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【発明の名称】 潤滑剤組成物
【発明者】 【氏名】尾崎 幸洋

【氏名】沼澤 浩一

【氏名】加藤 哲也

【要約】 【課題】耐熱性、機械的安定性、耐水性、防錆性、耐荷重性および難燃性に優れた高性能潤滑剤組成物を提供する。

【解決手段】鉱油および/または合成油の基油に、全組成物に対して1〜70質量%の第三リン酸カルシウムを加える。更にこれに有機酸誘導体、有機アミン誘導体、硫化脂肪酸誘導体、二塩基酸塩、ナフテン酸塩、界面活性剤の1つ又はこれらの組み合わせのグリース構造安定化剤を全組成物に対して0.1〜18質量%加え、グリース構造を安定化させた半固体状の潤滑剤組成物を得る。これにより耐荷重性、耐摩耗性を向上させ、潤滑剤組成物中に水が混入したときにもグリース状態を維持できる。また、他のグリース増ちょう剤の併用により更に高温軸受寿命、摩擦係数、耐摩耗性等の性能向上を図ることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉱油および/または合成油の基油と、全組成物に対して1〜70質量%の第三リン酸カルシウムと、グリース状態を維持することができるグリース構造安定化剤を含む潤滑剤組成物。
【請求項2】
上記グリース構造安定化剤が、有機酸誘導体、有機アミン誘導体、硫化脂肪酸誘導体、二塩基酸塩、ナフテン酸塩、界面活性剤の1つ又はこれらの組み合わせである請求項1に記載の潤滑剤組成物。
【請求項3】
上記グリース構造安定化剤は、潤滑剤組成物中に水が混入したときにもグリース状態を維持することができる請求項1または2に記載の潤滑剤組成物。
【請求項4】
上記グリース構造安定化剤の含有量が全組成物に対して0.1〜18質量%である請求項1〜3のいずれかに記載の潤滑剤組成物。
【請求項5】
上記有機酸誘導体が、コハク酸誘導体、アスパラギン酸誘導体、ザルコシン酸誘導体、フェノキシ酢酸誘導体の1つ又はそれらの組み合わせである請求項2〜4のいずれかに記載の潤滑剤組成物。
【請求項6】
上記有機アミン誘導体が、ジエタノールアミン類、モノアルキル一級アミン、モノアルケニル一級アミン、アルキルジアミン・ジ脂肪酸塩、アルケニルジアミン・ジ脂肪酸塩、アルキルジアミン、アルケニルジアミンの1つ又はそれらの組み合わせである請求項2〜4のいずれかに記載の潤滑剤組成物。
【請求項7】
上記硫化脂肪酸誘導体が、硫化オレイン酸である請求項2〜4のいずれかに記載の潤滑剤組成物。
【請求項8】
上記二塩基酸塩が、脂肪族二塩基酸のアルカリ金属塩又はピペラジン塩である請求項2〜4のいずれかに記載の潤滑剤組成物。
【請求項9】
上記脂肪族二塩基酸のアルカリ金属塩が、セバシン酸ナトリウムである請求項8に記載の潤滑剤組成物。
【請求項10】
上記ナフテン酸塩が、ナフテン酸カルシウム又はナフテン酸亜鉛である請求項2〜4のいずれかに記載の潤滑剤組成物。
【請求項11】
上記界面活性剤が非イオン性界面活性剤である請求項2〜4のいずれかに記載の潤滑剤組成物。
【請求項12】
上記非イオン性界面活性剤が、脂肪酸エステル系のグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、しょ糖脂肪酸エステルの1つ又はそれらの組み合わせである請求項11に記載の潤滑剤組成物。
【請求項13】
上記脂肪酸エステル系の界面活性剤の脂肪酸の炭素数が8〜22である請求項12に記載の潤滑剤組成物。
【請求項14】
ウレア化合物、アルカリ金属石けん、アルカリ金属複合石けん、アルカリ土類金属石けん、アルカリ土類金属複合石けん、アルミニウム石けん、アルミニウム複合石けん、テレフタラメート金属塩、クレイ、ポリテトラフルオロエチレンのいずれかが他の増ちょう剤として更に含まれている請求項1〜13のいずれかに記載の潤滑剤組成物。
【請求項15】
上記他の増ちょう剤が、全組成物に対して20質量%以下の量で含まれている請求項14に記載の潤滑剤組成物。
【請求項16】
鉱油および/または合成油の基油と、第三リン酸カルシウムと他の増ちょう剤との混合物を全組成物に対して3〜70質量%と、グリース構造安定化剤を全組成物に対して0.1〜18質量%含有する潤滑剤組成物。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、改良された潤滑剤組成物、特に耐熱性、機械的安定性、耐荷重性、耐水性、防錆性および難燃性に優れたグリース構造を有する潤滑剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車工業などにおいて、高性能化と共に、小型化・軽量化に伴い、等速ジョイント、軸受、歯車などに使用される潤滑剤に、耐熱性、機械的安定性、耐荷重性および防錆性等の高品質化が強く要望されてきており、そうしたニーズを満たすために、増ちょう剤として第三リン酸カルシウムを使用したグリース組成物が開示されている(特許文献1)。
この第三リン酸カルシウムを増ちょう剤として使用したグリース組成物は、滴点が高く、耐熱性に優れ、また常温から高温にいたるまでの機械的安定性および耐荷重性にも優れた性能を示し、現状において好ましい潤滑剤組成物の一つであると考えられている。
【0003】
このグリース組成物は、水と接触しない環境においては、所期の効果を発揮することができるが、製紙工業、製鉄・製鋼設備機械などのような多量の水と接触し、水が混入するような環境下では、基油と増ちょう剤である粉体の第三リン酸カルシウムが分離してグリース構造が破壊されてしまい、グリースとしての機能が失われてしまうために、このような環境下で使用することができなかった。また、水が混入すると激しい錆を発生させるという現象も引き起こしていた。
【0004】
化学工場、焼付け塗装工場、製鉄・製鋼工場では、製造工程、作業工程が高温下にあると共に、製造および作業工程中に火花が散ったり、高温に加熱された飛散スケールがグリースと接触して着火する危険性があり、こうした火災防止のためにできるだけ難燃性に優れた潤滑グリースが望まれている。
【特許文献1】特開平7−197072号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、第三リン酸カルシウムを増ちょう剤として使用した組成物のグリース構造を、安定にしようとするものである。
また、その組成物に水が混入した場合にも、構造が破壊されることなく、グリースとしての本来の機能を充分に発揮させようとするものである。
【0006】
更に、例えば、最も苛酷な潤滑条件下にある製鉄・製鋼設備機械用グリースは、潤滑性の他に「高熱」と「多水」と「高荷重」という三要素に対応する必要があり、問題点として取り上げられる場合が多く、給脂配管内やロール軸給脂孔内でのグリース固着、炭化、軸受での軟化流出や錆の発生を起こさないことが重要となっている。
