トップ :: C 化学 冶金 :: C10 石油,ガスまたはコ−クス工業;一酸化炭素を含有する工業ガス;燃料;潤滑剤;でい炭

【発明の名称】 吸収式熱交換機用銅管の銅管加工用潤滑油及びそれを用いた吸収式熱交換機用銅管の製造方法
【発明者】 【氏名】細見 和弘

【氏名】渡辺 貴道

【要約】 【課題】トレッドフィン加工での潤滑性が優れ、トレッドフィン加工後の残油量が少なく、冷媒LiBr溶液での濡れ性に優れた銅管加工用潤滑油を提供すること。

【構成】吸収式熱交換機用銅管の銅管加工用潤滑油である。必須添加剤として、アルコールを1〜20%(以下重量%)含有する。任意添加剤として、琥珀酸ナトリウム化合物0.1〜1.0%、アルカノールアミン1.0〜10%、エチレングリコールモノエチルエーテル1.0〜10%、ソルビタン脂肪酸エステル1.0〜10%から選ばれる1種又は2種以上を含有する。残部に、基油として、粘度が1.0〜3.0mm2/sのイソパラフィン、鉱油のうち、1種又は2種を含有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収式熱交換機用銅管の銅管加工用潤滑油であって、
必須添加剤として、アルコールを1〜20%(以下重量%)含有し、
任意添加剤として、琥珀酸ナトリウム化合物0.1〜1.0%、アルカノールアミン1.0〜10%、エチレングリコールモノエチルエーテル1.0〜10%、ソルビタン脂肪酸エステル1.0〜10%から選ばれる1種又は2種以上を含有し、
残部に、基油として、粘度が1.0〜3.0mm2/sのイソパラフィン、鉱油のうち、1種又は2種を含有することを特徴とする銅管加工用潤滑油。
【請求項2】
請求項1において、上記アルコールは、下記の一般式(1)で表されることを特徴とする銅管加工用潤滑油。
【化1】


