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【発明の名称】 潤滑システム
【発明者】 【氏名】小原 美香

【要約】 【課題】潤滑成分を保持する発泡潤滑剤の潤滑剤保持力を向上させるとともに、潤滑剤量を必要最小限に留めることができ、かつ初期潤滑におけるなじみ性に優れ、長寿命で低コスト化の要望に応じ得る。

【解決手段】発泡潤滑剤9とグリース10とが潤滑対象部位に共存する潤滑システムであって、上記発泡潤滑剤9は、発泡・硬化して多孔質化する樹脂内に潤滑成分を含んでなり、上記グリース10は 70℃において 24 時間後の離油度が 0.7 重量%以上であり、上記潤滑対象部位の初期潤滑において、少なくとも上記グリース10が潤滑対象部位の摺動部に存在する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡潤滑剤とグリースとが潤滑対象部位に共存する潤滑システムであって、
前記発泡潤滑剤は、発泡・硬化して多孔質化する樹脂内に潤滑成分を含んでなり、前記グリースは 70℃において 24 時間後の離油度が 0.7 重量%以上であり、
前記潤滑対象部位の初期潤滑において、少なくとも前記グリースが潤滑対象部位の摺動部に存在することを特徴とする潤滑システム。
【請求項2】
前記発泡潤滑剤は、発泡・硬化して多孔質化する樹脂がゴム状弾性を有し、該樹脂内に含まれる潤滑成分がゴム状弾性体の変形により滲出性を有することを特徴とする請求項1記載の潤滑システム。
【請求項3】
前記発泡・硬化して多孔質化する樹脂がポリウレタン樹脂であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の潤滑システム。
【請求項4】
前記発泡・硬化して多孔質化する樹脂の連続気泡率が 50%以上であることを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3記載の潤滑システム。
【請求項5】
前記樹脂の発泡倍率が、1.1〜100 倍であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項記載の潤滑システム。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は機械装置の摺動部や回転部に潤滑剤を供給できる潤滑システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車や産業用機械に代表されるようなほとんどの機械の摺動部や回転部において潤滑剤が使用されている。潤滑剤は大別して液体潤滑剤と固体潤滑剤に分けられるが、潤滑油を増ちょうさせて保形性を持たせたグリースや、液体潤滑剤を保持してその飛散や垂れ落ちを防止できる固形潤滑剤も知られている。
例えば、潤滑油やグリースに、超高分子量ポリオレフィン、またはウレタン樹脂およびその硬化剤を混合し、樹脂の分子間に液状の潤滑成分を保持させて徐々に滲み出る物性を持たせた固形潤滑剤が知られている(特許文献1〜特許文献3参照)。
また、潤滑剤の存在下でポリウレタン原料であるポリオールとジイソシアネートとを潤滑成分中で反応させた自己潤滑性のポリウレタンエラストマーが知られている(特許文献4参照)。
このような固形潤滑剤は、軸受に封入して固化させると、潤滑油を徐々に滲み出させるものであり、これを用いると潤滑油の補充のためのメンテナンスが不要になり、水分の多い厳しい使用環境や強い慣性力の働く環境などでも軸受寿命の長期化に役立てることを狙ったものである。
【0003】
このような固形潤滑剤を、等速ジョイントの駆動部のような圧縮や屈曲などの外部応力が高い頻度で繰り返し加わる部位に使用すると、圧縮や屈曲に追従して変形させるために非常に大きな力が必要になり、または非常に大きな応力が固形潤滑剤に加わって、それを保持する部分にも機械的強度が必要になる。
しかし、固形潤滑剤の強度と充填率は通常、補償的なものであるので、潤滑剤を高充填率で保持することが困難であり、長寿命化を妨げる可能性がある。
そのため、圧縮や屈曲などの外部応力が高い頻度で繰り返し起こるような部位においても簡便に使用可能な固形潤滑剤が求められている。
この固形潤滑剤として、例えば、発泡して連通気孔を形成した柔軟な樹脂に潤滑油を含浸し、その気孔内に潤滑油を保持させた発泡潤滑剤を軸受や等速ジョイントの内部に充填して使用されることが知られている(特許文献5参照)。
【0004】
しかしながら、上記した特許文献1〜特許文献4による固形潤滑剤は、潤滑油保持力は大きいが、柔軟な変形性に欠ける。また、特許文献5の発泡潤滑剤は外力に応じる柔軟な変形性があって圧縮や屈曲変形にも追従することはできるが、潤滑油保持力が小さく、軸受などの高速条件で使用した場合には、潤滑油が急速に抜け出て枯渇する可能性もある。このような発泡潤滑剤は、短時間での潤滑や密閉空間においては使用可能であるが、長時間の潤滑を要する部分や開放空間で使用すると潤滑油が供給不足になり、または、油保持力が弱いと、余剰の潤滑油は気孔から放出および吸収を繰り返し、絶えず空間内を流動することになる。
このような固形潤滑剤や発泡潤滑剤から余剰に滲み出した潤滑油は、ゴムなどの外装に接すると、その素材を潤滑油やその添加剤が化学的に腐食または劣化するものもある。
【0005】
