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【発明の名称】 樹脂潤滑用グリース組成物及び電動パワーステアリング装置
【発明者】 【氏名】戸田 雄次郎

【氏名】中谷 真也

【要約】 【課題】樹脂部材と金属部材、樹脂部材同士の接触による騒音や高荷重下での摩耗をより低減でき、潤滑性能を長期にわたり維持できる樹脂潤滑用グリース組成物、並びに樹脂部を有する減速ギアを備える電動パワーステリング装置における更なるトルク安定性や低騒音化、高荷重化に加え、−30℃という極低温でも良好に作動し得る低温特性の改善を図る。

【構成】樹脂と金属、または樹脂と樹脂とが接触する部位に適用されるグリース組成物であって、基油が特定の分岐アルキル側鎖ジフェニルエーテル油を含有することを特徴とする樹脂潤滑用グリース組成物、並びに前記樹脂潤滑用グリース組成物によりギア歯間が潤滑された電動パワーステアリング装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂と金属、または樹脂と樹脂とが接触する部位に適用されるグリース組成物であって、
基油が一般式(I)で表される分岐アルキル側鎖ジフェニルエーテル油を含有することを特徴とする樹脂潤滑用グリース組成物。
【化1】


〔(I)式中、R1、R2及びR3の1つは水素原子であり、残りの2つは同一又は異なる炭素数10〜26の分岐アルキル基である。〕
【請求項2】
基油は、一般式(I)で表される分岐アルキル側鎖ジフェニルエーテル油を基油全量の50〜100質量%含有し、かつ、40℃における動粘度が20〜500mm/sであることを特徴とする請求項1記載の樹脂潤滑用グリース組成物。
【請求項3】
混和ちょう度が220〜385であることを特徴とする請求項1または2記載の樹脂潤滑用グリース組成物。
【請求項4】
電動モータによる補助出力を、減速歯車機構を介して車両のステアリング機構に伝達する電動パワーステアリング装置であって、前記減速歯車機構の従動歯車が、金属製芯管の外周に、樹脂組成物からなり外周面にギア歯が形成された樹脂部を一体に設けてなり、かつ、駆動歯車が金属製または樹脂製のギア歯を有し、請求項1〜3の何れか1項に記載の樹脂潤滑用グリース組成物により前記ギア歯間が潤滑されることを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂と金属、または樹脂と樹脂とが接触する部位に適用される樹脂潤滑用グリース組成物に関する。また、本発明は、電動モータによる補助出力を、減速歯車機構を介して車両のステアリング機構に伝達する電動パワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、軽量化や静粛性を目的として、金属製の部材を樹脂製に代替することが行われている。例えば、自動車に組み込まれる電動パワーステアリング装置には、電動モータに比較的高速回転、低トルクのものが使用されるため、電動モータとステアリングシャフトとの間に減速機構が組み込まれている。減速機構としては、一組で大きな減速比が得られる等の理由から、図1に示されるような、ウォーム32と、ウォーム32に噛み合うウォームホイール31とから構成される減速ギア30が使用されるのが一般的である。ここで、ウォーム32は電動モータの回転軸に連結しており、駆動歯車に相当し、一方ウォームホイール31は従動歯車に相当する。
【0003】
このような減速ギア30では、ウォームホイール31とウォーム32の両方を金属製にすると、ハンドル操作時に歯打ち音や振動音等の不快音が発生するという不具合を生じていた。そこで、ウォームホイール31に、金属製の芯管42の外周に、樹脂製で外周面にギア歯44を形成してなる樹脂部43とを一体化させたものを使用して騒音対策を行っている。また、このような樹脂部43を備えるウォームホイール31を用いることで、電動パワーステアリング装置の軽量化を図ることもできる。
【0004】
また、減速ギア30では、ウォーム32とウォームホイール31との両ギア歯間の潤滑のためにグリースが用いられている。このグリースとして、従来では水酸基を含む脂肪酸または多価アルコールの脂肪酸エステルを含む樹脂潤滑用グリース組成物が知られている(例えば、特許文献1参照)。しかし、この樹脂潤滑用グリース組成物は、長時間使用後にもトルクの変動が抑制され、長時間運転してもハンドリング操作に違和感がない点で優れているものの、大型車の電動パワーステアリング装置では潤滑箇所が高荷重で使用条件が厳しくなり、静摩擦力が増大することから、特にハンドルをゆっくりと切ったときに所謂引っ掛かりが発生し易く、耐久寿命が短くなる等の不具合が生じていた。
【0005】
そこで、高荷重下での潤滑性を改善したものとして、モンタンワックスを配合した樹脂潤滑用グリース組成物も提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかし、更なる高荷重化や低トルク変動化の要求は必至であり、長時間運転でのハンドル操作の違和感をより低減し、静粛化も要求されてきている。また、自動車は寒冷地でも運転されることから、−30℃といった極低温においても潤滑不良を起こさないことも必要である。
【0006】
【特許文献1】特開平8−209167号公報
【特許文献2】特開2002−371290号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、樹脂部材と金属部材、樹脂部材同士の接触による騒音や高荷重下での摩耗をより低減でき、潤滑性能を長期にわたり維持できる樹脂潤滑用グリース組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、樹脂部を有する減速ギアを備える電動パワーステリング装置における更なるトルク安定性や低騒音化、高荷重化に加え、−30℃という極低温でも良好に作動し得る低温特性の改善を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は下記の樹脂潤滑用グリース組成物及び電動パワーステアリング装置を提供する。
(1)樹脂と金属、または樹脂と樹脂とが接触する部位に適用されるグリース組成物であって、基油が一般式(I)で表される分岐アルキル側鎖ジフェニルエーテル油を含有することを特徴とする樹脂潤滑用グリース組成物。
【0009】
【化2】


