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炭化水素系燃料の脱硫方法 - 特開2008−31306 | j-tokkyo
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【発明の名称】 炭化水素系燃料の脱硫方法
【発明者】 【氏名】新妻 拓弥

【氏名】宮沢 一則

【氏名】小堀 良浩

【氏名】足立 倫明

【氏名】瀬川 敦司

【要約】 【課題】硫化カルボニルを含む炭化水素系燃料に微量のメタノールが混入している状態、あるいはさらに微量の水分が混入している状態の炭化水素系燃料を脱硫するにあたり、脱硫効果を長期に渡り維持することができる脱硫剤を用いた脱硫方法を提供する。

【構成】硫化カルボニルとメタノールを含有する炭化水素系燃料を脱硫するにあたり、脱硫剤として、少なくとも銀を含有するゼオライト系脱硫剤であって、かつ該ゼオライトのSiO/Al比が2〜3で、脱硫剤の表面積が300m/g以上である脱硫剤を用いることを特徴とする炭化水素系燃料の脱硫方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫化カルボニルとメタノールを含有する炭化水素系燃料を脱硫するにあたり、脱硫剤として、少なくとも銀を含有するゼオライト系脱硫剤であって、かつ該ゼオライトのSiO/Al比が2〜3で、脱硫剤の表面積が300m/g以上である脱硫剤を用いることを特徴とする炭化水素系燃料の脱硫方法。
【請求項2】
反応温度が100℃以下であることを特徴とする請求項1に記載の炭化水素系燃料の脱硫方法。
【請求項3】
炭化水素系燃料中のメタノールの濃度が1質量ppm以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の炭化水素系燃料の脱硫方法。
【請求項4】
炭化水素燃料中の硫化カルボニルの濃度が0.1質量ppm以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の炭化水素系燃料の脱硫方法。
【請求項5】
炭化水素系燃料が1質量ppm以上の水を含有していることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の炭化水素系燃料の脱硫方法。
【請求項6】
ゼオライトがフォージャサイト型ゼオライトであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の炭化水素系燃料の脱硫方法。
【請求項7】
炭化水素系燃料がLPガスであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の炭化水素系燃料の脱硫方法。
【請求項8】
ゼオライト系脱硫剤が、ゼオライトに銀をイオン交換担持することで得られたことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の炭化水素系燃料の脱硫方法。
【請求項9】
ゼオライト系脱硫剤が、ゼオライトを成型した後、銀を担持して得られることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の炭化水素系燃料の脱硫方法。
【請求項10】
ゼオライト系脱硫剤が、銀のイオン交換後、80℃以上180℃以下の乾燥処理をして得られることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の炭化水素系燃料の脱硫方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載された脱硫方法を用いたことを特徴とする燃料電池システム用水素製造装置。
【請求項12】
