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【発明の名称】 アルミニウムろう付け用フラックス入りワイヤー用の伸線加工潤滑油、及びそれを用いたアルミニウムろう付け用フラックス入りワイヤーの伸線加工方法
【発明者】 【氏名】細見 和弘

【氏名】渡辺 貴道

【要約】 【課題】アルミニウムろう付け用フラックス入りワイヤーの伸線加工時の潤滑性がよく、焼き付きが発生しにくく、伸線加工後の焼鈍後に、残油あるいは残炭が少ない伸線加工潤滑油を提供すること。

【構成】アルミニウムろう付け用フラックス入りワイヤー用の伸線加工潤滑油である。添加剤としてアルコールを1〜20%含有する。残部に、基油として、動粘度3000cSt(at40℃)以上のポリイソブチレン、及び動粘度20cSt(at40℃)以下のポリイソブチレンを含有する。アルコールは、一般式R1−OH(1)で表されることが好ましい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウムろう付け用フラックス入りワイヤー用の伸線加工潤滑油であって、
添加剤としてアルコールを1〜20%(重量%、以下同じ)含有し、
残部に、基油として、動粘度3000cSt(at40℃)以上のポリイソブチレン、及び動粘度20cSt(at40℃)以下のポリイソブチレンを含有し、
全体の動粘度が400〜1000cSt(st40℃)であることを特徴とする伸線加工潤滑油。
【請求項2】
請求項1において、上記アルコールは、下記の一般式(1)で表されることを特徴とする伸線加工潤滑油。
【化1】