そして、極度の高温によるグリースの硬化を防止し配管内を閉塞しないこと、耐水性不足によるグリースの軸受外への軟化流出や錆の発生を抑制すること等が要求される。また、高温に加熱された飛散スケールによって床に垂れた潤滑グリースに着火する危険性もあり、火災防止のためにできるだけ難燃性に優れた潤滑剤が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、鉱油および/または合成油の基油に第三リン酸カルシウムを加えて作ったグリースに、グリース構造安定化剤を添加することによって、耐熱性、機械的安定性および耐荷重性に優れた潤滑剤組成物を得ることができる。
また、このグリース組成物に水が混入した場合にも、そのグリース構造が破壊されることなく、グリースとしての機能を充分に発揮させることができ、耐熱性、機械的安定性および耐荷重性に優れ、同時に耐水性および防錆性のある潤滑剤組成物を得ることができる。
【0008】
上記第三リン酸カルシウムは、潤滑剤組成物の全組成物に対して1〜70質量%の割合で使用され、基油と混合することによりグリース化することができる。
上記グリース構造安定化剤としては、有機酸誘導体、有機アミン誘導体、硫化脂肪酸誘導体、二塩基酸塩、ナフテン酸塩、界面活性剤が好適であり、これらの1つ又はこれらの組み合わせで用いることができる。
このグリース構造安定化剤は、潤滑剤組成物の全組成物に対して0.1〜18質量%の割合で使用される。
【0009】
また、上記第三リン酸カルシウムと共に、ウレア化合物、アルカリ金属石けん、アルカリ金属複合石けん、アルカリ土類金属石けん、アルカリ土類金属複合石けん、アルミニウム石けん、アルミニウム複合石けん、テレフタラメート金属塩、クレイ、ポリテトラフルオロエチレンなどの他の増ちょう剤を併用することにより、軸受寿命延長や摩擦係数を下げるなどの効果が得られ、グリースの潤滑性能を向上させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、上記したようにグリース構造を安定的に維持して耐熱性、機械的安定性、耐荷重性および難燃性に優れた特長を有し、また、このグリース組成物に水が混入した場合にもそのグリース構造が破壊されず、更に耐水性、防錆性に富んだ潤滑剤組成物とすることができる。そして、高温下での軸受寿命を大幅に向上させることができ、かつ、低摩擦グリースを得ることができる。
また、向上したグリース性能により、高熱を受ける環境で使用できると共に、製紙工業および製鉄・製鋼工業設備のように水と接触する環境においても錆を発生させることなく、有効に使用することが可能となった。
更に、低摩擦化および耐久性の向上により、自動車の等速ジョイント(CVJ)や電動パワーステアリング(EPS)などの用途にも有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の潤滑剤組成物における基油には、通常の潤滑油に使用される粘度範囲(100℃において2〜40mm2/s)の鉱油、合成油、これらの混合油を適宜使用することができる。
特に、API(American Petroleum Institute;米国石油協会)基油カテゴリーでグループ1、グループ2、グループ3、グループ4などに属する基油を、単独または混合物として使用することができる。
【0012】
グループ1基油には、例えば、原油を常圧蒸留して得られる潤滑油留分に対して、溶剤精製、水素化精製、脱ろうなどの精製手段を適宜組み合わせて適用することにより得られるパラフィン系鉱油がある。
【0013】
グループ2基油には、例えば、原油を常圧蒸留して得られる潤滑油留分に対して、水素化分解、脱ろうなどの精製手段を適宜組み合わせて適用することにより得られたパラフィン系鉱油がある。ガルフ社法などの水素化精製法により精製されたグループ2基油は、全イオウ分が10ppm未満、アロマ分が5%以下であり、本発明において好適に用いることができる。
【0014】
グループ3基油およびグループ2プラス基油には、例えば、原油を常圧蒸留して得られる潤滑油留分に対して、高度水素化精製により製造されるパラフィン系鉱油や、脱ろうプロセスにて生成されるワックスをイソパラフィンに変換・脱ろうするISODEWAXプロセスにより精製された基油や、モービルWAX異性化プロセスにより精製された基油があり、これらも本発明において好適に用いることができる。
【0015】
合成油としては、例えば、ポリオレフィン、セバシン酸ジオクチルの如き二塩基酸のジエステル、ポリオールエステル、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、エステル、ポリオキシアルキレングリコール、ポリオキシアルキレングリコールエステル、ポリオキシアルキレングリコールエーテル、ポリフェニルエーテル、ジアルキルジフェニルエーテル、含フッ素化合物(パーフルオロポリエーテル、フッ素化ポリオレフィン等)、シリコーンなどが挙げられる。
【0016】
上記ポリオレフィンには、各種オレフィンの重合物、又はこれらの水素化物が含まれる。オレフィンとしては任意のものが用いられるが、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、炭素数5以上のα−オレフィンなどが挙げられる。ポリオレフィンの製造にあたっては、上記オレフィンの1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いても良い。特にポリα−オレフィン(PAO)と呼ばれているポリオレフィンが好適であり、これはグループ4基油である。
【0017】
天然ガスの液体燃料化技術のフィッシャートロプッシュ法により合成されたGTL(ガストゥリキッド)は、原油から精製された鉱油基油と比較して、硫黄分や芳香族分が極めて低く、パラフィン構成比率が極めて高いため、酸化安定性に優れ、蒸発損失も非常に小さいため、本発明の基油として好適に用いることができる。
【0018】
本発明に使用する第三リン酸カルシウムは、Ca(POを使用することができるが、一般的には〔Ca(PO・Ca(OH)で表わされるヒドロキシアパタイト組成の化学構造を有しているものを用いると良い。以下、本発明において含有量を表示する場合には〔Ca(PO・Ca(OH)に基づいた質量で表示するものとする。
【0019】
この第三リン酸カルシウムは、上記基油中に加えられるが、潤滑剤組成物の全組成物に対して1〜70質量%、好ましくは4〜65質量%、更に好ましくは8〜60質量%を配合すると良い。第三リン酸カルシウムの配合量が1質量%未満の場合には、後記するグリース構造安定化剤の添加によって潤滑剤組成物が軟化する場合があり、その際には適度な半固体状の硬さを維持することができない。また、配合量が70質量%を越える場合には、潤滑剤組成物が固化して滑らかな半固体状とはならず、製造が困難である。
【0020】
上記第三リン酸カルシウムと共にグリース構造安定化剤が使用される。本発明におけるグリース構造安定化剤は、上記基油に第三リン酸カルシウムを増ちょう剤として加えることによって製造されるグリースの構造を安定に維持する作用を有するものである。
こうしたグリース構造安定化剤には、有機酸誘導体、有機アミン誘導体、硫化脂肪酸誘導体、二塩基酸塩、ナフテン酸塩、界面活性剤などがある。
【0021】
上記有機酸誘導体としては、コハク酸誘導体、アスパラギン酸誘導体、ザルコシン酸誘導体、フェノキシ酢酸誘導体などがある。
上記コハク酸誘導体は、下記の一般式(1)に示すものである。
【化1】