【0010】
〔(I)式中、R1、R2及びR3の1つは水素原子であり、残りの2つは同一又は異なる炭素数10〜26の分岐アルキル基である。〕
(2)基油は、一般式(I)で表される分岐アルキル側鎖ジフェニルエーテル油を基油全量の50〜100質量%含有し、かつ、40℃における動粘度が20〜500mm/sであることを特徴とする上記(1)記載の樹脂潤滑用グリース組成物。
(3)混和ちょう度が220〜385であることを特徴とする上記(1)または(2)記載の樹脂潤滑用グリース組成物。
(4)電動モータによる補助出力を、減速歯車機構を介して車両のステアリング機構に伝達する電動パワーステアリング装置であって、前記減速歯車機構の従動歯車が、金属製芯管の外周に、樹脂組成物からなり外周面にギア歯が形成された樹脂部を一体に設けてなり、かつ、駆動歯車が金属製または樹脂製のギア歯を有し、上記(1)〜(3)の何れか1項に記載の樹脂潤滑用グリース組成物により前記ギア歯間が潤滑されることを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明の樹脂潤滑用グリース組成物によれば、樹脂部材と金属部材との接触、樹脂部材同士の接触による摩耗を抑え、騒音の発生も抑えることができ、更には低温での潤滑性も改善できる。従って、この樹脂潤滑用グリース組成物で潤滑する本発明の電動パワーステアリング装置は、高荷重下でも摩耗が少なく、低騒音であり、−30℃という極低音においても安定に作動し、ハンドル操作の違和感も無く信頼性に優れたものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0013】
(樹脂潤滑用グリース組成物)
本発明の樹脂潤滑用グリース組成物において、基油は、一般式(I)で表される分岐アルキル側鎖ジフェニルエーテル油を含む。
【0014】
【化3】


【0015】
(I)式において、R1、R2、R3の1つは水素原子であり、残りの2つは同一又は異なる炭素数10〜26の分岐アルキル基である。分岐アルキル基において、炭素数は12〜24であることがより好ましい。炭素数が26より多い分岐アルキル基では、流動点が高まり低温での流動性が乏しくなり使用上問題になる。また、炭素数が10未満の分岐アルキル基では、蒸発量が大きくなり使用上問題となる。
【0016】
分岐アルキル基の中では、それぞれ分岐しているデシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基等が好ましい。
【0017】
この分岐アルキル側鎖ジフェニルエーテル油は、基油全量の50質量%以上を占めることが好ましく、60質量%以上がより好ましい。勿論、分岐アルキル側鎖ジフェニルエーテル油のみで基油を構成してよく、上限は100質量%である。分岐アルキル側鎖ジフェニルエーテル油が基油全量の50質量%未満では、目的とする耐熱性が得られない。
【0018】
併用可能な潤滑油としては、一般式(II)で表される直鎖アルキル側鎖ジフェニルエーテル油が好ましい。
【0019】
【化4】


