炭素数4〜20のアリールスルホニル、置換基を有していてもよい炭素数4〜21のシクロアルキルカルボニルを表すか、またはRおよびRが隣接する窒素原子と一緒になって、置換基を有していてもよく、環部分が5〜10員環からなる含窒素複素環基を形成するか、Wおよび/またはZが式(IV)を表し、RおよびRが、同一または異なって、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル、置換基を有していてもよい炭素数4〜20のアリールを表すか、またはRとRがおのおの隣接する2つの炭素原子と一緒になって、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のシクロアルカン、もしくは置換基を有していてもよい炭素数4〜20の芳香環を形成する請求項1〜6のいずれかに記載の油類用添加剤。
【請求項8】
Wおよび/またはZが式(II)を表し、RおよびRが、同一または異なって、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル、置換基を有していてもよい炭素数2〜21のアルカノイル、置換基を有していてもよい炭素数5〜21のアロイル、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル、または置換基を有していてもよい炭素数4〜20のアリールスルホニルを表す請求項1〜6のいずれかに記載の油類用添加剤。
【請求項9】
WまたはZが式(II)を表す請求項1〜6のいずれかに記載の油類用添加剤。
【請求項10】
WおよびZが、同一または異なって、式(II)を表す請求項1〜6のいずれかに記載の油類用添加剤。
【請求項11】
Wおよび/またはZが式(II)を表し、RおよびRが、同一または異なって、水素原子、または置換基を有していてもよいヒドロカルビルカルボニルである請求項1〜6のいずれかに記載の油類用添加剤。
【請求項12】
Wおよび/またはZが式(IV)を表し、RおよびRが同一または異なって、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニルを表すか、または、RおよびRがおのおの隣接する2つの炭素原子と一緒になって、炭素数1〜20のアルキル置換基を有していてもよいベンゼン環、または炭素数1〜20のアルキル置換基を有していてもよいナフタレン環を形成し、n=1を表す、請求項1〜9、11のいずれかに記載の油類用添加剤。
【請求項13】
Wおよび/またはZが式(III)を表し、RおよびRは同一または異なって、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル、置換基を有していてもよい炭素数4〜20のアリール、または、RおよびRが隣接する炭素原子と一緒になって置換基を有していてもよい炭素数3〜20のシクロアルキルを形成する請求項1〜9、11、12のいずれかに記載の油類用添加剤。
【請求項14】
Wおよび/またはZが式(III)を表し、RおよびRは同一または異なって、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル、置換基を有していてもよい炭素数2〜10のアルケニル、または、置換基を有していてもよい炭素数4〜10のアリールを表す請求項1〜9、11、12のいずれかに記載の油類用添加剤。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれかに記載の油類用添加剤と、潤滑油基油とを含有する潤滑油。
【請求項16】
潤滑油基油が、鉱物油、植物油、ポリ−α−オレフィン、脂肪酸エステル、ポリアルキレングリコール、リン酸エステル、シリコーン、ケイ酸エステル、ポリフェニルエーテル、アルキルベンゼン、合成ナフテン、ガスツーリキッドからなる群より選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項15に記載の潤滑油。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑油や燃料油などの油類に添加する油類用添加剤と、これを含有する潤滑油に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、中国、インドおよび東南アジア諸国における産業の急成長や、自動車、電化製品の普及率の増大などにより、世界のエネルギー需要は飛躍的に増加している。これに伴い、世界的に環境への影響も懸念されはじめ、京都議定書に代表されるような排出ガスが原因となる地球温暖化や酸性雨、オゾン層の破壊といった環境問題の改善や、省エネルギー化についての様々な規制がなされている。
【0003】
その一環として、潤滑油、特に自動車エンジン油にも、省燃費性、ロングドレイン化などが強く要求され、同時に潤滑油中に含まれる金属分、リン分、硫黄分の上限濃度が設定された(非特許文献1および2参照)。よって、これらの成分、特に金属分やリン分を含有しない潤滑油が求められている。
潤滑油は、一般に潤滑油基油に添加剤が添加されたものである。潤滑油の省燃費性を向上させるには、低粘度で、かつ耐熱性に優れた潤滑油基油を選択することが有効であると言われ、このような素材としてはエステルなどの極性基油が知られている(特許文献1参照)。
【0004】
また、潤滑油にはその他にも様々な特性が求められ、その中の一つに耐摩耗特性(摩擦低減性および摩耗低減性)がある。そこで、例えば特許文献2〜5に記載されているように、潤滑油に耐摩耗特性を付与するための添加剤が検討されている。
【特許文献1】特開2005−48192号公報
【特許文献2】特公平6−4867号公報
【特許文献3】特許第2563295号公報
【特許文献4】特開2004−262964号公報
【特許文献5】特表平1−501319号公報
【非特許文献1】「潤滑経済」、2005年、7月号、p7
【非特許文献2】「月刊トライボロジー」、2005年、12月号、p36
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、耐摩耗特性を付与するためのこれら従来の添加剤は、いずれも金属分やリン分を含有するものであって、金属分やリン分を含有せず、かつ、極性基油などの潤滑油基油に対して耐摩耗特性を付与できる添加剤は、未だ見出されていないのが現状である。
【0006】
本発明の目的は、金属分およびリン分を含有せず、しかも潤滑油基油などの油類に対して耐摩耗特性を付与できるエステルからなる油類用添加剤と、この油類用添加剤を含有する潤滑油とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討した結果、窒素原子の導入されたエステルを油類用添加剤として使用することによって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は以下の(1)〜(16)を提供する。
(1)下記の式(I)
【0008】
【化1】


【0009】
[式(I)中、RおよびRは同一または異なって、酸素原子、硫黄原子からなる群より選ばれる1種以上を含んでもよいヒドロカルビルを表し、aおよびbは、同一または異なって、0〜5の整数を表し、XおよびYは同一または異なって、硫黄原子または単結合をそれぞれ表し、WおよびZは、同一または異なって、水素原子、式(II)
【0010】
【化2】


【0011】
{式(II)中、RおよびRは同一または異なって、水素原子、置換基を有していてもよいヒドロカルビル、置換基を有していてもよいヒドロカルビルカルボニル、置換基を有していてもよいヒドロカルビルオキシカルボニル、置換基を有していてもよいヒドロカルビルスルホニルを表すか、または、RおよびRが隣接する窒素原子と一緒になって置換基を有していてもよい含窒素複素環基を形成する}、
式(III)
【0012】
【化3】


【0013】
{式(III)中、RおよびRは同一または異なって、水素原子、置換基を有していてもよいヒドロカルビル、置換基を有していてもよいヒドロカルビルカルボニルを表すか、またはRおよびRが隣接する炭素原子と一緒になって置換基を有していてもよい環状のヒドロカルビルを形成する}、
または、式(IV)
【0014】
【化4】


