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【発明の名称】 グリース組成物及び軸受
【発明者】 【氏名】松原 憲一郎

【氏名】大貫 裕次

【要約】 【課題】高温条件にある転がり軸受に好適であり、優れた錆止め性を有し、さらに環境負荷を低減したフッ素系グリース組成物とこれを封入した軸受を提供すること。

【構成】基油がフッ素系合成油からなるグリース組成物であって、錆止め剤として一般式(1)で表される脂肪族二塩基酸塩を0.1質量%以上1.0質量%未満含有することを特徴とするグリース組成物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基油がフッ素系合成油からなるグリース組成物であって、錆止め剤として一般式(1)で表される脂肪族二塩基酸塩を0.1質量%以上1.0質量%未満含有することを特徴とするグリース組成物。
(CH2n(COO)2m (1)
(式中、nは1〜19の整数、Mはアルカリ金属又はアルカリ土類金属を示し、mはMがアルカリ金属のときは2、アルカリ土類金属のときは1を示す。)
【請求項2】
フッ素系合成油がパーフルオロアルキルポリエーテル油である請求項1記載のグリース組成物。
【請求項3】
脂肪族二塩基酸塩がアルカリ金属塩である請求項1又は2記載のグリース組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載のグリース組成物を封入した軸受。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、グリース組成物及び軸受に関する。更に詳しくは、高温条件にある転がり軸受に使用するのに好適な、蒸発減量が低く、優れた錆止め性を有するフッ素系グリース組成物、及びこれを封入した軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
高温条件において、グリース組成物の潤滑寿命を向上する為にグリース組成物に求められる性能は、低蒸発減量、高い酸化安定性、優れた錆止め性及び優れた潤滑性などである。今までにも、グリース組成物の錆止め性及び潤滑寿命の向上に関する各種の提案がなされている。
【0003】
例えば、温度関数としての動粘度安定性と低い蒸気圧と限界条件下での良好な潤滑特性とに関し非官能性ペルフルオロポリエーテルに基づくグリースの良好な性能を保持しうるようなペルフルオロポリエーテル若しくはフルオロポリエーテル誘導体からなる、分子末端官能基を有する含フッ素油を用いることにより、高速度で操作されるような用途にて優秀な潤滑性を示し、さらに高い腐食耐性を有する潤滑グリースが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
さらに、パーフルオロポリエーテル基油に、増ちょう剤として脂肪族ジカルボン酸金属塩、モノアミドモノカルボン酸金属塩又はモノエステルカルボン酸金属塩の少なくとも一種を添加することにより、相手材に対する耐摩耗性、耐漏洩性、洗浄性などにすぐれ、しかもコスト的にも満足し得る潤滑グリース組成物が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
グリース組成物に錆止め性能を付与するには、錆止め剤を添加することが一般的である。高温用転がり軸受用フッ素系グリースの錆止め剤の成分としては無機不働態化剤を用いることが多く、とりわけ亜硝酸ナトリウムが最も効果的な錆止め剤として今まで広く使用されてきた。しかしながら、亜硝酸ナトリウムは第二級アミンと酸性条件下で反応してN−ニトロソアミンを生成することが知られている。ニトロソアミンは環境負荷物質であることから亜硝酸ナトリウムに代わりうる錆止め剤が求められている。
【0004】
【特許文献1】特開平1−272696
【特許文献2】特開2001−354986
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、高温条件にある転がり軸受に好適であり、また優れた錆止め性及び安定した潤滑性を長期間示し、さらに環境負荷の低減を考慮したフッ素系グリース組成物及びこれを封入した軸受を提供することである。即ち、高温条件において、蒸発減量が少なく、優れた錆止め性を有している低環境負荷型フッ素系グリース組成物とこれを封入した軸受を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記目的を達成するために鋭意研究の結果、フッ素系合成油を含む基油、低環境負荷型錆止め剤である二塩基酸塩を用いることにより、優れた錆止め性を有し、さらに、この二塩基酸塩を特定量添加することで、高温条件において蒸発減量に優れた高温下にある転がり軸受に好適な、さらに環境負荷の低減を考慮したグリース組成物を完成させた。