(但し、R1は、炭素数11〜15の炭化水素基である。)
【請求項3】
請求項1又は2において、添加剤として、さらに、芳香族炭化水素を1〜10%含有することを特徴とする銅管加工用潤滑油。
【請求項4】
銅あるいは銅合金からなる銅管の少なくとも外面に、請求項1〜3に記載の銅管加工用潤滑油を供給し、外面に複数の凹凸を設けるトレッドフィン加工を施すことを特徴とする吸収式熱交換機用銅管の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、空調機器、冷凍・冷蔵機器の熱交換等に使用される銅あるいは銅合金からなる吸収式熱交換機用銅管の製造に使用される銅管加工用潤滑油に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ルームエアコン等の空調機、冷蔵庫、冷凍庫等の冷凍機の熱交換器には、伝熱管が使用されている。伝熱管には、伝熱性、加工性、耐食性に優れた銅及び銅合金(以下銅と示す)からなる銅管が用いられている。
該銅管は、内面及び外面に潤滑油を供給して、所定の寸法、内面形状になるように抽伸加工あるいは転造加工を行い、製造する。
【0003】
銅管の製造の最終工程では、熱交換性能を向上させる目的で、外部ローラーにて潤滑油を供給し、銅管の外面に複数の凹凸を設けたトレッドフィン形状に加工するために、トレッドフィン加工が行われる。トレッドフィン銅管の表面は、潤滑不良による焼き付き等の傷がなく、冷媒LiBrによる濡れ性に優れ、加工後表面の残油が少ないことが要求される。
【0004】
このため、使用される潤滑油は、揮発し易く残留しにくい潤滑油が用いられ、例えば、揮発し易い鉱油のみで使用される場合が多い。また、焼き付きを防止するために、少量の油性剤を添加する場合があるが、その場合、加工表面に残油が多くなる。このため、加工後にコロナ放電加工を実施し、濡れ性を向上させている。
【0005】
従来の技術では、焼き付きをなくすために、潤滑油に油性剤を添加したり、基油粘度を増加することが行われてきた。しかしながら、これらの従来技術は、加工後の表面残油が増え、冷媒LiBr溶液の濡れ性が悪化するという問題がある。このため、濡れ性を改善するために、コロナ放電処理がなされるが、設備投資が必要なほか、省スペース化には望ましくない。
【0006】
【特許文献1】特開平5−179419号公報
【特許文献2】特開平6−212466号公報
【特許文献3】特開平7−26356号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、吸収式熱交換機用銅管を作成する際のトレッドフィン加工での潤滑性が優れ、トレッドフィン加工後の残油量が少なく、冷媒LiBr溶液での濡れ性に優れた吸収式熱交換機用銅管の銅管加工用潤滑油を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、吸収式熱交換機用銅管の銅管加工用潤滑油であって、
必須添加剤として、アルコールを1〜20%(以下重量%)含有し、
任意添加剤として、琥珀酸ナトリウム化合物0.1〜1.0%、アルカノールアミン1.0〜10%、エチレングリコールモノエチルエーテル1.0〜10%、ソルビタン脂肪酸エステル1.0〜10%から選ばれる1種又は2種以上を含有し、
残部に、基油として、粘度が1.0〜3.0mm2/sのイソパラフィン、鉱油のうち、1種又は2種を含有することを特徴とする銅管加工用潤滑油にある(請求項1)。
【0009】
本発明の銅管加工用潤滑油は、添加剤と基油の成分を選定することにより、トレッドフィン加工での潤滑性が優れ、トレッドフィン加工後の残油量が少なく、冷媒LiBr溶液での濡れ性に優れた銅管加工用潤滑油を得ることができる。
すなわち、上記銅管加工用潤滑油の必須成分として、必須添加剤としてのアルコールを1〜20%含有し、任意添加剤として、琥珀酸ナトリウム化合物0.1〜1.0%、アルカノールアミン1.0〜10%、エチレングリコールモノエチルエーテル1.0〜10%、ソルビタン脂肪酸エステル1.0〜10%から選ばれる1種又は2種以上を含有する。これにより、優れた潤滑性、冷媒LiBr溶液での優れた濡れ性を有することができる。
【0010】
また、残部に、基油として、粘度が1.0〜3.0mm2/sのイソパラフィン、鉱油のうち、1種又は2種を含有する。
これにより、トレッドフィン加工後の揮発性に優れ、残油量が少なくなる。
【0011】
第2の発明は、銅あるいは銅合金からなる銅管の少なくとも外面に、第1の発明に記載の銅管加工用潤滑油を供給し、外面に複数の凹凸を設けるトレッドフィン加工を施すことを特徴とする吸収式熱交換機用銅管の製造方法にある(請求項5)。
本発明の銅管の製造方法は、トレッドフィン加工において、第1の発明の上記銅管加工用潤滑油を用いることで、トレッドフィン加工後の残油量が少なく、優れた吸収式熱交換機用銅管としてのトレッドフィンを有する銅管を作製することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
第1の発明の銅管加工用潤滑油においては、上述したように、必須添加剤として、アルコールを1〜20%(以下重量%)含有する。
これにより、上記銅管加工用潤滑油は、潤滑性に優れ、冷媒LiBr水溶液での優れた濡れ性を有することができる。
上記必須添加剤としてのアルコールの含有量が1%未満の場合には、潤滑不足となり、成形性が低下するという問題があり、一方、上記アルコールの含有量が20%を超える場合には、焼鈍後の残油量が多くなるという問題がある。
【0013】
また、任意添加剤として、琥珀酸ナトリウム化合物0.1〜1.0%、アルカノールアミン1.0〜10%、エチレングリコールモノエチルエーテル1.0〜10%、ソルビタン脂肪酸エステル1.0〜10%から選ばれる1種又は2種以上を含有する。
これにより、上記アルコールの効果を劣化させることなく、少ない含有量で冷媒LiBr水溶液での濡れ性を大幅に向上させることができる。
【0014】
また、上記琥珀酸ナトリウム化合物を含有させる場合には、その含有量が0.1%未満の場合には、濡れ性が不十分であるという問題があり、一方、上記琥珀酸ナトリウム化合物の含有量が20%を超える場合には、揮発性が低下するため、残油量が増大するという問題や、アルコールの吸着を阻害するため、潤滑性が低下するという問題がある。
【0015】
また、上記アルカノールアミンを含有させる場合には、その含有量が1.0%以下の場合には、濡れ性が不十分になるおそれがあり、一方、上記アルカノールアミンの含有量が10%を超える場合には、揮発性が低下するため、残油量が増大するという問題や、アルコールの吸着を阻害するため、潤滑性が低下するというおそれがある。
【0016】
また、上記エチレングリコールモノエチルエーテルを含有させる場合には、その含有量が1.0%未満の場合には、濡れ性が不十分になるおそれがあり、一方、上記エチレングリコールモノエチルエーテルの含有量が10%を超える場合には、揮発性が低下するため、残油量が増大するという問題や、アルコールの吸着を阻害するため、潤滑性が低下するというおそれがある。
【0017】
また、上記ソルビタン脂肪酸エステルを含有させる場合には、その含有量が1.0%未満の場合には、濡れ性が不十分になるおそれがあり、一方、上記ソルビタン脂肪酸エステルの含有量が10%を超える場合には、揮発性が低下するため、残油量が増大するという問題や、アルコールの吸着を阻害するため、潤滑性が低下するというおそれがある。
【0018】
また、残部として含有する基油は、粘度が1.0〜3.0mm2/sのイソパラフィン、鉱油のうち、1種又は2種からなる。
また、上記基油の含有量は、基本的に、上記添加剤の含有量が確保できる範囲とし、潤滑不足を防ぎ、適正な成形性を確保する。
【0019】
なお、基油のほかに、上記必須添加剤と上記任意添加剤のみを含有する場合、上記基油の合計含有量は、49〜98.9%の範囲となる。しかし、後述する添加剤をさらに加えた場合には、添加剤の含有量に応じて、添加剤と基油との合計が100%となるように、基油の合計含有量が変化する。
また、本発明の銅管加工用潤滑油は、上記基油と添加剤とにより100%になるものであるが、実使用に際して、上述の優れた効果を安定的に操業するために、上記100%の外に、必要に応じて、酸化防止剤、錆止め剤、腐食防止剤、消泡剤等の一種又は二種以上をさらに添加することも勿論可能である。
【0020】
上記酸化防止剤としては、例えば、DBPC(2,6−ジターシャリーブチル−P−クレゾール)等のフェノール系化合物、フェニル−α−ナフチルアミン等の芳香族アミン、リン酸エステル及びその誘導体等が挙げられる。
上記錆止め剤としては、例えば、ジノニルナフタレンスルホン酸バリウム等が挙げられる。
上記腐食防止剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
上記消泡剤としては、例えば、シリコン系のものが挙げられる。
【0021】
上記アルコールは、下記の一般式(1)で表されることが好ましい(請求項2)。
【化2】


