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【発明の名称】 潤滑油組成物
【発明者】 【氏名】ロビン ハワード スコット

【氏名】ロバート ウィリアム ショー

【要約】 【課題】比較的高濃度のMgを含むにも関らずボアポリッシング及び硫酸灰分を低減する潤滑油組成物の提供。

【構成】(a)潤滑粘度の潤滑油ベースストック;(b)無灰アミン化合物及び/又は硫黄を含まないフェノール化合物から選ばれ、少なくとも0.6質量%且つ3.0質量%である、酸化防止剤成分;(c)スルホン酸マグネシウム、サリチル酸マグネシウム、マグネシウムフェネートから選ばれKOH1g当り350mgを越える全塩基価(TBN)を有する過塩基性マグネシウム化合物で、0.05質量%より多いMgを潤滑油組成物に提供する、清浄剤成分;及び、場合により(d)0.0〜1.8質量%の金属ヒドロカルビルジチオホスフェート化合物;を含み、灰分がASTM D874により測定して少なくとも0.6質量%且つ2.0質量%以下である、ディーゼルエンジン用の潤滑油組成物を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)潤滑粘度の潤滑油ベースストック;
(b)酸化防止剤成分;
(c)清浄剤成分;及び、
場合により(d)0.0〜1.8質量%の1以上の金属ヒドロカルビルジチオホスフェート化合物;
を含む、ディーゼルエンジン用の潤滑油組成物であって、
前記酸化防止剤成分(b)が、1以上の無灰アミン化合物及び/又は硫黄を含まないフェノール化合物から選ばれ、潤滑油組成物の総質量を基準として少なくとも0.6質量%且つ3.0質量%までの量であり;前記清浄剤成分(c)が、1以上のスルホン酸マグネシウム、サリチル酸マグネシウム、マグネシウムフェネートから選ばれるKOH1g当り350mgを越える全塩基価(TBN)を有する過塩基性マグネシウム化合物であり、潤滑油組成物及び場合によりカルシウム清浄剤化合物の質量を基準として0.05質量%より多いMgを潤滑油組成物に提供し;且つ、潤滑油組成物の灰分がASTM D874により測定して少なくとも0.6質量%且つ2.0質量%以下である、前記潤滑油組成物。
【請求項2】
Mg含量が、潤滑油組成物の質量を基準として0.3質量%を越えない、請求項1記載の潤滑油組成物。
【請求項3】
Mg含量が、潤滑油組成物の質量を基準として少なくとも0.06質量%且つ0.15質量%までである、請求項1又は2記載の潤滑油組成物。
【請求項4】
1以上の分散剤を含む、請求項1〜3のいずれか1項記載の潤滑油組成物。
【請求項5】
1以上の分散剤が1以上の窒素含有分散剤を含む、請求項1〜4のいずれか1項記載の潤滑油組成物。
【請求項6】
1以上の窒素含有分散剤により提供される窒素含量が、潤滑油組成物の質量を基準として少なくとも0.07質量%であり、場合により0.07〜0.25質量%の範囲である、請求項5記載の潤滑油組成物。
【請求項7】
酸化防止剤成分が無灰酸化防止剤化合物のみからなる、請求項1〜6のいずれか1項記載の潤滑油組成物。
【請求項8】
0.8質量%以上、場合により1.0質量%以上、且つ1.6質量%以下、場合により1.5質量%以下の灰分を有する、請求項1〜7のいずれか1項記載の潤滑油組成物。
【請求項9】
金属ヒドロカルビルジチオホスフェートにより提供されるリンの量が潤滑油組成物の質量を基準として0.05〜0.20質量%の範囲である、請求項1〜8のいずれか1項記載の潤滑油組成物。
【請求項10】
清浄剤成分(c)がサリチレート清浄剤を含む、請求項1〜9のいずれか1項記載の潤滑油組成物。
【請求項11】
エンジンを請求項1〜10のいずれか1項記載の潤滑油組成物で潤滑することを含む、ヘビーデューティディーゼルエンジンの運転方法。
【請求項12】