【0022】
上記一般式1中、XおよびXは各々水素又は炭素数3〜6の同一または異なったアルキル基、アルケニル基、若しくはヒドロキシアルキル基であり、好ましくは、水素原子、1−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、2−メチルプロピル基、ターシャリーブチル基である。Xは炭素数1〜30のアルキル基若しくはアルケニル基、エーテル結合を有するアルキル基、またはヒドロキシアルキル基である。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ドデシレン基、トリデシル基、テトラデシル基、テトラデシレン基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、オクタデシレン基、エイコシル基、ドコシル基、アルコキシプロピル基、3−(C〜C18)ヒドロカーボンオキシ(C〜C)アルキル基、アルコキシプロピル基、3−(C〜C18)ヒドロカーボンオキシ(C〜C)アルキル基、更に好ましくは、テトライソプロピル基、オレイル基、シクロヘキシルオキシプロピル基、3−オクチルオキシプロピル基、3−イソオクチルオキシプロピル基、3−デシルオキシプロピル基、3−イソデシルオキシプロピル基、3−(C12〜C)アルコキシプロピル基が良い。またこれらの化合物のアミン化物でも良い。
上記コハク酸誘導体は、JIS K2501で定める酸価が10〜300mgKOH/gのもの、好ましくは30〜200mgKOH/gのものが良い。
【0023】
上記アスパラギン酸誘導体としては、下記の一般式(2)に示すものがある。
【化2】


【0024】
上記一般式2中、XおよびXは各々水素又は炭素数3〜6の同一または異なったアルキル基、アルケニル基、若しくはヒドロキシアルキル基であり、好ましくはそれぞれが2−メチルプロピル基やターシャリーブチル基が良い。Xは炭素数1〜30のアルキル基若しくはアルケニル基、エーテル結合を有するアルキル基、またはヒドロキシアルキル基である。例えば、オクタデシル基、アルコキシプロピル基、3−(C〜C18)ヒドロカーボンオキシ(C〜C)アルキル基、更に好ましくは、シクロヘキシルオキシプロピル基、3−オクチルオキシプロピル基、3−イソオクチルオキシプロピル基、3−デシルオキシプロピル基、3−イソデシルオキシプロピル基、3−(C12〜C16)アルコキシプロピル基が良い。Xは炭素数1〜30の飽和若しくは不飽和カルボン酸基、または炭素数1〜30のアルキル基、アルケニル基若しくはヒドロキシアルキル基である。例えばプロピオン酸基や、プロピオニル酸基が良い。
【0025】
こうしたアスパラギン酸誘導体のより好ましい例として、例えば、N−1オキソ−3カルボニルオキシプロピル−N−3オクチルオキシプロピル−アスパラギン酸ジイソブチルエステル、N−1オキソ−3カルボニルオキシプロピル−N−3デシルオキシプロピル−アスパラギン酸ジイソブチルエステル、N−1オキソ−3カルボニルオキシプロピル−N−3ドデシルオキシプロピル−アスパラギン酸ジイソブチルエステル、N−1オキソ−3カルボニルオキシプロピル−N−3テトラデシルオキシプロピル−アスパラギン酸ジイソブチルエステル等があり、それらの混合物(JIS K2501法による酸価:100mgKOH/g)は下記の式(3)に示されるもので、好ましいものである。
【化3】


【0026】
上記ザルコシン酸誘導体はグリシンの誘導体であり、下記の一般式(4)に示すものがある。
【化4】


【0027】
上記式4中、Rは炭素数1〜30の直鎖状若しくは分枝状のアルキル基またはアルケニル基であり、例えば、特に好ましく用いられるものとして、(Z)-N-メチル-N-(1-オキソ-9-オクタデセニル)グリシンが挙げられ、以下の式(5)で示される。
【化5】


【0028】
フェノキシ酢酸誘導体としては、下記の一般式(6)に示すものがある。
(化6)
-C-O-CH-COOH (6)

上記式6中、Rは炭素数4〜18の直鎖または分岐でも良いアルキル基もしくはアルケニル基であり、例えば、特にRがC9のノニル基である4−ノニルフェノキシ酢酸が好ましい。
4−ノニルフェノキシ酢酸は下記の式(7)で示される。
(化7)
919-C-O-CH-COOH (7)

また、上記した有機酸誘導体は、これを1つまたはそれ以上を組み合わせて使用することができる。
【0029】
上記した有機アミン誘導体には、ジエタノールアミン類、モノアルキル一級アミン、モノアルケニル一級アミン、アルキルジアミン・ジ脂肪酸塩、アルケニルジアミン・ジ脂肪酸塩、アルキルジアミン、アルケニルジアミンなどが挙げられる。
【0030】
上記ジエタノールアミン類としては、下記の一般式(8)に示すものがある。
(化8)
10-N-(X11 (8)