(但し、R1は、炭素数11〜15の炭化水素基である。)
【0022】
この場合には、加工後に揮発し易く、臭気が少なく、冬場でも取り扱い易いという効果を得ることができる。
上記1価アルコールの炭化水素基の炭素数が11以下の場合には、潤滑性が劣るという問題があり、一方、上記炭化水素基の炭素数が15以上の場合には、潤滑油が残留し易くなるという問題がある。そのため、上記1価アルコールの炭化水素基の炭素数は12〜15であることがより好ましい。
また、上記炭化水素基R1としては、具体的に、例えば、アルキル基及びアルケニル基等がある。より好ましくは、上記アルコールの炭化水素基R1は、アルキル基又はアルケニル基である。
【0023】
また、上記銅管加工用潤滑油は、添加剤として、さらに、芳香族炭化水素を1〜10%含有することが好ましい(請求項3)。
この場合には、潤滑性をさらに向上させることができ、トレッドフィン加工後に、より蒸散しやすく、濡れ性の悪化を抑制し、必須添加剤であるアルコールの効果を補うことができる。
上記芳香族炭化水素の含有量が1%未満である場合には、効果が現れず、一方、上記芳香族炭化水素の含有量が10%を超える場合には、残油量が増加するおそれや、臭気が発生するおそれがある。
【実施例】
【0024】
以下、本発明の実施例を説明する。
本例では、本発明の実施例及び比較例として、総重量5kgのリン脱銅管を、表1及び表2に示す組成の潤滑油(試料E1〜試料E14、試料C1〜試料C6)を使用してトレッドフィン加工を行い、銅管外径φ16mm、肉厚1mm、長さ約557m、両端角35mm直管部を有する吸収式熱交換機用銅管としての9条トレッドフィン銅管を作製した。
【0025】
【表1】


