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【発明の名称】 エンジン用潤滑油組成物
【発明者】 【氏名】羽生田 清志

【氏名】長富 悦史

【要約】 【課題】酸化安定性を大幅に改善することができるエンジン用潤滑油組成物を得ようとする。

【構成】鉱油、合成油またはこれらの混合物である潤滑油基油に、(A)下記式(1)で表されるポリアルキレンポリアミンと炭素数12〜30の飽和モノカルボン酸及び炭素数18〜24の不飽和モノカルボン酸よりなる群から選ばれた少なくとも一種のモノカルボン酸を反応させて得られたポリアルキレンポリアミドと、(B)芳香族アミン酸化防止剤を配合してエンジン用潤滑油組成物とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉱油、合成油またはこれらの混合物である潤滑油基油に、(A)下記一般式(1)で表されるポリアルキレンポリアミンと炭素数12〜30の飽和モノカルボン酸及び炭素数18〜24の不飽和モノカルボン酸よりなる群から選ばれた少なくとも一種のモノカルボン酸を反応させて得られたポリアルキレンポリアミドと、(B)芳香族アミン酸化防止剤を配合したエンジン用潤滑油組成物。
H2N−(R−NH)mH (1)
(式1中、Rは炭素数2〜4のアルキレン基であり、mは2〜6の整数である。)
【請求項2】
上記芳香族アミン酸化防止剤は、下記一般式(2)で表わされるものである請求項1に記載のエンジン用潤滑油組成物。
【化1】


(式2中、R2及びR3はそれぞれ独立に、C1〜C20の置換若しくは非置換のアルキル基又はC6〜C30の置換若しくは非置換のアリール若しくはアルキルアリール基を表す。)
【請求項3】
上記(A)ポリアルキレンポリアミドの配合割合が窒素量で0.01〜1.5重量%、(B)芳香族アミン酸化防止剤の配合割合が窒素量で0.01〜0.4重量%である請求項1または2に記載のエンジン用潤滑油組成物。
【請求項4】
上記(A)ポリアルキレンポリアミドの配合割合が窒素量で0.1〜0.5重量%、(B)芳香族アミン酸化防止剤の配合割合が窒素量で0.02〜0.1重量%である請求項3に記載のエンジン用潤滑油組成物。
【請求項5】
上記潤滑油基油は、API(AmericanPetroleumInstitute,米国石油協会)基油カテゴリーでグループ3またはグループ4に分類されるものを単独または混合したものである請求項1〜4のいずれかに記載のエンジン用潤滑油組成物。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、低灰分で優れた酸化防止性能を有するエンジン用潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンは熱効率が良く燃費が良いため、産業用のエンジンとして幅広く使用されている。しかしながら、排出ガス中に含まれている窒素酸化物(NOx)や粒子状物質(PM)による人体への影響が懸念され、近年、人体への影響軽減および環境保全のため、ディーゼルエンジンからの排出ガス規制が著しく厳しくなってきている。
【0003】
そのため、最近の車両には排出ガスの浄化を目的として、特に上記PMの低減を目的として酸化触媒やフィルター(DPF:Diesel Particulate Filter)等の後処理装置が装着されるようになった。
PMは、燃料やエンジン油中の硫黄分に起因する硫酸塩、スス及び燃料と潤滑油の未燃焼分である可溶性有機成分(SOF)を含んでいる。酸化触媒は、全PMの約30%占めると言われているSOF成分を酸化させて低減させる働きを担い、DPFはPMをフィルタートラップして低減させることにより排出ガスを浄化する。
【0004】
エンジン用潤滑油は一部分が燃焼室内で燃焼してしまう為に、金属清浄剤や耐摩耗剤などの金属成分を含有する添加剤を多く用いると、これらに含まれる金属分に起因する灰分を多量に含んだ排出ガスを排出することとなる。これらの灰分がDPFをつまらせ、排出ガス後処理装置に悪影響を与えることが報告されている。