【0020】
(II)式において、R4、R5及びR6の1つは水素原子であり、他の2つは好ましくは炭素数8〜20、さらに好ましくは炭素数12〜14の直鎖アルキル基である。炭素数が20より多い直鎖アルキル基では、流動点が高まり低温での流動性が乏しくなり使用上問題になる。また、炭素数が8未満の直鎖アルキル基では、蒸発量が大きくなり使用上問題となる。
【0021】
また、併用可能な潤滑油として、エステル系合成油、ポリαオレフィン油も好ましい。エステル系合成油としては、ジ−2−エチルヘキシルセバケート、ジオクチルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート等のジエステル、トリメチロールプロパンカプリレート、ペンタエリスリトール−2−エチルヘキサノエート等のポリオールエステルやトリオクチルトリメリテート、トリデシルトリメリテート等のトリメリット酸エステル、テトラオクチルピロメリテート等のピロメリット酸エステルの芳香族エステル油が挙げられる。ポリαオレフィン油は、下記一般式(III)で表されるものが好ましい。
【0022】
【化5】


【0023】
(III)式において、R7はアルキル基であり、同一分子中の2種類の異なったアルキル基が混在していてもよいが、n−オクチル基が好ましい。また、nは3〜8の整数が好ましい。
【0024】
特に好ましい基油組成は、一般式(I)においてR1が水素原子で、R2及びR3が共に炭素数10〜26の分岐アルキル基である分岐アルキル側鎖ジフェニルエーテル油と、一般式(II)においてR4が水素原子で、R5及びR6が共に炭素数10〜26の直鎖アルキル基である直鎖アルキル側鎖ジフェニルエーテル油とを、直鎖アルキル側鎖ジフェニルエーテル油:分岐アルキル側鎖ジフェニルエーテル油=15〜45:85〜55の比率で配合したものであり、更に好ましくは直鎖アルキル側鎖ジフェニルエーテル油:分岐アルキル側鎖ジフェニルエーテル油=1:2の比率で配合したものである。また、最も好ましい基油組成は、一般式(I)においてR1が水素原子で、R2及びR3が共に炭素数10〜18の分岐アルキル基である分岐アルキル側鎖ジフェニルエーテル油と、一般式(II)においてR4が水素原子で、R5及びR6が共に炭素数10〜18である直鎖アルキル基である直鎖アルキル側鎖ジフェニルエーテルとを、前記の比率で配合したものである。
【0025】
また、基油は、40℃における動粘度が20〜500mm/sであることが好ましい。40℃における動粘度が500mm/sを超えると、トルクが上昇しすぎて特に低温での流動性が不十分となり、本発明が目的とする−30℃という極低温で減速ギアを起動する際に異音が発生するおそれがある。一方、40℃における動粘度が20mm/s未満では、蒸発損失や潤滑性の問題が懸念され、例えば高温において潤滑部位に十分な潤滑油膜の形成が困難となるおそれがある。このような点から、基油の40℃における動粘度は30〜400mm/sがより好ましい。
【0026】
増ちょう剤には、上記の基油中にコロイド状に分散して基油を半固体または固体状にできる物質であれば制限はない。このような増ちょう剤としては、リチウム石鹸系、カルシウム石鹸系、ナトリウム石鹸系、アルミニウム石鹸系、リチウムコンプレックス石鹸系、カルシウムコンプレックス石鹸系、ナトリウムコンプレックス石鹸系、バリウムコンプレックス石鹸系、アルミニウムコンプレックス石鹸系の金属石鹸、ベントナイト系、クレイ系の無機化合物、ウレア系(モノウレア系、ジウレア系、トリウレア系、テトラウレア系)、ウレタン系、ナトリウムテレフタラメート系の有機化合物等が挙げられる。これらの中では、ウレア系が好適である。また、これらは複数種を組み合わせて使用してもよい。
【0027】
また、増ちょう剤の含有量は、グリース組成物全量の3〜40質量%が好ましく、5〜25質量%がより好ましい。増ちょう剤が3質量%より少ないとグリース状態を維持することは困難となり、40質量%より多くなるとグリース組成物が硬くなりすぎて十分な潤滑状態を発揮することができない。
【0028】
樹脂潤滑用グリース組成物には、その各種性能をさらに向上させるため、所望により種々の添加剤を混合してもよい。好ましくは、モンタンワックス等のワックス類を添加することで、潤滑性を向上させることができる。モンタンワックスは、褐炭を原料とし、これを精製、酸化して得られるモンタン酸をベースとするワックスの総称である。また、市販品として、クラリアント社製のLicowax U、Licowax S等の酸ワックス、Licowax E、Licowax KPS等のエステルワックス、Licowax OP、Licowax O等の部分ケン化エステルワックス等を使用できる。モンタンワックスの含有量は、グリース全量の0.5〜20質量%が好ましく、より好ましくは1〜10質量%である。0.5質量%未満では目的とする効果の発現が不十分であり、20質量%を超えるとグリース組成物が硬くなりすぎて、使用が困難になる。
【0029】