エンジンを請求項1〜10のいずれか1項記載の潤滑油組成物で潤滑することを含む、ディーゼルエンジン、例えば、ヘビーデューティディーゼルエンジンのボアポリッシングを低減する方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は潤滑油組成物、特にはディーゼルエンジン(即ち、圧縮点火エンジン)、更に特別にはヘビーデューティディーゼルエンジン(本明細書中、“HDD”と略記される)と称される型のディーゼルエンジン用の潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンは、夫々の中でピストンが往復する一つ以上のボアを含む。ピストンは、燃焼チャンバーとクランクケースの間にシールを与えるために、その外周の周囲にピストンリングを有する。ピストンの往復移動がピストンリングをボアの壁に向かって押して、ボア壁及びピストンリングの磨耗を生じる可能性がある。ボア壁及びピストンリングの磨耗は、潤滑油の被膜がボア壁上で維持されてピストンリングとボア壁との間の直接の接触を回避又は低減することを、できるだけ、確実にすることにより軽減される。
或る種のディーゼルエンジン、例えば、HDDでは、ボアの壁が一連の溝(これらは潤滑油を保持するように作用し、その結果、ボアの壁上の潤滑油の被膜の生成及び維持が促進される)を有して形成される。前記溝は、しばしばボア壁中でらせんの溝又はくぼみとして形成され、これらは通常ボア壁中で反対の方向にらせん形成している二組の溝として形成され、その結果、夫々の組の溝が互いに重なり、それによりボア壁上の潤滑油の被膜の生成及び維持が促進される。
ディーゼルエンジン、特にHDDの使用中に、溝間のボア壁の少なくとも一部の領域がすり減らされるようになり、ボア壁中のこれらの領域の溝の深さがそれに応じて減少させられるようになり、その結果、潤滑剤を保持する溝の能力が低下するようになり、これが順にピストンリングとボア壁との間の潤滑剤被膜の生成及び維持に悪影響を及ぼす傾向があり、磨耗の増加、そしておそらくはエンジン破損をもたらす。溝間のボア領域の磨耗の現象が“ボアポリッシング(bore polishing)”として知られている。
本発明の一つの目的は、以下に明記されるような、或る型の潤滑剤の使用によりボアポリッシングを減少又は排除することである。
マグネシウム含有成分を含む潤滑剤組成物が、特に現代のヨーロッパスタイルのHDDで、ボアポリッシングを生じる傾向があることは公知である。
【0003】
EP 1167497Aは、0.01〜0.3重量%の硫黄含量及び0.01〜0.1重量%のリン含量を有し、0.1〜1重量%の範囲の硫酸灰分を生じる潤滑油組成物をクレームし、記載しており、これは
a) 多くても0.1重量%の硫黄含量を有する過半量のミネラルベースオイル、
b) 窒素原子含量に関して0.01〜0.3重量%の量のアルケニル-又はアルキル-スクシンイミド又はこれらの誘導体を含む無灰分散剤、
c) 硫酸灰分に関して0.1〜1重量%の量の有機酸金属塩を含む金属含有清浄剤(これは1g当り10〜350mgのKOHのTBNを有するアルキルサリチル酸の非硫化アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩及びマンニッヒ塩基構造を有するアルキルフェノール誘導体の非硫化アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩からなる群から選ばれる)、
d) リン含量に関して0.01〜0.1重量%の量の亜鉛ジアルキルジチオホスフェート、
e) 0.01〜5重量%の量のフェノール化合物及びアミン化合物からなる群から選ばれた酸化抑制剤、を含む。
EP 1167497Aの潤滑油組成物は、排ガス粒状物トラップ、酸化触媒及び/又はNOx還元触媒の機能に悪影響しないで、ディーゼルエンジンを含む、全ての型の内燃機関のための潤滑を提供することを目的とする。この特許明細書の実施例3は金属含有清浄剤として、シェル日本社から“SAP008”として入手し得る、1.7重量%のサリチル酸マグネシウム(これは6.0重量%のMg、0.22重量%のS、TBN 280 mg KOH/gを含む)を含む潤滑油組成物を記載している。潤滑油組成物中のマグネシウム濃度は1.7重量%x6.0重量%=0.102重量%のMgである。EP1167497Aは、ヘビーデューティディーゼルエンジンに関係していないことが明らかであり、しかもボアポリッシング問題にも関係していない。EP1167497Aは、ボアポリッシングに関する支持(bearing)を有する開示又は教示を示していない。
【0004】