請求項11に記載された水素製造装置を具備することを特徴とする燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、硫化カルボニルとメタノールを含有する炭化水素系燃料の脱硫方法に関する。さらに本発明は、硫化カルボニルとメタノールを含有する炭化水素系燃料を原燃料とする燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システム、とりわけ近年発展著しい固体高分子形燃料電池(PEFC)においては、炭化水素系の原燃料から水素を得る過程で、まず原燃料に含まれる硫黄分をきわめて低レベルまで除去することが、後段の改質、水性ガスシフト、CO選択酸化などの触媒反応工程が正常にかつ長期的に動作する上で必須である。このために多くの燃料電池システムでは、原燃料に含まれる硫黄分を吸着や水素化分解により除去するための脱硫部を具備している。使用される脱硫剤や触媒の種類としては、水素化脱硫触媒や硫黄吸着剤が用いられるが、中でも常圧、かつ室温に近い比較的低温の温和な条件で硫黄分を極めて低いレベルまで除去できる銀や銅をイオン交換により担持したゼオライト系の脱硫剤は工業的に有用であり、天然ガスやLPガス(液化石油ガス)などの低沸点の炭化水素を原燃料として用いる家庭用燃料電池システムなどに広く用いられつつある(例えば、特許文献1〜5および非特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2001−286753号公報
【特許文献2】特開2001−305123号公報
【特許文献3】特開2004−168648号公報
【特許文献4】特開2004−277747号公報
【特許文献5】特開平2−73887号公報
【非特許文献1】「日本化学会誌」,1981年,第12巻,p.1945−1950
【0003】
ところが、一部の炭化水素系燃料においては必要に応じて微量のメタノールを添加することがある。例えば、LPガスにおいては、特に冬季において混入水分の凍結を防止するためメタノールが添加されることがある。メタノールが添加された炭化水素燃料を用いた場合、前記ゼオライト系脱硫剤の性能が低下することが見出された。特に温度が低い場合ではこの傾向が顕著である。このようにメタノールが共存する場合、低温において脱硫性能が低下してしまう現象は燃料電池システムの耐久性を損なうため好ましくなく、メタノールが添加されていても低温域で高い脱硫性能を持つ脱硫剤が望まれていた。
一方、疎水性ゼオライトに銀を担持することで、炭化水素系燃料中に水分が混入したときにおいて高性能の脱硫性能が得られることが特許文献1に開示されている。しかしながら、特許文献1に記載された脱硫剤では炭化水素系燃料がメタノールを含む使用条件においては限定的な性能しか示さないことを本発明者らは見出した。
したがって、メタノールを含む使用条件においても性能が低下しない脱硫剤の開発が求められていた。またメタノールを含み、さらに1質量ppm以上の水が混入している炭化水素系燃料を用いる場合にも、性能が低下しない脱硫剤の開発が求められていた。
【0004】
さらに、炭化水素系燃料中に硫黄成分として硫化カルボニルが含まれているとゼオライト系脱硫剤だけでは取り除くことができず、ゼオライト系脱硫剤の前段または後段に硫化カルボニルを取り除くための脱硫剤が必要となり、二段以上の多段となるために脱硫装置の容積が大きくなる。さらに、メタノールが添加された場合、特に温度が低い条件ではNiやCuやZnといった通常、多段で用いられる硫化カルボニル用脱硫剤では、性能が極端に低下してしまうため、使用することができない。そこで、脱硫装置のコンパクト化と硫化カルボニルの脱硫のためにゼオライト系脱硫剤など1種の脱硫剤で硫化カルボニルを取り除く脱硫剤の開発が望まれていた(例えば、特許文献6〜7参照。)。
【特許文献6】国際公開第2004/058927号パンフレット
【特許文献7】特開2005−68337号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、硫黄成分として微量の硫化カルボニルを含む炭化水素系燃料に微量のメタノールが混入している状態、あるいはさらに微量の水分が混入している状態の炭化水素系燃料に対し、脱硫効果を長期に渡り維持することができる脱硫剤を用いた脱硫方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上述の問題点を解決すべく鋭意検討した結果、硫化カルボニルとメタノールを含有する炭化水素系燃料を脱硫するにあたり、脱硫剤として、少なくとも銀を含有するゼオライト系脱硫剤を用い、かつ該ゼオライトのSiO/Al比が2〜3の範囲であり、表面積が300m/g以上である脱硫剤を用いることにより、前記問題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0007】