上記式8中、X10は炭素数1〜30のアルキル基若しくはアルケニル基であり、好ましくはX10の炭素数は1〜20が、より好ましくは1〜8もしくは12〜18が良い。X11は炭素数1〜20のヒドロキシアルキル基であり、好ましくはX11の炭素数が1〜8もしくは12〜18が良い。
【0031】
こうしたジエタノールアミン類としては、例えば、N−オクチルジエタノールアミン、N−ノニルジエタノールアミン、N−デシルジエタノールアミン、N−ウンデシルジエタノールアミン、N−ラウリルジエタノールアミン、N−トリデシルジエタノールアミン、N−ミリスチルジエタノールアミン、N−ペンタデシルジエタノールアミン、N−パルミチルジエタノールアミン、N−ヘプタデシルジエタノールアミン、N−オレイルジエタノールアミン、N−ステアリルジエタノールアミン、N−イソステアリルジエタノールアミン、N−ノナデシルジエタノールアミン、N−エイコシルジエタノールアミン、N−ココナットジエタノールアミン、N−牛脂ジエタノールアミン、N−水素化牛脂ジエタノールアミン、N−大豆ジエタノールアミン等のN−アルキルジエタノールアミン類、またN−オクチルジプロパノールアミン、N−ノニルジプロパノールアミン、N−デシルジプロパノールアミン、N−ウンデシルジプロパノールアミン、N−ラウリルジプロパノールアミン、N−トリデシルジプロパノールアミン、N−ミリスチルジプロパノールアミン、N−ペンタデシルジプロパノールアミン、N−パルミチルジプロパノールアミン、N−ヘプタデシルジプロパノールアミン、N−オレイルジプロパノールアミン、N−ステアリルジプロパノールアミン、N−イソステアリルジプロパノールアミン、N−ノナデシルジプロパノールアミン、N−エイコシルジプロパノールアミン、N−ココナットジプロパノールアミン、N−牛脂ジプロパノールアミン、N−水素化牛脂ジプロパノールアミン、N−大豆ジプロパノールアミン等のN−アルキルジプロパノールアミン類がある。
【0032】
モノアルキル一級アミン、モノアルケニル一級アミンとしては、下記の一般式(9)に示すものがある。
(化9)
N-X12 (9)

上記式9中、X12は炭素数1〜30のアルキル基、アルケニル基である。例えば、ラウリルアミン、ココナットアミン、n−トリデシルアミン、ミリスチルアミン、n−ペンタデシルアミン、n−パルミチルアミン、n−ヘプタデシルアミン、n−ステアリルアミン、イソステアリルアミン、n−ノナデシルアミン、n−エイコシルアミン、n−ヘンエイコシルアミン、n−ドコシルアミン、n−トリコシルアミン、n−ペンタコシルアミン、オレイルアミン、牛脂アミン、水素化牛脂アミン、大豆アミン等が挙げられる。好ましくはX12の炭素数は8〜24、更に好ましくは12〜18が良い。またX12は直鎖脂肪族でも、分岐脂肪族でも、三級アルキル基でも良い。
【0033】
上記のアルキルジアミン・ジ脂肪酸塩、アルケニルジアミン・ジ脂肪酸塩としては、例えば、N-アルキル(C14〜C18)トリメチレンジアミンオレイン酸塩(牛脂ジアミンオレイン酸塩)、N-アルキル(C〜C18)-1,3-ジアミノプロパン・アジピン酸塩(ココジアミンアジピン酸塩)等が挙げられる。
【0034】
上記のアルキルジアミン、アルケニルジアミンとしては、下記の一般式(10)に示すものがある。
(化10)
13-NH-X14-NH (10)

