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【発明の名称】 固形燃料の製造方法及び装置、該方法により製造された固形燃料
【発明者】 【氏名】能登 隆

【氏名】山田 眞樹

【氏名】松井 威喜

【要約】 【課題】固形燃料の製造工程において臭気の発生をできるだけ抑制し、また作業工程を簡略化できる固形燃料の製造方法、該方法によって製造された固形燃料を得る。

【構成】下水汚泥または畜糞を乾燥させて固形燃料を製造する方法であって、下水汚泥または畜糞を所定の大きさの塊状体にする塊状体形成工程と、塊状体形成工程で形成された塊状体の表面の密度を内部の密度よりも高くする表面成形工程と、表面成形された塊状体を熱処理することにより該塊状体の表面に殻を形成する殻形成工程を含むことを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下水汚泥または畜糞を乾燥させて固形燃料を製造する方法であって、
下水汚泥または畜糞を所定の大きさの塊状体にする塊状体形成工程と、塊状体形成工程で形成された塊状体の表面の密度を内部の密度よりも高くする表面成形工程と、表面成形された塊状体を熱処理することにより該塊状体の表面に殻を形成する殻形成工程を含むことを特徴とする固形燃料の製造方法。
【請求項2】
下水汚泥または畜糞を乾燥させて固形燃料を製造する方法であって、
下水汚泥または畜糞を所定の大きさの塊状体にする塊状体形成工程と、塊状体形成工程で形成された塊状体を容器内で転動させて該塊状体の表面を滑らかに成形する表面成形工程と、表面成形された塊状体を熱処理することにより塊状体の表面に殻を形成する殻形成工程を含むことを特徴とする固形燃料の製造方法。
【請求項3】
下水汚泥または畜糞を乾燥させて固形燃料を製造する方法であって、
下水汚泥または畜糞を所定の大きさの塊状体にする塊状体形成工程と、塊状体形成工程で形成された塊状体の表面を加圧して該塊状体の表面を滑らかに成形する表面成形工程と、表面成形された塊状体を熱処理することにより塊状体の表面に殻を形成する殻形成工程を含むことを特徴とする固形燃料の製造方法。
【請求項4】
殻形成工程の熱処理は、塊状体に熱風を当てる又は塊状体を加熱体の上を転動させる態様であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の固形燃料の製造方法。
【請求項5】
殻形成工程の熱処理温度を443K〜513Kに設定したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の固形燃料の製造方法。
【請求項6】
塊状体形成工程の前に下水汚泥または畜糞の含水率を60%〜80%に調整する含水率調整工程を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の固形燃料の製造方法。
【請求項7】
下水汚泥または畜糞を乾燥させて固形燃料を製造する装置であって、
下水汚泥または畜糞を所定の大きさの塊状体にする塊状体形成装置と、塊状体形成装置で形成された塊状体の表面の密度を内部の密度よりも高くする表面成形装置と、表面成形された塊状体を熱処理することにより該塊状体の表面に殻を形成する加熱装置を含むことを特徴とする固形燃料の製造装置。
【請求項8】
塊状体形成装置は、多孔板と、該多孔板に下水汚泥または畜糞を押し込む押込み装置と、多孔板を通過した下水汚泥または畜糞を所定の長さに切断する切断機構を備えてなることを特徴とする請求項7記載の固形燃料の製造装置。
【請求項9】
表面成形装置は、塊状体を収容する容器と、該容器内で回転する回転板とを備え、塊状体を容器内に収容した状態で回転板を回転させることで塊状体を容器内で転動させるようにしたことを特徴とする請求項7又は8に記載の固形燃料の製造装置。
【請求項10】