すなわち本発明は、硫化カルボニルとメタノールを含有する炭化水素系燃料を脱硫するにあたり、脱硫剤として、少なくとも銀を含有するゼオライト系脱硫剤であって、かつ該ゼオライトのSiO/Al比が2〜3で、脱硫剤の表面積が300m/g以上である脱硫剤を用いることを特徴とする炭化水素系燃料の脱硫方法に関する。
【0008】
また本発明は、反応温度が100℃以下であることを特徴とする前記記載の炭化水素系燃料の脱硫方法に関する。
また本発明は、炭化水素系燃料中のメタノールの濃度が1質量ppm以上であることを特徴とする前記記載の炭化水素系燃料の脱硫方法に関する。
また本発明は、炭化水素系燃料中の硫化カルボニルの濃度が0.1質量ppm以上であることを特徴とする前記記載の炭化水素系燃料の脱硫方法に関する。
また本発明は、炭化水素系燃料が1質量ppm以上の水を含有していることを特徴とする前記記載の炭化水素系燃料の脱硫方法に関する。
【0009】
また本発明は、ゼオライトがフォージャサイト型ゼオライトであることを特徴とする前記記載の炭化水素系燃料の脱硫方法に関する。
また本発明は、炭化水素系燃料がLPガスであることを特徴とする前記記載の炭化水素系燃料の脱硫方法に関する。
【0010】
また本発明は、ゼオライト系脱硫剤が、ゼオライトに銀をイオン交換担持することで得られたことを特徴とする前記記載の炭化水素系燃料の脱硫方法に関する。
また本発明は、ゼオライト系脱硫剤が、ゼオライトを成型した後、銀を担持して得られることを特徴とする前記記載の炭化水素系燃料の脱硫方法に関する。
また本発明は、ゼオライト系脱硫剤が、銀のイオン交換後、80℃以上180℃以下の乾燥処理をして得られることを特徴とする前記記載の炭化水素系燃料の脱硫方法に関する。
【0011】
また本発明は、前記記載の炭化水素系燃料の脱硫方法を用いたことを特徴とする燃料電池システム用水素製造装置に関する。
さらに本発明は、前記記載の水素製造装置を具備することを特徴とする燃料電池システムに関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の脱硫方法により、炭化水素系燃料に微量の硫化カルボニルおよび微量のメタノールが混入している状態、好ましくは微量の硫化カルボニル、微量のメタノールおよび微量の水分が混入している状態において、脱硫剤の性能を長期に渡り維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
本発明において原燃料として用いる炭化水素系燃料は、硫化カルボニルとメタノールを含有する炭化水素系燃料である。炭化水素系燃料としては、天然ガス、LPガス、ナフサ、ガソリン、灯油などを例示することができる。これらの中でも天然ガスもしくはLPガスのような常温・常圧で気体である燃料が好ましく、さらに好ましくはLPガスである。
【0014】
LPガスの場合には天然ガスに添加される成分に加え、もともとLPガスの製造過程で含まれるメチルメルカプタン、エチルメルカプタン、プロピルメルカプタンなどの低級メルカプタン類、ジメチルスルフィドなどの低級スルフィド類、および硫化カルボニルなどの成分や、またメルカプタン類が酸化的にカップリングしたジスルフィド類なども含有する。
またLPガスの硫黄濃度は、通常0.1〜10質量ppm程度であるが、LPガスボンベからのガス採取の場合などでは、ボンベ残量により硫黄濃度は変動することが知られており、多い場合には短期間では100質量ppmを超える場合もある。
さらに平均分子量の大きいナフサや灯油では、常温で液体のために付臭剤の添加は必要ないが、原料に含まれる硫黄濃度は高く、また含まれる硫黄化合物の種類もより高分子量で多種類に及ぶ。硫黄化合物としてはメルカプタン、スルフィドの他に、チオフェン類、置換チオフェン類、ベンゾチオフェン類なども含まれ、硫黄の含有量では数質量ppm〜数十質量ppmに及ぶ。
【0015】
本発明では、炭化水素系燃料として、硫黄化合物として硫化カルボニルが含まれるものを用いる。硫化カルボニルの含有量は通常0.1質量ppm以上であり、例えば0.1〜20質量ppm、好ましくは0.2〜15質量ppm、さらに好ましくは0.5〜10質量ppmである。
なお、硫化カルボニル以外の硫黄化合物の含有量については特に制限はないが、100質量ppm以下であることが好ましく、通常0.01〜100質量ppmの範囲である。
【0016】