【0015】
{式(IV)中、nは1〜10の整数、RおよびRは同一または異なって、水素原子、置換基を有していてもよいヒドロカルビル、置換基を有していてもよいヒドロカルビルカルボニルを表すか、RとRがおのおの隣接する2つの炭素原子と一緒になって、置換基を有していてもよいシクロアルカン、または置換基を有していてもよい芳香環を形成する}(ただし、WおよびZは同時に水素原子ではなく、WおよびZのいずれか一方が水素原子の場合はXおよびYは同時に単結合ではない)を表す]で表されるエステルからなる油類用添加剤。
【0016】
(2)Xが硫黄原子を表す(1)に記載の油類用添加剤。
(3)XおよびYが同時に硫黄原子を表す、(1)に記載の油類用添加剤。
(4)aおよびbが同時に1〜2の整数を表す(1)〜(3)のいずれかに記載の油類用添加剤。
(5)RおよびRが同一または異なって、炭素数1〜20のアルキル、炭素数2〜20のアルケニル、炭素数3〜20のシクロアルキル、または炭素数4〜20のアリールを表す(1)〜(4)のいずれかに記載の油類用添加剤。
(6)RおよびRが、同一または異なって、炭素数1〜20のアルキルまたは炭素数2〜20のアルケニルを表す(1)〜(4)のいずれかに記載の油類用添加剤。
【0017】
(7)Wおよび/またはZが式(II)を表し、RおよびRが、同一または異なって、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のシクロアルキル、置換基を有していてもよい炭素数4〜20のアリール、置換基を有していてもよい炭素数5〜20のアラルキル、置換基を有していてもよい炭素数2〜21のアルカノイル、置換基を有していてもよい炭素数3〜21のアルケノイル、置換基を有していてもよい炭素数5〜21のアロイル、置換基を有していてもよい炭素数2〜21のアルコキシカルボニル、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル、置換基を有していてもよい炭素数4〜20のアリールスルホニル、置換基を有していてもよい炭素数4〜21のシクロアルキルカルボニルを表すか、またはRおよびRが隣接する窒素原子と一緒になって、置換基を有していてもよく、環部分が5〜10員環からなる含窒素複素環基を形成するか、Wおよび/またはZが式(IV)を表し、RおよびRが、同一または異なって、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル、置換基を有していてもよい炭素数4〜20のアリールを表すか、またはRとRが、おのおの隣接する2つの炭素原子と一緒になって、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のシクロアルカン、もしくは置換基を有していてもよい炭素数4〜20の芳香環を形成する(1)〜(6)のいずれかに記載の油類用添加剤。
【0018】
(8)Wおよび/またはZが式(II)を表し、RおよびRが、同一または異なって、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル、置換基を有していてもよい炭素数2〜21のアルカノイル、置換基を有していてもよい炭素数5〜21のアロイル、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル、または置換基を有していてもよい炭素数4〜20のアリールスルホニルを表す(1)〜(6)のいずれかに記載の油類用添加剤。
(9)WまたはZが式(II)を表す(1)〜(6)のいずれかに記載の油類用添加剤。
【0019】
(10)WおよびZが、同一または異なって、式(II)を表す(1)〜(6)のいずれかに記載の油類用添加剤。
(11)Wおよび/またはZが式(II)を表し、RおよびRが、同一または異なって、水素原子、または置換基を有していてもよいヒドロカルビルカルボニルである(1)〜(6)のいずれかに記載の油類用添加剤。
(12)Wおよび/またはZが式(IV)を表し、RおよびRが同一または異なって、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニルを表すか、または、RおよびRがおのおの隣接する2つの炭素原子と一緒になって、炭素数1〜20のアルキル置換基を有していてもよいベンゼン環、または炭素数1〜20のアルキル置換基を有していてもよいナフタレン環を形成し、n=1を表す、(1)〜(9)、(11)のいずれかに記載の油類用添加剤。
【0020】
(13)Wおよび/またはZが式(III)を表し、RおよびRは同一または異なって、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル、置換基を有していてもよい炭素数4〜20のアリール、または、RおよびRが隣接する炭素原子と一緒になって置換基を有していてもよい炭素数3〜20のシクロアルキルを形成する(1)〜(9)、(11)、(12)のいずれかに記載の油類用添加剤。
(14)Wおよび/またはZが式(III)を表し、RおよびRは同一または異なって、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル、置換基を有していてもよい炭素数2〜10のアルケニル、または、置換基を有していてもよい炭素数4〜10のアリールを表す(1)〜(9)、(11)、(12)のいずれかに記載の油類用添加剤。
【0021】
(15)(1)〜(14)のいずれかに記載の油類用添加剤と、潤滑油基油とを含有する潤滑油。
(16)前記潤滑油基油が、鉱物油、植物油、ポリ−α−オレフィン、脂肪酸エステル、ポリアルキレングリコール、リン酸エステル、シリコーン、ケイ酸エステル、ポリフェニルエーテル、アルキルベンゼン、合成ナフテン、ガスツーリキッドからなる群より選ばれる1種以上であることを特徴とする(15)に記載の潤滑油。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、金属分およびリン分を含有せず、しかも潤滑油基油などの油類に対して耐摩耗特性を付与できるエステルからなる油類用添加剤と、この油類用添加剤を含有する潤滑油とを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本明細書においては、式(I)で表されるエステルをエステル(I)と記す。他の式で表されるエステルも同様に記す。
【0024】
本発明の油類用添加剤は、例えば潤滑油基油、燃料油などの油類に添加され、それら油類に耐摩耗特性を付与するものであって、式(I)で表されるエステルからなる。
【0025】
ヒドロカルビルとは、炭化水素から一個の水素原子を除去することにより生成する一価基であって、置換基を有していてもよいし、飽和でも不飽和でもよいし、直鎖状、分岐状、環状、環構造を有するもののいずれであってもよい。ヒドロカルビルの炭素数は1〜30のものが好ましく、炭素数1〜20のものがより好ましい。より好ましくは、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アラルキル、アリールなどが挙げられる。
【0026】
ヒドロカルビルの飽和のものとしては、例えば、アルキル、シクロアルキルなどが挙げられる。
ヒドロカルビルの不飽和のものとしては、例えば、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルケニル、アラルキルなどが挙げられる。
ヒドロカルビルの直鎖状のものとしては、例えば、直鎖状のアルキル、直鎖状のアルケニル、直鎖状のアルキニルが挙げられ、炭素数1〜20のものがより好ましい。
ヒドロカルビルの分岐状のものとしては、例えば、分岐状のアルキル、分岐状のアルケニル、分岐状のアルキニルが挙げられる。
ヒドロカルビルの環状のものとしては、例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリールなどが挙げられる。
ヒドロカルビルの環構造を有するものとしては、アルキルまたはアルケニルの水素原子が、ヒドロカルビルの環状のもので置換されたものが挙げられ、炭素数4〜20のものが好ましい。その具体例としては、例えば、ベンジル、ビフェニルメチル、ナフチルメチル、2−フェニルビニル−1−イルなどが挙げられる。
【0027】
また、ヒドロカルビルは、酸素原子、硫黄原子のうちの1種以上を含んでいてもよく、酸素原子を含むヒドロカルビルとしては、例えば、ヒドロカルビルカルボニル、アルカノイル、アロイル等のカルボニルなどを含有するものが挙げられる。硫黄原子を含むヒドロカルビルとしては、例えば、ジスルフィド結合、スルフィド結合、ポリスルフィド結合などを含有するものが挙げられる。
【0028】
ヒドロカルビルカルボニルのヒドロカルビル部分はヒドロカルビルと同義である。
ヒドロカルビルカルボニルとしては、炭素数2〜21のものが好ましく、例えば、アルカノイル、アルケノイル、アロイルなどが挙げられる。
【0029】
ヒドロカルビルオキシカルボニルのヒドロカルビル部分はヒドロカルビルと同義である。
ヒドロカルビルオキシカルボニルとしては、炭素数2〜21のものが好ましく、例えば、アルコキシカルボニル、シクロアルキルオキシカルボニル、アルケニルオキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、アラルキルオキシカルボニルなどが挙げられる。
【0030】
ヒドロカルビルスルホニルのヒドロカルビル部分はヒドロカルビルと同義である。
ヒドロカルビルスルホニルとしては、炭素数1〜20のものが好ましく、例えば、アルキルスルホニル、アルケニルスルホニル、アリールスルホニルが挙げられる。
【0031】
アルキルとしては、例えば、直鎖状または分岐状の炭素数1〜20のアルキルなどが挙げられる。直鎖状の炭素数1〜20のアルキルとして、より好ましくは、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシルなどが挙げられる。さらに好ましくは、メチル、オクタデシルなどが挙げられる。分岐状の炭素数3〜20のアルキルとして、より好ましくは、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ネオペンチルなどが挙げられる。
【0032】
アルケニルとしては、例えば、直鎖状または分岐状の炭素数2〜20のアルケニルなどが挙げられる。直鎖状の炭素数2〜20のアルケニルとして、より好ましくは、例えば、ビニル、アリル、3−ブテン−1−イル、2−ブテン−1−イル、1−ブテン−1−イル、4−ペンテン−1−イル、3−ペンテン−1−イル、2−ペンテン−1−イル、1−ペンテン−1−イル、オクタデセニル、オクタデカジエニルなどが挙げられる。さらに好ましくは、オクタデセニルなどが挙げられ、特にこのましくはオレイルなどが挙げられる。分岐状の炭素数3〜20のアルケニルとして、より好ましくは、例えば、イソプロペニル、2−メチル−1−プロペン−1−イルなどが挙げられる。
【0033】