また、長寿命化を狙って潤滑油の滲み出しを遅くすると、固形潤滑剤等が封入された潤滑対象部位の潤滑開始直後には摺動部に潤滑成分が滲み出してこないために、潤滑成分不足による摺動面の損傷により逆に潤滑対象部位が短寿命化する問題が生じる。このため潤滑開始直後から潤滑成分を供給可能な潤滑剤が望まれている。
また、このような潤滑剤を製造する工程では、潤滑油やグリースを確実に含浸させるために多くの製造工程が必要になり、これでは低コスト化の要求に応えることも困難である。
【特許文献1】特開平6−41569号公報
【特許文献2】特開平6−172770号公報
【特許文献3】特開2000−319681号公報
【特許文献4】特開平11−286601号公報
【特許文献5】特開平9−42297号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような問題点に対処するためになされたものであり、潤滑成分を保持する発泡潤滑剤の潤滑剤保持力を向上させるとともに、発泡潤滑剤の変形による潤滑剤の滲み出し量を必要最小限に留めることができ、かつ初期潤滑におけるなじみ性に優れ、長寿命で低コスト化の要望に応じ得る潤滑システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の潤滑システムは、発泡潤滑剤とグリースとが潤滑対象部位に共存する潤滑システムであって、上記発泡潤滑剤は、発泡・硬化して多孔質化する樹脂内に潤滑成分を含んでなり、上記グリースは 70℃において 24 時間後の離油度が 0.7 重量%以上であり、上記潤滑対象部位の初期潤滑において、少なくとも上記グリースが潤滑対象部位の摺動部に存在することを特徴とする。
なお、上記離油度は、JIS K 2220 11 離油度測定法に基づき測定した値である。また、本発明において「初期潤滑」とは潤滑を必要とする機器の作動開始直後において発泡潤滑剤より潤滑成分が摺動部に滲み出してこない状態から、該機器の作動にともない発泡潤滑剤より潤滑成分が摺動部に滲み出してくるまでの期間における潤滑のことをいう。
【0008】
本発明の潤滑システムにおいて、上記発泡潤滑剤は、発泡・硬化して多孔質化する樹脂がゴム状弾性を有し、該樹脂内に含まれる潤滑成分がゴム状弾性体の変形により滲出性を有することを特徴とする。
また、上記発泡・硬化して多孔質化する樹脂がポリウレタン樹脂であることを特徴とする。
また、上記発泡・硬化して多孔質化する樹脂の連続気泡率が 50%以上であることを特徴とする。
また、上記樹脂の発泡倍率が、1.1 倍〜100 倍であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の潤滑システムは、発泡潤滑剤とグリースとが潤滑対象部位に共存し、上記発泡潤滑剤は、発泡・硬化して多孔質化する樹脂内に潤滑成分を含んでなり、上記グリースは 70℃において 24 時間後の離油度が 0.7 重量%以上であり、上記潤滑対象部位の初期潤滑において、少なくとも上記グリースが潤滑対象部位の摺動部に存在するので、発泡潤滑剤より潤滑成分が十分に滲み出してくるまでの初期潤滑においても、油分離性のよいグリースが摺動部に存在し潤滑に寄与するとともに、初期潤滑以降の発泡潤滑剤より滲み出してくる潤滑成分に潤滑機能をつなぐことができる。
このため、発泡潤滑剤が封入される軸受や自在継手等の摺動部等において初期潤滑から不足することなく継続して潤滑機能を十分に果たすことができる。
【0010】
この発泡潤滑剤は樹脂を発泡・硬化して多孔質化した固形物であり、かつ樹脂が発泡・硬化するときに、潤滑成分が該樹脂内に保持される。このため、樹脂のみで発泡・硬化して得られる発泡樹脂に潤滑成分を含浸させる場合に比較して、発泡潤滑剤中の潤滑成分の保持量が単なる気孔内の含浸による保持量よりも多くなるとともに、本潤滑システムを用いた機器の運転時において発泡潤滑剤中より潤滑を必要とする摺動部の周囲等に潤滑成分が徐放されるので、高速回転でも運転が可能である。
【0011】
初期潤滑においてグリースが潤滑剤として作用することができるので、グリースを併用しない場合に比較して、発泡潤滑剤からの潤滑成分の滲み出し速度をさらに小さく設定できる。そのため、長期間にわたって必要最小限の潤滑成分を安定に摺動部に供給することができ、本発明の潤滑システムを用いた機器をさらに長寿命化させることができる。
【0012】
また、発泡潤滑剤を封入することで、本潤滑システムを用いた機器の摺動部近くに潤滑剤が存在でき、グリース単独の潤滑と比較して、より潤滑剤が摺動部位に供給されやすい。その上、多孔質な部分を多く有するので、本潤滑システムを用いた機器の軽量化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の潤滑システムを等速自在継手に適用した例を挙げ、発泡潤滑剤およびグリースの作用を具体的に説明する。図1は本発明の潤滑システムを用いた等速自在継手を示す断面図である。図1に示すように潤滑対象部位である等速自在継手は内輪1、外輪2、内輪側トラック溝3、外輪側トラック溝4、鋼球5、ケージ6、シャフト7、ブーツ8、発泡潤滑剤9、グリース10およびその他の付属部品より構成される。このとき等速自在継手の潤滑対象部位として、グリース10は外輪2の底部に収容され、発泡潤滑剤9は鋼球5の付近に配置される形で共存している。
【0014】