本発明では、炭化水素系燃料として、硫化カルボニルの他にメタノールが混入されているものを用いる。メタノールの含有量は通常1質量ppm以上であり、例えば1〜10,000質量ppm、好ましくは10〜5,000質量ppm、さらに好ましくは100〜2,000質量ppmである。特にLPガスの場合について述べれば、メタノールは通常、混入している水分が特に冬季において凍結し、配管や切替調整器を詰まらせるなどの不都合が生じることを防ぐ目的で人為的に添加される。通常、このメタノールはボンベ内の液状のLPガス中に対し100〜5,000質量ppm、好ましくは300〜2,500質量ppm添加される。LPガスを液体のまま抜き出し、ボンベの外部で気化させる方式の場合、燃料電池システムに導入される炭化水素系燃料中のメタノール濃度は液状のLPガス中のメタノール濃度と等しくなる。
【0017】
一方、ボンベ内で気化したLPガスを燃料電池システムに導入する方式の場合、該気化LPガス中のメタノール濃度は必ずしも液状のLPガス中の濃度とは一致しないが、通常1〜10,000質量ppm、好ましくは10〜5,000質量ppm、さらに好ましくは100〜2,000質量ppm程度のメタノール濃度を有するLPガスが燃料電池システムに導入される。
【0018】
本発明で用いる脱硫剤は、少なくとも銀を含有するゼオライト系脱硫剤である。ここで用いられるゼオライトとしては、A型、フォージャサイト型など様々なゼオライトが使用できるが、中でもフォージャサイト型が好ましく使用される。
ゼオライトとしては、特定のSiO/Al比(モル比)のものが用いられる。すなわち、SiO/Al比が2〜3の範囲のものであることが必要であり、好ましくは2.2〜3、さらに好ましくは2.3〜3の範囲のものが用いられる。SiO/Al比が3より大きい場合には、本発明の使用条件においては脱硫剤寿命に悪影響が観測され、十分な脱硫性能は得られない。一方、SiO/Al比が2より小さい場合には十分な脱硫剤寿命が得られず好ましくない。
【0019】
脱硫剤の表面積は、300m/g以上であることが必要であり、好ましくは320m/g以上である。表面積が300m/gより低い場合には脱硫性能が十分でなく好ましくない。
【0020】
銀の担持量は、脱硫剤全量基準で、好ましくは10〜30質量%であり、さらに好ましくは15〜25質量%である。担持量が10質量%より少ない場合には脱硫性能が十分でなく、30質量%より多い場合には銀の添加量に見合った脱硫性能が発揮されないため好ましくない。
【0021】
銀の担持方法としては、イオン交換法が好ましく使用される。イオン交換に用いるゼオライトは、ナトリウム型、アンモニウム型、水素型など様々な形態のものを用いることができるが、ナトリウム型が最も好ましく使用される。一方、銀は通常カチオンとして水に溶解した形態で準備される。その具体例としては、硝酸銀や過塩素酸銀などの水溶液、銀のアンミン錯イオン水溶液、などを挙げることができるが、硝酸銀水溶液が最も好ましく使用される。銀イオンを含む水溶液の濃度は銀の濃度として、通常0.5〜10質量%、好ましくは1〜5質量%の範囲である。
【0022】
イオン交換の方法には特に制限はないが、通常は上記のカチオン性の銀を含む溶液に、前述のゼオライトを加え、通常0〜90℃、好ましくは20〜70℃の温度範囲において1時間ないし数時間程度、好ましくは撹拌しながらイオン交換処理する。
イオン交換後、固形物をろ過などの手段で分離し、水などで洗浄した後、80℃以上180℃以下の温度で乾燥処理することが好ましく、85℃以上150℃以下の温度がさらに好ましい。このイオン交換処理は繰り返し行うことができる。80℃より低い場合、乾燥が不十分であるため好ましくない。また180℃より高い場合は、金属の凝集を促進するため好ましくない。乾燥工程後は製造工程の簡略化のため、焼成処理を行わないことが好ましい。このような方法により、目的の銀イオン交換ゼオライトを得ることができる。
【0023】
上記の方法で製造された銀を担持したゼオライトは、アルミナ、シリカ、粘土鉱物など、もしくはこれらの前駆体を、適当なバインダーとして用いて、押出成型、打錠成型、転動造粒、スプレードライおよび必要に応じて焼成するなど、通常の方法で成型して使用できる。
【0024】
また、ゼオライトをあらかじめ成型し、その後に前記のイオン交換方法を適用することも好ましく採用される。本発明者らが検討した結果によれば、炭化水素系燃料に微量のメタノールが混入している場合には、成型後にイオン交換して得られる脱硫剤を用いた方が一般に高い性能を示すことが見出された。したがって本発明では成型後にイオン交換する方法がより好ましく採用される。