アルキニルとしては、例えば、直鎖状または分岐状の炭素数2〜20のアルキニルが挙げられる。直鎖状の炭素数2〜20のアルキニルとして、より好ましくは、例えば、エチニル、プロパルギル(プロピニル)、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、オクチニル、ノナニル、デシニル、ウンデシニル、ドデシニル、トリデシニル、テトラデシニル、ヘキサデシニル、オクタデシニルなどが挙げられる。分岐状の炭素数4〜20のアルキニルとして、より好ましくは、例えば、3−メチル−1−ブチン−1−イルが挙げられる。
【0034】
シクロアルカンとしては、炭素数3〜20のものが好ましく、その具体例としては、例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、シクロペンタデカン、シクロイコサンなどが挙げられる。
【0035】
シクロアルキルとしては、炭素数3〜20のものが好ましく、その具体例としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロペンチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、シクロペンタデシル、シクロイコシルなどが挙げられる。
【0036】
シクロアルケニルとしては、炭素数3〜20のものが好ましく、その具体例としては、例えば、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロペンテニル、シクロオクテニル、シクロノネニル、シクロデセニル、シクロペンタデセニル、シクロイコセニルなどが挙げられる。
【0037】
アルカノイルのアルキル部分はアルキルと同義である。
アルカノイルとしては、炭素数2〜21のものが好ましく、例えば、アセチル、プロピオニル、ピバロイル、プロピオロイル、ブチロイル、ペンチロイル、ヘキシロイル、ヘプチロイル、オクチロイル、ノナノイル、デカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、テトラデカノイル、ヘキサデカノイル、オクタデカノイルなどが挙げられる。さらに好ましくは、アセチル、オレオイルなどが挙げられる。
【0038】
アルケノイルのアルケニル部分はアルケニルと同義である。
アルケノイルとしては、炭素数3〜21のものが好ましく、例えば、アクリロイル、メタクリロイル、オクタデセノイル、オクタデカジエノイルなどが挙げられる。
【0039】
アリールとしては、炭素数4〜20のものが好ましく、その具体例としては、例えば、フェニル、ビフェニル、トリフェニル、ナフチル、ピラニルなどが挙げられる。
【0040】
アラルキルのアルキル部分はアルキルと同義であり、アリール部分はアリールと同義である。
アラルキルとしては、炭素数5〜20のものが好ましく、例えば、ベンジル、フェネチル、3−フェニルプロピル、ナフチルメチル、ビフェニルメチルなどが挙げられる。
【0041】
アロイルのアリール部分はアリールと同義である。
アロイルとしては、炭素数5〜21のものが好ましく、例えば、ベンゾイル、ナフトイル、トルオイル、キシロイルなどが挙げられる。
【0042】
シクロアルキルカルボニルのシクロアルキル部分はシクロアルキルと同義である。
シクロアルキルカルボニルとしては、炭素数4〜21のものが好ましく、例えば、シクロプロピルカルボニル、シクロブチルカルボニル、シクロペンチルカルボニル、シクロヘキシルカルボニルなどが挙げられる。
【0043】
アルコキシカルボニルのアルキル部分はアルキルと同義である。
アルコキシカルボニルとしては、炭素数2〜21のものが好ましく、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロピルオキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル(BOC)が挙げられる。
【0044】
シクロアルキルオキシカルボニルのシクロアルキル部分はシクロアルキルと同義である。
シクロアルキルオキシカルボニルとしては、炭素数4〜21のものが好ましく、例えば、シクロプロピルオキシカルボニル、シクロペンチルオキシカルボニル、シクロヘキシルオキシカルボニルなどが挙げられる。
【0045】
アルケニルオキシカルボニルのアルケニル部分はアルケニルと同義である。
アルケニルオキシカルボニルとしては、炭素数3〜21のものが好ましく、例えば、アリルオキシカルボニルなどが挙げられる。
【0046】
アリールオキシカルボニルのアリール部分は、アリールと同義である。
アリールオキシカルボニルとしては、炭素数5〜21のものが挙げられ、より好ましくは、フェニルオキシカルボニル、ナフチルオキシカルボニル、4−メトキシフェニルオキシカルボニル、ビフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる。
【0047】
アラルキルオキシカルボニルのアラルキル部分はアラルキルと同義である。
アラルキルオキシカルボニルとしては、炭素数8〜21のものが好ましく、例えば、ベンジルオキシカルボニル、4−メトキシベンジルオキシカルボニル、ナフチルメチルオキシカルボニルなどが挙げられる。
【0048】
アルキルスルホニルのアルキル部分はアルキルと同義である。
アルキルスルホニルとしては、例えば、炭素数1〜20のものが挙げられ、より好ましくは、メタンスルホニル、エタンスルホニル、イソプロピルスルホニル、トリフルオロメタンスルホニルが挙げられる。
【0049】
アルケニルスルホニルのアルケニル部分はアルケニルと同義である。
アルケニルスルホニルとしては、例えば、炭素数2〜20のものが挙げられ、より好ましくは、ビニルスルホニル、アリルスルホニルなどが挙げられる。
【0050】
アリールスルホニルのアリール部分はアリールと同義である。
アリールスルホニルとしては、例えば、炭素数4〜20のものが挙げられ、より好ましくは、p−トルエンスルホニル、ベンゼンスルホニルが挙げられる。
【0051】
芳香環としては、例えば、炭素数4〜20の芳香族炭化水素が挙げられ、より好ましくは、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ナフタセン、ピレンなどが挙げられる。
【0052】
含窒素複素環基としては、窒素原子1個の他に、例えば窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれる原子を含みうる5員または6員の単環性複素環基、3〜8員の環が縮合した二環または三環性で窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれる原子を含みうる縮環性複素環基などがあげられ、より具体的にはアジリジニル、アゼチジニル、ピロリジニル、ピペリジノ、ピペリジニル、アゼパニル、1,2,5,6−テトラヒドロピリジル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、ピペラジニル、ホモピペラジニル、ピラゾリニル、オキサゾリジニル、モルホリノ、モルホリニル、チアゾリジニル、チオモルホリニル、2H−オキサゾリル、2H−チアゾリル、ジヒドロインドリル、ジヒドロイソインドリル、ベンゾイミダゾリジニル、ジヒドロベンゾオキサゾリル、ジヒドロベンゾチアゾリル、テトラヒドロキノリル、テトラヒドロイソキノリル、テトラヒドロキノキサリニル、テトラヒドロキナゾリニル、2−ピロリジノン−1−イル、2−ピペリジノン−1−イルなどが挙げられる。
【0053】
置換基を有していてもよいアルカノイルの置換基、
置換基を有していてもよいアルケノイルの置換基、
置換基を有していてもよいヒドロカルビルの置換基、
置換基を有していてもよいヒドロカルビルカルボニルの置換基、
置換基を有していてもよいヒドロカルビルオキシカルボニルの置換基、
置換基を有していてもよいヒドロカルビルスルホニルの置換基、
置換基を有していてもよいアルキルの置換基、
置換基を有していてもよいアルケニルの置換基、
置換基を有していてもよいアリールの置換基、
置換基を有していてもよいアラルキルの置換基、
置換基を有していてもよいアルコキシカルボニルの置換基、
置換基を有していてもよいアルキルスルホニルの置換基、
置換基を有していてもよいアリールスルホニルの置換基、
置換基を有していてもよいアロイルの置換基、
置換基を有していてもよいシクロアルキルカルボニルの置換基、
における置換基としては、例えば、
それぞれ、同一または異なって、置換数1〜5のヒドロキシル、ホルミル、エポキシ、カルボキシル、メルカプト、アミノ、ヒドラジノ、イミノ、アゾ、ニトロ、ニトリル、オキシム、フルオロなどが挙げられる。
【0054】
置換基を有していてもよい芳香環の置換基、
置換基を有していてもよいシクロアルカンの置換基、
置換基を有していてもよいシクロアルキルの置換基、
置換基を有していてもよい含窒素複素環基、
における置換基としては、例えば、
それぞれ、同一または異なって、置換数1〜5のアルキル、アルケニル、アルキニル、ヒドロキシル、ホルミル、エポキシ、カルボキシル、メルカプト、アミノ、ヒドラジノ、イミノ、アゾ、ニトロ、ニトリル、オキシム、フルオロなどが挙げられる。ここで示した、アルキル、アルケニル、アルキニルはそれぞれ、前記と同義である。
【0055】
炭素数1〜20のアルキル置換基を有していてもよいベンゼン環、
炭素数1〜20のアルキル置換基を有していてもよいナフタレン環
における炭素数1〜20のアルキルは、例えば、それぞれ、同一または異なって、置換数1〜5のメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ペンタデシル、イコシルなどが挙げられる。ここで示した、アルキルは前記と同義である。
【0056】
このようなエステル(I)のうち、より好ましい例としては、aおよびbが同時に、1〜2の整数であり、XおよびYが同時に硫黄原子であり、WおよびZが、同時に式(II){式(II)中、RおよびRは、同一または異なって、水素原子、ヒドロカルビルカルボニル、または、ヒドロカルビルスルホニルを表す}、同時に式(III){式(III)中、RおよびRは同一または異なって、置換基を有していてもよいヒドロカルビル、またはRおよびRが隣接する炭素原子と一緒になって形成される、置換基を有していてもよい環状のヒドロカルビルを表す}、または、同時に式(IV){式(IV)中、nは1〜20の整数、RおよびRは、同一または異なって、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル、置換基を有していてもよい炭素数4〜20のアリールを表すか、RとRが、おのおの隣接する2つの炭素原子と一緒になって、置換基を有していてもよい炭素数3〜20のシクロアルカンを形成するか、もしくは、置換基を有していてもよい炭素数4〜20の芳香環を形成する}で表されるエステル(I)などが挙げられる。
【0057】
さらに好ましくは、例えば、下記のエステル(I−1)〜エステル(I−11)などが挙げられる。
【0058】
【化5】