【0035】
上記一般式10中、X13は炭素数1〜30のアルキル基若しくはアルケニル基である。好ましくはX13の炭素数は8〜24、更に好ましくは12〜18が良い。X14は炭素数1〜12のアルキレン基である。好ましくはX14の炭素数は1〜8、更に好ましくは2〜4が良い。
こうしたものとして、例えば、N−オクチル−1,2−エチレンジアミン、N−ノニル−1,2−エチレンジアミン、N−デシル−1,2−エチレンジアミン、N−ウンデシル−1,2−エチレンジアミン、N−ラウリル−1,2−エチレンジアミン、N−トリデシル−1,2−エチレンジアミン、N−ミリスチル−1,2−エチレンジアミン、N−ペンタデシル−1,2−エチレンジアミン、N−パルミチル−1,2−エチレンジアミン、N−ヘプタデシル−1,2−エチレンジアミン、N−オレイル−1,2−エチレンジアミン、N−ステアリル−1,2−エチレンジアミン、N−イソステアリル−1,2−エチレンジアミン、N−ノナデシル−1,2−エチレンジアミン、N−エイコシル−1,2−エチレンジアミン、N−ココナット−1,2−エチレンジアミン、N−牛脂−1,2−エチレンジアミン、N−水素化牛脂−1,2−エチレンジアミン、N−大豆−1,2−エチレンジアミン、等のエチレンジアミン類がある。
【0036】
また、N−オクチル−1,3−プロピレンジアミン、N−ノニル−1,3−プロピレンジアミン、N−デシル−1,3−プロピレンジアミン、N−ウンデシル−1,3−プロピレンジアミン、N−ラウリル−1,3−プロピレンジアミン、N−トリデシル−1,3−プロピレンジアミン、N−ミリスチル−1,3−プロピレンジアミン、N−ペンタデシル−1,3−プロピレンジアミン、N−パルミチル−1,3−プロピレンジアミン、N−ヘプタデシル−1,3−プロピレンジアミン、N−オレイル−1,3−プロピレンジアミン、N−ステアリル−1,3−プロピレンジアミン、N−イソステアリル−1,3−プロピレンジアミン、N−ノナデシル−1,3−プロピレンジアミン、N−エイコシル−1,3−プロピレンジアミン、N−ココナット−1,3−プロピレンジアミン、N−牛脂−1,3−プロピレンジアミン、N−水素化牛脂−1,3−プロピレンジアミン、N−大豆−1,3−プロピレンジアミン、等のプロピレンジアミン類がある。
【0037】
更に、N−オクチル−1,4−ブチレンジアミン、N−ノニル−1,4−ブチレンジアミン、N−デシル−1,4−ブチレンジアミン、N−ウンデシル−1,4−ブチレンジアミン、N−ラウリル−1,4−ブチレンジアミン、N−トリデシル−1,4−ブチレンジアミン、N−ミリスチル−1,4−ブチレンジアミン、N−ペンタデシル−1,4−ブチレンジアミン、N−パルミチル−1,4−ブチレンジアミン、N−ヘプタデシル−1,4−ブチレンジアミン、N−オレイル−1,4−ブチレンジアミン、N−ステアリル−1,4−ブチレンジアミン、N−イソステアリル−1,4−ブチレンジアミン、N−ノナデシル−1,4−ブチレンジアミン、N−エイコシル−1,4−ブチレンジアミン、N−ココナット−1,4−ブチレンジアミン、N−牛脂−1,4−ブチレンジアミン、N−水素化牛脂−1,4−ブチレンジアミン、N−大豆−1,4−ブチレンジアミン、等のブチレンジアミン類がある。
上記した有機アミン誘導体は、それらを適宜に組み合わせて用いることができる。
【0038】
上記の硫化脂肪酸誘導体としては、動植物油或いは脂肪酸を硫化したものであって、炭素数8〜22の脂肪酸が用いられる。
硫化脂肪酸誘導体としての硫化油脂は、動植物油の硫化物を指し、例えば硫化ラード、硫化なたね油、硫化ひまし油、硫化大豆油、硫化米ぬか油などがある。
また、硫化オレイン酸等の硫化脂肪酸、硫化オレイン酸メチル,硫化オレイン酸オクチル等の硫化エステル、各種鉱油に単体硫黄を溶解させた硫化鉱油などが挙げられる。
このような硫化脂肪酸誘導体しては、硫黄分を5〜30質量%を含有するものが好適である。
好ましくは、上記硫化オレイン酸等の硫化脂肪酸、硫化オレイン酸メチル,硫化オレイン酸オクチル等の硫化エステル、各種鉱油に単体硫黄を溶解させた硫化鉱油などが挙げられ、中でも硫化オレイン酸が特に好ましい。
【0039】
上記した二塩基酸塩としては、炭素数4〜12程度の脂肪族二塩基酸の塩があり、脂肪族二塩基酸としてはアジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸等が挙げられる。
また、塩としてはアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、コバルト塩、マンガン塩、鉛塩、亜鉛塩、銅塩、鉄塩、ジルコニウム塩、アルミニウム塩、その他希土類塩、ピペラジン塩などが挙げられる。
これらの二塩基酸塩の中で、好ましくはアルカリ金属塩、ピペラジン塩があり、例えばセバシン酸ナトリウム、スベリン酸ナトリウム、アジピン酸ナトリウム、セバシン酸ピペラジンなどがより好ましく用いられる。
【0040】
上記ナフテン酸塩としては、塩を作る金属としてカルシウム、鉛、亜鉛、アルミニウム、銅、鉄、コバルト、マンガン、ジルコニウムなどがあるが、具体的には、例えば、ナフテン酸カルシウム、ナフテン酸亜鉛等がある。
【0041】
上記界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤が好ましく、特に脂肪酸エステル系の界面活性剤を用いることができる。
この脂肪酸エステル系の界面活性剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、しょ糖脂肪酸エステル等がある。これらに使用される脂肪酸としては、炭素数が12〜22の飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸が好ましく、これらの脂肪酸を単独で若しくは混合して使用することができる。
上記グリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、ステアリン酸モノグリセライド、オレイン酸モノグリセライド、ステアリン酸およびオレイン酸のモノ・ジグリセライド等がある。
また、ソルビタン脂肪酸エステルとしては、例えば、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリステアレート、ソルビタントリオレエート等が挙げられる。
そして、しょ糖脂肪酸エステルとしては、例えば、しょ糖パルミチン酸エステル、しょ糖ステアリン酸エステルなどがある。
【0042】
上記したグリース構造安定化剤は、単独で又は適宜に組み合わせて用いることができる。 また、その使用量は、潤滑剤組成物の全組成物に対して0.1〜18質量%、好ましくは1〜15質量%、更に好ましくは2〜10質量%使用される。こうしたグリース構造安定化剤の全組成物中の含有量として、0.1質量%未満の場合にはグリース構造安定化の効果が認められず、また18質量%より多すぎた場合に効果は同じか、むしろ効果が得られない場合がある。
上記したグリース構造安定化剤として界面活性剤を使用する場合、潤滑剤組成物の全組成物に対して好ましくは2〜15質量%、更に好ましくは3〜10質量%使用すると良い。
【0043】
本発明の潤滑剤組成物を製造する場合、常法により、上記基油に第三リン酸カルシウムとグリース構造安定化剤を加え、適宜に加熱しながら攪拌し、その後に三本ロールなどを使用してよく混捏することによって、所望の潤滑剤組成物を得ることができる。
【0044】
第三リン酸カルシウムは水にほとんど不溶であり、基油と第三リン酸カルシウムだけで構成されるグリースでは、水と混合するとグリース構造が約30分程度で破壊されてグリース状態を維持することができない。
本発明における潤滑剤組成物では、これに上記したグリース構造安定化剤を添加することによって、グリースに水が加わっても、50〜60容量%の水はある程度安定性を持って細かく分散状態を保ちながら保持することができ、これにより半固体状のグリース構造が破壊されることなくグリース状態を維持しているものと推測される。
【0045】
上記した増ちょう剤として使用されている第三リン酸カルシウムと共に、他の増ちょう剤を併用することができる。こうした他の増ちょう剤としては、ウレア化合物、アルカリ金属(複合)石けん、アルカリ土類金属(複合)石けん、アルミニウム(複合)石けん、テレフタラメート金属塩、クレイ、ポリテトラフルオロエチレンなどを使用することができる。
【0046】
ウレア化合物としては、例えば、ジウレア化合物、テトラウレア化合物等が挙げられる。
アルカリ金属石けん或いはアルカリ土類金属石けんは、一般に脂肪酸とアルカリ金属水酸化物或いはアルカリ土類金属の反応によるものが挙げられ、脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エイコサン酸等が挙げられる。アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられ、また、アルカリ土類金属としては、カルシウム、マグネシウム等が挙げられる。
これらのアルカリ金属石けんとしては、リチウム石けん、リチウム複合石けん、ナトリウム石けん、ナトリウム複合石けん、カリウム石けん、カリウム複合石けん等があり、また、アルカリ土類金属石けんとしては、カルシウム石けん、カルシウム複合石けん、マグネシウム石けん、マグネシウム金属石けん等が挙げられる。
【0047】
複合石けんは上記の如き脂肪酸の金属石けんに第二の酸の金属塩を複合的に含んだものである。
例えば、リチウム複合石けんは、脂肪酸のリチウム塩の他に第二の酸の金属塩を含むものが挙げられ、具体的には、12−ヒドロキシステアリン酸リチウムとアゼライン酸リチウムを配合したものが挙げられる。
アルミニウム複合石けんは、具体的にはアルミニウムステアレートベンゾエート等が挙げられる。
上記テレフタラメート金属塩としては、ナトリウムテレフタラメート、リチウムテレフタラメート等が挙げられ、好ましくはナトリウムテレフタラメートが用いられる。
【0048】
上記した他の増ちょう剤は、全組成物に対して20質量%以下の量で使用するようにすると好ましく、第三リン酸カルシウムと上記他の増ちょう剤は適宜の配合割合で使用することができ、両者の総量は全組成物に対して3〜70質量%になるように使用すると良い。
他の増ちょう剤は、第三リン酸カルシウム、グリース構造安定化剤、基油と共に混合して潤滑剤組成物とすることができる。また、第三リン酸カルシウム、グリース構造安定化剤を主として含む潤滑剤組成物と、他の増ちょう剤を主として含む潤滑剤組成物を適当な割合に混ぜ合せて、一つの潤滑剤組成物とすることもできる。
第三リン酸カルシウムと他の増ちょう剤を併用すると、高温時に軸受寿命の長い、耐久性に優れ、また摩擦作用を低減させ、耐摩耗性を向上させる潤滑剤組成物を得ることができる。
【0049】
この潤滑剤組成物には、上記各成分に加えて、必要により酸化防止剤、防錆剤、極圧剤、耐摩耗剤、固体潤滑剤等の添加剤を適宜併用することができる。
【実施例】
【0050】
(実施例1〜26、比較例1〜4)
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。
以下に示す基油、第三リン酸カルシウムおよびグリース構造安定化剤を、表1〜表4に示す配合組成によって、試作釜に加えた後、100℃まで加熱攪拌し、その後三本ロールミルで処理して均一に仕上げ、実施例1〜26に示す潤滑剤組成物を得た。
また、同様にして、表5に示す配合組成によって、比較例1〜4に示す潤滑剤組成物を得た。
【0051】
1、基油
(1)鉱油:100℃の動粘度が33mm/sのパラフィン系鉱油
(2)ポリ−α−オレフィン油:100℃の動粘度が40mm/sのポリ−α−オレフィン油
(3)エーテル油:100℃の動粘度が13mm/sのアルキルジフェニルエーテル油
(4)エステル油:100℃の動粘度が6mm/sのポリオールエステル油
2、第三リン酸カルシウム:〔Ca(PO・Ca(OH)
【0052】
3.グリース構造安定化剤
(1)有機酸誘導体
(1−1)コハク酸エステル誘導体:
テトラプロペニルコハク酸,1,3−プロパンジオールハーフエステルで、JIS K2501法による酸価が160mgKOH/gであり、下記の式(11)、式(12)に示す化合物の混合物である。
【化11】