【0026】
【表2】


【0027】
得られた各試料を用い、以下の評価試験を行った。
<潤滑性評価>
トレッドフィン加工時の加工音および銅管の振動の有無にて、潤滑性を評価した。
(評価基準)
○:加工音及び振動が生じない場合
×:振動を生じた場合
【0028】
<残油性評価>
トレッドフィン加工後の表面より、有機溶剤を用いて抽出洗浄し、赤外分光分析法によって3000〜2800cm-1におけるCH結合の赤外吸光度を測定し、事前に作成しておいた検量線を元に、銅管表面に残留する加工油量を求めた。
(評価基準)
○:0.7mg/m未満
×:0.7mg/m以上
【0029】
<濡れ性評価>
加工後のトレッドフィン銅管の平滑部表面に、容量2mLのスポイトを用いて、高さ20mmの位置より、純粋及びLiBrをそれぞれ1mL滴下し、ぬれた幅を長手方向に計測した。
(評価基準)
○:幅が10mm以上
×:幅が10mm未満
これらの評価結果を表3及び表4に示す。潤滑性、残油性、及び濡れ性のいずれの評価結果も、○を合格とし、×を不合格とする。
【0030】
【表3】


【0031】
【表4】


【0032】
表3より知られるごとく、本発明の実施例である、E1〜E14は、潤滑性、残油性、及び濡れ性のいずれにおいても良好な結果を示した。
表4より知られるごとく、本発明の比較例であるC1は、基油の粘度が本発明の上限を上回るため、揮発性に劣るという理由により、残油量及び濡れ性が不合格であった。
【0033】
また、本発明の比較例であるC2は、ソルビタンモノオレエートの含有量が、本発明の上限を上回るため、不揮発分が増大し、また、アルコールの吸着が阻害されるという理由により、残油量及び潤滑性が不合格であった。
また、本発明の比較例であるC3はジ2−エチルヘキシルスルホ琥珀酸ナトリウムの含有量が、本発明の上限を上回るため、不揮発分が増大し、また、アルコールの吸着が阻害されるという理由により、残油量が不合格であった。
【0034】
また、本発明の比較例であるC4は、トリエタノールアミンの含有量が本発明の上限を上回るため、不揮発分が増大し、また、アルコールの吸着が阻害されるという理由により、残油量及び潤滑性が不合格であった。
また、本発明の比較例であるC5は、エチレングリコールモノエチルエーテルの含有量が本発明の上限を上回るため、不揮発分が増大し、また、アルコールの吸着が阻害されるという理由により、残油量及び潤滑性が不合格であった。
また、本発明の比較例であるC6は、アルコールの含有量が本発明の上限を上回り、また、ジ2−エチルヘキシルスルホ琥珀酸ナトリウムの含有量が、本発明の上限を上回るため、不揮発分が増大し、また、十分な親水膜が形成されないという理由により、残油量及び濡れ性が不合格であった。
【出願人】 【識別番号】000002277
【氏名又は名称】住友軽金属工業株式会社
【出願日】 平成18年6月23日(2006.6.23)
【代理人】 【識別番号】100079142
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 祥泰

【識別番号】100110700
【弁理士】
【氏名又は名称】岩倉 民芳

【識別番号】100130155
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 祥起


【公開番号】 特開2008−1824(P2008−1824A)
【公開日】 平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願番号】 特願2006−173703(P2006−173703)