【0059】
【化6】


【0060】
【化7】


【0061】
【化8】


【0062】
【化9】


【0063】
【化10】


【0064】
【化11】


【0065】
【化12】


【0066】
【化13】


【0067】
Rは、炭素数1〜10の飽和または不飽和のヒドロカルビル、または炭素数4〜10のアリールを表す。
【0068】
【化14】


【0069】
【化15】


【0070】
MsOHは、メタンスルホン酸を表す。
以上説明したエステル(I)は、そのままでも油類添加剤などとして使用できるが、例えば、塩などに変性して使用することも可能である。
塩としては、酸付加塩やアミノ酸付加塩などが挙げられる。
【0071】
酸付加塩としては、例えば、有機酸塩もしくは無機酸塩などが挙げられる。有機酸塩としては、例えば、カルボン酸塩、スルホン酸塩などが挙げられ、より好ましくは、ギ酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、プロピオン酸塩、メタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩などが挙げられ、さらに好ましくは、メタンスルホン酸塩などが挙げられる。無機酸塩としては、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、ホウ酸塩などが挙げられ(ただし、リン酸塩は含まない)、より好ましくは、ホウ酸塩などが挙げられる。
アミノ酸付加塩としては、例えばリジン、グリシン、フェニルアラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸などの付加塩が挙げられる。
【0072】
エステル(I)の塩を取得したいとき、エステル(I)が塩の形で得られるときはそのまま精製すればよく、また、遊離の形で得られるときは、エステル(I)を適当な溶媒に溶解または懸濁し、酸または塩基を加えて単離、精製すればよい。
また、エステル(I)およびその塩は、水または各種溶媒との付加物の形で存在することもあるが、これらの付加物も本発明の油類用添加剤として使用できる。
【0073】
エステル(I)の中には、幾何異性体、光学異性体、互変異性体等の立体異性体が存在し得るものもあるが、本発明には、これらを含め、全ての可能な異性体およびそれらの混合物も油類用添加剤として使用できる。
【0074】
エステル(I)は、このエステルに対応する二塩基酸とアルコールとを塩基性化合物の存在下、縮合剤を用いて0〜100℃において反応させることにより、製造することができる。
この際、対応する二塩基酸に対して、アルコールを2〜10当量使用することが好ましく、より好ましくは2〜5当量使用する。また、塩基性化合物を0.1〜20当量、好ましくは0.5〜5当量使用し、縮合剤を0.1〜20当量、好ましくは0.5〜5当量使用することが好ましい。
【0075】
対応する二塩基酸としては、エステル(I)に対応するもの、すなわち、式(I)におけるRおよびRが水素原子であるものであれば制限はないが、式(I)中のWまたはZが置換基を有してもよいアミノ基であるエステル(I)を製造する場合には、置換基を有してもよいアミノ基を有する二塩基酸を使用することが好ましい。
【0076】
アミノ基を有する二塩基酸の具体例としては、S−カルボキシメチルシステイン、ランチオニン、シスチン、ホモシスチン、ペニシルアミンジスルフィドなどが挙げられる。置換基を有してもよいアミノ基の置換基としては、ヒドロカルビル、ヒドロカルビルカルボニル、ヒドロカルビルオキシカルボニル、ヒドロカルビルスルホニルなどが挙げられる。
前記二塩基酸の多くは、市販品として入手可能であるが、例えば、特開昭62−48394号公報、特開昭51−136619号公報などに記載の方法に準じて製造することができる。
【0077】
アルコールとしては、エステル(I)に対応するもの、すなわち、式(I)におけるRまたはRとヒドロキシルからなるもの(R−OHまたはR−OH)であれば制限はない。このようなアルコールの多くは、市販品として入手可能であるが、例えば、特開2000−344695号公報、特開2001−89403号公報などに記載の方法に準じて製造することができる。
【0078】
塩基性化合物としては、ピリジンやルチジン、4−ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミンなどのアミン系化合物などが挙げられる。
縮合剤としては、例えば、1−エチル−3−(N,N’−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドやN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミドなどのカルボジイミド系化合物などが挙げられる。
【0079】
エステル(I)のその他の製造方法としては、例えば、このエステルに対応する二塩基酸とアルコールとをメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などの酸触媒の存在下、100〜150℃で反応させる方法も挙げられる。その他には、触媒として、塩化水素、塩化チオニルなどを用いる方法も挙げられる。これらの場合にも、二塩基酸に対して、アルコールを2〜10当量使用することが好ましく、より好ましくは2〜5当量使用する。
【0080】
これら各製造方法において、対応する二塩基酸とアルコールとの反応の際には、必要に応じて、該二塩基酸やアルコールの有するアミノ、カルボキシル、ヒドロキシ、メルカプトなどの活性基に保護基を導入し、反応後に、適宜、保護基を脱離させてもよい。
活性基への保護基の導入および脱離は、公知の方法[例えば、プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス第3版(Protective Groups In Organic Synthesis,third edition)、グリーン(T.W.Greene)著、John Wiley&Sons Inc.(1999年)などに記載の方法など]により行なうことができる。
【0081】
保護基としては、例えば、ベンジルオキシカルボニル、p−メトキシベンジルオキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル、9−フロオレニルメトキシカルボニル、3−ニトロ−2−ピリジンスルフェニル、2−ハロゲン化ベンジルオキシカルボニル、tert−ブチル、ベンジル、ハロゲン化ベンジル、トシル、4−メトキシ−2,3,6−トリメチルベンゼンスルホニル、2,2,5,7,8−ペンタメチルクロマン−6−スルホニル、2,4−ジニトロフェニル、トリチル、ベンジルオキシメチル、4−メチルベンジル、4−メトキシベンジル、アセトアミドメチル、ホルミル、アセチル、4,4’−ジメトキシベンズヒドリル、2,4,6−トリメトキシベンジルなどが挙げられる。
【0082】
以上説明したエステル(I)は、油類用添加剤として使用すると、潤滑油基油、燃料油などの油類に対して、耐摩耗特性を付与できるため、従来使用されている後述の摩擦調整剤(摩擦低減剤、油性剤)、摩耗低減剤(極圧剤など)などの代わりに使用できる。また、エステル(I)の使用のみで耐摩耗特性を付与できるが、場合によっては、これら従来のものとエステル(I)とを併用してもよい。
さらに本発明中の2つもしくは、それ以上のそれぞれ構造が異なるエステル(I)同士を混合して用いてもよい。
【0083】
本発明の潤滑油は、潤滑油基油と、上述したエステル(I)からなる油類用添加剤とを含有するものである。潤滑油中におけるこの油類用添加剤の含有量は、潤滑油1kg中、0.001〜300mmol(ミリモル)が好ましく、さらには0.01〜200mmolが好ましく、さらには0.1〜100mmolが好ましい。この範囲内であると、耐摩耗特性を十分に付与することができる。
【0084】
潤滑油基油としては、例えば、天然基油や合成基油に代表される種々の潤滑油基油を使用できる。また、これらは極性基油、無極性基油のいずれであってもよい。
天然基油としては、鉱物油、植物油、獣油などが挙げられ、鉱物油としては、例えば、パラフィン基系原油、中間基系原油、ナフテン基系原油などが挙げられるが、特に限定されるものではない。また、常圧または減圧蒸留により誘導される潤滑油原料をフェノール、フルフラール等の芳香族抽出溶剤で処理して得られる溶剤精製油、水素化分解触媒の存在下において過酷な分解反応条件下で水素と接触させて得られる水素化分解油、シリカ−アルミナ担体とするコバルト、モリブデンなどの水素化処理用触媒の存在下において、潤滑油原料を水素化処理条件下で水素と接触させて得られる水素化処理油;複数段の水素化処理による方法か、水素化処理もしくは溶剤精製処理後にアルカリ蒸留もしくは硫酸洗浄処理する方法か、触媒脱蝋後に水素化処理する方法などにより得られる高度精製油なども好ましく使用できる。植物油としては、例えば、菜種油、ひまわり油、大豆油、オリーブ油、パーム油、トウモロコシ油などが挙げられるが特に限定されるものではない。
合成基油としては、ポリブテン、ポリプロピレン、炭素数8〜14のα−オレフィンオリゴマーなどのポリ−α−オレフィン;脂肪酸モノエステル、芳香族モノエステル、脂肪酸ジエステル、芳香族ジエステル、脂肪族多塩基酸エステル、芳香族多塩基酸エステル、ポリオールポリエステルなどのエステル;ポリアルキレングリコール、リン酸エステル、シリコーン、ケイ酸エステル、ポリフェニルエーテル、アルキルベンゼン、合成ナフテン、ガスツーリキッド(GTL)、フルオロカーボン、イオン液体などが挙げられるが特に限定されるものではない。
【0085】