発泡潤滑剤9は発泡・硬化して多孔質化した樹脂内に潤滑成分を含んでなり、等速自在継手の回転運動に伴う遠心力や等速自在継手が角度を取ったときに発生する圧縮、屈曲、膨張などの外的な応力や毛細管現象によって発泡潤滑剤中より摺動部である内輪側トラック溝3、外輪側トラック溝4、鋼球5表面およびケージ6表面等に、潤滑成分を徐放する。また、外輪2の底部に収容されるグリース10は発泡潤滑剤中の潤滑成分と異なり、樹脂内に含まれていないため、等速自在継手内を容易に移動することができ、等速自在継手始動時には該継手内の摺動部に到達することができる。よって、潤滑初期(回転初期)に不足しがちな潤滑を補うことができる。
【0015】
なお、図1において一例としてグリース10を外輪2の底部に収容した例を示したが、等速自在継手始動時に該継手内の摺動部分に到達する部位であれば特に制限無くグリース10を収容することができる。
【0016】
発泡潤滑剤は、「遠心力、圧縮、屈曲、膨張などの外的な応力等によって外部に潤滑成分を徐放する」ので、回転初期には、潤滑成分が摺動部に十分存在していない場合がある。グリースは、前述の外的応力によって等速自在継手内を移動しやすい。よって、等速自在継手外輪底部にグリースを少量封入しただけでも、等速自在継手内部にすばやく移動し、発泡潤滑剤から潤滑成分が十分に放出されるまでの潤滑剤として作用することができる。
【0017】
本発明において発泡潤滑剤は樹脂の柔軟性により、例えば圧縮、膨張、屈曲、ねじりなどの外力による変形により潤滑剤を滲みださせて樹脂の分子間から外部に徐放できる。この際、滲み出す潤滑油などの潤滑成分量は、外力の大きさに応じて弾性変形する程度を樹脂の選択などによって変えることにより、必要最小限にすることができる。
また、本発明に用いる発泡潤滑剤において樹脂は、発泡により表面積が大きくなっており、滲み出した余剰の潤滑成分である潤滑油を再び発泡体の気泡内に一時的に保持することもできて滲み出す潤滑油量は安定しており、また樹脂内に潤滑油を保持させるとともに発泡体の気泡内に含浸させることによって非発泡の状態より潤滑油の保持量も多くなる。
【0018】
その上、本発明に用いる発泡潤滑剤は、非発泡体と比較して屈曲時に必要なエネルギーが非常に小さく、潤滑油を高密度に保持しながら柔軟な変形が可能である。よって、該発泡潤滑剤を固化させた後冷却する過程において、発泡潤滑剤が収縮し転動体等を抱き込んだとしても屈曲・変形時に必要なエネルギーが小さいために容易に変形することができ、回転トルクが大きくなるという問題を防ぐことができる。また、発泡部分すなわち多孔質な部分を多く持つため、軽量化の点でも有利である。
また、本発明に用いる発泡潤滑剤は潤滑成分と、樹脂とを含む混合物を発泡・硬化させるだけであるので、特別な設備も不要であり、任意の場所に充填して成形することが可能である。
また、上記混合物の配合成分の配合量をコントロールすることにより発泡潤滑剤の密度を変化させることができる。
【0019】
本発明において発泡潤滑剤を構成する発泡・硬化して多孔質化する樹脂としては、発泡・硬化後にゴム状弾性を有し、変形により潤滑成分の滲出性を有するものが好ましい。
発泡・硬化は、樹脂生成時に発泡・硬化させる形式であっても、樹脂に発泡剤を配合して成形時に発泡・硬化させる形式であってもよい。ここで硬化は架橋反応および/または液状物が固体化する現象を意味する。また、ゴム状弾性とは、ゴム弾性を意味するとともに、外力により加えられた変形がその外力を無くすことにより元の形状に復帰することを意味する。
【0020】
発泡・硬化して多孔質化する樹脂としては、ゴムおよびプラスチックを挙げることができる。
ゴムとしては、天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、シリコーンゴム、ウレタンエラストマー、フッ素ゴム、クロロスルフォンゴムなどの各種ゴムが挙げられる。
また、プラスチックとしては、ポリウレタン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド4,6樹脂、ポリアミド6,6樹脂、ポリアミド6T樹脂、ポリアミド9T樹脂などの汎用プラスチックやエンジニアリングプラスチックが挙げられる。
上記樹脂の中で、容易に発泡・硬化して多孔質化するポリウレタン樹脂が好ましい。
【0021】
本発明に使用できるポリウレタン樹脂は、イソシアネートとポリオールとの反応による発泡・硬化物であるが、分子内にイソシアネート基(−NCO)を有するウレタンプレポリマーの発泡・硬化物であることが好ましい。このイソシアネート基は他の置換基によってブロックされていてもよい。分子内に含まれるイソシアネート基は、分子鎖末端であっても、あるいは分子鎖内から分岐した側鎖末端に含まれていてもよい。また、ウレタンプレポリマーは分子鎖内にウレタン結合を有していてもよい。また、ウレタンプレポリマーの硬化剤はポリオールでもよいし、ポリアミンでもよい。
【0022】
ウレタンプレポリマーは、活性水素基を有する化合物とポリイソシアネートとの反応によって得ることができる。