表面成形装置は、塊状体を収容する容器と、該容器を回転させる回転機構を備え、前記塊状体を容器内に収容した状態で容器を回転させることにより塊状体を容器内で転動させるようにしたことを特徴とする請求項7又は8に記載の固形燃料の製造装置。
【請求項11】
表面成形装置は、対向するロールを備え、該ロール間に塊状体を通過させることによって前記塊状体の表面を加圧するようにしたことを特徴とする請求項7又は8に記載の固形燃料の製造装置。
【請求項12】
請求項1〜6の何れかの方法によって製造されたことを特徴とする固形燃料。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、下水汚泥または畜糞を原料とする固形燃料の製造方法および装置、該方法により製造された固形燃料に関する。
【背景技術】
【0002】
下水汚泥を原料とする固形燃料の製造方法としては、例えば以下のようなものが提案されている。
含水率が0〜50%となるまで乾燥させた下水汚泥を、概ね、520K〜770Kで炭化処理する炭化工程と、前記炭化処理によって得られた汚泥炭化物に対して、廃油および廃油残渣の少なくとも一方を混合して造粒処理する混合造粒工程と、を含むことを特徴とする固形燃料の製造方法(特許文献1参照)。
【0003】
他の固形燃料製造方法として、下水脱水ケーキと廃プラスチック粉砕物及び/又は古紙破砕物とを混合し、成形後に乾燥させることを特徴とする汚泥処理方法がある(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2006-152097号公報
【特許文献2】特開2006-15174号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1、2を含むその他の一般的な固形燃料製造方法においては、固形燃料製造方法の各工程において発生する強い臭気に対する対策が十分とは言えない。
また、特に特許文献1の方法では、炭化工程の後に廃油および廃油残渣の少なくとも一方を混合して造粒処理する混合造粒工程を行うことになるが、炭化処理後の汚泥は粉状になって浮遊することから、その処理環境が非常に悪く、造粒工程における作業が煩雑であるという問題がある。
【0005】
本発明は係る課題を解決するためになされたものであり、固形燃料の製造工程において臭気の発生をできるだけ抑制し、また作業工程を簡略化できる固形燃料の製造方法および製造装置、該方法によって製造された固形燃料を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、発明者は固形分を含む汚泥粒子の乾燥過程における粒径変化の測定、内部構造の観察、熱処理温度が臭気に及ぼす影響についての考察を行った。
【0007】
1)乾燥過程における粒径変化の測定
初期粒径d0=7mmの粒子について、所定温度の気流によって熱処理を行い、乾燥過程における粒径の変化を測定した。
なお、下水汚泥の乾燥実験用粒子は次のようにして作成した。まず、下水汚泥をある所定の大きさの塊状体にちぎり、次に、塊状体の表面の密度が内部の密度よりも高くなるように、塊状体の汚泥を、板面上を転動させながら、球形あるいはそれに準じる形状に成形する。この成形中、少し加圧するように押し固めると、凸凹面が少ない滑らかな表面を有する塊状体となる。
【0008】
熱処理温度Ta=473K、343Kの場合の無次元時間tに対する粒径d(mm)の変化を含水比C(%)の履歴とともに図2に示す。ここで、含水比C(%)とは、水分を除いた乾燥質量に対する粒子中に含まれる水分量の比を意味する。
【0009】
図2から分かるように、Ta=343Kの場合のほうがTa=473Kのときよりも粒径が減少し、Ta=343Kの場合では初期粒径に対して84%、Ta=473Kの場合では初期粒径に対して90%の粒径になった。熱処理温度Taが高いほど粒子半径方向の温度分布が大きいと仮定すると、Ta=473Kの場合は表面が内部よりも早く加熱されて乾燥し、硬い固体壁となる殻を形成するために体積収縮がおこりにくくなると考えられる。それに対して、Ta=343Kの場合は、外部のみではなく、全体的に乾燥が進行するため表面がまだ完全に硬くなる前に内部の水分が蒸発し、収縮が起きるものと思われる。