【0007】
本発明は以下に示すフッ素系グリース組成物及び軸受を提供するものである。
1.基油がフッ素系合成油からなるグリース組成物であって、錆止め剤として一般式(1)で表される脂肪族二塩基酸塩を0.1質量%以上1.0質量%未満含有することを特徴とするグリース組成物。
(CH2n(COO)2m (1)
(式中、nは1〜19の整数、Mはアルカリ金属又はアルカリ土類金属を示し、mはMがアルカリ金属のときは2、アルカリ土類金属のときは1を示す。)
2.フッ素系合成油がパーフルオロアルキルポリエーテル油である上記1記載のグリース組成物。
3.脂肪族二塩基酸塩がアルカリ金属塩である上記1又は2記載のグリース組成物。
4.上記1〜3のいずれか1項記載のグリース組成物を封入した軸受。
【発明の効果】
【0008】
本発明の環境負荷低減を考慮したフッ素系グリース組成物は、蒸発減量が少なく、錆止め性に優れており、高温条件にある転がり軸受に使用するのに好適であり、また安定した潤滑性を長期間示すため、非常に有用である。特に、錆止め剤としてセバシン酸ナトリウム、アゼライン酸ナトリウム、スベリン酸ナトリウムなどの二塩基酸塩を使用すると亜硝酸ナトリウムと異なり、人体や環境に悪影響を及ぼすことがなく、優れた錆び止め性を発揮し、二塩基酸塩を特定量添加することで高温条件でも蒸発減量が少ないという優れた特性を有する。
【0009】
本発明は、基油としてフッ素系合成油を使用し、錆止め剤として特定の低環境負荷型二塩基酸塩系錆止め剤を特定量添加することにより、錆止め剤として亜硝酸ナトリウムを使用したグリース組成物と同等の優れた錆止め性を有し、高温条件でも蒸発減量が少なく、耐熱性を損なわないグリース組成物が得られるという知見に基づいてなされたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のフッ素系グリース組成物において、基油として使用されるフッ素系合成油は、その分子中にフッ素を含有し、且つ耐熱性に優れ、潤滑油として使用出来るフッ素系合成油であれば全て使用可能である。特に、不活性で、蒸気圧が低い、パーフルオロアルキルポリエーテル油が好ましい。パーフルオロアルキルポリエーテル油としては、動粘度(40℃)が好ましくは5〜1500mm2/s、さらに好ましくは50〜1000mm2/s、特に好ましくは70〜800mm2/sのものが好ましい。動粘度(40℃)が5mm2/s未満のものは、流動点は低いが、蒸発量が多くなり、一方、動粘度(40℃)が1500mm2/sを超えると、蒸発量は低いが、流動点が高くなる傾向がある。蒸発量が多くなると耐熱性が損なわれ、流動点が高くなると低温で使用できなくなる。
本発明のグリース組成物中の基油、増ちょう剤及び錆止め剤の合計量に対する基油の割合は好ましくは50〜98質量%、さらに好ましくは65〜85質量%である。
【0011】
本発明のグリース組成物に使用する増ちょう剤としては、フッ素系合成油に分散して、グリース状(半固体状)に出来る固体であれば、全て使用可能である。例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ三フッ化エチレンに代表されるフッ素樹脂、Li石けん、Ca石けん、Al石けんに代表される金属石けん、Li複合石けん、Ca複合石けん、Al複合石けんに代表される複合石けん、ウレア化合物、ウレタン化合物、ベントナイト、珪素化合物、ナトリウムテレフタレート、メラミンシアヌレート、カーボンブラックなどが挙げられる。特に耐熱性に優れているポリテトラフルオロエチレン、シリカ、メラミンシアヌレート、カーボンブラックなどが好ましい。
本発明のグリース組成物中の増ちょう剤の割合は、好ましくは1〜49質量%、さらに好ましくは10〜40質量%である。これは、増ちょう剤量が1質量%未満では流動性が高くなり、49質量%を超えると硬くなりすぎで、いずれの場合でも、グリースとして使用しにくいためである。