活性水素基を有する化合物としては低分子ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ひまし油系ポリオール等が挙げられる。これらは単独で、または2種類以上の混合物として使用することができる。低分子ポリオールとしては、2価のもの例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、水添ビスフェノールA等、3価以上のもの(3〜8価のもの)例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、シュークローズ等が挙げられる。
【0023】
ポリエーテル系ポリオールとしては上記低分子ポリオールのアルキレンオキサイド(炭素数2〜4のアルキレンオキサイド、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド)付加物およびアルキレンオキサイドの開環重合物が挙げられ、具体的にはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールが含まれる。
【0024】
ポリエステル系ポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオールおよびポリエーテルエステルポリオール等が挙げられる。ポリエステルポリオールはカルボン酸(脂肪族飽和または不飽和カルボン酸、例えば、アジピン酸、アゼライン酸、ドデカン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、二量化リノール酸およびまたは芳香族カルボン酸、例えば、フタル酸、イソフタル酸)とポリオール(上記低分子ポリオールおよび/またはポリエーテルポリオール)との縮合重合により得られる。
【0025】
ポリカプロラクトンポリオールは、グリコール類やトリオール類の重合開始剤にε-カプロラクトン、α-メチル-ε-カプロラクトン、ε-メチル-ε-カプロラクトン等を有機金属化合物、金属キレート化合物、脂肪酸金属アシル化物等の触媒の存在下で付加重合により得られる。ポリエーテルエステルポリオールには、末端にカルボキシル基および/またはOH基を有するポリエステルにアルキレンオキサイド例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等を付加反応させて得られる。ひまし油系ポリオールとしては、ひまし油およびひまし油またはひまし油脂肪酸と上記低分子ポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールとのエステル交換あるいは、エステル化ポリオールが挙げられる。
【0026】
ポリイソシアネートとしては、芳香族ジイソシアネート、脂肪族または脂環式およびポリイソシアネート化合物がある。
芳香族ジイソシアネートは、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネートおよびその混合物、1,5-ナフチレンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネートが挙げられる。
脂肪族または脂環式ジイソシアネートは、例えば、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,12-ドデカンジイソシアネート、1,3-シクロブタンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、イソプロパンジイソシアネート、2,4-ヘキサヒドロトルイレンジイソシアネート、2,6-ヘキサヒドロトルイレンジイソシアネート、1,3-ヘキサヒドロフェニルジイソシアネート、1,4-ヘキサヒドロフェニルジイソシアネート、2,4′パーヒドロジフェニルメタンジイソシアネート、4,4′-パーヒドロジフェニルメタンジイソシアネートが挙げられる。
ポリイソシアネート化合物としては、4,4′,4″-トリフェニルメタントリイソシアネート、4,6,4′-ジフェニルトリイソシアネート、2,4,4′-ジフェニルエーテルトリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートが挙げられる。
また、これらイソシアネートの一部をビウレット、アロファネート、カルボジイミド、オキサゾリドン、アミド、イミド等に変性したものが挙げられる。
【0027】
本発明に好適なウレタンプレポリマーとしては、注型用ウレタンプレポリマーとして知られている、ポリラクトンエステルポリオール、ポリエーテルポリオールにポリイソシアネートを付加重合させて得られるプレポリマー等が挙げられる。
上記ポリラクトンエステルポリオールはカプロラクトンを開環反応させて得られるポリラクトンエステルポリオールに短鎖ポリオールの存在下、ポリイソシアネートを付加重合させたウレタンプレポリマーが好ましい。
上記ポリエーテルポリオールとしては、アルキレンオキサイドの付加物または開環重合物が挙げられ、これらとポリイソシアネートを付加重合させたウレタンプレポリマーが好ましい。
【0028】
本発明に好適に使用できるウレタンプレポリマーの市販品を例示すれば、ダイセル化学社製の商品名プラクセルEPが挙げられる。プラクセルEPは室温以上の融点を有する白色固体のウレタンプレポリマーである。また、ポリエーテルポリオールを例示すれば旭硝子社製の商品名プレミノールが挙げられる。プレミノールは 5000〜12000 の分子量を有するポリエーテルポリオールである。
【0029】