【0005】
一方、エンジン油の燃焼によって生じる灰分が、JIS K2272に規定される硫酸灰分(「硫酸灰分の試験方法」による)とほぼ同じであることから、エンジン油中の金属分量は硫酸灰分量で論じられている。そして、DPFの目詰まり対策として、エンジン油の硫酸灰分量を低減させることが望ましいとされている。
また、燃料やエンジン油中の硫黄分が酸化触媒を被毒し、触媒活性を低下させてしまうため、エンジン油中の硫黄分を極力低減させることが望ましい。
【0006】
エンジン油中の硫酸灰分や硫黄分を低減させるためには、金属清浄剤や酸化防止剤として機能するジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)に代表される金属分を含有する添加剤を減らすことが必要となる。
しかしながら、これらの添加剤は、エンジン内を清浄に保つ清浄性や、エンジン油寿命を維持する酸化安定性といったエンジン油にとって必須の性能を付与するものである。
【0007】
また、鉱油中から硫黄化合物や窒素化合物を排除することによって、酸化防止作用が低下して熱安定性も悪くなる現象が生じるが、こうしたことの対策としてモリブデンチオカーバメート(MoDTC)を使用することは有効であるけれども(特許文献1)、この物質も金属分を含んでいるという問題がある。
【0008】
そして、エンジン油が酸化して劣化すると、スラッジなどの劣化生成物が油中に存在することになり、エンジン内部を著しく汚損してしまう為、長期にわたりエンジン内を清浄に保つ為には優れた酸化安定性を有するエンジン油が必要となる。
したがって、エンジン油中の硫酸灰分や硫黄分を単純に減らすことは、エンジン油の酸化安定性の面で重大な性能低下を引き起こすことになる。
このようにエンジン油から硫酸灰分、硫黄分、金属分を低減させると共に、酸化安定性の低下を防ぐことが望まれており、このために基油の高品質化、無灰酸化防止剤の増量といった手法があるが、いずれも製品のコスト上昇を招くことになって、充分に満足の行くものではなかった。
【特許文献1】特開平8−176579号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、排出ガスを浄化するための後処理装置の寿命を長く保つことができる低灰分、低リン、低硫黄のエンジン油が要求される中において、灰分、リン分、硫黄分を減少させつつエンジン油の酸化安定性の向上を、大きなコストの上昇を招くことなく、大幅に改善することができる潤滑油組成物を得ようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明者らは低灰分、低リン、低硫黄のエンジン油の研究、開発の過程において、ポリアルキレンポリアミドとアミン系酸化防止剤を組み合わせることにより、酸化防止性能を大幅に向上させることができることを見出し、かかる知見に基づいて本発明を完成するに至った。
本発明は、鉱油、合成油またはこれらの混合物である潤滑油基油に、(A)下記式(1)で表されるポリアルキレンポリアミンと炭素数12〜30の飽和モノカルボン酸及び炭素数18〜24の不飽和モノカルボン酸よりなる群から選ばれた少なくとも一種のモノカルボン酸を反応させて得られたポリアルキレンポリアミドと、(B)芳香族アミン酸化防止剤を配合したエンジン用潤滑油組成物である。
H2N−(R−NH)mH (1)
(式1中、Rは炭素数2〜4のアルキレン基であり、mは2〜6の整数である。)
【0011】
また、上記 (A)ポリアルキレンポリアミドの配合割合が窒素量で0.01−1.5重量%、(B)芳香族アミン酸化防止剤(B)の配合割合が窒素量で0.01−0.4重量%になるように配合すると好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、灰分、リン分、硫黄分を含んでいない(A)ポリアルキレンポリアミドと(B)芳香族アミン酸化防止剤を組合わせて使用することによって、エンジンの酸化安定性を大幅に向上させることが可能となり、低灰分、低リン、低硫黄のエンジン油を得ることができて環境に与える影響を大きく抑えることができる。