これらの中で好ましい潤滑油基油としては、溶剤精製油、水素化分解油、高度精製油、植物油、ポリ−α−オレフィン、脂肪酸エステル(脂肪酸モノエステル、脂肪酸ジエステル、脂肪族多塩基酸エステル)、ポリアルキレングリコール、リン酸エステル、シリコーン、ケイ酸エステル、ポリフェニルエーテル、アルキルベンゼン、合成ナフテン、ガスツーリキッド(GTL)が挙げられ、これらのうちの1種以上を使用することが好ましい。
【0086】
本発明の潤滑油は、前記潤滑油基油とエステル(I)からなる油類用添加剤の他に、任意成分として、清浄分散剤、酸化防止剤、摩耗低減剤(耐摩耗剤、焼付き防止剤、極圧剤など)、摩擦調整剤(摩擦低減剤、油性剤)、防錆剤、気相防錆剤、流動点降下剤、粘度指数向上剤、増粘剤、防腐剤、消泡剤、抗乳化剤、染料、香料などの添加剤を含んでいてもよい。これら添加剤の添加量は適宜設定できるが、潤滑油中、それぞれ0.001〜5質量%含まれることが好ましい。
【0087】
清浄分散剤とは、経時で生成する油中のスラッジを安定的に分散させ、これらの凝集堆積を抑制する分散作用;水、有機酸、スラッジプレカーサーなどの不安定な中間体を可溶化することでワニスやスラッジへの成長を抑制する可溶化作用;潤滑油基油、添加剤の劣化により生成する有機酸、硫酸を中和することで基材の腐食さらには腐食が原因となる摩耗を抑制する酸中和作用などを主目的とする添加剤である。清浄分散剤には大きく分けて、金属を含有する金属系清浄剤と、金属を含有しない無灰型分散剤とがあり、前者の代表的なものは、中性・塩基性スルホネート、過塩基性スルホネート、過塩基性フェネート、過塩基性サリシレート、ホスフォネート、過塩基性カルボキシレートなどに金属の水酸化物、炭酸化物がコロイド状に分散したものである。金属としてはカルシウム、マグネシウム、バリウムなどが挙げられる。無灰型分散剤としてはモノコハク酸イミドやビスコハク酸イミドなどが挙げられる。清浄分散剤としては、これらのうち1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0088】
酸化防止剤とは、潤滑油基油または添加剤が空気中の酸素と反応することによる、劣化・分解の抑制を主目的とする添加剤である。作用機構としては連鎖移動反応の停止、過酸化物の分解、酸化触媒となりうる金属化合物の不活性化として作用する。連鎖停止剤として作用するものには、フェノール系、芳香族アミン系化合物などが挙げられる。過酸化物分解剤として作用するものには、硫黄系、硫黄・リン系化合物などが挙げられる。金属不活性化剤としてはベンゾトリアゾールなどの金属との錯体形成能力を有する化合物が挙げられる。酸化防止剤としては、これらのうち1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0089】
摩耗低減剤とは、相対運動により発生する摩擦の摩擦表面において、摩擦表面を形成する金属または金属酸化物と化学反応し無機化合物の膜を形成することで、摩耗の低減、焼付きの防止を主目的とする添加剤である。摩耗の抑制を主目的とするものを耐摩耗剤、焼付きの防止を主目的とするものを焼付き防止剤、焼付きを生じるような過酷な条件下で、焼付きの防止および摩耗の抑制を主目的とするものを極圧剤とそれぞれ呼称することもある。摩耗低減剤は硫黄系、リン系、塩素系、有機金属系に大別され、硫黄系化合物には硫化オレフィン、スルフィドなどがあり、代表的なものにはジベンジルジスルフィド(DBDS)が挙げられる。リン系化合物にはホスファイト、ホスフェート、アミンホスフェートなどがあり、代表的なものにはトリクレジルホスフェート(TCP)が挙げられる。塩素系化合物には塩化パラフィンなどが挙げられる。有機金属系の代表的なものには亜鉛−ジアルキルジチオホスフェート(ZnDTP)や亜鉛−ジアルキルジチオカルバメート(ZnDTC)、モリブデン−ジアルキルジチオカルバメート(MoDTC)、モリブデン−ジアルキルジチオホスフェート(MoDTP)などが挙げられる。摩耗低減剤としては、これらのうち1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
エステル(I)からなる本発明の油類用添加剤を使用する際には、これら硫黄系、リン系、塩素系、有機金属系の摩耗低減剤を併用してもよいが、本発明の油類用添加剤を使用すれば、これら公知の摩耗低減剤を併用しなくても、潤滑油基油等の油類に対して優れた摩耗低減性を付与できる。よって、例えば、リン系、有機金属系の摩耗低減剤を併用することによる油類中の金属分やリン分の濃度増加を防ぐことができる。
【0090】
摩擦調整剤とは、相対運動により発生する摩擦の摩擦表面において、摩擦表面を形成する金属または金属酸化物上に物理吸着または化学吸着し、摩擦を低減もしくは増加させることを主目的とする添加剤である。摩擦の低減を主目的とするものを油性剤または摩擦低減剤と呼称することもある。摩擦調整剤には大別すると金属を含有しない無灰型摩擦調整剤と金属を含有する金属系摩擦調整剤、さらには固体潤滑剤とがある。無灰型摩擦調整剤は分子内に金属表面と強く結合する極性基と長鎖長の炭素鎖を併せ持つ構造であり、代表的なものにはステアリン酸、オレイン酸、ステアリルアミン、オレイルアルコール、オレイルアミン、オレイルアミド、グリセリンモノオレート(GMO)などが挙げられる。金属系摩擦調整剤にはMoDTC、MoDTPが挙げられる。固体潤滑剤にはグラファイト、二硫化モリブデンなどが挙げられる。摩擦調整剤としては、これらのうち1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
エステル(I)からなる本発明の油類用添加剤を使用する際には、無灰型摩擦調整剤、金属系摩擦調整剤、固体潤滑剤などの摩擦調整剤を併用してもよいが、本発明の油類用添加剤を使用すれば、これら公知の摩擦調整剤を併用しなくても、潤滑油基油などの油類に対して優れた摩擦低減性を付与することができる。よって、例えば、金属系摩擦調整剤を併用することによる油類中の金属分の濃度増加を防ぐことができる。
【0091】
防錆剤とは、空気中に存在する酸素および水分が主原因となる基材の錆びを防止することを主目的とする添加剤である。防錆剤にはアルキルコハク酸誘導体、金属石けん、エステル、スルホネート、ホスファイト、アミン類などが挙げられる。
流動点降下剤とは、潤滑油のワックス流動点をさらに降下させることで低温流動性を改善し、潤滑油の可使用下限温度をさらに下げることを主目的とする添加剤である。代表的なものには、ポリアルキルメタクリレート、ポリアルキルアクリレート、ポリビニルアセテート、ポリアルキルスチレン、ポリブテン、塩素化パラフィンとナフタレンの縮合物、塩素化パラフィンとフェノールの縮合物などが挙げられる。
粘度指数向上剤とは、粘度指数を向上させることで潤滑油の温度による粘度変化を小さくし、潤滑油基油の可使用温度範囲をさらに広げることを主目的とする添加剤である。代表的なものには、ポリアルキルメタクリレート、ポリイソブチレン、ポリアルキルスチレン、エチレン−プロピレン共重合物、スチレン−ジエン水素化共重合体、スチレン−無水マレイン酸エステル共重合体などが挙げられる。これらは単独または併用して使用される。
消泡剤とは、潤滑油基油の泡立ちが主原因となる油切れや圧縮性増大にともなう摩耗、焼付きなどによる機械の作動不良、潤滑油基油のオーバーフロー、酸化・劣化促進の防止を主目的とする添加剤である。代表的なものには、ジメチルシロキサン、フルオロシリコーン、ポリアクリレート、パーフルオロアルキルエーテルなどが挙げられる。
防錆剤、流動点降下剤、粘度指数向上剤、消泡剤は、いずれも例示したもののうち1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0092】
本発明の潤滑油は、例えば、エンジン油、自動変速機油、無段変速機油、ギヤ油、パワーステアリング油、ショックアブソーバ油、タービン油、作動油、冷凍機油、圧延油、軸受油、金属加工用潤滑油、摺動面油、グリース、生体潤滑剤などの各用途に使用することができる。
【0093】
エンジン油とは、自動車、自動二輪、列車、船舶、潜水艦などの4サイクルガソリンエンジン、2サイクルガソリンエンジン、ディーゼルエンジンのピストンリングとシリンダの摺動部、コンロッドとクランクシャフト軸受、カムとバルブリフタの動弁系部分などの潤滑に使用される潤滑油である。
自動変速機油とは、流体変速機、歯車装置、湿式クラッチおよびこれらをコントロールする油圧機構からなる自動変速機の動力伝達、摩耗調整、各種ギヤの潤滑に使用される潤滑油である。
無段変速機油とは、無段変速機に使用される潤滑油である。無段変速機にはベルトドライブ式とトラクションドライブ式とがあり、自動車、工作機械、産業機械などの変速機として使用される。ベルトドライブ式無段変速機はエンジン側と駆動輪側の2個のプーリーとその間に掛けられたベルトからなり、潤滑油はベルト部、クラッチ板、油圧システムの潤滑および油圧作動に使用される。トラクションドライブ式無段変速機は転動体同士が油膜を介してトルクを伝達するものであり、潤滑油はトルクの伝達、転動体の焼付きや摩耗の防止に使用される。
【0094】
ギヤ油とは、歯車と軸受の潤滑を目的に使用される潤滑油であり、自動車用ギヤ油と工業用ギヤ油に大別される。自動車用ギヤ油は、自動車の手動変速機やマニュアルトランスアクスル、終減速機(デフ)に採用されているヘリカルギヤやハイポイドギヤなどの潤滑に使用される。工業用ギヤ油は、鉄鋼設備をはじめとする産業機械、設備の歯車に採用されているヘリカル歯車やベベル歯車、ウォーム歯車などの潤滑に使用される。
パワーステアリング油とは、ハンドルにかかる力を軽減させることを目的にパワーステアリング装置に使用される潤滑油である。
ショックアブソーバ油とは、操縦性、安定性、乗り心地を付与することを目的にサスペンション装置におけるショックアブソーバに使用される潤滑油である。
タービン油とは、タービンの軸受および減速歯車の潤滑に使用される潤滑油であり、発電機、船舶および航空機の蒸気タービン、ガスタービン、原子力タービンなどに使用される。
【0095】