上記ウレタンプレポリマーを硬化させる硬化剤としては、3,3′-ジクロロ-4,4′-ジアミノジフェニルメタン(以下、MOCAと記す)や4,4′-ジアミノ-3,3′-ジエチル-5,5′-ジメチルジフェニルメタン、トリメチレン-ビス-(4-アミノベンゾアート)、ビス(メチルチオ)-2,4-トルエンジアミン、ビス(メチルチオ)-2,6-トルエンジアミン、メチルチオトルエンジアミン、3,5-ジエチルトルエン-2,4-ジアミン、3,5-ジエチルトルエン-2,6-ジアミンに代表される芳香族ポリアミン、上記ポリイソシアネート、1,4-ブタングリコールやトリメチロールプロパンに代表される低分子ポリオール、ポリエーテルポリオール、ひまし油系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、水酸基末端液状ポリブタジエン、水酸基末端液状ポリイソプレン、水酸基末端ポリオレフィン系ポリオールやこれら化合物の末端水酸基をイソシアネート基やエポキシ基などで変性した化合物に代表される2個以上の水酸基を有する液状ゴム等を単独でまたは併用して用いることができる。これらの中でコストおよび物性の点で優位であることから、芳香族ポリアミンがポリラクトンエステルポリオールとポリイソシアネートを付加重合させたウレタンプレポリマーを硬化させるのに好ましい。
【0030】
発泡潤滑剤を得るために樹脂を発泡させる手段としては、周知の発泡手段を採用すればよく、例えば、揮発性ガスを化学反応により生成する化学的発泡方法、水、アセトン、ヘキサン等の比較的沸点の低い有機溶媒を加熱し、気化させる物理的手法や、窒素などの不活性ガスや空気を外部から吹き込む機械的発泡方法、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾジカルボンアミド(ADCA)等のように加熱処理や光照射によって化学分解させ、窒素ガスなどを発生させる分解型発泡剤を使用するなどの方法が挙げられる。
【0031】
本発明に使用するウレタンプレポリマーは分子内にイソシアネート基を有するので、水を発泡剤として用いて、イソシアネート基と水分子との化学反応によって生じる二酸化炭素による化学的発泡方法を用いることが好ましい。また、この方法は連続気泡が生成しやすいので好ましい。
【0032】
また、このような反応を伴う化学的発泡方法を用いる場合には必要に応じて触媒を使用することが好ましく、例えば、3級アミン系触媒や有機金属触媒などが用いられる。3級アミン系触媒としてはモノアミン類、ジアミン類、トリアミン類、環状アミン類、アルコールアミン類、エーテルアミン類、イミダゾール誘導体、酸ブロックアミン触媒などが挙げられる。
また、有機金属触媒としてはスタナオクタエート、ジブチルチンジアセテート、ジブチルチンジラウレート、ジブチルチンメルカプチド、ジブチルチンチオカルボキシレート、ジブチルチンマレエート、ジオクチルチンジメルカプチド、ジオクチルチンチオカルボキシレート、オクテン酸塩などが挙げられる。また、反応のバランスを整えるなどの目的でこれら複数種類を混合して用いてもよい。
【0033】
上記樹脂に限られることなく、ウレタン系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリ酢酸ビニル系接着剤、ポリイミド系接着剤など各種接着剤を発泡および硬化させて使用することもできる。
【0034】
本発明において発泡・硬化して多孔質化する樹脂中には必要に応じて各種添加剤を用いることができる。添加剤としてはヒンダードフェノール系に代表される酸化防止剤、補強剤(カ−ボンブラック、ホワイトカーボン、コロイダルシリカなど)、無機充填剤(炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、クレイ、硅石粉など)老化防止剤、難燃剤、金属不活性剤、帯電防止剤、防黴剤やフィラーおよび着色剤などが挙げられる。
【0035】
上記発泡・硬化して多孔質化する樹脂内に含浸できる潤滑成分は、発泡体を形成する固形成分を溶解しないものであれば使用できる。潤滑成分としては、例えば潤滑油、グリース、ワックスなどを単独で、もしくは2種類以上組み合わせて使用できる。
潤滑油としては、パラフィン系やナフテン系の鉱油、エステル系合成油、エーテル系合成油、炭化水素系合成油、GTL基油、フッ素油、シリコーン油等が挙げられる。これらは単独でも混合油としても使用できる。
上記発泡・硬化して多孔質化する樹脂と潤滑油が極性などの化学的な相性によって溶解、分散しない場合には、粘度の近い潤滑油を使用することで、物理的に混合しやすくなり、潤滑剤の偏析を防ぐことが可能となる。
【0036】
グリースは、基油に増ちょう剤を加えたものであり、基油としては上述の潤滑油を挙げることができる。増ちょう剤としては、リチウム石けん、リチウムコンプレックス石けん、カルシウム石けん、カルシウムコンプレックス石けん、アルミニウム石けん、アルミニウムコンプレックス石けん等の石けん類、ジウレア化合物、ポリウレア化合物等のウレア系化合物が挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0037】