この潤滑油組成物によって、硫黄分が50ppm以下のガソリン及び軽油燃料に対応した、低灰分エンジン油を提供することができる。また、この潤滑油組成物は、上記内燃機関用のディーゼルエンジン油、ガソリンエンジン油、ガスエンジン油用の他、各種の潤滑油として広く用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本潤滑油組成物の基油には、通常の潤滑油に使用される鉱油、合成油を使用することができ、特に、API(AmericanPetroleumInstitute,米国石油協会)基油カテゴリーでグループ3またはグループ4に属する基油を、単独または混合物として使用することができる。
グループ3基油には、例えば、原油を常圧蒸留して得られる常圧残油を、高度水素化精製により製造される潤滑油基油や、フィッシャー・トロプシュ法によって合成したのち、溶剤脱ロウや接触脱ロウしたいわゆるGTL基油(ガス・ツー・リキッド油)がある。
【0014】
グループ4基油は、いわゆるポリ−α−オレフィン(例えば、エチレン−プロピレン共重合体、ポリブテン、1−オクテンオリゴマー、1−デセンオリゴマー、或いはこれらの水素化物など)である。
【0015】
上記(A)ポリアルキレンポリアミドは、ポリアルキレンポリアミンとカルボン酸を反応させることによって得る。
ポリアルキレンポリアミンは、下記一般式(1)
H2N−(R−NH)mH (1)
(式1中、Rは炭素数2〜4のアルキレン基であり、mは2〜6の整数である。)で示されるもので、具体例としては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサエチレンヘプタミン、テトラプロピレンペンタミン、ヘキサブチレンヘプタミンなどを挙げることができる。
【0016】
上記ポリアルキレンポリアミンと反応させるカルボン酸はモノカルボン酸であって、不飽和脂肪酸単独、分枝飽和脂肪酸単独、あるいは不飽和脂肪酸と分枝飽和脂肪酸との併用、分枝飽和脂肪酸と直鎖飽和脂肪酸との併用などが挙げられる。
具体的には、不飽和脂肪酸としては炭素数18〜24のモノカルボン酸、典型的なものとして、オレイン酸、エライジン酸、セトレイン酸、エルカ酸、ブラシジン酸などを例示することができる。
【0017】
分枝飽和脂肪酸としては炭素数18〜30のモノカルボン酸で、典型的なものとして、2−メチルヘプタデカン酸、16−メチルへプタデカン酸、2−オクタデカン酸、2−メチルオクタデカン酸、10−メチルオクタデカン酸、15−エチルヘプタデカン酸、3−メチルノナデカン酸、2−ブチル−2−ヘプチルノナン酸、2−エチルエイコサン酸、20−メチルヘンエイコサン酸、3−メチルトリコサン酸、10−メチルテトラコサン酸、18−メチルテトラコサン酸、13,16−ジメチルトリコサン酸、3,13,19−トリメチルトリコサン酸、イソステアリン酸などが挙げられる。
直鎖飽和脂肪酸としては炭素数12〜30のモノカルボン酸で、典型的なものとして、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸などを挙げることができる。
【0018】
前記脂肪族モノカルボン酸成分は、基本的には脂肪族基が直鎖の飽和または不飽和のアルキル基である脂肪族モノカルボン酸が中心であるが、これのみでは基油に対する溶解性に欠ける場合があるので、分枝アルキル基をもつ脂肪族モノカルボン酸を一部併用して溶解性を調節することができる。
この具体的組み合わせとしては、(1)直鎖の飽和アルキル基をもつ脂肪族モノカルボン酸と分枝の飽和アルキル基をもつ脂肪族モノカルボン酸との組み合わせ、(2)直鎖の不飽和アルキル基をもつ脂肪族モノカルボン酸と分枝の飽和アルキル基をもつ脂肪族モノカルボン酸との組み合わせ、などがある。
これらの組み合わせにおける直鎖型脂肪族モノカルボン酸と分枝型脂肪族モノカルボン酸との割合は、使用する基油の性質によって変化するが、通常、直鎖型脂肪族モノカルボン酸25〜100%モル、分枝型脂肪族モノカルボン酸75〜0%モルの範囲で使用することができる。