(但し、R1は、炭素数11〜15の炭化水素基である。)
【請求項3】
アルミニウムろう付け用フラックス入りワイヤーに、請求項1又は2に記載の上記伸線加工潤滑油を供給し、伸線加工を施すことを特徴とするアルミニウムろう付け用フラックス入りワイヤーの伸線加工方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、ロールフォーミングしたアルミニウムの内側にフラックスを充填してなるアルミニウムろう付け用フラックス入りワイヤーの伸線加工に使用される伸線加工潤滑油に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、アルミニウムのろう付けにはフラックス入りワイヤーが使用されている。フラックス入りワイヤーは、アルミニウムとフラックスとからなる。アルミニウムをロールフォーミングし、その内側にフラックスを充填したものに、潤滑油を供給して、寸法調整するために伸線加工を施し、その後、必要に応じて、所定の調質になるよう焼鈍処理を施すことで得ることができる。
【0003】
アルミニウムの伸線加工には、潤滑油として一般的な塑性加工油が適用される。一般的な塑性加工油とは、基油として鉱油が用いられ、また、油性剤として、高級脂肪酸エステル、脂肪酸、及び高級アルコール等が使用される。伸線加工での潤滑性を向上させるために、油性剤を増量させたり、鉱油の粘度を高めて、導入油量を増加することで対処している。
【0004】
しかしながら、これらの従来技術では、伸線加工時の条件にもよるが、伸線加工時の焼き付きが発生したり、加工後の焼鈍時を行う場合には、残油あるいは残炭が発生するという問題がある。最終製品としてのフラックス入りワイヤーの表面に、焼き付きや残炭がある場合には、アルミニウムのろう付け時に、ろう付けし難くなったり、見栄えが悪くなるという問題がある。
【0005】
【特許文献1】特開2001−259887号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、アルミニウムろう付け用フラックス入りワイヤーの伸線加工時の潤滑性がよく、焼き付きが発生しにくく、伸線加工後の焼鈍を行う場合に、残油あるいは残炭が少ない伸線加工潤滑油を提供しようとするものである。なお、本明細書中の「アルミニウム」は、アルミニウムを主体とする金属及び合金の総称であり、いわゆる純アルミニウムだけでなく、アルミニウム合金を含む概念である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、アルミニウムろう付け用フラックス入りワイヤー用の伸線加工潤滑油であって、
添加剤としてアルコールを1〜20%(重量%、以下同じ)含有し、
残部に、基油として、動粘度3000cSt(at40℃)以上のポリイソブチレン、及び動粘度20cSt(at40℃)以下のポリイソブチレンを含有し、
全体の動粘度が400〜1000cSt(st40℃)であることを特徴とする伸線加工潤滑油にある(請求項1)。
【0008】
本発明の銅管加工用潤滑油は、添加剤と基油の成分を選定し、動粘度を上記所定の範囲に調整することにより、アルミニウムろう付け用フラックス入りワイヤーの伸線加工時の潤滑性がよく、焼き付きが発生しにくく、伸線加工後の焼鈍後を行う場合に、残油あるいは残炭が少ない伸線加工潤滑油を得ることができる。
すなわち、上記銅管加工用潤滑油の必須成分として、添加剤としてのアルコールを1〜20%含有する。これにより、伸線加工時に境界潤滑性を得ることができ、伸線加工後に焼鈍の行う場合には、残炭を抑制することができる。
【0009】
また、残部に、基油として、動粘度3000cSt以上のポリイソブチレン、及び動粘度20cSt以下のポリイソブチレンを含有し、その組合せの割合を伸線加工潤滑油全体の動粘度が400〜1000cStとなる範囲で調整することにより、潤滑油の導入量が多くなり、潤滑性を向上することができる。
【0010】
第2の発明は、アルミニウムろう付け用フラックス入りワイヤーに、第1の発明に記載の上記伸線加工潤滑油を供給し、伸線加工を施すことを特徴とするアルミニウムろう付け用フラックス入りワイヤーの伸線加工方法にある(請求項3)。
【0011】
本発明のアルミニウムろう付け用フラックス入りワイヤーの伸線加工方法は、アルミニウムろう付け用フラックス入りワイヤーの伸線加工において、第1の発明の上記銅管加工油を用いることで、焼鈍を行う場合に、残油あるいは残炭が少ないアルミニウムろう付け用フラックス入りワイヤーを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
第1の発明の伸線加工潤滑油は、上述したように、添加剤としてアルコールを1〜20%含有する。
上記アルコールの含有量が1%未満の場合には、境界潤滑性に乏しいという問題があり、一方、上記アルコールの含有量が20%を超える場合には、残炭が多くなるという問題がある。
【0013】
また、上記伸線加工潤滑油は、残部に、基油として、動粘度3000cSt以上のポリイソブチレン、及び動粘度20cSt以下のポリイソブチレンを含有する。
上記動粘度3000cSt以上のポリイソブチレンを含有しない場合には、摩擦面に導入される油量が相対的に少なく、潤滑性に劣るという問題があり、一方、上記動粘度20cSt以下のポリイソブチレンを含有しない場合には、潤滑油の粘度を調整し難くなるという問題がある。
【0014】
また、動粘度3000cSt以上のポリイソブチレンとしては、コスト及び、製造の容易さの観点から、動粘度が3000〜50000cStの範囲であることが好ましい。
また、動粘度20cSt以下のポリイソブチレンとしては、引火点が低くなりすぎないという理由から、動粘度が5〜20cStの範囲であることが好ましい。
【0015】
また、上記伸線加工潤滑油は、動粘度が400〜1000cSt(at40℃)である。
この場合には、潤滑性と取り扱い性とを両立させることができる。
上記動粘度が400cSt未満の場合には、潤滑性が不足するおそれがあり、一方、上記総粘度が1000cStを超える場合には、冬季などの外気温が低い場合に取り扱いが困難になるというおそれがある。
【0016】
上記動粘度は、JIS K 2283の「原油及び石油製品の動粘度試験方法」に準拠して40℃における動粘度を測定し、測定器具としては、JIS K 2839の「石油類試験用ガラス器具」のキャノン−フェンスケ粘度計を用いて測定することができる。
【0017】
なお、必須成分である添加剤としてアルコールのみを含有する場合、上記基油の合計含有量は、80〜99%の範囲となる。上記アルコールと上記基油との合計が100%となるように、基油の合計含有量が変化する。
また、本発明の銅管加工用潤滑油は、上記アルコールと上記基油とにより100%になるものであるが、実使用に際して、上述の優れた効果を安定的に操業するために、上記100%の外に、必要に応じて、酸化防止剤、錆止め剤、腐食防止剤、消泡剤等の一種又は二種以上をさらに添加することも勿論可能である。
【0018】
上記酸化防止剤としては、例えば、DBPC(2,6−ジターシャリーブチル−P−クレゾール)等のフェノール系化合物、フェニル−α−ナフチルアミン等の芳香族アミン、ソルビタンモノオレート等の多価アルコールの部分エステル、リン酸エステル及びその誘導体等が挙げられる。
上記錆止め剤としては、例えば、ジノニルナフタレンスルホン酸バリウム等が挙げられる。
上記腐食防止剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
上記消泡剤としては、例えば、シリコン系のものが挙げられる。
【0019】
上記アルコールは、下記の一般式(1)で表されることが好ましい(請求項2)。
【化2】