【0010】
2)内部構造の観察(乾燥途中における粒子断面の観察)
汚泥粒子を乾燥させた場合に乾燥過程における内部の様子を明らかにするために、乾燥途中の粒子を切断した断面を撮影し、観察した。Ta=473KおよびTa=343Kの場合について、それぞれ図3(a)〜(c)、図4(a)〜(c)に示す。
各図の(a)は、初期状態の粒子断面を示す。この場合、白い繊維状の物質を含む固形分が完全に水分と溶け合っているのがわかる。乾燥過程については、Ta=473Kの場合は、まず表面が乾燥して外殻を形成し、その後内部に亀裂が生じ、それが発達して空隙へと成長すると考えられる。それに対して、Ta=343Kの場合は、Ta=473Kのときのような殻ははっきりと確認できず、全体的に乾燥していく。含水比Cが43%の段階(各図中の(b))では、熱処理温度による違いが明らかであり、Ta=473Kの場合内部はまだ湿っているが、Ta=343Kの場合は内部もやや乾燥して白い繊維状の物質が析出しているのが分かる。
【0011】
上記、乾燥過程における粒径変化の測定及び内部構造の観察により、熱処理温度によって汚泥粒子の乾燥特性に次のような違いが生じると考えられる。
高温乾燥の場合は、体積が収縮する間もなく先に表面が乾燥して外殻を形成する。内部はその外殻を通じて乾燥が進行するが、外殻が硬いため体積の収縮が妨げられる。
【0012】
汚泥粒子における殻形成は、粒子表面からの水分の蒸発速度と内部の水分の拡散速度との兼ね合いによって起こることが考えられる。すなわち、熱処理温度が高い場合は蒸発速度が大きく、粒子表面近くの温度勾配および含水比勾配が急となるため、内部の含水比が高いうちに体積が収縮する間もなく表面が乾燥し殻を形成する。低温乾燥時よりも粒径変化が小さいのは、殻が硬く体積の収縮を妨げるためであると思われる。また、乾燥過程において溶質である固形分は水分と同様に内部から表面へ拡散するが、高温乾燥の場合は表面付近が早く乾燥して硬化し、内部の固形分が拡散しにくくなるため、全体的に疎なポーラス状粒子になると考えられる(図3(c)参照)。
【0013】
一方、低温乾燥の場合、表面は早く乾燥するが、殻は形成されずに、全体的に乾燥するため大幅な体積収縮が生じ、固形分の揮発も起こりやすい。
熱処理温度が低い場合は、粒子内の温度勾配および含水比勾配が小さいため、固形分が表面に移動し、硬い殻は形成せず、乾燥の進行に伴い大幅な体積収縮が生じるものと考えられる(図4(c)参照)。343Kの条件では、完全に乾燥しきるまで殻は形成されず、熱処理時、水分および揮発分は、圧力抵抗の低い表面から外部に放出されるため、表面が凸凹になる。
【0014】
なお、初期粒子径d0=5mm、3mmの粒子に関しては、いずれの条件についてもd0=7mmの場合とほぼ同様の特性を示すが、殻および外皮の厚みがd0=7mmのものと同様であった。
【0015】
上記の実験によって、汚泥粒子の熱処理条件が高温(473K)の場合と、低温(343K)の場合で、顕著な差異があることが分かったので、発明者はさらに種々の熱処理温度条件について同様の実験を行い、以下のような結果を得た。
汚泥塊状体の表面を滑らかに成形した後、443K〜513Kの高温場で熱処理するとき、例えば、高温気流を当てながら熱処理すると、硬い殻が形成され、殻の表面は滑らかで、繊維状の物質が規則正しく配列された状態になる。この現象は、汚泥粒子を、外部加熱された高温の転動面内壁を転がしながら熱処理したときも同様であった。
【0016】