【0019】
上記ポリアルキレンポリアミンとモノカルボン酸との反応は、200〜220℃で2〜3時間実施することにより所要のアミドを得ることができる。
このときのモノカルボン酸の使用量は、ポリアルキレンポリアミン1モルに対して(m+1)モル以下が好ましい。
【0020】
アミン系酸化防止剤は好ましくは芳香族アミン、更に好ましくは第二級芳香族アミンである。このようなアミンは公知であり、それが油溶性又は油分散性である限り、使用される芳香族アミン酸化防止剤の種類に特別な制限はない。
【0021】
本発明で用いるアミン酸化防止剤は、下記一般式(2)
【化1】


(式2中、R2及びR3はそれぞれ独立に、C1〜C20の置換若しくは非置換のアルキル基又はC6〜C30の置換若しくは非置換のシクロアルキル、アリール、アラルキル若しくはアルキルアリール基を表す)
を有する第二級アミンであるのが好ましい。
置換されているならば、置換基は例えば、アルキル、アリール、アルコキシ、アリールオキシ、アシル、アシルアミノ、ヒドロキシ、カルボキシル又はニトロ基であってよい。好ましくはR2及びR3はそれぞれ置換又は非置換のアリール又はアルキルアリール基である。
【0022】
アミン系酸化防止剤として適当なものの例としては、ジフェニルアミン、1個以上の、それぞれ炭素数約16以下のアルキル置換基を有するアルキルジフェニルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、フェニル−β−ナフチルアミン、1個以上の、それぞれ炭素数約16以下のアルキル置換基を有するアルキル置換フェニル−α−ナフチルアミン又はアルキル置換フェニル−β−ナフチルアミンがある。
上記の適当なアルキル置換基の例としては、t−ブチル、t−ペンチル、ヘキシル、n−オクチル、t−オクチル、ノニル、デシル及びドデシルなどがある。
【0023】
上記第二級芳香族アミン酸化防止剤は多くのものが市販されており、これには例えば、Ciba-Geigy社から入手できるIrganoxL57、IrganoxL64及びIrganoxL06などがあり、また、R. T. Vanderbilt社から入手できるVanlube81、VanlubeSL及びVanlubeDNDなどが例示できる。
【0024】
本発明においては、上記ポリアルキレンポリアミドと、芳香族アミン酸化防止剤が組み合わされて基油に配合され、下記するように良好な酸化防止作用を発揮するようになる。上記ポリアルキレンポリアミドは、従来、劣化により発生する油に不溶なスラッジを分散させる効果、防錆性や摩擦低減の効果については知られていたが、ポリアルキレンポリアミドと芳香族アミン酸化防止剤を併用することによって、極めて良好な酸化防止効果、潤滑油の酸化安定性の向上効果については、本発明者らの今回の実験によって初めて解明されたことである。
【0025】
上記ポリアルキレンポリアミドと芳香族アミン酸化防止剤を併用する場合、ポリアルキレンポリアミドの配合割合が窒素量で0.01〜1.5重量%、好ましくは0.05〜1重量%、より好ましくは0.1〜0.5重量%であり、芳香族アミン酸化防止剤の配合割合は窒素量で0.01〜0.4重量%、好ましくは0.02〜0.1重量%にするとよい。
【0026】
本潤滑油組成物においては、上記基油に、ポリアルキレンポリアミドと芳香族アミン酸化防止剤を併用して配合する以外に、潤滑油の用途に応じて求められる要求性能に応じて、適宜、粘度指数向上剤、流動点降下剤、金属清浄剤、分散剤、耐摩耗剤、酸化防止剤、防錆剤、腐食防止剤及び消泡剤などを配合することができる。
この場合においても、要求性能を満たしつつ、出来るだけ低灰分、低リン、低硫黄の潤滑油になるように効率的に使用すると良い。
【0027】
上記粘度指数向上剤としては、例えば、ポリメタクリレート系、ポリイソブチレン系、エチレン−プロピレン共重合体系、スチレン−ブタジエン水添共重合体系等のものを用いることができ、これらは、通常、3〜35重量%の割合で使用される。