【化12】


(1−2)アスパラギン酸誘導体:
N−1オキソ−3カルボニルオキシプロピル−N−3オクチルオキシプロピル−アスパラギン酸ジイソブチルエステル、N−1オキソ−3カルボニルオキシプロピル−N−3デシルオキシプロピル−アスパラギン酸ジイソブチルエステル、N−1オキソ−3カルボニルオキシプロピル−N−3ドデシルオキシプロピル−アスパラギン酸ジイソブチルエステル、N−1オキソ−3カルボニルオキシプロピル−N−3テトラデシルオキシプロピル−アスパラギン酸ジイソブチルエステルの混合物で、JIS K2501法による酸価が100mgKOH/gである、下記の式(13)に示されるものである。
【化13】


(1−3)ザルコシン酸誘導体:(Z)-N-メチル-N-(1-オキソ-9-オクタデセニル)グリシン(JIS K2501法による酸価:160mgKOH/g)で、下記の式(14)で示されるものである。
【化14】


(1−4)4-ノニルフェノキシ酢酸:下記の式(15)に示されるもので、JIS K2501法による酸価は189mgKOH/gである。

(化15)
919-C-O-CH-COOH (15)

(2)有機アミン誘導体
(2−1)ジエタノールアミン: 主成分がN−オレイルジエタノールアミンであるN−アルキルジエタノールアミンで、JIS K2501法による塩基価が160mgKOH/gのもので、下記の式(16)で示されるもの。
【化16】


(2−2)モノアルキル一級アミン: 主成分がドデシルアミンであるココナットアミンで、JIS K2501法による塩基価が390mgKOH/gのものである。
(2−3)ジアミン・ジ脂肪酸塩: N-アルキル(C14〜C18)トリメチレンジアミンジオレイン酸塩(牛脂ジアミンジオレイン酸塩)で、下記の式(17)で示されるもの。
(化17)
RNH(CH2)3NH2・2C1735COOH (17)
(R=C14〜C18)

(2−4)ジアミン: 主成分がN−ドデシル−1,3−プロピレンジアミンであるヤシジアミンで、JIS K2501法による塩基価が440mgKOH/gのもので、下記の式(18)で示される。
(化18)
R-NH-C-NH (18)
(R=ヤシアルキル)