ジウレア化合物は、例えばジイソシアネートとモノアミンの反応で得られる。ジイソシアネートとしては、フェニレンジイソシアネート、ジフェニルジイソシアネート、フェニルジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、オクタデカンジイソシアネート、デカンジイソシアネート、へキサンジイソシアネート等が挙げられる。
モノアミンとしては、オクチルアミン、ドデシルアミン、へキサデシルアミン、オクタデシルアミン、オレイルアミン、アニリン、p-トルイジン、シクロヘキシルアミン等が挙げられる。
【0038】
ポリウレア化合物は、例えば、ジイソシアネートとモノアミンおよびジアミンとの反応で得られる。ジイソシアネート、モノアミンとしては、ジウレア化合物の生成に用いられるものと同様のものが挙げられ、ジアミンとしては、エチレンジアミン、プロパンジアミン、ブタンジアミン、ヘキサンジアミン、オクタンジアミン、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシレンジアミン等が挙げられる。
【0039】
上記グリースにおける基油の配合割合は、グリース成分全体に対して、基油が 1〜98 重量%、好ましくは 5〜95 重量%である。基油が 1 重量%未満であると、潤滑油を必要箇所に十分に供給することが困難になる。また 98 重量%より多いときには、低温でも固まらずに液状のままとなる。
【0040】
ワックスとしては、炭化水素系合成ワックス、ポリエチレンワックス、脂肪酸エステル系ワックス、脂肪酸アミド系ワックス、ケトン・アミン類、水素硬化油などを挙げることができる。これらのワックスに油を混合してもよく、使用する油成分としては上述の潤滑油と同様のものを用いることができる。
【0041】
以上述べた潤滑成分には、さらに二硫化モリブデン、グラファイト等の固体潤滑剤、有機モリブデン等の摩擦調整剤、アミン、脂肪酸、油脂類等の油性剤、アミン系、フェノール系などの酸化防止剤、石油スルフォネート、ジノニルナフタレンスルフォネート、ソルビタンエステルなどの錆止め剤、イオウ系、イオウ−リン系化合物などの極圧剤、有機亜鉛、リン系化合物などの摩耗防止剤、ベンゾトリアゾール、亜硝酸ソーダなどの金属不活性剤、ポリメタクリレート、ポリスチレンなどの粘度指数向上剤などの各種添加剤を含んでいてもよい。
【0042】
本発明に用いる発泡潤滑剤は、上記潤滑成分と、樹脂と、硬化剤と、発泡剤とを含む混合物を発泡・硬化させて得られる。
上記潤滑成分の配合割合は、混合物全体に対して、1〜90 重量%、好ましくは 5〜80 重量%である。潤滑成分が 1 重量%未満であると、潤滑成分の供給量が少なく発泡潤滑剤としての機能を発揮できず、90 重量%より多いときには固化しなくなる。
樹脂の配合割合は、混合物全体に対して、8〜98 重量%、好ましくは 20〜80 重量%である。8 重量%より少ないときは固化せず、98 重量%より多いときには潤滑成分の供給量が少なく、発泡潤滑剤としての機能を発揮できない。
【0043】
上記硬化剤の配合割合は、樹脂の配合量と発泡倍率により、上記発泡剤の配合割合は、後述する発泡倍率との関係でそれぞれ定まる。
【0044】
発泡潤滑剤を製造するときの各成分を混合する方法としては、特に限定されることなく、例えばヘンシェルミキサー、リボンミキサー、ジューサーミキサー、ミキシングヘッド等、一般に用いられる撹拌機を使用して混合することができる。
上記混合物は、市販のシリコーン系整泡剤などの界面活性剤を使用し、各原料分子を均一に分散させておくことが好ましい。また、この整泡剤の種類によって表面張力を制御し、生じる気泡の種類を連続気泡または独立気泡に制御することが可能となる。このような界面活性剤としては陰イオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、両性界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤などが挙げられる。
【0045】
本発明に用いる発泡潤滑剤は、発泡・硬化して多孔質化する樹脂内に潤滑成分を含んでなり、圧縮、屈曲、遠心力および温度上昇に伴う気泡の膨張などの外力によって潤滑油を外部に供給することが可能なものである。
本発明において発泡潤滑剤は、潤滑成分の存在下で樹脂の発泡反応と硬化反応とを同時に行なわせる反応型含浸法を採用することが望ましい。このようにすると潤滑成分を樹脂内部に高充填することが可能となり、その後には潤滑剤を含浸して補充する後含浸工程を省略できる。
これに対して発泡固形体をあらかじめ成形しておき、これに潤滑成分を含浸させる後含浸法だけでは、樹脂内部に十分な量の液体潤滑成分が滲み込まないので、潤滑剤保持力が十分でなく、短時間で潤滑油が放出されて長期的に使用すると潤滑油が供給不足となる場合がある。このため、後含浸工程は、反応型含浸法の補助手段として採用することが好ましい。
【0046】
発泡・硬化時において発泡により多孔質化される際に生成させる気泡は気泡が連通している連続気泡であることが好ましい。外部応力によって潤滑成分を樹脂の表面から連続気泡を介して外部に直接供給するためである。気泡間が連通していない独立気泡の場合は固形成分中の潤滑油の全量が一時的に独立気泡中に隔離され気泡間での移動が困難となり、必要なときに転動体もしくは摺動部の周囲に十分供給されない場合がある。
【0047】
本発明において発泡潤滑剤の連続気泡率は 50%以上が好ましく、より好ましくは 70%以上である。連続気泡率が 50%未満の場合は、樹脂内の潤滑油が一時的に独立気泡中に取り込まれている割合が多くなり、必要な時に外部へ供給されない場合がある。