米国特許第6423670号は、(a)0.2質量%以下のホウ素を有する潤滑油無灰分散剤、(b)油溶性中性カルシウムフェネート清浄剤、(c)0.05質量%以下のマグネシウムが組成物中に存在するような量で存在する油溶性過塩基性カルシウムもしくはマグネシウムスルホネート又はこれらの混合物、(d)潤滑油組成物のリン含量が0.025〜0.10質量%であるような量で存在する金属ジヒドロカルビルジチオホスフェート、及び(e)少量のフェノール又はアミン酸化防止剤、が添加された潤滑粘度の過半量の油を含むディーゼルエンジン潤滑油組成物をクレームし、開示しており、その潤滑油組成物はフェネート(b)以外の、中性金属清浄剤を含まない。
米国特許第6423670号の実施例2は二種の潤滑油を記載しており、両方が0.256質量%の過塩基性Mgスルホネート、ホウ酸塩処理分散剤、中性カルシウムフェネート、フェノール酸化防止剤、亜鉛ジヒドロカルビルジチオホスフェート、及び過塩基性スルホン酸カルシウムを含み、前記潤滑油の一つが、それらに加えて、中性スルホン酸カルシウムを含む。それら潤滑油がボアポリッシュを含む、幾つかの特性についてダイムラー・クライスラー・シーケンスIIIE、OM364LAディーゼルエンジン試験の操作に従って評価された。中性スルホン酸カルシウムを含む潤滑油は、ボアポリッシュ結果に関して不十分な結果(5-6%)を生じた。中性スルホン酸カルシウムを含まない同様の潤滑油は、過塩基性Mgスルホネート含量が減少された場合(その他の要素は同じである)でさえも良好な結果を生じた。
【0005】
米国特許第5320765号は、過半量の潤滑粘度の油並びに(A)少なくとも約2重量%の(i)長鎖炭化水素置換モノカルボン酸及びジカルボン酸又はそれらの酸無水物もしくはエステルの、油溶性塩、アミド、イミド、オキサゾリン及びエステル、及びこれらの混合物、(ii)直接結合されたポリアミンを有する長鎖脂肪族炭化水素、(iii)約1モル比率の長鎖炭化水素置換フェノールを約1〜2.5モルのホルムアルデヒド及び約0.5〜2モルのポリアルキレンポリアミンと縮合することにより生成されたマンニッヒ縮合生成物、及び(iv)長鎖炭化水素置換アミノフェノールを反応させて、長鎖炭化水素置換アミド又はイミド含有フェノール中間体付加物を生成し、約1モル比率のその長鎖炭化水素置換アミド又はイミド含有フェノール中間体付加物を約1〜2.5モルのホルムアルデヒド及び約0.5〜2モルのポリアミンと縮合することにより生成されたマンニッヒ縮合生成物からなる群から選ばれた少なくとも1の油溶性無灰分散剤〔(i)、(ii)、(iii)及び(iv)中の前記長鎖炭化水素基はC2-C10モノ-オレフィンのポリマーであり、前記ポリマーは約1,000〜約5,000の数平均分子量を有する〕、(B)酸化防止有効量の少なくとも1の油溶性酸化防止剤物質、及び(C)少なくとも1の油溶性ジヒドロカルビルジチオホスフェート物質(夫々のヒドロカルビル基は、平均で、少なくとも3個の炭素原子を有する)を含む低硫酸灰分のヘビーデューティディーゼルクランクケース潤滑油組成物をクレームし、開示しており、その潤滑油は0.6重量%未満の全硫酸灰分(SASH)レベル及び約0.01:1〜約0.2:1のSASH重量:無灰分散剤重量比を含む。
米国特許第5320765号の組成物は、エンジンカーボン付着物を低減し、潤滑油消費の速度を低下させるとクレームされている。米国特許第5320765号の組成物は、エンジン排ガス中の灰分についての必須の制限を満足するために低灰分(0.6重量%未満)を有する。
ディーゼルエンジン、特に(決して排他的ではないが)HDDの燃料の燃焼は、エンジン及びその排気システムの一部の腐食のような有害な効果を有し得る酸性成分の生成をもたらす。ディーゼルエンジン用の潤滑油は酸性成分を中和し、こうして酸性成分による腐食を減少するために、比較的高い塩基度(例えば、高い全塩基価、TBN)を有するように通常配合される。高塩基度は、塩基性金属含有清浄剤を潤滑油に組み込むことにより通常得られる。普通の塩基性金属含有清浄剤として、カルシウムをベースとする清浄剤、例えば、スルホン酸カルシウムが挙げられる。金属含有清浄剤の塩基度は過塩基性清浄剤を使用することによりしばしば増大され、これらは当業者に公知であり、これらは非過塩基性清浄剤よりも多くの塩基性金属成分を含む。
【0006】