また、流動点降下剤としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化パラフィンとナフタレンとの縮合物、塩素化パラフィンとフェノールとの縮合物、ポリメタクリレート、ポリアルキルスチレン等が挙げられ、これらは、通常、0.1〜10重量%の割合で使用される。
【0028】
上記金属清浄剤(又は清浄剤添加剤)は、エンジンのサスペンジョン中の微細な固形物を保持することにより、ピストン堆積物、例えば高温ワニス及びラッカー堆積物の形成を低減させるものである。また、この金属清浄剤は酸中和性を有していてもよい。
【0029】
この金属清浄剤は、極性先端部、即ち、有機酸の金属塩を油溶性の長い疎水性末端部に有しており、石鹸又は界面活性物質とも呼ばれる。従って、一般的に、有機酸は一つ又はそれより多い官能基、例えば−OH、−COOH又は−SOHを、金属及びヒドロカルビル置換基との反応のために有している。
この金属清浄剤が有機酸の中和に必要な理論量に関して過剰の金属を含む場合、金属清浄剤は過塩基性であってもよい。有機酸としては、例えば、スルホン酸、フェノール及び硫化したそれらの誘導体及び芳香族カルボン酸を含むカルボン酸が挙げられる。
【0030】
上記フェノールは、非硫化又は好ましくは硫化されていてもよい。このフェノールは、1以上のヒドロキシル基を含むフェノール(例えば、アルキルカテコールなど)又は縮合芳香族環(例えば、アルキルナフトールなど)、及び化学反応により改質されたフェノール、例えばアルキレン架橋フェノール、マンニッヒ塩基縮合フェノール、及びサリゲニン型フェノール(塩基性条件下でフェノール及びアルデヒドの反応により製造される)を含むものである。
【0031】
一般的に、上記スルホン酸は、ヒドロカルビル置換、具体的にはアルキル置換された芳香族炭化水素、例えば蒸留及び/又は抽出により石油の分別から、又は芳香族炭化水素のアルキル化により得られるもののスルホン化により得られる。アルキルアリールスルホン酸は、一般的に、炭素数が22〜100又はそれより多い。
上記スルホン酸は、芳香族成分上で1以上のアルキル基により置換されていてもよく、例えば、それらはジアルキルアリールスルホン酸であってもよい。
【0032】
上記のカルボン酸としては、モノ及びジカルボン酸が挙げられる。好ましいモノカルボン酸は、炭素数(カルボキシル基中の炭素原子を含む)が8〜30、好ましくは8〜24のものである。
モノカルボン酸としては、例えば、イソオクタン酸、ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、ベヘン酸などが挙げられる。他の好適な酸は、α−炭素原子での三級置換基を有するもの、及びカルボキシル基を隔てる二つ又はそれより多い炭素原子を有するジカルボン酸である。さらに、炭素数が35より多い、例えば炭素数36〜100のジカルボン酸も好適に用いることができる。
【0033】
このカルボン酸の好ましいタイプとして芳香族カルボン酸があり、芳香族カルボン酸の芳香族成分は、ヘテロ原子、例えば窒素及び酸素を含むことができる。好ましくは、その芳香族成分の炭素数は6又はそれより多いもので、例えば、ベンゼンは好ましい成分である。
一つ又はそれより多い芳香族成分、例えば一つ又はそれより多いベンゼン環であって、縮合されているか又はアルキレン架橋により結合されているものを含んでいてもよい。
【0034】
芳香族カルボン酸のもっとも好ましい例は、サリチル酸及びそれらの硫化誘導体、例えばヒドロカルビル置換したサリチル酸及びそれらの誘導体である。ヒドロカルビル置換したサリチル酸の硫化方法は、当業者に公知である。
サリチル酸はフェノキシドのカルボキシル化、例えば、Kolbe-Schmitt法により製造され、その場合、通常、希釈剤中で、非カルボキシル化フェノールとの混合物において一般的に得られる。
【0035】
この金属清浄剤は、中性又は過塩基性であってもよく、そうしたものは当技術分野において公知である。具体的にはJIS K2501(過塩素酸法)で規定される全塩基価(TBN)が、5〜600mgKOH/gである金属清浄剤が好ましい。金属清浄剤の添加剤成分は、一つのタイプの有機酸の塩又は複数のタイプの有機酸の塩を含んでいてもよく、それらは中性金属清浄剤、過塩基性金属清浄剤又は両方の混合物であり得る。