【0025】
このように製造された銀イオン交換ゼオライトは、硫黄化合物として硫化カルボニルを含有する炭化水素系燃料、好ましくは天然ガスあるいはLPガスなどの常温・常圧で気体である燃料、さらに好ましくはLPガスに含まれる硫黄化合物の除去に好適に用いることができる。脱硫条件においては、通常、該炭化水素系燃料は気化した状態であることが好ましい。脱硫温度は−50℃〜100℃、好ましくは−20℃〜80℃の範囲で選ばれる。温度が100℃より高くなるとメタノールを含有する条件においては銀の変質が促進され好ましくなく、−50℃より低い場合は十分な活性を示さず好ましくない。
【0026】
天然ガスあるいはLPガスなどの常温・常圧で気体である燃料を用いる場合、GHSVは10〜100,000h−1、好ましくは100〜10,000h−1の間で選択される。GHSVが10h−1より低いと脱硫性能的には十分になるが必要以上に脱硫剤を使用するため脱硫器が過大となり好ましくない。一方、GHSVが100,000h−1より大きいと十分な脱硫性能が得られない。なお、液体燃料を使用することもでき、その場合には、WHSVとして0.1〜1,000h−1の範囲で使用される。
使用圧力は、通常、常圧〜1MPa(ゲージ圧、以下同じ。)、好ましくは常圧〜0.5MPa、さらに好ましくは常圧〜0.2MPaの範囲で選択されるが、大気圧条件下で最も好ましく実施できる。
【0027】
本発明の脱硫方法においては、上記ゼオライト系脱硫剤は通常、流通式反応管内に設置した脱硫器に充填して使用される。該流通式反応管は公知のいかなる形式、形状のものも使用でき、さらに、例えば温度制御機能、圧力制御機能などを付与したものでもよいし、付与したものでなくても良い。また、前記脱硫剤で脱硫が不十分な場合には他の脱硫剤を後段に配置することもできる。その時用いることができる脱硫剤としては、ニッケル、クロム、マンガン、コバルト、銅、銀、亜鉛および鉄から選ばれる少なくとも一種を含む脱硫剤を挙げることができるが、ニッケルを含むものが好ましい。
【0028】
本発明の脱硫方法は、燃料電池システム用水素製造装置の脱硫部において用いることができる。水素製造装置は、通常、炭化水素系燃料から硫黄分を除去する脱硫部、炭化水素系燃料を水蒸気および必要であれば酸素の共存下に分解する改質部、改質部で発生する水素に混入する一酸化炭素を水蒸気との反応により二酸化炭素と水素に転換するシフト部、およびシフト部でも微量残存する一酸化炭素を酸素との反応により選択的に二酸化炭素に変換して除去する選択酸化部から構成される。あるいは、改質部あるいはシフト部にパラジウム膜などを用いた膜分離水素精製装置を組み合わせて配置することで純粋な水素を得る装置を組み立てることもできる。このように、本発明の水素製造装置の構成は公知の任意のものを使用できるが、改質部の前段に本発明の脱硫方法を用いた脱硫部を配置する構成であることが好ましい。
【0029】
水素製造装置の例についてさらに詳細に述べる。水素製造装置は脱硫部、改質部、シフト部、選択酸化部からなることができる。脱硫部については先述のとおりである。
改質部は、水蒸気改質反応あるいは自己熱改質反応のいずれの形態も取り得る。改質部において用いられる改質触媒としては特に制限はなく、従来から炭化水素系燃料の改質触媒として知られている公知のものの中から、任意のものを適宜選択して用いることができる。このような改質触媒としては、例えば適当な担体にニッケルあるいは、ルテニウム、ロジウム、白金などの貴金属を担持したものを用いることができる。上記担持金属は一種でもよく、二種以上を組み合わせても良い。
【0030】
改質部に水蒸気改質反応を採用する場合、反応温度は450℃〜900℃、好ましくは500℃〜850℃、さらに好ましくは550℃〜800℃の範囲で行うことができる。反応系に導入するスチームの量は、原料炭化水素燃料に含まれる炭素原子モル数に対する水分子モル数の比(スチーム/カーボン比)として定義され、この値は好ましくは0.5〜10、より好ましくは1〜7、さらに好ましくは2〜5とされる。この時の空間速度(WHSV)は炭化水素燃料の液体状態での流速をA(kg/h)、触媒重量をB(kg)とした場合A/Bで表すことができ、この値は好ましくは0.05〜20h−1、より好ましくは0.1〜10h−1、さらに好ましくは0.2〜5h−1の範囲で設定される。
【0031】