潤滑油に組み込み得る塩基性金属清浄剤の量は制限される。何とならば、清浄剤の金属がエンジン装置、例えば、排ガスフィルター及び排ガス精製触媒の運転に悪影響する灰分物質を生じるからである。
灰分物質は質量により評価される。こうして、エンジン及びその関連装置に耐えられる灰分の質量が、塩基性金属含有清浄剤から生じるエンジンオイルのTBNを制限する。しかしながら、所定のTBNについて、マグネシウム清浄剤はマグネシウムがカルシウムよりも軽く、軽い灰分を生じるという事実のためにカルシウム清浄剤よりも低質量の灰分を生じる。
HDDを含むディーゼルエンジン用のエンジンオイル組成物は、マグネシウム清浄剤で配合されていた。マグネシウム含有清浄剤を含む潤滑剤組成物の公知の欠点は、それらが特に(排他的ではないが)現代のヨーロッパスタイルのHDDでボアポリッシングを生じる傾向があることである。それ故、エンジンオイル中のマグネシウムの濃度が比較的低い値に制限される傾向があった。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者らは、HDDを含むディーゼルエンジンで許容し得ないレベルのボアポリッシング又は許容し得ないレベルの灰分を生じることなく、マグネシウム含有清浄剤に由来する比較的高濃度のマグネシウムを含む潤滑油が配合され得ることを発見した。
明らかであるように、マグネシウム含有潤滑組成物の使用は、或る種の利益及び利点を生じる。
また、低減された量のリン含有耐磨耗添加剤(例えば、ZDDP)を含む潤滑剤中で、サリチレート清浄剤がヨーロッパHDD潤滑剤についての或る工業規格磨耗試験、特別にはOM611磨耗試験でスルホネート清浄剤及びフェネート清浄剤に対し磨耗性能の改良を与えることが観察された。それ故、一局面において、特許請求の範囲に記載された潤滑油組成物の清浄剤成分は少なくとも1のサリチレート清浄剤を含んでもよい。
本発明の第一の局面は下記の成分:
(a)潤滑粘度の潤滑油ベースストック、
(b)酸化防止剤成分、
(c)清浄剤成分
場合により(d)0.0〜1.8質量%の1以上の金属ヒドロカルビルジチオホスフェート化合物;
を含む、ディーゼルエンジン、特にヘビーデューティディーゼルエンジン(“HDD”)用の潤滑組成物であって、
前記酸化防止剤成分(b)が、1以上の無灰アミン化合物及び/又は硫黄を含まないフェノール化合物から選ばれ、潤滑組成物の総質量を基準として少なくとも0.6質量%かつ3.0質量%までの量であり;前記清浄剤成分(c)が、1以上のスルホン酸マグネシウム、サリチル酸マグネシウム、マグネシウムフェネートから選ばれる350mg/g KOHを越える全塩基価(TBN)を有する過塩基性マグネシウム化合物であり、潤滑油組成物及び場合によりカルシウム清浄剤化合物の質量を基準として0.05質量%より大きいMgを潤滑油組成物に提供し;かつ、潤滑油組成物の灰分がASTM D874により測定して少なくとも0.6質量%かつ2.0質量%以下である前記潤滑油組成物を提供する。
本発明の第二の局面は、エンジンを第一の局面の潤滑油組成物で潤滑することを特徴とするヘビーデューティディーゼルエンジンの運転方法を提供する。
本発明の第三の局面は、ヘビーデューティディーゼルエンジン中のボアポリッシングを低減する方法を提供し、その方法はエンジンを第一の局面の潤滑油組成物で潤滑することを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
ベースオイルは潤滑粘度の油であり、下記の範囲の特性を有し得る。ベースオイルはAPI Engine Oil Licensing and Certification System (EOLCS), Indistry Services Department, 第14編, 1996年12月, 補遺1, 1998年12月及びATIELコードに特定されたグループI、II、III又はIVベースストックの1以上を含む。ベースオイル硫黄含量は0.00〜1.00重量%であってもよく、100℃におけるKVは3.8mm2/s〜21.9mm2/sであってもよい。更に好ましくは、ベースオイル硫黄含量は0.00〜0.80重量%であってもよく、100℃におけるKVは3.8mm2/s〜8.0mm2/sであってもよい。