他方、熱処理温度を443Kよりも低くすると、塊状体表面から凸凹を無くして滑らかにし、塊状体の表面の密度を内部より高くした汚泥塊状体を用いても、熱処理後の表面は凸凹になる。より具体的には、373Kや343Kの条件では、形状の整った球状の汚泥塊状体を用いたとしても、熱処理後は表面が凸凹になり、表面に亀裂が入ったりする。また、343Kの条件では、前述したように、塊状体の収縮が大きく、完全に乾燥しきるまで硬い殻は形成されない。
熱処理温度が低い場合には、熱処理後の粒子表面は粗く、繊維状の物質が乱雑に絡み合っていることが確認できた。これは、熱処理過程において、水分あるいは揮発分は、圧力抵抗の低い表面から外部に放出し、滑らかな表面を崩していくためであると考えられる。
【0017】
以上の結果から、汚泥塊状体を、443K〜513K、好ましくは、453K以上で熱処理すると、塊状体の粒径減少が小さく、熱処理前の形状を保持し続け、熱処理後、表面に滑らかで硬い殻を形成されるとの知見を得た。
【0018】
次に、汚泥塊状体の表面状態が乾燥過程において塊状体に及ぼす影響についても確認した。その結果、凸凹面が少ない滑らかな塊状体の汚泥を、443K〜513Kで熱処理すると、凸凹面がある塊状体汚泥よりも、さらに硬い殻が形成される傾向にあることが分かった。
表面の凸凹を無くすと、凸凹有りの塊状体よりも、高温気流から汚泥内部への熱移動量が小さくなり、粒子表面の温度勾配が、凸凹有りに比べてさらに大きくなり、より短時間に体積収縮する間もなく表面に殻を形成する。内部温度が低く、内部からの水分および揮発分の発生量が少ない間に殻を形成させることができると、塊状体の表層全体に渡って、とても緻密で硬い殻が形成される。
【0019】
次に、汚泥塊状体の殻の厚みについて考察した。
高温気流に晒した時間に応じて、その殻の厚みも変化する。時間が長ければ長いほど殻の厚みは増す。例えば、初期粒子径d0=7mmの汚泥粒子を用いた453K〜493Kの条件では、殻の厚みは0.1mm〜1mmであった。乾燥後の汚泥塊状体が、粉状に崩れない程度の硬さを維持するためには、殻の厚みは0.1mm以上必要であることがわかった。
また、乾燥後の汚泥塊状体が粉状に崩れないようにするための厚みは、初期粒子径が大きくなるほど、大きな厚みが必要で、初期粒子径20mmでは、0.2mm程度、30mmでは0.25mm程度必要であるという知見を得た。初期粒子径30mmの汚泥粒子を用いた453K〜493Kの条件では、完全に乾燥した後、殻の厚みを測定したところ、最大3.2mmとなった。
【0020】
加熱方法について考察したところ、以下の知見が得られた。凸凹面が少ない滑らかな塊状体の汚泥を、443K〜513Kで、外部加熱された高温の転動面内壁を転がしながら熱処理したとき、高温気流による熱処理の場合よりも、より短時間で緻密な殻ができることがわかった。外部加熱された高温の転動面内壁を転がす方法の場合には、固体どうしの接触によって熱が伝わるため、熱処理工程において、塊状体表面を押し固める作用が働くからと考えられる。
【0021】
なお、上記においては下水汚泥を例に挙げたが、畜糞についても同様の実験を行い、同様の結果を得ている。
なお、下水汚泥、畜糞の質によっては、光沢を持つ硬い殻を形成されることがあることを確認した。
【0022】
3)熱処理温度が臭気に及ぼす影響について
次に、熱処理温度と臭気係数の関係について明らかにするために臭気実験を行った。このときの実験条件を表1に示す。
【表1】


【0023】
また、実験結果を図5のグラフに示す。図5のグラフにおいては、縦軸が臭気係数、横軸が熱処理温度(℃)を示している。
なお、「臭気係数」とは、本実験で独自に定義したものであり、人間の嗅覚によって以下に示すような方法で臭気試験を行うことによって得られたものである。以下、この臭気実験を概説する。
【0024】