【0036】
上記分散剤、特に無灰分散剤としては、例えば、ポリブテニルコハク酸イミド系、ポリブテニルコハク酸アミド系、ベンジルアミン系、コハク酸エステル系のものがある。これらの分散剤は、ホウ素化されていてもよい。
【0037】
これら分散剤のうち、好ましいものに、塩素又は塩素原子含有化合物のいずれも使用しない熱反応方法により、ポリブテン及び無水マレイン酸から製造されたポリイソブテニルコハク酸無水物から得られる、無灰コハク酸イミド又はそれらの誘導体があり、好ましくは、非重合性(例えば、モノ−又はビス−コハク酸イミド)である。
これら無灰コハク酸イミド又はそれらの誘導体は、通常、潤滑剤組成物中に、オイル組成物の重量をベースとして0.01〜0.2、好ましくは0.03〜0.15、さらに好ましくは0.05〜0.12重量%の窒素を提供する程度の量において使用されとよい。
【0038】
上述した分散剤の他に、分散性を有する添加剤として、粘度指数向上剤等の分散性を提供できる重合性化合物を用いることもできる。
【0039】
上記の耐摩耗剤としては、リン系化合物、有機モリブデン化合物、脂肪酸エステル化合物あるいは脂肪族アミン系化合物が挙げられる。
リン系化合物としては、例えば、アルキルジチオリン酸亜鉛、リン酸、亜リン酸、リン酸モノエステル類、リン酸ジエステル類、リン酸トリエステル類、亜リン酸モノエステル類、亜リン酸ジエステル類、亜リン酸トリエステル類、(亜)リン酸エステル類の塩、及びチオリン酸、あるいはチオ亜リン酸又はこれらのエステル類等、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0040】
このリン系化合物としては、特に、アルキルジチオリン酸亜鉛が好適に用いられ、通常、炭素数2〜30、好ましくは3〜20の炭化水素基を含有する。この炭素数2〜30の炭化水素基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルキルシクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルキルアリール基、及びアリールアルキル基を挙げることができる。
【0041】
上記耐摩耗剤の有機モリブデン系化合物としては、例えば、モリブデンジチオカーバメート、モリブデンジチオフォスフェート、モリブデン酸アミン塩などが挙げられ、特に、モリブデンジチオカーバメートが好ましい。
【0042】
本発明により十分な酸化安定性が得られるが、より広い温度域で有効な酸化安定性を得るために芳香族アミン酸化防止剤以外の酸化防止剤として、フェノール系酸化防止剤を併せて使用することができる。
フェノール系酸化防止剤には、例えば、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクチル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等が好ましい例として挙げることができる。これらは二種以上を混合して使用することができ、高温で使用される潤滑油の場合に効果的である。
【0043】
上記の防錆剤としては、例えば、石油スルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、ジノニルナフタレンスルホネート、アルケニルコハク酸エステル、及び多価アルコールエステル等が挙げられる。
また、腐食防止剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、トリルトリアゾール系、チアジアゾール系、及びイミダゾール系化合物等が挙げられる。
【実施例】
【0044】
以下本発明について、実施例及び比較例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
実施例及び比較例の調製にあたり、下記の組成材料を用意した。