(但し、R1は、炭素数11〜15の炭化水素基である。)
【0020】
これにより、境界潤滑性に優れるという効果を得ることができる。
上記アルコールの炭化水素基R1の炭素数が10以下の場合には、伸線加工時に境界潤滑性が乏しくなるおそれがあり、一方、上記炭素数が16以上の場合には、焼鈍を行う場合に、残炭が発生しやすくなるおそれがある。
また、上記炭化水素基R1としては、具体的に、例えば、アルキル基及びアルケニル基等がある。より好ましくは、上記アルコールの炭化水素基R1は、アルキル基である。
【実施例】
【0021】
本発明のアルミニウムろう付け用フラックス入りワイヤー用の伸線加工潤滑油にかかる実施例について説明する。
本例では、表1及び表2に示すごとく、本発明の実施例として、複数種類の潤滑油(試料E1〜試料E9)と、比較例として複数種類の潤滑油(試料C1〜C4)を作製し、各種性能の比較試験を行った。
各試料E1〜E9及び試料C1〜C4の潤滑油について、基油、添加剤、動粘度等を、表1及び表2にそれぞれ示す。
【0022】
【表1】


【0023】
【表2】


【0024】
表1及び表2の記号を説明する。
A1:動粘度26000cSt(at40℃)のポリイソブチレン
A2:動粘度12cSt(at40℃)のポリイソブチレン
A3:動粘度19cSt(at40℃)のポリイソブチレン
B1:1−ペンタデカノール
B2:1−ウンデカノール
B3:1−ヘキサデカノール
B4:1−デカノール
【0025】
作製した供試油を用い、以下の試験を行った。
<潤滑性>
供試材としてアルミニウムフラックス入りコワードワイヤー(外径2.7mm、肉厚0.5mm)を用いて、速度20m/min、外径1.6mmまで伸線加工を行った。上記供試油は加工ダイスの入側の材料に対して5ml/minの流量で供給した。伸線加工後の供試材を、電気炉を用いて、大気雰囲気中で350℃、8時間焼鈍を行った。
焼鈍後の供試材の表面を走査型電子顕微鏡を用いて観察し、潤滑性を評価した。
(評価基準)
○:供試材表面に焼き付き傷が確認されない場合、あるいは伸線加工中に供試材が破断しなかった場合
×:供試材表面に焼き付き傷が確認される場合、あるいは伸線加工中に供試材が破断した場合
【0026】
<残炭>
焼鈍後の供試材を、バーナーを用いて溶解した後に、凝固させた表面を目視にて観察し、残炭を評価した。
(評価基準)
○:残炭が確認されなかった場合
×:残炭が確認された場合
これらの結果を表3に示す。潤滑性、残炭のいずれの項目においても、○を合格とし、×を不合格とする。
【0027】
【表3】


【0028】
表3より知られるごとく、本発明の実施例である試料E1〜試料E9は、潤滑性、残炭のいずれの項目においても良好な結果を示した。
【0029】
また、本発明の比較例である試料C1は、伸線加工潤滑油全体の動粘度が本発明の下限を下回るため、潤滑性が不合格であった。
また、本発明の比較例である試料C2は、伸線加工潤滑油全体の動粘度が本発明の上限を上回るため、残炭が不合格であった。
【0030】
また、本発明の比較例である試料C3は、添加剤の含有量が本発明の下限を下回るため、潤滑性が不合格であった。
また、本発明の比較例である試料C4は、添加剤の含有量が本発明の上限を上回るため、残炭が不合格であった。
【出願人】 【識別番号】000002277
【氏名又は名称】住友軽金属工業株式会社
【出願日】 平成18年6月23日(2006.6.23)
【代理人】 【識別番号】100079142
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 祥泰

【識別番号】100110700
【弁理士】
【氏名又は名称】岩倉 民芳

【識別番号】100130155
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 祥起


【公開番号】 特開2008−1825(P2008−1825A)
【公開日】 平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願番号】 特願2006−173704(P2006−173704)