一方、改質部に酸素、好ましくは空気を導入し、燃焼反応と分解反応を同一の反応器内で進行させる自己熱改質反応を採用することも可能であり、この場合にも通常、ニッケル、コバルト、鉄、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、白金などの周期律表第VIII族金属を代表例とする金属触媒の存在下に反応が行われる。反応系に導入するスチームの量は、スチーム/カーボン比として好ましくは0.3〜10、より好ましくは0.5〜5、さらに好ましくは1〜3である。
【0032】
自己熱改質ではスチームの他に酸素が原料に添加される。酸素源としては純酸素でも良いが多くの場合空気が使用される。通常水蒸気改質反応に伴う吸熱反応をバランスできる熱量を発生し得る程度の酸素を添加するが、熱のロスや必要に応じて設置する外部加熱と関係において適宜添加量は決定される。その量は、原料炭化水素燃料に含まれる炭素原子モル数に対する酸素分子モル数の比(酸素/カーボン比)として好ましくは0.05〜1、より好ましくは0.1〜0.75、さらに好ましくは0.2〜0.6である。自己熱改質反応の反応温度は水蒸気改質反応の場合と同様、450℃〜900℃、好ましくは500℃〜850℃、さらに好ましくは550℃〜800℃の範囲で設定される。この時の空間速度(WHSV)は、好ましくは0.1〜30h−1、より好ましくは0.5〜20h−1、さらに好ましくは1〜10h−1の範囲で選ばれる。
いずれの場合も、改質反応の圧力は、特に限定されないが、好ましくは大気圧〜2MPa、より好ましくは大気圧〜0.5MPa、さらに好ましくは大気圧〜0.2MPaの範囲で実施される。
【0033】
改質装置で発生する改質ガスは、水素の他に一酸化炭素、二酸化炭素、メタン、水蒸気などを含む。また、自己熱改質で空気を酸素源とした場合には窒素も含有される。水素濃度を高めるため、また一酸化炭素は触媒毒となることもあるので一酸化炭素濃度を低減するため、一酸化炭素を水と反応させて水素と二酸化炭素に転換する工程を行うのがシフト部である。通常、触媒の存在下に反応が進行し、Fe−Crの混合酸化物、Zn−Cuの混合酸化物、白金、ルテニウム、イリジウムなど貴金属を含有する触媒を用い、一酸化炭素含有量(水蒸気を除いて算出したモル%)を好ましくは2質量%以下、より好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下までに落とす。シフト反応を二段階で行うこともでき、この場合は高温シフト反応器と低温シフト反応器から構成されることが好ましい。
【0034】
例えば固体高分子形燃料電池システムでは、さらに一酸化炭素濃度を低減させることが好ましく、このためにシフト反応器の出口ガスを選択酸化部で処理する。この工程では、鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金、銅、銀、または金などを含有する触媒を用い、残存する一酸化炭素モル数に対し好ましくは0.5〜10倍モル、より好ましくは0.7〜5倍モル、さらに好ましくは1〜3倍モルの酸素を添加することで一酸化炭素を選択的に二酸化炭素に転換させ、一酸化炭素濃度を好ましくは10質量ppm以下に低減させる。この場合、一酸化炭素の酸化と同時に共存する水素と反応させメタンを生成させることで一酸化炭素濃度の低減を図ることもできる。
【0035】
本発明の燃料電池システムでは、こうして得られる一酸化炭素含有量の少ない水素が燃料電池に導入され発電に供される。燃料電池としては、固体高分子形(PEFC)、リン酸形(PAFC)、固体酸化物形(SOFC)、溶融炭酸塩形(MCFC)など公知のセルスタックを用いることができるが、好ましくは固体高分子形のものが用いられる。
【0036】
次に、燃料電池の一形態として、固体高分子形燃料電池の構成を記す。
固体高分子形燃料電池はアノード(燃料極)およびカソード(空気極)とこれらの電極に挟まれる固体高分子電解質からなり、アノード側には上記改質装置で得られた水素を含有する改質ガスがシフト反応器および選択酸化反応器を経て一酸化炭素濃度が低減された後に供給され、カソード側には空気等の酸素含有ガスが供給される。アノード側、カソード側とも、供給されるガスは必要であればそれぞれ適当な加湿処理を行った後導入される。
【0037】