酸化防止剤成分は、1以上のアミン又はアミン化合物及び/又は硫黄を含まないフェノールもしくは硫黄を含まないフェノール化合物であってもよい。好適なアミンとして、チバから入手し得るイルガノックスL67及びイルガノックスL57並びにケムツラから入手し得るナウガルーブ438Lが挙げられるが、これらに限定されない。好適な硫黄を含まないフェノールとして、チバから入手し得るイルガノックスL135及びアフトン・ケミカルズから入手し得るHITEC 4782及び4727が挙げられるが、これらに限定されない。“イルガノックス”、“ナウガルーブ”及び“HITEC”は商品名である。
1以上の酸化防止剤成分は、潤滑油組成物の合計質量を基準として潤滑組成物の少なくとも0.6質量%を構成する。好適には、1以上の酸化防止剤成分は、潤滑油組成物の合計質量を基準として潤滑油組成物の少なくとも0.75質量%を提供する。1以上の酸化防止剤成分は、潤滑油組成物の合計質量を基準として潤滑油組成物の3.0質量%までを構成する。1以上の酸化防止剤成分は、潤滑油組成物の合計質量を基準として潤滑油組成物の2.75質量%までを提供することが好適である。
好適には、潤滑油組成物は、無灰酸化防止剤成分のみを含む。
【0009】
過塩基性マグネシウム化合物は、潤滑油組成物の質量を基準として、0.05質量%より大きいMgを潤滑油組成物に提供する。好適には、過塩基性マグネシウム化合物は、潤滑油組成物の質量を基準として、少なくとも0.06質量%のMgを潤滑油組成物に提供する。過塩基性マグネシウム化合物は、潤滑油組成物の質量を基準として、少なくとも0.063質量%のMgを潤滑油組成物に提供してもよい。好適には、過塩基性マグネシウム化合物は、潤滑油組成物の質量を基準として、0.3質量%以下のMgを潤滑油組成物に提供する。潤滑油組成物のMg含量は潤滑油組成物の質量を基準として、好適には0.15質量%までである。潤滑油組成物は、潤滑油組成物の合計質量を基準として、マグネシウム化合物に由来する0.14質量%までのMgを含むことが好適である。
本発明の潤滑組成物は、少なくとも8.0、好ましくは9.0以上のTBN(ASTM D2896により測定される全塩基価)を有し得る。最大TBNはおそらく20.0を越えず、多くの組成物について実用的な最大TBNが15.0であると見なされる場合があり得る。
本発明の潤滑組成物はリン成分を含んでもよい。リン成分は耐磨耗成分、例えば、1以上のジヒドロカルビルジチオリン酸の1以上の塩であってもよい。耐磨耗成分として使用されるジヒドロカルビルジチオリン酸の代表的な塩は、亜鉛ジヒドロカルビルジチオホスフェート、ZDDPである。潤滑組成物は、その他の成分、例えば、或る種のホスフィット(これらは耐磨耗成分として使用し得る)に由来するリン成分を含んでもよい。リンは、2000ppm(質量基準)までの量で(例えば、ZDDPに由来して)潤滑組成物中に存在してもよい。最大リンレベルはより低く、例えば、1400ppm以下、例えば、1200ppm又は1000ppmであることが好ましい。最小リンレベルはゼロであるが、80ppm(質量基準)以上、例えば、100ppmであってもよい。200〜800ppmの範囲のリンレベルが本発明の潤滑組成物中で使用されてもよい。好適には、金属ヒドロカルビルジチオホスフェートにより提供されるリンの量は組成物の質量を基準として、0.05〜0.20質量%の範囲である。
本発明の潤滑組成物は、場合により1以上の分散剤を含む、付加的な添加剤を含んでもよい。1以上の分散剤は窒素含有分散剤であることが好適である。1以上の分散剤は、潤滑油組成物の質量を基準として、少なくとも0.07質量%の窒素を潤滑組成物に提供してもよい。1以上の任意の分散剤は、潤滑油組成物の質量を基準として、0.07〜0.25質量%の窒素を潤滑油組成物に提供することが好適である。
潤滑油組成物の硫酸灰分は、潤滑油組成物の質量を基準として、少なくとも0.6質量%である。潤滑油組成物は、潤滑油組成物の質量を基準として、少なくとも0.8質量%の硫酸灰分を有することが好適である。本発明の潤滑油組成物は、1.0質量%以上の硫酸灰分を有することが好適である。本発明の潤滑油組成物は、潤滑油組成物の合計質量を基準として2.0質量%以下の硫酸灰分を有する。本発明の潤滑油組成物は、潤滑油組成物の質量を基準として1.6質量%以下、好ましくは1.5質量%以下、更に好ましくは1.2質量%以下の硫酸灰分を有し得る。