なお、表中の各成分は以下のとおりである。
1 基油
1−1 フィッシャートロプッシュ法によるワックスの水素化異性化したもの。(性
状:100℃の動粘度;5.1mm2/s、油中イオウ分;0.01重量%以
下、粘度指数;145)
1−2 ポリ―α―オレフィン(PAO)(性状:100℃の動粘度;5.9mm2/
s、油中イオウ分;0.01重量%以下、粘度指数;135)
2 添加剤
2−1 ポリアルキレンポリアミド(A)(テトラエチレンペンタミンとステアリン酸およびイソステアリン酸のポリアミド、窒素含有量6.0重量%)
2−2 芳香族アミン酸化防止剤(B)(N−p−ブチルフェニル−N−p'−オクチルフェニル アミン):窒素含有量4.5重量%
2−3 ポリブテニルこはく酸イミド(ポリブテニル基の分子量が約1800、窒素含有量1.2質量%)
2−4 フェノール系酸化防止剤(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸エステル)
2−5 ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZnDTP;アルキル基が分枝のブチル基)
【0045】
実施例1〜4及び比較例1〜8の潤滑油組成物の配合組成は、表1〜3に示すとおりである。
【0046】
(試験)
潤滑油組成物の酸化安定性を評価するために、CEC法(Coordinating European Council:自動車関係の欧州試験規格)に準拠し、210℃においてPDSC試験(Pressured Differential Scanning Calorimeter:加圧型示差熱量計)を行った。この試験による酸化寿命の評価は、試料温度が210℃に達した時点から、試料の発熱が急激に発生するまでの時間の長さ(酸化誘導時間)で判定する。
評価基準は、酸化誘導時間が長いほど酸化安定性に優れるが、本試験を規格試験として採用しているACEA(Association des Constructeur Europeans d‘Automobiles:欧州自動車工業会)のE4−99規格に準拠し、酸化誘導時間が35分以上のものをエンジン用潤滑油組成物として有効とした。
【0047】
(結果)
上記試験の結果を表1〜表3に示す。
(評価)
表1に示すように、実施例1〜4のエンジン用潤滑油は、(A)ポリアルキレンポリアミド成分と(B)芳香族アミン酸化防止剤成分の併用により、いずれも試験値において35分以上の値を示しており、特に実施例3においては約150分と極めて優れた酸化安定性を示し、非常に高い効果を有することがわかる。
一方、表2、表3のように(A)ポリアルキレンポリアミド成分を単独で使用したり、(B)芳香族アミン酸化防止剤成分を単独で使用したものでは、試験値が0〜5.1分でしかなく、著しく酸化安定性が劣ることが判る。
また、(A)ポリアルキレンポリアミド成分とフェノール系酸化防止剤成分を併用したものでも(比較例2)、(A)ポリアルキレンポリアミド成分とZnDTP成分を併用したものでも(比較例3)、ポリブテニルこはく酸イミドと(B)芳香族アミン酸化防止剤を併用したものでも(比較例1)、試験値が8.1〜17.7分程度の結果しか得られず、実施例の(A)ポリアルキレンポリアミド成分と(B)芳香族アミン酸化防止剤を併用したものが特異的に酸化安定性において優れていることが判る。
【0048】
【表1】


【0049】
【表2】


【0050】
【表3】


【出願人】 【識別番号】000186913
【氏名又は名称】昭和シェル石油株式会社
【識別番号】590000455
【氏名又は名称】財団法人石油産業活性化センター
【出願日】 平成18年7月28日(2006.7.28)
【代理人】 【識別番号】100081547
【弁理士】
【氏名又は名称】亀川 義示


【公開番号】 特開2008−31289(P2008−31289A)
【公開日】 平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願番号】 特願2006−205953(P2006−205953)