この試験は試験者と被験者の二人一組で行った。まず乾燥温度等をパラメータにして作成した乾燥粒子のサンプルを、それぞれ番号が付けられた容器に分ける。試験者はその中から無作為にサンプルを選び、被験者にはその番号を知らせずに手渡す。被験者は嗅覚によってサンプルの臭気を確認し、少しでも悪臭が感じられた場合は1、全く悪臭が感じられなかった場合のみ0と試験者に告げる。この作業を全てのサンプルについて行い、これを一回の臭気試験とした。この試験を繰り返し行い、それぞれの条件ごとに平均値を求め、その値を「臭気係数」と定義した。再現性の高い結果を得るため、各条件における臭気係数の値が安定するまで行った。試験回数が30回以上になると、その条件でも臭気係数の値は安定を示した。
【0025】
図5から臭気係数は熱処理温度が443K以上になると急激に減少し、熱処理温度が473Kではほぼ0になる。このことから、汚泥の乾燥粒子の臭気は熱処理温度に依存するものであり、熱処理温度473Kで乾燥させることによって乾燥粒子の臭気を大きく低減させることが可能であることを確認した。
【0026】
臭気が低減する理由としては、上述したように、473Kでの乾燥によれば、汚泥粒子の表面に硬い殻が形成され、この形成された殻に臭気が吸着等されることが一つの要因であると考えられる。
すなわち、汚泥粒子の表面を443K以上で熱処理すると、表面から水分が蒸発するだけでなく、表面の固形分の性状が変質し、臭気成分を吸着しやすい物質となる。この殻の成分は特定できていないが、臭気の吸着作用に関して、活性炭の吸着作用に類似する機能を有していると考えている。
この臭気を抑える機能は、熱処理温度が513Kまでは、熱処理温度を高くするほど向上する。
【0027】
513Kを超えると、乾燥時に発生する臭気の吸着効果は得られるが、新たに、たんぱく質がこげたような別の臭いが発生する。この温度での熱処理は、513K以下で形成する殻とは別の殻の性状をもたらし、乾燥後温度が低下した後も別種の悪臭を発生させる。したがって、汚泥乾燥物から発生する強い悪臭を抑えるという観点から、513Kより高温で熱処理することは好ましくない。
【0028】
また、熱処理温度443K付近は脂肪酸、有機酸等の物質の沸点に相当するが、473Kで乾燥した場合には、揮発した脂肪酸、有機酸の物質、例えば、酪酸、吉草酸、そして、それらと構造式が類似する物質は、臭気の無いあるいは臭気の弱い物質へと分解される。
【0029】
以上の結果から、下水汚泥および畜糞を対象とする場合、乾燥によって十分に安定した臭気低減効果を得るためには、熱処理温度としては、443K〜513Kであることが必要であり、好ましくは453K〜493Kである。
【0030】
なお、上記の実験において臭気低減効果を得た汚泥粒子は、凸凹面が少ない滑らかな塊状体を用いている。表面に凸凹やちぎられた切断面あるいは亀裂がある粒子は、熱処理中にそこから悪臭成分が放出するため、例え上記のような殻形成が可能な温度領域であったとしても、臭気低減効果は得にくい。したがって、臭気低減効果を得るためには、塊状体の表面の密度を内部の密度より大きくするなどして、表面を滑らかな状態にする必要がある。
443K〜513Kで熱処理したときに、粒子表面に繊維状の物質が規則正しく配列した緻密な硬い殻が臭いを抑制する効果を有するが、この殻は、凸凹面が少ない滑らかな塊状体になるように表面成形工程を加えられた汚泥を熱処理することによってより確実に形成される。表面がすべすべして均一に押し固められた“泥団子”状態になるように表面成形された“凸凹面が少ない滑らかな塊状体”を、443K〜513K、好ましくは453K〜493Kで熱処理するとき、汚泥乾燥時に発生する悪臭を最も抑制する効果を有する。
【0031】
本発明は、上述した実験に基づく知見を基になされたものであり、具体的には、以下の構成を有するものである。
【0032】
(1)本発明に係る固形燃料の製造方法は、下水汚泥または畜糞を乾燥させて固形燃料を製造する方法であって、下水汚泥または畜糞を所定の大きさの塊状体にする塊状体形成工程と、塊状体形成工程で形成された塊状体の表面の密度を内部の密度よりも高くする表面成形工程と、表面成形された塊状体を熱処理することにより該塊状体の表面に殻を形成する殻形成工程を含むことを特徴とするものである。