作動油とは、油圧機器、装置の動力伝達や摺動部分の潤滑に使用される潤滑油であり、建設機械、工作機械、金属やプラスチックの加工機械、車両、船舶、航空機などの油圧機器、装置に使用される。
冷凍機油とは、冷凍機の圧縮機に冷媒と接触、共存下で使用される潤滑油であり、空調機、冷蔵庫、食品の加工流通の冷凍冷蔵用、産業用などの冷凍機に使用される。
圧延油とは、鉄鋼やアルミニウム合金などの金属材料を圧延する際に、素材とロール間の過擦部分に潤滑性を付与することを目的に使用される潤滑油である。
軸受油とは、軸受が主たる潤滑対象になっている潤滑油であり、各種工作機械の主軸受や特殊なものには圧延機のロールネックの大型すべり軸受に用いられる油膜軸受油がある。また、最近では流体軸受油(動圧軸受油)としてパーソナルコンピューターなどのハードディスクドライブに内蔵されているスピンドルモータなどの精密機械の軸受部にも使用される潤滑油である。
金属加工用潤滑油とは、金属の機械加工で潤滑、冷却に使用される潤滑油であり、切削油剤、圧延油剤、プレス加工用潤滑油、引き抜き油剤などの種類がある。
【0096】
摺動面油とは、すべり速度が非常に遅く、かつ油膜が形成されないような旋盤、研削盤などの各種工作機のテーブルの安定面に摩擦特性を付与するために使用される潤滑油であり、専用油と安定面の潤滑と油圧作動油を兼ねる油圧兼用油とがある。
グリースとは、潤滑油中に増ちょう剤を分散させて半固体または固体状にしたものであり、自動車にはホイールベアリング、等速ボールジョイント、ユニバーサルジョイント、プロペラシャフトセンターサポート、クラッチレリーズベアリング、水ポンプ軸受、ステアリングやアクセルのリンケージ機構部、電装品などの軸受、プロペラシャフトのスプライン部、計装用ワイヤケーブル部、ウインドレギュレータやドアミラーなどのボディ用部品、ブレーキ用部品などに使用され、工業用としては転がりやすべり軸受、歯車やチェーンなどの継ぎ手類、機械摺動面などを有する機器に使用される。
生体潤滑剤とは、人工関節、人工軟骨や人工涙液型点眼液などに使用される潤滑剤であり、潤滑性や耐久性のみならず、生体への影響がない素材が要求される。
【0097】
以上説明したように、エステル(I)からなる油類用添加剤は、金属分およびリン分を含有しないにもかかわらず、潤滑油基油に対して耐摩耗特性を付与することができる。よって、環境面などで非常に好ましい上、従来の亜鉛やモリブデンといった重金属分やリン分を含有する添加剤では、人体への影響や潤滑油の混入が懸念されるために使用が制限されていた用途(食品加工や医薬製造時に使用するベルトコンベアなどの作業機械、医療機器など)に対しても非常に有効である。
また、エステル(I)からなる油類用添加剤は、潤滑油基油が極性基油、無極性基油のいずれの場合であっても、これらへの添加により、摩擦低減性と摩耗低減性とを兼ね備えた耐摩耗特性を付与することができる。よって、従来は、潤滑油基油の種類に応じて、相性がよい摩擦調整剤と摩耗低減剤(耐摩耗剤、焼付き防止剤、極圧剤など)の両方をそれぞれ選択して添加する必要があったが、この油類用添加剤を採用することによって、このような煩雑さも排除することができる。
【0098】
なお、本発明の油類用添加剤は、潤滑油基油だけでなく、燃料油などの他の油類にも添加できる。
燃料油としては、高度に水素化精製された例えば高性能タービン燃料油などが挙げられる。このように高度に水素化精製された燃料油は、その潤滑性能が特に不足する傾向があり、このような燃料油を使用した燃料ポンプは摩耗しやすい。よって、本発明の油類用添加剤の添加が非常に有効となる。油類用添加剤の含有量は、燃料油100質量%中、0.00001〜10質量%が好ましく、さらには0.00001〜5質量%が好ましく、さらには0.00001〜1質量%が好ましい。この範囲内であると、十分な耐摩耗特性を付与することができる。
また、燃料油は、本発明の油類用添加剤の他、各種の添加剤を含有してもよい。
【実施例】
【0099】
実施例中の測定データは、以下の測定機器、測定手法により得た。
(1)核磁気共鳴スペクトル(H−NMR;テトラメチルシランを標準物として使用):GSX−400(400MHz)(日本電子製)
(2)動摩擦係数の測定(摩擦低減性の評価):曽田式振子型摩擦試験機(神鋼造機製)
(3)摩耗痕径の測定(摩耗低減性の評価):シェル式四球摩擦試験機(高千穂精機製)
【0100】
(製造例1)N,N’−ジ(tert−ブトキシカルボニル)シスチン(化合物A)
シスチン48.1g(協和発酵工業製)に1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液400mLを加え、均一に溶解するまで攪拌した。これに1,4−ジオキサン200mLを加え、氷浴下攪拌しながらジ−tert−ブチルカーボネート96.0g(アイバイツ製)を滴下した。滴下終了後、室温に戻し10時間攪拌した。反応後に、反応液から、50℃で1,4−ジオキサンを減圧留去し、目的物を酢酸エチル(協和発酵ケミカル製)で抽出した。さらに、水層を1mol/Lの塩酸でpH2に調製した後、酢酸エチルで再度目的物を抽出した。そして、有機層を蒸留水で洗浄した。上記で得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、50℃で溶媒を減圧留去し化合物A:55.5g(収率:63.0%)を得た。この化合物Aの物性値は以下の通りであった。
【0101】
H−NMR(CDOD,δppm);1.45(s,18H),2.98(m,2H),3.23(m,2H),4.42(m,2H)
【0102】
(製造例2)N,N’−ジ(tert−ブトキシカルボニル)ホモシスチン(化合物B)
ホモシスチン5.00g(東京化成製)を1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液100mLに溶解し、均一に溶解するまで攪拌した。これに1,4−ジオキサン20mLを加え、氷浴下攪拌しながらジ−tert−ブチルカーボネート8.95g(アイバイツ製)を滴下した。滴下終了後、室温に戻し10時間攪拌した。反応後に、反応液から50℃で1,4−ジオキサンを減圧留去し、目的物を酢酸エチル(協和発酵ケミカル製)で抽出した。さらに、水層を1mol/Lの塩酸でpH2に調製した後、酢酸エチルで再度目的物を抽出した。得られた有機層を蒸留水で洗浄した。上記で得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、50℃で溶媒を減圧留去し化合物B:5.53g(収率:64.5%)を得た。この化合物の物性値は以下の通りであった。
【0103】
H−NMR(CDOD,δppm);1.44(s,18H),1.98−2.03(m,2H),2.15−2.30(m,2H),2.65−2.85(m,4H),4.20−4.23(m,2H),4.89(br,4H)
【0104】
[実施例1]シスチンジオレイル(エステル(I−1))
N,N’−ジ(tert−ブトキシカルボニル)シスチン(化合物A)18.5g、4−ジメチルアミノピリジン10.3g(和光純薬製)、およびオレイルアルコール22.6g(和光純薬製)を塩化メチレン100mL(和光純薬製)に溶解し、十分攪拌した後、1−エチル−3−(N,N’−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(アイバイツ製)17.7gを加え室温で3時間、次いで40℃で3時間加熱・攪拌した。反応液を室温まで冷却し、0.5mol/Lの塩酸、蒸留水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、50℃で溶媒を減圧留去し、N,N’−ジ(tert−ブトキシカルボニル)シスチンジオレイル38.2g(収率:96.5%)を得た。
得られたN,N’−ジ(tert−ブトキシカルボニル)シスチンジオレイル15.0gを塩化メチレン150mLに溶解し、均一になるまで攪拌した。これにトリフルオロ酢酸(和光純薬製)を薄層クロマトグラフィーで原料の消失を確認するまで加えた(トリフルオロ酢酸添加量:39.1g)。反応終了後、反応液を蒸留水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、50℃で溶媒を減圧留去し、エステル(I−1):11.6g(収率:98.5%)を得た。これの物性値は以下の通りであった。
【0105】
H−NMR(CDCl,δppm);0.88(t,6H),1.17−1.41(m,44H),1.65(m,4H),1.74(s,4H),1.92−2.05(m,8H),2.91(m,8H),3.14(m,2H),3.80(m,2H),4.14(t,4H),5.28−5.40(m,4H)
元素分析結果;C4280
計算値〈C:68.06%、H:10.88%、N:3.78%、S:8.65%〉
実測値〈C:67.96%、H:10.99%、N:3.75%、S:8.62%〉
【0106】
このようにして得られたエステル(I−1)について、以下の評価を行った。
(1)動摩擦係数の測定(摩擦低減性の評価)
エステル(I−1)を油類用添加剤として、ポリ−α−オレフィン(潤滑油基油A)またはアジピン酸ジ(3,5,5−トリメチルヘキシル)(潤滑油基油B)それぞれに10mmol/kgとなるように加え、潤滑油の試作油を調製した。
ついで、この試作油の40℃、80℃における動摩擦係数を曽田式振子型摩擦試験機(神鋼造機製)により測定した。動摩擦係数は振子の初期振幅、振動させた時の振幅、振動回数から算出した。結果を表1に示す。
(2)摩耗痕径の測定(摩耗低減性の評価)
上記(1)と同様にして試作油を調製し、(ASTM D4172)規定の方法(荷重;40kgf、回転数;1200rpm、時間;60分、温度;75℃)に準じ試験を行い、試験後の摩耗痕径を測定した。試験機には、シェル式四球摩擦試験機(高千穂精機製)を用いた。摩耗痕径は3つの固定球の垂直方向、水平方向全ての平均値とした。結果を表1に示す。
【0107】