次に、本発明が幾つかの実施例を参照して更に記載される。
【実施例】
【0010】
幾つかの潤滑油組成物を配合し、それらの全てはヘビーデューティディーゼルエンジンを潤滑するのに適していた。それら潤滑油組成物は、特に、下記の成分を含んでいた:
(i) ベースオイル
(ii) 清浄剤
(iii) 分散剤
(iv) 酸化防止剤
(v) 耐磨耗成分。
以下、上記成分の幾つかの更なる詳細を示す。
(i) ベースオイル:ベースオイルは、0.0〜0.8重量%の硫黄含量、95〜129の粘度指数及び100℃にて5〜7mm2/sのベースブレンドKVを有する炭化水素ベースストックであった。
(ii) 清浄剤:清浄剤成分は、スルホン酸カルシウム、カルシウムフェネート、スルホン酸マグネシウム及びサリチル酸カルシウムの混合物を含んでいた。潤滑油中の合計されたカルシウム及びマグネシウム含量は0.18〜0.36質量%の範囲であった。このような清浄剤は全て、Infineum UK社から市販されている。
(a)マグネシウム清浄剤は、9.1重量%のMg含量及び405のTBNを有するスルホン酸マグネシウムであった。
(iii) 分散剤:無灰分散剤は、通常PIBSA-PAM型分散剤として知られている、ポリイソブチレン無水コハク酸-ポリアミンであった。潤滑油中の分散剤に由来する合計Nは0.06〜0.12重量%であった。このような分散剤はInfineum UK社から市販されている。
(iv) 酸化防止剤:酸化防止剤は、アミン成分(以下、酸化防止剤Aと称され、Cibaから入手し得るイルガノックスL67(商品名)及び/又はChemturaから入手し得るナウガルーブ438L(商品名)からなる)及び/又は硫黄を含まないフェノール成分(以下、酸化防止剤Bと称され、Cibaから入手し得るイルガノックスL135(商品名)及び/又はAfton Chemicalsから入手し得るHITEC4782(商品名)からなる)であった。以下の比較の目的のために、夫々の濃度(重量%)は100%の有効成分物質を基準とする。
(v) 耐磨耗成分:耐磨耗成分は、亜鉛ジヒドロカルビルジチオホスフェート(ZDDP)であり、そのヒドロカルビル基は4及び8の炭素鎖長を有し、第一級アルキル基及び第二級アルキル基を含んでいた。実施例に使用したZDDPは8.0質量%のリン含量を有していた。この型の耐磨耗成分は、種々の供給元から市販されている。
【0011】
潤滑油組成物は、HDD潤滑剤組成物中に通常含まれる成分、例えば、下記の1以上も含んでいた:摩擦改質剤、粘度改質剤、消泡剤、解乳化剤、流動点降下剤(特に)。これらの成分は公知であり、本発明の潤滑組成物のボアポリッシングにおける利益に関して重要であると考えられないので、本明細書では更なる考察はしないであろう。
HDDでの使用に適した潤滑油組成物は、その他の公知の潤滑油成分と一緒に、上記成分(i)〜(v)から配合した。油は、10W-40又は15W-40の粘度特性を有するように公知の様式で配合した。潤滑剤粘度はSAE40等級であり、全てのサンプルが100℃でほぼ等しい動粘度を有しており、それによりベースストック効果は要因として除外され、サンプル間のしっかりした比較が生じた。組成物は、下記の成分を多様な濃度で有していた:カルシウム清浄剤及びマグネシウム清浄剤、分散剤、酸化防止剤、及びZDDP耐磨耗成分。
こうして配合した組成物のサンプルを公知の試験:CEC-L-52-T-97(OM441LA)に従ってボアポリッシュ特性について評価した。試験方法はCEC(Coordinating European Council)から入手し得る。
試験の結果を表1に示す。









































【0012】
【表1】


【0013】
表1を参照すると、オイルサンプル1、2及び3は、低マグネシウム含量及び低酸化防止剤含量を有する組成物の例示である。マグネシウム含量は0.26〜0.29質量%の範囲である。酸化防止剤含量は0.30〜0.42質量%の範囲である。これらの三つのオイルサンプルのその他の成分は、ボアポリッシュ試験結果に有意には影響しない濃度である。当業者はこの効果を得るようにその他の成分の濃度を調節する方法を知っているであろう。これら組成物全てが最大限界(2.0)より下のポリッシュ結果を有すること、それ故、オイルサンプル1、2及び3の全てがボアポリッシュ試験に合格することがわかる。