この時、アノードでは水素ガスがプロトンとなり電子を放出する反応が進行し、カソードでは酸素ガスが電子とプロトンを得て水となる反応が進行する。これらの反応を促進するため、それぞれ、アノードには白金黒、活性炭担持のPt触媒あるいはPt−Ru合金触媒などが、カソードには白金黒あるいは活性炭担持のPt触媒などが用いられる。通常アノード、カソードの両触媒とも、必要に応じてポリテトラフルオロエチレン、低分子の高分子電解質膜素材、活性炭などと共に多孔質触媒層に成形される。
【0038】
固体高分子電解質としてはナフィオン(Nafion、デュポン社製)、ゴア(Gore、ゴア社製)、フレミオン(Flemion、旭硝子社製)、アシプレックス(Aciplex、旭化成社製)等の商品名で知られる高分子電解質膜を用いることができ、この両側に上記多孔質触媒層を積層しMEA(Membrane Electrode Assembly:膜電極集合体)が形成される。さらにMEAを金属材料、グラファイト、カーボンコンポジットなどからなるガス供給機能、集電機能、特にカソードにおいて重要な排水機能等を持つセパレータで挟み込むことで燃料電池が組み立てられる。電気負荷はアノード、カソードと電気的に連結される。
【実施例】
【0039】
以下に実施例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0040】
(1)粉末状ゼオライトのイオン交換による触媒の製造(A法)
硝酸銀30gに対し、蒸留水600mlを添加し硝酸銀水溶液を調製した。次に、攪拌しながらSiO/Al(モル比、以下同じ。)=2.5のNaX型ゼオライト粉末50gと混合し、イオン交換を行った。その後、硝酸根が残らないように蒸留水にて洗浄した。洗浄後、空気中、130℃で一晩乾燥した。乾燥後の粉末状銀交換ゼオライト30gに対し、アルミナバインダーを5g混合し、1mmφにて押出成型し、脱硫剤とした。
同様に、NaY型ゼオライト(SiO/Al=5.5)、USY型ゼオライト(SiO/Al=9)を用いて脱硫剤の調製を行った。
調製した脱硫剤とイオン交換に用いた試薬量を表1にまとめた。銀の担持率は元素分析により求めた。
【0041】
【表1】


【0042】
(2)押出成型後のゼオライトのイオン交換による触媒の製造(B法)
NaX型ゼオライト(SiO/Al=2.5)の粉末5kgに対し、アルミナバインダーを1kg混合し、1mmφにて押出成型し押出成型品を作成した。
同様に、NaY型ゼオライト(SiO/Al=5.5)、USY型ゼオライト(SiO/Al=9)を用いて押出成型品を作成した。
この押出成型品30gを取り、所定量の硝酸銀を蒸留水300mlに溶解させた硝酸銀水溶液と攪拌しながら混合し、イオン交換を行った。その後、硝酸根が残らないように蒸留水にて洗浄した。洗浄後、空気中、130℃で一晩乾燥した。
調製した脱硫剤とその調製に使用した原料の量を表2に示す。銀の担持率は元素分析により求めた。
【0043】
【表2】


【0044】
(3)脱硫剤の性能試験
調製した脱硫剤6mlを流通式反応管に充填し、メタノールを1,000質量ppm含有するLPガス(硫黄濃度:3質量ppm、硫化カルボニル濃度:1質量ppm、二硫化炭素濃度:0.05質量ppm)をGHSV=9,000h−1にて、常圧で流通させた。反応管入口および出口の硫黄濃度はSCD(Sulfur Chemiluminescence Detector)ガスクロマトグラフィーにより測定した。なお、本試験に用いたLPガス中には若干の水も含まれていたので、本試験の期間中随時その量を測定したが、2〜100質量ppmの間で変動していた。
【0045】
[実施例1]
脱硫剤NaX−A1について、上記の試験法にて、実験を行った。このとき反応温度は25℃であった。実験開始後、170時間後に出口ガスの硫黄濃度を測定したところ、検出限界(20質量ppb)以下であった。
【0046】
[実施例2〜14および比較例1〜12]
各脱硫剤を用いて同様にして、170時間後の出口ガスの全硫黄濃度を測定し、検出限界を超えたものに関しては、その時間を記した。その結果を表3に示す。
【0047】
【表3】


【0048】
実施例1〜3および比較例1〜3を比較することによりA法で調製した脱硫剤について、NaXゼオライトを用いたものが最も良い成績を与えることがわかる。これは、担持量がほぼ同じ、NaX−A3/NaY−A2/USY−A1およびNaX−A2/NaY−A1の比較を行うことで明白である。また、脱硫剤の出口で検出された硫黄化合物の多くが硫化カルボニルであることを確認しており、NaXゼオライト以外は硫化カルボニルを除去し切れないことが分かる。