【0033】
(2)また、下水汚泥または畜糞を乾燥させて固形燃料を製造する方法であって、
下水汚泥または畜糞を所定の大きさの塊状体にする塊状体形成工程と、塊状体形成工程で形成された塊状体を容器内で転動させて該塊状体の表面を滑らかに成形する表面成形工程と、表面成形された塊状体を熱処理することにより塊状体の表面に殻を形成する殻形成工程を含むことを特徴とするものである。
なお、表面成形工程は成形物の表面に亀裂がないようにする態様であることが好ましい。
【0034】
(3)また、下水汚泥または畜糞を乾燥させて固形燃料を製造する方法であって、
下水汚泥または畜糞を所定の大きさの塊状体にする塊状体形成工程と、塊状体形成工程で形成された塊状体の表面を加圧して該塊状体の表面を滑らかに成形する表面成形工程と、表面成形された塊状体を熱処理することにより塊状体の表面に殻を形成する殻形成工程を含むことを特徴とするものである。
【0035】
(4)また、上記(1)〜(3)に記載のものにおいて、殻形成工程の熱処理は、塊状体に熱風を当てる又は塊状体を加熱体の上を転動させる態様であることを特徴とするものである。
【0036】
(5)また、上記(1)〜(4)に記載のものにおいて、殻形成工程の熱処理温度を443K〜513Kに設定したことを特徴とするものである。
【0037】
(6)また、上記(1)〜(5)に記載のものにおいて、塊状体形成工程の前に下水汚泥または畜糞の含水率を60%〜80%に調整する含水率調整工程を含むことを特徴とするものである。
【0038】
(7)本発明に係る固形燃料の製造装置は、下水汚泥または畜糞を乾燥させて固形燃料を製造する装置であって、下水汚泥または畜糞を所定の大きさの塊状体にする塊状体形成装置と、塊状体形成装置で形成された塊状体の表面の密度を内部の密度よりも高くする表面成形装置と、表面成形された塊状体を熱処理することにより該塊状体の表面に殻を形成する加熱装置を含むことを特徴とするものである。
【0039】
(8)また、上記(7)に記載の塊状体形成装置は、多孔板と、該多孔板に下水汚泥または畜糞を押し込む押込み装置と、多孔板を通過した下水汚泥または畜糞を所定の長さに切断する切断機構を備えてなることを特徴とするものである。
【0040】
(9)また、上記(7)又は(8)に記載の表面成形装置は、塊状体を収容する容器と、該容器内で回転する回転板とを備え、前記塊状体を容器内に収容した状態で回転板を回転させることで該塊状体を容器内で転動させるようにしたことを特徴とするものである。
【0041】
(10)また、上記(7)又は(8)に記載の表面成形装置は、塊状体を収容する容器と、該容器を回転させる回転機構を備え、前記塊状体を容器内に収容した状態で前記容器を回転させることで該塊状体を容器内で転動させるようにしたことを特徴とするものである。
【0042】
(11)また、上記(7)又は(8)に記載の表面成形装置は、対向するロールを備え、該ロール間に塊状体を通過させることによって前記塊状体の表面を加圧するようにしたことを特徴とするものである。
【0043】
(12)本発明に係る固形燃料は、上記(1)〜(6)の何れかの方法によって製造されたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0044】
本発明においては、下水汚泥または畜糞を所定の大きさの塊状体にすると共に塊の表面の密度を内部の密度よりも高くし、その塊状体を熱処理することにより周囲に殻を形成するようにしたので、製造工程全般を通じて臭気を抑制できる。
また、乾燥工程の前に成形しているので、乾燥後に造粒工程が不要となり、工程の簡略化ができる。
さらに、乾燥工程の後に造粒するという工程がないので、乾燥後のものが粉状になって浮遊することによる処理環境の悪化の問題も生じない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