オイルサンプル4〜8は、高マグネシウム含量及び低酸化防止剤濃度を有する組成物の例示である。オイルサンプルは0.053〜0.102質量%の範囲のMg濃度、及び0.17〜0.42質量%の範囲の酸化防止剤濃度を有する(オイルサンプル1〜3のMg濃度及び酸化防止剤濃度と重複する)。これらの五つのオイルサンプルのその他の成分は、ボアポリッシュ結果に有意に影響しない濃度で存在する。当業者はこの効果を得るようにこれらのその他の成分の濃度を調節する方法を知っているであろう。高Mg濃度及び低酸化防止剤濃度が、2.4〜3.6の範囲の、最大限界(2.0)より上のボアポリッシュ“不合格”結果を生じることがオイルサンプル4〜8についての試験結果から明らかである。また、主要な耐磨耗添加剤(ZDDP-A)を0.08重量%のPから0.12重量%のPに変化するにもかかわらず、そのような範囲で“不合格”結果が依然として得られたことが明らかである。
【0014】
また、オイルサンプル9〜14についての表1中のデータを参照する。これらのオイルサンプルは、高Mg濃度及び高酸化防止剤濃度を有する。Mg濃度は0.053〜0.138質量%であり、オイルサンプル4〜8のMg濃度と重なる。酸化防止剤濃度は0.83〜2.50質量%の範囲である。これらの六つのオイルサンプルのその他の成分は、ボアポリッシュ結果に有意に影響しない濃度で存在する。当業者はこの効果を得るようにその他の成分の濃度を調節する方法を知っているであろう。高酸化防止剤濃度と組み合わせての高Mg濃度が2.0の最大限界より下で、0.0〜1.4の範囲のボアポリッシュ“合格”結果を生じることがオイルサンプル9〜14についての試験結果から明らかである。この範囲は、オイルサンプル9〜14が約2倍〜約4倍多くのMgを含むという事実にもかかわらず、オイルサンプル1、2及び3についての範囲と同様である。この結果は驚くべきである。何とならば、マグネシウムを含む潤滑油は、ボアポリッシングに関して低減された性能を有する傾向があることが既にわかっていたからである。
更に、許容し得ない多量又は過度に多量の硫酸灰分を生じることなく、本発明の組成物(例えば、オイルサンプル9〜14)に比較的高濃度のマグネシウムを使用し得ることが表1中のデータからわかる。例えば、0.057質量%のCa及び0.134質量%のMgを含むオイルサンプル12は、オイルサンプル4、5、7及び8の低Mgオイル及び高Mgオイルで得られた硫酸灰分より低い、1.0質量%の硫酸灰分を生じた。0.170質量%のCa及び0.138質量%のMgを含むオイルサンプル13は、低Mgオイルサンプル1及び3並びに高Mgオイルサンプル4及び5(これらは全てオイルサンプル13よりも比較的高レベルのカルシウムを含む)で得られた灰分よりも高くはない、1.4質量%の硫酸灰分を生じた。
一般に言えば、表1から明らかであるように、本発明の潤滑油組成物は、許容し得ないレベルの硫酸灰分を生じることなく、ボアポリッシング結果に関して優れた性能を提供する。
【出願人】 【識別番号】500010875
【氏名又は名称】インフィニューム インターナショナル リミテッド
【出願日】 平成19年7月20日(2007.7.20)
【代理人】 【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男

【識別番号】100084009
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 信夫

【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤

【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治

【識別番号】100114007
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 孝二


【公開番号】 特開2008−24938(P2008−24938A)
【公開日】 平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願番号】 特願2007−189132(P2007−189132)