[実施例2]シスチンジ−n−オクチル(エステル(I−2))
N,N’−ジ(tert−ブトキシカルボニル)シスチン(化合物A)18.5g、4−ジメチルアミノピリジン10.3g(和光純薬製)、およびn−オクチルアルコール11.2g(和光純薬製)を塩化メチレン100mL(和光純薬製)に溶解し、十分攪拌した後、1−エチル−3−(N,N’−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(アイバイツ製)17.9gを加え、室温、次いで40℃で加熱・攪拌した。反応液を室温まで冷却し、0.5mol/Lの塩酸、蒸留水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、50℃で溶媒を減圧留去し、N,N’−ジ(tert−ブトキシカルボニル)シスチンジ−n−オクチル26.2g(収率:93.6%)を得た。
得られたN,N’−ジ(tert−ブトキシカルボニル)シスチンジ−n−オクチル10.0gを塩化メチレンに溶解し、均一になるまで攪拌した。これにトリフルオロ酢酸(和光純薬製)を、薄層クロマトグラフィーで原料の消失を確認するまで加えた(トリフルオロ酢酸添加量:32.0g)。反応終了後、反応液を蒸留水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、50℃で溶媒を減圧留去し、エステル(I−2):6.4g(収率:91.4%)を得た。これの物性値は以下の通りであった。
【0108】
H−NMR(CDCl,δppm);0.89(t,6H),1.28(m,20H),1.66(m,4H),1.76(s,4H),2.91(m,2H),3.14(m,2H),3.80(m,2H),4.14(t,4H)
元素分析結果;C2244
計算値〈C:56.86%、H:9.54%、N:6.03%、S:13.80%〉
実測値〈C:56.84%、H:9.56%、N:6.02%、S:13.81%〉
【0109】
このようにして得られたエステル(I−2)を油類用添加剤とした以外は実施例1と同様にして試作油を調製し、実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0110】
[実施例3]N,N’−ジアセチルシスチンジオレイル(エステル(I−3))
実施例1で得られたシスチンジオレイル5.3g(エステル(I−1))を塩化メチレン100mL(和光純薬製)に溶解し、十分攪拌した後、室温で無水酢酸4.6g(和光純薬製)を滴下した。反応後、蒸留水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水を用いて反応液が中性になるまで洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、50℃で溶媒を減圧留去し、エステル(I−3):4.1g(収率:70.7%)を得た。これの物性値は以下の通りであった。
【0111】
H−NMR(CDCl,δppm);0.89(t,6H),1.27(m,44H),1.65(m,4H),1.97−2.08(m,14H),3.21(m,4H),4.15(m,4H),4.85(m,2H),5.35(m,4H),6.52(d,2H)
元素分析結果;C4684
計算値〈C:66.94%、H:10.26%、N:3.39%、S:7.77%〉
実測値〈C:66.90%、H:10.30%、N:3.35%、S:7.78%〉
【0112】
このようにして得られたエステル(I−3)を油類用添加剤とした以外は実施例1と同様にして試作油を調製し、実施例1と同様に評価した。ただし、潤滑油基油としては、潤滑油基油Aのみを使用した。結果を表1に示す。
【0113】
[実施例4]N,N’−ジオレオイルシスチンジオレイル(エステル(I−4))
実施例1で得られたシスチンジオレイル4.4g(エステルI−1)およびトリエチルアミン1.8g(和光純薬製)を塩化メチレン50mL(和光純薬製)に溶解し、窒素雰囲気下で十分攪拌した後、オレイン酸クロリド3.6g(東京化成工業製)を滴下し、室温で2時間攪拌後、反応液を蒸留水、0.5mol/Lの塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水を用いて洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、50℃で溶媒を減圧留去し、エステル(I−4):5.0g(収率:65.9%)を得た。これの物性値は以下の通りであった。
【0114】
H−NMR(CDCl,δppm);0.89(t,12H),1.28(m,84H),1.63(m,8H),1.92−2.08(m,16H),2.25(t,4H),3.21(m,4H),4.15(m,4H),4.87(m,2H),5.35(m,8H),6.43(d,2H)
元素分析結果;C78144
計算値〈C:73.76%、H:11.43%、N:2.21%、S:5.09%〉
実測値〈C:73.66%、H:11.55%、N:2.15%、S:5.02%〉
【0115】
このようにして得られたエステル(I−4)を油類用添加剤とした以外は実施例1と同様にして試作油を調製し、実施例1と同様に評価した。ただし、潤滑油基油としては、潤滑油基油Aのみを使用した。結果を表1に示す。
【0116】
[実施例5]シスチンジステアリル(エステル(I−5))
N,N’−ジ(tert−ブトキシカルボニル)シスチン(化合物A)18.5g、4−ジメチルアミノピリジン10.3g(和光純薬製)、およびステアリルアルコール22.8g(和光純薬製)を塩化メチレン100mL(和光純薬製)に溶解し、十分攪拌した後、1−エチル−3−(N,N’−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(アイバイツ製)17.7gを加え室温で3時間、次いで40℃で3時間加熱・攪拌した。反応液を室温まで冷却し、0.5mol/Lの塩酸、蒸留水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、50℃で溶媒を減圧留去し、N,N’−ジ(tert−ブトキシカルボニル)シスチンジステアリル38.0g(収率:95.6%)を得た。
得られたN,N’−ジ(tert−ブトキシカルボニル)シスチンジステアリル15.0gを塩化メチレン150mLに溶解し、均一になるまで攪拌した。これにトリフルオロ酢酸(和光純薬製)を薄層クロマトグラフィーで原料の消失を確認するまで加えた(トリフルオロ酢酸添加量:40.2g)。反応終了後、反応液を蒸留水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、50℃で溶媒を減圧留去し、エステル(I−5):11.4g(収率:96.3%)を得た。これの物性値は以下の通りであった。
【0117】
H−NMR(CDCl,δppm);0.88(t,6H),1.20−1.40(m,60H),1.66(m,4H),1.72(s,4H),2.90(dd,2H),3.15(dd,2H),3.80(dd,2H),4.14(t,4H)
元素分析結果;C4284
計算値〈C:67.69%、H:11.36%、N:3.76%、S:8.61%〉
実測値〈C:67.49%、H:11・34%、N:3.66%、S:8.52%〉
【0118】
このようにして得られたエステル(I−5)を油類用添加剤とした以外は実施例1と同様にして試作油を調製し、実施例1と同様に評価した。結果を表2に示す。
【0119】
[実施例6]N,N’−ジオレオイルシスチンジメチル(エステル(I−6))
N,N’−ジ(tert−ブトキシカルボニル)シスチン(化合物A)4.4gおよび4−ジメチルアミノピリジン2.4g(和光純薬製)をメタノール1.0g(和光純薬製)および塩化メチレン25mL(和光純薬製)に溶解し、十分攪拌した後、1−エチル−3−(N,N’−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(アイバイツ製)4.2gを加え室温で2時間、次いで40℃で3時間加熱・攪拌した。反応液を室温まで冷却し、0.5mol/Lの塩酸、蒸留水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、50℃で溶媒を減圧留去し、N,N’−ジ(tert−ブトキシカルボニル)シスチンジメチル4.2g(収率:89.6%)を得た。
得られたN,N’−ジ(tert−ブトキシカルボニル)シスチンジメチル2.3gを塩化メチレン30mLに溶解し、均一になるまで攪拌した。これにトリフルオロ酢酸(和光純薬製)を薄層クロマトグラフィーで原料の消失を確認するまで加えた(トリフルオロ酢酸添加量:5.7g)。反応終了後、反応液を蒸留水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、50℃で溶媒を減圧留去し、シスチンジメチル:0.6g(収率:25.8%)を得た。
得られたシスチンジメチル0.6gとトリエチルアミン0.7g(和光純薬製)を塩化メチレン20mL(和光純薬製)に溶解し、窒素雰囲気下で十分攪拌した後、オレイン酸クロリド1.4g(東京化成工業製)を滴下し、室温で2時間攪拌後、反応液を蒸留水、0.5mol/Lの塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水を用いて洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、50℃で溶媒を減圧留去し、エステル(I−6):1.7g(収率:89.7%)を得た。これの物性値は以下の通りであった。
【0120】
H−NMR(CDCl,δppm);0.88(t,6H),1.28(m,40H),1.65(m,4H),1.92−2.08(m,8H),2.24(m,4H),3.21(m,4H),3.77(s,6H),4.89(m,2H),5.35(m,4H),6.40(d,2H)