【0048】
本発明に用いる発泡潤滑剤の連続気泡率は以下の手順で算出できる。
(1)発泡硬化した発泡潤滑剤を適当な大きさにカットし、試料Aを得る。試料Aの重量を測定する。
(2)試料Aを 3 時間ソックスレー洗浄(溶剤:石油ベンジン)する。その後 80℃で 2 時間恒温槽に放置し、有機溶剤を完全に乾燥させ、試料Bを得る。試料Bの重量を測定する。
(3)連続気泡率を以下の手順で算出する。
連続気泡率=(1−(試料Bの樹脂重量−試料Aの樹脂重量)/試料Aの潤滑成分重量)×100
なお、試料A、Bの樹脂重量、潤滑成分重量は、試料A、Bの重量に組成の仕込み割合を乗じて算出する。
連続していない独立気泡中に取り込まれた潤滑成分は 3 時間ソックスレー洗浄では外部へ放出されないため試料Bの重量を減少させることがないので、上記の操作で試料Bの重量減少分は連続気泡からの潤滑成分の放出によるものとして連続気泡率が算出できる。
【0049】
本発明に用いる発泡潤滑剤の発泡倍率は 1.1〜100 倍であることが好ましい。さらに好ましくは 1.1〜10 倍である。なぜなら発泡倍率 1.1 倍未満の場合は気泡体積が小さく、外部応力が加わったときに変形を許容できないし、または多孔質化した固形物が硬すぎるため、外部応力に追随した変形ができないなどの不具合がある。また、100 倍をこえる場合は外部応力に耐える強度を得ることが困難となり、破損や破壊に至ることがある。
【0050】
発泡潤滑剤は、潤滑対象部材内に潤滑成分および樹脂を含む混合物を流し込んだ後、発泡・硬化させてもよく、また常圧で発泡・硬化した後に裁断や研削等で目的の形状に後加工し、潤滑対象部材内に組み込むこともできる。
形状が複雑な潤滑対象部材内の任意の部位にも容易に充填することが可能であり、発泡成形体を得るための成形金型や研削工程等も不要であることから、本発明では、混合物を発泡・硬化前に潤滑対象部材内に流し込み、該部材内において発泡・硬化させる方法を採用することが好ましい。該方法を採用することで、製造工程が簡易となり低コスト化が図れる。
【0051】
本発明の潤滑システムにおいて、上記発泡潤滑剤と潤滑対象部位に共存させることができるグリースとしては、JIS K 2220 11 離油度測定法に基づき測定した 70℃において 24 時間後の離油度が 0.7 重量%以上であれば使用できる。離油度が 0.7 重量%未満であると、初期潤滑として寄与するにはグリースからの基油の滲み出しが足りず、潤滑剤の必要な場所に素早く供給されない場合がある。また、上記離油度が 25 重量%以上であると、室温においても離油(離床)が大きくなり、グリースとしての取り扱いが困難になる。
グリースの具体例としては、上記発泡潤滑剤の潤滑成分として使用できるグリースが挙げられる。
また、潤滑システムにおいてグリースは、少なくとも潤滑対象部位の摺動部に存在することにより、潤滑システムの初期潤滑に寄与することができる。
【実施例】
【0052】
<初期潤滑用グリースの作製>
実施例1〜実施例4および比較例3〜比較例4に用いるグリースA〜グリースCを以下の方法で作製した。なお、ちょう度はJIS K 2220 5.3に基づき測定した数値である。
グリースA
鉱油(タービン100:新日本石油社製)82 g 中で、ジフェニルメタン‐4,4‐ジイソシアナート 9.70 g、p-トルイジン 8.30 g を反応させ、生成したジウレア系化合物を均一に分散させてグリースAを得た。ちょう度を測定したところ、325 であった。また、JIS K 2220に準じて 70℃において 24 時間後の離油度を測定したところ 0.75 重量%であった。
【0053】
グリースB
鉱油(タービン100:新日本石油社製)88 g 中で、ジフェニルメタン‐4,4‐ジイソシアナート 4.63 g、オクチルアミン 2.39 g 、ステアリルアミン 4.98 g を反応させ、生成したジウレア系化合物を均一に分散させてグリースBを得た。ちょう度を測定したところ、290 であった。また、JIS K 2220に準じて 70℃において 24 時間後の離油度を測定したところ 0.80 重量%であった。
【0054】
グリースC
鉱油(タービン100:新日本石油社製)88 g 中で、ジフェニルメタン‐4,4‐ジイソシアナート 5.9 g、オクチルアミン 6.1 g を反応させ、生成したジウレア系化合物を均一に分散させてグリースCを得た。ちょう度を測定したところ、270 であった。また、JIS K 2220に準じて 70℃において 24 時間後の離油度を測定したところ 0.30 重量%であった。
【0055】
実施例1〜実施例2
最初に、図1に示す、外輪2、内輪1、ケージ6および鋼球5を組み付けた固定式8個ボールジョイントサブアッシー(NTN株式会社製 EBJ82 外径サイズ 72.6 mm )の外輪底部に、表1に示す初期潤滑用グリースを 5 g 封入した。次に表1に示す組成のうち(a)、(d)、(e)、(i)を 80℃でよく混合し、次に 120℃で溶解した(b)を加えて素早く混合した。最後に(c)、(h)を投入し撹拌した後、初期潤滑用グリースを封入した前述ジョイントに 15.0 g 封入した。数秒後に発泡反応が始まり、100℃に設定した恒温槽で 30 分間放置し硬化させ、ブーツ、シャフトなど他の部区を組み付け、潤滑システムを用いた等速自在継手の試験片を得た。得られた試験片を以下に示す初期特性試験および寿命試験に供し、初期特性の発現状況および寿命時間を測定した。また前述の連続気泡率の算出法に基づき発泡潤滑剤の連続気泡率を測定した。結果を表1に併記する。