(3)硫化脂肪酸
(3−1)硫化オレイン酸
(4)二塩基酸塩
(4−1)セバシン酸ナトリウム
(5)ナフテン酸塩
(5−1)ナフテン酸カルシウム
(6)界面活性剤
(6−1)ステアリン酸、オレイン酸モノ・ジグリセライド
(6−2)ソルビタンモノラウレート
(6−3)ソルビタントリステアレート
(6−4)ソルビタントリオレエート
【0053】
(比較例5:ウレア化合物で形成した潤滑剤組成物)
100℃の動粘度が約33mm/s、40℃の動粘度が約500mm/sの精製鉱油900g中で、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート0.147モル(36.88g)にオクチルアミン0.295モル(38.12g)を反応させ、次にジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート0.04モル(10.08g)にラウリルアミン0.08モル(14.92g)を加えて反応させ、ジフェニルアミン系酸化防止剤を2質量%(20g)加えて、三本ロールミルで均一に分散処理して潤滑剤組成物を得た。ウレア化合物の含有量は10質量%である。
【0054】
(実施例27〜30)
実施例27は、実施例14に、比較例5で使用したジフェニルアミン系酸化防止剤が2質量%含まれている潤滑剤組成物である。
実施例28〜30は、実施例27と比較例5を表6に示す割合で混合した潤滑剤組成物である。
【0055】
(比較例6:リチウム石けんで形成した潤滑剤組成物)
100℃の動粘度が約33mm/s、40℃の動粘度が約500mm/sの精製鉱油(5400g)中で12−ヒドロキシステアリン酸リチウム(600g)を溶解し、均一に分散処理して潤滑剤組成物を得た。リチウム石けんの含有量は10質量%である。
【0056】
(比較例7:リチウム複合石けんで形成した潤滑剤組成物)
100℃の動粘度が約33mm/s、40℃の動粘度が約500mm/sの精製鉱油(4165g)中で12−ヒドロキシステアリン酸リチウム350gを水酸化リチウム(50.5g)と反応させた後、アゼライン酸120.65gを水酸化リチウム(59.0g)と反応させ、均一に分散・処理することによりグリースを得た。増ちょう剤の含有量は、10.4質量%である。
【0057】
(比較例8:カルシウム石けんで形成した潤滑剤組成物)
100℃の動粘度が約33mm/s、40℃の動粘度が約500mm/sの精製鉱油(2700g)中でステアリン酸カルシウム300gを溶解し、均一に分散・処理することによりグリースを得た。増ちょう剤の含有量は、10質量%である。
【0058】
(比較例9:アルミニウム複合石けんで形成した潤滑剤組成物)
100℃の動粘度が約33mm/s、40℃の動粘度が約500mm/sの精製鉱油(4272g)中に安息香酸158.22gとステアリン酸334.8gを溶解し、その後市販の環状アルミニウムオキサイドプロピレート潤滑液[商品名:川研ファインケミカル(株)製アルゴマー]293.64gを加えて反応を行い、生成した石けんを均一に分散処理して、グリースを得た。アルミニウム複合石けんの含有量は、約11質量%である。安息香酸(BA)とステアリン酸(FA)のモル比をBA/FA=1.1および安息香酸とステアリン酸に対するアルミニウム(Al)のモル比を(BA+FA)/Al=1.9とした。
【0059】
(比較例10:ナトリウムテレフタラメートで形成した潤滑剤組成物)
100℃の動粘度が約33mm/s、40℃の動粘度が約500mm/sの精製鉱油2700g中でN-オクタデシルテレフタラミン酸メチル294.54gを水酸化ナトリウム(27.36g)と反応させ、均一に分散・処理することによりグリースを得た。増ちょう剤の含有量は、10質量%である。
【0060】
(比較例11:クレイで形成した潤滑剤組成物)
100℃の動粘度が約33mm/s、40℃の動粘度が約500mm/sの精製鉱油4560g中でベントン34を400gおよびプロピレンカーボネート40gを均一に分散・処理することによりグリースを得た。増ちょう剤の含有量は、約8質量%である。
【0061】
(比較例12:ポリテトラフルオロエチレンで形成した潤滑剤組成物)
基油にフッソ油、増ちょう剤にポリテトラフルオロエチレンを用いた市販の潤滑剤組成物(FOMBLIN RT−15)である。
【0062】
(実施例31〜38)
実施例31〜38は、実施例14のグリースに比較例5〜12の各組成物をそれぞれ10質量%混合した潤滑剤組成物である。
【0063】
実施例39は、実施例1の潤滑剤組成物に比較例10の潤滑剤組成物を10質量%混合した潤滑剤組成物である。
実施例40は、実施例7の潤滑剤組成物に比較例11の潤滑剤組成物を10質量%混合した潤滑剤組成物である。
実施例41は、実施例9の潤滑剤組成物に比較例6の潤滑剤組成物を10質量%混合した潤滑剤組成物である。
実施例42は、実施例11の潤滑剤組成物に比較例8の潤滑剤組成物を10質量%混合した潤滑剤組成物である。
【0064】
(試験)
実施例1〜26および比較例1〜4の潤滑剤組成物について、ちょう度、耐熱性、耐水性、耐荷重性の試験を行い、実施例1〜26については更に機械的安定性の試験を行った。
(1)ちょう度:JIS K2220(ASTM D217)に従う。
(2)耐熱性:JIS K2220(ASTM D566)に従い、滴点を測定。
(3)耐水性:ASTM D1831に準拠する。潤滑剤組成物中に水が20質量%となるように加えて混合し、その試料を用いて室温で24時間のシェルロールテストを行った。その後、シリンダー1、内挿ロール2および上蓋3の各部品の錆4の発生の有無、グリース構造破壊の有無を目視で観察した。(図1A、B)
潤滑剤組成物のグリース構造が破壊されておらず、正常なグリースの状態を保持していた場合には、ちょう度を測定した。
(4)機械的安定性:ASTM D1831に準拠する。潤滑剤組成物について室温で24時間のシェルロールテストを行い、その後、ちょう度を測定した。
(5)耐荷重性:ASTM D2596に従い、四球式極圧試験を行った。
条件:回転数は1770±60rpm、時間は10秒、温度は室温で行った。
試験項目:融着荷重 WL(Weld Load,単位kgf)および最終無焼付き荷重 LNSL(Last Non-seizure Load,単位kgf)を求めた。
【0065】
実施例27〜30および比較例5の潤滑剤組成物については、上記(1)〜(5)の試験の他、下記(6)および(7)の試験を行った。
(6)軸受寿命:ASTMD3527に従い、高温時の軸受寿命試験を行った。
条件:回転数は1000±50rpm、温度は160℃で行った。
試験項目:オーバートルクによる軸受寿命時間(hours)を求めた。
(7)難燃性:NLGI(National Lubricating Grease Institute) Spokesman Nov,1988に紹介された方法でグリースの燃焼試験を行った。試験概要は以下のとおりである。
試験概要:JISK2220(ASTMD942)の酸化安定度試験に用いるガラス製容器11へ試料の潤滑剤組成物12を4.00±0.01gを詰め、その上に火の付いたマッチ棒13を1本のせ、グリースの燃焼性を観察した。炎14をあげて燃えた場合15をF(Flammable)、マッチ棒が焦げただけで16燃えない場合17をI(Inflammable)として表示した。(図2A、B)
【0066】
実施例31〜42および比較例5〜12の潤滑剤組成物については、上記(1)、(2)の試験と、下記(8)の試験を行った。
(8)ファレックス摩擦摩耗試験:下記条件により試験開始から15分後の摩擦係数と試験片(ピン)の表面粗さ(μm)を求めた(IP241/65準拠)。
条件:回転数は290rpm、荷重は90.7kg(200ポンド)、温度は室温、時間は15分、試料量は試験片に試料を約1グラム塗布により試験を行った。
【0067】
(試験結果)
各試験の結果を、表1〜表9に記載した。
【0068】
(考察)
表1〜4に示す実施例1〜26は、基油に第三リン酸カルシウムを加え、添加するグリース構造安定化剤を変えたものである。実施例12、13および実施例18〜23に示すものはグリース構造安定化剤を混合使用したもの、実施例24〜26に示すものは、基油の種類を変えたものである。
実施例1〜実施例26に示すものは、ちょう度が227〜345でNLGI分類の3号〜1号程度の硬さを示している。また、実施例1〜26のものは、いずれも滴点が250℃以上であって、耐熱性に優れている。
更に、耐荷重性についても、四球式極圧試験において、LNSL(最終無焼付き荷重)が100〜160kgf、 WL(融着荷重)も315〜500kgfであり、通常、極圧グリースと呼ばれているものでも、LNSL(最終無焼付き荷重)が63kgf程度、WL(融着荷重)が315kgf程度であるから、高い耐荷重性を示していることが判る。
機械的安定性については、シェルロールテストにおいて、262〜368の数値を示しており、機械的安定性が良好であることが判る。
耐水性については、グリースに混合した含水量が20質量%のシェルロールテストにおいていずれの実施例でも錆の発生がなく、(図1A)、潤滑剤組成物のグリース構造の破壊も認められなかった。また、ちょう度も236〜409と優良な数値を示しており、耐水性が非常に良好である。
【0069】
これに対して、表5の比較例1〜4は、グリース構造安定化剤が添加されていないものであるが、ちょう度は267〜272であり、滴点も250℃以上で、グリースの状態、耐熱性については良好な結果が得られている。
しかし、耐荷重性の四球式極圧試験において、比較例1〜4のものでは、WL(融着荷重)が315kgfと良好であるが、LNSL(最終無焼付き荷重)が63kgfと実施例よりも大幅に低い値であって、実施例1〜26に比べて耐荷重性が劣っている。
更に、耐水性について、比較例1〜4のものは、いずれもシェルロールテスト器のシリンダー1、内挿ロール2および上蓋3の各部品の全面に真赤な錆4が発生していた(図1B)。また、潤滑剤組成物のグリース構造が破壊されており、ちょう度の測定もできなかった(表5には「不可」と表示)。このように比較例のものでは耐水性が劣っていることが判る。
【0070】
表6の実施例27は、第三リン酸カルシウムを増ちょう剤として使用したもの、実施例28〜30は、第三リン酸カルシウムに他の増ちょう剤としてウレア化合物を併用したものであり、比較例5は、ウレア化合物のみを増ちょう剤として使用したものである。
実施例27〜30と比較例5は、ちょう度、滴点、機械的安定性、および耐水性については両者同程度の性能が出ているが、四球式極圧試験において、LNSL(最終無焼付き荷重)が実施例27では160kgf、比較例5では50kgfであり、WL(融着荷重)も実施例27では400kgf、比較例5では126kgfであり、大きな差が見られ、第三リン酸カルシウムの含有量が少なくなるに従って、耐荷重性の性能が低下する傾向にある。
また、軸受寿命は、第三リン酸カルシウムまたはウレア化合物を単独で増ちょう剤として使用した場合は180時間であるが、両者を併用した場合には300時間を超え、非常に良好な結果が出ている。
更に、難燃性についても、実施例27〜30のものでは燃えないのに対して(図2A)、比較例5のものでは燃える(図2B)。このように燃焼性に関して明らかな差が見られ、従来技術の比較例5よりも難燃性が非常に向上していることが判る。
表8の実施例31〜38は実施例14に、表7に示す比較例5〜12の他の増ちょう剤を組合わせたものである。また、表9の実施例39〜42は、上記した各実施例1、7、9、11に他の増ちょう剤を組み合わせたものである。
表8に示すように、実施例31〜38は、ファレックス摩擦摩耗試験による摩擦係数および試験片ピンの表面粗さ(μm)が実施例1よりも更に改善され、摩擦係数が0.046〜0.087、ピンの表面粗さが2.6〜7.8μmと、更なる向上が認められた。
また、同様に表9に示すように、実施例1と比較例10を併用した場合、実施例7と比較例11を併用した場合、実施例9と比較例6を併用した場合、および実施例11と比較例8を併用した場合についても、それぞれ摩擦係数を下げ、ピンの表面粗さ(摩耗)についてもそれぞれ更なる向上が認められた。
このように第三リン酸カルシウムと他の増ちょう剤を組み合わせて併用した場合には、他の増ちょう剤を組み合わせない場合に比べて、一層摩擦係数を下げ、かつ、ピンの表面粗さも小さく、耐摩耗性も向上するという優れた結果が得られている。
【0071】
【表1】