その他の添加剤としては、例えば、フェニル−1−ナフチルアミン等のアミン系、2,6−ジ−tert−ジブチルフェノール等のフェノール系、硫黄系、ジチオリン酸亜鉛等の酸化防止剤;リン系、ジチオリン酸亜鉛、有機モリブデン等の極圧剤;脂肪酸、動植物油等の油性向上剤等を、単独又は2種以上混合して添加することができる。尚、これら添加剤の添加量は、本発明の目的を損なわない程度であれば特に限定されるものではない。
【0030】
樹脂潤滑用グリース組成物の混和ちょう度は、220〜395が好ましく、265〜350がより好ましい。混和ちょう度が220未満ではグリースが硬くなりすぎて潤滑効果が期待できず、395より大きいと流動性が高すぎ、適用部位から漏洩するおそれがある。
【0031】
また、製造方法にも制限はなく、従来のグリース組成物の製造方法に従うことができる。
【0032】
上記の如く構成される本発明の樹脂潤滑用グリース組成物は、樹脂部材と金属部材とが接触する部位、あるいは樹脂部材同士が接触する部位の潤滑に使用されるが、樹脂の種類や金属の種類、更には樹脂と金属との組み合わせには制限がない。例えば、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂等からなる部材と、鋼材からなる部材とが接触する部位の潤滑に好適に使用することができ、何れの適用部位にも優れた潤滑性能を付与できる。
【0033】
(電動パワーステアリング装置)
本発明はまた、上記の樹脂潤滑用グリース組成物で減速ギアを潤滑してなる電動パワーステリング装置を提供する。但し、電動パワーステアリング装置の構造には制限がなく、例えば図2に示す電動パワーステアリング装置を例示することができる。図示される電動パワーステアリング装置10において、舵輪軸11は、上部舵輪軸11aと下部舵輪軸11bとで構成され、舵輪軸11は舵輪軸ハウジング12の内部に軸芯回りに回転自在に支承されており、舵輪軸ハウジング12は車室内部の所定位置に、その下部を前方に向けて傾斜した状態に固定されている。また、上部舵輪軸11aの上端には、図示されていない舵輪が固定されている。更に、上部舵輪軸11aと下部舵輪軸11bとは、図示されていないトーションバーにより結合されており、舵輪から上部舵輪軸11aを経て下部舵輪軸11bに伝達される操蛇トルクがトーションバーに検出され、検出された操蛇トルクに基づいて電動モータ13の出力が制御される。
【0034】
ラック・ピニオン式運動変換機構20は、長手方向を車両の左右方向として車両前部のエンジンルーム内に略水平に配置され、軸方向に移動自在なラック軸21と、ラック軸21の軸芯に対して斜めに支承されてラック軸21の歯部に噛合する歯部を備えたピニオンを含むピニオン軸22、及びラック軸21とピニオン軸22を支承する筒状のラック軸ケース23とから構成される。
【0035】
図3は図2に示す電動パワ−ステアリング装置10の減速機構の一例を示す部分断面図であり、例えば図1に示した構成の減速ギア30がギアケース33に収納されている。また、ウォーム32はその両端にウォーム軸32a、32bが一体に形成されており、ウォーム軸32a、32bは電動モータ13の駆動軸13aにスプライン、あるいはセレーション結合している。ウォームホイール31の芯管42は下部舵輪軸11bに結合し、電動モータ13の回転はウォーム32、ウォームホイール31を経て下部舵輪軸11bに伝承される。
【0036】
尚、ウォームホイール31の樹脂部43は、ポリアミド樹脂等の耐熱性や機械的特性に優れた樹脂に、ガラス繊維等の補強材を配合した樹脂組成物を形成したものである。そして、例えば、金属製の芯金42の外周面に、ショットブラスト、ローレット加工、スプライン加工等により粗面化し、溶剤で脱脂した後、芯管42をスプルー及びディスクゲートを装着した金型に配置し、射出成形機により前記の樹脂組成物を充填して樹脂部43を成形し、樹脂部43の外周に切削加工によりギア歯44を形成することでウォームホイール31が得られる。
【0037】
そして、ウォームホイール31のギア歯44とウォーム32との潤滑のために、上記した本発明の樹脂潤滑用グリース組成物が使用される。一般にポリアミド樹脂は極性を有する潤滑油との親和性が高く、潤滑油の濡れ性も良好となる。そのため、本発明の樹脂潤滑用グリース組成物の基油に含まれる分岐アルキル側鎖ジフェニルエーテル油もまた、ポリアミド樹脂組成物製のウォームホイール31のギア歯44との親和性が高く、この点でも潤滑に適しているといえる。
【実施例】
【0038】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はこれにより何ら制限されるものではない。尚、含有量はグリース全量に対する値である。
【0039】
(実施例1〜4、比較例1〜4)
基油として、下記Aの分岐アルキル側鎖ジフェニルエーテル油と下記Bの直鎖アルキル側鎖ジフェニルエーテル油とを、A:B=1:2で混合したアルキルジフェニルエーテルを調製した。
【0040】
【化6】