【0056】
<等速自在継手を用いた初期特性試験>
目的の初期特性が得られているか評価するために、等速自在継手試験片を以下の条件で実機評価を行なった。試験中に外輪表面温度が 100℃をこえたものは、異常温度上昇として試験打ち切りとした。また、試験後に試験片内部を点検し、摩耗やピーリング等の内部損傷が見られなかったものを可として「○」を、損傷が確認されたものを不可として「×」を記録する。
・トルク 451 N・m
・角度 6 deg
・回転数 580 rpm
・試験時間 1 時間
【0057】
<等速自在継手を用いた寿命試験>
耐久性の向上についても評価するために、等速自在継手試験片を以下の条件で実機評価を行なった。試験中に外輪表面温度が 100℃をこえたものは、異常温度上昇として試験打ち切りとした。また、規定時間を経た試験後に試験片内部を点検し、異常摩耗や剥離等の内部損傷が見られなかったもの、もしくは内部損傷が見られたが軽微で継続運転可能なものを「○」、損傷が激しく継続運転不可能なものを「×」として記録する。
・トルク 725 N・m
・角度 6 deg
・回転数 230 rpm
・試験時間 150 時間
【0058】
実施例3〜実施例4
最初に、図1に示す、外輪2、内輪1、ケージ6および鋼球5を組み付けた固定式8個ボールジョイントサブアッシー(NTN株式会社製 EBJ82 外径サイズ 72.6 mm )の外輪底部に、表1に示す初期潤滑用グリースを 5 g 封入した。表1に示す成分量(組成)で、ポリエーテルポリオールにシリコーン系整泡剤、鉱油、アミン系触媒、発泡剤としての水を加え、90℃で加熱しよく撹拌した。これにイソシアネートを加えてよく撹拌した後、初期潤滑用グリースを封入した前述ジョイントに 13.0 g 封入した。数秒後に発泡反応が始まり、90℃に設定した恒温槽で 15 分間放置し硬化させ、ブーツ、シャフトなど他の部区を組み付け、潤滑システムを用いた等速自在継手の試験片を得た。実施例1同様の項目を測定した。結果を表1に併記する。
【0059】
比較例1
表1に示す組成で実施例2と同様の手順で等速自在継手試験片を作製したが、初期潤滑用グリースは封入しなかった。実施例1同様の項目を測定した。結果を表1に併記する。
【0060】
比較例2
表1に示す組成で実施例3と同様の手順で等速自在継手試験片を作製したが、初期潤滑用グリースは封入しなかった。実施例1同様の項目を測定した。結果を表1に併記する。
【0061】
比較例3
表1に示す組成で実施例1と同様の手順で等速自在継手試験片を得た。初期潤滑用グリースには、離油度 0.3 重量%のグリースCを用いた。実施例1同様の項目を測定した。結果を表1に併記する。
【0062】
比較例4
表1に示す組成で実施例4と同様の手順で等速自在継手試験片を作製したが、シリコーン系整泡剤は使用しなかった。初期潤滑用グリースには、離油度 0.8 重量%のグリースBを用いた。実施例1同様の項目を測定した。結果を表1に併記する。
【0063】
【表1】


【0064】
実施例1〜実施例4は、実等速自在継手を用いた初期特性試験においても初期の潤滑剤不足による摩耗等は確認されず、良好な結果を示した。比較例1〜比較例3は、初期特性試験においては、摺動部に摩耗が確認された。比較例1および比較例2は、初期に潤滑成分の放出が間に合わなかったため、潤滑剤不足となったものと考えられる。比較例3は初期潤滑用に併用したグリースの油分離が少なかったため、摺動部に素早く供給されず、初期の潤滑剤不足を補えなかったものと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の潤滑システムは、潤滑成分を保持する発泡潤滑剤の潤滑剤保持力を向上させるとともに、発泡潤滑剤の変形による潤滑剤の滲み出し量を必要最小限に留めることができ、かつグリースの存在により初期潤滑におけるなじみ性に優れ、長寿命で低コスト化の要望に応じ得る。このため、各種産業機械用および自動車用等に用いられる各種転がり軸受、自在継手等における潤滑システムとして好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の潤滑システムを用いた等速自在継手を示す断面図である。
【符号の説明】
【0067】
1 内輪
2 外輪
3 内輪側トラック溝
4 外輪側トラック溝
5 鋼球
6 ケージ
7 シャフト
8 ブーツ
9 発泡潤滑剤
10 グリース
【出願人】 【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
【出願日】 平成18年12月11日(2006.12.11)
【代理人】 【識別番号】100100251
【弁理士】
【氏名又は名称】和気 操


【公開番号】 特開2008−144036(P2008−144036A)
【公開日】 平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願番号】 特願2006−332982(P2006−332982)