【0072】
【表2】


【0073】
【表3】


【0074】
【表4】


【0075】
【表5】


【0076】
【表6】


【0077】
【表7】


【0078】
【表8】


【0079】
【表9】


【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】耐水性についてのシェルロールテストにおけるシリンダー、内挿ロールおよび上蓋の各部品の分解説明図であり、図1Aは錆の発生していない状態を示し、図1Bは錆の発生した状態を示している。
【図2】難燃性についての試験の状態を示す説明図であり、図2Aはマッチ棒が燃えない状態、図2Bはマッチ棒が燃えた状態を示している。
【符号の説明】
【0081】
1 シェルロールテスト器のシリンダー
2 シェルロールテスト器の内挿ロール
3 シェルロールテスト器の上蓋
4 シェルロールテスト器に発生した錆
11 難燃性試験のガラス製容器
12 ガラス製容器に入れた試料の潤滑剤組成物
13 マッチ棒
14 マッチの炎
16 マッチの焦げ
【出願人】 【識別番号】000186913
【氏名又は名称】昭和シェル石油株式会社
【出願日】 平成19年11月28日(2007.11.28)
【代理人】 【識別番号】100081547
【弁理士】
【氏名又は名称】亀川 義示


【公開番号】 特開2008−156624(P2008−156624A)
【公開日】 平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願番号】 特願2007−307441(P2007−307441)