元素分析結果;C4480
計算値〈C:66.29%、H:10.11%、N:3.51%、S:8.04%〉
実測値〈C:66.10%、H:10.20%、N:3.52%、S:7.96%〉
【0121】
このようにして得られたエステル(I−6)を油類用添加剤とした以外は実施例1と同様にして試作油を調製し、実施例1と同様に評価した。結果を表2に示す。
【0122】
[実施例7]ホモシスチンジオレイル(エステル(I−7))
N,N’−ジ(tert−ブトキシカルボニル)ホモシスチン2.50gと4−ジメチルアミノピリジン1.33g(和光純薬製)、オレイルアルコール2.93g(和光純薬製)を塩化メチレン100mL(和光純薬製)に溶解し、十分攪拌した後、1−エチル−3−(N,N’−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(アイバイツ製)2.30gを加え室温で3時間、次いで40℃で3時間加熱・攪拌した。反応液を室温まで冷却し、0.5mol/Lの塩酸、蒸留水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、50℃で溶媒を減圧留去し、N,N’−ジ(tert−ブトキシカルボニル)ホモシスチンジオレイル4.91g(収率:89.8%)を得た。
得られたN,N’−ジ(tert−ブトキシカルボニル)ホモシスチンジオレイル1.02gを塩化メチレン30mLに溶解し、均一になるまで攪拌した。これにトリフルオロ酢酸(和光純薬製)を薄層クロマトグラフィーで原料の消失を確認するまで加えた(トリフルオロ酢酸添加量:6.20g)。反応終了後、反応液を蒸留水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、50℃で溶媒を減圧留去し、エステル(I−7):0.67g(収率:85.4%)を得た。これの物性値は以下の通りであった。
【0123】
H−NMR(CDCl,δppm);0.88(t,6H),1.05−1.40(m,44H),1.51−1.70(m,8H),1.81−1.92(m,2H),1.92−2.05(m,8H),2.05−2.20(m,2H),2.75−2.85(m,4H),3.50−3.55(m,2H),4.05−4.10(t,4H),5.25−5.40(m,4H)
元素分析結果;C4484
計算値〈C:68.70%、H:11.01%、N:3.64%、S:8.34%〉
実測値〈C:68.55%、H:11.14%、N:3.55%、S:8.28%〉
【0124】
このようにして得られたエステル(I−7)を油類用添加剤とした以外は実施例1と同様にして試作油を調製し、実施例1と同様に評価した。結果を表2に示す。
【0125】
[実施例8]シスチンジオレイルメタンスルホン酸塩(エステル(I−11))
実施例1で得られたシスチンジオレイル2.8g(エステルI−1)を塩化メチレン30mL(和光純薬製)に溶解し、窒素雰囲気下で十分攪拌した後、メタンスルホン酸1.7g(関東化学製)を滴下し、室温で1時間攪拌後、反応液を蒸留水を用いて洗浄した。有機層の溶媒を50℃で減圧留去後、エステル(I−11):1.1g(収率:39.3%)を得た。これの物性値は以下の通りであった。
【0126】
H−NMR(CDOD,δppm);0.90(t,6H),1.15−1.48(m,44H),1.73(tt,4H),1.94−2.10(m,8H),2.71(s,6H),3.29−3.42(m,4H),4.29(t,4H),4.37−4.52(m,2H),5.30−5.41(m,4H)
元素分析結果;C448810
計算値〈C:56.62%、H:9.50%、N:3.00%、S:13.74%〉
実測値〈C:56.44%、H:9.55%、N:2.87%、S:13.54%〉
【0127】
このようにして得られたエステル(I−11)を油類用添加剤とした以外は実施例1と同様にして試作油を調製し、実施例1と同様に評価した。結果を表3に示す。
【0128】
(比較例1)3,3’−ジチオジプロピオン酸ジオレイル(エステル(8))
3,3’−ジチオジプロピオン酸5.0g(和光純薬製)、4−ジメチルアミノピリジン5.8g(和光純薬製)、およびオレイルアルコール12.8g(和光純薬製)を塩化メチレン100mL(和光純薬製)に溶解し、十分攪拌した後、1−エチル−3−(N,N’−ジメチルアミノ)プロピルカルボジイミド(アイバイツ製)10.0gを加え室温、次いで40℃で加熱・攪拌した。反応液を室温まで冷却し、0.5mol/Lの塩酸、蒸留水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、50℃で溶媒を減圧留去し、エステル(8):15.1g(収率:89.3%)を得た。これの物性値は以下の通りであった。
【0129】
H−NMR(CDCl,δppm);0.88(t,6H),1.27(m,44H),1.63(m,4H),2.00(m,8H),2.73(t,4H),2.92(t,4H),4.09(t,4H),5.34(m,4H)
【0130】
このようにして得られたエステル(8)を油類用添加剤とした以外は実施例1と同様にして試作油を調製し、実施例1と同様に評価した。結果を表4に示す。
【0131】
(比較例2)3,3’−チオジプロピオン酸ジオレイル(エステル(9))の合成
3,3’−チオジプロピオン酸5.0g(和光純薬製)と4−ジメチルアミノピリジン6.9g(和光純薬製)、オレイルアルコール15.1g(和光純薬製)を塩化メチレン100mL(和光純薬製)に溶解し、十分攪拌した後、1−エチル−3−(N,N’−ジメチルアミノ)プロピルカルボジイミド(アイバイツ製)11.8gを加え室温、次いで40℃で加熱・攪拌した。反応液を室温まで冷却し、0.5mol/Lの塩酸、蒸留水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、50℃で溶媒を減圧留去し、エステル(9):17.3g(収率:90.8%)を得た。これの物性値は以下の通りであった。
【0132】
H−NMR(CDCl,δppm);0.88(t,6H),1.27(m,44H),1.62(m,4H),2.02(m,8H)、2.60(t,4H),2.80(t,4H),4.09(t,4H),5.34(m,4H)
【0133】
このようにして得られたエステル(9)を油類用添加剤とした以外は実施例1と同様にして試作油を調製し、実施例1と同様に評価した。結果を表4に示す。
【0134】
(比較例3)スベリン酸ジオレイル(エステル(10))の合成
スベリン酸5.0g(和光純薬製)、4−ジメチルアミノピリジン7.0g(和光純薬製)、およびオレイルアルコール15.4g(和光純薬製)を塩化メチレン100mL(和光純薬製)に溶解し、十分攪拌した後、1−エチル−3−(N,N’−ジメチルアミノ)プロピルカルボジイミド(アイバイツ製)12.1gを加え室温、次いで40℃で加熱・攪拌した。反応液を室温まで冷却し、0.5mol/Lの塩酸、蒸留水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、50℃で溶媒を減圧留去し、エステル(10):18.1g(収率:93.2%)を得た。これの物性値は以下の通りであった。
【0135】
H−NMR(CDCl,δppm);0.88(t,6H),1.26−1.34(m,48H),1.62(m,8H),2.02(m,8H)、2.29(t,4H),4.05(t,4H),5.35(m,4H)
【0136】
このようにして得られたエステル(10)を油類用添加剤とした以外は実施例1と同様にして試作油を調製し、実施例1と同様に評価した。結果を表4に示す。
【0137】
(比較例4)
東京化成製のジベンジルジスルフィド(DBDS)を油類用添加剤とした以外は実施例1と同様にして試作油を調製し、実施例1と同様に評価した。結果を表5に示す。
【0138】
【表1】


【0139】
【表2】


【0140】
【表3】


【0141】
【表4】


【0142】
【表5】


【0143】
表1〜3から明らかなように、各実施例によれば、使用する潤滑油基油の種類、極性にかかわらず、耐摩耗特性のいずれもがバランスよく優れた試作油を提供することができた。一方、比較例1〜3の試作油では、特に摩耗低減性が不十分な傾向があり、比較例4の試作油では、耐摩耗特性が共に劣る結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0144】
本発明のエステルからなる油類用添加剤によれば、金属分およびリン分を含有せず、しかも油類に対して耐摩耗特性(摩擦低減性と摩耗低減性)を付与することができる。よって、本発明によれば、耐摩耗特性の良好な潤滑油、燃料油などの油類を提供することができる。
【出願人】 【識別番号】000162607
【氏名又は名称】協和発酵ケミカル株式会社
【識別番号】504165591
【氏名又は名称】国立大学法人岩手大学
【出願日】 平成19年5月8日(2007.5.8)
【代理人】 【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武

【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男

【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆

【識別番号】100101465
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 正和


【公開番号】 特開2008−169366(P2008−169366A)
【公開日】 平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願番号】 特願2007−123388(P2007−123388)