[実施の形態1]
図1は本発明の一実施の形態に係る固形燃料の製造方法を模式的に示した説明図である。
本実施の形態に係る固形燃料の製造方法は、下水汚泥を所定の大きさの塊状体にする塊状体形成工程(図1(a))と、塊状体形成工程で形成された塊状体の表面の密度を内部の密度よりも高くする表面成形工程(図1(b))と、表面成形された塊状体を熱処理することにより該塊状体の表面に殻を形成する殻形成工程(図1(c))を含むものである。殻形成工程が終了すると、乾燥工程を経て、固形燃料となる。
以下、各工程および各工程に関わるものについて詳細に説明する。
【0046】
<原料>
本実施の形態で用いた原料は下水汚泥である。
原料となる下水汚泥の含水率は、60%〜80%であることを前提としている。したがって、下水汚泥の含水率が80%よりも大きい場合には、塊状体にする際に容器周囲に付着して塊状体を形成することができない。
なお、含水率は68%〜73%であることが好ましい。含水率がこの範囲内であると、塊状体の表面密度を内部より高くする表面成形工程が円滑に進む。
【0047】
表面成形工程の稼働率をあげるために、その工程に入る前の塊状体汚泥の含水率が80%よりも高い場合は、乾燥空気あるいは常温気流等の吹き付け、減圧乾燥による予備乾燥処理工程を付加する場合がある。このとき、塊状体が318K以下、好ましくは308K以下の状態を保ちながら乾燥することが望ましい。塊状体の予備乾燥温度が318K以上に上昇すると、この予備乾燥工程において悪臭が発生するからである。
【0048】
また、下水汚泥の含水率が60%よりも低い場合には、塊状体を形成することはできるものの、個々の塊状体が固いため、凸凹面が少ない滑らかな表面成形をすることが難しい。この場合において、凸凹をなくすため、押し固める力を大きくすると、塊状体に亀裂が入ったり割れたりする。
したがって、塊状体形成工程の前、あるいは塊状体形成工程の後に予備的な乾燥、あるいは加水を行って含水率を上記の範囲にするのが好ましい。
【0049】
なお、固形燃料の原料としては、下水汚泥の他に、畜糞、し尿汚泥、食品加工残渣汚泥、製紙汚泥などの含水有機性汚泥も原料にすることができる。
【0050】
<塊状体形成工程>
塊状体形成工程は、下水汚泥を所定の大きさの塊状体にする工程である。
下水汚泥を塊状体にする具体的な方法は、図1(a)に示すように、下水汚泥1をスクリューポンプ又はモーノポンプ等によって多孔板(ダイス)3に加圧・押込みすることによって、下水汚泥1を線状体5にし、これを切断機構7によって一定の長さに切断することで、円筒状の塊状体9とする。
もっとも、塊状体9にする方法は、上記の方法に限定されるものではない。
【0051】
<表面成形工程>
表面成形工程は、塊状体形成工程で形成された塊状体9の表面の密度を内部の密度よりも高くする工程である(図1(b))。
表面成形工程の具体的な態様としては、図1(b)に示されるような方法が考えられる。図1(b)(i)に示す例は、円筒状の容器11の底部に回転する円板13を設け、塊状体9を容器内に入れて円板13を回転させることによって、塊状体9を円板上で転動させることで、塊状体の表面の密度を内部の密度よりも高くし、塊状体の表面が亀裂のない滑らかな状態にするというものである。
【0052】
また、図1(b)(ii)に示す例は、傾斜配置した円筒体15を、円筒軸を中心として回転させ、この円筒体15内に上方から塊状体9を装入することにより、塊状体9が円筒内で転動して、図1(b)(i)の場合と同様に、塊状体9の表面の密度を内部の密度よりも高くし、塊状体の表面が亀裂のない滑らかな状態にするというものである。
【0053】