【0041】
また、その他の潤滑油を用意し、表1に示す配合にて基油を調製した。そして、増ちょう剤として脂環族ジウレア化合物を用い、表記の如く酸化防止剤及びワックスを添加して試験グリースを調製した。尚、増ちょう剤量、酸化防止剤及びワックスの各加剤量はグリース全量に対する値であり、残部は基油量である。そして、各試験グリースについて、下記の(1)EPS耐久試験、(2)往復動摩擦試験及び(3)低温トルク試験を行った。結果を表1に併記する。
【0042】
(1)EPS耐久試験
電動パワーステアリング装置(EPS)の実機を用い、台上耐久試験を行った。減速ギアのウォームホイールは、ポリアミド樹脂からなる樹脂部にギア歯を形成したものである。このギア歯に試験グリースを塗布し、電動パワーステアリング装置を作動させ、一定時間毎にギア歯の摩耗を計測した。そして、摩耗が急激に増大した時点を寿命とし、それまでの作動時間を耐久時間として求めた。結果は、比較例1の耐久時間を1とする相対値で示した。
(2)往復動摩擦試験
滑り時の性能評価を図4に示す試験装置を用いて行った。即ち、ポリアミド樹脂製の試験平板に試験グリースを約0.05mmの厚さで塗布し、その上に置いた試験球(直径10mm、SUJ2製、HRC60〜64)を所定の荷重を付加しながらカムで往復動させた。測定条件は、荷重9.8N、周波数10Hz、振幅2mm、往復動時間30分間とし、試験後の試験球の摩耗痕径を測定した。
(3)低温トルク測定
試験グリースの−30℃におけるトルクを測定した。
【0043】
【表1】


【0044】
【表2】


【0045】
表1より、本発明に従い分岐アルキル側鎖ジフェニルエーテル油を含む基油を用いることにより、摩耗も少なく耐久性に優れ、更に低温でのトルクも小さく、電動パワーステアリング装置を−30℃の極低温で使用してもスティックスリップ等の潤滑不良を起こすことを防止できることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】減速ギアの一例を示す斜視図である。
【図2】本発明の電動パワーステアリング装置の一例を示す一部断面構成図である。
【図3】図2のAA断面図であり、電動モータと減速歯車機構との連結部周辺を示す概略構成図である。
【図4】往復動摩擦試験に用いた試験装置の概略構成図である。
【符号の説明】
【0047】
11 舵輪軸
12 舵輪軸ハウジング
13 電動モータ
20 ラック・ピニオン式運動変換機構
21 ラック軸
22 ピニオン軸
30 減速ギア
31 ウォームホイール
32 ウォーム
42 芯管
43 樹脂部
44 ギア歯
【出願人】 【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
【出願日】 平成18年6月30日(2006.6.30)
【代理人】 【識別番号】100105647
【弁理士】
【氏名又は名称】小栗 昌平

【識別番号】100105474
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 弘徳

【識別番号】100108589
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 利光

【識別番号】100115107
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 猛


【公開番号】 特開2008−7708(P2008−7708A)
【公開日】 平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願番号】 特願2006−181960(P2006−181960)