実施例4〜6および比較例4〜6を比較することによりB法で調製した脱硫剤について、NaXゼオライトを用いたものが最も良い成績を与えることがわかる。これは、担持量がほぼ同じ、NaX−A3/NaY−A2/USY−A1およびNaX−A2/NaY−A1の比較を行うことで明白である。また、脱硫剤の出口で検出された硫黄化合物の多くが硫化カルボニルであることを確認しており、NaXゼオライト以外は硫化カルボニルを除去し切れないことが分かる。
実施例7〜12から、本発明の脱硫剤が広い温度範囲で使用可能なことが判る。
実施例2、5および比較例7〜8を比較することにより、NaXゼオライトの表面積が300m/g以上の時には硫化カルボニルなどの硫黄化合物を除去できることが確認できる。
実施例13〜14および比較例9〜12を比較することにより、NaXゼオライトが0℃の低温でも硫化カルボニルなどの硫黄化合物を除去できることが確認できる。
【0049】
[実施例15]
本発明の脱硫方法を用いた燃料電池システムを説明する。図1は本発明の燃料電池システムの一例を示す概略図である。
図1において、LPガスボンベ3内で気化した燃料は減圧弁4を経てNaX−B2を充填した脱硫器5に流入する。この時、脱硫器のGHSVは500h−1に設定する。脱硫器5で脱硫された燃料は、水タンク1から水ポンプ2および気化器6を経て製造された水蒸気と混合され、触媒として2質量%Ru/Alが充填された改質器7に送り込まれる。この時、スチーム/カーボン比は3.0に設定する。また、流通原料の空間速度はWHSVが0.5h−1に設定する。改質器反応管は燃料タンクからの燃料およびアノードオフガスを燃料とするバーナー18により加温され、700℃に調節される。
この様にして製造された水素と一酸化炭素を含有するガスは鉄−クロム系触媒を用いた高温シフト反応器9、銅−亜鉛系触媒を用いた低温シフト反応器10、ルテニウム触媒を用いた選択酸化反応器11を順次通過させることで一酸化炭素濃度は燃料電池の特性に影響を及ぼさない程度まで低減される。
固体高分子形燃料電池17はアノード12、カソード13、固体高分子電解質14からなり、アノード側には上記の方法で得られた高純度の水素を含有する燃料ガスが、カソード側には空気ブロアー8から送られる空気が、それぞれ必要であれば適当な加湿処理を行った後(加湿装置は図示していない)導入される。電気負荷15はアノード、カソードと電気的に連結される。
アノードオフガスはバーナー18において燃焼され改質管の加温に用いられた後排出される。カソードオフガスは排気口16から排出される。
以上の試験装置において、LPガスボンベ中の液化状態においてメタノールを500質量ppm、水を10質量ppm、硫化カルボニルを2質量ppm含むLPガスを燃料として用いて運転を行った。アノード入口のガスを分析した結果、水素を72vol%(水蒸気を除外)含んでいた。
試験期間(170時間)中、改質器は正常に作動し触媒の活性低下は認められなかった。燃料電池も正常に作動し電気負荷15も順調に運転された。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の燃料電池システムの一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0051】
1 水タンク
2 水ポンプ
3 LPガスボンベ
4 減圧弁
5 脱硫器
6 気化器
7 改質器
8 空気ブロアー
9 高温シフト反応器
10 低温シフト反応器
11 選択酸化反応器
12 アノード
13 カソード
14 固体高分子電解質
15 電気負荷
16 カソードオフガス排出口
17 固体高分子形燃料電池
18 バーナー
【出願人】 【識別番号】000004444
【氏名又は名称】新日本石油株式会社
【出願日】 平成18年7月28日(2006.7.28)
【代理人】 【識別番号】100103285
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 順之


【公開番号】 特開2008−31306(P2008−31306A)
【公開日】 平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願番号】 特願2006−206498(P2006−206498)