【0012】
本発明のグリース組成物は、錆止め剤として一般式(1)で表される脂肪族二塩基酸金属塩を0.1質量%以上1.0質量%未満配合することを特徴とする。0.1質量%未満では錆止め効果がなく、1.0質量%以上では、1.0質量%未満の場合と比較して蒸発量が多くなり、耐熱性が損なわれる。
(CH2n(COO)2m (1)
(式中、nは1〜19の整数、Mはアルカリ金属又はアルカリ土類金属を示し、mはMがアルカリ金属のときは2,アルカリ土類金属のときは1を示す。)
脂肪族二塩基酸金属塩の具体例としては、セバシン酸ナトリウム、セバシン酸リチウム、アジピン酸ナトリウム、アジピン酸リチウム、アゼライン酸ナトリウム、アゼライン酸リチウムなどがあり、特に、セバシン酸ナトリウムが有効である。
【0013】
以下実施例を示し本発明を具体的に説明する。
表に示す成分を使用して試験グリースを調製した。
増ちょう剤としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、シリカ、メラミンシアヌレート(MCA)とPTFEの混合物、カーボンブラックの4種を使用した。
基油としては、パーフルオロアルキルポリエーテル油の動粘度(40℃)が420mm2/s、80mm2/s、700mm2/sの3種を使用した。
錆止め剤としてはセバシン酸ナトリウムを0.2質量%、0.5質量%、0.8質量%、2.0質量%、Baスルホネート(Baジノニルナフタレンスルホネート)、コハク酸無水物、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸ナトリウムを各0.5質量%使用した。
【0014】
<試験方法>
・錆止め性 : Emcor防錆試験(IP220)
評価基準
0:錆無し
4:外輪レース面の5〜10%の範囲で錆発生
5:外輪レース面の10%以上の範囲で錆発生
・蒸発減量 :
(試験条件)
60×80×1mm のSPCC鋼板に試験グリースを厚さ約 2mmに均一に塗布し、規定温度の恒温空気浴に規定時間放置し、重量減(すなわち蒸発減量)を測定する。
規定温度 : 230℃
規定時間 : 1200h
※蒸発減量が10%以上は不良である。
【0015】
結果
0.2〜0.8質量%のセバシン酸ナトリウムを配合した実施例1〜8はいずれも錆止め性は良好であった。0.5質量%のセバシン酸ナトリウム以外の二塩基酸塩を配合した実施例9〜11はいずれも錆止め性は良好であった。
セバシン酸ナトリウムを含まない比較例1、二塩基酸塩以外の錆止め剤を含む比較例2〜5では錆止め性が劣っている。
また、セバシン酸ナトリウムの配合量を変化させた実施例1〜3、比較例1及び比較例6についてみると、セバシン酸ナトリウムを0.1質量%以上1.0質量%未満含む実施例1〜3では錆止め性に優れ、かつ、蒸発減量も10%以下であり、耐熱性に優れているが、セバシン酸ナトリウムを含まない比較例1では錆止め性が劣り、セバシン酸ナトリウムを2.0質量%含む比較例6では、蒸発減量が10%を超え、耐熱性に劣ることがわかる。
【0016】
【表1】


【0017】
【表2】


【0018】
【表3】


表中、蒸発減量の項の「−」は測定しなかったことを示す。
【出願人】 【識別番号】000162423
【氏名又は名称】協同油脂株式会社
【出願日】 平成18年7月5日(2006.7.5)
【代理人】 【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男

【識別番号】100084009
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 信夫

【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤

【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治

【識別番号】100114007
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 孝二


【公開番号】 特開2008−13652(P2008−13652A)
【公開日】 平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願番号】 特願2006−185719(P2006−185719)