また、図1(b)(iii)に示す例は、塊状体9の表面を加圧することで塊状体9の表面の密度を内部の密度よりも高くするというものである。具体的には、図1(b)(iii)に示すように、塊状体9を、対向配置された一対のロール17の間を通過させることで、塊状体9の表面の密度を内部の密度よりも高くし、塊状体9の表面が亀裂のない滑らかな状態にする。一般に、ロールには、表面を加圧する機能に加えて、球状あるいは球体に近い塊状になるように、表面にくぼみを設けている。
【0054】
<殻形成工程>
殻形成工程は、表面成形された塊状体18を熱処理することにより、塊状体18の表面に殻を形成する工程である。
殻形成工程の具体的な態様としては、図1(c)に示される方法がある。例えば、図1(c)(i)に示されるように、傾斜した円筒体19を、円筒軸を中心に回転させ、その中に高温ガス21を通過させ、この円筒体19に表面成形された塊状体18を装入することで、塊状体18の表面に殻22が形成される。また、図1(c)(ii)に示されるように、加熱された内面を有する円筒体23を、円筒軸を中心に回転させ、その中に表面成形された塊状体18を通過させることで、塊状体18の表面に殻22を形成する。
【0055】
熱処理温度としては、443K〜513Kが好ましい。443K未満であると、殻の形成が不十分になる。他方、513Kを越えると、熱処理中に汚泥または畜糞から焦げ臭いに悪臭がでる。また、さらに高温になると、汚泥または畜糞から炭化水素あるいは水素が揮発しやすくなり、炭化が進みやすい構造となって乾燥後の塊状体の有するカロリーが減少する。
【0056】
<乾燥工程>
乾燥工程は、殻形が形成された塊状体を乾燥して固形燃料とする工程である。
乾燥工程における温度は特に限定されるものではない。殻形成工程の温度のまま、例えば473K前後でもよいし、あるいは常温で減圧乾燥でもよい。いずれの温度であっても、殻が形成されていることから、乾燥工程では、悪臭が外気発散するのが抑制される。もっとも、乾燥工程での温度をあまり高くすると炭化して固形燃料のカロリーが減少するという問題があることから、殻形成工程の温度よりも低くするのが好ましい。
なお、乾燥工程に用いる乾燥機としては、例えば塊状体を搬送するベルトコンベアを備えた温風乾燥室からなる態様のものでよい。
【0057】
以上のように、本実施の形態においては、汚泥を塊状体に形成し、さらに塊状体の表面成形を行い、この表面成形された塊状体の表面に殻を形成するようにしたので、固形燃料製造工程を通じて悪臭の発散を可及的に抑制できる。また、乾燥工程の後に造粒する工程がなくなるので、工程の簡略化ができ生産効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の一実施の形態に係る固形燃料の製造方法の説明図である。
【図2】固形分を含む汚泥粒子の乾燥過程における粒径変化の測定結果を示すグラフである。
【図3】固形分を含む汚泥粒子の乾燥過程の断面の写真である。
【図4】固形分を含む汚泥粒子の乾燥過程の断面の写真である。
【図5】熱処理温度と臭気係数の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0059】
1 下水汚泥
3 多孔板
7 切断機構
9 塊状体
11 容器
13 円板
15 円筒体
17 ロール
18 表面成形された塊状体
19 円筒体
21 高温ガス
22 殻
23 円筒体
【出願人】 【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
【出願日】 平成18年8月24日(2006.8.24)
【代理人】 【識別番号】100127845
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 壽彦


【公開番号】 特開2008−50458(P2008−50458A)
【公開日】 平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願番号】 特願2006−227663(P2006−227663)